姉「え…?なんか天井低くない…?」 (60)

姉「気のせいかな?前より低くなってるような」

ミシミシ…

姉「ううん、やっぱり低くなってる!」

姉「この真上の部屋は確か…」

姉「男くんの部屋?」

幼馴染「お姉さーん、おはようございます!」

姉「あ、いらっしゃい幼馴染ちゃん」

幼馴染「いったいぜんたいそんなとこで突っ立って何してるんですか?」

姉「うん。いまふと思ったんだけど…」

幼馴染「はい」

姉「私んちの天井…低すぎ…?」

幼馴染「い、言われて見れば確かに。なんか下がってきてるような。確か上の部屋は男くんの部屋ですよね」

姉「うん。…今日も男くんに学校行こうって誘ってくれに来たんだよね?ありがとうね、幼馴染ちゃん」

幼馴染「やははー、あたしが好きにやってるんでお気に為さらず」

姉「幼馴染ちゃん…」

幼馴染「それにお姉さんのご飯もいただけますしね!」ガツガツ

幼馴染「あっ…このカレーうまっ…うま…」

姉「おかわりもあるよっ。遠慮しないでいっぱい食べてね?」

ミシミシ…ミシミシ…

幼馴染「…ケプゥ」

幼馴染「はぁー美味しかった。あれ?」

幼馴染「天井…さっきよりまた低くなってません?」

姉「!?」

姉「ふぇ…ヤバイよヤバイよ…最初に見たときより五センチは下がってる…!」

幼馴染「あ、そういえば桜の花びらが落ちるスピードって秒速五センチらしいですよ」

姉「いまそんなことどうでもいいよぉ!」

幼馴染「…すんません。無神経でした」

姉「もう私の頭のてっぺんが擦れそうだよ…」

幼馴染「…あ、あたし学校行きますね!」

姉「ちょ、ちょっと待ってよぉ!」ガシッ

幼馴染「 わっ!離してくださいよ!」

姉「一緒に男くんの部屋まで行こうよ!ね!?それに学校行こうって誘いに来たんでしょ!?」

幼馴染「お姉さんの飯食いにきたんですよ!」

姉「薄情もの!」

幼馴染「そ、それに朝練あるから」

姉「…ふーん。何部?」

幼馴染「エイケン部です」

姉「嘘だよね。一緒に男くんの部屋行こうね」ズルズル…

幼馴染「やだぁ…」

姉「ここだね」

幼馴染「なんかドアが歪んでるような気がしますよ…」

姉「お、男くーん?起きてるー?」

幼馴染「男ー!とっとと起きてくださいよー!」

姉「…んー、寝てるのかな?幼馴染ちゃん」

幼馴染「なんですか?」

姉「ドア、開けて」

幼馴染「お姉さんは?」

姉「大丈夫、下がっとくから心配しないで」

幼馴染「……」

ミシミシ…

幼馴染「うぅ…」

姉「……」ドキドキ

幼馴染「まぁお姉さんにはいつも世話になりっぱなしだし…それに…久しぶりに男の顔見れるし…」ボソッ

幼馴染「えぇい、腹は括りましたよ!」

姉「覚悟のススメ!」

幼馴染「覚悟完了ッ!」

ガチャガチャ!

幼馴染「あ、あれ?」

姉「?…どうしたの?」

幼馴染「このドアノブ…回らないですよ!?」

姉「えぇ?まさか…」

幼馴染「開かずの扉ですからねぇ。錆び付いてんじゃないですか?」

姉「まさかー」

幼馴染「お姉さん試しにやってみてくださいよ。握力には自信あったでしょ。克己がピクルに負けたときチャンピオン紙切れみたいに割いてたじゃないすか」

姉「も、もう女の子だから気にしてるのにぃ…」

ミシミシ…ミシミシ…ミシミシ…

姉「男くーん?開けるからねっ」

ガチャガチャ…!

姉「ううっ…!か、かたいよぉ…!!」

ミシミシミシミシ…!

幼馴染「(ドアの裏側に何かある?いや、丸いドアノブがタンスか何かあったところで全く回らないなんてありえない…まして、お姉さんが回してるんだし)」

幼馴染「もしや男…起きてます?」

姉「!」

姉「わ、分かった!逆側から回してるんだね!?男くんったら!絶対に開けるからね!!」

ミシミシミシミシミシミシミシミシ!!!!

バキ!!!!!!

姉「はぅ…」

幼馴染「うわっ!ドアノブとれた…」

姉「や、やばいよぉ…お父さんに怒られちゃうぅ…」フルフルフルフル

幼馴染「そ、そんな木曜日のフルットばりに震えなくても…」

姉「うちのお父さん怖いもん…」

幼馴染「あー厳格そうですもんね。ん…ドアノブの鍵穴から何か出てきましたよ!?」

ドロォ…!

姉「ひ、ひぃ!何これぇ」

幼馴染「クンクン…半透明のクラゲみたいな…無臭ですねぇ」

姉「気持ち悪いよー」

幼馴染「(無臭でかなり固め…寒天っぽいな。ア、アレじゃあるまいしなんだろこれ)」

姉「結局中がどうなってるかなんで天井が低くなってるか謎のままだよ…」

幼馴染「まぁまぁ、手掛かりは掴めましたよ。この半透明の寒天みたいなやつ、科学部の奴等に解析させますんで」

姉「幼馴染ちゃん…!夕御飯もきていいよっ」

幼馴染「やりぃ」

学校――

幼馴染「頼みますよ~」

科学部「はい、任せてくださいよ幼馴染さん」

幼馴染「報酬はこのお姉さんの生写真と電撃ピカチュウ全巻セットです」

科学部「!…すぐに分析しますんで!分かったらお知らせしますよ!」

幼馴染「ま、お願いしますね」

幼馴染「ふぅ~まったく世話の焼けるお隣さんですよ。今週のチャンピオンでも読むか…」ペラ…

女「世話の焼けるお隣さん…て男くん?」

幼馴染「えぇ、まぁね。うわ…ガイア負けた…」ペラ

女「男くん…去年の今頃は登校してたのにね」

幼馴染「えぇ、ですね。うわ…パンモロじゃん…」ペラ

女「……」

幼馴染「…気にしなくていいと思いますよ」

女「うん…でも、私が原因…だよね」

幼馴染「ハハハ、まさか。たかがフったぐらいで」

女「……」

幼馴染「あいつ、メンタル弱いとこありますけど、またひょこっと来ますよ。ね?」

女「うん…ありがとう」

科学部「幼馴染さん!」

幼馴染「遅かったですね」

科学部「す、すみません」

幼馴染「チッ…そんなんじゃ囚人リクだと地獄島行きですよ?それともG組堕ちしたいんですか?ん?」

科学部「い、いや…なんか機嫌悪くないですか?」

幼馴染「…別に。まぁ、いいでしょう。それで結果は?」

科学部「えぇ。分析の結果あれは――」

姉宅――

姉「いらっしゃい、幼馴染ちゃん!」

幼馴染「どうも」

母「あら幼馴染ちゃん。こんにちは」

幼馴染「あはは、どうもこんにちは。いつもすみませんね」

母「全然いいのよ。遠慮しないでいっぱい食べてね。ねぇ?あなた」

父「……」

姉「お、お父さん…こっちの私が作ったんだよ」

父「……」ペラ…

姉「めかぶ…パックのやつだけど身体にはいいから…」

父「アホウが……」モグモグ

姉「(よかった…もう怒ってないみたい…)」

幼馴染「んまっ…んまっ…このTボーンステーキなんか絶品ですよ!」ナポ…モニュ…

母「デザートもあるわよー」

父「…幼馴染よ」

幼馴染「あ、はい。なんすか」

父「ただ飯を食いに来ただけでもあるまい」ニィィ

幼馴染「あはーお父さんには隠し事は出来ませんね」

父「フッ…」エフッエフッ

幼馴染「実は私は――」

父「成る程…だいたいの事情は分かった」

母「確かに、天井が独歩の株ばりに下がってるわね…」

姉「うん…」

幼馴染「それでですねぇ。分析の結果、その今朝採取した半透明の白いブヨブヨは……」


幼馴染「『デンプン』だったんです」

姉「デンプン…?」

姉「ど、どういうこと?デンプンって?」

幼馴染「それが謎なんですよねぇ」

姉「謎が謎を呼ぶね…」

母「やっぱりその開かないドアを開けるしかないみたいね」

父「願ってもない…」スタスタ

ミシミシミシミシ…

姉「な、なんかドアが丸く突き出てるような…」

幼馴染「いまにも破れそうですね」

母「でも大丈夫?ドアノブなら直したけど…」

父「……」スゥ

父「邪ッッッッ!」ガチャガチャガチャ!!

姉「お父さん頑張って!」

父「!……!!……」

父「……」

姉「お父さん…?」

父「…寝るぜ」スタスタ

姉「え…?」

姉「お父さん…」

母「開けられなかったのね」

幼馴染「心なしか背中が寂しげですねぇ」

姉「なんかショック…」

母「でももうどうしようもないわねぇ」

幼馴染「厳重にクローズされてますからねぇ。いっそバチバチぶつかっていくのもアリかもしれないです」

幼馴染「ということで、お願いしますねお姉さん」

ミシミシミシミシ…

姉「うう…やっぱり私なのぉ」

幼馴染「父を越えるのが夢なんでしょ」

姉「別にそうでもないよぅ」

母「頑張って!幼馴染ちゃん、私たちは危ないから離れてましょ」

幼馴染「はい」

ミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシ…!!!

姉「ふ…んっ…!!」グググ…!

ガチャガチャガチャガチャ!!!!!

幼馴染「おお…回ってませんか?」

母「えぇ。ゆっくりだけど」

姉「んん…っ!」

ミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシ!!!

ピキ…

ピキピキ…

幼馴染「!」

幼馴染「いけない!お姉さん離れ――」

姉「にゃあらァー!!」

ガチャ――――

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!

姉「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

幼馴染「(白い…塊…!?)」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

幼馴染「(ヤバ……呑まれ……息……死……)」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…

「――ちゃん!」

幼馴染「ん…」

姉「幼馴染ちゃん!」

幼馴染「…お姉さん?ここは…どこです?なんか白い洞窟みたいなとこですけど。一体何が…」

姉「……」

幼馴染「ん…この臭い…」クンクン…

幼馴染「うぼえぇぇぇぇぇぇ!!クッサ!!!」ツーン

姉「じきに慣れるよ…」

幼馴染「ゲッホ!ゲッホ!これは…ティッシュですかまさか!?」

姉「うん…このティッシュが生臭い異臭の原因みたい」

幼馴染「……これは」

姉「何か分かるの?」

幼馴染「い、いえ。分からないっす」

姉「そっか。多分、ここは一階のリビングだと思う。私も気絶してたからどこまで流されたか分からないんだけど」

ザクザク

姉「見てっ!ティッシュを掘ったら下はフローリング!家の外まで流されてはないみたい!」

姉「よいしょ、よいしょ。ほら、幼馴染ちゃんも掘り進むの手伝って!」

幼馴染「う、うん…」

姉「!…このフローリングの傷は見覚えある!やっぱりリビングだね!」

幼馴染「お父さんとお母さんはご無事なんですか?」

姉「さっきまでは連絡とれたんだけど…電波が悪くって。お母さんは外まで流されたみたい。お父さんは連絡つかなくて…」ジワァ

幼馴染「えぇ…」

ガツッ

姉「よし、食器棚に到着っ」

幼馴染「食器棚?二階に続く階段とは逆じゃないすか」

姉「えとね…」ガサゴソ

姉「はい、ライト!」

幼馴染「おお、確かに携帯の明かりでは暗いですからね」

姉「えへへ、自信の備えだよ。ほら、備えあれば嬉しいなって言うじゃない?水と食糧もあるよ!」モグモグ

幼馴染「お姉さんはおバカだけどいい人っすね…でも食欲わかないです…」

幼馴染「ん、待てよ!リビングの食器棚の脇には窓があったはず!」ザクザク

幼馴染「外は……!?」

幼馴染「ティ、ティッシュで見えない…!?」

姉「…お母さんの話だと、少なくとも駅前まではこんなんなってるみたい。お母さんは駅前まで流されたみたいだから」

幼馴染「いや、いや…ありえないでしょ…あたしの家…」

ザーザー…!

ラジオ『突如〇〇市の3分の1が白い謎の……ガガッ専門家の間では……政府は緊急措置として……付近の住民は……ガガッ……ザーザー……』

幼馴染「」

姉「こんな大事になるなんて…!」

幼馴染「やだぁ…嘘でしょさすがに…やだぁ…」グスグス

姉「泣いたって仕方ないよ…行こっ!男くんが一番危ないんだから!」

幼馴染「むしろ男が原因なんじゃないですかねぇ」グスグス

姉「そんなことないよ…い、いまは引きこもっちゃったけど本当は明るくて優しくていい子なんだから!人様に迷惑をかけるような子じゃないよ!」

幼馴染「自治体レベルで多大な迷惑おかけしてるじゃないですかぁ」グスン

姉「も、もう!幼馴染ちゃんなんて知らない!」

ザクザクザクザク!

幼馴染「あ、一人で行くと危ないっすよ!」

ザクザクザクザク!

姉「男くんは優しい子…こ、こんなティッシュの津波の原因なんかじゃないんだから…!」

姉「はぁはぁ…上へ続いてる…二階への階段だね…」

ザクザクザクザク…

ザクザク…

ガツッ

姉「ドアが開いてる…男くんの部屋に入るの一年ぶりだよ」

幼馴染「幼馴染さーん!一人じゃあぶないっすよ!」

姉「!…あ、危なくないったら!!男くんは…いい子だもん!」

姉「…戻るんだ。またみんなでご飯食べてテレビ見て、そんな当たり前の毎日に!」

ザクザク――


幼馴染「うぅ…速すぎる。ある程度掘り進めてくれてるから楽だけど」

ザクザク…ガツッ

幼馴染「ん…こ、これは!」

姉「わわ、急に開けた場所に出たよぉ」

姉「男くんの部屋だ。テレビもあるし、ドリキャスもセガサターンもある。間違いなく男くんの部屋だ!」

姉「でも、静か…男くん?いるの?いたら返事して!!」

――姉ちゃん

姉「この声…!男、くん…?」

姉「男くん!男くんはこの災害の犯人じゃないよね!?」

姉「男くんは何もしてないよね!?」

――……

姉「そうだよね。私は分かってるから…」

――……

姉「だから、姿を見せて?また家族みんなで仲良く……」

――それは出来ない

姉「え…」




――それより、よくも俺の部屋に入ってくれたな…

ミシミシミシミシ…!

姉「お、男…くん?」

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