提督「おかえりなさい」(10)
そう言って遠征から帰ってきた私達を優しく微笑んで迎えてくれるのは、私達艦娘のいる○○鎮守府を統括する提督だ。
艦娘を単なる兵器として扱う提督、体の良い性欲の捌け口として扱う提督が少なくない。
そんな中で私達の提督は私達を人並みに扱ってくれる。
いや、人並みどころではない。
長時間の遠征にから戻ってきた翌日は必ずお休みを与える。
出撃で大破した時は体に負担が掛かるからと高速修復剤を使わない。
入渠を終えた艦娘一人一人に労いの言葉と、自分の指揮の至らなさを詫びる。
私達艦娘は人々の悪意に敏感だ。
人から人ならざる者へと姿を変えた私達への差別意識は今なお消えない。
むしろ、私達艦娘の出自が知れ渡るほどにそれは強くなっていく。
私達艦娘は人から向けられる視線にとても敏感で、そして視線に秘められた感情にも敏感だ。
道具を効率よく扱うための口先だけの褒め言葉なんてすぐに見抜ける。
そして、だからこそわかるのだ。
提督の言葉にも、その優しい瞳にも、一片の嫌悪感も浮かんではいないということに。
提督は人並み以上に、それこそ娘のように私達を愛してくれている。
そのことが一つ一つの言葉や表情からわかるのだ。
だから、私達は提督を深く尊敬し、そして強くお慕いしている。
優しさだけではない、私達の鎮守府の提督は士官学校を主席で卒業されている。
能力、素行、人柄、すべてにおいて秀でた方なのだ。
それと、これは提督の素晴らしさにおいては、些細な要因にすぎない。
決して重要な要因というわけではない。
ないが、優れている点の一つとして上げるのだが。
提督はとても容姿が優れていらっしゃる。
「脂ぎった顔がキモい」とか「髭の剃り残しが汚らしい」とか、「ニヤニヤ笑って、黄色い歯が見えると気絶しそうになる」なんていう
演習の時に他所の鎮守府の艦娘達から聞かされるような陰口なんて一つも該当しない。
180を超える長身。
すらりと伸びた脚。
細身ながらも、軍服の上からでも確認できる鍛え抜かれた肉体。
そして、凛々しくも美しいお顔。
黒曜石のような黒い瞳を時に柔らかく、時に悲しげにしながら私達の事を常に第一に考えてくださる提督。
本当に素晴らしく、それ故に艦娘と提督という関係を超えて愛してしまう娘達も多い。
私はもちろん、あくまでも尊敬すべき素晴らしい上官として忠誠を誓っているだけだ。
求められれば応じることはやぶさかではないが、それは些細なことだ。
けれども、私達艦娘にとって、一つだけ、一つだけであるが、最大の悩みがある。
それは……
「どうしたの朝潮ちゃん?」
提督はそう言ってそっと私の頭を撫でてくださる。
「あら?髪が傷んでるじゃないの。ダメよ?髪は女の命なんですもの。綺麗にしないと。後で執務室にいらっしゃい。
私の使ってるシャンプー分けてあげる」
黒曜石のような大きな瞳をパチリとウインクする。
ふわりと長い睫毛がうっとりする程華麗に揺れる。
とても素晴らしく、とても魅力的な私達の敬愛する提督。
私達を娘のように慈しんでくださる優しい提督。
けれどもその瞳は父親というよりも母親のもの。
私達を守り育てる母であろうとする提督。
なぜでしょう、それを素直に喜べない自分がいます。
提督、どうして貴方はオネエなのでしょうか?
今日はここまで。
艦これを初めてまだ3ヶ月の新米提督ですが、どハマりする余りスレ立てしてしまいました。
こんな感じにちょろちょろ書いていこうと思っています。
それではノシ
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