ココア「親友だね!」リゼ「……恋人だろ」 (79)

ココア「えっ」

ココア「今なんて言ったのリゼちゃん……?」

リゼ「恋人だろ」

ココア「えっ」

リゼ「違うのか?」

ココア「えっいや、あのその」

ココア「り、リゼちゃんどうしたの~?」

ココア「あっ、ミリタリージョークだね!(あせあせ)」

リゼ「そんなジョークはない」

ココア「じ、じゃあどういう……」


リゼ「ココアと私はつきあっているんだよ、そういうことに決まってるだろ?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449424296

ココア「え」

ココア「えーーーーっ!?」

リゼ「なんだよ、いきなり大声あげて可笑しなやつだな」

ココア「い、いやおかしいのはリゼちゃんだよ!?」

ココア「私はじめてそんなこと聞いたよ!?」

リゼ「そうだったか」

ココア「そうだったかじゃないよ!!」

ココア「だ、だいたい私達おんなのこだよね……?」

リゼ「関係ないだろ」

リゼ「当人が愛し合っていれば性別なんて些細な問題だ」

リゼ「なんだ?ココアは同性で愛し合うのを否定するのか?」

ココア「え、あ、別にそういうんじゃ……」


ココア(リゼちゃんなんだか変だよ……)

ココア「だ、大体さ……」

リゼ「なんだ?」

ココア「愛し合っていたら性別なんて問題ない、と私も思うけど……」

ココア「り、リゼちゃんと私って愛し合ってるの……?」

リゼ「?」

リゼ「何を言っているんだココア」

リゼ「私達は愛し合っているに決まっているだろう?」

ココア「そ、そうなんだ……」

リゼ「そうだ」

リゼ「ココアは私のこと好きだろ?」

ココア「……あのね、リゼちゃん……」

ココア「リゼちゃんのことは大切に思ってるけど」


ココア「そういう風に考えたことは、ないよ……」

リゼ「……」

ココア「だ、だからねリゼちゃん、今までどおり友達とし」

リゼ「あははははっ」

リゼ「面白くない冗談だなココア」

リゼ「本当につまらない」

カチャ

ココア「て…え?」

リゼちゃんは私に向かって銃を向けてきた

やられていることは初めてあった時と一緒だ

だけど、違う、なにかが決定的に違う

リゼちゃんの目、私をとらえる眼差し、雰囲気が

怖い、リゼちゃんが……怖い

リゼ「職場体験でチノがいないし丁度いいか」

リゼ「ハッキリさせておこう」


リゼ「私とココアはなんだ?言ってみろよ」



ココア「……わ」

ココア「私とリゼちゃんは……」

リゼ「そういえば言い忘れてた」

リゼ「この銃はただのエアガンだ(にこっ)」

ココア「は……?」

じゃあ、今までのはただの冗談だった?

質が悪いと思いつつも、張り詰めた緊張が少しほぐれ、ほっと息が漏れてしまう

リゼ「改造済みのな」

バンッ!

ココア「きゃっ!!」

本物の銃声には及ばないものの、至近距離の人間を怯えさせるには十分な音が響く

そして地面には、エアガンを受けただけとは思えないほどの損傷が残った

やっぱりこのリゼちゃんは、おかしい、怖い、震えが止まらない

リゼ「さて、ココア、続けてくれ」

ココア「ぁ……わ、わたしは……」

リゼ「わたしは?」


ココア「リゼちゃんの恋人……です……」

リゼ「『です』だと?」

リゼ「なにをかしこまっている?ココアは私に対してそんなんじゃないだろ?」

ココア「こ、恋人だよ……」

リゼ「そうだ、いつもどおりでいいんだココア」

リゼ「私のココア……」

ココア「リゼちゃ……んむっ!?」

不意にリゼちゃんの顔が近づいて、私に口づけた

ココア「んっ…!あっ…ッ……っ!」

軽いものではない、強引に貪ろうとするキス

両腕もリゼちゃんに痛いほどつかまれて身動きがとれない、抵抗できない

いや、拘束されていなくても、逆らうことなんてできようがなかった

先ほどの脳裏に焼き付いた恐怖、初めて見た親友……リゼの表情

その記憶が、リゼちゃんのキスを甘んじて受け入れさせたのだ

リゼ「……っ……!……っぷはぁ……!」

リゼ「……ふふっ、抵抗しないのか?そうだよな、私達は恋人なんだ、それでいい」

ココア「っ……はぁ……はぁ……」


リゼ「今日は私の家に来いよ、続きをしよう」

ココア「……ッ」

長かったキスを終え、久々の息を深く吸いながら、考えを巡らせた

続き、キスより先のこと

その行為はまだしたことがないし、もちろん同性であるならなおさらだ

たった一回、人生で捧げることができる自分の純潔

……嫌だ

同性だから、嫌だというのは少し違う

こんな豹変した、自分の大好きなリゼちゃんではないリゼに初めてを捧げるのはたまらなく嫌だった

それにこのキスだって、初めてだったのだ

恐怖が薄れていき、反比例して怒りが湧く

ココア「……嫌だ」

リゼ「……ココア?」

ココア「私、行かないよ」


ココア「リゼちゃんなんて大ッ嫌い」



バシィ!

掴まれていた手をふりほどいた拍子に、私の手がリゼちゃんの顔に当たってしまった

リゼ「…っ」

ココア「あっ」

ココア「ご、ごめ……」

思わずあやまろうとしたが、すべて言い終える前に飲み込んだ

これくらい、自分の苦痛にくらべれば軽すぎる

いっそビンタするのなら、もっと力を込めてやってやれば良かったと後悔した

そのくらい、今の私は怒っている

ココア「……とにかく今日は帰って」

ココア「今日はリゼちゃんの顔なんて見たくな」

リゼ「……な、なあココア」

リゼ「わ、私はなにかココアに悪いことをしたのか?」

リゼ「私がココアを泣かせたのか……?」

ココア「……え?」


リゼ「私に否があるのなら謝る……だから嫌わないでくれ……!」

おかしい

いや、おかしいのはさっきから感じていたことだ

だけど、このリゼちゃんはさらにおかしい

まるで、先ほどの記憶がなかったみたいな反応だ

ココア「リゼ……ちゃん?」

リゼ「すまない……すまないココア……」

リゼ「ココアがぶつなんて、よほどのことだ……」

リゼ「その原因が、私なんだよな……?」

ココア「憶えてないの……?」

リゼ「……よく、わからないんだ……」

リゼ「なんだか……夢を少し見ていたようで……」

リゼ「疲れているのかもしれない……最近、なんだか意識が変になるんだ……」

リゼ「だから多分……その時にココアへひどいことを、って」

リゼ「本当にすまなかった……ゆるし」

ココア「よかった!よかったぁ……!!(ぎゅう)」


私は、リゼちゃんの謝罪を遮って抱きついた。
自分の親友が元に戻ってくれて、すごく嬉しかったから。

リゼ「あ……っ」

リゼ「ココア……(ぎゅう)」

リゼちゃんも私の心情を理解し、嬉しそうに抱き返す

喜びで、さっきまでの不快な思いはどこかへ消えた

いままで通り、リゼちゃんと楽しく過ごせるのなら、喜んで私は水に流そう

ココア「えへへ、リゼちゃん大好き~!」

リゼ「わ、私もその……ココアのこと好きだぞ……」

ココア「もふもふ♪」

リゼ「お、おいっ!」

ココア「もー照れちゃって!」

リゼ「……ありがとな」

そのとき、私は安心しきっていた

あのリゼちゃんは悪い夢みたいなもの

悪夢から醒めた後は、その夢を思い返すことなどない

明日からまだいつもどおりのリゼちゃんが傍にいるって、思っていた


――さらなる悪夢が待ち受けてるなんて、思ってもみなかったのだ

翌日

リゼ「ココア、おはよう」

ココア「おはよリゼちゃん!」

リゼ「昨日は、その、ごめんな……」

ココア「もう~リゼちゃんってば!いいんだよ~?」

ココア「でも仲直りして抱きつき合ってるとこ、マヤちゃんに見られちゃったね~!」

そう、あの後、職場体験に来たマヤちゃんに目撃されてしまったのだ

マヤ『あー!ココアとリゼがラブラブだぁー!!』

私もリゼちゃんも泣いて頬を赤くし、只ならぬ雰囲気だったものだから危うく誤解されそうになった

詳細をぼかし大まかな事情は説明したが、ちゃんとわかってくれただろうか

リゼ「お、思い出すと、はずかしいぃ……////」

ああ……よかった、いつものリゼちゃんだ

いつものやりとりが、とても尊いものに感じられる

きっとリゼちゃんは悩んでいたんだろう

お嬢様が集う名門校に通ってるわけだし、私には想像できない苦労だってあるのだ

これからは気を遣って……いや、もしかしたら私が知らぬ間にリゼちゃんへ辛い思いをさせたのかもしれない


親友として、しっかりケアしてあげなければ

私のことを好きと言ったのも、キス……したことも

リゼちゃんの名誉のために、忘れてしまおう

一時の過ちは誰にだって、あるものだから

リゼ「お、おほんっ」

リゼ「ま、まあ今日も体験にマヤが来るわけだし、先輩として頑張らないとな」

ココア「お姉ちゃんに任せなさいっ!だね!」

リゼ「ただのバイトの先輩だ」

ココア「……ふふっ」

リゼ「……ははっ」

このなにげない時間が、私はたまらなく好きだ

リゼちゃんと、私、そして今はいないけど、チノちゃん


ラビットハウスでのこの時がずっと続けばいいと思っていた

数時間後

ココア「ふぅ……」

今日は無事に仕事をし終えた

マヤちゃんに昨日のことを聞かれもしたが、そこはリゼちゃんとうまく誤魔化せたし

相変わらず、と言っては悪いか

お客さんも少ないのでゆったりと指導をしながら、接客ができた

程よい疲労感を味わいながら、更衣室で着替えをしようとしていたとき

リゼ「……(ガチャ)」

リゼちゃんも少し遅れて入ってきた

ココア「あっ、お疲れリゼちゃん!」

着替えながら何気ない話をするのが、私は好きだ

仕事終わりの開放感が会話を弾ませてくれるから

だから笑顔でリゼちゃんを迎える

リゼ「ココア」

ココア「……えっ」

バァン!!

いきなりリゼちゃんが手を伸ばし、私の顔の真横にある壁を叩く

……あっ、今流行りの壁ドンってやつか!そうだよね?

リゼ「今日は来いよ?」

……そうじゃ、なかった

あの時の目だ、あの時のリゼちゃん


リゼ「私がこうなった理由をゆっくり教えてやるよ」

リゼちゃんの家

私は、リゼちゃんの家に行くことにした

もちろん、行きたくはない

だけど、リゼちゃんがこうなってしまった理由を知りたかった

知らなければならなかった、親友として

恐いとは思う、だが怖気づいて逃げるわけにはいかない

もしかしたらリゼちゃんを、元に戻す手がかりになるかもしれないのだ

その手がかりを、本人から聞くのは、いささか奇妙に感じられたが

リゼ「入れよ、私の部屋だ」

リゼ「リラックスしていいぞ、安心しろ」

リゼ「前もって親父や黒服には伝えてあるから、無粋な来客者も来ないさ」

ココア「……」

リゼ「ははっ、私が不気味でくつろげないか?」

ココア「……教えて、リゼちゃんがどうしてこうなったのかを」

リゼ「……いいだろう」


リゼ「結論から言うと、私がこうなったのはお前のせいだ、ココア」

ココア「な……」

自分の行為が意図せず、リゼちゃんを傷つけたかもしれない

そう思ったことはあったが、正直思い過ごしだろうと考えていたのだ

いままでリゼちゃんとは良好な関係を維持してきた、そう自負できる自信があったから

私の一方的な思い込みだったのか?そんな……ばかな

リゼ「ま、落ち込むなよ」

リゼ「原因はお前だったのかもしれないが、客観的に見れば悪いのはリゼだ」

リゼ「耐えられなかったリゼが悪いのさ」

なんだ?なにを言っているんだ?

リゼちゃんの口から出たのは、『悪いのはリゼ』?

あまりにも奇妙すぎる、まるで他人ごとのような……

リゼ「あはは、その戸惑う表情も可愛いぞココア」

ココア「ど、どういうこと……?」

リゼ「……私はリゼなんだが、厳密にはリゼじゃない」


リゼ「リゼのなかに生まれた、もう一つの人格だよ」

人格……?じんかく?

あまりにも突飛な内容で、頭がついて行けてない

リゼ「もう一人のリゼである私は――っと」

リゼ「いちいちもう一人、と付け加えるのは面倒くさいな」

リゼ「そうだな、便宜上、私のことは『ロゼ』とでもしようか」

ココア「ロゼ……」

以前、リゼちゃんによく似たその名の人と会ったことが思い浮かぶ

だが、今はそんな場合ではない、目の前のロゼ……の言うことに集中しなければ

ロゼ「私は思い悩むリゼの精神を護るため、生まれた人格だ」

ロゼ「逃避というか、人間の自己防衛機能みたいなもんだな」

ココア「そん、な……」

ココア「い、一体リゼちゃんは何をそんなに思いつめていたの……?」

ロゼ「やっぱり自覚は、ないか……」

ロゼ「……リゼはな、本当にココアのことを愛していたんだよ」

ココア「なっ……!」


ロゼ「愛しすぎて、壊れちゃったんだ」

ココア「そんなわけないよっ!」

ココア「リゼちゃんは、そんな、そんなそぶり……」

知らなかった、そんなこと

信じたくはない、だが、目の前のリゼちゃんと同じ姿をした人物の言葉ならば、信じざる負えない

ロゼ「ずっとひた隠しにしてきたんだよ」

ロゼ「こんな好意を持ってしまったことを知られたら、嫌われる」

ロゼ「だから親友のままでい続けようとな」

ロゼ「実際、今のココアの反応からして、間違っちゃいなかったようだ」

ココア「ちがっ……私は」

ロゼ「どちらにしろ、今までのようにはいかないだろ?」

ココア「……」

ココア「……なんで、なんで私なんかを好きになったの?」

ロゼ「……リゼは人見知りだった」

ロゼ「同じ学校の人間からは、尊敬こそされるが、それ故に壁もある」

ロゼ「その壁を自分から打ち砕けるほど、コイツは器用じゃなかった」

ロゼ「同級生のやつらには、一緒に遊べる友達なんていやしない」

ロゼ「それは、学年の違うお前らとつるんでたことからもわかるだろ?」

ココア「それは……でもなんでその中から私を……」


ロゼ「ココアが来てからなんだよ、こうやってリゼが誰かと友達らしくできたのは」

ロゼ「チノ、千夜、シャロ、メグ、マヤ」

ロゼ「以前から見知ったことはあったが、今のように仲良くなれるとは思いもしなかった」

ロゼ「それはココアにしかない、ココアだけの不思議な魅力がなしたことだ」

ロゼ「リゼは自分に無いものを持ってるお前に、惹かれていった」

ココア「私は……ただお姉ちゃんのようになりたかっただけだよ……」

ロゼ「理由はなんでもいいさ」

ロゼ「結果として、今の私達がいる」

ロゼ「それに、年下なのにお前はリゼのことを『リゼちゃん』と」

ロゼ「まるで同級生の友人のように、対等に接してきたな」

ロゼ「嬉しかっただろうよ、初めて友達ができたみたいだと」

ロゼ「しかしながら、免疫がない分、深く依存していった」

ロゼ「友情はいつしか愛情へと変貌していった」

ロゼ「お前がチノや他の誰かに抱きつくたび、リゼは心の奥底で嫉妬していたんだよ」

ココア「う、うそ……」

ロゼ「そう思うくらい、上手く隠してきたんだ」

ロゼ「だがそれも限界だ、募る嫉妬、打ち明けたい自分の好意、しかしそうすれば嫌われるだろう不安」


ロゼ「ないまぜになったジレンマに耐えられなくなって、私が生まれたんだ」

ロゼ「私はリゼのために、自分自身のために」

ロゼ「ココアを私のものにするつもりだ」

ロゼ「しなければならない」

ロゼ「どんな手をつかってでもな」

ロゼ「私は、ココアを愛するために生まれてきたんだから」

ココア「……っ」

唖然とした

言葉が出なかった

衝撃の連続にどうすればいいのかわからなくなった

たが今聴いたことと、目に見えるものは事実だ

ロゼは、私が恐れていたリゼちゃんの目、リゼちゃんだと思っていた目で、私を見ている

その瞳が教える、嘘などついてはいない、これは本気なのだと

ロゼ「ココア、私とつきあえ」

ロゼ「おとなしくそうすれば、お前の愛した日常はそのままだ」


ロゼ「だが断れば、わかっているよな?」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom