カリン「うん……（おはよう……って言ったつもりでいいや）」

トゥーナ「……おはよう」

カリン「なにー？（こんな朝早くに呼び出すなんて）」

トゥーナ「……ごめん、でも」

カリン「まぁ……（仕事サボれたからいーけど）」

トゥーナ「……仕事は、して」

カリン「えー？（……めんどくさい）」

トゥーナ「…………すぐ済むから。その後……ちゃんと仕事に戻って」

カリン「……で？」

トゥーナ「あの、大樹にいる……」

カリン「あー（記憶喪失の人ね）」

トゥーナ「…………どう思う？」

カリン「え？　……えーと、いい人（……バイト代わりにやってくれるし）」

トゥーナ「それだけ？」

カリン「……？」

トゥーナ「……」

カリン「……！」



カリン「ふふっ（……とらないから安心していいよ）」

トゥーナ「ちがう。ちがう」

カリン「えー？（じゃーなに？）」

トゥーナ「なにか……気になる」

カリン「……（やっぱりそうじゃん）」

トゥーナ「ちがうから…………けど」


トゥーナ「……あやしい」

カリン「まぁそりゃ……（記憶喪失だしね……）」

トゥーナ「なに考えてるのか…………分からない」

カリン「いや……（分かるほうが変じゃない？）」

トゥーナ「……」

カリン「……」



トゥーナ「確かに」

カリン「えー……？（……ここはツッコミ待ちだったのに）」

カリン「じゃあさ、トゥーナはそう思ってるの？　あの人のこと」

トゥーナ「あの人は…………」


トゥーナ「結晶……いっぱいくれる」

カリン「んー……？」

トゥーナ「アクセサリーの材料……」

カリン「あぁ……（よかったじゃない）」

トゥーナ「花もくれる……トイハーブ」

カリン「うん……（わたしにもくれたよ。宝石の方が嬉しいけど）」

トゥーナ「……仕事も手伝ってくれる」

カリン「あー……ね（わたしも）」

トゥーナ「あ、あと……………よく、話しかけてきて、楽し……そうに」

カリン「うんー……（わたしもわたしも）」

トゥーナ「…………一緒にダンジョンに、素材集めに行ったり……釣りしたり」

カリン「ふぁあ……（わたしもつき合わされたなー……あれ？　つき合わせたんだっけ）」

トゥーナ「ぁ、あと……あと…………か、かわいい……って………………くっ」

カリン「あー（わたしも）」

トゥーナ「それ！！！！！」

カリン「」ﾋﾞｸｯ

カリン「な、なに……（びっくりした……）」

トゥーナ「……みんなに、言ってる……かわいいって」

カリン「そうなの？」

トゥーナ「……プレゼントも…………みんなに」

カリン「ふぅん……（いい人じゃん）」

トゥーナ「……よくない」

カリン「……」


カリン「やっぱりさぁ（……気になるんでしょ）」

トゥーナ「ちがう。ちがうちがう」

カリン「ふぁあ……（ま、なんでもいーけど）」

トゥーナ「ちがう。ほんとに、ちがうから。ちがう」

カリン「へぇ……（ソフィアのまね？）」

トゥーナ「……」

カリン「あはは……（怒んないでよ……）」

カリン「じゃあ……調べてみたら？」

トゥーナ「……しら、べる？」

カリン「うん、そう……（どんな人か。今の時間……多分ダンジョン内の畑に行ってるから）」

トゥーナ「……家に……入るの？」

カリン「うん……（誰でも、いつでも来ていいって、言ってたし）」

トゥーナ「…………」

カリン「……」


トゥーナ「じゃあ…………一緒に来て」

カリン「えー？（……めんどくさい）」

トゥーナ「仕事……サボっていいから」

カリン「まぁ……（それならいっか……）」


……

……
－大樹の家


ｶﾞﾁｬｯ

カリン「はよー……（って、誰もいないよね。知ってた）」

カリン「あれ……？（なに玄関から覗いてるの。早く入ってきなよ）」

トゥーナ「……くっ」ｺｿｺｿ


トゥーナ「…………おじゃま……します」

カリン「料理するんだ……（調理台に料理道具がいっぱいじゃん。きれーに並べてある）」

トゥーナ「うん……そうみたい」ｷｮﾛｷｮﾛ

カリン「こっちも……（道具箱も冷蔵庫も、整理整頓されてる……）」

トゥーナ「うん」ｷｮﾛｷｮﾛ

カリン「……ちょっと（落ち着きなよ……）」

トゥーナ「わ、分かってる」ｷｮﾛｷｮﾛｿﾜｿﾜ

カリン「……二階は……あぁ（……鍛冶場と、薬学台）」

トゥーナ「そう……」ｷｮﾛｷｮﾛ

カリン「もう…………あ（ベッドだ。横には……）」

トゥーナ「……！！」ﾋﾟﾀｯ



モコモコのぬいぐるみ「……」

トゥーナ「くっ……！！」

カリン「かわいい……（いい趣味してるじゃん）」

カリン「あ……それと衣装ケースも」

トゥーナ「服……」

カリン「んー……（赤、青……緑、黒……水着……衣装持ちだね）」

トゥーナ「……」ｸﾝｸﾝ

カリン「……」

トゥーナ「……」ｸﾝｸ……

カリン「……」

トゥーナ「…………」


トゥーナ「なに……？」

カリン「べつに……（クンカーだったんだ……）」

トゥーナ「ちがう」

カリン「いやいや……（さすがにそれはね……）」

トゥーナ「ちがう。これ……作った人が」

カリン「え？……（エリザのだけど？）」

トゥーナ「……前、ガジも……変な服……もらってたから」

カリン「変……？（でもここにあるのは、普通っぽい）」

トゥーナ「確かに……生臭くない」

カリン「えー……（生臭かったの……？）」

トゥーナ「次は……畑」

カリン「ふぁあ……（わたし疲れちゃった……ちょっと休憩ー）」

トゥーナ「えっ……」

カリン「おやすみー」ﾎﾟｽｯ

トゥーナ「他人のベッドで」

カリン「いーのいーの（前にあの人も、わたしのベッドで寝ようとしてたし）」

トゥーナ「！？　待ってカリン、かり」


カリン「……ｚｚＺ」

トゥーナ「…………えぇ……？」


……

……
－大樹の家、畑


トゥーナ（……納得いかないけど、とりあえず……畑も見ておく）


トゥーナ（！　……あれだけ荒れてたのが、全部きれいに耕されて……）

トゥーナ（野菜も……花も……種類ごとに区画分けされてる……）

トゥーナ（すっごく几帳面に…………凝り性なんだ）


トゥーナ「ふふ……」

トゥーナ（あの人にとっての畑仕事は…………ガジの鍛冶仕事みたいなもの、なのかな）


ｶﾞﾁｬｯ

トゥーナ「！　だれ……？」


モコモコ「モコッ」ﾋｮｺﾋｮｺ

トゥーナ「モコモコ……？」

モコモコ「モコモコッ」ｻｯｻｯ

トゥーナ（……水やりしてる）

トゥーナ（そっか…………ガジが言ってたっけ……モンスターの飼育小屋も作ったって）

モコモコ「モコモコー」ｻｯｻｯ

トゥーナ「えらいね……」ﾅﾃﾞ……ﾅﾃﾞ……

モコモコ「モッコー！」

トゥーナ「ふふ……かわいい…………」

トゥーナ（飼育小屋も見ておく）

トゥーナ（他に何がいるのか。他にモコモコはいるのか。もしかしてモコモコだらけなのかモコモコ天国なのか）

トゥーナ「…………べつに」

トゥーナ（……期待してるわけじゃ……ないけど）

トゥーナ（…………モコモコいるかな）


ｶﾞﾁｬｯ

……
－飼育小屋、かちく部屋


コケホッホー「ｺｹｰｷｮｷｮｷｮ」

バッファモー「ﾓｩﾓｩ」

トゥーナ「……」


トゥーナ（卵と……牛乳……）

シルバーウルフ「ﾜｩﾜｩ」

トゥーナ「あ……この子は、もふもふ……？」

シルバーウルフ「ﾜｩｰﾝ」

トゥーナ「もふもふ……」ﾓﾌﾓﾌ

シルバーウルフ「ﾊｯﾊｯﾊｯ」

トゥーナ「…………」


トゥーナ（…………ちょっとごわごわしてる）

……
－家畜小屋、？？部屋


トゥーナ「他にも部屋が…………ここは……？」

ｶﾞﾁｬｯ


フェアリー「～♪」

トゥーナ「あ……妖精…………かわいい」

ダークスライム「……」ﾇﾁｬﾇﾁｬ

トゥーナ「こないで」


ヘルスパイダー「……」ｼｬｶｼｬｶｼｬｶ

トゥーナ「むしもいる……」


フラワーブロッサム「……」ｼｭﾙｼｭﾙ

トゥーナ「……絡みつかないで」


……

……

トゥーナ「いろいろいるんだ……」

トゥーナ（わけ隔てない……心）

トゥーナ（……だから…………みんなに優しいの……？）

トゥーナ（でも……あたしは…………）


トゥーナ「ぁ……台帳」

ﾍﾟﾗｯ

モコモコ[カエダーマ]

トゥーナ「かえだーま……？　……替え玉？」

トゥーナ「名前……つけてるんだ」



バッファモー[ウシ]
コケホッホー[トリ]
シルバーウルフ[イヌ]

トゥーナ「…………安直」

ﾍﾟﾗｯ

トゥーナ「！！」

フェアリー[オナホ]
ダークスライム[ローション]
ヘルスパイダー[キンバクプレイ]
フラワーブロッサム[ショクシュプレイ]


トゥーナ「」

トゥーナ「なに…………これ」

トゥーナ「…………ひどい」

トゥーナ「最低……」


ﾍﾟﾗｯ

トゥーナ「……？　まだページがあるのに、塗りつぶされてる……？」

モコモコ「モコモコッ」

トゥーナ「え？　モコモコ……？」

モコモコ「モコッ」ｸｲｸｲｯ

トゥーナ「そっちに……なにかあるの……？」

モコモコ「モッコー」ﾀﾀﾀｯ

トゥーナ「あ、待って……！」

トゥーナ「……もう一部屋…………」

トゥーナ「……」ｺﾞｸﾘ


ｷﾞｷﾞｨｲ……

トゥーナ「……まっくら…………それに、肌寒い……ここは」


ﾊﾞﾀﾞﾝ！！！

トゥーナ「！？！？！」ﾋﾞｸｯ


トゥーナ「ど、どどドアが、ドアがああ」

トゥーナ「あ、あかな……あかなぃ」ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ

トゥーナ「だれかっ……だれ、か…………カリン……！　ガジ…………！」

？？「ﾌﾌﾌﾌﾌ……」

トゥーナ「っ！？！？」

ｻﾜｯ

トゥーナ「ぽきょらんびぁあ！？！？！？」ﾋﾞｸｩｯ



ゴースト「……」
ゴースト「……」
ゴースト「……ﾌﾌﾌﾌ」


トゥーナ「」

ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ……


……

……ーナ……！　トゥー……！


トゥーナ（だれ…………あたしを……よんでる……？）


……トゥー……ナ……！　トゥーナ……！

トゥーナ（あな……たは）


モコモコ『トゥーナ、大丈夫？』

トゥーナ（モコモコ……？）

モコモコ『良かった……気がついたんだね』

トゥーナ（ちがう……このモコモコ……）

モコモコ『？　……どうしたの？』

トゥーナ「ち、近づかないでっ……この…………」



トゥーナ「へんたい！！！」


モコモコ『えっ……？』

トゥーナ「こないで！」

モコモコ『トゥーナ……』

トゥーナ「モンスターに……あんな……あんな…………くっ……！」

モコモコ『…………こわがらせて、ごめん』

モコモコ『けど…………安心して』


モコモコ『僕は………………モンスターにしか興味はないから』

トゥーナ「ぇ…………？」

モコモコ『人間には何もしないよ……まぁ』

モコモコ『トゥーナみたいなかわいい子が……もしモンスターならなぁ……って、思うことはあるけど。……あぁ、小屋で飼って……いっぱい調教してあげるのに……』

トゥーナ「っ……」ｿﾞﾜｿﾞﾜｯ

モコモコ『あぁ、そういえば』



モコモコ『前に僕を助けてくれた…………でっかくて赤い鳥のモンスター、か　わ　い　か　っ　た　なぁ』

トゥーナ「え………………」

モコモコ『捕まえたい……一日中調教して、僕専用のペットにしたい……あぁ……いったい、ど　こ　に　い　る　ん　だ　ろ　う　ね』

モコモコ『ねぇ、…………トゥーナ』ﾎﾟﾝｯ


トゥーナ「」



いやぁああああああああああああああああああああああ！！！！！！！！！

トゥーナ「っ！！！」ｶﾞﾊﾞｯ


トゥーナ「ここは……」ｷｮﾛｷｮﾛ

トゥーナ「…………あたしのベッド……」

トゥーナ（……夢？　…………だよね）

トゥーナ（あの人が、あんな人のハズない……あの人は……）


ｶﾞﾁｬｯ

カリン「トゥーナ、いる？」

トゥーナ「！　カリン…………なに？」


カリン「あのさ……大樹の……（記憶喪失のあの人のこと）」

トゥーナ「……」

カリン「その、トゥーナと……（一緒に調べに）」

トゥーナ「いかない」

カリン「えー？」

トゥーナ「人のことを…………無暗に詮索しては……ダメ」

カリン「いや……（そーじゃなくって）」

トゥーナ「……？」


カリン「調べに行ってベッドで寝てたら、キスで起こされて」

トゥーナ「」



カリン「そのまま……あの…………（ちょっと言いづらいなー……）」

トゥーナ「」

カリン「というわけで……（わたし、結婚するから）」


トゥーナ「ぇっ」



トゥーナ「えっえっえ……ぁ」

トゥーナ「……うそつき」

トゥーナ「…………モンスターしか……って、言ってたのに」

トゥーナ「あたしの、どっちの姿も…………かわいいって…………」


トゥーナ「……………………」