佐倉「ハーピーの佐倉千代です!!」野崎「よろしく」 (34)

野崎「ホストファミリーの野崎梅太郎だ」

佐倉「よろしくね野崎くん!!」

野崎「いや……俺のことは『ご主人』でいい」

佐倉「えっ!?」

野崎「ハーピーは三歩歩くだけで物事を忘れるというからな……無理に名前を覚えなくても大丈夫だ」

佐倉「う、うん……」

野崎「よし、とりあえずまずはうちに帰ってお祝いしよう」

野崎「……」スタスタ

佐倉「……」スタスタ

野崎(もう俺の名前を忘れてるだろうな……)

佐倉「そういえば野崎くんの家でどれぐらい大きいの?」

野崎「!!!?」

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野崎「ま、待て!! 三歩以上歩いたぞ!! どうして忘れてないんだ!!?」

佐倉「へ、変かな……?」

野崎「……いや、寧ろ人間にとってはそれが普通だ」

野崎(この子はほかのハーピーよりも賢いということか?)

佐倉「……」

佐倉(大好きな野崎くんの名前なんて忘れるわけないよ!!)

野崎のマンション

野崎「……さっき言った俺の身長と誕生日は? 覚えてるか?」

佐倉「身長は190センチ!! 誕生日は6月6日!! あと好きな服は……」

野崎「ま、待て!! そこまで言わなくてもい!!」

野崎「驚いた……なんて賢いハーピーなんだ」

佐倉「えへへ〜///」

野崎「……よし、そんなお前には早速ベタ塗りをやってもらおう」

佐倉「べた?」

野崎「この部分を塗りつぶしてくれ」

佐倉「うん、分かった!!」

バサバサバサバサ!!

野崎「!!!」

佐倉「の、野崎くん……ごめん……私……」

野崎「いや、その翼で筆ペンを持てというのが難しいな。 無理難題なことを言って悪かった」

野崎「……」スラスラ

佐倉「の、野崎くん!! 私、どうすれば……」

野崎「いや、大丈夫だ。 お前はゆっくり寛いでくれ」

佐倉「は、はい……」

佐倉(どうしよう……折角野崎くんの役に立てると思ったのに……)

佐倉(このままじゃ私……足手まといだよ!!)

佐倉(……そうだ!!)

佐倉「の、野崎くん!! 恋愛ネタとかいる!?」

野崎「!! そうだ、他種族の恋愛話をいつか聞いてみたいと思ってたんだ!! 是非聞かせてくれ!!」

佐倉「うん!!」

佐倉(野崎くん、すごい嬉しそう!! よかった……!!)

野崎「やっぱりハーピー同士でも恋はするのか?」

佐倉「……!! ごめん野崎くん……」

野崎「?」

佐倉「ハーピー女の子しかいないんだ……」

野崎「! そ、そうだったな……すまない」

佐倉「で、でも!! ハーピーも人間に恋するよ!!」

野崎「!! そうなのか……佐倉は人間に恋したことはあるのか?」

佐倉「!! う、うん!! あるよ!!」

野崎「聞かせてくれ」

佐倉「う、うん。 その人はね……」

ピンポーン

佐倉「だ、誰!?」

野崎「そうだ、あいつが来る時間だったな」

佐倉(も、もしかして……野崎くんには彼女がいたの!?)

佐倉(いやだ!! そんなのいやだよ!!)

ガチャッ

御子柴「おーっす野崎」

佐倉(そっち!!?)

御子柴「うおっ!? 誰だこいつ!?」

佐倉「え、ええと……」

野崎「ハーピーの佐倉だ」

御子柴「ハ、ハーピー!!? お前……ホストファミリーになったのかよ!!?」

野崎「ああ、他種族からの恋愛話を聞きたかったのとアシスタントとして雇おうと思ってな」

御子柴「そういう理由でかよ……」

野崎「佐倉、紹介しよう。 アシスタントの一人の御子柴だ」

佐倉「よ、よろしくね御子柴くん!!」

御子柴「お、おう……」

野崎「御子柴、佐倉は凄いぞ。 ハーピーなのに記憶が飛ばないんだ」

御子柴「マジか!?」

野崎「よし……佐倉、ちょっと歩いてみてくれ」

佐倉「う、うん!!」

スタスタ……

野崎「……佐倉、俺の名前は?」

佐倉「野崎くん!!」

御子柴「……俺の名前は?」

佐倉「……なんだっけ?」

御子柴「忘れてるじゃねえか!!」

野崎「何!?」

佐倉「……」スタスタスタスタ

御子柴「……だいぶ歩いたぞ」

野崎「よし、もういいだろう」

野崎「……佐倉、俺のクラスは何組だ?」

佐倉「2-B!!」

野崎「俺の家族構成は?」

佐倉「お父さんとお母さんと弟と妹!!」

野崎「俺の中学の時に入ってた部活は?」

佐倉「バスケ部!!」

御子柴「俺の名前は?」

佐倉「……」ニコッ

御子柴「笑顔で誤魔化すんじゃねえ!!」

野崎(何故俺のことだけは覚えてるんだ……)

次の日

野崎「学校に行ってくるから留守番を頼む」

佐倉「分かった!! 任せて野崎くん!!」

野崎「すまないな……出かけたいだろうけどホストファミリーなしでは他種族は外出できないからな」

佐倉「ううん!! 気にしてないよ!! しょうがないもんね!!」

野崎「ならよかった……じゃあ行ってくる」

佐倉「うん! 行ってらっしゃい!!」

バタン!!

佐倉「……」

佐倉(野崎くん早く帰ってくるかなぁ)












学校

堀「おい野崎……お前が書いてくれたこの台本なんだけどよ……」

野崎「なんですか?」

堀「最後の最後で羽が生えるとか急展開にもほどがあるぞ……」

野崎「すいません、新しい家族が来たものでついそっちにも……」

堀「鳥でも飼い始めたのか?」

野崎「ハーピーです」

堀「!?」

佐倉(そうだ!! 学校に行ってる間に掃除しよう!!)

佐倉(ベタを塗れない私にできることはこれぐらいしかない!!)












佐倉(この部屋のドアを開けたいけど……この手じゃ開けられないよ……)

佐倉(……そうだ!! 足を使えばいいんだ!!)

ガチャッ

佐倉「!!!!」

佐倉(な、なにこの女の子がいっぱいいる部屋!!?)

御子柴「なぁ野崎、帰りお前ん家寄っていいか?」

野崎「構わないが……今日はアシスタントの日じゃないぞ?」

御子柴「いや、お前ん家にある俺のコレクションルームに用があるんだよ」

野崎「ああ、お前のフィギュアやギャルゲーが置いてあるあの部屋か」

御子柴「買うだけ買っといてまだやってないゲームがあったからな……やんねーと」

御子柴「……あっ!!!」

野崎「どうした?」

御子柴「の、野崎……佐倉には言ってねえよな!?」

野崎「ああ、言ってない」

御子柴「いいか!! 絶対言うなよ!! ……でも待てよ、あいつずっとお前ん家いるからバレるのも時間の問題か!?」

野崎「大丈夫だ、あの部屋はドアノブがある。 佐倉が開けることはできないだろう」

佐倉(どこもかしこも……女の子のフィギュア!! それにゲーム!!)

佐倉(もしかして野崎くん……こういうのが好きだったの!!?)

佐倉(そんな……野崎くんがこんなに二次元が好きだなんて……)

佐倉(うっ……ううっ……)

佐倉(……)プルプル

佐倉(……余計野崎くんを好きになっちゃった!!)

野崎「ただいまー」

佐倉「あ!! お帰りなさい野崎くん!!」

野崎「留守番ご苦労だったな、偉いぞ」

佐倉(褒められた〜///)

御子柴「……お、おい!! 野崎!! あの部屋空いてるじゃねえか!!」

野崎「!! 佐倉……あの部屋開けたのか!?」

佐倉「うん! 野崎くんがいない間に家中を掃除しようと思って!! この部屋は足を使って開けたの!!」

野崎「家中……か」

野崎(道理であちこちに羽が落ちてるわけだ)

佐倉「ねぇねぇ!! あの部屋にあるのって全部野崎くんの!?」

野崎「ああ、それはだな……」

御子柴「の、野崎」ボソッ

野崎「なんだ?」

御子柴「上手く誤魔化してくれねえか?」

野崎「別に構わないが……バラしてもいいんじゃないのか?」

御子柴「いいわけねぇだろ!! あれが俺のってバレたら変な目で見られるに決まってるだろ!!」

佐倉「あんなに沢山フィギュアやゲームを集められるなんて凄いよ!!!! 努力の賜物だね!!」

御子柴「へっ……やっぱそう思うだろ? 全部俺のなんだぜ?」

佐倉「そうなの!?」

野崎「……」

佐倉「でもなんでこんなにゲーム集めてるの?」

御子柴「いや……俺、女の子と上手く話せねーからよ……だからギャルゲーで練習しようと思って……」

野崎「じゃあその成果を佐倉に見せたらどうだ?」

佐倉「わ、私に!?」

御子柴「よし……やってみるか」

佐倉「……」

御子柴「……よお小鳥ちゃん、また会ったな。 俺の顔を忘れたなんて……言わせねえぞ?」

佐倉「……誰だっけ?」

御子柴「通じねえじゃねえかよ!!」

別の日

野崎「佐倉、今日は外に出かけよう」

佐倉「外に!?」

野崎「ああ、漫画のネタ探しだ。 それにお前もずっと家の中にいて窮屈だろうしな」

佐倉「そ、そんなことないよ!!」

佐倉「だって私……野崎くんとずっと一緒にいられ……」

野崎「いられ……?」

佐倉「な、なんでもない!!/// 早く外に行こう!!///」

野崎「? ああ……」



野崎「どこかにカップルはいないだろうか……」

子ども「う……うう……ボール……」

野崎「! 子どもが泣いてるな……」

佐倉「……あ!! ボールが木に引っかかってる!!」

野崎「なるほど……そういうことか」

佐倉「私、ボール取ってくる!!」

バサバサ!!

佐倉「はい僕!! ボールだよ!!」

子ども「うわあ!! ありがとう鳥のお姉ちゃん!!」

野崎「よく助けたな、偉いぞ佐倉」ナデナデ

佐倉「!!!!!」

佐倉(な、ナデナデされた……)

佐倉「……」ジーン……

野崎「……佐倉?」

佐倉「……野崎くん、早く行こう」

野崎「? ああそうだなネタ探しに……」

佐倉「人助けをしに!!」

野崎「ネタ探しはどうした!!?」

別の日

御子柴「野崎、花描き終わったぜ」

野崎「ああ、ありがとう」

佐倉「……」

御子柴「……佐倉? どうしたんだよ、モジモジして」

佐倉「の、野崎くん……」

野崎「……?」

佐倉「……産まれるかも」

野崎・御子柴「!!!!?」

御子柴「おい野崎!! てめえふざけんじゃねえぞ!! こんなことして許されるのはエロゲーの主人公だけだからな!!」

野崎「ま、待て!! なんの話だ!!?」

御子柴「とぼけんじゃねえよ!! 産まれるってことはそういうことだろ!!」

佐倉「ち、違うの!! これは無精ら……」

佐倉「……はっ!!」

佐倉(ちょっと強引だけど……これを言えば野崎くんと距離が縮むかも!!)

佐倉「の、野崎くん!」

野崎「!」

佐倉「せ、責任とってよね!!///」

御子柴「野崎てめえええ!!!!」

野崎「ま、待て!! 何か誤解してないか!!?」

御子柴「なんだよ……無精卵だったのか」

佐倉「ご、ごめんなさい……早く言えばよかった……」

野崎「待てよ……だったらもう準備しないといけないんじゃないのか?」

佐倉「そ、そうだね!! じゃあベッドに……」

御子柴「!!!!」

御子柴(お、おい待てよ……これから産むってことは……)

佐倉「の、野崎くん!! 早く!!」

御子柴「!! もう始まるんじゃねえのか!?」

野崎「佐倉!! 大丈夫か!!?」

佐倉「早く!! スケッチの準備!!」

野崎「ス、スケッチ?」

佐倉「マミコの出産シーン用の資料になるから!!」

野崎「後にも先にもないぞ!!?」

佐倉「はぁ……はぁ……///」

野崎「佐倉、もう少しの辛抱だ」

佐倉「う、うん……///」

佐倉(わ、私……野崎くんに見られてる……///)

佐倉(こ、このままだと気絶しちゃいそうだよぉ……///)

佐倉「ふあぁ……///」

御子柴(見るんじゃねえ俺……聞くんじゃねえ俺!!///)

御子柴(目を瞑れ!! つーか後ろ向け!! そんで耳も塞げ!!///)

野崎「すまないな佐倉……女の人が一人でもいれば……」

佐倉「う、ううん……謝らなくてもいいよ///」

佐倉(寧ろ感謝しないとね……///)

佐倉「……んんっ!!!///」

野崎「!!!」

ポンッ!!!

野崎「よく頑張ったな佐倉」

佐倉「//////」

御子柴「//////」

野崎(二人とも赤面してるな……)

野崎「それにしても……綺麗な卵だな」

佐倉「の、野崎くん!! それ売ろう!! そうすればお金持ちだよ!!」

御子柴「ああ……確かハーピーの卵ってすげー高く売れるんだよな」

野崎「いや……これは売らない」

佐倉「えっ……?」

野崎「だって……これはお前が辛い思いをして産んだ卵じゃないか……それを売るなんてできない」

佐倉「野崎くん……」

佐倉(私のことを思って……卵をそんなに大切にしてくれるなんて……)

野崎「漫画で卵を描く時の資料になるからな、保管しておこう」

佐倉「」

御子柴(卵なんてそこらのスーパーで買えるだろ……)

別の日

野崎「トイレにいってくる」

御子柴「おう」

バタン!!

御子柴「……なあ、お前って野崎のこと好きだろ?」ボソッ

佐倉「な、なんで分かったの!?」

御子柴「いや、誰が見ても分かるだろ……」

佐倉「い、言わないでね!? 自分の口で言いたいから!!」

御子柴「お、おう……つーか好きになったのはなんかきっかけでもあったのか?」

佐倉「う、うん……実はね……」

佐倉『うわーーーん!! 一緒に留学しに来た子達に置いてかれちゃったーーーー!!!』

佐倉『どうしよう……私どうすればいいの……?』

野崎『……』スタスタ

佐倉『!!!』

佐倉(こ、怖そうな人がこっちにくる!!)

佐倉(わ、私……どうなっちゃうの!!?)

野崎『……お前一人か?』

佐倉『!!!』

野崎『他種族の群れならさっきあっちの方で見かけたぞ』

佐倉(や、優しい!!)

野崎『よく見たら……怪我してるじゃないか』

佐倉『う、うん……壁にぶつかっちゃって……それで気づいたらみんなと離れちゃって……』

野崎『よし、俺が連れてってあげよう』

佐倉『えっ!!?』

野崎『よいしょっと』

佐倉(お、おんぶ!!)

野崎『そんな遠くないはずだったからな』

佐倉(あったかい……///)











佐倉『あ、ありがとうございました!! あの……名前だけでも!!』

野崎『すまない!! 急いでる!! 剣さんを待たせるわけにはいかない!!』ダッ

佐倉『あっ……行っちゃった……』

佐倉「……てことがあったの!!」

御子柴「あー……なるほどなー……」

御子柴「……」










野崎『今日、他種族を助けたんだ』

御子柴『へー……ラミアとかか?』

野崎『いや、それが何日も徹夜している所為で視界がぼやけててな……他種族だというのは分かったんだが何かは全く覚えてないんだ』

御子柴『おいおい、ハーピーじゃあるまいし……』








御子柴(あの時助けたのって絶対こいつだよな……)

御子柴(ん? 待てよ、野崎が姿覚えてないとしたら……)

御子柴「お前はさ、野崎にあの時助けてもらったハーピーだってこと言ったのかよ?」

佐倉「言おうとしたらね、野崎くんが覚えててくれたの!!」

御子柴「!?」

御子柴(あれ……じゃあ野崎が俺に言ってたのは別のやつか? でも他種族を助けた話ってあの時しかしてねーし……)

御子柴(……いや、俺に言ってないだけかもしれねぇな)

御子柴「そっか……頑張れよ」

佐倉「うん! ありがとう野崎くんのお友達!!」

御子柴(やっぱり覚えてねぇのかよ……)

別の日

御子柴「なぁ野崎、お前ってなんで他種族の中でハーピー……しかも佐倉を選んだんだよ?」

野崎「ああ、それはだな……」














野崎『さて、恋愛話を沢山持ってそうかつアシスタントとして優秀そうな他種族は……』

野崎『……ん?』

佐倉(あの時の人だ!!)パタパタパタパタ

野崎(ものすごい勢いで翼を羽ばたかせてる!?)

野崎『……』ジー

佐倉『……』パタパタパタパタ

野崎『……』ジー……

佐倉『……』パタパタパタパタ

野崎(かれこれ30分は羽ばたかせてるぞ……)

野崎(……これは相当忍耐力があると見た、アシスタントとしては逸材かもしれない)

野崎『……お前にしよう』

佐倉『!!!』

野崎『……(お前のような逸材を)ずっと探してたんだ』

佐倉『!!!!』

佐倉(私のこと覚えてくれたんだ!!)

佐倉『うん!! 私も!!』












野崎「根性がありそうだったからだな」

御子柴(佐倉……こいつお前のこと覚えてねぇぞ!!)

別の日

野崎「剣さん、今回の『恋しよっ』なんですが……」

宮前「どれどれ……」










マミコ『そう……私は……鳥だったのよ!!』バサッ

鈴木『マ、マミコーーーーー!!!』











野崎「実は俺……この度ハーピーが新しく家族になって……それを何か漫画に活かせないかと……」

宮前「家の事情を漫画に持ち込むんじゃねえよ」

〜終わり〜

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