男「うわぁぁぁ! 化け物だぁぁぁ!」(20)

学者「おおお……これはまさしく世紀の大発見にちがいない!」

助手「やりましたね、教授!」

護衛(こんな卵がそれほどの大発見なのか? ピンとこないな)



卵「……」ピシピシ…



学者「おおっ、割れる!?」

パキィィィン!



化け物「ギャアァァァァァス!」



学者「な、なんだこの化け物は!?」

助手「ひぃぃぃっ!」

護衛「二人とも、私の後ろへ!」バッ



この三名は卵から生まれた化け物によって、瞬く間に殺害された。

化け物の勢いは止まらない。

猛スピードで人里に姿を現し、さっそく攻撃を開始する。



化け物「ピギャアァァァァァ!」バシュッ



ドゴォォォォン!!!



化け物「ギィヤァァァァァス!」バシュッ



ズガァァァァン!!!



化け物の放つレーザー光線は、次々に町を焼き払っていく。

警官「そこまでだ、化け物!」

機動隊員「これ以上の破壊行為は許さんぞ!」



化け物「……」ニヤ…



勇敢なる抵抗も空しく、彼らはあっけなく殉職していった。

化け物「ギャス、ギャァァァァァス!」モワァァァ…

女A「あら、素敵な人」

女B「あたし、あなたについてくわ」

女C「かっこいい……」

化け物「……」ニヤニヤ



しかも、化け物は女好きらしく、絶対的な効力のあるフェロモンで女性を誘惑し、

大量にかっさらっていくのであった。

総理大臣「こうなれば……自衛隊を出動させろ! なんとしても化け物を倒せ!」



決着はあっけなくついた。

一時間足らずで、自衛隊が壊滅したという報が首相官邸に届く。

それと同時に――



化け物「ギャァァァァァス!」ニヤッ

総理大臣「うっ、うわぁぁぁぁぁっ!」



ザシュッ!

世界各国もこの化け物を退治するため、一致団結して兵士や兵器を送り込む。



「一個大隊がものの数分で全滅だとぉ!?」

「ウイルスや細菌兵器も、まるで通じません!」

「核攻撃を直撃させても、ニヤニヤ笑っている……!」



ところが連戦連敗。わずか一週間で世界中の軍隊は無力化した。

地球上全ての女性は化け物の私物となり、人類は完全敗北を喫した。

ある避難所にて――



男(軍は壊滅、女はさらわれ、地球のあちこちが破壊し尽くされた……)

男(まさか、こんなあっさりと人類滅亡が確定しちゃうとはなぁ……)

男(せめて……俺の好きだった本を読みながら、ここで静かに死のう……)

男(化け物に殺されるよりは、よっぽどマシな死に方だ……)



しかし、こんなささやかな願いでさえ、非情な化け物は容赦なく打ち砕く。

化け物「ギャァァァァァス!」ズシンッ

化け物「ギャッ、ギャッ、ギャッ、ギャッ、ギャッ!」





男「うわぁぁぁ! 化け物だぁぁぁ!」

男「ああ……俺の人生もここまでか……」バサッ

化け物「ん、本を読んでるのか。貸してみろ」パラパラ…

男「えっ……!」

化け物「ふむふむ、どうやらお前さん、オレと同じような趣味をしてるようだな」ニヤッ

男「あんた、言葉が分かるのか? 文字が分かるのか!?」

化け物「そりゃ分かるさ。オレは強さだけじゃなく、知能だって超一流だからな」

化け物「オレもさ、お前さんの読んでるような本が大好きでな」

化け物「オレたちの世界の神様に、オレもこうなりたいって祈ったわけよ」

化け物「そしたらこうして願いが叶ったんだけど……」

化け物「最初のうちは面白かったけど、なんかもう飽きてきちゃった」

化け物「だからもう帰るわ」

男「は、はぁ……」

化け物「あ、もちろん、オレが殺したり壊したりしたものは全部元通りにしてからな」

男「えええ、なんでそんなことできるんだ!?」

化け物「なんたって、オレはチートだからな」スゥゥ…



そういうと、化け物は影も形もなくなってしまった。

男が避難所を出ると――



男(本当だ……全て元通りになってる……。人も、建物も……)

男(結局あいつ、なにがしたかったんだ……!?)



ちなみに男が読んでいた本は、異世界に転生した主人公が、

チートな能力で無双してハーレムを作るという内容であった。







おわり

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