【ミリマス】朋花「ベリー・メリー・クリスマス」 (26)

「プロデューサーさんからのクリスマスプレゼントは、これですか~? うふふ、忠誠心だけでも充分ですが、こうして貢物をされるのも嬉しいものですね~♪」

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そう言って、私はあの人からプレゼントをいただきました。赤と白のチェックの紙袋に、緑色のリボンが巻かれていて。全力でクリスマスという感じがします。
こういう日くらい可愛いこと言えばいいのに。朋花ちゃんってばもったいないのです。と頭の中のお姫様が私にそう言ってきます。
こういう可愛くない性格なんですよ~と頭の中でそう言い返しておきました。
少し大きめの紙袋で、握ると柔らかい感触がする。なんでしょうか。今すぐ開けてみたい気もしますが。……でもそれはちょっと子供っぽいし、聖母である私らしくない気がしますし。

私がそうやって1人で悩んでいる時に、あの人はというと、私があげたケーキの匂いをくんくんと嗅いで、「おっ、チョコだ!ありがとうな、朋花」と無邪気にはしゃいでいました。
いつもは大人っぽいのに、こういう時にはちょっと子供っぽいのはズルいと思うんですよね。カッコつけでいつもブラックコーヒーを飲んでるのや、本当は甘党なのは私たちだけの秘密で。
私が淹れたみんなに評判の"苦すぎる"コーヒーは、あなたに持っていく時だけは"甘すぎる"になってますけれどね。

ふふっ。この私にここまでさせるなんて、本当にあなたは幸せ者ですね~。
なーんて。
「食べる前と食べた後に、たっぷり私に感謝の祈りを捧げてくださいね~。感想を綴るのもお忘れなく~」


あぁもう、本当に可愛くない。

その後、イルミネーションを見に行くとか何か色っぽい出来事があるわけでもなく、夜の19時とかいう健全な時間に私たちは解散しました。
いや何かあっても困るんですけれどね。アイドルだし、聖母だし、中学生だし。
と、一応は私の中でも一番の自信がある服を着てきたのにな~。朴念仁だな~と。もしかしたらと思って、ドレスコードもしっかりとした服だったのな~と。
また姫さまに愚痴ることが出来てしまいましたね。

アイドルランクが上がった時に、すこーし遠回しに思いを伝えてみたのに、全く気付いてなかったのはどうなんだろうか。
それでいて落ち込んでたり、緊張していたりすると気づくのはどうしてでしょうか。
もしかして実は気づいていて……、とも考えたけれども、あの人がそんな器用じゃないのもよく分かってるから、やっぱりただの鈍ちんさんなのでしょう。

帰り道の道中、すれ違うカップルに祝福の祈りを捧げながら、そんなことを考えていました。
でも、もし。
もしもあの人がそういうことを、私に求めてきたら。
私は、聖母であっても無垢ではない。私自身がどういう風に見られてて、男性て女性がどういうものか、それぐらいは理解しています。
していますけれども。
いつもならば「聖母をそんな風に考えるなんて~」と一笑するところだろうけれども、今日は何故でしょうか。
そうは出来ませんでした。

もしあの人が、私をそうやって求めてきたら。
怖い。
未知のことが、変わってしまうことが。
最近相談したからだろうか。
ニヤッと笑って「朋花ちゃんはねんねなのですね」と言ってる顔が浮かんできた。
今度会った時に頭にチョップくらいしたってバチは当たらないでしょう。
そう決意し、私は持っていたものをぎゅっと抱きしめました。

ぎゅっ?

はて、これは?
そこで私は、間抜けなことに自分があの人から貰ったプレゼントを力いっぱい抱擁していることに気づきました。

気がつくと私は、あの人から貰ったプレゼントが何か楽しみで、ワクワクしてまるで子供のように駆け出してしまっていました。
家に帰り着くと、コートを脱ぐのも手洗い、うがいをするのも忘れて、自分の部屋のベッドの上でプレゼントと向かい合ってました。なぜだか正座で。
リボンをほどくのも手間に感じビリビリと破ってしまいたいと思いましたが、あの人から貰ったものはなんであれ大事にしたいという精一杯の理性が働き、どうにか綺麗なまま中身を取り出すことができました。
目に飛び込んできたのは、魚の形をした私の好きな水色とそして白色。海豚のぬいぐるみでした。

『クリスマスに何を贈ろうかを考えてみたんだけれども、あの時の水族館でのこれを買った時の朋花の可愛いかとが忘れられなくて、これにしてみた。2人目のイルカ、大事にしてくれ!
来年もよろしく』


そんなメッセージカードも添えられていて。

顔が熱い。
来年も言いましたけれども明日もお仕事でお会いするじゃありませんかとか、いろいろありましたけれども「可愛い」という文字で、私はそれどころではありませんでした。
「かわいいと言われるのは、慣れませんね~。正面からそれを言って、許されるのはプロデューサーさんだけなんですからね~♪」
といつか言ったような言葉を口に出してみましたけれども、照れは収まることはありませんでした。

だらしなく口元が緩んでしまって、とてもじゃありませんが、子豚ちゃんたちやましてやあの人に見せられるような顔じゃありませんでした。
はしゃぎすぎたと独り反省会をしていた水族館でのお仕事だったが、今は昔の自分に拍手を送っている。
にやけてるのが自分で分かるから、ぬいぐるみを顔に押し当てて止めようとするけれども行き場をなくした嬉しさが身体に伝わって、足がパタパタとってしまう。
はしたないとは思うけれども、止まらないんです。止まってくれないんです。嬉しくて嬉しくて。
あぁ、もう。

>>12
すいません、ミスです。


だらしなく口元が緩んでしまって、とてもじゃありませんが、子豚ちゃんたちやましてやあの人に見せられるような顔じゃありませんでした。
はしゃぎすぎたと独り反省会をしていた水族館でのお仕事だったが、今は昔の自分に拍手を送っている。
にやけてるのが自分で分かるから、ぬいぐるみを顔に押し当てて止めようとするけれども行き場をなくした嬉しさが身体に伝わって、足がパタパタと動いてしまいます。
はしたないとは思うけれども、止まらないんです。止まってくれないんです。嬉しくて嬉しくて。
あぁ、もう。

「大好きですよ、プロデューサーさん♪」

声にしちゃって言ってしまいました。
アイドルだけれども、聖母だけれども、中学生だけれども、私だって女の子なんですから。
聞いていたのは海豚さんだけ。
この子くらいには教えたっていいですよね。

明日プロデューサーさんに会ったら、なんてお礼を言いましょうか。
「素晴らしい貢物でしたよ~♪」
本当に可愛くない、ボツ。
「だいぶ前のことを覚えてるなんて関心ですね~」
可愛くない、ダメ。
なんでまたこんなに素直にありがとうございますと言えないのか、自分に対して本当に首をかしげてしまう。
何度も繰り返し考えた末に決まったのは……。

「おはよう、朋花。 あのチョコケーキな、本当に美味しかったぞ。 1日で食べるのはもったいないと思ったんだけど、昨日だけで食べ切っちゃった」

「それは良かったです~。 またお作りしましょうか?」

「おぉ! 本当か! ならよろしく頼む! いやぁ、俺は本当に幸せものだなぁ」

「ふふっ、そう言っていただくと作った甲斐がありました。……えっと、あの、プロデューサーさん?」

「んっ、どうした?」

「その、……べ、ベリー・メリー・クリスマスです~♪」

決まったのは、結局遠回しに遠回しに、ついでに幾重にもオブラートをかけてみたこれでした。
多少マシな可愛さのような気がしましたけれども、さて気づいてくれますかね。

「そうか、気に入ってくれたか。 いやぁ、男1人で買いに行くには勇気がいてさ」

ことも何気にそういうあの人を見ると、嬉しくておかしく、
「どうした、朋花? えらく笑顔だけれども」

「なんでもありませんよ、プロデューサーさん~♪」

たぶん少しだけ可愛い顔、してるますね、私。

終わりです。読んでいただきありがとうございます。

ああ見えても朋花ちゃんだって15歳だし年不相応に達観したとこもあるけれど、年相応に恋愛に不器用なとこもあるんじゃないかって。
ちょっと幼くしすぎる気もしますけれども。

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