ちなつ「これからも、ずっと」 (20)
ゆるゆりssです。京ちな。
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今日は七森中の卒業式だ。
卒業する結衣先輩と京子先輩には内緒であかりちゃんと一緒に計画して、部室でサプライズパーティーをした。
そしてパーティーを終えて結衣先輩とあかりちゃんは帰り、今は私と京子先輩が部室で二人っきりだった。
京子「ちなつちゃん、二人っきりだね……」
ちなつ「はいはい、そうですね」
京子「もう、ちなちゅ冷たい〜」
ちなつ「……ハァ、何なんですか」
京子「いや、だってさぁ。在学中にちなつちゃんと二人っきりでこの部室にいられるのも最後だから何か特別って感じするんだよ〜」
ちなつ「……そういうものですかね」
京子「へへへ、ちなちゅ〜」
ちなつ「もう、やめてくださいよ」
京子「いいじゃんいいじゃん、二人っきりなんだし。それに私たち付き合ってるんだからさ」
ちなつ「……」
そう、私と京子先輩は今付き合っている。
つまり恋人同士、なのだ。
私はずっと結衣先輩のことが好きだった。
私を守ってくれると言ってくれた優しくてカッコいい結衣先輩のことが。
私たちがまだ一年生で、結衣先輩たちが二年生だった頃。
あかりちゃんが用事あるということでごらく部の活動が休みになった日に、私は放課後に結衣先輩を部室に呼び出して告白したのだ。
ちなつ『……真剣…なんです。好きなんです。結衣先輩のことが本当に大好きなんです。私と、付き合ってもらえませんか?』
今まで結衣先輩にたくさんアピールしてきたし、好きだとも言ってきたけど、こんな風に真剣に想いを告げたのは初めてだった。
だけど、私は結衣先輩にフラれてしまった。
結衣『……ありがとう、嬉しいよ。でもごめんね。ちなつちゃんは大切な後輩だけど…そういう風には見れない』
私の目をしっかり見て、真剣な表情で結衣先輩はそう言ったのだ。
だけど、結衣先輩が私のことを後輩としか思っていないことは最初からわかっていた。
だってずっと結衣先輩のことを見てきたんだもの。
それでもやっぱり落ち込んだ。
ずっと応援してくれて、色々協力してくれていたあかりちゃんに申し訳ないな…なんて気持ちもあったし、他にも色々な感情が入り混じって私の心の中はグチャグチャだった。
そんな中一人で帰る気力もなく部室でボーッとしていたら、京子先輩がやって来た。
京子『あれ、ちなつちゃんまだ残ってたの?』
ちなつ『……京子先輩…どうしたんですか?』
京子『忘れものしちゃってさ。それを取りに戻ってきたんだよ。お、あったあった』
ちなつ『……』
京子『ちなつちゃんは帰んないの?何か浮かない顔してるけど大丈夫?』
ちなつ『平気です。忘れもの見つかったならとっとと帰ればいいじゃないですか。私のことはほっといてくださいよ』
かなりキツい言い方をしてしまった。
完全に八つ当たりだった。
京子先輩は悪くないのに八つ当たりするなんて最低だ。
京子『そんな顔してるちなつちゃんをほっとけるわけないじゃん!』
ちなつ『……!』
京子『元気がない時はさ、いつでも京子ちゃんの元気を分けてあげるよ!』
そう言っていつもみたいに笑ってくれた京子先輩を見たら私の目からは自然と涙が溢れ出してきた。
私は泣きながら嗚咽交じりの声で結衣先輩にフラれてしまったことを話した。
京子先輩はそんな私を抱き締めてくれて、頭も撫でてくれた。
その京子先輩の温かさと優しさが心に染みて、私はもっともっと泣いてしまった。
京子『落ち着いた?』
ちなつ『……はい。ありがとうございます』
京子『へへっ、良かった』
結構長い時間泣いてしまった。
京子先輩はいつも通りに振舞ってくれているけど、何だか少し気まずかった。
泣いてしまったことはもちろん、さっき八つ当たりしてしまったことも私は気にしていた。
ちなつ『……あの…』
京子『ん?』
ちなつ『さっきはキツい言い方をしてしまってすみませんでした…』
京子『え?ああ、そんなの全然気にしてないよ!大丈夫大丈夫!』
ちなつ『……京子先輩は、優しいですね。どうしてこんな私に優しくしてくれるんですか?』
京子『そんなのちなつちゃんが好きだからに決まってんじゃん』
ちなつ『え……』
京子『もしかして気付いてなかったの?いつも好きだって言ってたのに〜』
ちなつ『いや、それは私がミラクるんに似てるからじゃないんですか?というか京子先輩は結衣先輩のことが好きなのかと……』
京子『うん、結衣のことは好きだよ。大切な幼馴染だもん。もちろんあかりのことも好きだし、綾乃や千歳や千鶴、ひまっちゃんやさくっちゃんのことも私は好き』
ちなつ『……』
京子『でもさ、ちなつちゃんへの気持ちは……皆に向けてる気持ちとはちょっと違うんだ。ちなつちゃんが結衣に向けてるような気持ちと同じような気持ちで、私はちなつちゃんのことが好き!』
ちなつ『……でも…私は……』
京子『もちろん返事はわかってるよ。でもいつかは振り向かせてみせるから……なんてねっ』
そんな感じで、私はその時京子先輩に返事はしなかった。
京子先輩は次の日からもいつもみたく私に纏わり付いてきた。
だけどそんな京子先輩のおかげで私は元気をもらっていたのだ。
それから時は過ぎて、つい先日私は京子先輩に告白した。
やっぱり暫くは結衣先輩が忘れられなかったけれど、こうやって私の側にいて元気をくれる京子先輩を気付いたら好きになってしまっていたのだ。
ちなつ『いつも元気をくれる京子先輩のことが好きです。私と付き合ってくださ……ッ!?』
告白の途中、京子先輩は私に抱きついてきた。
ちなつ『ちょっ、何するんですか!こっちは真剣なのに!』
京子『ちなつちゃん…嬉しい…嬉しいよ…!』
京子先輩は、泣いていた。
ちなつ『もう…何で泣いてるんですか』
京子『だって…だって…嬉しくて……』
ちなつ『いつか振り向かせてみせるとか言ってたのはどこの誰ですか』
京子『うぅ……』
ちなつ『本当にしょうがないですね、京子先輩は。……まぁ、そんなところも好きですけど』
私は泣いてる京子先輩を抱き締め、頭を撫でた。
あの時、京子先輩が私にしてくれたみたいに。
とても幸せだった。
京子「あれからちなつちゃん全然デレてくれないよね〜…」
時は現在に戻り、二人っきりの部室で京子先輩はそんな風にブーブー言っていた。
京子「もっと京子先輩〜!って感じで甘えてくれてもいいのに……」
ちなつ「そんなこと言われても、」
京子「……やっぱりさ、私より結衣の方が好きなの………?」
ちなつ「!」
京子「ごめん…やっぱり不安になっちゃって……」
弱気になっていた。
いつも元気な京子先輩が。
私は、そんな京子先輩の肩をガッと掴んで、
ちなつ「何言ってるんですか!もしそうだったら京子先輩に告白なんてしませんよ!」
京子「……」
ちなつ「確かに結衣先輩のことは今でも憧れてますし、好きですよ。でももう前みたいな気持ちはありません。あくまで憧れ、それだけです」
京子「でも結衣のことが好きだった時のちなつちゃん、もっと結衣に対して積極的に甘えてたのに私には………」
ちなつ「当たり前じゃないですか。結衣先輩は結衣先輩で、京子先輩は京子先輩ですもん。京子先輩を好きになったからと言って、結衣先輩を好きだった時に結衣先輩に接してきたのと同じように京子先輩と接するなんてできませんよ」
京子「そっか……」
ちなつ「だって、私が今好きなのは京子先輩なんですから。京子先輩に、京子先輩として接してるんです。これが私の京子先輩への接し方なんです!」
私のせいで不安になってしまってる京子先輩に必死に想いをぶつけた。
どうしても私は京子先輩に対してはあまり素直になれないのだ。
甘えたりすることがなかなかできない。
多分今までずっと京子先輩にはこんな風に接してきたからだろう。
だけど、勘違いして欲しくない。
京子先輩のことが好きな気持ちに嘘はないのだから。
京子「……ちなちゅ〜!」
京子先輩はいつもの調子で私に抱きついてきた。
ちなつ「あっ、ちょっ、もう!」
京子「へへへ、もちろんわかってるよ。これが私とちなつちゃんだもんね、うん!」
ちなつ「わかっててあんなこと言ったんですか!?」
京子「ごめんごめん。ちなつちゃんの気持ちをちゃんと聞きたくてさ〜」
ちなつ「……全くもう…」
だけど少し安心した。
勘違いしていなくて良かった。
京子「……本当に…今日が最後…なんだよね……」
ちなつ「いきなり何ですか」
京子「ずっとこの部室で過ごしてきたからやっぱり寂しいなぁって……」
ちなつ「卒業しても部室に遊びに来るとか言ってたじゃないですか」
京子「うん。いつもみたく毎日学校でちなつちゃんに会えなくなっちゃうのも寂しいなぁ」
ちなつ「学校で会えなくても、別の場所では会えるじゃないですか。毎日会うのは無理でも毎日電話やメールならできるかもしれませんし」
京子「……そうだね!よっし、じゃあそろそろ帰ろっか」
元気を取り戻した京子先輩が鞄を持って立ち上がる。
ちなつ「京子先輩」
……せっかくだし、たまには私も素直になってみよう。
そう思って私も立ち上がりつつ京子先輩の腕を掴み、
京子「んー?」
京子先輩のことを引き寄せて、京子先輩の唇に自分の唇を重ねた。
ちなつ「……在学中の京子先輩と部室に二人っきりでいられるのはこれが最後ですから…特別です。大好きですよ、京子先輩!」
そして思いっきり笑ってみせた。
いつも私に纏わり付いてくるけど、私に元気をくれる優しい京子先輩。
そんな京子先輩のことが、私は大好きだ。
これからも、ずっと。
《おしまい》
で、結衣は誰が好きなんだ?
以上です。
ありがとうございました。
>>11
その辺はご想像にお任せします。
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