秋月涼「Dazzling World」 (31)

Side Mファーストライブ記念です。
よろしくお願いします。

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「おはようございます」

「あ!おはようございます!涼さん!」

「おはよう愛ちゃん。朝から元気だね」

「涼さん、おはよう?」

「おはよう、絵理ちゃん」

「2人とも何してたの?」

「愛ちゃんの勉強を見てあげてた?」

「そうなんです!この前のテストの点数が悪すぎてママに怒られちゃって…えへへ」

「あはは…僕も手伝うよ」

「助かる?」

「ありがとうございます!!」

僕、秋月涼はここ876プロでアイドルをしている。
今はソロで活動したり、日高愛ちゃん、水谷絵理ちゃんの二人とディアリースターズというユニットを組んだり…楽しく仕事ができている。
ちょっとだけ不満もあるんだけど…

「ぎゃおおおん!やっぱり女装ですか!?」

「仕方ないでしょ?女性アイドルの歌の祭典なんだから」

「社長!まず何で招待状が来たんですか!?」

「先方さんが女性時代の涼のファンらしいのよ」

「う…それは…」

「でも涼さん、似合ってますよ?」

「ふふっ、たしかに。一番似合ってる?」

「うぅ…フォローになってないよ…」

今は男性アイドルとして名前も知られてきた僕だけど、ちょっと前まで世間の人たちは僕のことを女の子だと思っていた。
世間の人だけでなく愛ちゃんや絵理ちゃんまでも。

簡単に言うと僕は男なのに女性アイドルとして活動していたのだ。男なのに!
まあでもそのおかげで有名アイドルになれたし、愛ちゃんや絵理ちゃんとも友達になれたしいい経験だったとは思ってるんだけど…

僕は男だ!とカミングアウトした今もたまに女性アイドルとしての仕事の依頼はある。
カミングアウトした後だから余計恥ずかしい部分もあるけど、まあライブ中とかは楽しんでやれている。

ファンの人は両方応援してくれていてありがたいんだけどね…

そんなこんながありながらも僕は楽しくアイドル活動をしていた。

ある日のことだった。
愛ちゃんと絵理ちゃんが仕事で出ていてアイドルは事務所に僕一人だった。
本でも読んでゆっくりしようとしていると、石川社長から声がかかった。

「涼、ちょうど良かった。ちょっといいかしら?」

「はい、いいですよ」

何だろう…面倒事を頼まれそうな予感がする…
ただ結果的にその予感は全くの的外れだった。

「315プロ…」

「そうです。まだできて日が浅いですが、ジュピターを始めとして力のある子が揃っている事務所です」

「秋月涼君。君を男性アイドルとして315プロで再デビューさせたい。今日はその交渉にきました」

「再デビュー…男性アイドルとして…」

「石川社長からも君の意見を基に決めると言われましてね」

「もちろん今すぐ決めてもらえたら嬉しいけど、そんな簡単な問題じゃないことは私にもわかります」

「じっくり考えて決めてください」

「最後にひとつだけ。君が315プロに来てくれたら全身全霊でプロデュースする!」

「熱意なら誰にも負けない事務所です。お待ちしています」

「・・・・・・・」

僕は手元にある名刺を夢の中にいるような気持ちで見つめていた。
僕を男性アイドルとしてプロデュース…

「経営者としてはね、あなたを移籍させるなんて論外なのよ」

「はい」

石川社長の言うことはわかる。

「でもあのプロデューサーの熱意にほだされてね。それと…」

「あなたが望んだ道でアイドルできるのが一番だって思っちゃってね」

「それが移籍でもそうでなくても…ね」

あれ?石川社長がそんなことを言うなんて…
明日は雪が降るかもしれないなぁ。

「あなた失礼なこと思ってるでしょ?」

「い、いえ!そんなことないですよ!あははは…」

この人は魔女なんじゃないかとたまに思う。

その日のレッスンは全く身に入らなかった。

今まで自分の中で移籍という選択肢はなかった。
女装しなきゃいけないのは不満っちゃ不満だったけど、アイドル活動自体楽しかったし、何より876プロが好きだから。
愛ちゃんや絵理ちゃんと歌って踊るのが楽しいから。

これからアイドルをやめるまで876プロにいても後悔しない自信もある。

ならなぜ?何で僕は悩んでるんだ?
なぜあのプロデューサーの一言一言が耳に焼き付いてるんだ?
なぜ…

315プロにいる自分を想像してしまうんだ。

それから数日一人で悩んで悩んで…僕は律子姉ちゃんに相談することにした。
そうしたら、「私はどこにあなたが行っても応援するしライバルよ」と言われた。
律子姉ちゃんらしいや。
それから「もっと話さなきゃいけない子たちがいるでしょ?」って。
まだ話してないとも言ってないのに…

何でもお見通しだなぁ、律子姉ちゃんには。

電話を切ってテレビをつけると、ちょうどジュピターが歌っていた。
迫力あるダンスに力強い歌。
女性アイドルにある華やかさとはまた違った魅力がある。
これが僕の目指したアイドル。

その姿に目を奪われていることに気が付いたとき、僕は自分がどうしたいのかを悟った。


話すなら早い方がいい。
心ではわかっているもののなかなか言い出せない。
2人はいつものように僕に接してくれる。
いつもは楽しいその時間が僕の心をざわつかせた。

一度は決心したものの僕の決意はぐらぐらと揺れていた。

3人で歌い、踊るたびにこのまま言わないでおこうかという考えが頭をよぎった。

もし僕が移籍したいと言ったら2人はどんな反応をするだろう。

僕が移籍したら一番影響を受けるのは間違いなく愛ちゃんと絵理ちゃんだ。
今まで3人でやっていたことを2人でやらなくてはいけなくなるかもしれない。
お互いに信頼し合っている仲だという自負はある。
でも憧れという理由で移籍したいという僕に失望するんじゃないか?
今まで作り上げてきた信頼が崩れ落ちてしまうんじゃないか?
それにまだ二人が心配だ…

という風に、色々理由はつけてはいるが結局僕は怖いんだ。

新しい世界に飛び込むことが。
今までいた素晴らしい世界を飛び出すことが。

前に進めない…そういえば僕の歌の歌詞のまんまだ。

そんな時には…

「愛ちゃん、絵理ちゃん…」

「何ですか?涼さん」

「うわあ!」

「ふふ、涼さん驚きすぎ?」

心で呼んでいたつもりが声に出ていたらしい。

「いや、ごめんごめん…」

「…涼さん!」

「ん?何、愛ちゃん?」

「涼さん、何か悩み事があるんですか?最近元気ないなって思って…」

「私もそう思う。もしかして体調が悪い?」

「ううん、体調は大丈夫だよ。ただ…」

「…何か悩みがあるなら言ってください!あたしたち、仲間じゃないですか!」

仲間…そうだ。大事な仲間だからこそ恐れずに言わなきゃいけないんだ!
僕の気持ちを!

「あのね。僕、二人に伝えたいことがあるんだ」

「この前315プロのプロデューサーさんが来てね、315プロで男性アイドルとして再デビューしないかという話をもらったんだ」

「再デビュー…それって…」

「うん。移籍して再デビューするってこと」

「涼さんは…涼さんはどうするんですか?」

「僕は…」

男としてでも女としてでもなく、大事なユニットの仲間として、二人に伝えよう。

「315プロに行って再デビューしたい!身勝手だと思う…でも…本気なんだ。本気で…男性アイドルとして一から踏み出したいんだ!」

「だから…僕は…」

「涼さん!」

「な、何?愛ちゃん」

「後ろ向いてください!」

「え?う、うん…」

何だ?どういうことだ?

「わあーっ!」

「うわあ!」

何かと思ったらいきなり愛ちゃんが背中にタックルをかましてきた。
愛ちゃんもろとも床に倒れこんでしまった。

「ど、どうしたの愛ちゃん」

「ママが言ってました…仲間が新しい世界に踏み出そうとしてるときは後ろから全力タックルだ!って!」

日高家の家訓はすごい。

「涼さんがいなくなっちゃうのはさびしいです、嫌です…でも…」

「涼さんがやりたいことを邪魔するのはもっと嫌です!」

愛ちゃんの声がレッスンルームに響く。

「わたしも…わたしも同じ」

見上げると絵理ちゃんが目を潤ませていた。

「さびしいけど…涼さんの男の子としてアイドルしたいっていう気持ちを見てきてるから」

「だから…だから…応援する」

「絵理ちゃん…」

不意に愛ちゃんが背中に顔をうずめてきた。

「うっ…くっ…泣いちゃ、泣いちゃだめなのに…!うぅ…うわああああああん!」

「愛ちゃん、泣かないで…わたしまで…」

「2人とも…ありがとう。本当に…ありがとう」

愛ちゃん、絵理ちゃん。
僕は2人に出会えて本当に良かった。
ありがとう。

そこからはあっという間の日々だった。
石川社長と315プロのプロデューサーさんに伝え、律子姉ちゃんやお世話になった人にも伝えて…
そして、

ファンのみんなにも伝えた。

僕が315プロに移籍すること。
ディアリースターズの解散ライブを行うこと。
そしてそこが僕が876プロのアイドルとして立つ最後の舞台であることを。

そしてライブ当日。
チケットが売り切れていたことは知っていたがそれでもまだファンの反応が怖かった。
それを絵理ちゃんに話したら、

「涼さんは…今までのアイドル活動に自信を持ってない?持ってるなら大丈夫。ファンを信じて?」

と言われた。
最後まで絵理ちゃんには頭が上がらないよ…


さあ、今までの秋月涼というアイドルに敬意と誇りを持って向かおう。

ステージ袖。
手と手つないで歩き出す。
ステージに立つといっぱいいっぱいのファンの人たちが見えた。
そして…

「ありがとう、涼!!」

「涼ちーん!これからも応援するぞー!」

「ディアリースターズは不滅だー!」

みんな思い思いのことを叫んでいてごちゃごちゃだ。
でも不思議とみんな声が聞き取れた。
そしてそれが僕の力となった。

「みんな!ありがとう!」

「今日!僕は!」

「愛ちゃん、絵理ちゃん、876プロのみんな!そして、ファンのみんな一人一人のためにこの曲を歌います!」

「聞いてください!Dazzling World!」

――数か月後

「ワンツーワンツー、ここでターン!」

「よしっと。ライブに向けて調子も上がってきたかも…」

「涼ーレッスンは順調か?」

「あ、プロデューサーさん!はい、まだ女性アイドルっぽい仕草が出ちゃうので気をつけなきゃですけど…」

「はは、そうか。そうだ、涼は1stライブに招待したい人いるか?二人くらいまでなら融通利くらしいんだが…」

「います!!2人!!」

「おお…わかった。じゃあ二枚用意しておくよ」

「はい!ありがとうございます!」

ライブ当日はあっという間にやってきた。
今までと違った緊張感がある。
今日、新しい世界が始まるんだ。


「315プロ!いくぞおおおおおお!!!!」

「オーーーーーーー!!!」

掛け声もやっぱ野太いなー、はは…

ステージに上がって見る景色も受ける歓声も違うように感じる。
でもそれは僕が変わったからかもしれない。

さあ、ステージが始まる。

見ててね、愛ちゃん、絵理ちゃん。

僕の新しい世界を!

「秋月涼です!よろしくお願いします!!」

ワアアアアア

――某日・とあるライブ会場

「なんだか久しぶりですね!」

「ふふっ、なんだか…懐かしい?」

「はは、そうだね」

「涼さんも…男性アイドルが板についてきた?」

「そうかなー何だか照れるなー」

「涼さんかっこいいですよ!!」

「でもまだまだ女装も似合いそう」

「ちょっ!?絵理ちゃん!」

「ふふっ、冗談♪」

「もう…よし、じゃあ行こうか。愛ちゃん、絵理ちゃん」

「はい!」

「準備万端?」

「よーし、ディアリースターズ、ファイトー!」

「「「オー!!!!」」」



終わり

以上です。
私はライブには行けませんが、行く人は楽しんできてください。
涼ちんは出られないかもしれませんがSideMにとって特別なライブだと思います。
そしてDS組のストーリーも終わらないと思います!
Hello!!の歌詞にもそう書いてありますしね!
ありがとうございました。

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