「…ここは…?」
マリン「コホリント島、あなたね、砂浜で倒れてたのよ!」
「俺は…砂浜…俺は…?」
マリン「名前が…もしかして、思い出せないの?」
マリン「うーん…あの人と一緒だね…」
「あの…人?」
マリン「そう、リンクっていうんだけど、あなたと同じで砂浜に倒れていたの」
「リンク…リン…ク…懐かしい名前だな」
マリン「あなたも、リンクかもね、あの人も耳がとんがってたし、手の甲に三角の痣があったし、ふふ、この島に流れている人はみんな、リンクなのかな?」
「はは、そうかもな、世話になった」ガタ
マリン「あ!どこに行く気?そんなボロボロの身体で!」
「俺が居たという砂浜はどう行けばいい?なにか分かるか…グッ」バタ
マリン「もう!言わんこっちゃ無い、ほら怪我人は寝てなさいって…重いのね、もう」ドサ
「面目ない…君がいなければ、命を落としていただろう」
マリン「マリン!」
マリン「マリンでいいよ、ほらもう少し寝てなさい」
「面目ない…」
「夕日…か」
マリン「あら、おはよう、なにか思い出せた?」
「夕日だ」
マリン「ふふ、気に入ってくれた。きれいでしょう」
「ああ…これも懐かしい…」
マリン「夕日?何か思い出せそう?」
「…面目ない」
マリン「なんだか謝ってばかりね、ねえ、夕食は食べれそう?」
「ああ、いい匂いだ、食いたい」
マリン「よかった、今日はきのこのスープなの、たくさん食べてね」
「うまかった…その…マリン」
マリン「なあに?」
「俺のこと…リンクと呼んでくれないか?」
マリン「よかった名前、思い出したのね」
「いや…だが…リンクという名前、言葉にうまくできないんだが、その…引っかかるんだ」
マリン「そうね、いつまでも『あなた』じゃ不便だものね」
「ああ、頼む」
マリン「わかったわ、リンク」
リンク「ああ、ありがとう」
マリン「うん、さあ!おなか一杯になったら、ゆっくり眠るのよ、ちゃんと怪我治してね、おやすみ」
リンク「ああ、おやすみ」
――
マリン「おはよう、リンク」
リンク「ああ、おはよう」
マリン「怪我の具合はいかが?」
リンク「マリンのおかげで…この通りだ」
マリン「うんうん。杖を使えば歩けるのね」
マリン「じゃあ、お手伝い頼んでも大丈夫かしら」
リンク「ああ、動きたくてしょうがないんだ、なんでもでこいだ」
マリン「じゃあ、あなたの薬を買いに行くから、お供よろしくね」
リンク「ああ、おやすい御用だ」
マリン「どう、久しぶりの外の空気は?」
リンク「あ…その…やはり良いものだな」
マリン「?」
四つ子1「あー新しいリンクだー」
四つ子2「マリン姉ちゃんとデート?デート?」
リンク「いや…その…なんだ」
マリン「あれ?知り合いなの?」
リンク「なんというか…その…」
四つ子2「うん、時々ね、キャッチボールしてくれたり、本読んでくれたりしてくれるんだ」
四つ子1「すっごくボール投げるのうまいんだぜー」
マリン「ふーん…怪我人がキャッチボールをねえ…」
リンク「いや、その、あ…面目ない、だが寝てるだけは辛くて…」
マリン「はあ…まったくもう、四つ子君達も気をつけてあげてね、あの人と同じで、すぐ無茶する人だからね」
リンク「は…はは…」
マリン「おじさーん、こんにちはー」
店長「おーう、いらっしゃい、マリンちゃん、とそいつが新リンクか?よろしくな」
リンク「ああ、よろしく頼む」
マリン「いつものちょーだい」
店長「はいよ、3つで10ルピーね」
リンク「ハート印の塗り薬か」
マリン「あら、知っているの?」
リンク「ああ、ツボの中や草むらに何故か隠されている、赤い特攻薬だ」
マリン「そうそう、あの人もボロボロになりながら、草刈ってたわ」
店長「まったく、店の前、穴だらけにしたりな」
リンク「はは、前のリンクという奴は変わり者らしいな」
店長「まいどありー」
リンク「なあ、マリン、一つ聞きたいんだが、」
マリン「どうしたの?」
リンク「あれは…あの卵の殻のようなものは」
マリン「うーん、あたしもよく知らないんだけど、割れる前は神様が住んでたらしんだ」
リンク「そうか…詳しく知りたいな、明日図書館にでも行ってもいいか?」
マリン「そうね、明日も具合がよかったらね」
リンク「……」
マリン「どうしたの?リンク?」
リンク「あれは…」
カラカラカラ
マリン「風見鶏?風を受ける鳥さん、気になるの?」
リンク「わからない、初めて見た気がするが懐かしい気がする、風を見せる鳥か、きれいだな」
マリン「そっか、リンクは風が好きなのね」
リンク「好き…か、わからないが、俺の故郷にも風が吹いていた気がする」
マリン「ふふ、おかしなこというんだね、風はどこでも吹くでしょう」
リンク「そうだな、ははは」
―――――――
マリン「すっかり元気になったのね」
リンク「ああ、もう洗濯も掃除もバッチリだ」
マリン「もう、リンクはマメな働き者だから、あたしの仕事なくなっちゃうわ」
リンク「はは、今日は海岸まで言ってみようと思うんだ」
マリン「うーん…まだ、危ないし、やめたほうがいいわ」
リンク「いや、何か手がかりが見つかるかもしれない、マリンが俺を担いで通れるくらいなら大丈夫だと…」
マリン「でも、あそこは慣れてないと…」
リンク「マリンがついてきてくれれば大丈夫じゃないか?」
マリン「今日は…その…どうぶつの…となり村に行かないといけないから…今日は」
リンク「なら、一人で慎重に…」
マリン「あーもう!お願い!まだ行かないで!その…時間が来たら、ちゃんと説明するから」
リンク「あ、ああ、そう、だな、すまない」
マリン「ううん、あたしこそ、大きな声出してごめんなさい…」
リンク「いや、無理を言った俺が悪い、そのとなり村についていっていいか?」
マリン「う、うん、もちろん!それじゃ…よろしくお願いしまーす」
リンク「ん?ああ、行こうか」
―
リンク「いい城だな」
マリン「きれいなお城よね、カナレット城っていったんだって」
リンク「いった?」
マリン「そう、昔は人が住んでいたのよ」
リンク「…そうか、城か…何か思い出せそうだな」
マリン「え?もしかして、リンクは王様だったとか」
リンク「はは、だといいんだが、多分違うだろう、そんな柄ではないだろう」
マリン「あら残念、王様に恩を売れたと思ったのに」
リンク「そうだな、王様じゃなくてよかった、行こうか」
マリン「リンク~!どういう意味~?」
リンク「王様になったら教えるよ」
リンク「ここが、となりの村か、結構というか距離はあったな」
マリン「うん、そうね、遠いんだよね」
リンク「村と聞いていたが…人が見当たらんな、家の中か」
マリン「やっぱり、リンクとおんなじこと言うのね」
ウサギ「あーマリンちゃん、ひっさしぶりー」
リンク「な!?ど、動物が!」
マリン「やっぱり不思議な人ね、動物がしゃべったくらいで驚いて」
リンク「すごい島だな…全く」
ウサギ「もしかして、歌いにきてくれたの?」
キツネ「そうだよね!そうだよね!こんなときこそ歌の力だよ!」
マリン「うん!今日はたくさん歌うね」
リンク「(家事の時の鼻歌は練習だったのか)」
――
マリン「ごめんね、結局夕方までうたっちゃった、長く付き合せちゃったね」
リンク「いや、いい歌だった」
マリン「お褒めの言葉ありがとう、風の魚っていうの、この島の神様と同じ名前なの」
リンク「風の魚か…曲名に恥じない、やさしい風を運んでくるようなメロディだった」
マリン「あら、意外と詩人ね」
リンク「意外は余計だな」
マリン「ふふ、帰りましょうか」
リンク「そうだな、今度は穴に落ちないようにな」
マリン「もう!いいじゃないの過去の事は気にしないの」
リンク「ずいぶんと近い過去を切り捨てるんだな」
マリン「過去を切り捨てないと、思い出に…おぼれちゃうから…ね」
リンク「…意外と詩人なんだな」
マリン「もう!仕返しのつもり?意外はよけいです!」
リンク「はは、悪かったよ、そうだな、帰ろうか」
マリン「うん、落ちないように…手つないでいい?」
リンク「…ああ」
――――
パパール「という訳で、前のリンクさんが楽器を揃えた後、卵が割れてちょっと前までは入れたんっす、けどね…」
リンク「くずれてしまったのか…調べられそうにない…か」
パパール「そうっすねー、もう海のほうには行ったっすか?って新リンクさんは海から流れてきたんすよねー」
リンク「いや、流れてきた時に気を失っていた…ようだ…」
パパール「んーそうっすかー、まあ、一応覚悟しといて欲しいっす」
リンク「覚悟?」
パパール「そうっすね、なんとういうか…まあ難しいっすね、実際に見て欲しいっす」
リンク「ありがとう、パパールさん」
パパール「息子によろしく頼むっす」
―――――
四つ子1「お兄ちゃーん、いいよ」
リンク「いくぞ、そりゃ」
四つ子1「ぎゃー、はやーい」
四つ子1「さっすがリンクー」
マリン「リンクー、こっちに来てー」
四つ子1「またデート?」
リンク「本当におませな奴だな」
マリン「そうよ、デートだから邪魔しないでねー」
リンク「はは、そういうわけらしい、またな」
四つ子1「ひゅーひゅー」
リンク「今日は?どうぶつの村?この前行った急流下りか?」
マリン「海岸、行こう」
リンク「…ああ」
マリン「その…びっくりしないでね」
リンク「…ああ」
――
リンク「……………」
マリン「……………」
リンク「…絶景だな」
マリン「…びっくりした?」
リンク「ああ、海が…空が…違うな、世界が途切れている、とでもいうのか?」
マリン「そうかもね」
リンク「かも?わからないのか?」
マリン「分かりたくないのかもしれないね」
マリン「…最初に居なくなったのはリンクだったと思う、その次にモンスターが減っていって、ついにいなくなっちゃった」
リンク「確かにここに来て一度もモンスターを見ていないな、平和な島だと思ったんだが…そうか…」
マリン「モンスターがいて危ないなんて嘘ついてごめんなさい、でもこれを見せるのは…あんまり…よく…よくない気がして…ね…」
リンク「わかっている、俺の為だって事くらい」
マリン「モンスターがいなくなった後…かな?」
マリン「誰かが居なくなったの」
リンク「誰か?」
マリン「その後誰かが、その後も誰かが、その後は四つ子の誰かがいなくなったの」
リンク「おい、マリン、待ってくれ!誰が消えたって…」
マリン「わからないの!」
リンク「!?」
マリン「居なくなった人のこと…誰も…覚えてないの…大切な人だった、その人が…記憶ごと居なくなるの…」
マリン「誰かが言ってたの、風の魚の夢が覚めたって、だからみんな夢の藻屑に消えるんだって」
リンク「…」
マリン「そのうち、きっとわだじも…だでにも思い出されづに…きえで…」
リンク「マリン…」
マリン「リングだげはね…そどからきだリンクだけは…皆、わずれてないの…」
マリン「だからね…島の外のひどなら…きっど、わだしだちのこと…わすれないど…」ギュウ
リンク「ああ…ああ…」
マリン「わだしが…ぎえても…おぼえでて…」ぎゅう
リンク「ああ…」ぎゅう
マリン「わだじぃぎえたくない…」
リンク「…消えないさ、消させないさ…」
マリン「うう…ええ…」
リンク「風が…冷たくなってきたな…帰ろうか…」
――――――――――――――――――――――――――――――
カラカラカラ
リンク「風向きが変わったな」
リンク「ふう…」
リンク「この島の寿命、というよりもこの時空の寿命が尽きるらしいな」
リンク「ふ、賢者共め封印に綻びがあったらしいな」
リンク「さあ、行こう、マリン」
リンク「君をこの世界の思い出にはしない」
リンク「ハイラルにつれて帰ろう」
リンク「この大魔王ガノンドロフがな」
カラカラカラカラカラカラ
ゼルダの伝説 時のオカリナ.9
FIN
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません