兄「……何言ってるんだ?」
従妹「兄さんにレモンをかけると初恋の味がするらしいです。友人に聞きました。」
兄「おい、やめろ。レモンをかけようとするな。」
従妹「初恋の味を知りたいです。」
兄「俺にレモンをかけても初恋の味はしない。」
従妹「嘘です。」
兄「嘘じゃない。」
従妹「……」
兄「……それよりもいつ来たんだ? 叔母さんの家からここまで結構遠いだろ。」
従妹「さっきです。兄さんにレモンをかける為に来ました。」
兄「……」
従妹「レモン、かけさせて下さい。」
兄「駄目だ。……歩いて来たのか? 叔母さんに連れて来てもらったのか?」
従妹「いえ、お母さんに内緒で歩いて来ました。」
兄「はぁ……危ないから駄目だろ? 迷子になったり、変な人に遭ったりしたら、どうするつもりだったんだ?」
従妹「兄さんが助けてくれます!」
兄「……俺が昔従妹を助けられたのは、偶然。その時も言ったけど、危ないから遅い時間に出歩いちゃ駄目だ。」
従妹「でも、兄さんにレモン……」
兄「……」
従妹「……」
兄「……取り敢えず叔母さんに、従妹がこっちにいるって連絡するから待ってな。」
従妹「……はい。」
兄「うん。良い子。」
従妹「へへっ。」
兄「……もしもし、兄です。夜遅くにすいません。」
叔母『あら、兄君? 久しぶりぃ~!』
兄「はい、お久しぶりです。」
叔母『今ねぇ~? ロールキャベツ、作ってるのぉ~!』
兄「そうなんですか。あの……」
叔母『あ、あぁ、お鍋がぁ~! 兄君、ちょっと待っててねぇ~!』
兄「……」
祖母『ふぅ、兄君? それで、何の用事ぃ~?』
兄「従妹が家に来てるんですけど、どうしましょう? 送って行きましょうか?」
叔母『あらぁ~? 従妹なら家にいるはずだけどぉ~?』
兄「……いえ、こっちにいますよ。」
叔母『従妹ぃ~? 従妹ぃ~?』
兄「……」
叔母『……』
兄「……送りますね?」
叔母『……お願いねぇ~』
兄「……ふぅ。従妹、家に帰るよ。」
従妹「やだです。」
兄「どうして? 今日はロールキャベツらしいよ?」
従妹「えっ、本当? ……嘘です。騙されません。」
兄「嘘じゃないよ。今日は帰ろう? また今度遊んであげるから。」
従妹「……レモンお兄ちゃん。」
兄「……それは駄目。」
従妹「何でですか!」
兄「レモンはから揚げにかけるの。お兄ちゃんには普通、かけない。」
従妹「普通じゃないからこそ、初恋の味が味わえる。 そう友人が言ってました。」
兄「一体その友人は何を求めているんだ……」
従妹「きんしんそーかんって言ってました。」
兄「えっ、ちょっと。えっ?」
従妹「……良いからかけさせて下さい!」
兄「いやいや、駄目だから。それよりもその友人について。」
従妹「……やだです。……今、ちょっと嫉妬してます。」
兄「えっ、なんで嫉妬?」
従妹「……もう良いです。ふん。」
兄「えっ? えー?」
従妹「もう帰ります。」
兄「あ、あぁ、うん。送って行くよ。」
従妹「……お願いします。」
兄「……うん。」
従妹「……」
兄「それで、その友人の事なんだけど……」
従妹「っ! 兄さん嫌い!!」
兄「あっ、従妹! 一人で行くなって!!」
兄「……いきなりどうしたんだ?」
兄「ん? あぁ、まさか。その友人に言うなって言われてたのかな?」
兄「……近親相姦だしな。」
兄「あれ? 別に近親相姦って犯罪じゃないし、放っておくべきなのかな……?」
兄「それよりも。まだその友人が近親相姦してるって決まってないし。」
兄「うーん……」
兄「あっ、従妹。走るの疲れたか?」
従妹「……はぁ。……はぁ。別に疲れてないです。」
兄「ほら、おんぶしてあげるからおいで。」
従妹「!」
兄「……よし。良い子。」
従妹「♪」
兄「さっきはごめん。気が付かなくてさ。」
従妹「全然良いですよっ! えへへっ!」
兄「もう怒ってないのか。」
従妹「分かれば良いんです。分かれば。」
兄「そっか。良かった良かった。」
従妹「……へへっ、兄さんの背中暖かいです。」
兄「もう春だけど、まだちょっと肌寒いからな。風邪に気をつけろよ?」
従妹「はい。……兄さん兄さん。」
兄「ん? どうした?」
従妹「呼んでみただけですっ。えへへっ、兄さん兄さんっ♪」
兄「そんなにはしゃぐと危ないぞ。」
従妹「兄さん号! 全速力です!」
兄「全速力? しっかり掴まれよ?」
従妹「……わっ、怖い! 怖い! 兄さん速過ぎですっ! 怖いですっ! すとっぷっ!!」
兄「意地悪してみた。」
従妹「むー! もう! やだですよ!」
兄「ははっ、ごめんごめん。」
今日はここまで。閲覧超感謝。
あっ、トリップ。
従妹「……あっ。」
兄「どうした? って、冷たっ!?」
従妹「ふふっ、はむ。」
兄「えっ、ちょっ。何で首食べてるの?」
従妹「はむはむ。」
兄「あばばばばばば。」
従妹「……酸っぱいです。これが初恋の味。」
兄「レモンかけたのか……」
従妹「レモンお兄ちゃん美味しかったです。」
兄「駄目だって言っただろ? 首がむずむずする……」
従妹「えへへっ。」
兄「まったく……」
従妹「……」
兄「うぅ、むずむずする。」
従妹「……お兄ちゃん。」
兄「ん?」
従妹「……私の事好きですか?」
兄「勿論。」
従妹「……」
兄「いきなりどうした?」
従妹「……可愛い妹、ですか?」
兄「あぁ、勿論。」
従妹「……」
兄「どうしたんだ? 元気ないぞ?」
従妹「いえ、何でもないです。」
兄「そっか。それなら良いけど。あっ、家、見えてきたぞ。」
従妹「えぇ、やだです。もっと兄さんと一緒にいたいです。」
兄「そう言われても……」
従妹「兄さんも家でご飯食べれば良いです。そして遊んでくれれば良いです。」
兄「……いや、今日はごめんな。また遊んでやるから。」
従妹「……」
兄「ほら、良い子だから。拗ねないで。」
従妹「ただいま。」
叔母「お帰りぃ~!」
従妹「今日、ロールキャベツなの?」
叔母「そうよぉ~! お母さん頑張って作ってるのぉ~!」
従妹「やった! 私、部屋にいるね、お母さん。」
叔母「できたら呼ぶわねぇ~」
従妹「うん。」
従妹「……」
従妹「お兄ちゃん……」
従妹「……」
従妹「あっ、宿題やらないと……」
従妹「……」
従妹「妹……」
従妹「妹、なんだよね……」
従妹「……」
従妹「ただの妹……」
兄「ただいま。」
兄「誰も帰ってきてないのか。」
兄「まっ、テレビでも見るか。」
『――地方、明日のお天気は曇りのち、雨。夕方頃から冷え込む為、寒さには十分気を付けて下さい。』
『次のニュースは、明日公開予定の映画。七面賽子の特集です。』
兄「あっ、これ原作の小説が面白いんだよな。」
兄「……」
兄「……何か、寂しいな。」
兄「……」
兄「っ!」
兄「で、電話か……びっくりした……」
兄「こんな時間に……誰……」
兄「……叔母さん?」
兄「はい、もしもし。兄です。」
叔母『あ、兄君~!? 従妹が家にいないのぉ~!』
兄「!」
叔母『ご飯ができたから呼びに行ったらぁ~!』
叔母『部屋にも居なくてぇ~!』
叔母『家中探したんだけど、いなくてぇ~!』
叔母『靴もなくなってるのぉ~!』
叔母『兄君~?』
叔母『兄く~ん?』
叔母『あらぁ~? お手洗いかしらぁ~?』
叔母『それよりも、従妹ちゃん~!』
兄「はぁ……はぁ……!」
兄「……どこだ、従妹!?」
兄「畜生……!」
兄「また昔みたいに公園にいるのか? はぁ……はぁ……」
兄「昔……」
兄「また昔みたいに殺されかけたらどうするつもりなんだ!」
『兄さんが助けてくれます!』
兄「……馬鹿。」
従妹「ここの公園は落ち着きます。」
従妹「特に、このブランコが。ゆらゆら。」
従妹「でも、兄さんが押してくれないと楽しくないです。」
従妹「兄さん……」
従妹「……」
従妹「お兄ちゃん……」
従妹「……?」
従妹「え、ぁ、っ!?」
兄「心配かけさせないでくれ……」
従妹「お、お兄ちゃん? なんでここがわかったんですか?」
兄「昔もお前、ここで泣いてたじゃないか……」
従妹「……お兄ちゃん、そんなに強く抱きしめられると苦しいですよ。」
兄「死亡フラグとか、昔の事だけで十分なんだよ……誰得だよ……」
従妹「意味がわからないですよ……」
兄「従妹は俺の大切な妹なんだ……心配かけさせないでくれ……」
従妹「……お兄ちゃん。」
友人「それでそれで!?」
従妹「その後兄さんに怒られて家に帰りましたよ。」
友人「それだけ……? なんだ、つまんね。」
従妹「つまんねって何ですか……」
友人「漫画みたいには行かないんだなぁ。でも、良いなぁ。私もお兄ちゃん欲しいなぁ。」
従妹「……あげませんよ?」
友人「……なんかむかつく。うりうり。」
従妹「うひゃぁっ! や、やめてくださいです!」
友人「……で? 初恋の味は分かったの?」
従妹「分かりましたよ。酸っぱかったです。」
友人「まぁ、レモンだもんね。」
従妹「でも、友ちゃんちょっと間違ってますしたよ。」
友人「えっ、何が?」
従妹「お兄ちゃんにレモンをかけると初恋の味がする、って言いましたよね?」
友人「う、うん。」
従妹「でも。」
従妹「レモン、……かけなくても。初恋の味、しましたよ?」
end
閲覧支援超感謝。最近は時間も取れず、短めに終わらせています。
そして雑になる内容と終了はごめんなさい。
それでは次回作にご期待ください。
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