【幻獣契約】失われた物語【安価有】 (13)
▼注意書
・九割妄想、一割想像
・ときどき胸糞展開、エロ無し
・自陣は所持キャラのみ
・時間は返せません
・安価有り
・章を決定する安価の際、3候補中で1候補は自軍に死人が出ます。
・投稿スピードはまちまちですが、一ヶ月で章完結程度を目指します。
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プロローグ「紅茶と手紙と」
大きな西風の館、敢えて調律もされずに色鮮やかなチューリップとバラが咲き乱れる庭。
「領主様、どうぞ」
その庭を一望出来るテラスに、彼らは居た。
「ありがと、リズ。でも出来ればコーヒーが良かったかな」
「毎日ブラックばかりですと、胃が荒れてしまわれますよ」
「そういって、最後にコーヒーを飲んだのはいつだったっけな……」
ハハハ……と苦く笑い、小さなテーブルに置かれたカップを手に取り、領主と呼ばれた男は一口啜った。
「ま、美味いからいっか」
領主の言葉に、リズと呼ばれた少女は甘栗色の髪に手櫛を通しながら礼を言った。二十歳前、といったところだろうか。
昼過ぎで暖かいとはいえ、肌寒さも感じる一月の終わり。
テラスで新聞を片手に寛ぐ領主と、その脇に控える秘書はまるで時が止まったかのように、緩やかに時間を過ごす。
最後に言葉を交わしてから一時間ほど経った頃だろうか、風も無く、時折聞こえるのは領主の欠伸と二人の身動ぎのみの空間にバタンッと大きな音。次いで慌ただしい足音が響く。
「野郎、ぶち殺してやるッ!!」
「へっ、詰まってない頭に中途半端な腕、オレのハンマーで試してやるよ」
花咲き乱れ、平和な町を見下ろす小高い丘にある庭で、並々ならぬ殺気が飛び交った。
片や黒衣の軽装に長剣を携える目付きの悪い青年、片やボサボサの長い赤毛をした小柄の少女。
青年は有り余る怒りに黒髪を逆立て、少女は挑発の笑みに体躯に似合わぬ大槌を担いで対峙した。
「おいおい、またクラドにミンリィか。あいつ等毎日毎日よく飽きねぇな……」
「止めましょうか? 領主様のご購読を妨げるなんて度か過ぎます」
テラスから呆れ顔で二人を眺める領主と、笑顔だが目尻が異様に痙攣しているリズ。
「お前も毎日毎日怒ってたら血管切れるぞ。どうせ勝負は付かないんだし、お互い本気じゃない、ほっときゃいいさ」
「領主様が、そう、仰るならば」
どこからか分厚い本を取り出して今にも何か飛んでもない事を始めそうな顔をしていたリズは、領主の言葉で不満そうではあるが引いた。
「どっらあああああい! 武器を捨てなああああ!」
そうこうしているうちに、先に仕掛けたのは青年クラドだった。
駆け出したクラドは握り締めた長剣を、少女ミンリィに向かって力の限り振り下ろす。
当たれば怪我は必至、運が悪ければ四肢の一本や二本両断し兼ねない勢いだ。
「捨てろと言われて、捨てる馬鹿はいねぇなぁ」
ミンリィは余裕を持って笑い、大槌の柄の金属部分を迫り来る切っ先に当て、軌道を反らす。
「うおらぁ!」
ミンリィはそこから更に柄で受けた力を円の動きで活かし、大槌をクラドの頭蓋に向けて振り抜く。
「おぉ、巧い」「お見事ですね」
領主とリズは一連の動きに歓声をあげる。
いつの間にか小さなテーブルの上にはクッキーとラスクを数枚盛られた小皿に、湯気が昇る暖かい紅茶が乗っていた。
大質量の大槌を目前に「ヂィッ!!」と苛立たしく舌打ちをしたクラドは大きく身を引いて回避。
「おんやぁ? ギルザの兵長がか弱い少女に手こずっちまう?」
「誰がか弱い少女だゴルァ! この脳筋猿が! 俺が育てた肉奪いやがってこのデブアマァァ!」
「職無し能無し甲斐性無しが何か言ってるなぁ。肉に感情移入するほど友達も少ないんだなぁ」
クラドの激昂にミンリィの皮肉は剣と大槌の応酬の合間に止めどなく投げ売られる。
「由緒正しき領主の庭で……あの方達は……」
その光景にリズは怒りを通り越して頭痛を覚えたようだ。
「まぁまぁ、俺は静かなのも好きだが、騒がしいのも捨てられん。いいじゃないか」
領主は軽く笑い、クッキーを一摘まみして頬張る。
「そう、いいじゃないか。戦争をしてる訳でも、誰かが泣いてる訳でもないんだ。平和で、満ち足りた時間だ」
穏やかな表情で、領主は午後の余韻を激しい剣劇の音色に委ねた。
第一章「>>6」
1:天使と悪魔のワルツ
2:海賊とコックの仲間集め
3:ミラーオブラプチャー
2
第一章「海賊とコックの仲間集め」
領主様。ここより少し西方、港町ローマンを領土に治める方から手紙が届いていました。
とある日、いつものように庭で剣劇を鑑賞中の領主へ秘書官が差し出した一通の手紙。
領主から領主の手紙。
そういった手紙には大抵、厄介事か金の話しか書いていない。
領主は手紙を一瞥した後、溜め息混じりにその封を切った。
時間は、それから約一週間後へと流れる。
「うっわぁ、見渡す限り海じゃねーかぁ!・」
領主の治める町から小山を一つ越え、森を一つ抜けた場所。
まるで鋏で乱暴に切り取ったかのような崖から見渡せるのは、夕日を一望しつつ、青と赤が混じり合う幻想的な光景だった。
「こらミンリィ、領主からの正規の依頼だ。道草を食う隙は無いぞ」
「わぁかってるってぇ。全く、メリッサの姉御は固い固い」
ミンリィは夕日に染まる赤毛を掻きながら欠伸を一つ。
背後に広がる森を少し遅れて抜けてきたのは、軽快な馬の蹄の音だった。
「しかし何だ。小走りのユニコーンを追い抜くとはな。そんなに海が楽しみだったのか?」
馬、一角の凛々しい角を携えた純白の馬。
おとぎ話等に出てくる神話的な存在、ユニコーン。
パチパチと静電気のようなものを纏うユニコーンの上に跨がっている女性、メリッサは愛馬の角にも負けぬほど凛々しく、目鼻立ちの整った顔と表情でそう問い掛けた。
「うんにゃ、それ預けたら体軽くなったみたいでな。ちょっと走りたくなったんだ」
それ、とミンリィはユニコーンの鞍の側面に固定された大槌を指差した。
ユニコーンの体躯は普通の馬に比べて一回り大きく、ミンリィの大槌と、反対側に槍、尻の部分に二人分の手荷物を固定していても何ら気にする様子はなく、息一つ乱れていない。
「さぁ、とりあえず急ごう。夜道で魔物に襲われたら面倒だ」
「俺も野宿は面倒だな、賛成賛成~」
二人と一匹は崖沿いに東へ向かって歩き始めた。
ぱからっぱからっ、と軽快なリズムが続く。
「そういえば姉御、詳しく話聞いてるんだろ?」
「ん、勿論だ。正義を貫ける依頼の様だった故、賜った」
「俺も適当に聞いたんだけどよ~、何せ三日も前の事だからうろ覚えなんだよなぁ」
「情けない……本当に私のパートナーときたら……」
「いいじゃんかよー、いつも姉御にそういうんは任せてんだ。姉御を信頼してるんだぜ?」
メリッサは溜め息を吐き、信頼と丸投げは違うと呟くも、ミンリィには聞こえていないようだ。
「……今回の依頼は、一言で言うと海賊退治だ」
「おぉ、何かそんなんだったそんなんだった!」
「ローマンは船舶貿易が盛んな港町で、我らの領主様の町もその恩恵を遠からず受けている」
「鮮度的には微妙だけど冷凍ものの海鮮とかが届いてるんだってな~」
「別に海鮮だけじゃない。調度品や家具類、果ては日々の化粧品。様々なものがローマンに流れ着き、ここ一帯の地域に散っていくんだ」
「ほへ~。んで、流れ着くのは商品だけじゃないってこった?」
「そういうことだ」と、メリッサ頷き、ミンリィは指を鳴らす。
「シンプルな答え、嫌いじゃないぜ。暴力には暴力で解決ってこった」
ニシシ、とミンリィは控えめな胸に腕を組んで笑う。
「お前は本当に何を聞いてたんだ?」
「ん、違うのかよ姉御。海賊退治なんだろ?」
「海賊退治には違いないが、そんな事ならローマンの自警団で手が足りる。だてに何十年と栄えてはないはずだ」
「なら何なんだよ、勿体ぶらずに教えてくれよ姉御~」
「海賊に襲われる場所が海とは限らないということだ」
ミンリィは首を捻る。「それなら山か? 山なら山賊だろ?」と聞き返すが、メリッサはあえて流した。
「街道さ、海沿いのな。それも襲ってくる海賊は日替りだ。各々海からやってきて、目についた商隊を襲っているらしい」
「うわ、それ地味に面倒だな」
「あぁ、面倒だ」
キリリとした表情のまま、肩を竦める。
暫しの登り坂。
登りきったところで、それまで静かだったユニコーンが一声、小さく啼いた。
「到着したようだ、港町ローマンに。我らが神託を授ける地へ」
坂の上、丘の下、海沿いを半円状に囲む淡い光。
夕暮れ時で、点々と人工的な明かりが灯す数キロ単位の港町ローマンが、眼下に広がっていた。
浮かぶ様々な国色を持つ船、船、船。見たこともない景色にミンリィは小さく感嘆の声をあげた。
>>12
ミンリィとメリッサの宿泊先指定。
1:ホテル
2:旅館
3:民宿
4:領主の手続きミスで宿泊先無し
寝ます、おやすみなさい(書き忘れました)
再安価は>>14でお願いします
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