ありす「待てますか?」P「待てない」 (275)


P「そんなの待ってられないよ。4年だぞ4年。当たり前だろ」

ありす「そ、そんな……じゃあ……」ジワァ

ありす「私はこんなにPさんのことを……」

P「あぁ。俺も好きだ」

ありす「……へ?」

P「好き好き。めっちゃ好き愛してる」

ありす「へ?」

P「だからあと4年なんて待ってられない。今すぐ行こう」

ありす「へ!?」


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P「というわけで、晶葉カモン!!」

晶葉「来たぞ」

P「頼んでおいた物は?」

晶葉「勿論出来てる」

P・晶葉「コールドスリープマシン~!!」

ありす「へ?……は!?」

P「これで仮死状態になればすぐに16才になれるぞ!!」

ありす「そ、そんなSFみたいな話が」

晶葉「私を誰だと思っている」

晶葉「晶葉ちゃんだぞ」

ありす「わけがわかりません」


P「ありすは俺のこと好きじゃないのか?」

ありす「いえ、その……す、好き……ですけれど」テレテレ

P「じゃあレッツゴーフューチャー」

ありす「でもこういうのって4年の間にお互いの絆を深めあって……」

P「ふぅ……いいか? ありす。お前は可愛いしあと4年もしたらきっとかなりの美人になるだろう……」

ありす「そんな……美人だなんて///」

P「だがな……俺は今のありすが良いんだよ!! 12才という未成熟な小さな肉体に背伸びした精神!! 時折見せる子供らしい笑顔!! そんなアンバランスさがいいんだよ!!! 」

ありす「」

P「16才のありす? きっと綺麗さ!! でも俺は12才のありすとチョメチョメしたいんだよォォ!!!」

ありす「チョメっ!?///」


P「というわけでありす、4年後に行こうすぐ行こうさぁ行こう。コールドスリープを使えば今の体のまま戸籍上は16才だ」

ありす「で、でも他の方のプロデュースとか」

晶葉「そこは助手の頭脳と体力を完璧にコピーしたアンドロイドを作ったから大丈夫だ」

偽P「どうも」

P「わおそっくり」

ありす「でも……」

P「ありす……」スッ

ありす「なんですか急に顔を近づけて!!」

P「愛してる」ボソッ

ありす「」トゥンク

ありす「し、仕方ありませんね! Pさんは未来でも私がついていないとダメみたいですから!!」

P「(チョロい)」

晶葉「(チョロい)」

ありす「けっして甘い言葉にときめいたからじゃないですからね! 子供っぽいPさんのわがままを聞いてあげるのも大人の対応というものですから!!」


P「というわけでマシーンに入った」

ありす「なんだか狭いです」

P「なんだかイチゴみたいな甘酸っぱい良い匂いがするよ」

ありす「もうっPさんったら/// 」

P「この匂いを4年も嗅いでいられるなんて幸せで頭がおかしくなっちゃいそうだ」

ありす「私達にとっては数秒ですからそんなことにはなりませんよ」ろんぱぁ

P「そうだな。ありすはかしこいなぁ」

ありす「えへへ/////」


晶葉「よーし甘ったるいから閉めるぞ。タイマーは丁度4年後にセットした。装置が作動したら時期に眠くなるだろう。体感では数秒で4年後だ」

P「おう、ありがとう晶葉! 式場の準備をして待っててくれ!!」

晶葉「それじゃあ4年後に会おう、助手よ」ポチ-

ブィィィィィィン

P「アリストチョメチョメ……」スヤァ

ありす「イチゴパスタ……」スヤァ


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P「はっ……起きた」

ありす「はっ……起きました」

P「ただうたた寝してたような感覚だけど……」ガチャ

ありす「本当にここは4年後なんですか?」ガバ

P「まぁ晶葉の開発だからなぁ。4年後だろ」

ありす「その絶対の信頼はどこから来るんですか……」

P「晶葉を誰だと思ってるんだ」

P「晶葉ちゃんだぞ」

ありす「それ流行ってるんですか」


ありす「しかしやけに静かですね」

P「確かに。そういやここ事務所じゃないな」

ありす「晶葉さんの研究室にでも移されたんじゃないですか?」

P「まぁこんなデカイ棺桶みたいなの4年も事務所に置いておいたらちひろさんブチ切れるな」

ありす「とりあえず外に出てみましょう」

P「え? チョメチョメしないの!?」

ありす「チョメチョメっていうのやめてください」



P「しかし4年後かぁ……みんなどうなってるかなぁ」

ありす「もしかしたら凄く変わってて気づかないかもしれませんね」

P「千佳や薫でさえ13才のJCだし、菜々さんが17才のJKだもんな」

ありす「そうですね。もうみんなPさんの事忘れてるかもしれません」

P「もしそうだったら俺は泣くぞ」

ありす「晶葉さんが作った偽Pさんの方が本物より優秀そうでしたし」

P「そうだったらありすのプロデュースに専念できるな」

ありす「とりあえず喜んでおいてあげます」

P「よっしまずは婚姻届貰いに行くぞ」

ありす「や、やっぱり本当に結婚しちゃうんですか!?」

P「だって待てないし」

ありす「Pさんと……結婚///」

P「最高のウエディングドレスを選ぼうな」

ありす「披露宴ではイチゴパスタを出しましょう!」

P「それは勘弁」


P「しかしこの部屋出口がなくないか?」

ありす「確かに……あっ、天井に扉が付いてますよ」

P「梯子もある。地下室か何かだろうか……よっと」ギィ

ありす「簡単に開きましたね。どうですか?」

P「」

ありす「Pさん? いったい何があったんですk……」

ありす「」


P・ありす「ここどこ」



P「え……何ここ建物という建物が崩壊してるんだけど」

ありす「こういうのをゴーストタウンって言うんでしたっけ」

P「もしかして4年の間に粗大ゴミとして捨てられた!?」

ありす「人の気配すらありませんね……」

P「もしかして寝ている間に戦力外通告!!?」

ありす「下手したら日本じゃない可能性すらありますよ、ここ……」

P「マジで……俺ちひろさんに貸した9万円まだ返してもらってないんだけど」

ありす「なんでそんな大金貸したんですか」

P「いや、自販機でジュース買うから9万円貸してくれって……」


ありす「とりあえず歩いてみましょう」

P「そうだな。晶葉がさがしに来てくれてるかもしれないし」

ありす「しかし本当に人気がありませんね……廃墟ばかりで映画のセットみたいです」

P「さすがに街を丸々作る映画もないだろうけどな。この建物の柱とかも全部本物だし」コンコン

ありす「やっぱり外国なんでしょうか。うーん、こんな時にこれが使えれば……」

P「ん? あれ、それって」

ありす「はい。いつも持ち歩いてるタブレットなんですが……さすがに電源が点きませんね」

P「機械じゃあコールドスリープできないだろうしなぁ」

ありす「持ったまま機械に入ってしまったのは軽率でした……はぁ、お気に入りだったのに」

P「まぁまた買えばいいさ。4年も経てば新機種がたくさん出てるよ」

ガシャン

ありす「!! 今何か音がしませんでしたか!?」

P「あぁ!! 晶葉かもしれない。行ってみるぞ!!」

ありす「はい!!」



P「……で、音のした方に向かってきたけどさ」

ありす「……はい」

P「……」

ありす「……」

P「なんだろうな、コレ」

ありす「なんかの映画で見たことある気がします」

P「あぁ、俺も見覚えある。なんだっけ」

ありす「確か車がロボットに変形する……」

P「あー……」

P・ありす「トランスフォーマー」


P「なぜか頭だけウサミンロボだけどな」


ありす「これ近づいても大丈夫なんでしょうか」

P「どうだろう」

巨大ウサミンロボ「ピー……ピー……」グオン

P「こっち向いたぞ」

巨大ウサミンロボ「生命反応ヲ感知」

P「ヤバい気がするな」

ありす「ヤバい気がしますね」

巨大ウサミンロボ「対象ヲ無力化シマス」

P「ヤバいな」

ありす「ヤバいですね」

巨大ウサミンロボ「戦闘モードニ移行__対象ノ無力化ヲ開始」ガショーン!! ガショーン!!

P「逃げろ!!」ダッ

ありす「言われなくても逃げますよ!!」ダッ


巨大ウサミンロボ「」ガショーン ガショーン

P「なにアレめっちゃ追って来るんだけど!!?」

ありす「ウサミンロボの頭付いてますし晶葉さんの新作じゃないんですか!?」

P「晶葉が戦闘兵器作っちゃったの!? 4年の間に何があったんだよ!!」

ありす「それか私たちの救出に来たとか!!」

P「さっき戦闘モードとか言ってたのに!!?」

ありす「わかりませんよ!! ちょっとPさん試しに捕まってみてください!」

P「やだよ!! 死んじゃうよ!!」

ありす「じゃあ囮になってくれたらあとでイチゴパスタ作ってあげます!!」

P「囮って言っちゃったよ!! しかも追い討ちまでかけるつもりだよ!!」



ありす「もうっ!! なんなんですか!! こんな夢やドッキリみたいな……」

P「あっそうだよ!! ドッキリだよドッキリ!! 久々の再会のためにみんなが用意したどっk」

巨大ウサミンロボ「排除シマス」チュイン

\チュドーン!!/

ありす「廃墟吹き飛んだんですけど……」

P「ホラハリボテダヨ、ハリボテ……」

ありす「さっき本物だって自分で言ったじゃないですか!!」

P「ヒィィィ! 迫ってきた!!」



ありす「きゃっ……」ガッ

P「ありす!! 大丈夫か!!」

ありす「足がもつれて……」

巨大ウサミンロボ「排除シマス」ガシャン ガシャン

ありす「やだ……来ないで……」

P「待ってろありす!!」

巨大ウサミンロボ「排除シマス__」キュイイイ……

P(クソッ……ここからじゃ間に合わ……)

ありす「P……さん……」

P「ありすーーー!!」

巨大ウサミンロボ「排除シマッ___」

ズガン!!

ありす「ッッ!!」


ありす「…………」

ありす「……あれ?」

巨大ウサミンロボ「排除__排除__hij」ガクン

P「なんだ!? 突然あのデカイのの腕が爆発したぞ!?」

ありす「!! Pさん後ろです!!」

P「あっあれは……」

ありす「まさか……」

P・ありす「(よく知ってる方の)ウサミンロボ!!!」

ウサミンロボ「ウサー!」


巨大ウサミンロボ「新タナ敵勢反応ヲ感知__排除シマス」ガショーン!!

ウサミンロボ「ウサー!!」ズガガガガガ!!

P「ウサミンロボが応戦してる……」

ありす「どうやら私たちの味方みたい……ですね」

P「ありす! ウサミンロボが食い止めてくれてるうちに逃げるぞ!!」

ありす「でもどこに……」

P「とりあえずコールドスリープマシンがあるあの部屋だ!!」

ありす「わ、わかりました!!」

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P「はぁ……はぁ……なんとか逃げ切れたな」

ありす「ふぅ……そう、ですね……」

P「しかしアレはいったいなんだったんだ……この国では戦争でもやってるのか?」

ありす「それよりも巨大ロボがあることが驚きですよ。技術革命でもあったんですか……」

P「ウサミンロボが助けてくれなかったらお陀仏だったな……」

ありす「あの子大丈夫でしょうか……あんなに大きさが違うのに……」

P「大丈夫だと思いたいけど……」


ガンガンガン!!

ありす「な、なんでしょう……」

P「外から誰かが扉を叩いてるな……」

ありす「もしかしたらさっきの巨大な……?」

P「……ちょっと見てくる」

ありす「Pさん!? そんなの危険です!!」

P「でももしかしたら助けかもしれないし」

ありす「そんな……」

P「ありす、部屋の隅に隠れてろ」

ありす「……」コク


ガンガンガン!!

P「お願いだから味方であってくれよ……」

P「…………」

P「南無三!!」ガチャ

???「ピー___ガガガ」

P「ッ!!」ビクッ


???「___ウ」

P「……う?」

ウサミンロボ「ウサー」

P「ウサミンロボ!!」


ありす「良かった。扉の上にいたのはウサミンロボだったんですね」

P「ああ。巨大ロボの方じゃなくて良かったよ」

ありす「でも……この子怪我してます」

P「怪我というか故障だな。おそらくさっきの戦闘でやられたんだろう」

ありす「なんでこんなことに……」

P「こいつは確実に晶葉の物だろうし、何か知ってるはずなんだが……」


P「お前何か知らないか?」

ウサミンロボ「ウサー! ウササ、ウサー!」ユビサシ

ありす「え? わ、わたしですか?」

ウサミンロボ「ウササ、ウサー」

ありす「え、違う? えっと……」

P「もしかして、そのタブレットを渡して欲しいんじゃないか?」

ありす「これですか? でも壊れてて……」スッ

ウサミンロボ「ウササササササ___ウサーーーー!!」



ウサミンロボ『ピー___ザッ、ザザザ』

『……し……もし、……こえて……か?』

ありす「あっ、ウサミンロボのモニターに何か流れ始めましたよ!」

『……こ……より…………緊急……メ………ジを』

P「おぉ! この声ってまさか」

ありす「まさか」

『……たしだ…………私だ、池袋晶葉だ』

P・ありす「晶葉ちゃん!!」



晶葉『この映像が見られているということは無事にロボと合流できているはずだ』

晶葉『念のために言っておくが、これは録画された映像だ』

晶葉『なので君達の質問に答えたりはできない』

晶葉『すまないとは思うが、想定されうる質問に対する回答は用意しているつもりだから安心したまえ』

晶葉『また、この映像は何度でも見直せるようにはしてあるが、ロボの状態によってはあまり多くは再生できないかもしれない』

晶葉『それをふまえて慎重に聞いてほしい』

P『なんだか晶葉の雰囲気が少し変わってるな」

ありす『そうですね、大人びて……数年後の姿、ということでしょうか」



晶葉『突然奇妙な事に巻き込んですまない。かなり混乱していることだろう』

晶葉『時間もないので核心から言おう。君達がいる場所』

晶葉『君達が目覚めた場所だが、残念ながら4年後の事務所ではない』

晶葉『君達が今いる場所。そこは起点となる時間から、つまり君達が眠り始めてから』



晶葉『4000年後の東京だ』



P・ありす「ストップ」

ウサミンロボ「ウサ?」


P「ごめん俺耳悪いのかもしれない。妖精レンコンって言った?」

ありす「私もなんだか聞こえが悪いです。温泉援護って言いました?」

ウサミンロボ「ウササ」キュルキュル

晶葉『4000年後の東京だ』

晶葉『4000年後の東京』

晶葉『4000年後の』

晶葉『4000年後』

晶葉『よよヨよヨよ4000年後の東京だ』

P「わかったよウサミンロボ。聞き間違えじゃないんだな」


P「どうしよう、ありすが4012才のロリババアになっちゃったよ」

ありす「それを言うならPさんは中年ジジイですよ」

P「なにそれ普通に嫌だ」

P「というかまだ中年じゃない」

ありす「4000年後というのはにわかには信じがたいですね……」

P「中年じゃない」

ありす「とりあえず続きを見てみましょう」

P「聞いて」

ウサミンロボ「ウサー」


晶葉『―――の東京だ。おそらく理解しきれないと思うから事の発端から話そう』

晶葉『君達が眠り始めてからしばらくの間は何事もなかった。事務所はいつものアイドル事務所だった』

晶葉『私が作った助手2号も本当の助手に負けず劣らずの仕事ぶりだったからな』

晶葉『しかし私は大きな間違いをしてしまっていた。助手2号は優秀ではあったが、アンドロイドであって、助手ではなかった』

晶葉『事の発端は2年後……そう君達が眠りについてから2年後だった』


晶葉『助手2号は悪魔にそそのかされた』



P「なんだろうこの悪魔の正体分かる気がする」

ありす「どうしてでしょう。私もです」



晶葉『千川は特に深い意図もなかったのだろう』

晶葉『事務所は順調に大きくなっていたからな。もっと大きくしたかったのかもしれん』

晶葉『あれはあれで金が関わると少々盲目になるところがあるからな』

晶葉『千川は助手2号に損得、利益というものを教えたんだ』

晶葉『相手が人間だったならば特に問題はなかっただろう』

晶葉『だが助手2号はアンドロイド。善悪の判断ができなかった』

晶葉『私が助手2号に積んだのは助手の仕事を模倣することだけだったからな』

晶葉『助手の穴を4年埋めてくれるだけでよかった』

晶葉『しかし助手2号は自分で考えることを始めてしまった。利益を出すということを』


晶葉『助手2号は段々と変わっていった。私たちが疑問を感じ始めた頃には完全に自分で考えて行動していたよ』

晶葉『利益を出すためだけのプロデュースだった。相手の事も、アイドルのことも考えないな』

晶葉『抗議するアイドルはたくさんいた。しかし助手2号は止まらなかった』

晶葉『ある日千川が姿を消した。連絡もなく突然にだ』

晶葉『本格的におかしいと思った私は数人の仲間と共に調査を開始した』

晶葉『しばらくして見つかった千川はそれはもうボロボロだったよ』

晶葉『千川は全てを教えてくれた。それで私達はようやく事の重大さを理解した』



晶葉『おそらく助手2号は千川が自分の利益の邪魔になると考えたのだろう』

晶葉『そして排除しようとした』

晶葉『私達は大急ぎで対策を練った』

晶葉『しかし出だしが遅すぎた。行動を始められたのは3年後に入ってからだった』

晶葉『その頃には助手2号の事務所、芸能界両方の制圧はもう半分以上が終わってしまっていた』

晶葉『助手2号から離反したアイドルや抵抗したアイドルはことごとく消された』

晶葉『恐怖に怯えたアイドルは利用された』

晶葉『それはもう地獄のような日々だったよ』



P「え? なんだかとんでもない事になってない?」

ありす「とんでもないどころじゃないです。排除とか消すとか単語が出てきましたよ」

P「でも偽Pくんって昌葉の作ったロボでしょ? 言うなればこのウサミンロボの親戚みたいなもんでしょ!?」バンバン

ウサミンロボ「ウササー!」グラグラ


晶葉『たかがアンドロイド1体に何故だと思っていることだろう』

晶葉『しかし助手2号は助手の能力を全て引き継いでいるんだ』

晶葉『毎日200人近いアイドルをプロデュースする身体能力に、その全てを有名なアイドルに育て上げる頭脳……』

晶葉『それが全て無差別に利益を奪うことに対して動く……まさに化物だ。並大抵の人間じゃ敵わないさ』

晶葉『私を含む技術者側のアイドルは地下に籠って何度も作戦を練った』

晶葉『実戦に出られるアイドル達は助手2号の機能を停止するために動いた』

晶葉『だが全てが失敗に終わった。ほとんどが助手2号に裏をかかれ、結局相手の戦力を上げてしまうという裏目に出てしまった』


P「」

ありす「いや、プロデューサーってなんなんですか。というかPさんが何者なんですか」

P「俺は普通の人間だよ!! まぁちょっとしたゴリラぐらいなら倒せるけど」

ありす「ゴリラにちょっとしたもなにもないと思いますけど……」

P「俺は普通の人間だよ!? まぁちょっとありすとチョメチョメしたいけど」

ありす「それは病気です」ロンパ


晶葉『アイドルの反乱をものともせず、アイドルを駒として使ったプロデュースは加速していった』

晶葉『アイドルを徹底的に物として扱い、邪魔になるものはアイドルであろうと何であろうと消す』

晶葉『そして何人ものトップアイドルが育て上げられた。ファンの前でしか笑顔になれないトップアイドルがな』

晶葉『助手2号は芸能界の全てを支配した。他の事務所のことなど考えない、全ての独占だ』

晶葉『日本だけでは物足らず、世界中をも虜にした』

晶葉『助手2号がプロデュースしたアイドルを知らない者は世界中どこにもいなくなった』

晶葉『多くの人が言ったよ。これは世界で一番幸せな世界征服だと』


晶葉『ここで終わっていれば良かったのだが……そこまで行っても助手2号は止まらなかった』

晶葉『助手2号に満足感などない。利益を得る、それが手段であって目的なんだ』

晶葉『アレは地球上の利益全てを手中に収めようとしたんだ』

晶葉『助手2号とそのアイドルは世界中をツアーと称して回った。その都度種を蒔いていった』

晶葉『崩壊の種を』

晶葉『君達が眠りについてから3年と数ヵ月。丁度バレンタインの日だったな』

晶葉『世界各地で同時に、その種が芽吹いた』

晶葉『詳しく話す時間はないが……恐ろしかったよ。世界中が大混乱になった』

晶葉『全ての交通機関は麻痺、警察も無力化、どの国の政府も行動ができなくなった』

晶葉『各地で多くの犠牲者も出た」

晶葉『私達はその始まりの日を《血のバレンタイン》と呼んでいる』



晶葉『世界を混沌に陥れたのがたった一つの芸能事務所、もっと言えばただ一体のプロデューサーであるなどと誰が疑うだろうか』

晶葉『人類全てが疑心暗鬼に陥った。隣人を疑い、恐怖した』

晶葉『それは国同士も同じだった。気付けば疑心は敵意になり、敵意は拳になり、拳は兵器に変わった』

晶葉『地球上ほぼ全域で争いが起こり、すぐにそれは大きくなり戦争になった』

晶葉『第三次大戦の始まりだった』



P「……開戦したな」

ありす「……開戦しましたね」

P「なぁ、俺の職業ってなんだっけ」

ありす「……プロデューサー」

P「なぁ、ありすの職業ってなんだっけ」

ありす「……アイドル」

P「…………」

ありす「…………」

P「開戦したな」

ありす「開戦しましたね」



晶葉『全ての国が平等に傷を負っていった。軍が歩き、市民が泣いた』

晶葉『貧困に見舞われた多くの市民が平和を、平和の象徴を求めた』

晶葉『助手2号はそこで平和の象徴であるアイドルを売り始めたんだ』

晶葉『それはそれは巧妙だったよ。市民達に夢を売り付け、弱った国から少しずつ資源や利益を奪う』

晶葉『世界がそれを侵略だと認識する頃には、助手2号は誰にも手がつけられなくなっていた』

晶葉『正体を隠す必要のなくなった助手2号は実力行使に出始めた』

晶葉『私達の技術力を応用して多くの兵器を作り、金を資源を人材を、全てを奪い始めた』

晶葉『現在では人類対助手2号という有様になっているよ』

晶葉『と言っても僅かに残った抵抗軍が悪あがきをしているような状況だがね』


ドゴァァァ

『晶葉殿!! ここもこれ以上は持たないであります!!』

『にゃはぁマズいねぇ……晶葉ちゃんまだ終わんない?』

晶葉『すまんがもう少しだけ待ってくれ』

『押忍!! それでは私が時間を稼いで来ます!!』

『よーしお姉さんも参戦しちゃうぞ!! 手癖の悪い子はシメちゃう♪』

晶葉『助かるよ……頼んだぞ』



晶葉『……聞いてわかる通りこっちも切羽詰まっていてな』

晶葉『助手2号と人類が敵対して以降、今日まで各地を転々としながらかつての仲間と共に戦闘を繰り返している』

晶葉『君達二人は早々に隠させてもらった。助手2号でさえ知らない極秘のシェルターだ』

晶葉『この映像も本当はそっちに直に送りたかったんだがな。探知される恐れがあるのでこっちのロボに保存させてもらった』

晶葉『実を言うとありす、君のタブレットに発信器を仕込ませてもらっていたんだ』

晶葉『勿論コールドスリープに耐えられる物だ。君達が目覚めると同時に起動するようになっている』

晶葉『本当は4年経って目覚めた時、もしも問題があった時のために仕掛けたんだがな』



P「そんなのまで用意していたのか……さすが晶葉ちゃん」

ありす「そう言えば少し前に晶葉さんにタブレットを貸しました」

ありす「昌葉さんパソコン持ってるのに何故かと思ってたんですけど……」

P「どうやら改造の為だったらしいな」


晶葉『このウサミンロボ、識別番号US3-Nはタブレットの発信器の起動と同時に電源が入り、君達のシェルターに迎えにいくようになっている』

晶葉『耐久的には5000年はもつ計算だ……ただ実際にテストができたわけではないからな。もしかしたら起動に時間がかかり向かうのが遅れるかもしれん』

晶葉『まぁこの映像が見られているということは無事に合流できたと思っていいはずだがな』

晶葉『よし、ここまでが過去から現在までの情報だ。一気に理解しろとは言わない、ゆっくりでいいから理解してくれ』

P「……ロボ、一度止めてくれ」

US3-N「ウサー」



P「……ということだが」

ありす「…………はい」

P「…………」

ありす「…………」

P「『12才のアイドルとチョメチョメしようとしたら未来がディストピアになっていた。』」

ありす「過去、ですよ。Pさん」

P「そうだったな……」

ありす「…………」

P「やはりロリコンは罪なのか」

ありす「今はそれ関係ないと思います」

P「はい」

ありす「…………」

P「デデンデンデデン!! デデンデn」

ありす「黙ってください」

P「ハイ」


ありす「Pさん、ちょっと私の事を名字で読んでみてください」

P「おい橘」

ありす「心が痛い」

P「ありす、ちょっと俺の事嫌いだって言ってみてくれ」

ありす「Pさんなんて大嫌いです」

P「心が痛い」

P・ありす「……夢じゃない」

ありす「とても心が痛いです。夢なんかじゃありません」

P「俺もありすに嫌われて吐きそう」

ありす「別に嫌ってませんよ」

P「え? じゃあチョメチョメしたい?」

ありす「……」ゲシ!!

P「蹴られた足が痛い。やっぱり夢じゃない」


ありす「まぁあのゴーストタウン見ちゃいましたしね……」

P「大きくなった晶葉も見ちゃったしな。流石に特殊メイクでもあれは難しいだろう」

ありす「でもなんで私達を4000年後まで眠らせておいたんでしょう?」

P「そうだな……さっさと叩き起こして戦力を増やした方が良かったじゃないか」

ありす「続きを見てみましょう。ウサミンロボさん、お願いします」

US3-N「ウサーサ!」


晶葉『さて、ここからは先の話をしよう。私達と君達二人の」

晶葉『二人とも疑問に思っているであろう『何故4000年後に送られたのか』という疑問の答えも話す」

晶葉『まずはこちら側の話だが……』

晶葉『………………』

晶葉『私達は3日後、最後の作戦を遂行するつもりだ」

P「最後の……?」

ありす「どういうことでしょう……」



晶葉『人類対助手2号などとカッコいい事を言ったものの、実を言うとほぼ敗北しているようなものなんだ』

晶葉『今は残った戦力を消耗しながら逃げ回っているだけだ』

晶葉『これ以上戦っていてもジリ貧は目に見えている』

晶葉『そこで私達は全ての戦力を次の作戦に注ぎ込む事にしたんだ』

昌葉「いわゆる総力戦、最終兵器を使った一か八かの大勝負だ」

晶葉『……私達はこの作戦に全てをかける。全力を持って私達の世界を取り戻す気だ」

晶葉『この作戦が成功した場合、この動画は削除して君達を起こすつもりだ」

晶葉『この動画が誰にも見られないで終われることが最良だ』

晶葉『ただ、もし万が一失敗した場合、それは人類の敗北を意味している』

晶葉『考えたくはないがね。ただもしそうなった時の最後の切り札が……君達だ』


晶葉『本当は助手2号の暴走が発覚した時点で起こそうかとも考えたんだが……』

晶葉『その時点ですでに助手2号は力を付け過ぎていた。助手でも勝てるか分からない程にな』

晶葉『それに私達の失敗した作戦の1つのせいで助手2号は恐ろしい能力を持ってしまった」

晶葉『アイドルの力を使う能力だ』

晶葉『その能力のせいで我々陣営のアイドルはどんどんと無力化されていった』

晶葉『だから一人でもアイドルを温存しておきたかったんだ』

晶葉『それと……こんな世界を君達に見せたくなかった』

晶葉『これは私の逃げだな。存分に罵ってくれ』

晶葉『……以上が君達を起こさなかった理由だ』


晶葉『君達には2つの選択肢を用意している』

晶葉『1つはもう一度コールドスリープマシンに入ることだ』

晶葉『機械がどれだけもつかはわからんが、あと千年ならいけるはずだ』

晶葉『これは助手2号が自然と朽ち果てるのを待つ手だ』

晶葉『ただ助手2号はアンドロイドだ。自然に死ぬ事はない』

晶葉『それに私達の技術を利用して、経年劣化は0に等しい』

晶葉『そして無尽蔵とも言える資源が助手2号の手にあるということも忘れないでくれ』

晶葉『もう1つの選択肢、それは君達の手で助手2号を破壊するという手だ』

晶葉『私としてはこちらを選んで欲しい』

晶葉『助手の手で、助手2号を』

晶葉『現代では難しいが、4000年後のその時代で、そして助手の力なら可能かもしれない』


晶葉『その君達を4000年後まで眠らせておいた理由だが、まずはそれを彼女に話してもらおう』

???『あら、私の番? どうもお久しぶり。と言ってもアナタ達からしたらほんの数時間の感覚かしら』

???『でも私にとっては4年ぶりぐらいだから、やっぱり久しぶりと言わせてもらうわ』


ありす「な、なんですかこのスーパークールビューティーみたいな女性は!」

P「めちゃくちゃ色っぽいけどもしかして……」


???『もちろん私のことを忘れたなんて事ないわよね。私よ私』

マキノ『八神マキノよ』


ありす「マキノさん!?」

P「22才のマキノか!!」


P「うわぁなんだこの溢れ出る色気……服着てるのにめっちゃエロい」

ありす「ふんっ」ゲシィ!!

P「痛ぁ!! 何すんだありす!?」

ありす「ほら静かにしてください。マキノさんが喋ってますよ」ツーン

マキノ『ここからは私が4000年後を選んだ理由について説明させてもらうわ』

マキノ『まず私は浜口あやめや佐久間まゆ等数人のアイドルと協力して助手2号が暴走し始めてからずっとヤツの情報を集めてきたの』


マキノ『晶葉が持っている情報に私達が集めた情報』

マキノ『それらと泉達プログラム班の協力もあって、ある程度助手2号の動きをシミュレーションできるようになったのよ』

マキノ『そこでヤツの周りが一番手薄になるのを計算したところ、それが4000年後なの』

マキノ『ヤツは資源を集める事にしか興味がない。資源を作る事に対してはあまり気が向いてないのよ』

マキノ『だからこの先ヤツが行動していけば絶対に文明は崩壊する。文明が崩壊すればヤツの兵器を作れる人がいなくなる』

マキノ『ヤツ自身も兵器を作れるけど、それには限界がある。そして今ある兵器の耐久年数などを計算した結果』

マキノ『ヤツの兵力が一番手薄になるのが4000年後ってわけ』


マキノ『……』

マキノ『それと……これは晶葉には言えないんだけど、3日後の総力戦』

マキノ『あれも泉と一緒にシミュレーションしてみたの』

マキノ『成功率は多めに見積もっても10%だった』

マキノ『もちろん私は止めるつもりはないし、士気を下げるようなことは言わない』

マキノ『だけど1つだけ言わせて』

マキノ『もしも……もしものことがあったら、お願い』

マキノ『私達を助けてとは言わない。ありすちゃんだけでもいいから、助けてあげて』

マキノ『……私からは以上よ。もしまた会えるなら、諜報活動を手伝ってね。フフッ』


晶葉『ん? マキノの話は終わったか』

晶葉『これでどうしてその時代なのかは理解してもらえたと思う』

晶葉『ここまでで私達の情報は全てだ』

晶葉『全て話した上でもう一度言わせてくれ』




晶葉『助手よ、助手2号を倒してくれ』



晶葉『元々助手2号を作ったのは私だ。全ての責任は私にある』

晶葉『その責任を取る為にも3日後の作戦に全力で挑む』

晶葉『絶対に成功させるつもりだ』

晶葉『……たとえどんなに成功率が低くてもな』

晶葉『全てを、命をかけて成功させる』

晶葉『ただ……それでも無理だったら、私にはもう何もできない』

晶葉『都合のいい事を言っているのはわかっている……』

晶葉『でも、言わせてくれ』

晶葉『私達を、アイドルを助けてくれ」


晶葉『世界を……救ってくれ、プロデューサー」



晶葉『…………』

晶葉『すぐに結論を出せとは言わない』

晶葉『そのシェルターにはそれなりの量の備蓄がある』

晶葉『君達を冷凍睡眠させた方法と同じ原理で保存してあるから期限の心配はない』

晶葉『しばらくはそこで暮らせるだろう』

晶葉『ゆっくりと考えてくれ』

晶葉『最後になるが、もし決意が固まったらロボに話しかけてくれ』

晶葉『私達からの餞別を贈ろう』



ドガァァァァ!!!

『おい晶葉! もう限界だ!! ここを離れるぞ!!』

晶葉『わかった。……それでは最後の挨拶になるな』

晶葉『科学者の私らしくもない挨拶だが、もはや私を科学者だと呼ぶ者もいないだろうからな』

晶葉『それじゃあ、助手よ。君達にまた会える事を祈っているよ』

US3-N『……ザ……ザザ……ザザ――――』

US3-N「……ウサ」

書き溜め尽きた
続きは明日以降で

遅くなりました
投下


P(その日、俺達が4000年後の世界で目覚めたその日)

P(俺達にとっての世界は崩壊した)

P(いつも通りふざけようと思ったけれど)

P(いつも通り笑ってしまおうと思ったけれど)

P(そのいつもがどこか遠くに感じられて)

P(4000年の寝坊は取り返しがつかなくて)

P(砂嵐を映し続けるウサミンロボの前で俺達は呆然としていた)



ありす「……その、Pさん。私ちょっと疲れちゃいました」

ありす「少し休憩しますね」

P(先に言葉を取り戻したのはありすだった)

P(自分でも聞き取れないような俺の返事を聞くと)

P(ありすはそのまま部屋の隅で膝を抱えてしまった)

P(俺は近くにあったコールドスリープマシンに背中を預けて、今の映像のことを振り返った)


P(正直、感覚がついて行っていない)

P(映像が砂嵐に変わる最後の瞬間までどこかで期待していた)

P(なんだかんだで晶葉が秘密兵器でなんとかしてくれるんじゃないかと)

P(実はちひろさんが黒幕でうまいことオチをつけてくれるんじゃないかと)

P(事務所の誰かがひょいと現れるんじゃないかと)

P(でも晶葉の最後の顔が全てを語っていた)

P(あれは俺達がいた、あの4000年前の俺達がいた事務所では絶対にすることのない顔だった)



P(きっと俺達が眠っている間に想像もできないようなものを見てきたんだろう)

P(たった数年で人はあんなに変わるのだろうか)

P(少女はあんなにもつらい顔をするようになってしまうのだろうか)

P(キラキラとしたアイドルの笑顔に囲まれていた俺にとって、それは何よりも辛かった)

P(多分晶葉は分かっていたんだ。俺がみんなのそんな顔に耐えられないことを)

P(だから俺達を眠らせていたんだろう)

P(それが選択出来る地獄の中で、一番幸せな地獄だったから)


P(外での出来事を思い出す)

P(窓ガラスが散乱した地面)

P(柱しか残っていないビル)

P(車の残骸にまとわりつく蔦)

P(誰も居ない街)

P(襲ってくるロボット)

P(そして、ありすの怯えた顔)


P「4年、待っとけば良かったかなぁ……」

P(呟いてから、聞かれてしまったかと思って振り向く)

P(ありすはいつのまにか静かに寝息を立てていた)

P(立ち上がって並んだ棚の中を覗いていく)

P(端の方に毛布や服が置かれていたので1つ抱えて包装を取った)

P(外はもう夜だろうか)

P(ありすを毛布で包み、その隣に座る)


P「おやすみ、ありす」


P(頭の中をグルグルと回る思考を全部シャットアウトして目を瞑る)

P(静かに眠りに落ちていく最後の瞬間まで、ウサミンロボは砂嵐を流し続けていた)


――――――――――――
―――――――――
――――――


ありす「…………」

ありす「……ねぇ、晶葉さん」

晶葉「なんだ? ありす」

ありす「これ、大丈夫なんですか」

P「んんぅぅぅん…………ンんぅぅぅゥゥゥ……」zzZ

ありす「めちゃくちゃうなされてるんですけれど」

晶葉「まぁそういう機械だからな、これは。それにしても寝言が凄いな」

P「んぎぃィィィィ……!! …………んぐぅぅぅゥゥゥ!!」zzZ

ありす「いや、これ寝言のレベルじゃないですよ」


晶葉「確かに、ちょっとうなされ過ぎか?」

ありす「そろそろ起こしてあげましょうよ」

晶葉「なんだ、ありすは意外とまんざらでもなかったのか。助手とチョメチョメ」

ありす「チョ、チョメチョメって言うのやめてください!!///」

晶葉「まぁ、もう少し寝かせておいてやろう。このコールドスリープマシン改め『ナイトメアスリープマシン』でな」

ありす「確か、強制的に悪夢を見させる機械でしたっけ?」

晶葉「あぁ。本当に冷凍睡眠装置を作っても良かったのだが……」


晶葉「最近の助手はちょっと目に余るからな」

晶葉「私の発明を女子小学生とイチャコラするために使われるのは癪だ」

晶葉「少しお灸を据えてやらんとな。まぁなんの疑いもなく使われたのは私としても驚きだが……」

ありす「一点の疑問も抱いてませんでしたね。ノリノリでした」

晶葉「我が助手ながら嘆かわしい」

晶葉「おいロボよ、不快砂嵐音波を少し上げるんだ」

ウサミンロボ「ウサ!」 ザザ……ザザザ―――

P「んうぅぅゥゥ……ありすぅゥゥゥゥ……」zzzZZ

ありす「はぁ……。両思いだったことは嬉しいですけど私にも色々と準備があります」

ありす「4年後までに立派な女性になりますから、それまでちゃんと待っててくださいね」

晶葉「だそうだ。それじゃあ助手よ、良い夢を見るんだぞ」



P「んんんぅぅぅ……助けてアキえも~ん……うぅぅ……」zzzZZZ



おわり



P「ってドラえもんオチかよ!!!」ガバッ


P「…………」

P「…………あれ?」

ありす「あ、Pさんおはようございます。起こしてしまいましたか?」

P「い、いや大丈夫だ。おはよう……」

P「なんだか頭がボーっとする…………ここはどこだ?」

ありす「ッ…………!!」

P「あっ……」

P(しまった)

P(言ってしまってからようやく昨日の出来事がフラッシュバックする)

P(寝起きからとんでもない地雷を踏み抜いてしまったァ!!)

P「…………」

ありす「…………」



P(沈黙がツラい…………)

ありす「…………」

P「ず、随分と早起きだけど何やってたんだ?」

ありす「え、あ、その……どんな物が備蓄されてるのか確認していたんですっ」

P「そ、そうかぁ! ありすは偉いな!!」

ありす「あ、ありがとうございます! P、さんはうなされてたみたいだけれど大丈夫ですかっ」

P「いや!! ちょっと夢を見ていただけだから大丈夫だよっ!」

ありす「夢、ですか!?」

P「あぁ!! ちょっと素敵な……悪夢をな!!」

ありす「素敵な、悪夢…………?」

P「あぁ! それはもう素敵な……素敵な…………」

ありす「…………」

P「…………」

ありす「…………」


P「…………そ、その!!」グゥゥゥゥゥ


P「」

ありす「…………」

P「あ、いやこれは生理的反応というか別にこんな状況で飯が食いたいとか思ってるわけじゃないというか……!!」アタフタ

ありす「……ふふっ、とりあえずご飯にしましょうか」

P「……そうだな」


P「…………」モグモグ

ありす「…………」モグモグ

P「…………」モグモグ

ありす「…………」モグモグ

P「あ、ありす福神漬け取って」

ありす「はい、どうぞ」

P「ありがと」

P「…………」モグモグ

ありす「…………」モグモグ




P「カレー美味いな」モグモグ

ありす「カレー美味しいですね」モグモグ

P「最近は冷凍食品も馬鹿にできないな」

ありす「冷凍食品というか冷凍睡眠食品ですけどね」

P「カレーは寝かせるほど美味いって言うしな」

ありす「さすがに4000年寝かしたカレーを食べたのは私達が初めてでしょうね」

P「……」モグモグ

ありす「……」モグモグ

P「カレー美味いな」モグモグ

ありす「カレー美味しいですね」モグモグ



P・ありす「ごちそうさまでした」

P「ふぃー。食った食った」

ありす「ふぅ。人間満腹になると落ち着くものですね」

P「なんだ年寄りくさいこと言うなぁ」

ありす「4012才ですから」

P「そうだった。意外とロリババア属性も悪くないかもなー」

ありす「これからのプロデュースの役に立つといいですね、中年ジジイプロデューサー」

P「まだ中年じゃない」

ありす「Pさんぶっちぎりでギネス更新しちゃいますね」

P「中年じゃない」

ありす「認定してくれる人がいないのが惜しいですねぇ」

P「聞いて」


US3-N「ウササ、ウササー」

P「お、片付けてくれるのか? 気が利くな」

ありす「ありがとうございます。ロボさんは燃料補給とかしなくて大丈夫なんですか?」

US3-N「ウササーサ、ウサササ!!」

ありす「あー、すみません何を言っているのか……」

P「ほうほう、なるほどな」

US3-N「ウサ! ウサササ!!」

P「はっはっは! そいつは傑作だ」

ありす「え!? Pさんこの子の言ってること分かるんですか!?」

P「いや全く」

ありす「ふん」ゲシ

P「痛い」


ありす「しかし言っていることがわからないのは不便ですね」

P「んー、モニターに言葉を映したりはできないのか?」

US3-N「ウサ……? ウササウサ!!」

P「おお! なんだか分からないがやる気になってるぞ」

ありす「試してみる、って感じでしょうか?」

US3-N「ウサ……ウササササ……」

US3-N「ウサササササ…………」

US3-N「ウサーーー!!」

P「……」ゴクリ

ありす「……」ゴクリ




US3-N『ヤッレま→見ぇτゑ→? (๑˃̵ᴗ˂̵)و 』

P・ありす「まさかのギャル語!!」


US3-N『ヂつヮーこ`⊂は〃をはTょすきσぅも⊃レヽτT=ωT=〃け`⊂〃』

US3-N『きσぅσは〃`⊂ゑτ〃こゎ±れちゃッτ→』

US3-N『マヂチョベリバ ٩(๑`^´๑)۶』


P「凄い……チョベリバしかわからん」

ありす「チョベリバって私達の時代でも死語じゃないですか……」

P「若者代表ありす!! 翻訳してくれ!!」

ありす「無理ですよ!! こんなの唯さんでもないと読めません!」

P「だよな」

ありす「すみませんロボさん、もうちょっと読みやすくできませんか?」

US3-N『ウーン。。。。やτみゑ!! ╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !』

US3-N「ウササーーー!!」


US3-N『こんな感じでどうウサ?』

P「おお!! 読めるぞ!!」

ありす「そんな感じでお願いしますね」

US3-N『わかったウサ』

US3-N『本当は言葉を話す機能も付いてたんでウサが……』

US3-N『昨日の戦闘で言語サーバをやられてしまい、うまく話せないウサ』

P「そうだったのか……」

ありす「ごめんなさい……私のせいで」

US3-N『別にいいウサ。目覚めたアナタ達を守るのもUS3-Nの任務ウサ!!』

US3-N『でも会話機能を披露できないのは残念ウサ。本当は各国の言語を喋って、コミュニケーションも抜群、120通りにわたる萌シチュエーションやちょっとエッチなシチュエーションにも対応した豪華CVのセリフが搭載されていたウサ!!』

ありす「後半の機能は必要あるんですか……」

P「ちなみにその豪華CVって誰なんだ? やっぱ菜々さん?」

US3-N『いや楓さんウサ』

P「何やってんだ25歳児」


US3-N『ちなみにUS3-Nは太陽電池など自然のエネルギーで動くウサ。だから充電の心配はないウサ!』

ありす「そうだったんですね。それなら安心です」

P「見た目は俺らの知ってるウサミンロボなのにハイテクなんだな」

US3-N『博士が作ったロボの中でも最新型ウサ!! そんじょそこらのロボには負けないウサ!!』

ありす「ふふ、頼りになりますね」ナデナデ

US3-N「ウサ!」ナデラレナデラレ


P「さて、飯も食ったしどうするか」

ありす「そうですね……さっき物置を探してみましたけど娯楽の類いの物はあまりありませんでしたし……」

P「そうだなぁ……」

P「んー、あのさ。ちょっと外に出てみないか?」

ありす「え、上にですか!?」

P「あぁ。ここ地下だから日の光も入らないし息がつまるじゃん?」

ありす「昨日起こったことをもう忘れたんですか……ウサミンロボさんが来てくれなかったら死んでたかもしれないんですよ?」

P「やっぱ危ないか……」

US3-N「ウサ!」

US3-N『それについては大丈夫ウサよ!!』

ありす「え?」


US3-N『昨日遭遇したのは助手2号の指揮下から外れた野良ロボウサ』

US3-N『命令がインプットされたままだったから行動を起こしたウサけど他のロボとの関わりはないウサ』

US3-N『あのロボは遠くに移動するよう誘導したウサし、この近辺に別のロボの反応はなかったウサ』

P「だってさ」

ありす「本当に危険はないんですか……?」

US3-N『US3-Nのレーダーは最新式ウサ! 太鼓判ウサ!!』

P「ほら、ロボもこう言ってるし。少し出てみようぜ」

ありす「まぁロボさんが言うなら信用しますけど……」

P「そうと決まったら早速出発だな!!」


ガチャッ

P「前方よし! 後方よし!」

P「よっと」

P「おー、良い天気だ! ほら、ありすも」

ありす「はい。分かってますから引っ張らないでください! ……よいしょっと」

P「どうだ! 良い天気だろ!?」

ありす「なんでPさんが自慢気なんですか……でも確かに良い天気」

P「雲1つない晴天だなー。太陽が眩しい」

ありす「丁度お昼頃ですかね」

P「多分それくらいだろうなー。ありす、少し歩いてみよう」

ありす「はい」


P「道がデコボコしてるから気をつけろよ?」

ありす「それくらいわかってます。あんまり子供扱いしないでください」

P「そうだな。ありすは4012才だk」

ありす「それはもういいです」

P「はい」

ありす「ウサミンロボさんも来ればよかったのに」

P「ああ見えてあのロボ結構重いからなー。持ち上げるのが大変なんだ」

ありす「そうなんですか。残念です」

P「しっかし……、本当に人っ子ひとりいないな」

ありす「そうですね。こんな大きな道路の真ん中を歩くなんて初めてです」


P「よく見るとビルの看板とかに書いてある文字は日本語だな」

ありす「ほとんどがかすれて見えないですけれどね。外国の遺跡だと言われたら信じてしまいそうです」

P「あの建物は……おそらくコンビニか。なんだか世界遺産みたいな雰囲気が漂ってるぞ」

ありす「あれは自転車でしょうか。なんだか近代アートみたいです」

P「変な感じだ。全部見たことある物なのに、見たことがない物みたいだ」

ありす「あれだけ騒がしかった東京も4000年でこうなってしまうんですね……」

P「そうだなぁ。信じられないよ」


P「……ふぅ、結構歩いたな。ありすは大丈夫か?」

ありす「少し疲れちゃいました」

P「俺もだ。ちょっと休憩したいけど……」

ありす「あ、Pさんあれ公園じゃないですか?」

P「ん? ……あぁホントだ。たぶんあれは公園だな」

ありす「寄っていきますか?」

P「そうだな。少し休憩しよう」


P「着いた着いた。……よっこらしょ、っと」ドサッ

ありす「オジサン臭いですよPさん」

P「何を! まだ若いわい!!」

ありす「そうやってすぐムキになるところは子供っぽいんですけどね」

P「上手い具合に平均をとっているのさ」

ありす「論理的に見えて全く論理的じゃありませんね……」


ありす「なんだか下の雑草がクッションみたいです」

P「だな。座りやすくて良い感じだ」

ありす「あれは、もしかしてブランコですかね」

P「見る影もないけど……あの形はブランコだろうな」

ありす「少しでも触ったら崩れちゃいそう……」

P「危ないから乗るなよ?」

ありす「乗りませんよ!! というか子供じゃないんですから、もしあれが壊れてなかったとしても乗りません!!」

P「そうなのか? でも俺は大人になってもブランコ乗ってるぞ?」

ありす「全く何してるんですか」

P「ちひろさんに怒られた時とかな。ブランコに座って泣いてる」

ありす「ホントに何してるんですか……」


P「んんーー……はぁ。気持ちいいなぁ、ありすも横になってみろよ」

ありす「そうですね。隣失礼します」

P「あぁ……風が気持ちいい」

ありす「あ! Pさん蝶が飛んでますよ!!」

P「ほんとだ。動物は意外と残ってるのかもしれないな」

ありす「…………なんだか不思議な気分です」

P「ん?」

ありす「こうやって満天の青空を眺めて、風を顔で受けて、草が揺れる音を聞いて…………」

ありす「実はいつもと変わらないんじゃないかって」

ありす「仕事の合間にPさんと公園で休憩しているだけなんじゃないかって、そう思うんです」

ありす「こうやってちょっと顔を傾けたら、Pさんがいる」

P「…………」

ありす「でも反対側に顔を傾けると、見たこともない廃墟が見えるんです」

P「…………」

ありす「…………」


ありす「…………私、実を言うとちょっと恐いです」

P「…………」

ありす「ちょっと寝て起きただけなのに、みんないなくなっちゃって」

ありす「やっと見られた事務所の人の顔は歳を取っていて」

ありす「信じられないほど辛そうな顔をしていて」

P「…………」

ありす「昨日まではみんなで笑ってたのになんでだろう、って……」

P「…………」

ありす「…………でも」


ありす「でも私、大丈夫です」

ありす「恐いけど、Pさんがいるから」

ありす「だから心配しないでください」

ありす「Pさんが昨日から気を使ってくれているのは目を見ればわかります」

ありす「この散歩だって私の気が滅入らないようにしてくれたんですよね」

ありす「でも、大丈夫」

ありす「私はもう子供じゃない……」

ありす「ううん。まだ子供だけど、Pさんがいれば大丈夫だから」ギュ

P「…………そうか」

ありす「はい……」


P「ありす、泣きたいなら俺の胸を使っていいんだぞ」

ありす「いいえ、大丈夫です。それに泣きたいのはPさんの方じゃないんですか?」

P「な、何を言ってるんだ!?」

ありす「ふふ、Pさんうるうるしてますよ? 感動しちゃいました?」

P「その、まぁ……」

ありす「私に甘えて泣いてもいいんですよ?」

P「あぁ泣きそう。誰かの胸の中で思い切り泣きたい」

ありす「はい?」

P「だからその発育の可能性を秘めた慎ましやかな胸の中で泣かせてくれ!!」

ありす「蹴りますよ」ガスッ

P「いたいっ! 蹴ってから言った!!」

ありす「まったく……」


ありす「…………」

P「…………」

ありす「私達が……」

ありす「私達がこの時代で目覚めたってことは……」

P「うん……」

ありす「やっぱり晶葉さん達は……」

P「…………」

P「おそらく……失敗したんだろうな…………」

ありす「っ…………」


ありす「…………」

P「…………」

ありす「この先、どうしましょうか?」

P「……そうだな…………」

ありす「もう一度コールドスリープマシンに入るか、偽Pさんを倒しに行くか」

P「…………」

ありす「あと、この時代で偽Pさんから隠れながら生きていくって手もありますね」

ありす「二人だけで、この誰も居なくなった東京で」

ありす「食料がどれだけ持つかわかりませんけど、食べられる植物を探したり、動物を捕ったり……無理ではないかもしれませんよ」

ありす「…………」

ありす「いつもみたいにチョメチョメだとか言わないんですか?」

ありす「アダムとイヴだ産めよ増やせよー、とか」

P「……あぁ、うん…………」


ありす「……」

ありす「……もう、決まってるんですよね」

P「っ…………!!」

P「………………」

ありす「大丈夫です。私のことは心配しないでください」

ありす「さっきも言ったように、私はPさんがついててくれれば大丈夫」

ありす「だから、Pさんの言いたいことを言ってください」

P「……でも…………」

ありす「いつも話を聞いてもらってるんです。たまには私にも話してください」

P「……いいのか…………?」

ありす「はい。Pさんの思い、教えてください」

P「……俺の思い…………」

ありす「はい」

P「……俺、は…………」

P「俺は……ッ!!」








P「俺は!! 助手2号を倒しに行きたい!!」





P「俺は俺達の事務所を壊したそいつをほっとけない!!」

P「アイドル達を苦しませたそいつを許せない!!」

P「わけのわからん理由でアイドルの笑顔を奪ったそいつを倒したい!!」

P「正直世界を救うだとか人類がどうとかは規模がでか過ぎて全くわからん!!」

P「でも晶葉に……アイドルに頼まれたから!!」

P「プロデューサーとしてその願いを叶えてやりたい!!」

P「何が偽プロデューサーだ!! ウチの事務所のプロデューサーは俺だ!!」

P「生意気な後輩プロデューサーなんぞ一発殴らないと気が済まん!!」

P「だから!! 俺は!!」

P「助手2号を倒しに行きたい!!!!」


P「はぁ……はぁ……」

ありす「ふふっ。それでこそPさんです」

P「すまん……叫んだりして」

ありす「構いません。Pさんがうるさいのはいつものことですから」

P「そんなにうるさくはないと思うんだけどなぁ……」

ありす「なんにせよ、これからの方針が決まりましたね」

P「あぁ。助手2号を倒しに行こうと思う」

P「…………」

P「そう、俺は助手2号を倒しに行く……でもお前は」


ありす「『お前はコールドスリープマシンに戻れ』、ですよね」

P「っ!?」

ありす「何を驚いてるんですか。幼稚なPさんの考えなんて簡単に読めますよ」

P「…………まぁ、そうだ」

P「ありす、お前はマシンに戻れ。あの中なら安全だ」

ありす「Pさんはそれで私が納得すると?」

P「納得どうこうの問題じゃない。無理にでも入ってもらう」


ありす「それでPさんは一人で行くと」

P「ああそうだ。こんな世界だ、何が起こるかわからない。現に昨日、俺はお前を危険な目に遭わせてしまった」

P「もしウサミンロボが来てくれなかったと考えると頭の中が真っ白になる」

P「俺はこれ以上お前を危険な目に遭わせたくない」

ありす「だから私をマシンに入れておきたいと」

P「そうだ」

ありす「…………」

ありす「話になりませんね」

P「なっ!?」


ありす「確かに順調にプロデューサーが助手2号を倒せた場合は、私を無傷で助けられます」
ありす「ただ、それは最良の場合です」

P「え?」

ありす「プロデューサーは自分が負けた場合のことを考えましたか?」

P「え、いや……」

ありす「まさか『俺は絶対に負けたりしない』なんて根性論で議論をするつもりはありませんよね」
ありす「もしプロデューサーが負けた場合、もしは助手2号と引き分け場合、私はどうなりますか?」

P「それはえっと……」

ありす「おそらくマシンに設定された時間で起きるでしょうね」
ありす「それが百年後か千年後かはわかりませんが、まぁほぼ確実に環境は改善していないでしょう」
ありす「プロデューサーは都会暮らしになれた小学生が突然未開拓の地に放り込まれて生きていけると思いますか?」

P「い、いや……」

ありす「そうです。答えはNOです。なので行く末は死、つまりはデッドですね」

P「なぜ英語……」

ありす「そこは論点ではありません」


ありす「ここで重要なのはプロデューサーが失敗した場合、私が死亡するという点です」
ありす「問題の先送りにしかなっていませんね」
ありす「私がマシンに入ってプロデューサーが失敗した場合、私は死亡する」
ありす「それではもう一方の場合を考えてみましょう。私がプロデューサーと一緒に行く場合です」
ありす「確かに、私にとってのリスクは増すでしょう。しかしこれが最悪の手でしょうか」
ありす「同じくプロデューサーが失敗した場合を想定してみましょう」
ありす「助手2号、もしくはその刺客によってPさんが失敗、死亡した場合私はどうなるでしょう」
ありす「答えるまでもないですね。その敵対勢力によって命を奪われるでしょう」
ありす「万が一命を奪われなかったとしても、マシンに入った場合と同様に私は生きてはいけないでしょう」
ありす「はい、ここまででお気付きでしょうか」

P「いや、その」

ありす「そうです。私がマシンに入っても入らなくても、プロデューサーが失敗した場合は私も死ぬということです」
ありす「つまりこの問題においてリスクは同じであるということです」
ありす「それでは次にメリットを考えてみましょう」
ありす「私がマシンに入った場合、プロデューサーは一人で旅をすることになります」
ありす「プロデューサーは10人中11人が馬鹿と答える程の馬鹿です。知識も多いとは言えません」
ありす「この文明の失われた世界では応用力、発想力が重要になるでしょう。サバイバルについての知識も必要です」
ありす「果たして、そのどれをも持っていないプロデューサーが一人で助手2号を倒せるでしょうか」
ありす「答えは明白です。可能性はかなり低いでしょう」


ありす「それでは私がプロデューサーと同行した場合のメリットについて考えてみましょう」
ありす「まず単純に知識、思考力については増加しますね」
ありす「プロデューサーよりかは知識で勝っているでしょうし、サバイバルの本に目を通したこともあります」
ありす「それに人数が増えることによって物事に対する視点も増やせます」
ありす「右も左もわからない状況において多くの視点から物事を考えられるというのは大きな力となります」
ありす「また、同行者が増えることによって一人の暴走を止めることができます。一度の失敗が死に繋がる状況では、安全のためブレーキ役となる人が必須ではないでしょうか」
ありす「私ならばその役割を果たせるでしょう。もちろんプロデューサーには無理です」
ありす「ここまで言えば脳タリンのお馬鹿プロデューサーにも分かるでしょう。私が同行した方が成功率が大きく上がるということが」
ありす「それでは総合的に判断してみましょう」
ありす「私がコールドスリープマシンに戻った場合、リスクはプロデューサーが失敗した場合私も死ぬということ。メリットは精々プロデューサーが自己満足を得られるというぐらいでしょうか」
ありす「次に私がプロデューサーに同行した場合、リスクは同じくプロデューサーが失敗した場合私も死ぬということ。メリットは協力者が増える、知識発想力においても増加する、精神的な安定を得られる。あげればきりがありませんがこんなところでしょうか」
ありす「これでわかりましたね。リスクは同じでメリットは格段に上、つまり私を同行させた方がいいということが論理的に証明されたんです」

ありす「何か反論は?」

P「…………」パクパク

ありす「はい、論破です」ニコ


ありす「私相手に議論しようだなんて無謀なんじゃないですか」

ありす「これに懲りたら二度と一人で行くだなんて変なこと言いださないでくださいよ?」

P「…………」

P「…………はぁ」

P「まったくお前は面倒くさい子だな、ありす」ナデナデ

ありす「あなたのアイドルですから」フフン


P「でもな、本当に良いのか」

P「これからは本当に大変だろうし、辛いこともたくさんある」

P「想像もつかないような思いもするかもしれない」

P「俺だって絶対に成功するとは言えないんだ」

P「それでもついて来るのか?」

ありす「当たり前です。何が起こるかわからないのは昨日で思い知りました」

ありす「恐いのはあるけれど、それでもPさんと一緒にいたいんです」

ありす「誰かに傷つけられるよりも、知らない間にPさんが傷付く方が嫌なんです」

P「ありす……」

ありす「それに私最初に言いましたよ?」

ありす「『Pさんは未来でも私がついていないとダメみたいですから』って」


P「…………ありがとな」

ありす「惚れ直しましたか?」

P「あぁ、これ以上ないってぐらいにな」

ありす「なら良かったです」

ありす「…………」

ありす「…………」

ありす「Pさん、1つお願いしてもいいですか」

P「なんだ? なんでも言ってくれ」

ありす「Pさんに誓って欲しいんです」

ありす「これから先のことを、私とPさん自身に」


P「選手宣誓みたいなもんか? いいぞ、どんと来い!!」

ありす「では……いきますよ」

ありす「…………」

ありす「健やかなるときも、病めるときも、Pさんは私の隣にいてくれることを誓いますか」

P「誓うよ」

ありす「富めるときも、貧しいときも、私と一緒に歩いてくれることを誓いますか」

P「あぁ、誓う」

ありす「喜びのときも、悲しみのときも、命ある限り、私を好きでいてくれることを……誓いますか」

P「もちろん誓うさ」

ありす「……それじゃあ」









ありす「誓いのキスですっ」チュッ

P「」




P「」


P「」


P「」


P「」


P「んなっ!!? んぁァァ!!??」

P「んえええぇぇぇぇぇぇぇェェェェ!!!!???」

P「あ、あぁああ、あ、あり、あっありありりり!! ありす今チュって……ッ!?」

ありす「今はまだ、ほっぺたに、です」

ありす「で、でも、Pさんが偽Pさんを倒した時には」

ありす「口にしてあげますっ」

P「」パクパク

ありす「やくそくっ!!」

P「」ポカーン

ありす「//////」

P「……こ、これは負けられなくなっちゃったな」

ありす「も、勿論です!!/////」

――――――――――――――
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――――――――


――――――――
―――――――――――
―――――――――――――――

P「……というわけで助手2号を倒しに行くことにしました」

US3-N『爆発しろウサ』

P「ちなみに帰り道は手を繋いで帰ってきました」

ありす「//////」プスプス

US3-N『その綺麗でもない顔をフッ飛ばしてやろうかウサ』

P「べ、別にいいだろ!! ちゃんと覚悟は決めたよ!!」

US3-N『本当かウサ……。というかそんなすぐに決めなくてもいいウサよ?』

US3-N『備蓄はまだあるウサし、ゆっくり考える時間ぐらいはあるウサ』

P「いや、決心はついたし、俺は馬鹿だからこれ以上考えたっていい答えはでないと思う」


P「それに今の俺は負ける気がしない」

P「二人の愛の前に俺は無敵だ!!」

P「今なら鬼に悪魔、ちひろさんでさえも倒せそうだ!! フハハハハ!!」

US3-N『そのちひろさんを手玉に取るようなのが相手だということを完全に忘れているウサね……』

US3-N『じゃあありすちゃんはどうウサ? このプロデューサーについて行くのかウサ?』

ありす「はい。私もついて行きます」

ありす「確かにこの人は馬鹿ですし変態ですしネジが2本ぐらい抜けてます」

ありす「でも、Pさんはいつも私の行く道を指し示してくれました」

ありす「それはどの時代でも変わりません。たとえ4000年後でも」

ありす「だからPさんがいる所が私の道です!」

US3-N『ウサ……。こう見えて意外と良いコンビなのかもしれないウサね』

US3-N『了解ウサ!! 二人の目標は打倒助手2号ウサ!! やっぱり博士の計算は外れないウサね』


US3-N『それでは博士から承った使命を遂行するウサ!!』

US3-N『4000年守ってきた博士達からの贈り物の進呈ウサ!!』

P「おぉ、確か晶葉が餞別だとか言ってたヤツだな」

ありす「なんでしょう……武器とかですかね」

P「晶葉のことだから高性能メカとかかもしれん」

ありす「あとは……何か助手2号の手がかりも欲しいですね」

P「俺達まだ助手2号がどんな奴かも知らないしな」

ありす「なんにせよこれが私達の方向を決めそうですね」

P「あぁ。信じてるぜ晶葉ちゃん!」

US3-N『それではお披露目ウサ!! しかと見るウサ!!』ガチャ

US3-N「ウサー!!」ウィィーーン……

P「おお!! ロボのお腹が開いた!!」

P「ッ!? こ、これは……!?」

ありす「まさか!?」

US3-N『そうウサ!! これこそがUS3-Nが4000年守り通した…………』











US3-N『スタミナドリンクとエナジードリンクウサ!!』

P「ログインボーナスかよ!!」


US3-N『? ご不満ウサ?』

P「いや当たり前だろ。なんだ4000年前のスタドリって、飲めたもんじゃねーよ」

US3-N『そう言われても博士に預かったのはコレウサ。文句言わないで欲しいウサ』

P「ホントに餞別これなの? 俺人類滅ぼした相手にドリンク片手で挑むの!?」

P「他に何か……」ガサゴソ

ありす「あ、新しいタブレットが入ってましたよ!!」

P「え、マジで」

US3-N『それはありすちゃんにウサ』

P「俺の分は!?」

US3-N『スタドリとエナドリウサ』

P「」


US3-N『そんなに落ち込むなウサ。博士が役に立たない物を渡すはずがないウサ』

US3-N『確か手紙も入っていたウサから見てみるウサ!!』

ありす「手紙……あっ、これですね」ガサゴソ

P「晶葉からの手紙か……広げるぞ」


 『 
    やぁ助手よ。どうやら助手2号と戦う道を選んでくれたようだ。

    こっちを選んでくれると信じていたものの、やはり最初にありがとうと言わせてくれ

    君達に苦難の道を歩ませてしまったことは本当に申し訳ないと思っている

    だからと言ってはなんだが、君達に我が最大の発明と、助手2号を打倒する為の手がかりを進呈する。

    まずはそのスタミナドリンクとエナジードリンクだ。
 
    せっかちな助手の事だ。酷くガッカリしていることだろう

    しかしそれはただのスタドリエナドリではない。助手2号と同じ力を使う為の、人智を越えたアイテムだ

    それを作る為には全てのアイドルが、しいては千川ちひろの協力も得て開発した物だ

    中に入っているのは液体ではあるものの、栄養ドリンクではなくもう少し概念的な物だ

    説明すると長くなるが……まぁ、賞味期限は気にしなくてもいいとだけ覚えておくといいさ

    


    次に助手2号打倒に関する情報だが……これに関しては手紙には書けない
 
    ロボが助手2号の手に渡る可能性も0ではないのでな

    だが、助手2号の弱点、また4000年後の情報を得る手がかりを渡しておこう

    この手紙に地図を同封した。これを手がかりにある人物の元に行って欲しい。必ず助けになるはずだ

    最後に世界を平和にするための方法を記しておこう

    いつか君達の力になれる時が来る事を信じて


        ―――星を手に助手2号を退け、アンコールを奏でよ―-―

                                            池袋 晶葉』



P「……」

ありす「……」

P「うーん、どうだ?」

ありす「手がかり……ではありますけど、ちょっと抽象的ですね」

P「だよなぁ。これもただのドリンクじゃないってことはわかったけど、使い方も書いてないし」

ありす「色々と情報を書きたいけれど書けないということでしょうか」

P「そうだな。とりあえずわかりやすいのは地図の場所に行けってことだけか」

ありす「情報が何もない以上、そうするしかないですね」

P「まぁ元々何もなかったんだ。少し手がかりがあっただけ良いとするか」

ありす「ですね。ウサミンロボさんも長い間お疲れさまでした」

US3-N『ウサ!! 頑張ったウサ!!』

P「よし、そうと決まったら荷造りだ!! 何が起こるかわからないから万全にな!!」

ありす「はい!!」

US3-N「ウサ!!」



P(その日、俺達は遅くまで荷造りをした)

P(体を動かして荷物をまとめるうちに頭を覆っていたモヤモヤはどこかに行っていた)

P(これが正しいのかはわからないけれど、それは今までも同じだった)

P(プロデュースをしている時だって何が最善かだなんてわからなかった)

P(正しいと思うことだけを必死にやってきた。今も同じだ)

P(手がかりは少ないし、希望だって少ない)

P(それでも立ち止まってなんかいられない)

P(もう4000年も寝坊したんだ。これ以上時間を無駄にするのは馬鹿ってもんだ)

P(だから俺らは旅に出る。助手2号を探して、一発殴ってやるために)

P(ありすと交わした約束を守るために)



P(そして数日後……)


ガチャ

P「うーーーん……!! あぁ、今日も良い天気になりそうだ」

ありす「だといいですね。出発の日が雨だなんて幸先が悪いですから」

P「だな。まぁまだ太陽も出てないからわからんけどな」

ありす「こんなに早く出発する必要があるんですか?」

P「何言ってんだ。こういう始まりの日は朝日を受けながら、って相場は決まってるんだよ」

ありす「非合理的ですね。やっぱりPさんは子供です」

P「中年に思われるよりかはいいさ」

US3-N「ウサ! ウササーー!!」

P「あぁすまんウサミンロボ、今引き上げてやるからなー」

US3-N「ウサー!」


P「よし、忘れ物はないか」

ありす「大丈夫ですよ。むしろ心配なのはPさんの方です」

P「何言ってるんだ。俺がそんなヘマするわけないだろ」

US3-N『さっきスタドリを忘れそうになってたのを見たウサ』

ありす「Pさん……」ジトー

P「いや違う! ロボのでまかせだ!!」

US3-N『決定的瞬間の写真もあるウサ!!』

ありす「Pさん……」ハァ

P「すまん」


ありす「まったく、Pさんは本当に引き締まりませんね」

P「でもそういう所も俺の魅力だろ」

ありす「自分で言ってちゃ世話がないですよ」

P「そういうツンとした所もありすの魅力だな」

ありす「……」ゲシ!

P「痛い。無言で蹴るのやめて」


P「さて、そろそろ行くか」

ありす「そうですね。いつまでも感傷に浸ってても仕方ないですし」

US3-N「ウサ」



P「すぅーーー」

P「はぁーーー」


P「…………」

ありす「…………」







P・ありす「行ってきます!!」
US3-N「ウサ!!」



P(こうして俺達はまだ暗い道に一歩を踏み出した)

P(俺達の世界が崩壊した、4000年後の世界で)

P(アイドルと、プロデューサー。それからロボットの小さな一歩)

P(きっと一人の人間にとっても、人類にとっても小さな一歩だ)

P(でも、小さくたって一歩は一歩だ)

P(この小さな一歩は助手2号までの一歩だ)

P(いつかこの足が止まる時。その時にも、この二組の足とタイヤが一緒にあれば嬉しいと思う)

P(だから歩こう。小さな一歩を繋げて)

P(先のことなんてわからない。人類のことなんてわからない)

P(でも、彼女が何をすれば笑ってくれるかはわかる。わかっているはずだ)

P(だから歩こう。小さな歩幅を広げて)


P(明日のことはわからないから)

P(まずはあの太陽が昇るまで、この道を歩こう)

きりのいい所で、ここまで

遅くなりました>>1です
短いですが投下


……ザッザッ……

P「はぁ~……」

ありす「……」

US3-N「……」


……ザッザッザッ…………

P「ふぅ~……」

ありす「……」

US3-N「……」

……ザッザッザッザッ… ………

P「うへぇ~~……」

ありす「ちょっとPさん! さっきからうるさいですよ!!」


ありす「集中してるんですから静かにしてください」

US3-N『気が散るウサ』

P「わるい……でもこんなこと続けてたらため息も出るよ。もう三日もだぞ?」

ありす「でもこうするしか方法はないじゃないですか」

P「目につくビルを一つ一つ確認していくなんて無茶だよ」

ありす「他に何か良い方法でもあるなら聞きますよ?」

P「まぁ、それはないけど……」

ありす「じゃあ黙って探しましょう」

P「わかったよ……でもこんな建物絶対ないだろ……」

ありす「わかりませんよ。東京は広いんですから」

P「でもさすがに……」



P「さすがに『ナメクジが張り付いてて花火とロケットを噴射するビル』はないだろ……」



P(シェルターを出発してから三日、俺達は廃墟と化した東京をさまよっていた)

P(助手2号を探すための唯一の手がかりである晶葉の手紙……)

P(そこにはとある人物の元に行けとの助言が書かれていた)

P(その手紙には地図が同封されており、現在その地図にかかれていた建物を探している)

P(しかしその地図という物が厄介で)

P(その地図のおかげで俺達は延々とさ迷うことになっているのだ)

P(事の起こりは数日前、シェルターの中で地図を開封した時にまで遡る……)


ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー


ありす「Pさん、防寒具はこれくらいでいいですか」

P「ん? あー、もうちょっとあった方がいいんじゃないか」

ありす「そうですか……じゃああと2、3枚入れておきます」

US3-N「ウサー! ウササ!!」

P「いやロボ、ドライバーはたぶん要らない」

US3-N「ウサー……ウサ、ウサウサ!?」

P「いやプラスかマイナスかの問題じゃない」

US3-N「ウサー……」


ありす「しかし荷造りって結構大変ですね……何をどれくらい入れるか悩みます」

P「そうだなー、あんまり多くても文字通りお荷物になっちゃうしなー」

ありす「私もレッスンしていたとはいえあまり重いものは持てませんし……」

P「何が起こるか分からないとはいえ、あんまり詰め込みすぎるのも考えものだな」

ありす「それを背負って長い距離歩くんですからね……というかPさん、私たちどれくらい歩くんですか?」

P「そりゃあ晶葉の手紙に書いてあった『ある人物』の所までだろ」

ありす「そこがどこか分からないじゃないですか。そこまでどれくらいあるんですか」

P「あぁ、そういやまだ地図見てなかったな……確か手紙に同封してあるって書いてあったけど……」ガサゴソ



P「あった、これだな」ペラ

P「……ん?」

ありす「どうしたんですか? 私にも見せてください」グイ

ありす「……ん?」

P「……」

ありす「……」


P・ありす「んん!?」


P「えっと……ありす、これ何に見える?」

ありす「……抽象画」

P「本音を言うと?」

ありす「落書き」

P「だよなぁ」


P「でももしかしたら名のある画家さんが手掛けた……」

ありす「いやふざけてる場合じゃないですよ!! これ地図じゃないじゃないですか! 」

P「あぁうん。これが地図じゃないことは俺にもわかる」

ありす「もしかして誰かの落書きと入れ間違えたんじゃ……」

P「だとしたらマズいよな……ここで立ち往生くらっちまう」

ありす「そんな……」

US3-N「ウサ!」

P「どうした、ロボ」

US3-N『それ入れ間違いなんかじゃないウサよ?』

ありす「え!?」


US3-N『その絵を博士が手紙と一緒に入れるのをこのカメラでしかと見たウサ』

P「でも手紙には地図って……」

US3-N『暗号ウサ』

P・ありす「暗号?」

US3-N『そうウサ。普通の地図だと助手2号に場所が突き止められるウサ』

ありす「そういえば晶葉さん手紙でも情報が漏れる事を危惧していましたね」

P「あぁ、確かに」

ありす「じゃあこの絵の暗号を解けば目的地がわかるって事なんですね?」

US3-N『その通りウサ!!』



P「んー、この絵が落書きじゃないってことはわかったけど……パッと見じゃ何を意味しているのか全くわからないぞ?」

ありす「とりあえず何が描いてあるか整理してみましょう」

P「そうだな」


P「まずは紙の真ん中に掛かれているでかい縦長な長方形だな」

ありす「中には稲妻みたいな線が描かれてますね」

P「その両隣には上まで伸びる……なんだこれ、打ち上げ花火か?」

ありす「確かに花火が爆発しているようにも見えますけど……」

P「そしてその長方形と花火を挟むようにいくつも描かれている少し小さめな長方形」

ありす「それが全部下の方の横線で繋がっていますね」

P「ちょうど横線から長方形が生えているような感じだな」

ありす「絵の上の方には……なんだかウネウネした物が漂ってます」

P「最後にトドメのロケット。三角の何かが煙を出しながら空へ飛んでいっている」

P「……」

ありす「……」

P「全くわからん」

ありす「同感です」



P「いや何これ!! ひとつもわからん!! 難易度高すぎない!?」

ありす「これは、さすがに……」

P「描いてある全ての物が謎だし、やけにファンシーな絵柄してる理由も謎だよ!!」

ありす「描いた人は具体的なヒントを描いたつもりなんでしょうけど……根本的に絵がうまくありませんね」

P「これもうちょっと絵がかける人いなかったの!? 誰だこのカオス空間描いたの……」

US3-N『あ、描いた人が裏に何メッセージ入れてたウサよ』

P「裏?」ペラッ



『頑張って描きました!! 私からの暗号ちゃんと解けますよね? 響子♥』


P「お前かァァァァァァァァ!!!」

P「誰だ響子に絵なんて描かせた奴はぁぁ!? 明らかに人選ミスだろ!!」

P「ハートは嬉しいけれども!! ハートは嬉しいけれども!!!」

ありす「あ、下の方にも何か……」


『P.S. 響子ちゃん4年間で結構絵が上手くなったんスよ。褒めてやって欲しいっス 比奈♥』


P「いやお前が描けよォォォォォ!!!」

P「なんでお前じゃないんだよ!! 適任者近くにいるじゃねぇか!!」

P「何が『褒めてやって欲しいっス』だよ!! 先輩風吹かせてる場合じゃねーだろ!!」

P「あとお前のハートマークは違和感バリバリだよ!! 響子よりお前の4年間の方が気になるわ!!」

P「ホントお前ら人類の存亡かけてる自覚あんのかァァァァァ!!!」

ありす「それは大事な時に寝いてた私たちが言える事ではないような……」



P「終わった……俺達の旅はここまでだ……!!」

ありす「いやまだ出発すらしてないじゃないですか」

P「お前は響子の画力をわかっていない。あれは魔界の門を開くんだ……」

ありす「さすがにそれは響子さんに失礼なんじゃ」

P「少し前に、響子にメイド服着せてオムライス作ってもらってたんだけどさ……」

ありす「アイドルに何させてるんですか」

P「ケチャップで何でも描きますよ!! とか言うわけ。折角だから『じゃあ俺のこと描いてみてよ』ってお願いしたわけよ。そしたら……」

ありす「そしたら?」


P「R2-D2出てきた」

ありす「なんて?」


P「R2-D2みたいな絵が出てきたんだよ!!」

ありす「人ですらないじゃないですか」

P「そうなんだよ!! 百歩譲って人外なのはいいとしても!! せめてC3POだろ!!」

P「しかも嬉しそうに『自信作です!! ……どうですか?』とか上目遣いで聞いてくるんだよ!?」

ありす「なんて答えたんですか?」

P「味わい深いって答えといた」

ありす「PさんはPさんで罪深いですね」

P「俺あいつの目にはこう見えてるんだって思ったらちょっとした恐怖だったよ……」


ありす「でも手がかりがこれしかない以上、これを頼るしかないですよ」

P「だよなぁ……でも俺ナゾナゾとか苦手なんだよ」

ありす「Pさんが頭使うことが苦手なのは知ってます。ここは私に任せてください」

P「マジで? 正直これ難易度高いぞ?」

ありす「Pさんより頭脳が上だって言った手前もありますしね。それに私頭を使うのは得意なんです!」

P「よし、じゃあこの暗号はありすに任せるぞ?」

ありす「はい!」


P「それじゃあこの暗号を一つずつ解いていくか」

ありす「ですね!」フンスフンス

P「まずは……このでかい長方形かな」

ありす「これは簡単ですね」

P「そうなのか?」

ありす「そうですよ。これは……ずばりビルです!!」

P「あー、言われてみりゃ確かに」

ありす「でしょう。つまりこのたくさんある長方形はビル群を表しているんです」

P「真ん中が一番大きいのは?」

ありす「周辺で一番高いことを示していますね」

P「ほー」


P「いやぁ意外とそれっぽいな。さすが俺のありす」

ありす「俺のかどうかは置いておきますが、自信はありますよ」

P「否定はしないんだな。俺のありす」

ありす「さぁ次です」ゲシ

P「痛い」


P「次は……じゃあこの打ち上げ花火か?」

ありす「これは見たまんま花火ですね」

P「そうなの?」

ありす「はい。新年のお祝いに花火を打ち上げるビルの動画を見たことがあります」

P「……それどこの動画?」

ありす「確かドバイでした」

P「行けと!?」

ありす「次はこのウネウネですね」

P「無視!?」


ありす「次にこのウネウネですが……」

P「あ、これなら俺もわかるぞ、これは雲だろ。ビルが凄く高いことを意味してるとか……」

ありす「いえ、違います」

P「え、違うの? じゃあこれは……」

ありす「これはナメクジです」

P「ナメクジ!?」

ありす「そうです。このウネウネはナメクジしかありえません。おそらく湿気の多いところに建っているんでしょうね」

P「えぇ……」


ありす「次はこの空飛ぶ三角形ですね」

P「これは本当にわからん。この煙を吹き出す飛行物体のせいで世界観が崩壊してるんだよ」

ありす「そうですね……これは難しかったです……」

ありす「しかし! 私にかかればこんな謎は造作もありません!!」

P「おぉ!!」

ありす「この三角形だけには意味がないのです。その裏に意味がある……つまり隠喩です!!」

P「隠喩……だと!?」

ありす「そうです! そしてこの飛行物体の指し示す隠喩の意味は……」

P「その意味は……」ゴクリ




ありす「『近くにロケット発射台がある』です!!」

P「直喩じゃねぇか」


ありす「何か問題でも?」

P「いやさすがにロケット発射台と花火の打ち上げを行える高層ビル群ってのはないんじゃないかなーって……」

ありす「そんなことありません。 私の推理は完璧です」

P「でも現にそんなビル聞いたことないし……」

ありす「Pさん、頭を柔らかくして考えてみてください」

ありす「私たちはこの絵が描かれるまでの4年間眠っていたんですよ? その間に建っていたとしても不思議ではないじゃないですか」

P「そんな建物あったらだいぶ不思議だとは思うけど」

ありす「でも暗号ではその建物を指しているんです。4年の間に建ったんでしょう」


P「そう、なのか……? じゃあこの稲妻みたいな線は?」

ありす「それは……亀裂ですね」

P「亀裂?」

ありす「恐らく老朽化しているんでしょうね」

P「もう!? 建ったばっかりなのに!?」

ありす「ありえないこともないです」

P「いやありえないよ!! 4年の間に設計してビル建てて老朽化して亀裂入るって!! 欠陥建築もいいとこじゃねーか!!」

ありす「もう! さっきからなんなんですか!! 文句ばっかり……」

P「いや文句というか……」

ありす「私の推理は完璧です。次の手がかりは『高層ビル群の中の、ロケットと花火の発射台があるナメクジの張り付いたビル』にあります!!」

P「マジでか……」


ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー

P(結局、暗号にそれ以上の回答が出ることもなく……)

P(半ばありすに押しきられる形で目的地は決まってしまった)

P(もちろんそんなビルに覚えなどないが、現状手がかりはそれしかない)

P(こうしてシェルターを出発した俺達は、総当たりのような形で条件に合うビルを探すことになった)

P「そして現在にいたる、と……」

ありす「何か言いましたか?」

P「いや、何も」


P「しかしビル群どころか高いビル自体見つからないな……」

ありす「4000年経過してますからね。さすがに崩れている方が多いかもしれません」

P「そこらへん瓦礫の山だらけだしな。歩くのも一苦労だ」

ありす「ロボさんは大丈夫ですか?」

US3-N「ウサササ!」

P「ほら掴まれ」

US3-N「ウサー……」


P「なんというか、天下の東京も時間には勝てないかぁ」

ありす「コンクリートジャングルが今じゃただのジャングルに近いですもんね」

P「人はいないわりに鳥とか動物は結構見るんだよな」

ありす「えぇ、見る分にはいいんですけど襲われたら大変です」

P「肉食動物もいるだろうしな。夜は迂闊に歩けないよ」

ありす「通れない道も多いですしなかなか移動が進みませんね」

P「よっと……ありす、大丈夫か?」ガラ

ありす「はい。少し開けた所に出ましたね」

P「そろそろ日も傾いてきたし、ここらでキャンプにするか」

ありす「そうですね。暗くなってからだと大変ですし」

US3-N「ウサー」


P「さてと……ここら辺でいいか」

P「おーい、ありす。焚火に使えそうな枝を集めてきてくれないか」

ありす「わかりました。ロボさん一緒に行きましょう」

US3-N「ウサ!」

P「目に見える範囲で頼むぞー」

ありす「わかってますって」


P「まずは邪魔になりそうな石を退けて、と……」

P(荷物から昌葉印の簡易テントを取り出す)

P(さすがに3回目4回目にもなるとそこまで苦労せずに組み立てられる)

P(でも最初の夜はそれはそれは酷いものだった)

P(テントを建てるのなんて亜季と茜に連れられて行った野外強化合宿〔鍛えろアイドル筋!!)以来で)

P(亜季はスルスルと組み立てていたからそこまで難しいものだとは思っていなかった)

P(まぁこれが大誤算で、初日は完全に日が暮れるまでありすと首を捻っていた)

P「よし、できた!!」

P(しかし、今は違う)

P(極限状態に置かれることで眠っていた俺のアウトドア魂が目を覚ました!!)

P(さながら今の俺は山も川をも恐れない熟練キャンパー……)

P(自らの手際の良さに惚れ惚れするね!!)

ありす「あ、Pさん芯が1本抜けてますよ」

P「……うっす」


―――――
――――――――
――――――――――――

コポコポコポ

P「ありす。スープが温まったぞ」

ありす「ありがとうございます」

P「しかし、晶葉がキャンプグッズまで用意していてくれて助かったな」

ありす「これがなかったら毎晩外で野宿ですもんね」

P「この折り畳める鍋とか熱を逃がさないテントとか、さすが晶葉って感じの発明だよ」

ありす「さすがですね。暖かいスープがあるだけで落ち着けます」ズズズ

P「あぁ。歩き回って疲れた体に染みるよ……」ズズズ


ありす「まぁ食料も無限にあるわけじゃないですから早く目的地を見つけないとですね」

P「さっさと見つけられればいいんだがな。もしかしたら東京外の可能性もあるんじゃ……」

ありす「私たちをあのシェルターに匿ったのは晶葉さんですし、移動手段も徒歩しかないのを知っていたはずですから行けない距離ではないはずだと思いますけど……」

P「そう……だな。でも目的のビルも崩れずに残っているか微妙な線だし、先が思いやられる……」

ありす「何を弱気になっているんですか。マストレさんのレッスンに比べたらまだまだハイキングみたいなものですよ?」

P「厳しいとは聞いていたけど、そんなに凄いのか」

ありす「もちろん。あれほど地獄という言葉が合う環境を私は他に知りません」

P「そんなにか……」

ありす「全く……この前はあれだけカッコ良く豪語していたくせに根性が足りませんね」

P「え、カッコ良かった?」

ありす「なんでそこだけ反応するんですか」

P「いやーありすにカッコ良いとか言われると力が湧いてくるな!」

ありす「言葉の綾ですよ」ゲシ

P「つれないなぁ……」


P「ふぅー、ごっそさん」

ありす「ごちそうさまでした」

US3-N「ウサーサ」

P「よし、これで明日も歩くエネルギーが溜まったぜ」

ありす「あとは十分に寝て疲れを取らないとですね」

P「いいのか? 食べてすぐ寝ると雫に搾乳されるぞ」

US3-N「ウサッ!?」

ありす「雫さんにそんな愛海さんみたいな変態嗜好はありません」

P「雫にそんな趣味があるなら食事しながら寝るね、俺は」

ありす「そのまま起きて来ないで欲しいですね」

P「まぁ冗談は置いといて」

ありす「Pさんが言うと冗談に聞こえないのが恐いです」

P「大丈夫、俺はありす一筋だから」キリッ

ありす「Pさん」ポッ

US3-N「ウサァ……」

ありす「ごほん。なんにせよ明日こそ目的地見つけましょうね」

P「あぁ、もちろんだ!!」


―――――――――――――――――――――

そして翌日も




P「……ないな」



――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――

その翌々日も





ありす「ないです…………」



―――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

その翌々々日も……






US3-N『ないウサ……』



―――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

その翌々々々日も諦める事なく探しまわったが……







P・ありす「………………」



――――――――――――――――――――――――


P「なぁぁぁい!!」

P「やっぱりないよ『ナメクジが張り付いてて花火とロケットを噴射するビル』!!」

ありす「まさか……私の推理に間違いが!?」

US3-N「ウサ」

P「まぁ途中からは普通にヒントの絵に似たビル探してただけだけどないよ!!」

ありす「え!? 私ずっとナメクジ探してたのに!!」

P「見つかりましたか!?」

ありす「見つかりませんでした!!」

US3-N「ウサ……」


P「よし一旦落ち着こう。まずはヒント抜きにして考えるんだ」

ありす「ナメクジは……」

P「抜きで」

ありす「花火も……?」

P「抜きで」

ありす「それじゃあ何を手がかりに?」

P「この目的地を決めたのはおそらく晶葉だ。晶葉が決めそうな場所を考えるんだ」

ありす「晶葉さんが……。研究所とか?」

P「うーんありえなくはないけど真っ先に狙われそうだな」

ありす「じゃあ私たちに縁のある場所……?」

P「レッスンルームとか……」

ありす「テレビ局……」

P「女子寮?」

ありす「ライブ会場?」

P「あとは……」

ありす「やっぱり……」



P・ありす「プロダクション」


P「一番危険なのが事務所だけど……やっぱり他にヒントを残すとしたらあそこだよな」

ありす「おそらくそれは晶葉さんもわかっていたはず」

P「ロボ、ここら辺の地図は出せるか?」

US3-N『GPSは使えないウサけど、今までの歩行ルートからある程度は算出できるウサ』

ありす「お願いします」

US3-N「ウササー……」ピポピポ

US3-N『NAVITIME! ウサ!!』

ありす「現在地は……ここですね」

P「よし、事務所まで歩いていけない距離じゃないぞ!」



ありす「ただ、どうなっているかわかりません……よね?」

P「まぁな。跡形もないかもしれん」

ありす「私たちが過ごしてから4000年、経ってるんですよね」

P「そうだ。誰も迎えてくれないだろう」

ありす「…………」

P「…………」

ありす「……行きましょう」

P「あぁ、行こう。ロボ、地図を出してくれ」


US3-N『本当にいいウサ?』

P「おう、何はともあれまずは出社しないことには始まらないからな」

ありす「事務所に顔を出さないとしっくりきませんしね」

P「そういうことだ。何年経ったって俺たちはプロデューサーとアイドルだ」

ありす「ですね」

US3-N『そういうことなら了解ウサ。案内するウサ!』

P「それじゃあ懐かしの事務所に!」

ありす「出発! ですね」

US3-N「ウサ-!!」

とりあえずここまでで

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