【艦これ】提督「日独伊深海クリスマス協定」 (175)
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<パッパラパッパー ドドンドドン
,. '  ̄ `ヽ
/ 横 ',
! 鎮 l
、 ,'
ヽ . _ .. '
横須賀鎭守府映畫研究會
―某年 某日 某所―
晋ちゃん「しかし何ですね、マッチポンプというのも疲れますなぁ」
アンジーおばさん「全くだわ。難民のアレでそれどころじゃないのに……」
港湾水鬼「別ニ止メタッテイインダゾ?」
晋ちゃん「いえいえいえ、そんなご無体な」ハハハ
セルジョおじさん「しかし、こうも戦争ムードですと、クリスマスも満足に祝えませんな」
晋ちゃん「まあ確かに、サービス産業は軒並み落ち込みましたねぇ」
港湾水鬼「ケッキョク『カネ』カ……ワカランナァ……」
セルジョおじさん「……どうです、年末年始ぐらい休みません?」
晋ちゃん「さんせーい」
アンジーおばさん「異議なーし」
港湾水鬼「マ、ナンダッテイイカ……」
・
・
・
―12月24日 08:00―
―横須賀鎮守府―
提督「……と、いうような協定があったのかは知らんが」
提督「兎にも角にも、毎年12月24日と翌25日は、
全ての艦娘保有国が、一切の戦闘行動を自粛することとなっている」
提督「……正直な所、本当の理由は分からん。
しかし、我々は腐っても軍人軍艦。命令には絶対服従である」
提督「とまあ、そういうわけで……」
妙高「…………」ニコニコ
提督「――今日と明日は任務無し! 出撃無し! 演習無し! 遠征無し!」
提督「みんな好きに過ごせ! メリィィィ、クリスマァァァス!!」
「「「いやっほおおおおおおおおお!!」」」
ツェッペリン「…………」
リベッチオ「やったぁ! おっやすみ~♪ おっやすみ~♪」
長門「」ポカーン
・
・
・
長門「て、提督! どういうことだ!? 戦闘を自粛など……!」
提督「どうも何も、言った通りだぞ」
長門「哨戒すらも出さないと言うのか!? 敵襲があったらどうするつもりだ!」
妙高「……長門さん、ご指摘にはかねがね同意いたします。
私だって、完全に納得はできません」
長門「なら!」
妙高「……それでも、大本営の指令ですから。ね?」
長門「だ、か、ら! その指令の意図を知りたいんだ、私は!
さっきの小芝居でごまかしたつもりか!?」
長門「何だあのうす寒いホラ話は! 下手な怪談より鳥肌立ったぞ!」
提督「……ま、来たばかりの君には分からんだろうが……
伝統ってことでよ、ひとつ頼む」
長門「で、伝統だと……!?」
提督「ほら、暇ならパーティーの準備でも手伝ってやりなさい」
妙高「プレゼント交換会の準備もお願いしますね。
交換用の粗品を皆さんから集めて、この袋に入れておいてください」
長門(納得いかん……納得いかんぞ……)
・
・
・
オイゲン「姉さま! お料理の用意はお任せ下さい!」
ビスマルク「ありがとう。レープクーヘンは多めにね。クルミがたくさん入ってるのを」カチカチ
オイゲン「はい!」
呂500「ビスマルクさーん! でっちたちと遊んできます!」
ビスマルク「ご飯までには戻ってくるのよ?」カチッカチッ
マックス「あ、尻尾切れました」カチカチ
ビスマルク「やった! 紅玉紅玉……」カチカチ
ツェッペリン「…………」ポツン
ビスマルク「……?」
ツェッペリン「…………」
ビスマルク「……あ、あー……えーと……」
ツェッペリン「……ビスマルク。それは?」
ビスマルク「え? えと、モンハ……いえ、ゲームだけど」
ツェッペリン「……なるほどな」
ビスマルク「面白いわよ?」
ツェッペリン「そうなのか?」
ビスマルク「ええ」
ツェッペリン「そうか……」
ビスマルク「…………」
ツェッペリン「…………」
ビスマルク(……や、やりにくい……!)
オイゲン「お、お姉さまぁ~! 厨房に比叡さんがぁ!」ダダダダ
ビスマルク「何ですって!? もう、金剛は何を……!」
隼鷹「おーいビス子ぉ。この前のシャンパンさ、もう開けちまおうよ~」ガチャッ
ビスマルク「駄目よ! ロバート・ヴァイルをそんな気軽に……!」
オイゲン「! あ、あれ……赤城さん!? 加賀さん!?
待って、それだめ! 間宮さん止めてぇ!」
間宮「て、提督ー! 提督ー!」
ツェッペリン(……賑やかだな、どこも……)
ツェッペリン「…………」スッ
マックス「……? ツェッペリンさん?」
ツェッペリン「……少し、出てくる」
マックス「え?」
ツェッペリン「心配するな。夜までには戻る」ガチャッ
マックス「……どうしたものですかね」
ビスマルク「しょ、しょうがないじゃない! 私だって頑張ったのよ!?
色々教えてあげたりとか……」
マックス「……最初だけでしょう?
後はほとんど、世話役のレーべに任せきりだったじゃないですか」
ビスマルク「う……」
マックス「……レーべやアトミラールとは、そこそこ話せているようですけど」
ビスマルク「そう言えば、レーべは?」
マックス「市街に行くそうです。買い忘れがあるとかで……」
ビスマルク「……やっぱり、馴れてもらうしかないのかしら」
マックス「…………」
ビスマルク「……マックス?」
マックス「……不思議ですね。
向こうにいた頃は、仲間に気を使うなんて考えもしなかったのに」
ビスマルク「……そうね。本当に……」
・
・
・
リベッチオ「えぇ~!? 教会ぃ~!?」
ローマ「当たり前でしょう。『クレデンティ・カトーリチ』たるもの、
今日と明日は厳粛に過ごすものよ」
リベッチオ「やだやだやだぁー! リベ行きたくないー!」
ローマ「やだぁーじゃない! ワガママ言うんじゃないの!」
リベッチオ「いーやーだー! キヨシモと遊ぶって約束したもん!」
リットリオ「……ねえ、リベ? 今夜のお祈りはね。
神様のお誕生日をお祝いする、とっても大事なものなのよ」
リベッチオ「お祈りなんてつまんないし……」ボソッ
ローマ「こらっ!!」
リットリオ「ローマ! ……リベ、教会に行くのは夕方からよ。
それまでだったら、いくらでも遊んでいいから。ね?」
リベッチオ「!! ほ、ほんと!?」
リットリオ「ええ、もちろん! 私だって、間宮さんたちのお手伝いがあるもの」
リットリオ「時間になったら呼びに行くわ。
その代わり、ちゃーんと良い子にして教会に行くのよ?」
リベッチオ「うんうん、だいじょーぶ! リベ、ちゃーんということきくから!」
リットリオ「偉いわーリベ! これならべファーナが来ても大丈夫ね!」
リベッチオ「!! べ、べファーナ……リベたちにも来る!? カンムスでも!?」
リットリオ「え、あ、ええ……も、もちろんよ! 私からちゃんと頼んでおくわ!」
ローマ「……はぁ……」
・
・
・
提督「ったく、あいつも困ったもんだよなあ」ハハハ
妙高「仕方ありませんわ。私だって最初は……」
提督「……やるかね?」
妙高「おそらく」
提督「……そうだな。その方が納得するか」
プルルルルッ プルルルルッ
提督「ん? ……私だ」ガチャ
大淀『提督、お電話が入っております』
提督「電話? 誰から?」
大淀『可愛らしいお嬢さんですよ』フフッ
提督「? ……まあいい、繋いでくれるか」
提督「はいもしもし…… ! おいおいおい、どうしたんだよ~もう~」
提督「鎮守府の電話にはダメっていったろー? しょーがないなーもー」
提督「……大丈夫、大丈夫だって。今年はちゃーんと一緒に食べるよ」
提督「え? あ、プレゼント? 任せとけって、かわいーの買っといたからなー」
提督「……うん、うん。そうか。よしよし、うん、とーさんも楽しみだぞ」
提督「……それじゃ、ちょっとかーさんに代わってくれるか?」
妙高「…………」
提督「あ、もしもし? 困るよ、鎮守府に掛けてきちゃあ……」
提督「いや、うん……まあ、そうだな。分かってる。携帯な、ちゃんと見てるよ最近は」
提督「……うん、7時に……シェ田中な。予約はこっちで取ってるから」
提督「時間までは……あ、さいが屋? 分かった。あんまり遣いすぎるなよ」
提督「……うん。……悪いな。いっつも……ああ……」
提督「……大丈夫だよ。正月は1日中そっちにいられる」
提督「…………ありがとう。じゃあ、また夜に」ガチャッ
妙高「…………」
提督「ふー……」
妙高「……さあ、お仕事頑張りましょう? 『お父さん』」
提督「やめなさいっての」
「 日独伊深海
クリスマス協定 」
/ 映論 \
\3453315/
Ⅰ.クリストキントが歌ってくれた
―08:30 執務室―
妙高「……はい、確かに。それでは本日1000から1700まで、貴女の外出を認めます」
レーべ「ありがとうございます、妙高さん」
提督「ほれ、外出証。楽しんできなさい」
レーべ「うん。ありがとう」
提督「しっかし、外出組は以外と少ないもんだな。レーべにイタリアの3人に……」
妙高「あとは、日向さんもですね」ペラッ
提督「……あいつ、こんな日まで営業か……」
コン、コン
提督「開いてるぞ」
ツェッペリン「失礼する」ガチャッ
レーべ「あ、ツェッペリンさん。Guten Morgen.」
ツェッペリン「! ああ……Guten Morgen, レーべレヒト」
提督「どうしたんだ? 珍しいな」
ツェッペリン「……外出許可を願いたい。書類もこの通り用意した」スッ
レーべ「え、ツェッペリンさんも? なんだ、言ってくれればよかったのに……」
提督「どれどれ…………ん?」
ツェッペリン「……? 何か不備が?」
提督「……一応聞くが、外出は1人で?」
ツェッペリン「そのつもりだが」
提督「……じゃ、駄目だ」
ツェッペリン「……何だと?」
提督「だからな、単独で外出は駄目だと言ってる」
ツェッペリン「な……何故だ? 他の者たちは、現にこの子も……!」
妙高「ほら、ここをご覧ください。記入欄の下の……」
ツェッペリン「なに……『当鎮守府に所属して6ヶ月未満の者は――』」
提督「『原則として、1名以上の同伴者と共に外出すること』……」
提督「……新人を1人で行かせると、何かあった時に大変だろう?」
提督「つまりだ、ツェッペリン。どうしても外出したいと言うなら……」
ツェッペリン「…………」チラッ
レーべ「……!」ニコッ
ツェッペリン「…………」
―10:15 市街地・横須賀街道―
ガヤガヤガヤ…
ツェッペリン(……大きなツリーだな。何か黒いのが巻きついているが……)
レーべ「ツェッペリンさん」
ツェッペリン(寄生性のツタか? ヤドリギの一種かも知れんな)
レーべ「……ツェッペリンさん?」
ツェッペリン「ん? ああ……何だ」
レーべ「その……ツェッペリンさんは、鳩って好き?」
ツェッペリン「ハト? 鳥のか? ……別に大して関心は無いが」
レーべ「嫌いじゃない?」
ツェッペリン「好きも嫌いも無いぞ。鳥は鳥だろう」
レーべ「そっか」
ツェッペリン「……?」
ガヤガヤガヤ…
ツェッペリン「……レーべレヒト」
レーべ「うん?」
ツェッペリン「日本のイブは、どこも『こう』なのか」
レーべ「ええと……どうかな。たぶん」
ツェッペリン「分からない……なぜあんなに調理済みの鶏肉が……
そもそもどうして鶏なんだ? 七面鳥が絶滅したのか?」
ツェッペリン「そもそも、本当に日本なのか?
白人が普通に歩いてるぞ……いや待て、白すぎないか、あれ」
レーべ「まあ、横須賀だからね」
ツェッペリン「…………」
「えー、そんでぇ?」 「マジぃ!? うわー、うっわー」
「ねーねー、ゴハンはぁー?」 「とぉぉぉぉぉ↑ぉぉぉぉぉぅ↓」
ツェッペリン「…………」
ツェッペリン「……ここも、駄目か」
レーべ「え?」
ツェッペリン「いや……」
レーべ「……? あ、そうだ。ツェッペリンさんはどこ行きたいの?」
ツェッペリン「何?」
レーべ「僕はちょっと買い物があるだけだから、
ツェッペリンさんの用事が済んでからでも……」
ツェッペリン「…………」
ツェッペリン「……何も無い」
レーべ「え?」
ツェッペリン「用事など無い。買い物も、何も……出たくなったから出ただけだ」
レーべ「…………」
ツェッペリン「……好きな所へ行くといい。
書類上では、お前に連れられている身だ」
―12:30 デパート『さいが屋』―
店員「ごめんねぇ、ウチにはやっぱり……」
レーべ「ああ、いいんです。ありがとうございました」
ツェッペリン「…………」
レーべ「……駄目だったよ」
ツェッペリン「こんなに大きな玩具屋でもか?」
レーべ「うん……どうしよう、雑貨屋さんにも無かったし……」
ツェッペリン「よほど、珍しい物なのだな」
レーべ「うーん……」
ツェッペリン「……教えてくれれば、私も手伝えるが」
レーべ「! あ、ううん! いいんだよ、僕の買い物だから……」
ツェッペリン「…………」
ツェッペリン「……そう、か」
レーべ「……ごめんね。こんなに長くなるなんて……」
ツェッペリン「謝るな。……謝らないでくれ」
レーべ「……え?」
ツェッペリン「…………」
「ねぇねぇ、この長門さん……」
「やめとけって、お前初心者だろ? こっちの1/700にしとけよ」
「なんでこの家がシルバニアなんだ? シルベスターならスッキリするのに」
「もーパパったら古いんだ」
ツェッペリン(どこもかしこも、恋人と家族連れか)
ツェッペリン「……騒がしいものだな」
レーべ「そういう日だからね。……でも、僕は好きだな」
ツェッペリン「もう少し厳粛でも良いと思うが……」
レーべ「あ、だったら教会でも行こうか? リットリオさんたちも夕方から……」
ツェッペリン「……遠慮しておく。そこまで信心深い方じゃない」
レーべ「え……あ、うん……」
ツェッペリン「…………」
ツェッペリン「……ああやって誰かと過ごすのは、そんなに楽しい物なのか?」
レーべ「……?」
ツェッペリン「気の置けない相手と、一緒に出かけて……
何でもないことで笑い合って……」
レーべ「……ツェッペリンさん?」
ツェッペリン「……レーべレヒト。お前は……お前たちは……
…………私と一緒にいて、楽しいのか?」
レーべ「――え?」
ツェッペリン「お前たちが、私に気を遣っているのは分かる」
ツェッペリン「あの頃に面識があったわけでもないのに、
同郷というだけで、色々と……」
ツェッペリン「それに、アカギやカガたちも……何度も食事に誘ってくれた」
ツェッペリン「……それが疎ましいわけではない。だが……」
ツェッペリン「だが……どうしても……」
レーべ「…………」
ツェッペリン「……迷惑だったろう。こんな私の世話役など」
レーべ「! そんな、僕は……!」
ツェッペリン「……4時にはツリーの所へ戻る。お前は買い物を続けるといい」クルッ
レーべ「ツェッペリンさん!」
ツェッペリン「――頼む。1人にさせてくれ」
レーべ「…………」
・
・
・
―ファミレス―
ガヤガヤガヤ…
ツェッペリン「…………」パチン
ツェッペリン「シュペートブルグンダーを」
店員「……? わ、ワインということで……?」
ツェッペリン(固いな、ここの肉……)モグモグ
・
・
・
―街道―
路上シンガー「きっときみはこぉなぁい♪ ひとりきりのクリスマースィー♪」
一般観客女「~♪」ユラユラ
ツェッペリン「……?」ユラユラ
路上シンガー(め、メトロノーム……?)
・
・
・
―15:45 埠頭―
ツェッペリン「…………」プシュ
ツェッペリン(まさか、ミュンヒナーデュンケルが売っているとはな)
ツェッペリン(『コンビニ』というのも侮れんものだ)
ツェッペリン「…………」ゴクゴク
ツェッペリン(……ワインまで飲んでおいて、今更だが)
ツェッペリン(やはり……昼間から、こんなことでは……)
ツェッペリン(ゴミ箱は……ああ、あそこか)
ツェッペリン「…………」スッ
グイッ!
ツェッペリン「――!?」ヨロッ
ベチャンッ!!
ツェッペリン「…………」
ツェッペリン(……何を……)
ツェッペリン(何をやっているんだ……? 私は……)
ツェッペリン(異国の軍にも、同郷の仲間にも馴染めずに……)
ツェッペリン(みじめに逃げ出して、酒に逃げて……)
ツェッペリン(挙句の果てには……このザマだ)
ツェッペリン「……ハ……ハハ……」
ツェッペリン「ハハハ……ハハハハハハッ……!」スッ
ツェッペリン「…………」ギュッ
ツェッペリン「――これか!? これか!! このヒモかぁぁぁ!!」ブンブン
ツェッペリン「攻撃隊出撃! 夜戦開始ぃぃぃ!!」ブンブン
ツェッペリン「主砲! 副砲! 艦載機! 主砲! 副砲! 艦載機!!」ブチッ
ツェッペリン「何だ、切れたか!? ハハハハハ!!
痛快痛快!! このヒモめぇぇぇぇ!!」ヒュンヒュン
ツェッペリン「よし今だ! 空きカン発進!! 目標ゴミ箱!!
ゲルマン忍法!! シュトゥルム投法!!」ブンッ スポーン!
ツェッペリン「Guuuuuut! 見事Hole in one! んぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「――ぁぁぁぁ――」
ツェッペリン「んぁぁぁぁ…………ん?」
「――ぇぇぁぁぁ――ぁぁ――――!」
ツェッペリン「…………?」
ツェッペリン「何だ……向こうの通りか……?」
―15:50 街道―
少女「ひっぐ……うっ……うああぁぁぁん……」
少女「お゛があ゛ざぁぁぁん……うぁぁ……」
一般通過男「そんでさぁ、あいつん家で昨日……」
一般通過女「えー、ケーキ? へー……」
ツェッペリン(……迷子、か)
ツェッペリン(よく声が通るな……この騒がしさで……)
ツェッペリン「…………」
少女「ぐずっ……ひっ……えっぐ……」
一般通過カップル「…………」フイッ
一般通過親子「…………」スタスタ
ツェッペリン(……迷子……)
ツェッペリン(……迷子か、あの子も……)
ツェッペリン「…………」
少女「……っ……うぅっ……」
ツェッペリン「おい」
少女「っ!?」ビクッ
ツェッペリン「はぐれたのか?」
少女「……ぅ……ひっぐ……」
ツェッペリン「……交番なら、確か向こうの通りに……」
少女「……ちっ、ちがう、から……!」
ツェッペリン「……なに?」
少女「まっ……ぐしゅ、まいごじゃ、ないから……!
あっ、あ、あっち……あっち、いって……!」
ツェッペリン「 」
ツェッペリン「い……いや、しかしだな、現に泣いて……」
少女「っ……! な……ないて、ない!
おっ、おかあさ……まって……まってるだけで……!」
ツェッペリン「待てと言われたのか? この人混みで」
少女「…………」
ツェッペリン「……交番に行こう。関わった義理だ、私が共に……」
少女「!! いい……いいから!! ちがう! はなして! はなして!!」
ツェッペリン「っ……! な、何だ! 私は、ただ……!」
少女「まいごじゃ、ない、って……いっでるの゛に゛ぃ……!!
あっぢい゛っでよ゛ぉぉ……! うああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ツェッペリン「なぜ……なぜだ! 人がせっかく――!」
『迷惑だったろう。こんな私の世話役など』
『――頼む。1人にさせてくれ』
ツェッペリン「…………あ……」
ツェッペリン「……………………」
少女「うぁぁぁぁん! あああぁぁぁぁん……!!」
「……君。ちょっと、君」
ツェッペリン「……?」
警察官「……どういう状況かね? これは」
ツェッペリン「……お巡りさん」
警察官「?」
ツェッペリン「私は……何を、意固地になっていたのだろうな」
警察官「……はい?」
「――ちゃん!」
「ツェッペリンさん!!」
少女「!?」
ツェッペリン「レーべレヒト……!」
少女「……お……おかあ、さ……」
母親「言ったじゃないの! 手を離したら駄目だって……もうっ……!!」
少女「おがああざああああああああん!!」ギューッ
母親「ありがとうございます……ありがとうございます……!」ペコペコ
レーべ「つぇ、ツェッペリン、さん……? その、これは……?」
ツェッペリン「…………」
ツェッペリン「……何、どうということはない」
ツェッペリン「もう、迷子ではなくなったんだ」
―16:30 街道 歩道橋―
レーべ「……わぁ……」
ツェッペリン「見えるものだな。ここからでも」
レーべ「うん。……綺麗だね」
ツェッペリン「ああ……」
ツェッペリン「……照明だったのか、あのヤドリギ」ボソッ
レーべ「…………」
(https://www.youtube.com/watch?v=bPBke8bSeJA)
レーべ「……『O Tannenbaum, O Tannenbaum』♪」
ツェッペリン「!」
レーべ「『Wie treu sind deine Blatter』♪」
ツェッペリン「……上手いんだな」
レーべ「パーティーで歌うんだよ。他のみんなも」
ツェッペリン「そうか……それは楽しみだ」
レーべ「えへへ……」
ツェッペリン「……そう言えば、レーべ。どうしてあそこに?」
レーべ「! …………あのね、ツェッペリンさん!
僕、ずーっと探し回ってたんだよ? ずーっと!」
ツェッペリン「……すまない」
レーべ「本当だよ。いくら探しても、どこにもいないし……」
レーべ「それで、なんだか騒ぎになってて、見に行ってみたら……」
ツェッペリン「――本当にすまない。大事な買い物を……」
レーべ「あ、ううん。いいんだ、そっちは買えたから」
ツェッペリン「! そうか……!」
レーべ「ツェッペリンさんを探してる途中に、ちっちゃい雑貨屋さんを見つけてね」
レーべ「びっくりしちゃったよ。ショーウィンドウに置いてあったんだもん」
ツェッペリン「……良かったな、レーべ」
レーべ「……うん」
ツェッペリン「……ああ、だが……結局何を?」
レーべ「…………はい」スッ
ツェッペリン「……?」
レーべ「いいよ、開けてみて」
ツェッペリン「あ、ああ……」シュルシュル パリッ
ツェッペリン「……! これは……鳩か? 木彫りの……」
レーべ「……その……メリークリスマス、ツェッペリンさん」
ツェッペリン「――!!」
レーべ「毎年、ドイツのみんなには……交換会とは別に、プレゼントを渡してるんだ」
レーべ「でも、今年はツェッペリンさんの分を忘れてて……それで……」
ツェッペリン「…………」
レーべ「この鳩、もともとは2羽で1組なんだよ。ほら、もう片方は僕が……」スッ
レーべ「だいぶ前に、映画で見たんだ。
この鳩を持ってる2人は、ずーっと友達でいられるんだって」
レーべ「映画と同じのを探してたんだけど……
なかなか見つからなくって。えへへ……」
ツェッペリン「……っ…………っ……」
レーべ「……ねえ、ツェッペリンさん」
レーべ「いきなり知らない国に来て、周りも知らない人ばっかりで……
……怖いよね。怖くないわけないよ」
レーべ「でも、僕は……ううん。
僕たちは……みんな、ツェッペリンさんと……」
ギュッ…
レーべ「…………!?」
ツェッペリン「…………」
レーべ「ツェッペリン……さん……?」
ツェッペリン「そうか……」
レーべ「え?」
ツェッペリン(……きっと……これが、そうなのだな……)
ツェッペリン(…………やっと……私の、『竣工』か……)
ツェッペリン「…………」スッ
レーべ「……?」
ツェッペリン「……今まで、心配をかけてすまなかった」
ツェッペリン「――航空母艦、グラーフ・ツェッペリン。
只今より、横須賀鎮守府に着任する」
レーべ「……!」
レーべ「…………うん!」
ツェッペリン「――よし! 帰りがてら、練習でもしておくか?」
レーべ「え?」
ツェッペリン「『O Tannenbaum, O Tannenbaum』♪」
レーべ「あ……!」
ツェッペリン「『Wie treu sind deine Blatter』♪」
レーべ「……『Du grunst nicht nur zur Sommerzeit』♪」
ツェッペリン「『Nein auch im Winter wenn es schneit』♪」
2人「「『O Tannenbaum, O Tannenbaum』♪」」
2人「「『Wie grun sind deine Blatter』――――」」
・
・
・
―20:15 鎮守府 大食堂―
ビスマルク「あっくっまっストッキィン!! ドゥッドゥビッドゥッ!!
あっくっまっストッキン!! ドゥッドゥビッドゥ↑!!」
プリンツ「きゃぁぁぁ! お姉さまこっち向いてぇぇ―――!!」
呂500「あ、次ろーちゃんの番ですって!」ピッピッ
加賀「ではその次に」
マックス「あら、罰則は?」
加賀「もう終わったわ。手慣れたものよ」
ツェッペリン「話が違うぞ!?」
レーべ「か、カラオケ大会って言ってなかった!?」
【おしまい】
クールで優しいツェッペリン誕生秘話みたいなのやりたかった
風呂入ってきます 上がったらイタリア編
Ⅱ.南西風と魔女の舟
―17:15 夕雲型寝室―
リベッチオ「今だあ! ヴァイタルガーダー、きどーかいし!
ペーレーレーレーペーレレーレレー♪」グイーン
清霜「黒のリベイアスを砕き散らせぇ! 最終突撃ぃ、とっかあぁぁぁぁん!!」ドガガガガ
リベッチオ「はいだめー! じゅーりょくせーぎょバリヤー!」ビュワーン
清霜「回転衝角バリヤー突破!」バリーン
リベッチオ「あ! ずるーい! ずーるーいー!」
朝霜「……何やってんだ? あれ」
早霜「戦艦ごっこらしいです」
巻雲「厳密には『航宙艦』なんですけどね!」
朝霜「まーたヘンなアニメ見せやがったな!?」
巻雲「失礼な! 有識者(夕張)の評価も高い名作ですよ!」
コン、コン
早霜「? どうぞ」
リットリオ「失礼しますね」ガチャッ
清霜「! あ、り、リットリオさん!」パァッ
リットリオ「Chao, みんな。ごめんなさいね、リベと遊んでもらって」
朝霜「気にすんなよ、あたいらも楽しいからさ」
リットリオ「ふふ……リベ、そろそろ出発よ。着替えましょう?」
リベッチオ「はぁーい!」
早霜「教会でしたよね? やっぱり、海外の人はちゃんと行くんだ……」
巻雲(……神父さんは銃剣飛ばすのかな? あ、八極拳使ってくる方かも)
朝霜「でもリベ、おまえ嫌だって……」
リベッチオ「う……で、でもね、良い子にしないと、べファーナ来てくれないもん」
清霜「べ……べは? なに?」
リットリオ「『Befana(ベファーナ)』よ。イタリアに伝わるお話」
リットリオ「公顕祭(エピファニア)の前の番、つまり1月5日の夜に、
ベファーナっていう魔女が子供たちの所に来るの」
リットリオ「それで、1年間良い子だった子供にはお菓子をあげて、
悪い子には炭のかけらを置いていくのよ」
巻雲「へぇー、サンタさんじゃないんですね」
リットリオ「『バッボ・ナターレ』のこと?
そうね……やっぱりイタリアでは、ベファーナの方が有名かしら」
リベッチオ「むかしは駄目だったけど……いまはリベも、ちゃんとカンムスだもんね!」
リベッチオ「ベファーナ、ぜったい来てくれるよね!?」
リットリオ「え……ええ! 勿論よ!」
早霜(……なんだろう、この光景、どこかで……)
巻雲(アレですよね、去年の不知火さんと司令官)
早霜(この子直接脳内に……!)
―17:30 玄関前広間―
ツェッペリン「む――! この熊、尻が弱いのか」カチカチ
ビスマルク「そうそう。攻撃も単調だけど、4連ひっかきには気を付けるのよ」
ツェッペリン「なるほど……」カチカチ
オイゲン「 」ポカーン
マックス「……オイゲン?」
オイゲン「あ、あのツェッペリンさんが……!?」
ツェッペリン「! ああ、オイゲン。良い匂いのシュトーレンだ。楽しみだぞ」
オイゲン「! え……は、はい!」
レーべ「…………」ニコニコ
ローマ「……あら?」
レーべ「あ、ローマさん。今から?」
ローマ「ええ。姉さんとリベが来なかった?」
マックス「外で待ってるみたいですよ」
ローマ「外? なんでこんな寒いのに……」
―17:32 外庭―
加賀「…………」サッサッ
リベッチオ「カガさん、おそうじ?」
加賀「ええ。提督に言われたの」サッサッ
リベッチオ「司令官が? なんで?」
加賀「……バレずにつまめなかったからよ」
リベッチオ「……?」
赤城「加賀さん、ドラム缶持ってきましたよ」ゴロゴロ
リベッチオ「あ、アカギさん! Chao!」
赤城「こんばんは。可愛いコートね」フフッ
加賀「ありがとうございます。これで全部?」
赤城「廃棄予定のが、あと5つですって」
加賀「……さすがに気分が沈滞します」
赤城「……松の方は、私がやっておきますから」ガリガリ
リベッチオ「? 何やってるの?」
赤城「松脂を取っているんです。弓の手薬煉(てぐすね)に使うんですよ」
赤城「……ドラム缶いっぱいになるまで、帰れないんですよね。
……ご飯も抜きで……うう……」ガリガリ
加賀「…………」サッサッ
リットリオ「リベー! ローマ来たわよー!」
リベッチオ「あ! じゃあねアカギさん、カガさん!」ダッ
赤城「ええ。いってらっしゃい」ガリガリ
加賀「気をつけるのよ」サッサッ
赤城「…………」ガリガリ
加賀「……イタリア……」ボソッ
赤城「…………」ガリガリ
加賀「……スパゲッティ……リゾット……フォッカチオ……」サッサッサッ
赤城「……アクアパッツァ……ピカタ……ミネストローネ……」ガリガリガリ
―18:10 横須賀街道―
リベッチオ「ねーねーリットリオさん! あのお菓子……」
ローマ「駄目よ、お祈りが先」
リベッチオ「むー……ローマさんには聞いてないよー」
ローマ「あ、あのねぇ……!」
リットリオ「ほら、ローマ……ねえリベ? お菓子も美味しそうだけど、
やっぱり、お祈りが終わってからにしましょう?」
リットリオ「その方が、きっと何倍も美味しいわ。
何でも好きなの買ってあげるから。ね?」
リベッチオ「ほんと!? やったぁ!」
ローマ「……お菓子を買いに出てきたんじゃないのよ?
神父様のお話はちゃんと聞きなさい」
リベッチオ「……お話、面白かったらいいなー」
ローマ「つまんなくても我慢して聞くの! 大事なお話なんだから」
リベッチオ「あ! ローマさんもつまんないんだー!」
ローマ「な――!」
リットリオ「……ローマ?」
ローマ「ち、違います! 違いますよ! ――こらリベ! 笑うんじゃない!」
―18:30 教会―
神父「~~~~……」
リットリオ「…………」
ローマ(……主よ……私たちをお許しください)
ローマ(あなたより与えられたこの手で、鍬や鋤を握ろうともせず……)
ローマ(火砲を手に取り、硝煙に塗れる……罪深き我らに、どうかご慈悲を……)
リットリオ「…………」
リベッチオ(……むー……やっぱりつまんないよ……)
リベッチオ(あーあ……早くリットリオさんとお菓子屋さん……)チラッ
リットリオ「…………」カックン
リベッチオ「……!?」
リットリオ「……!」ハッ
リットリオ「…………」
リットリオ「…………」カクン
リベッチオ(……リットリオさん、居眠りしてる……)
ローマ「…………くぅ……」
リベッチオ(……リットリオさんが寝ちゃうぐらいだもん。
聞かなくてもいいお話なんだよね?)
リベッチオ(なら……聞かなくったって、悪い子じゃないよね?)
ローマ(……主よ……我らの魂は……)
リベッチオ「…………」
リベッチオ(……ローマさんは、リットリオさんの向こう。
それに、目をつぶってお祈りしてるし……!)
リベッチオ「…………」ニヤッ
リベッチオ(……そーっと、そーっと……)スッ
神父「~~~、~~~~……」
リベッチオ(神父さんもむこう向いてる……よぉーし!)ソローッ
ローマ(主よ……私は厳しすぎるのでしょうか……?)
ローマ(ですが、姉さんのように甘やかすだけでは……)
ローマ(あの子には、リベには……正しい道を……
それこそが、私の与えるべき愛(アモーレ)……!)
リットリオ「…………」カクンカクン
―18:40 街道―
ガヤガヤガヤ…
リベッチオ「ふっふーん、ふっふーん、ふふっふーん♪」
リベッチオ(――! あ、あそこ! あのお菓子屋さん!)ヒシッ
店員「あ、いらっしゃい」
リベッチオ(いいなー、このちっちゃい四角の!
て……テロル? あ、チョコラータなんだ!)
リベッチオ(あの白黒のは何の味かな?
黄色いのは『BIS』? ……ビスマルクさん?)
リベッチオ(うーん、どうしよう……どれにしようかなー)
リベッチオ(……おこづかいは、えーと……100、200、250……)ゴソゴソ
「アノー」ガラガラ
店員「あ、いらっしゃいませ。すげえ荷物だねぇ」
スッ
リベッチオ「……?」
離島棲鬼「……コノチョコ、コレデ買エルダケ貰エル?」ドンッ
店員「……ゆ……諭吉……!?」
リベッチオ「 」
―18:45 埠頭―
離島「~~♪ ~~♪」ガラガラ
離島(運搬役に決まった時はどうしようかと思ったけど……)
離島(やっぱり、街ってのも楽しいものねぇ。
あの子たち、このチョコ好きだったわよね?)
離島(わざわざ『走って』きたかいがあったわ)
離島(さてと、あとはイカダに積み込んで……)
リベッチオ「…………」
離島「…………」
リベッチオ「…………」ジーッ
離島「……ネェ、ナンナノ? サッキカラ」
リベッチオ「……買いたかった」
離島「ヘ?」
リベッチオ「……リベも……リベも、そのチョコ……買いたかったのに……」
離島「……アラ、ソウ。悪イケド、私モ欲シカッタノヨネ。
先ニ買ッテオケバ良カッタジャナイノ」
リベッチオ「だ、だって……だってえ……!」
離島(……別の国の子供かしら。この港、外国人も多いし)
離島(――大丈夫よね? バレてないわよね?
い、いちおうグラサンは掛けてるけど…………)
リベッチオ「……っ……うぅ……」グスッ
離島「……ナ、ナニヨ。オ菓子ナンテ、他ニイクラデモアルジャナイ。
トットト帰ッテ、ママニデモ買ッテモライナサイ」
リベッチオ「…………」
離島「……ホラ。ワカッタラ、向コウ行キナサイヨ。
オネーサンハ仕事アルンダカラ」ガサガサ
離島(材木店からこっそり買い付けた薪……
これだけあれば、『アレ』にも十分よね)
離島(ちょっと多いけど……まあ、積み替えるだけならすぐに終わるか。
ええと、イカダは確かこの辺に……)キョロキョロ
離島(……あーあ。滑走路ちゃんも一緒なら楽なのに。
生身で行けとか、どうかしてるわよ……)キョロキョロ
リベッチオ「……テロルチョコ……」
離島「ウルサイッ! イイカゲン諦メナサイ!」
離島(ああ、いけない……もう放っときましょう。そうしましょう)キョロキョロ
離島(…………)
離島『おかしいわね。確かにここに繋いでたのに……』
リベッチオ「!?」
リベッチオ(い……いまの、何語……?)
離島『――! ああ、そうそう、この綱だわ。よかった』グイッ
綱「」プラーン
離島「…………」
離島「……………………」
離島「ニギャアアアアアアアアアアアアア!!!?」
リベッチオ「ひぁぁぁぁぁぁっ!!?」ビクーッ
離島『い、イカダ! イカダ! イカダはぁぁぁぁ!?』キョロキョロキョロ
離島『ない……ない! あそこは!? ああ、ない……!!』
離島『だ、誰よぉ! 誰がこんな、なんで……!』
離島『おもいっきり引きちぎられてる……ど、どんな馬鹿力してたら、こんな……!』
離島『ああぁぁぁぁ…………ど、どうしよう…………』
リベッチオ「……え、えっと……ど、どうしたの?」
離島「…………」
離島「……無クナッチャッタ……私ノイカダ……」
離島「ア、アレガ無イト……届ケランナイノニ……!」
リベッチオ「い、いかだ?」
離島「――チョット、アンタ!!」
リベッチオ「わぁっ!?」
離島「アンタ、コノ辺リニ住ンデルノ!?」
リベッチオ「え、あ……う、うん……」
離島「ジャア、造船所……イヤモウ、貸船屋デモイイワ!
ドコカ知ラナイ!? ソーイウトコ!!」
リベッチオ「ええー……?」
離島「ネ、手伝ッテクレナイ!? 代ワリノヤツ探スノ!」
離島「無クナッテルナンテ思ワナカッタノヨォ……!」
リベッチオ「や、やだよぉ! お姉さんなんか怪しいし!」
リベッチオ「知らない人についていっちゃダメって、
リットリオさんも言ってたもん!」
離島「ベ、別ニ連レテ行コウッテンジャナイノヨ!?」
離島「コ、ココデ待ッテルカラ! 業者ノヒト呼ンデクレルダケデイイノ!」
リベッチオ「で、でもぉー!」
離島「――!! ジャ、ジャア、コウシマショウ!」
離島「ホラ、サッキノ コノチョコ!! 好キナダケ オ礼ニアゲルカラ!」
リベッチオ「えっ!?」
離島「……ホントハ、アノ子タチニアゲタカッタケド……」
ヤッパリ、コッチガ一番大事ダモノ……!」
離島「コノ薪ガ無イト、ミンナ大変ナノヨ!
リベッチオ(…………あれ?)
離島「……ダ、ダメ? ネェ……」
リベッチオ「……ね、ねぇ。ちょっと聞いていい?」
離島「ヘ?」
リベッチオ「その薪……その、やっぱり燃やすんだよね?」
離島「……? 当タリ前デショ? 燃料ダモノ」
離島「アア、デモ……余ッタラ、炭ニシテオクノモ有リカシラ。
水ガ綺麗ニナルモノネ」
リベッチオ(……炭……お菓子……炭……お菓子……)
リベッチオ(――――!!!)
リベッチオ「……べ……」
リベッチオ「ベファーナ……!?」
離島「……ハイ?」
リベッチオ「ほ、ほんとうだったんだ……!」
リベッチオ「もうエピファニアの準備してるんだよね!?
すごいっ! すごいよ! ほんとにいたんだぁー!」パァァァ
離島「ア、アノ……」
リベッチオ「だよねだよねー! そうだと思ったんだー!
お洋服もなんか魔女っぽいもん!」
リベッチオ「まっかせて、ベファーナ!
リベ良い子だから、ちゃんとお手伝いできるよ!」
リベッチオ「待っててね! すぐにBeneなお舟、見つけてくるから!!」ダッ
離島「ア……」
離島「……マア、イイカ……」
リベッチオ(えっへっへー、お礼楽しみだなー)
―18:50 教会―
神父「~~~、~~、~~~~……」
リットリオ「…………」カクン
リットリオ「はっ……!」
ローマ「……はぁ……」
リットリオ「……~~っ……」
ローマ「…………」チラッ
(空席)
ローマ「…………」
ローマ「……――!?」バッ
(空席)
ローマ「り……」
ローマ「……リベぇぇぇっ!!?」ガタン!
リットリオ「!?」
・
・
・
―貸船屋―
店員「うーん、悪いんだけどねぇ。今日はもう休みにしてるんだ」
店員「それにね、予算が分かんないことにはどうにも……」
店員「大体、知り合いでも無いんだろ?
最近、ヘンな奴多いからねぇ。相手にしない方がいいよ」
リベッチオ「うー……で、でも……」
店員「……お嬢ちゃん、ひょっとして艦娘さんか?」
リベッチオ「う、うん!」
店員「だったらあれだ、鎮守府に頼めばいいじゃねえか。
それか、同じ兵隊のよしみで……」
・
・
・
―在日米軍基地―
米兵「What's? イカーダ? ……ああ、Boatsか」
米兵「どこから聞いたのか知らんがな。
そういうIllegal sale……あー、ヨコナガシは禁止なんだぞ? 一応」
リベッチオ「だ、だめ? ……うぅ……」シュン
米兵「……Oh……ああ待て、Boatsじゃないかもしれんが……」
米兵「確か、向こうの路地裏にときどき来る奴が、
そういう乗り物を売ってるとか……」
・
・
・
―路地裏 瑞雲屋―
瑞雲売り「よく来たな、迷える駆逐艦」
瑞雲売り「お前の悩みは知っている。
数々の試行錯誤を経て、この瑞雲に辿り着いたこともな」
リベッチオ「あれ、ヒューガさん!?」
瑞雲売り「人違いだろう。私は名もなき瑞雲の使徒。
趣味は瑞雲を広めることと、戦いの意味を考えること」
瑞雲売り「さぁ、何も言わずにこれを受け取れ」
瑞雲ちゃん「」ブーン
リベッチオ「あ、かわいい!」
瑞雲売り「万能ミニチュア・瑞雲ちゃんだ。
ちょっとした輸送は勿論の事、鎮守府の道案内もしてくれるぞ」
リベッチオ「え、えと……でも、お金……」
瑞雲売り「気にするな。
勘違いする者も多いのだが、私は瑞雲を売っているわけではない」
瑞雲売り「瑞雲の輪が、世界に広まること。それが何よりの報酬だ」
リベッチオ「ヒューガさん……! Grazie!」
瑞雲売り「まあ、そう言うな。――では、頼む」ドン
リベッチオ「……えっ?」
瑞雲売り「募金箱だ。瑞雲ちゃん1個につき、250円が相場だな」
瑞雲売り「商売ではないぞ。決して違うぞ」
リベッチオ「…………」
瑞雲ちゃん「」ブーン
・
・
・
―19:24 埠頭―
離島「……マア、何? アレネ」
離島「……私モ、無茶イッタト思ウ」
リベッチオ「……ごめんね、ベファーナ……」グスッ
瑞雲ちゃん「」ブーン
離島「……良ク出来テルケド……コンナ羽虫1匹ジャア……」
瑞雲ちゃん「」カチン
リベッチオ「り、リベ……ちゃんと探したんだよ? でも……!」
離島「アア、イイカライイカラ……」
離島(……目立つことはするなって言われてたけど……)
離島(仕方ないわ。背に腹は代えられないもの……)ゴキッゴキッ
リベッチオ「ひぁっ!?」ビクッ
離島『……ああ……あの船なんか、良さそうね』ゴキゴキ
リベッチオ「べ、ベファーナ? どうしたの……!?」
離島「……ショウガナイカラ、借リルノヨ。ムリヤリ」
離島「デキレバ、ヤリタクナカッタケドネ……時間モ無イモノ。仕方ナイワ」
リベッチオ「――! ど……泥棒するってこと!?」
離島「――ナァニ? 駄目ダナンテ言ウツモリ?」
リベッチオ「だ、だって! ベファーナは良い子に……!」
離島「…………」
離島「『べナントカ』ダカ何ダカ知ラナイケレド……」
離島「コノ薪ガ、ミンナニ届カナカッタラ……何百ッテイウ仲間ガ困ルノヨ!」
離島「1年ニ1度ノ、大事ナ『アレ』ガ……私ノセイデ台無シニナル!!
ソレガ『良イ事』ダッテ言イタイワケ!?」
リベッチオ「でも……でもぉ! ベファーナ……!」
離島「――覚エトキナサイ、オ嬢チャン」
離島「陸ノ上デモ、海ノ底デモ……」
離島「コノ世ニ、良イ『ダケ』ノコトナンテ……絶対ニアリハシナイノヨ」
リベッチオ「――! ……っ……」
離島「……私ハ、アノ子タチノ笑顔ガ見タイ」
離島「――知ラナイ誰カヲ、泣カセタッテネ……」
リベッチオ「…………」
離島「……ゴ苦労ダッタワネ。コレグライデ足リル?」ゴソゴソ
リベッチオ「……待って……」
離島「……?」
リベッチオ「リベ、もう1回探すから……!」
離島「……アノネェ、ダカラ時間ガ無イッテ……」
リベッチオ「何時!? 何時までなら大丈夫なのっ!?」
離島「ッ!? ……エ、エエ……今、■■ダカラ……」
離島「ソッチノ時間デ、『ハチジ』グライニハ……」
リベッチオ「8時だねっ!」ダッ
離島「チョ、チョット!?」
リベッチオ「ここで待ってて! リベ、足だけは速いんだから!」
離島「待チナサイ! ナンデ、ソンナ……!」
リベッチオ「リベは……リベも、嫌だもん……!」
離島「エ……?」
リベッチオ「――ベファーナを悪い人にするなんて、ぜったい! ぜったい嫌だもん!!」ダッ
―19:30 街道―
リベッチオ「はぁっ、はぁっ……!」ダッダッダ
リベッチオ(で、でも、どうしよう!? あんなこと言っちゃったけど……!)
瑞雲ちゃん「」ブーン
リベッチオ「! ズイウンちゃん?」
瑞雲ちゃん「」プラプラ
リベッチオ「……? なあに? このヒモ」ギュッ
瑞雲ちゃん「」ブロロロロ…
瑞雲ちゃん「」プォォォォォ――――ン!!!
リベッチオ「ひゃあぁぁぁああああぁぁぁあああ!!?」ダダダダダ
・
・
・
ローマ「リベ……リベッチオって言うんです!
赤毛で2つ結びの、可愛い子で……!」
警察官「お、落ち着いて下さい艦娘さん! ほら、まずは鎮守府に……!」
ローマ「リベ、リベ……遊びに行っただけよね? そうなのよね?」
ローマ「――! まさか……ゆ、ゆゆゆゆゆ、誘か――」
リットリオ「ろ、ローマっ!」
警察官「ああもう! 何で今日はこんなに迷子が……!」
「わあぁぁあああぁあぁぁああぁとまってとまってとまってええええぇぇぇええ!!」
ビュオン!!
ローマ「ふああぁぁっ!?」グルグルグル
リットリオ「な、なに……!?」
―19:40 鎮守府外庭―
ゴォォォォ…
赤城「……暖かいですね」
加賀「ドラム缶5個分ですから」
赤城「パーティー、始まってしまいましたね」
加賀「……終わらないうちに戻れます。これが全部燃え尽きれば……」
赤城「そうですね……」
「――ぁぁぁぁああああああああ!!!」ダダダダダ
赤城「!?」
瑞雲ちゃん「」ピタッ!
リベッチオ「わああっ!! い、いたたた……!」
加賀「り、リベッチオ……?」
リベッチオ「……え? ここ、鎮守府……?」
瑞雲ちゃん「」ブーン
リベッチオ「……!」ハッ
リベッチオ「ああ――――っ!!」
加賀「 」ビクーッ!
―19:52 埠頭―
離島「…………」
離島『……何やってるのかしら、私。
とっとと船でも何でも頂けばいいじゃないの』
離島『おまけに……はぁ……』ゴソッ
「ベファーナさんっ!!」
離島「! ア、アンタ……」
リベッチオ「ほ、ほら……これっ……!!」
ゴロン
ゴロンゴロン ゴロン…
・
・
・
離島「ヨシ、アトハコッチヲ結ンデ……!」ギュッ
離島「……フゥーッ……」
リベッチオ「できた!? 完成!?」
離島「……マア、急ゴシラエニシテハ、悪クナイワ。
コノ、『ドラム缶イカダ』……」
離島「チョウド、薪モ全部入ッタシ……」
リベッチオ「よ、よかったぁ……」ヨロッ
離島「チョ、チョット! ダイジョウブ!?」
リベッチオ「ち、鎮守府までは……ちょっと、疲れたかも……えへへ」
離島「チンジュ…… ――!!」
リベッチオ「……ベファーナ?」
離島「…………」
離島「……イイエ。ホラ」
リベッチオ「……? わっ!」ドサッ
リベッチオ「――! て、テロルチョコ……!?」
離島「……アゲルワ、全部」
リベッチオ「え!? でも、ベファーナの……!」
離島「イイノヨ。サッキ別ノヲ買ッタカラ……」
離島「…………」グイッ
ザプン!
離島「……ヨシ、チャント浮クワネ……」
リベッチオ「……ベファーナ……」
離島「――ダカラ、私ハネェ……」
リベッチオ「…………」グスッ
離島「…………マア、イッカ……」ザプン
リベッチオ「――!」
リベッチオ(み、水の上に立ってる……! やっぱり本物だぁ……!)キラキラ
離島「……世話ニナッタワネ。ソノ……アリガトウ」
リベッチオ「……エピファニアにも、来てくれるんだよね?」
リベッチオ「リベ、ずーっと良い子で待ってるから! 絶対、絶対だよ! ベファーナさん!」
離島『……私は、もう2度と会いたくないわ』
リベッチオ「……?」
離島『……だって……次に会うときは、きっと……』
離島「…………」
離島「……コウイウ時……」
リベッチオ「え?」
離島「確カ、コウ言ウノヨネ? アナタタチハ……」
離島「……メリィ・クリスマス。――ジャアネ」
バシュン! ザザザザザッ…
リベッチオ「あ……!!」
リベッチオ「……うん……うん!」
リベッチオ「Buooon Nataaaale! ばいばーいっ!!」ブンブン
離島『あれ!? 違った!?』ザザザザザッ
リベッチオ「……! ……!」ブンブン
リベッチオ「…………」
「――! リベ……」
リベッチオ「え?」クルッ
ローマ「リベ……リベぇぇぇぇぇっ!!」ガシッ
リベッチオ「わぁっ!?」
リットリオ「り、リベ……ああ……!」
ローマ「ばかっ! ばかっ! ばかぁっ!
どこ行ってたのよぉ! もぉぉ……! あぁぁぁ……!!」グスッ
リベッチオ「ろ、ローマさん……? 泣いてるの?」
ローマ「泣いてなんかないわよぉ! みっ、みたら、見たら分かるでしょぉぉぉ……!!」ワシワシワシ
リベッチオ「ひゃっ! あっ、ろ、ローマさぁん!」
ローマ「……良かった……良かったぁぁ……」ギューッ
リベッチオ「…………」
リベッチオ「……えへへっ……」ギューッ
リベッチオ「ねぇ、ローマさん。リットリオさん」
ローマ「……?」
リットリオ「え?」
リベッチオ「……リベね、すっごい人に会ったんだよ!」
【おしまい】
今日はここまで
明日は深海編と妙高編
>>1氏、ターキーと鶏肉を間違える
荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」
↓
信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」
↓
鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋
↓
信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」
こんな可愛い信者が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」 【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」 【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450628050/)
Ⅲ.東から来た3バカ真面目
―18:25 鎮守府廊下―
山城「はい」スッ
長門「……何だ、これは」
山城「見て分かるでしょ? お線香よ」
長門「いや……交換会に出すんだぞ?」
山城「リラックス用品よ。姉様と私もよく使ってるわ。
香りごとに効能があるんですって」
長門「……『恋愛運上昇』……?」
山城「私はそんなのいらないもの。それに、姉様にはもっと必要ないわ」
山城「……言っておくけど、『幸運上昇』は絶対にあげないわよ!」
長門「要るかっ!」
扶桑「山城、そろそろ……」
山城「は、はいっ姉様!」バダン
長門「なっ、おい待て! 山城!」
長門(……こ、こんなのを貰って嬉しいのか?)
長門(というか……全員、要らないものを処分してるだけじゃないのか?)
長門(赤城たちに至っては、無言で松脂を出してきたぞ……)
「テートクー! Jukebox借りてくネー!」
「いいけど、ちゃんと後で戻しとけよー」
長門「……!」
―18:28 玄関前広間―
長門「提督!」
提督「お、長門。……ほー、結構集まったな。ありがとさん」
長門「そのコート……外出か?」
提督「家族サービスだよ。こんな日でもなきゃ、一緒にいてやれんものなぁ」
長門「……そうか」
提督「何かあったら妙高に言ってくれ。二二〇〇ぐらいには戻る」
長門「ああ……承知した」
提督「――あんまり変なことは考えるなよ?」
長門「……!」
提督「特に夜は……何があるか分からんからな。
じゃ、行ってくる」
長門「あ、ああ……」
長門(……何を……何を隠している……!?)
「――長門さん」
長門「?」クルッ
不知火「よかった、今からお部屋に伺おうと……」
長門「不知火? どうした?」
不知火「いえ、交換会のプレゼントを忘れていまして」スッ
【フルタカ製菓 生クリームチョコレート】
長門「…………」
不知火「陽炎姉さん、この金紙で鶴折れるんですよ」
長門「……こういうのでいいんだよ、こういうので」ウルウル
不知火「?」
長門「……そう言えば、不知火」
不知火「はい?」
長門「ここに来て何年ぐらいだ?」
不知火「? まだ1年と……半年程度ですが」
長門「去年のクリスマスイブも、出撃は禁止されていたのか?」
不知火「ええ。全くもって意味不明ですが……司令のご命令でしたので」
長門「……そうか……」
不知火「なぜそんなことを?」
長門「いや……どうにも気になってな」
不知火「……不知火ではお力になれませんが」
不知火「もしかすると、那智さんなら事情をご存知かもしれません」
長門「……那智? 奴が?」
不知火「ええ。妙高さんの同期で、初期艦に次ぐ古株と聞いています」
長門「ふむ……」
―18:34 妙高型寝室―
那智「……いや、別に知らんぞ」
不知火「 」
長門「おいっ!?」
那智「確かに、昔からある慣習だが……
わざわざ理由を問い質すなど、一度もやったことはないぞ」
那智「……まあ、疑問が無いとは言えないが。
だからと言って、異議を申し立てる筋合いもあるまい」
那智「それに……毎年、隼鷹や千歳と飲み明かして過ごすからな」
那智「下らんことを気にしていると、どうにも酒が不味くなる」
長門「しかしだな……!」
那智「しつこいぞ! 知らないと言っている!」
長門「…………」
長門「……知りたくは、ないのか?」
那智「……何?」
長門「真実だ。……提督は、明らかに何かを隠している」
長門「今日だけは敵も襲ってこないなど……!
そんな与太話を、素直に信じられるのか!?」
那智「む……」
長門「……命令に背くことになる。それは重々承知の上だ」
長門「だが、不測の事態がないとも限らない!
それに備えるのは間違っているのか!?」
長門「万が一のために哨戒を行い、事の真相を突き止める――」
長門「たとえ命令違反だとしても、誰かがそれを成さねばなるまい!
他ならぬ、私たち自身のために!」
長門「何かがあってからでは遅いのだぞ!」
那智「それは……まあ……」
長門「……不知火、お前はどうなんだ?」
不知火「え! ……し、不知火ですか……」
不知火「……まあ確かに……長門さんにも、一理あるとは……」
那智「おい!」
長門「どうだ? 那智」
那智「……し、しかしだな。妙高姉さんが……!」
長門「心配するな。私がそそのかしたとでも言えばいい。
必死に止めたが、無理矢理従わされたと……」
那智「……う、うーむ……」
長門「……いいか? まずはパーティーの途中で……」ヒソヒソ
―20:45 大食堂―
(https://www.youtube.com/watch?v=WeB_g2sQjtQ)
鳳翔「急な 坂道 駆けのぼぉったらぁ~♪」
鳳翔「今もうーみが見ーえるでしょぉーぅかぁぁぁ~♪」
瑞鳳・祥鳳「アー! アー! アー! アー! ハァァ――♪」
デデデン!
鳳翔「ここはぁ~横~須賀~♪」
龍驤「~~~♪」(迫真のサックスソロ)
陸奥「あら? 姉さんは?」
榛名「え、いらっしゃいませんか?
プレゼント交換の時にはお見かけしましたけど……」
早霜「余りを配りに行くみたいですよ。
さっき不知火さんから聞きました」
ビスマルク「ああ、パーティーを休んでる子もいるものね」
清霜「で、でもあの服……ふ、ふふふ……!」
ビスマルク「?」
隼鷹「那智と不知火も一緒だってさ。よくやるよねぇ、ホント」グビグビ
朝霜「でもアレ、もうロクなもん残ってねーんじゃねえか?」
加賀「……貴女たち、ちゃんと鳳翔さんの歌を聞きなさい」ピョンピョン
赤城「まごころが足りませんよ、まごころが」ピョンピョン
加古「……ぐかーっ……」zzz
―同時刻 艤装格納庫―
長門「……よし……」ガチャン
那智「おい、長門……」
長門「何だ?」
那智「今更だが、その……この格好は……!」
長門「那珂のサンタ衣装がどうした?」
那智「き、着替える必要があったのか!? 正直だいぶキツ……ぁっ……!」ピチッ
長門「仕方ないだろう。嘘を貫くには説得力が必要だ」(漣サンタ服)
長門「予備はそれだけなんだ、破るんじゃないぞ」ピチッ
不知火「…………」(龍驤サンタ服)
長門「? し、不知火?」
不知火「……やはり……司令のおっしゃる通りですね……」
長門「へ?」
不知火「……無いものは自分で生み出すしかない。
この世にいないと嘆くならば、自分自身がそうあるべきだと……」ポロポロ
長門(!?)
不知火「! ……失礼しました。ところで、その袋も?」
長門「ここに置いておくと出撃がバレる。
片手が塞がってしまうが……まあ、止むをえまい」
明石「艤装に括っておけばいいじゃないですか」
長門「ああ、それは盲点だっ――」
長門「――――!!?」バッ
明石「こんばんは、長門さん?」
長門「あ……あ……」ガタガタ
明石「ちょっと見せて下さい……ほら、お2人も」カチャカチャ
不知火「……え?」
明石「……よし、砲身・弾薬、ともに異常なし! いつでも出られますよ!」
那智「……な、明石……!?」
明石「――私だって、理由が分からないのは嫌ですからね」
明石「メカニズムが不明なまま使い続けるなんて、怖くてしょうがないでしょう?」
長門「あ、明石――!」
明石「……さ、早く!」
>>117 ちょっと修正
那智(……ハァ……)
不知火(……万事休す、ですか)
明石「ちょっと見せて下さい……ほら、お2人も」カチャカチャ
不知火「……え?」
明石「……よし、砲身・弾薬、ともに異常なし! いつでも出られますよ!」
那智「……な、明石……!?」
明石「――私だって、理由が分からないのは嫌ですからね」
明石「メカニズムが不明なまま使い続けるなんて、怖くてしょうがないでしょう?」
長門「あ、明石――!」
明石「……さ、早く!」
長門「――すまない! さぁ那智! 不知火! 抜錨だっ!」バシュゥッ!
那智「あ、ああ! 了解!」バシュゥッ!
不知火「サンタ戦隊、出撃します!」バシュゥッ
明石「…………」
妙高「……申し訳ありません。毎年毎年」
明石「なーんか納得いかないなぁ……」
ちょっと休憩
―20:56 鎮守府正面海域―
長門「さて……今の所、電探には……」
不知火「! 長門さん、あれを!」
長門「何だ!? ……――ッ!」
那智「あれは……敵の艦載機!?」
長門「……6機か。しかし何だ? あの編隊は」
不知火「六角形……でしょうか?」
那智「発光の具合がいつもより強い。……普通の艦載機ではないな」
敵艦載機「」キィーン
不知火「敵機、進路変更なし。方位220……南西です」
長門「……? 何だ、どこに向かっているんだ?
私たちに気付いていないはずは……」
那智「どうする、深追いは危険だぞ?」
長門「…………」
―21:24 太平洋沖―
バシャァァァン! バシャァァァン!
ザザザザザザザザ…
不知火「…………」ガタガタガタ
那智「……おい……おい」
長門「ああ……わ、分かっている……」
イ級「■■■――!!」バシャァァン!
ワ級「■■■■!! ■■――!!」ザザザザザ
リ級「■■? ■■■……」ザバーン
ツ級「■■■■■―――!!」ザバーン
ヨ級「■■…………■……」ブクブクブク
長門(い……いつの間にか……囲まれて……!!)
那智(どういうことだ……!? 何故襲ってこない!?
なぜ一様に、あの艦載機に追従している!?)
不知火「雪風……ど、どうか私を……!」ガタガタ
―21:50 小島 洞窟内―
ザワザワザワ…
ドンドコドンドコドンドコドンドコ…
ロ級「■■■……」
ネ級「■■■■、■■?」
レ級「■■ー! ■■■――!」ガンガン
ツ級「■■■!!」ベチン
レ級「!? ■■……■■■!!」ブン
ギャーギャーギャー!
長門「……な……なんという数だ……!」コソッ
那智「かなりの広さの洞窟だぞ……それがここまで埋め尽くされて……!」コソッ
不知火「な、長門さん……あの音は一体……!?」コソッ
長門「分からん……奴らの楽器なのか……!?」
那智「! あの中央の岩柱……頂点が平らになっているな」
長門「ああ、明らかに加工の跡が見える……
見張り台か? いや、それにしては……」
不知火「灯りは……あの篝火ですね……」
長門「ああ。あれも相当な数だ……」
那智「燃えているのは……薪か? この島で採れたのか?」
長門「馬鹿な! 草木の生えているような島では……!」
ヲ~~~~ヲ~~~……
長門「――っ!?」
深海棲艦「――――!」ピタッ
那智「……何だ、奴ら……急に静かに……」
ヲ~ヲ~ヲ~ヲ~~
ヲ~ヲ~ヲ~ヲヲヲ~~~
不知火「……!? ……!?」ガタガタ
長門「不知火! 落ち着け!」
ピョ~ロ~ロ~ロ~ロ~ロ~ロ~ロ~
ピョ~ロ~ロ~リ~ロ~ロ~ロ~ロ~~~……
深海棲艦「――――――――」
長門「…………」
デーン!! デデーン!! デデーン!!
長門「――!?」
深海棲艦「■■■■■■■■■―――――!!!」ウオオオオオオ!
装甲空母姫「」バッ! (デン! デデデッデデデッ)
空母棲姫「」バッ! (デン! デデデッテンテン)
中間棲姫「」バッ! (デン! デデデッテンテン テンテンテー)
水母棲姫「」バッ! (テレレレレレテッテー)
那智「な……何だ!? 何が……!」
不知火「しっ、不知火を……不知火を怒らせ……」ガタガタ
ピロリロリロピロリロリロ テーン! テーン! テーン!
全棲鬼「「「■■■■――――!!」」」ゾロゾロ
全棲姫「「「■■■――! ■、■、■――!」」」ゾロゾロ
全水鬼「「「■■―――! ■■■――!!」」」ゾロゾロ
深海棲艦「■■■■■■■■■――――!!!」ワァァァァァァァ!!
ピョロロローン!!
ピョロロローン!!
不知火「あ、ああ……上級棲艦が、あんなに……!」
長門「? 待て、何か足りないような……」
那智「――! 長門……あれを!」
長門「ッ……!?」
デッデーン デーンデーンデデッ!
デッデーン デーンデーンデデッ!
デッデーン デーンデーンデデッ!
デッデーン デーンデーンデデッ!
全水鬼「「「~~~」」」グルグル
全棲鬼「「「~~~~」」」ユラユラ
全棲姫「「「~~~~~~」」」ワラワラ
デッデーン デーンデーン ジャッジャン!!
チャランチャランチャランチャラーン ジャッジャン!!
長門「……お、踊っているのか……!? あの岩柱を囲んで……!」
那智「――! そうか……そういう事か……!!」
長門「な、那智……!?」
那智「……これはおそらく……奴らの『儀式』なのだ!
それも全ての上級艦が、共同で行うほど重要な……!」
不知火「で、ですが! 一体何の……」
那智「……おそらく、あの岩柱を拝んでいるのだろう」
那智「見ろ! 周囲の下級艦も、全員があの柱に向かって手を……!」
長門「で、では……あれが、奴らの神だと……!?」
那智「あるいは……それに類する『何か』……!」
ゴゴゴゴゴゴゴ…
不知火「っ! ゆ、揺れ……!?」
長門「あ、あの岩柱だ……!」
ペペーン ペペーン ペーン
ペペーン ペペペー…
全深海棲艦「「「――――――――」」」スーッ
那智「ひれ伏したぞ……! やはりアレが……!」
長門「――! み、見ろ! 岩柱の上に……!!」
不知火「――っ……!!」
ボゴッ… ボコッ… パカッ!!
…デーン!! デッテ――――ン!!!!
北方棲姫「――――――――」 ジャァァァァァン
デーン!! デッテ――――――ン!!!
全深海棲艦「■■■■■■■■~~~~~!!!」ウォァァァァァ!!
デーン!! デッテッデーンテッテ――――……
長門「 」
那智「 」
不知火「 」
長門「な……あ、あ……?」
那智「…………まさか……まさか、あれは……!」
不知火「……う……う……!」
不知火「……生ま……れた……!? 深海棲艦が……!!」
長門「な――!?」
那智「これが……これが、深海棲艦の……!」
不知火「…………」フラッ
ドサッ!
長門「! しらぬ――」
不知火「……こ、腰が……」ガクガク
不知火「――!?」ビクッ
那智「 」
長門「……?」クルッ
北方「…………」ジーッ
全棲姫「「「…………」」」ジーッ
全深海棲艦「「「……………………」」」ジーッ
長門「 」
北方「…………」
北方棲「■■■?」
港湾棲姫「■■」コクン
北方「…………■■、■■■!!」ビシッ
ル級「■■■!!」ガシッ
長門(……終わった……間違いなく沈められる……)
長門「――ッ! い、いや駄目だ!
逃げろ那智、不知火! お前たちだけでも……!」
ヌ級「■■■■? ■■」ガシッ
チ級「■■■■■」ガシッ
那智「……すまんな。もう手遅れらしい」
不知火「は、離しなさい! 離して……ああ……」
ゾロゾロゾロ…
長門(……!? な……私たちを奴の前に……!?)
北方「――!」ピョーン スタッ
北方「…………■!」ビッ
長門「……?」
北方「……? …………■■!」ビッ
長門(……な、何だ? 手など突き出して……)
不知火「――!」バッ
長門「! し、不知火! どうした! なぜ袋を……!」
不知火「み……貢ぎ物です……!」ゴソゴソ
長門「なにぃ!?」
不知火「な、何か渡せば、きっと……ふ、ふふふふ……」
長門「いかん、正気を……!」
那智「ま、待て……意外と名案かもしれん」ヒソヒソ
長門「お前まで何を……!」
那智「見てみろ! 周りのこいつらを……!」
全深海棲艦「「「……■? ……■■……」」」ヒソヒソ
那智「……私たちを沈める気なら、もっと殺伐としているはずだ」
那智「だが、奴らから敵意は感じられない。それどころか困惑しているようにも見える」
那智「……あの小さいのが、本当に供物を求めているのかは分からんが……」
那智「すぐに襲いかかってこない以上、時間を稼ぎさえすれば……!」
長門「――! 脱出の好機が……!」
不知火「……これで、これでどうか……」ガタガタガタ
【フルタカ製菓 生クリームチョコレート】
北方「……?」
離島棲鬼「――! ■■■!」
北方「! ■■■!」ピョンピョン
長門「よ、よし! 好感触だ!」
那智「不知火! 次は私が!」ゴソゴソ
那智(吟味している暇は無い! とにかく何か――)バッ
ペニョン
北方「…………?」
那智・長門(( 松脂ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!? ))
北方「……■■?」ペタペタ
港湾「■……? ■■……」フルフル
那智「ふざけるな! どうしてあんなものが……!」ヒソヒソ
長門「ままま、待て! まだあわあわあわてるるる」ガタガタ
不知火「不知火の落ち度ではありません」ガタガタガタ
長門「ち、違う! 違うんだぞ! 本当はこれをあげたかっ――」バッ
チーン…
北方「…………??」
長門・那智(( 線香ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?))
北方「……■■? ■■……」
空母「■■■……■■?」ウーン
長門(終わった……完全に不興を買った……)
那智(……羽黒、足柄、姉さん……すまない……)
不知火(……こ、こうなったら……!!)チャキッ
港湾「!!」
長門「! よ、止せっ不知火!」
不知火「い……生きて虜囚の辱めなど――!」
不知火「司令っ! お許し下さい!」カチッ
パァァァァン……
長門「……?」
那智「……なに……?」
不知火「…………?」
不知火「……何ですか、これは……り、リボン?」
北方「――! ■■■! ■■ー!!」ピョンピョン
不知火「…………」
不知火「…………」カチッ
パァァァァァン…
北方「■■ー! ■■■ー!」ニコニコ
不知火「……空砲ですね、これ。クラッカー入りの……」
不知火「ふふ、ふふふ、ふふふふふふふふふ……」
那智「 」
長門「あ、明石ぃいぃぃぃぃいいぃぃぃぃ!!!」
不知火「おめでとうございます。おめでとうございます」パーンパーン
北方「■■■■――!!」ワーイワーイ
全深海棲艦「「「■■■■■――!!」」」パチパチパチパチ
ザ―――ッ!
長門(――道を空けた……!? よ、よく分からんが、今だ!)
長門「那智、不知火! 逃げるぞ! いいな!?」ガシッガシッ
長門「うぉおおおおおおおおおっ!!」ザザザザッ
那智「 」
不知火「おめでとう。おめでとう。おめでとう」パンパン
全深海棲艦「「「■■■ー! ■■■■■!!」」」パチパチパチパチ
北方「■■■~~~!」フリフリ
―22:40 鎮守府・艤装格納庫―
ガシャーン!
長門「はぁ……はぁ……はぁ……」
那智「う、うぅぅ……」
不知火「 」パクパク
長門「な……何だったんだ、あれは…………」
「……やっぱりな」
長門「っ――!」バッ
提督「――見に行くだろうと思ったよ」
長門「て、提督……!」
提督「……言っただろ? 何が起こるか分からんってさ」
那智「こ、これは……その……」
不知火「 」
提督「ほら不知火、総員起こーし」ペチペチ
不知火「…………」ハッ
不知火「! し、司令! く、クラッカーが、クラッカーが……」
提督「まあな。あそこに実弾ブチ込むわけにもいかんだろ」
長門「――! し、知っていたのか!? あの……『アレ』を……!」
提督「勿論、存在は知っている。……意味は全く分からんが」
提督「ただ、あの場に集まった奴らには……我々への害意など、全く無い。
それだけは、この身を持って実感した」
那智「!」
提督「……当然、我々の方から仕掛けてしまえば、また別の話だろうがね。
だからこそ……ああやって、明石に頼んでいるんだ」
提督「毎年、君らみたいなのが後を絶たんからな。
もう完全に伝統行事だよ」ハハハ
長門「~~~っ! な、なら! 最初から言っておけば良いだろう!」
提督「……『深海棲艦が集まって、謎の儀式を開いてる』って?
……言ったところで、信じたか?」
長門「……う……」
提督「……ま、納得したなら何よりだ。次からはもうやるんじゃないぞ?」
提督「那智、不知火。君たちもな」
那智「…………」
不知火「…………」
長門「……提督」
提督「ん?」
長門「……アレは……アレは、一体何なんだ?」
提督「…………」
提督「……何だろうねえ。……でもほら、アレだ」
提督「――文化って奴は、尊重しなきゃな」
長門「…………」
提督「……私からは以上だ。それじゃあ、な」
提督「……足、重ねると痺れにくいぞ」ボソッ
長門「?」クルッ
妙高「…………」ニコォ
妙高「……正座」
長門「あ゛……」
那智「ひっ」
不知火「 」バタッ
―同時刻 深海―
(https://www.youtube.com/watch?v=RgEf4DCHrTM)
イ級『あの赤い人たち、どっかで見たことなかった?』
ロ級『さぁ……でもアレ、何あげてたんだろ』
タ級『でん! てててってってん! でん! てててってってー♪』
ル級『好きねえ、その曲』
タ級『今年のもホント良かったよ! 「劇団時化」大好き!』
ル級『ほっぽちゃん可愛かったわねえ。
あ、あの舞台装置新しくなってなかった?』
タ級『え? あ、そう……』
離島棲鬼『お、終わった……ああ……』
装甲空母鬼『お疲れさま。なんかトラブルあったんだって?』
離島『いや聞いてよ、それがね……』
【おしまい】
深海編終了 JCSほんとすき
風呂上がったらラストの妙高編
Ⅳ.或る夜のふたり
―23:40 執務室―
提督「っし……気をつけなさいよ、足元」
妙高「ええ……ありがとうございます……」
提督「あー、この辺だ。この辺でいいよ」
妙高「はい……よいしょっ、と」ドンッ
提督「……ったく金剛の奴、ちゃんと戻しとけって言ったのに……」
妙高「ふふ……お疲れ様です、提督」
提督「ああ、君も……そうだ。あの3人、どうだった?」
妙高「ご心配なく。しっかりと言い聞かせておきました」
提督「……笑顔で言うんだから、この人は……」
妙高「あら? 提督からお任せいただいたんですよ?」
提督「……さっき見たけど、那智のやつ顔面真っ青だったぞ?」
妙高「当然ですわ。身内ですもの」
提督「おっそろしい姉さんだね、ほんと」ゴソゴソ
妙高「……あ、電灯、お付けしましょうか?」
提督「いいよ。あんまり眩しいと……」ゴソゴソ
提督「……あれ、ここか? ……いや……」ガサガサ
コロンッ
妙高「……?」
提督「すまん妙高、豆電球だけ点けてくれる?」
妙高「あ、はい」カチッカチッ
提督「悪いね……あ、ここか。何だ……」カチッ
妙高(……何かしら、あれ)スッ
提督「ん?」
妙高「いえ、何か机から落とされましたよ」
提督「ああ、すまん……」
妙高「――――!」
提督「……? 妙高?」
妙高「……あ、いえ……どうぞ」スッ
提督「ん? …………あ――」
妙高「…………」
提督「…………」
妙高「……その、提督」
提督「……うん?」
妙高「……いけませんよ。こんな貴重なもの……
机の上に、放っておくなんて」
妙高「……その『指輪』、支給されるのは1つきりでしょう?」
提督「……そうだな。今度からは引き出しに放り込んどく」
妙高「…………」
提督「……さて……」キュポン
妙高「……提督?」
提督「ん? ……あ、そうだな。もう寝ていいぞ? お疲れさん。
あとはこの日誌だけだしな……」
妙高「いえ……」
提督「……?」
妙高「……もしよろしければ、その……お傍でお待ちしても……?」
提督「…………」
提督「……物好きだねえ」カリカリ
・
・
・
提督「…………」カリカリ
妙高「……提督」
提督「んん?」
妙高「……いかがでしたか? お食事会は……」
提督「ああ……楽しかったよ。色々話して、プレゼントも……」
提督「……そうだ。カミさんから聞いたんだが、
あいつ、今日ちょっと迷子になったんだと」
妙高「まあ……!」
提督「何でも、きれーな外人のねーちゃんに助けてもらったってさ」
提督「この話始めたら、あいつ途端にぶすーっとしちゃってな。
別に恥ずかしいことじゃないのによ……」ハハ
妙高「……ふふ……」
提督「…………」カリカリ
妙高「…………」
妙高「……提督」
提督「何だ、まだあるのか?」
妙高「! あ、いえ……申し訳ありません、お仕事の邪魔を……」
提督「あ、いやいや……いいんだよ。もう書き終わったとこだ」パチンッ
提督「……ああ……いいもんだな、豆電球」
妙高「…………」
提督「それで?」
妙高「……提督。お子さんを育てるというのは……どんなお気持ちなのですか?」
提督「…………?」
妙高「……お子さんの成長を見守るというのは、やはり、嬉しいものですか?」
妙高「家族と共に年を重ねてゆくのは……きっと幸せなことなのですよね?」
妙高「――大好きな人の子を授かるというのは……いったい、どんな気持ちなのでしょう?」
提督「…………」
提督「……どうして、それが知りたいんだ?」
妙高「どれも……私たちには、できないことですから」
提督「…………」
妙高「……こういう形をしている以上……
その、『そういう』事は、できますけれど……」
妙高「……それが、私たちの終点なんです」
提督「…………」
妙高「心からお慕いする方と結ばれる。
……そこまでなんです。私たちには」
妙高「いいえ。『それだけ』で十分なんです」
妙高「…………たとえ、形だけであったとしても」
提督「……妙高」
妙高「……素敵な奥様がいらっしゃるのは、重々承知しています」
妙高「でも、その『指輪』は……あくまで、装備ですから」
妙高「最大練度の艦娘に、さらなる成長の余地を与える。
そういう、何の夢も無い装備なんですよ」
提督「…………」
妙高「……それでも、その程度のものでも。
貴方の手から頂けるのなら……これ以上の喜びはありません」
提督「……嘘を言うなよ」
妙高「…………」
提督「君だって……君らにだって、分かるはずだ」
提督「……誰かに指輪をあげるってのが、どういう意味を持つのかぐらい」
妙高「…………」
提督「『お前を愛してはやれないが、強くなるからこれを着けろ』。
……そんなこと言われて、本当に嬉しいのか」
提督「俺が――……『私』が言われたら、ぶん殴ってるぞ」
妙高「…………」
提督「……何で……」
提督「何で……『指輪』なんだろうな……」
提督「提督は独り身が多いのかねえ……ハハ」
妙高「…………」
提督「…………」
妙高「……提、督……」スッ
提督「……駄目だ」
妙高「ごめんなさい……でも……私……」
提督「駄目なんだ、妙高……」
妙高「……提督」
提督「…………」
妙高「貴方の証も、その『指輪』も……頂けないというのなら……」
妙高「せめて……せめて私に、思い出をください」
妙高「お願いです……提督……」
ギュッ…
提督「…………」
提督「……妙……高…………」
(https://www.youtube.com/watch?v=ZilK6A8pqSY)
ガコン!
『We waited all through the year,
For the day to appear♪』
提督「っ!?」ビクッ
妙高「あ……」
『When we could be together in harmony♪』
提督「あ、ああ……なんだ、まだコイン入ってたのか……」
妙高「び……びっくりしましたね……」
提督「ハハ……」
『You know the time will come,
Peace on earth for everyone♪』
提督「…………」
提督「…………」スッ
妙高「……? 提督?」
『And we can live forever♪』
提督「……踊るか、妙高」
妙高「え――?」
『 in a world where we are free,
Let it shine for you and me♪』
提督「……せっかく音楽が鳴ってるんだ。ぼーっと聴くだけじゃつまらんだろう」
提督「――これも思い出って奴さ」スッ
妙高「あっ……」
『There's something about Christmas Time♪
Something about Christmas Time♪』
提督「スロー、クイック、クイック……そうそう、上手いぞ」
妙高「そ、そうですか? ふふっ……きゃっ」ヨロッ
提督「っとと……大丈夫か?」
妙高「え、ええ……」
『That makes you wish it was Christmas every day♪』
提督「……悪いな、こっちも十何年振りで……
学生の頃は、ちっとは鳴らしたんだが」
妙高「……まあ。当時から色々な方と?」クスッ
提督「妙な言い方すんじゃないよ」
『To see the joy in the children's eyes,
The way that the old folks smile♪』
妙高「……私……」
妙高「……今日のことは、絶対に忘れません」
提督「……大げさな……」フフッ
妙高「提督」
提督「ん?」
妙高「……んっ――」
提督「!! …………」
妙高(……ああ……)
妙高(……この曲が……ずっと、続いたらいいのに……)
『Says that Christmas will never go away.......♪』
【おしまい】
出演
提督
妙高
グラーフ・ツェッペリン
レーべレヒト・マース
リベッチオ
リットリオ
ローマ
不知火
那智
陸奥 金剛
榛名 扶桑
山城 ビスマルク
赤城 加賀
龍驤 隼鷹
祥鳳 瑞鳳
加古 プリンツ・オイゲン
大淀 巻雲
朝霜 早霜
清霜 マックス・シュルツ
呂500 間宮
警察官 米兵
提督妻 提督娘
晋ちゃん
アンジーおばさん
セルジョおじさん
離島棲鬼
北方棲姫
港湾水鬼
劇団時化
横須賀市の皆さん
明石
鳳翔
日向
スタッフ
製作 横須賀鎮守府映画研究会
企画 足柄
青葉
撮影 青葉
衣笠
鈴谷
潜水ヨ級
録音 川内
熊野
軽巡チ級
編集 飛鷹
助監督 羽黒
記録 鳥海
深海語字幕 空母ヲ級
音楽 那珂
主題歌
「クリスマス・タイム」
「もみの木」
「悪魔巣取金愚」
「横須賀ストーリー」
「序曲」
(『ホッポー・クライスト・スーパースター』)
プロデューサー 霧島
龍驤
監督 足柄
この映画はドキュメンタリーです。
実在の人物・団体・施設等には一切許可を得ておりません。
・
・
・
足柄「……すっごい怒られたわ」ボロッ
青葉「公開はしないって言ったんですけどね」ボロッ
霞「馬鹿じゃないの?」
【 終 】
もう3日経ったけどメリークリスマス
最後まで読んでくれてありがとう
他に書いてる奴
【艦これ】響「ウラジオストクのヴェールヌイ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442229084/)
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