息抜きのための短め
グラーフしかしゃべらないので提督からの台詞等は自分で想像して補完してください
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コンコンコン
グラーフ「失礼するぞ」ガチャッ
グラーフ「初めまして、私がドイツより派遣されたGraf Zeppelin級航空母艦一番艦、グラーフ・ツェッペリンだ」
グラーフ「…………ん?部屋を間違えたか……ここは、執務室ではないのか?」
グラーフ「え、ここが執務室?いや、日本式の冗談だろう……日本の艦隊の長の部屋が、こんな……」
グラーフ「いや、確かに部屋の半分は机にソファ……それにテーブルに棚とそれらしいが……」
グラーフ「もう半分の……その緑色の床と、地面に直接座れと言わんばかりのクッションはなんだ?」
グラーフ「タタミ……?ザブトン?チャブダイ……?ううむ……」
グラーフ「ま、まぁいい。私もこの鎮守府で世話になる。ゴウに入ればゴウに従え、というやつか」
グラーフ「なんだ、何を驚いている。私がコトワザというものを使うと変か?」
グラーフ「ドイツを発つ前に、ここにいるであろうビスマルクから送られてきたのだ」ガサゴソ
グラーフ「日本コトワザ辞典というらしいじゃないか。私は道中これを熟読し、多少のコトワザを覚えた」フフン
グラーフ「日本語もそれなりに勉強してきた。他の艦娘との意思疎通に支障はきたさないハズだ」
グラーフ「……と、私ばかり喋りすぎているな……そろそろ失礼する。各種手続きを済ませなければならないからな」
グラーフ「え?ヒトキュウマルマルに、食堂に?何かあるのか?」
グラーフ「何故はぐらかすアトミラール」
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グラーフ「アトミラール……その…………ダンケシェン」
グラーフ「まさか、歓迎会を開いてくれるとは思わなかった」
グラーフ「同じ時期に着任したカシマやオギ……じゃない、ハギー。それにアラシも中々やりそうな連中だな」
グラーフ「それに……ここは皆が一丸となっている……それを感じられたよ」
グラーフ「え?ああ、ハギーは私が勝手に呼んでいるだけだ。ハギカゼ、となると少し発音が……なに?他にもカゼ一族がいるのか!?」
グラーフ「ううむ……が、頑張って覚えるか…………」
グラーフ「なに?カシマの呼び方?もちろんカシマだが……」
グラーフ「え、違うのか!?アントラーズ……それが彼女の本名?なるほど…………分かった。次に会った時は謝罪しよう、そしてちゃんと名前を呼んでやる!」
グラーフ「……アトミラール」
グラーフ「その様子だと、カシマに絞られたな?」
グラーフ「まったく、私からもキュウをすえてやりたいぞ」
グラーフ「ほう、まだ言い訳する気か。聞いてやろう」
グラーフ「…………アトミラール、確かに結果的にカシマとは仲良くなれたが、それはそれ。これはこれだ」
グラーフ「次からは、私が何も知らないのをいいことに変な事を吹き込むなよ?」
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グラーフ「アトミラール?なんだ改まって」
グラーフ「……ヒショカン?」
グラーフ「秘書艦とは、アトミラールの補佐か?」
グラーフ「……なるほど。しかし何故私に?カシマや、まだ知らないが他の艦娘の方がサポートに適している者はいるだろうに」
グラーフ「私が、いいのか?そんなに?」
グラーフ「ううむ……仕方がない。いや、謹んでその任にあたらせてもらおう」
グラーフ「それにまだ私はこの国に来たばかりだからな……アトミラールに日本のことを色々教えてもらうのもいいかもしれない」
グラーフ「では、よろしく頼むぞ」
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グラーフ「さっき久しぶりにビスマルクに会ったよ。日本に馴染みすぎて変わっているかと思っていたが、そうでもなかったな」
グラーフ「だが彼女の部屋にあったコタツというものはすごいな。中がとても暖かくて」
グラーフ「日本人は冬になるとああして暖をとっているのだな」
グラーフ「そういえば、ここにはプリンツとUボートは着任していないのか?てっきり居るものだと思って――」
グラーフ「ってアトミラール!何故泣く!?」
グラーフ「……そ、そうか…………それは残念だったな」
グラーフ「なぁに、待っていればその内来るだろう」
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グラーフ「アトミラール、執務とは難しいな」
グラーフ「まぁ慣れるだろうが……アトミラールはよくそんなに素早く判を押せるな」
グラーフ「え?ああ……分かった。コーヒーでいいか?」
グラーフ「任せておくがいい。本場ドイツコーヒーを味わうといい」
グラーフ「待っていろ、すぐに作って来る。確か給湯室はあちらだったな」
グラーフ「お待たせした。どうぞ」
グラーフ「まずは香りを楽しむといい」
グラーフ「……………………」ジー
グラーフ「……そうか?ならよかった。我々ドイツ人はコクのあるコーヒーを好むからな」
グラーフ「秘書艦権限とやらでこの部屋にコーヒーマシンを置くのも悪くないな……どうだ?アトミラール」
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グラーフ「もうヒトゴーマルマルか」
グラーフ「休憩か……そうだな、少し落ち着くとするか」
グラーフ「しかしアトミラール、執務机や棚のある部屋の一角がタタミというのは、見た目的にどうなのだ?いや、アトミラールがそこで休めるのならいいが……」
グラーフ「私か?私はそんな場所には座らないぞ。床に直に座ったり寝転んだりなど……」
グラーフ「嫌だと言っている!」
グラーフ「………………」
グラーフ「……うるさいぞ」
グラーフ「妙な座り心地だなこのザブトンというのは……」
グラーフ「それに、なんだこの緑色のは」
グラーフ「リョクチャ……?なるほど。日本式の茶か。いただこう…………」ズズ
グラーフ「……ん、不思議な味わいだ。色合い的に苦いものだと思っていたが……なんというか、ふんわりとしていて」
グラーフ「美味しいと思うよ」
グラーフ「だがこの表面に浮いている埃は……衛生的にどうかと…………なに?埃じゃない?」
グラーフ「…………なるほど……では、これが浮いているからこのお茶は良いお茶だということか?」
グラーフ「日本は不思議な事だらけだな……」ズズ
グラーフ「そろそろ休憩も終わりにしよう。残りの執務を夕方までに……」
グラーフ「よっ……うっ!?」ドテッ
グラーフ「あ、足が…………足が……!」
グラーフ「アトミラール助けてくれ……足がしびれ……」
グラーフ「コラッ、足を叩くなぁ!」
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グラーフ「うぅ……変な目にあった」
グラーフ「ああアトミラール、聞いてくれ。さっきカガに部屋に呼ばれてな」
グラーフ「2人きりだったんだが、彼女が急にアイマスクをして、私に体を触ってくれと言い始めたんだ」
グラーフ「変だろう?」
グラーフ「まぁどうしてもと言ってくるから断るのもな……とりあえず肩や腕を触った」
グラーフ「だが段々触る場所の要望が、な……」
グラーフ「おまけにカガはカガで『赤城さんを感じる』などとわけの分からないことを言い出す始末だ」
グラーフ「どこから聞いたのかは知らないが、私とアカギの手は似ているらしい。それもかなり」
グラーフ「今度並べて比べてみるか」
グラーフ「え、カガ?ああ、途中で眠ってしまったからベッドに寝かしつけて失礼したよ」
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グラーフ「ここに着任して1ヶ月くらいか……」
グラーフ「どうした、しみじみとしてはいけないか?」
グラーフ「まぁ、思い出という思い出は結構出来たよ」
グラーフ「ビスマルクもカシマも、他の艦娘達もよくしてくれている」
グラーフ「それに、アトミラールも。な」フフッ
グラーフ「っと、済まなかった。執務中に手を止めてしまった」
グラーフ「今日は執務が終わったら失礼させてもらうよ。ビスマルクから誘いを受けているんだ」
グラーフ「さぁ?なんでも部屋に来いとだけ……あ、アトミラールはお呼びではないぞ?」
グラーフ「フフ、そう拗ねるな。晩飯の相手くらい、モテモテのアトミラールならいくらでもいるだろう?」
グラーフ「冗談だよ」フフフ
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グラーフ「おおアトミラール!見ろ。今日の昼はラ・メーンを作ってみたぞ!」
グラーフ「これがショ・ミーンの味だというからな」
グラーフ「……え?」
グラーフ「ああ昨日のビスマルクの誘いか。あれはとあるヒーロードラマの一挙放送を一緒に見ようというものだった」
グラーフ「あのテンドーソージとかいう奴はとても良い。彼の強すぎる生き方に感動した」
グラーフ「カ・ガーミンのひたむきさも良かったなぁ」
グラーフ「お、アトミラールも知っているのか?そうだ。このラ・メーンは昨日のドラマを見て作った」
グラーフ「ビスマルクは今頃寝てるんじゃないか?私は見終わった後部屋に帰ったが、他にも見る物があるとか言っていたし」
グラーフ「なんでも、撮り溜めたアニメの消化とか……よくわからないことを言っていたな」
グラーフ「日本のアニメは深夜にやっている物も多いそうじゃないか。何故深夜なのだ?」
グラーフ「キセイ?リンリ?なんだそれは」
グラーフ「そうそう、ビスマルクの部屋にいて気付いたのだが」
グラーフ「日本の漫画は、どれも薄いのか?」
グラーフ「いやな、本棚にあった漫画はどれも薄いものばかりで、パンフレットかと思ったよ」
グラーフ「ビスマルクは戦利品と言っていたな。どの海域であんなものが……」
グラーフ「ただビスマルク、それらを頑なに読ませまいとしていた……いつか読んでやろうと思うぞ」
グラーフ「え、何故アトミラールも反対するのだ!?」
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グラーフ「まったく!あのコンゴーという奴は……!」
グラーフ「聞いてくれアトミラール、私が食堂でコーヒーを飲んでいたら、コンゴーの奴が!」
グラーフ「なにが泥水だ……!コーヒーのうまさを知ろうともしない奴め……!」
グラーフ「これだから英国の連中は好きになれないのだ!」
グラーフ「アトミラールもそう思わないか!?」
グラーフ「……あ、すまない…………アトミラールの口から誰かを貶すようなことを……言わせてはならないな」
グラーフ「熱くなりすぎた……」
グラーフ「ッ、何故撫でる!?」
グラーフ「ええい、手を放せ!」バッ
グラーフ「まったく……そういうのは他の連中にでもしてやれ……」
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グラーフ「アトミラール、さっき……」
グラーフ「盗み聞きが趣味と言うわけではないんだが、聞こえてきてな……」
グラーフ「あの、サイドテールの駆逐艦の……そう、アケボノだ」
グラーフ「彼女には嫌われているのか?」
グラーフ「え、違う?しかしアケボノはさっき、大声で『サノバビッチ提督』と……まるで嫌うように」
グラーフ「サノバビッチの意味は知らないが、コンゴーがたまに言うのを見ている。主に対戦ゲーム中に負けた時とかに言っているから、いい意味ではないのだろう?」
グラーフ「ああ、コンゴーとはあの後色々あってな。まぁ別に悪い奴じゃ……って、今はその話ではない。サノバビッチとは何だ?」
グラーフ「――ッ!?と、とんでもない暴言じゃないか!よく許しているな……いいのか?仮にも軍の司令官が部下に、そんな……」
グラーフ「いいのか!?……はぁ……アトミラール、そういう趣味なら私から言うことは無いが……」
グラーフ「そうやって慌てて否定するところが怪しいな……」
グラーフ「このクズ」
グラーフ「…………どうだ?」
グラーフ「土下座はやめてくれ。財布を出すな」
グラーフ「やはりアケボノにはアトミラールを傷つけずに罵倒する何かが備わっているのだな」
グラーフ「私のはどうだった?」
グラーフ「……いや、それ以上言わなくていい……氷のようだとは、前にも言われたことがある」
グラーフ「誰に、だって?………………ふふ、秘密だ」
グラーフの〇〇にツプッリンしたいだけの人生だった一旦此処迄
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グラーフ「ほう、この鎮守府の艦娘が歌手に……」
グラーフ「それは誰なんだ?ナ・カーは既に歌手だった気がしたが……」
グラーフ「なに、カガだと!?」
グラーフ「カガにそんな特技があったとは…………しかも、曲名が……『加賀岬』……!!」
グラーフ「こ、これは……!!」
グラーフ「『かがみ』さき……しかも、かが『岬』!!」
グラーフ「カ・ガーミンとミサキーヌのハイブリッドだと!?」
グラーフ「同じ鎮守府のよしみだ。初回限定盤を予約しておこう」
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グラーフ「どうしたアトミラール。何か聞きたそうな顔をしているが」
グラーフ「私の名前の由来?」
グラーフ「なるほど。確かに日本の艦には地名などの由来があるな」
グラーフ「うむ。もちろんこのグラーフ・ツェッペリンにも名の由来はある」
グラーフ「元々『グラーフ・ツェッペリン』とはとある人物の名前から取ってきたものなのだ。その人物の名は、ドイツの陸軍中将フェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵という」
グラーフ「飛行船は知っているな?今ではもう見なくなってしまったが、あの空飛ぶ長くて丸いやつだ。日本のアニメでいうと『電撃!ブタのヒヅメ大作戦』にも赤い飛行船が出てきただろう」
グラーフ「それらの中の種類の一つに硬式飛行船というものがあってだな。それを世界で初めて実用化に持っていったのが、そのツェッペリン伯爵なのだ」
グラーフ「その名前のツェッペリンと、ドイツ語の『伯爵=グラーフ』で、『グラーフ・ツェッペリン』というわけだ。覚えたか?」
グラーフ「そうかそうか。私の事をまたひとつ知れて嬉しいか」
グラーフ「…………そ、そうか……そんなに嬉しいか?」
グラーフ「そこまで喜ぶか!?なんか恥ずかしくなってくるだろう……!」
グラーフ「や、やめろぉ!いい加減に!」
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グラーフ「アトミラール、朝だぞ!今日は寝坊だな」
グラーフ「わざわざ部屋まで起こしに来たのだから、さっさと起きないか」
グラーフ「ん?何故布団から手を放さない……?さては、二度寝する気か!」ガシッ
グラーフ「さぁ、布団から手を、は、な、せ……!」グググッ
グラーフ「とうっ!」バサッ
グラーフ「ふふん、艤装を展開した艦娘と力比べは、いかなアトミラールといえど敵で……は、な…………」
グラーフ「…………な、な……な、なんだそれは!?」
グラーフ「……すまない…………私としたことが、取り乱した」
グラーフ「その、それは朝の生理現象というものなのだな?」
グラーフ「そ、そうか……いや、そういう症状の事は知っていたが、実物を見るのは……」
グラーフ「言うな!!私が悪かった!」
グラーフ「さ、さぁ!さっさと着替えて執務だ執務!」
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グラーフ「そういえば、この前コンゴーに聞かれたんだが」
グラーフ「私はアトミラールの事が好きなのか?」
グラーフ「わっ、どうした急に噴き出して」
グラーフ「いや……それが分からないんだ好きか嫌いかでいったら断然好きなんだが……なんかな」
グラーフ「好きだということは、恋愛感情的な意味でだろう?だが私はアトミラールをそう見ているのかと……」
グラーフ「もちろん、アトミラールは私に良くしてくれていて、私自身、アトミラールが居ないと……」
グラーフ「だが、それが恋だの愛だの、そういったものに当てはまるのかと思ってな」
グラーフ「むしろ私は、アトミラールに友情的な何かを感じているものだと自覚しているが……どうなんだ?」
グラーフ「そうか……難しいか。それもそうだ、私にも分からない私の事をアトミラールが知っていたら驚きだ」
グラーフ「あ、そうだ。アトミラールはどうなのだ?私のことが好きか?」
グラーフ「わっ!二度目だぞ!」
グラーフ「気になるじゃないか。アトミラールに好かれていると思うと、胸が暖かくなる。一緒に居たくなる。淹れてくれた緑茶を飲みたくなる。コンゴーの前で『あーん』をやって見せつけたくなる。一緒の布団で寝たくなる」
グラーフ「おい、答えろ」
グラーフ「おーい、無視する気か?アトミラール」
グラーフ「聞こえないのかー?………………」
グラーフ「……仕方ない、アオバに聞いてこよ――」
グラーフ「なんだ聞こえているじゃないか」ニヤッ
グラーフ「それで、どうなんだ?アトミラールは私の事を……」
グラーフ「…………そう、か……」
グラーフ「まぁ、いいんじゃ、ないか?」
グラーフ「これは所謂、私はフラれたということか?」
グラーフ「む、確かに私は告白したわけではないな……しかしどうも腑に落ちん」
グラーフ「お互いに好きなんだろう?」
グラーフ「まぁ確かに明日も知れぬ身である艦娘に恋をしたところで、すべてが泡沫と消えてしまうという不安はつきものだろうが」
グラーフ「そうか……色々あるのだな、アトミラールにも」
グラーフ「何を謝る?今まで通りの私達じゃないか。大好きだぞアトミラール。人として」
グラーフ「フハハ、どうだ?この言葉を付けるだけで残念な感じが増すだろう」フフッ
・・・・・・
グラーフ「ん、休憩だな」ノビ
グラーフ「ああ、ありがとう……アトミラールは緑茶を淹れるのが上手いな」
グラーフ「なんというか、落ち着く」
グラーフ「からかうな……それに最近は、足を痺れさせずに地面に座る技も身に着けた」
グラーフ「こうして足を伸ばして座れば痺れない」ダラーン
グラーフ「別に見てもいいぞ?私の脚くらい……それとも触るか?」フフ
グラーフ「ははは、アトミラールは意外とからかい甲斐がある」
グラーフ「言ってくれるなよ。休憩中だ。私だって少しくらい羽目は外してだらけたい」
グラーフ「こんな姿、他の者には見せられないがな」
グラーフ「……ちなみに、本当に触る気じゃないだろうな?」
グラーフ「そうだな、もし触った場合……まずここの空気が230℃まで熱くなっていく。次にアトミラールの心臓が花火みたいに爆発する。それから髪の毛が燃えて、爪が溶けていくんだ」
グラーフ「…………冗談だよ」
・・・・・・
グラーフ「もうすっかり夜だな……にしても、今日はいつにも増して仕事の量が多い……」
グラーフ「稀にこんな日があるのか?」
グラーフ「そうか…………ならこれから根を詰めるか。コーヒーを淹れよう」
グラーフ「執務室にコーヒーマシンを置いてくれて助かったよ。わざわざ給湯室まで行かなくて済むからな」
グラーフ「それに、淹れたてが飲めるというのは大きい」
グラーフ「さぁコーヒーを飲んだら、夜戦だな。グラーフは夜戦でも行動が可能なんだぞ」
グラーフ「……無論、書類との夜戦だがな」
グラーフ「終わった……か……ギリギリ日を跨がずに済んだな」フゥ
グラーフ「いや、いいさ。こんな時間までアトミラールと居るのも中々無い機会ではあるし」
グラーフ「コーヒー……じゃないな。なにか冷たいものでも飲むか?」
グラーフ「なに、酒だと?」
グラーフ「………………まぁ、頑張ったものな。好きにするといい」
グラーフ「えっ、私か?まぁ飲めなくはないが……」
グラーフ「……そういうなら、ご相伴に預かるというやつをやってみるか」
グラーフ「だが明日もある。ほどほどにな」
・・・・・・
グラーフ「…………アイン、ツヴァイ、ドライ……」
グラーフ「ああ、ここに来てどれだけ経ったかを数えていたんだ」
グラーフ「1ヶ月と……数週間、だろうか?」
グラーフ「もうすぐ今年も終わるな」
グラーフ「昨日は空母の皆で忘年会があった。ズィーカクの七面鳥ダンスは中々に面白かったぞ」
グラーフ「それと、ズィーはもう1人いたのだな」
グラーフ「ズィーホーの卵焼きは美味しかった……」
グラーフ「生で加賀岬も聞けて満足だったぞ」
グラーフ「………………で、だ」
グラーフ「……それはツッコミ待ちという奴なのか?アトミラール」
グラーフ「エプロンにバンダナにマスク……傍から見れば不審者だぞ」
グラーフ「ほう、なるほど。大掃除か。日本ではこの時期にやっているのか?」
グラーフ「1年の汚れを取り、清らかに新年を迎える…………いいじゃないかいいじゃないか、そういうのでいいんだよそういうので」
グラーフ「私も執務室やアトミラールの部屋の掃除を手伝おう」
グラーフ「なに安心しろ。ドイツ式の掃除法を見せてやる」
グラーフ「遠慮するな。何を嫌がっている?」
グラーフ「先に大掃除をすると言ったのはアトミラールだぞ。つべこべ言わずに始めるぞ」
グラーフ「結局アトミラールの部屋は本人が1人で……おかげで執務室は私1人で掃除することになったか……」
グラーフ「はぁ……もう少し私にも…………っと、いかんいかん。掃除掃除」
グラーフ「せっかくだ、タタミの掃除の仕方も覚えておかねば」
グラーフ「机も整理……する必要は無いかな。下手に物を動かすと後でアトミラールが困りそうだ」
グラーフ「せめて拭いて綺麗にしておくか」
グラーフ「~♪」フキフキ
ピラッ
グラーフ「ん?引き出しの隙間から何かが落ちたな」
グラーフ「これは、写真か」
グラーフ「ゴワゴワだな……何かで繰り返し濡らしたのか………………ッ……!」
グラーフ「これは………………彼女は……」
・・・・・・
グラーフ「ああ、お疲れ。こちらも終わったところだ」
グラーフ「もうすっかり夜も遅くなってしまったな……」
グラーフ「ん?ほう、準備がよろしいことで」
グラーフ「いいさ。私も少し飲みたいと思っていたところだ」
グラーフ「今日は、酔いたい気分だからな」
グラーフ「…………」クイッ
グラーフ「…………ああ……」
グラーフ「……そうだな」
グラーフ「…………ん?どうした?」
グラーフ「生返事?…………済まない。ちょっとな」
グラーフ「あはは、酒がまずくなってしまうか?」
グラーフ「ならいいが…………………………」
グラーフ「………………………………………………」
グラーフ「………………アトミラール、酔ってるか?」
グラーフ「……全然か」
グラーフ「私は存外臆病者でね。酔った勢いでしかこういうことができない」
グラーフ「何の話かって?まぁ、いいかな……本当はアトミラールが酔った時にでも聞こうと思っていたが」ゴソゴソ
グラーフ「これ…………」ピラッ
グラーフ「……『何でお前がそれを持っている』という顔だな……まぁ無理もない。この写真……机から落ちた物なんだが……」
グラーフ「偶然だ。本当に偶然、見つけた」
グラーフ「それに写っているのは、艦娘だろう?」
グラーフ「だが、私は歓迎会でも、今まででも、彼女を見たことが無い」
グラーフ「彼女は……おそらく……」
グラーフ「ッ、す、すまん……」
グラーフ「い、いいんだ……大声を出させてしまったのは、こちらだ……」
グラーフ「その人は……アトミラールの……恋人か?」
グラーフ「違う……?じゃあなんだ?」
グラーフ「ただの部下……?」
グラーフ「……ただの部下のために、そこまで泣くのか?」
グラーフ「その写真がゴワゴワなのは、アトミラールが何度もその写真に涙を流したからだろうに」
グラーフ「…………まぁ、部下が死んだら悲しいだろうな」
グラーフ「よく分かった……あなたは、優しすぎるということが、ね」
グラーフ「信じるよ。アトミラールはこういう時、嘘をつくような人間ではない」
グラーフ「そうか……だから、怖かったのか。もしも自分が艦娘に恋をしてしまったら、その恋をした艦娘が何かの拍子に沈んでしまったら――」
グラーフ「きっと自分は耐えられない……だから、艦娘に好意を寄せることはしないと」
グラーフ「まったく、部下に手を出さないというのは立派だが……コンゴー達が聞いたら卒倒するな」
グラーフ「私も…………いや、なんでも…………あ、やっぱりなんでもあるぞ」
グラーフ「私も、少し嫌だ」
グラーフ「あ、やっぱりとても嫌だ。済まないな、何度も訂正して」
グラーフ「…………ふふっ、もしかしたら私も……」
グラーフ「その人と同じ水底に沈めば……あなたに沢山想ってもらえるかも――」
ドンッ
グラーフ「痛っ……!」
グラーフ「手首……痛いぞ……」
グラーフ「強く、握りすぎだ…………」
グラーフ「こういうの知っているぞ。アブクマがキタカミにやっていた……あれだ、あれ。壁ドンとやらだろう?しかし壁ではなく私の背中はベッド……つまり押し倒しだぞ」
グラーフ「それに手首をつかまれては……抵抗できないなぁ」
グラーフ「…………どうする?」
グラーフ「…………きっと、私はあなたに友情を感じながら、また別の感情を抱いている」
グラーフ「端的に言うと、それはあれだ」
グラーフ「あれだよ、あれ」
グラーフ「分かれ」
グラーフ「あなたは、どうだ?アトミラール」
グラーフ「もしあなたは、私が愛していると言ったら……愛していると、返してくれるか?」
グラーフ「…………………………」
パッ
グラーフ「………………そうか」ニコッ
グラーフ「2連敗か」
グラーフ「いやはや、手強いなぁ、実に。さっきとは違い、今度はちゃんと告白したというのに」
グラーフ「このグラーフ・ツェッペリンですら落とせない棲地がまさか自分の基地にあるとは」
グラーフ「いいんだ、謝るんじゃない」
グラーフ「コンゴーも言っていた。押して駄目なら押しまくれと」
グラーフ「あなたが私に押し倒されてくれるまで、少しの間待つとしよう」
グラーフ「ああ、少しの間だとも。それだけで十分だ」
グラーフ「知っているだろう、私は夜戦もこなせる空母だ」
グラーフ「つまり、その気になればアトミラールの――って、アトミラール、どこへ行く!まだ話は終わっていないぞ!アトミラール!!」
・・・・・・
グラーフ「おはようアトミラール」
グラーフ「酷いじゃないか、昨日はあのまま逃げてしまって……」
グラーフ「…………秘書艦は、お役御免か?」
グラーフ「………………えっ?」
グラーフ「いいのか?」
グラーフ「ふふっ、光栄だ」
・・・・・・
グラーフ「にしてもあなたも罪な人だな。振った相手をまだその気にさせている」
グラーフ「それは、あなたが私に告白するのを待ってくれというキープと捉えていいのか?」
グラーフ「…………な、何故黙る?」
グラーフ「えっ?」
グラーフ「決心がつくまで待ってほしい…………って、え?え?」
グラーフ「いや、別に、それはとてもうれし、いや構わないのだが……」
グラーフ「ううむ……押して押して押し倒す作戦が早くも瓦解したか……これでは待って待って私待つわ作戦になってしまう」
グラーフ「…………まぁいいだろう。待つさ」
グラーフ「その代わり、その決心とやらは早く頼むぞ?このグラーフ・ツェッペリン、そういうのを待つのは苦手だ」
グラーフ「それと、これからはどのような悩みであっても私に一番に話に来い。一緒に考え、一緒に悩む」
グラーフ「ふふ、このようなことをあなたに言うとはな。最初は良い上司くらいにしか思っていなかったのだが……」
グラーフ「こうなってしまっているということは、そろそろ私もこの鎮守府に馴染んできた、ということか?」
グラーフ「…………そうか、ふふふっ」
~Ende~
すまねぇ、ドイツ語はサッパリなんだ
と言うわけでおしまいです。夜戦とか諸々書こうと思ったけど「こういうのはエロSSって言うんだ!知ってるか!?でも新規艦でやるSSじゃねぇ!」って声が聞こえてきたからやめました
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