鹿島「提督さん。うふふっ♪」名取「…」 (168)

・R18っぽい
・NTRっぽい
・ヤンデレっぽい
・ぽい

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その日の早朝、軽巡寮にある長良型姉妹が相部屋にしている
通称「長良部屋」はいつもにまして騒がしかった。
後日、その隣室にある球磨型部屋の末妹木曾氏は肩を竦めながらそう語る。

「まあ気持ちはわからんでもねぇけどな。連中、あの日は珍しく姉妹揃って休日だったしよ。けどなぁ」

とはいえ、その日普通に任務のあった彼女にとって、
まだ総員起こしもかからぬような早朝から騒がしくされてはたまったものではない。

「長良のでっけー声がこっちまで聞こえてきてよ。
 大井の奴も起きちまって、殴りこみに行こうとするの止めるのに必死だったんだぜ」

そう言って、その時の記憶が蘇ったのかげんなりした顔で頭を振って溜息一つ。

「おかげで聞いてもいねーのにその日の連中のスケジュール全部把握しちまったぜ」

興味を惹かれ、少し突っ込んだことを聞こうと詳しく訊ねてみると、少し考えこんだ後、
投げやりに手のひらをひらひらさせて、引き攣ったような半笑いを浮かべた。

「んー……そうだなぁ。あんま他人のプライベート語るのもなんかなぁ……
 って、いやいや、そんな変なことは話してなかったけどよ。あーわかったわかった。
 ろくでもねぇ推測記事書かせるくらいなら全部話してやるよ。でも俺から聞いたって書くなよ?」

勿論です!ととりあえず言うだけは無料なのに相手の口を軽くする魔法の言葉を口ずさむと、
木曾さんは疑わしげなじっとりとした目線を私に向けた後、しばらくして諦めたように続きを口にした。

「確か、連中のうち4人は街の方行くって言ってたな。
 長良と鬼怒は二人でサッカー観戦。五十鈴と由良は商店街に服の買い物だってよ」

なるほど。
そういえばその日の夕方すれ違った五十鈴さんと由良さんは、
大きな紙袋を抱えてほくほく顔だったのを覚えている。
そういうことだったんですね。と相槌を打つと、木曾さんはどうでも良さそうな顔をしてくれた。

「で、阿武隈に関してはなんかうちの北上と昼に間宮で飯食う約束してたらしくてな。
 本当は姉たちと一緒に出かけたいのに出かけらんなかったって、愚痴愚痴言ってたらしい」

「仲いいんでしたっけ?」

おや?と思って聞いてみた。
あの二人、いつも北上さんが阿武隈さんをいじめてるような印象だったので
まさかお二人が一緒にご飯を食べるような仲だったとは!まさかの特ダネの予感に心が震える。

「さあね。でも、先週の演習で負けた方が勝った方に奢るって約束してたらしいぜ。
 タダ飯ほど美味いもんはないって姉貴言ってたし」
「あらー」

予感があっさり消滅した。
なんだいつものことか…という気持ちとやるせなさで一杯になる。
とりあえず、まあ……強く生きてください阿武隈さん。

「わざわざ向こうが休みの日指定したったってドヤ顔もしてた」
「さすが大井さんの姉妹ですねぇ」
「あいつらと一緒にすんな」
「もうこの話はここまでにしましょう」

「助かる」

居た堪れなくなってきたので話を遮った。

「ふぅ……」

随分長いことインタビューをしていたような気がして、肩が凝りました。
なので一旦ここで休憩にしましょうと提案したところ、木曾さんも賛成してくれました。
いや~それにしても疲れた。

軽く伸びを一つすると、ちょうどいいタイミングで間宮さんがコーヒーのおかわりを尋ねてきてくれました!
ブレンドコーヒーを1つ注文して、砂糖とミルクをたっぷりとぶち込みます。
木曾さんはアメリカンをブラックで。いやぁ優雅に啜る姿が様になりますねぇ。えい、パシャリ。

「おい許可無く撮るな。やめろ」
「なんでですか~?格好いいですよ。シャッターチャンスを逃がす手はありません。それに木曾さんの写真は結構高く売れるんです」
「誰にだよ」
「女子に」
「微妙に凹むな……」
「あはははは」

「しかし、なんだか皆さんイメージ通りの休日を送ってますねぇ」

目の前のコーヒーカップをつまみ、ゆっくりと口につけながら率直な感想を述べます。
あ、申し遅れました。私、重巡洋艦青葉型1番艦青葉と申します。趣味はカメラ。新聞作成。
あとゴシップ記事作成とブログ炎上。

「まあな。長良と鬼怒はスポーツマン。五十鈴と由良はしっかり女子してて
 んでもって阿武隈は貧乏くじだ。俺の姉が申し訳ない……コホン。ほんとにイメージ通りだ」

「なるほど、参考になりました。でもちょっと普通過ぎて……うーん。これは……記事にならないかなぁ」

そうなんです。つまんないんです。
なんていうか、記事にインパクトというか、ケレン味のようなものが!
最近ピンチです!スランプです!こんな平凡な記事じゃ誰も読んでくれないよぉおおおおお!!」
しばらく転がっていると、木曾さんがやる気なさげに諌めてきました。

「何でもかんでも記事にしようって貪欲さは買うけどよ。
 それならそれでいいじゃねぇの。あとプライベートネタにすんな」

「そうもいきません!だって他人のプライベート特集した時の
 新聞の売り上げは軽く見積もっていつもの3倍ですし!……みんな興味津々なんですよ。他人の事情」

「えっ、そんなに」

「そんなにです!!」

そうです。艦娘とて女子。
他人のプライベートと恋話と美味しいものを特集した新聞がある時はいつもよりもずっとずっと売れるんです。
これはちょっと盛りましたが!

「かー!これだから女ってやつは!」

一度深呼吸をして写真立てを持ち直し、名取はその足でゆっくりと歩き出す。
目的地には十数歩で辿り着いた。そこは、先ほどの掃除で名取が唯一ベッドメイキングをしなかった
自分自身のベッドだ。掛ふとんを半分捲って、今朝起きた時のままの皺が寄ったシーツの上に写真立てを置く。

それから、部屋着にしていた長袖のTシャツに手をかけ、足元にゆっくりとまくり上げた。
とさり、と無造作に足元に脱ぎ捨てられたTシャツの上に、少ししてスカートが覆いかぶさるようにして舞い落ちる。

下着姿になった名取が写真立てを踏み潰さないようベッドサイドに腰掛け、ソックスを丁寧に脱ぎ外す。
長良などは一気に引っ張って脱いで裏返しにしてそのまま放り捨ててしまうが、
名取はそれが嫌なので丁寧に折りながら脱いでいくのが癖だった。

ソックスを脱ぎ終わると、素足になった開放感が広がって心地よさが名取を包んだ。
一息ついて、再び写真立てを手に取る。
それからすぐに枕を身体の側に引き寄せて、逆に写真立てをその位置に置き直した。

それから下着姿でベッドサイドに腰掛けたまま、枕をギュッと抱きしめて
何事かをしばらく考えていた名取だが、やがてもぞもぞとベッドの上に身体を預け、
亀のように身体を丸めて枕を腹の下に持っていく。
それから先ほど捲った掛ふとんを豪快に引っ張り、全身を隠すように覆い被せてしまった。

真っ暗な布団の中で器用に身体を捩り、その中で下着を外して、布団の外、ベッドの足元に捨てていく。
淡い水色のレースが付いたブラがずしりと床に落ち、次に同色のショーツが続いた。

掛け布団の山から手が伸びてきて、その外にあった写真立てが吸い込まれていく。
少しするとその山の中から、くぐもった切なそうな声が漏れ聞こえてきた。

「んっ……あっ……はふ……あうっ!」

名取が休日、外出をしない理由の全てはこのためだった。
姉妹がいない時に、一人でこっそりと自分を慰める。

あまり健全とは言いがたい、しかし名取としてはもはや
欠かすことの出来ない重要なストレス解消手段の一つでもあった。

「提督さん…提督さん…提督さん…っ!あっ…!んんぅっ!ああああっ♡」

クチュクチュと淫靡な水音が布団の中で響く。
切ない声は控えめなものから、段々大きく、激しい喘ぎ声に変わっていっていた。

「提督さん!提督さん!提督さん!好き!好き!!好き!!!はぅっ!」

「あっ♡ああっ♡ああああ~~~っ♡……っっっ!!」

「ふぅ~~~~~♡………ッッッ!!」

「……はぁ……提督……さん………」

絶頂に達し、しばらくの脱力。
全てがぼんやりと霞がかったその快楽に身を委ねるが、またすぐに身体が疼きだし、刺激を求めてしまう。
名取はその感覚がたまらなく嫌いで、そしてこの上なく抑えがたい渇望だった。
自身の指を提督のものだと思い込むよう努力して、何度も何度も自分自身を慰める。
まだ余韻が抜け切らず敏感な内に、気にもせず身体をいじめだし、その度に愛しい人を呼び絶頂する。

「提督さん……提督さん……提督さん……提督さん……はぁ……はぁ……は……っ……っ!あっ…♡」

「んんん~~~~っ!!んぅっ♡」

そして、すぐにまた再開。
行為は彼女の姉妹の帰宅時間を見越し、後片付けを考慮した予想時間30分ほど前まで延々と繰り返される。
場合によっては数時間もぶっ続けで行われる名取の執拗な自慰行為は、次第にエスカレートしてきており
本人は気付いていないが、段々歯止めが効かなくなってきている。

それは、本人にとっては本物の提督と交われないための代償行動として行われているはずのこの行為が
反対に自身の内に潜む欲求を増大させているということの証左に他ならなかった。

それが、これからそう遠くない未来、一つの取り返しの付かないほどの事件の要因になるとは、
その時はまだ、誰も考えもしなかっただろう。


ことは、これからほんの1週間後、鎮守府に一人の新しい艦娘が着任したところから始まる。



ところで余談だがこの行為、名取は誰にも気付かれなく行っているつもりであったが
姉妹の中では一度たまたま早く帰宅した阿武隈に見られている(その後速攻で逃げたのでバレていない)し、
由良には臭いと洗濯物でなんとなく察されている。
ついでに隣室の球磨型部屋の連中に至っては興奮して大きくなった声が
壁越しに届いてしまってるので、全員に知れ渡ってもいたりする。

この事を知ってしまったら本人としては自殺ものの恥辱なのだがまあ、
幸いにしてこれが本人に知れ渡ることは未来永劫無かったという。

今日はもう終わるっぽい
即興で地の文なんか書くもんじゃないっぽい
次からはちゃんと書き溜めます…

「あー…紹介しよう。彼女が本日付けで新しく着任した練習巡洋艦の鹿島だ。
 えーっと…その、なんだ……えー……っと……みんな仲良くしてやってやってくれ」

「うふ♪香取型練習巡洋艦二番艦、妹の鹿島です。
 平和の海で次代の艦隊を育てるために建造されました。
 みなさん、どうぞ宜しくお願いします。うふふ♪」

その日、朝礼のために哨戒や遠征などで任務中の者を除き
ほぼすべての艦娘達がブリーフィングルームに集まっていると
提督に連れ添って見知らぬ女性が一人やってきた。

鎮守府ではよくある光景だが、
いつもと少しだけ違ったのは一部の艦娘の中からどよめきが起こったことだ。
かくいう名取も、声こそ出さなかったものの内心は穏やかではいられなかった。

金剛型の長姉、鎮守府の艦娘達の中でもリーダー格の一人である
金剛が顔を引き攣らせながら皆の内心を代表した。

「ヘーイ提督ー。Newfaceの紹介はいいんだけどさー。ちょーっとなんだか、距離が近過ぎナーイ?」

そう。つまりはそういうことだった。
提督の紹介の間も、自己紹介の間も、鹿島は新人とは思えぬほどの堂々とした立ち振舞いを見せていた。
にこにこと緊張の欠片もない自然な表情でよく笑い、淀みなくしゃべる。
物腰も柔らかで、落ち着いた大人の女性という感じだ。

それだけなら誰も何も思わなかっただろう。むしろ好意的に見る者がほとんどだと言っていい。
ただ、少しばかり……提督と距離が近く、その腕に腕を絡めているという一点を除けば。

「ああ金剛か……うん、まあ……そうだよな。やっぱり。
 ほらだから言っただろ?鹿島。ちょっと離れろって」

「ええ~?そんなぁ。意地悪言わないでください。うふ♪」

「ヘーイそこイチャイチャするなデース。イチャイチャするなデース。
 時間と場所をわきまえるデース。あと相手も違いマース。それと…」

「そ、そうですよ!破廉恥です!
 そ、それに、こういった場でそういう態度は榛名、とても不謹慎だと思います!」

恨めしげに唸りなおも言葉を続けようとしたところ、
妹の榛名に食い気味に発言され、少し傷付いたような顔でおとなしく口を噤む金剛。
榛名に続いて、今度は初期艦の吹雪が顔を真赤にしてまくし立てる。

「そうですそうです!いくらなんでも距離が近すぎます!」

時雨が続いてぼそぼそと呟く。

「まるで昔からの知り合いみたいじゃないか。
 提督ってもっと堅物のイメージだったけれど、一体どんな手を使ったんだか
 わからないよね。ああいう手合に限って腹の中は真っ黒だったりするんだ。そう思わないかい?羽黒」

「ふえっ!?」

大鯨が半泣きで隣にいた鳳翔に訴える。

「ど、どどどどおしましょう鳳翔さん!?て、提督が!提督がががががが!!」

「落ち着いてください大鯨さん。提督にもなにか事情があるはずです。
 えっと……その……ほ、ほら、何か弱みを握られているとか……実は肉親だとか!」

「鳳翔さんもなんかおかしいでち」

「多分あんまり落ち着いてないの」

翔鶴がにこやかに笑う。

「困りましたね。せっかく雰囲気のいい鎮守府だったのに。
 ああいう手合いにやってこられると艦隊の輪が乱れてしまいます。
 ……ねぇ?そう思わない?瑞鶴?」

「ど、どうしたの?翔鶴ね……ひっ!?」

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ…」

「おっほん!!」

その他にもざわざわと艦娘達の声が広がってきて、
このままでは収集がつかなくなりそうだと判断した提督が
わざと大きな咳払いをして注目を浴び、それに反応して部屋がしんと静まった。

「あー……うん、そうだよな。誤解されるよな。
こんな姿見られると。鹿島もいい加減にしなさい。ほら手を離して」

「……ぷぅ」

苦笑いし、やんわりと鹿島を引き剥がす提督。
鹿島も可愛らしく頬を膨らませながらも、今度は素直に従って腕を解いた。
一歩下がり、呆気にとられぽかんしたままの艦娘達に向かって
改めてペコリと礼を一つしてみせる。

固まったままあんぐりと口を開け黙りこんだ艦娘達に、提督が諭すようにゆっくりと話し始めた。

「驚かせてしまってすまなかったな。彼女は俺の海軍兵学校時代の同期なんだ。
 当時から物凄く人に物を教えるのが上手な人でな。当時は随分と世話になったものだ」

ついでに人をからかうのが大好きなやつでな。
何度いじめられたり振り回されたか知れないよ。

そう言って照れくさそうに笑う提督の表情は、
鹿島のアプローチがまんざらでも無いということを言外に物語っていた。

シンと静まり返ったブリーフィングルームに、提督の声が響く。
今度は異様に詳しい鹿島の経歴紹介が始まった。
今まで初顔合わせでこんな説明をされた艦娘は、初期艦の吹雪をして記憶の中にいない。

「で、その彼女だが、学校卒業後は同校で練習巡洋艦として後進の育成に励んでいたのが人事異動で
 艦娘として鎮守府への配属が決まってな。彼女の実績からしてもっと優秀な提督の元へ行くことも
 可能だったろうに…知り合いの俺が提督をしている鎮守府への配属を希望してくれて。
 他にも引っ張りだこだったそうだが、それがこの度めでたく通ってここに来たというわけだ」

まるで自分のことのように誇らしげに鹿島の実績を語る提督の目はキラキラと輝いており、
純粋に彼女の着任を喜んでいるように見えた。言葉の端々に尊敬の念が見て取れる。
ただし、そんな話を聞かされても、先ほどの二人のやり取りの後で素直に感心できる艦娘などほとんどいなかった。

「ぐぅ……まさか本当に昔からの知り合いだったなんて……」

時雨の苦々しげな小さい呟きは、隣に座っていた村雨の耳にだけ届き、
当の村雨は鋭く目を細め、盗み見るようにして鹿島の顔を睨んだ。

同じような目つきで鹿島を見つめる艦娘は他にも何人もおり、
集中した目線の束は鹿島に対し槍のように突き刺さらんばかりだった。

「うふふ♪でもまさかまた一緒にお仕事をできる日が来るなんて、
ほんの半月前まで夢にも思っていませんでした。配属が決まった時はびっくりしたんですよ♪」

相変わらずにこにこと笑う鹿島は、そんな視線に気付いているのかいないのか。
まったくペースを崩すこと無くくすくすと笑う。
さり気なく再び提督との距離が縮まっており、肩と肩が今にもくっつかんばかりに近い。

「それは俺もだよ。というか、鹿島が俺なんかのところを
 希望してくれたっていうだけで本当に驚いたものだ」

「あら。それは自己評価が低すぎます、提督さん」

さり気なく提督の腕を撫でまわし、まっすぐに顔を見て笑う鹿島。

「あなたが優秀な司令官であることは官報を見るだけで明らかです。異例の若さでの地位は目覚ましい戦績を物語っていますし、
 ここに集まったの艦娘の皆さんの凛々しいお姿を見れば、提督さんがどれだけ素晴らしい艦隊を作り上げてきたのか
 すぐに分かります。皆さんみんな凛々しくて凄く逞しくって、とってもお強そう。うふ♪」

「鹿島にそう言って褒めてもらうとなんだか照れくさいな。
 お前こそ噂は聞いていたよ。育てた駆逐隊が軒並み実戦で即通用して活躍しているそうじゃないか」

「そんな……それはたまたま教え子のあの子たちが優秀だっただけです。私だけの功績じゃありません」

「謙遜するなよ。指導者が優秀でなければ、中々そう上手くは育たないものだ。それに比べれば俺こそただの上司ってだけさ。
 まあ、そういうわけだ。みんなよろしくな。特に駆逐艦や軽巡で強くなりたい奴は相談してみるといい。
 きっと力になってくれるはずだ。ただし顔に似合わず結構厳しくてビシビシしごいてくるらしいから気をつけろよ」

「むぅ~!そういうこと言っちゃいます?ここの艦娘の皆さんはみなさん顔つきも精悍ですし、
 私こそあまり必要なさそうなくらいですよ!それにそういう意地悪な言い方する提督さんはこうです!えい!ぎゅーっ」

「いてて!止めろって鹿島!つねるな!」

「うふふふふ♡」

「うわ……赤くなってる。手加減してくれよ。学生時代ならいざ知れず、もうお前艦娘なんだからな。力加減しろよ」

「ちゃんとしてますー。提督さん、いくら管理職になったからって、鍛え方足りないんじゃないですか?
 艦娘の前に、提督さんをいっぱいしごいて鍛え直してあげちゃおうかなー。なーんて……うふふ♡」

「怖い怖い。忙しいんだから勘弁してくれよ」

「それと、ご飯食べてます?駄目ですよしっかり栄養あって美味しいもの食べなきゃ。
 うふ♡今度ご飯作ってあげますね」

「それは嬉しいな。鹿島の料理は昔から美味かったから……」

「ヘーイ。ヘーイ。ヘーイ。提督ー?ヘーイ。時と場所、ヘーイ。アーハーン?」

「……ごほっ!すまんすまん……」

『ご飯食べてます?』のくだりで間宮が急に持っていたしゃもじをへし折り、
隣にいた伊良湖が『ぴぃ!』と短い悲鳴をあげた。
先程から少し落ち着いてヒソヒソと会話していた鳳翔と大鯨が黙りこくって笑顔になった瞬間、
取り巻きの潜水艦と空母連中は顔を青白く染めてこっそりと彼女たちから離れ始めるように移動を開始した。

完全に二人の世界を形成しようとする提督と鹿島を遮って、金剛が再び唸りだす。
それで我に返った提督は、恥ずかしそうに咳払いを一つして、罰が悪そうに頭を一掻きした。
鹿島は相変わらずにこにこ笑ったままだ。
先程まで提督の腕を撫でていた柔らかそうな手は、今は彼の肩の上に乗っている。

「まあ、なんだ。そういうわけだ。その、なんていうかちょっとな……頭が上がんないんだよ……こいつに」?

ハハ……と誤魔化すように笑い、独り言のような声でぽつりと呟いて、
そこでちょうど0800を告げる時報が鳴り響いた。その後気を取り直して行われた
本日の提督の朝の訓示は、異例の早さと情けなさで終了を告げた。

全ての朝礼が終わった後、提督は秘書艦の大淀と鹿島、
そして彼女の姉の香取を引き連れて執務室の方へ戻っていった。
取り残され、どこか釈然としない顔をした艦娘達も少しずつミーティングルームを離れていく。

移動の流れに乗り遅れた名取は、最後の方まで部屋に残ることになった。
ほぼ全ての艦娘が持ち場に移動して行った後、姉たちが残っていないか念のため周囲を見回すと
真っ白になった金剛と榛名が佇んでいるのに気付く。

どうしたものかと戸惑っていると、入口の方からのしのしと大股で日向が引き返してきた。

「今日これから演習なんだ」

「はぁ……」

目が合って、聞いてもいなかったが説明を受けた。
呆れたよう鼻息を一つ吐き出し、二人とヒョイと抱えて
俵でも担ぐかのように歩き出した日向が、ぽつりと呟いた。

「しかしなんだな。凄かったな」

「え?はぁ…はい……あの……」

言葉少ない日向の言いたいことがいまいち伝わらず、名取が聞き返す。
立ち止まり、『あいつら』と一言、執務室の方角を指差す日向に、それで名取も合点がいった。

「はい。その……凄かったです。それで……えっと……日向さんは、どう思われます?」

「どう……と言われてもな。そうだな……しいて今の気持ちを言葉にするとするならば……」

「はい」

真顔で少し考えこみ、そこで、投げやりな鼻息を一つ吐きだして、日向が呟く。

「なんだこれ」

「……はい」

それはその日朝礼に参加した(鹿島を除く)全ての艦娘の気持ちを代弁した一言だった。

書き溜め終わったんで今日はここまでにするっぽい
本物の鹿島はこんなビッチじゃなくてかわいいゆるふわお姉さんっぽい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年12月03日 (月) 00:54:59   ID: iJ6g-C2c

めっちゃええやん

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