松永涼「ようじょたくみん」 (66)

※アイドルマスターシンデレラガールズのSSです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404913847


――――――――――――一時間前、事務所


拓海「これか……Pの野郎が言ってた荷物は?」

向井拓海(18)
http://i.imgur.com/NzQ1DUv.jpg

涼「そうだね。さすがに一人じゃ無理だからな。二人でさっさと運んで終わらせようぜ」

松永涼(18)
http://i.imgur.com/N5o8K3k.jpg

拓海「よっと……意外に重いな。おい、涼! しっかり気合入れて持てよ!」

涼「わかってるって。うっさいなあ」

拓海「重てえなあ……何が入ってんだ?」

涼「前のイベントで使った小道具やら衣装とかだな」

拓海「これ、どこに運べばいいんだ?」

涼「アンタ、何も聞いてねえな……地下の倉庫だよ」

拓海「へえ、この事務所、地下に倉庫なんかあんのか」

涼「おしゃべりはいいから、しっかり持てって! 早く終わらせたいんだからさ」

拓海「何焦ってんだよ?」

涼「この後、亜里沙さんの手伝いしなきゃなんないんだよ」

拓海「また、チビどもの面倒見かよ。お前子供の扱い慣れてるよな」

涼「そうでもないよ。結構大変なんだぞ」

拓海「経験者みたいな口ぶりだな。お前……まさか、もう産んでんじゃねえの?」

涼「そんなワケあるかッ!!」

拓海「冗談だよ、マジになんなって」


――――――――――――地下倉庫


涼「このへんでいいかな?……ゆっくり下ろせよ」

拓海「わーってるよっと……ふぅ」

涼「よし、戻るか」

拓海「なあ?」

涼「なに?」

拓海「この扉は何だ?」

涼「ああ、それはラボへの入り口だ」

拓海「ラボ?」

涼「晶葉が使ってる研究所みたいなもんだ」

拓海「研究所ねえ……つーことは今、ここに晶葉がいんのか?」

涼「あー、多分いるだろう。昨日、なんかやってしまわなきゃいけない発明があるとかで」

拓海「お勉強できる奴の考えることはわかんねえな……なあ」

涼「なんだよ? 早く戻ろうぜ、まだ荷物あんだし」

拓海「ちょっと、覗いてみねえか?」

涼「はあ? やめときなよ。勝手に入るとさすがのアイツも怒るぞ」

拓海「いいじゃねえか。それにアイツだけ手伝わねえのもおかしいだろ?」

涼「そう言ってサボりたいだけだろ?」

拓海「カタイこと言うなって。見学だよ、見学」

涼「ったく……」


――――――――――――研究室


こんこん


涼「おーい。晶葉ー? いないのかー?」

拓海「邪魔するぜ」

涼「あ、おい! 無断で入るなよ」

拓海「気にすんなって。ここも事務所の一部みたいなもんだろ?」

涼「あとで文句言われても知らねーからな」

拓海「おわー……なんだか訳の分かんねー機械ばっかだな」

涼「勝手に触んないほうがいいよ。あの子、そういうのは厳しいからね」

拓海「わーってるって」

涼「でも、晶葉どこだろ? 奥で寝てるのかな? アタシちょっと見てくるわ」

拓海「おう」


ことっ


拓海「ん? 何だこりゃ? 飴玉??」


涼「ダメだねー、いないみたいだね」

拓海「そっか」モゴモゴ

涼「ん? アンタ、何食ってんの?」

拓海「ああ、飴玉。そこにあったんでな」

涼「勝手に食うなよ。晶葉にキレられても知らねえぞ」

拓海「ははは、そんな飴玉一つで大げさな」


がしゃん


涼「ん?」


晶葉「…………」フルフル

http://i.imgur.com/MgVoR2B.jpg
池袋晶葉(14)

拓海「いよっ! 晶葉、邪魔してるぜ」

晶葉「拓海……君は……一体何を……食べて……」

涼「あ、晶葉……こ、これはな……」

晶葉「拓海! 今すぐ吐き出せっ!!」

拓海「あ?」

晶葉「ちっ! 涼、首の後を叩くんだ!」

涼「へ? あ、ああ」


ずびしっ


拓海「おうっ!!」


ぽろっ


涼「飴玉吐き出したぞ」


晶葉「間に合ってくれたか……拓海はこの飴をどれぐらい舐めていた?」

涼「うーん……2,3分位だと思うけど」

晶葉「そうか……だとしたら、5000日弱といったところか?」

涼「?? どういう意味だ?」

晶葉「……拓海を見てみるといい」

涼「?……あれ? 拓海どこ行った?」

晶葉「……君の足元だ」

涼「えっ?」



拓海「……」



涼「拓海が……小さくなってる!!」


涼「お、おいっ! 大丈夫か?」

拓海「……」

晶葉「大丈夫だ。気を失っているだけだろう」

涼「そ、そうか……」

晶葉「それよりも服が合わなくなっている。悪いが倉庫から服を取ってきてくれないか? 千佳の使っていない私服があったはずだ」

涼「わかった……晶葉は?」

晶葉「私は今のうちに拓海の脳波を調べてみる。万が一がないとも言えん」


涼「取ってきたぞ。これでいいかな?」

晶葉「ありがとう。サイズ的にはおそらく問題無いだろう。着せてやってくれ」

涼「それで……拓海は大丈夫なのか?」

晶葉「もちろん。命には別状はない……ただ」

涼「ただ……なんだよ? 脳波に異常があったのか?」

晶葉「いや、異常はない。むしろ、”異常がなかったこと”が異常といえる」

涼「どういう意味だよ、それ?」


拓海「ててて……あたまいてー」


涼「拓海。気がついたか!」


拓海「りょうか……どうなってんだ? これ」

晶葉「見ての通り、姿形以外は向井拓海のままだ」

涼「それがヤバいんだけどな」

晶葉「ただ、脳の働きを調べた結果、記憶の働きをする海馬や大脳新皮質はそのままであるが、感情を司る前頭前野と扁桃体は5~6歳前後のそれと同じであることがわかった」

涼「??? さっぱりわかんねえよ?」

晶葉「簡潔に言うなら現在の18歳までの記憶を有した、小学校入学前の感性の向井拓海に戻ったのだ」

涼「……いまいちピンとこねえな」


晶葉「つまり……」


拓海「りょう」グイグイ


涼「なんだよ? 今、大事な話してんだよ」

拓海「といれいきたい」

涼「ああ、さっさと行ってきな」

拓海「ついてきて」

涼「は? 何バカなこと言ってんだよ。ガキじゃあるまい…………まさか!!」

晶葉「そういうことだ」


涼「マジかよ……」


拓海「といれー」

涼「はいはい。わかったっつうの」

晶葉「とりあえず、あとでまた寄ってくれ。元に戻す方法について調べておこう」

涼「頼んだぞ」

晶葉「あと、このことは他者には内密に頼む。余計な混乱を招きたくはない」

涼「どうせ、言ったって誰も信じてくんないよ」

晶葉「それもそうか」


――――――――――――廊下(地下)


涼(それにしても面倒なことになっちまったな)

涼(幸か不幸か今はPがいないんだけど)


拓海「りょーうー……」


涼(どうすんだよ?……これから)


拓海「りょうー」


涼「なんだよ? 今考え事してるんだよ」

拓海「はやいー。もっとゆっくりあるけー」

涼「は?」

涼(あ、そっか。こいつちびっ子の体だったな)

涼「わかったわかった。横に並んでやるから」


涼「そこ、階段だぞ。気をつけろよ」

拓海「わかってる……よいしょ」

涼(普段なら二段飛ばしでスイスイ登っていくのに、今じゃ手すりを掴んで両足で一段づつか)

涼「ほら、手を貸してやる」

拓海「おう」

涼「せえの……ほら」

拓海「おおお、らくちんだぞ!」


涼(やれやれ……気楽なもんだな)


――――――――――――廊下


涼「ちゃんと手、洗ったか?」

拓海「あらった!」

涼「それならよかった」

涼(さて、このあとどうすっかな……)


亜里沙「あら、涼ちゃん」

http://i.imgur.com/bceKHF2.jpg
持田亜里沙(21)

涼「亜里沙せんせい」

亜里沙「ちょうどよかった。探してたのよ」

涼「あっ! やべえ、ごめん! 忘れてたよ」

亜里沙「いいのよ……あら? その子は?」

涼(うげ! こいつがいるの忘れてた!)

亜里沙「こんにちわ~。どうしたのかな~?」

拓海「ありさせんせい!」

涼「バカ! 余計なこと言うな!」

亜里沙「あら? 私の名前知ってるの?」

涼「え、えと、ほら! 亜里沙さん、よく子供番組出てるからさ!」


亜里沙「あら、うれしい。見ててくれてたのね。お名前はなんていうのかな?」

拓海「たk」ムゴッ

涼(本名ばらしてどうすんだよ! 静かにしてろ!)

亜里沙「どうしたの? お名前は?」

涼「え、えと!! た、た、たく……」

亜里沙「たくちゃんって言うの? かわいいお名前ね」

涼「そ、そうそう! 『たく』ね。あははは」

亜里沙「涼ちゃんの親戚の子なの?」

涼「え? あ、うん! そうそう! ちょ、ちょっと頼まれちゃってさ! あはは」

亜里沙「たくちゃん、今時間あるかしら?」

涼「え? う、うん」


亜里沙「じゃあ、ちょうどよかった。ありさせんせいとおうたの練習しましょう?」

拓海「おうた……」

涼(あー、こいつボイストレーニング苦手だもんな)


亜里沙「ウサコちゃんもいっしょだよー」

ウサコ『よろしくウサー』


拓海「うさぎ!」

亜里沙「一緒にやる?」

拓海「やる!」


涼(うさぎはいいのかよ……って、感性は子供だったな)


――――――――――――レッスン室


涼(とりあえず、今は亜里沙せんせいに任せるか)

亜里沙「はーい。それじゃあ、せんせいがオルガンを弾きまーす」

亜里沙「おうた歌うのでついてきてくださいねー」

拓海「せんせー」

亜里沙「はい、なにかなー?」

拓海「あたし、うたにがて」

亜里沙「あらら、そうなの?……じゃあ、これを使ってね」

拓海「これ、かすたねっと?」

亜里沙「せんせいのお歌に合わせて叩いてみて?」

拓海「わかった」


亜里沙「じゃあ、いきまーす」


♪ブンガ ブンガ


亜里沙「きーらーきーらー♪」

拓海「……」ぺち

亜里沙「ひーかーるー♪」

拓海「……」ぺち

亜里沙「おーそーらーのー♪」

拓海「…!」ぺち

亜里沙「ほーしーよー♪」

拓海「!!」ぺち


拓海「おお……りょう! りょう!」

涼「なんだよ?」

拓海「これたのしい!」

涼「そうか。よかったな」

亜里沙「ふふふ」


涼(…そうだ。晶葉のところに行かなきゃならねーんだった)


涼「亜里沙せんせい、悪いんだけどアタシ用があるんだ。ちょっとの間だけ、たくm……たくを見ててくれない?」

亜里沙「いいわよ~。たくちゃん、おりこうだもんねー」

涼「大人しくしてるんだぞ」

拓海「おー、いってこい」


涼(あいつ、こっち向かずにカスタネット叩いてやがる)


――――――――――――研究室


涼「どうだ? 何かわかった?」

晶葉「おお、ちょうどよかった。今、検証結果をまとめたところだ」

涼「それで? どうなんだ?」

晶葉「まあ、そう急かすな。まずは、この薬はあくまで試薬だ。効果が永続するものではない。体内の細胞活動を一時的に……」

涼「待った。小難しいことはわかんねーけど、要はしばらくしたら元に戻るってことだな」

晶葉「いかにも」

涼「それはどれぐらいかかるんだ?」

晶葉「拓海が舐めていた時間や、脳波の示す数値からおそらく7~8時間ほどだろう」

涼「つまり、明日の朝には戻ってるってことか」

晶葉「そういうことになる」


涼「それを聞いて安心したよ。でも、なんだってこんな物騒なもの作ったんだよ?」

晶葉「科学者として生命の神秘に挑む事は永遠のテーマだ」

涼「そんなもんなのか」

晶葉「今回、私が挑んだのはある謎を解明したいからだ」

涼「謎?」

晶葉「今回の結果で、幸か不幸か確実に若返ることが実証された。もし、これを君が舐めていたらどうなった?」

涼「そりゃ、アタシが5,6才になってただろうな」

晶葉「そうだ。では、菜々が拓海と同じ分量を舐めたらどうなる?」

涼「そりゃあ……4,5才くらいに……」

晶葉「果たして、本当にそう言い切れるか?」

涼「……」

晶葉「私は思うのだ。もし、これで菜々の姿がいつもと変わらければ……」

涼「おいやめろ」



晶葉「ウサミン星人は実在する重要な証となる!」



涼「」


晶葉「おそらくウサミン星人は姿形こそ、我々と似通っているが内部の組織構造は異なるはず」

晶葉「我らの常識が通用しなければ、それは異星人と言っても過言ではなかろう」

涼「……」


涼(死ぬほどくだらねえ……拓海もとことんツイてねえな)


――――――――――――レッスン室


涼「おーっす。たくm……じゃねえや。たくー、戻ったぞ」

亜里沙「しーっ」

涼「ん?」

亜里沙「ほら、あそこ」


拓海「……すーっ……すーっ……」


涼「眠ってやがるのか。気楽なもんだな」

亜里沙「ウサコちゃんと寝てるのよ。カワイイわね」

涼「やれやれ……」


――――――――――――30分後


拓海「……ん……うーん」

涼「よう。目ェ、覚めたか?」

拓海「おう……ふわぁ……」

涼「とりあえず、ここにアンタの荷物まとめといた」

拓海「うん」

涼「今は、この場を離れよう。時間も時間だし、ここに残ってると下手なボロがでそうだ」

拓海「だなー」


――――――――――――駐輪場


涼「これからどうすんだ?」

拓海「かえる」

涼「どうやって?」

拓海「このばいくでにきまってんだろー」

涼「誰が?」

拓海「うるせー!……よいしょ……あれ?」

涼「……」

拓海「りょう! あたしをばいくにのせてくれー」

涼「無理に決まってんだろ。足も届いてないのに」

拓海「むー」

涼「それに途中で捕まるだろ」

拓海「めんきょしょうはもってる」

涼「それで警察がOKするわけねえだろ」

拓海「うー」


???「よう、涼じゃん? 何やってんだ?」

涼「げっ! 夏樹!」

夏樹「何驚いてんだよ? あれ? その子は?」

http://i.imgur.com/WehRmOG.jpg
木村夏樹(18)

涼「こ、これは……」

拓海「なつき!」

夏樹「お、ちびっ子? あたしの名前知ってんのか?」

拓海「だってあたしh…」ムゴ

涼(何度言ったらわかるんだよ! バラしてどうすんだ!?)

拓海「……」コクコク

夏樹「ん? どうした?」

涼「いや……こいつさ、親戚の子なんだけどちょっと預かっててさ……あはは」

夏樹「でも、あたしのこと知ってるみたいだぞ?」

涼「ほ、ほら! 前に一緒にイベントやった時、見てたんだよ!! あたしを見るついでにさ」

夏樹「へー、なんか嬉しいな。あんがとな」

拓海「おう!」

夏樹「でも、そのバイクからは降りたほうがいいぞ。すんげえ、怖い奴のだから」

拓海「だいじょうぶ! あたしのだから!」

夏樹「あはは。怖いもの知らずだな。大きくなったら乗ってみるといいさ」


夏樹「あ、そうだ! 涼」

涼「な、なんだ?」

夏樹「今度のライブの打ち合わせ、明日やるからな」

涼「あ、そのことか。OK。わかった」

夏樹「あと、拓海にもそのこと伝えたいんだけどいねえんだよ」

涼「そ、そうなのか……もう帰ったんじゃね?」

夏樹「バイク置いてか?」

涼「うっ」

夏樹「とりあえず、今、携帯に連絡してみるか……」


涼(ヤバい! あいつの携帯は今、ここにあるんだった!)


涼「ま、待て!」

夏樹「ん?」

涼「あ、アタシ後で連絡するから、その時言っておくわ!」

夏樹「そっか。頼んどくわ。じゃあな、ちびっ子」

拓海「またなー」


涼(つ、疲れる……)


涼「なんとか夏樹はしのいだか……」

拓海「……かえる」

涼「だから、どうやって?」

拓海「でんしゃで」

涼「チビが夕方のラッシュアワーで帰れるわけないじゃん。第一、いつもバイクだから電車で帰り方知らないだろ?」

拓海「じゃあ……とまる」

涼「どこに?」

拓海「ねっとかふぇ」

涼「子供を泊めるわけないって」

拓海「……うぅ……あるいてかえる!」

涼「余計無謀だろ」


拓海「……ううぅ……いけるし!」グスッ

涼「……はぁ……泣くなよ」

拓海「ないてない!!」

涼「わかったわかった……うちに来なよ」

拓海「うち?」

涼「アタシん家。ここからそんなに遠くねえし、一人よりマシだろ?」

拓海「いいのか?!」

涼「そのかわり、騒いだりすんなよ?」

拓海「わかった!!」


涼(やれやれ……)


――――――――――――繁華街


拓海「りょう、どこいくんだー?」

涼「買い物だよ。アンタの替えの下着も買わなきゃなんねーし。あとは晩飯だな」

拓海「かいものかー! めしはなににするんだ?」

涼「パスタでもするか」

拓海「ぱすた?」

涼「スパゲッティだよ。ナポリタンにすっかな」

拓海「おー。うまくつくれよ」

涼「このやろー、何で上からなんだよ?」


――――――――――――デパート


涼「えっと、まずは下着、次にパジャマと……歯ブラシもいるな」

涼「まあ、今日一日だけだし、こんなもんだろ?」

涼「これでいいよな、たくm……あれ?」

涼「あいつどこに……って、いた」


拓海「……」

涼「おい、何やってんだ? 勝手に離れるなよ」

拓海「りょう、あれ」

涼「ん? ウサギのぬいぐるみか?」

拓海「ほしい!」

涼「は? そんな無駄遣いしてらんないよ。いくぞ」

拓海「やだ! かってくれー!」

涼「お前なあ、どうせ今日一日だろ? 何にも使い道ねえじゃん?」

拓海「やだやだやだ! かえかえかえ!!」

涼「わがまま言うなって!」

拓海「かってかってかって! わーん!」


主婦A「あら、子供が泣いてるじゃない」ヒソヒソ

主婦B「ヤンママってのかしら? 子供に厳しすぎない?」ヒソヒソ


涼(えええー!? 待ってくれよ……)


涼「わかったわかった! 買うから静かにしろって!」

拓海「ほんとか!?」

涼「そのかわり、この料金は後で請求するからな!」

拓海「あっ、そのしろいのじゃなくて、ピンクのウサギな!」

涼「話を聞けよ!」


拓海「うさぎー♪ うさぎー♪」

涼「ちくしょー……余計な出費だった」

拓海「はやくいこうぜー」

涼「にゃろう……はしゃぎやがって」


――――――――――――涼の部屋


涼「ついたぞ。ここだ」

拓海「おおおおお」


たたたたた


拓海「べっどだ! わーい」

涼「こら! まずは手を洗ってうがいだろ?」

拓海「おお、そうだった」

涼「ちゃんと洗うんだぞ?」

拓海「わかったー」

涼「やれやれ……さて、アタシも準備するか」


拓海「りょう、なにやってんだ?」

涼「んー? 今はメシの準備だな。もうちょっと待ってな」

拓海「あたしもやるぞ」

涼「別にいいよ。包丁も使ってるし、お湯も沸かしてるからチビが来るには危ねえよ」

拓海「やだ! なにかてつだいさせろ!!」

涼「あー、わかったわかった。じゃあな、風呂掃除してくれるか?」

拓海「おう、まかせろ!」


涼(一応、役には立ちたいと思ってるんだな)


――――――――――――10分後


拓海「りょうー! おわったぞー」

涼「おう、サンキュー……ってなんだそりゃ!!」

拓海「ん?」

涼「泡まみれじゃねーか! こっちきな、拭いてやるから」

拓海「へへー」

涼「ったく……何をやったらそんなに……ってまさか!?」


がらっ


涼「」

涼(風呂場が見渡す限り泡だらけだな……)


拓海「きれいになったぞ」

涼「……おう、あんがとな」ナデナデ

拓海「へへへっ」


涼(悪気はないんだよな…)


拓海「つぎは? つぎだつぎ!」

涼「うーん……おっ! そうだ!」

拓海「?」

涼「拓海、お前には特別任務を与えよう」

拓海「とくべつ……にんむ?」

涼「そうだ。やれるか?」

拓海「まかせろ!」


涼「お前にはな、今日あった出来事を絵に描く仕事をやろう」

拓海「えをかくのか?」

涼「おう、そこに五線譜があるだろ? その裏が白いからそこ描いてくれ」

拓海「たのしそうだな!」

涼「ペンは自由に使っていいからな」

拓海「おうっ!」


涼(この間に一気に終わらせるか)


――――――――――――30分後


涼(ふう……あらかた終わったかな?)


涼「よーし、メシできたぞー」

拓海「……」

涼「おーい、拓海ー!」

拓海「……」


涼(一生懸命、絵を描いてるな……もうちょっと待ってやるか)


――――――――――――10分後


拓海「できたー!」

涼「ん? できたのか。どれどれ……」

拓海「ほら!」

涼「これは?」

拓海「あたし!」

涼「これは?」

拓海「りょう!」

涼「……これはなんだ? ネコ?」

拓海「ちがう! うさぎ!」

涼「ああ、さっき買ったやつか。すると周りにいる小さいのは誰だ?」

拓海「えと……あきはと、ありさせんせいと……なつき!!」

涼「随分ちっちゃいな」

拓海「さきに、あたしとりょう、かいたらたりなくなった」

涼「ははは。そっか」

拓海「にんむできたか?」

涼「おう、よくやったぞ」ナデナデ

拓海「えへへ」

涼「じゃあ、メシにしようか」

拓海「めしー!」


涼「じゃあ、食おうぜ」

拓海「うまそー」

涼「あ、ちょっと待て。拓海」

拓海「ん?」

涼「ソースが服についちまう。ほら、前掛けな」

拓海「こどもみたいだー」

涼「子供だろ」


涼「じゃあ、手を合わせて」

拓海「いただきまーす」

涼「はい、どうぞ」

拓海「……」パク

涼「……どうだ?」

拓海「うまい!」

涼「そっか、そりゃよかった」

拓海「うまいうまい」

涼「あ、口にソースついてるぞ。ちょっと待ちな。取ってやるから」

拓海「んー」

涼「よし、取れた」

拓海「あんがとー」

涼「あいよ」


拓海「くったー」

涼「うまかったか?」

拓海「うまかった。ごちそうさまでした」

涼「お、よく言えたな」

拓海「よいしょ……」カチャカチャ

涼「ん? 何やってんだ?」

拓海「はこぶ、しょっき」

涼「おー、意外にお利口なんだな」


涼(そういや、こいつ、こういうとこは礼儀正しかったよな)


涼「よし、風呂の準備できたぞ」

拓海「おー。ふろーふろー」

涼「だー! ここで脱ぐなよ! ほらほら、脱衣場行くぞ」

拓海「りょうははいらないのかー?」

涼「アタシは後でいいや」

拓海「いっしょにはいろうぜー」グイグイ

涼「わかったわかった! 引っ張るなって!」


――――――――――――浴場


拓海「ふろー!」

涼「ああ、待ちなって。体洗うから。ほら座って」

拓海「おう」

涼「しっかり洗わないとな」ゴシゴシ

拓海「くすぐったい」

涼「がまんしなって……お湯かけるぞ」


ざばー


拓海「きもちいい!」

涼「次は頭だな。目をつぶってなよ」

拓海「うん」


ざばー


拓海「ぺっぺっ……くちにはいった」

涼「あー、わりーわりー。ゆっくりかけるからな」


かぽーん


涼「ふう……やっと湯船につかれる」

拓海「……」ジー

涼「ん? どうした?」

拓海「りょう、おっぱいおおきい」

涼「嫌味かよ……まあ、今はな」

拓海「ほんとうは、あたしのほうがおおきいのにー」ペチペチ

涼「いたいいたい! 叩くなって!」


――――――――――――リビング


拓海「わーい」

涼「こらっ! 裸で走るなっ!」ギュ

拓海「つかまった」

涼「つかまえた。ちゃんと拭かなきゃダメだろ?」

拓海「そうだなー」

涼「本当にわかってんのかよ……下着はひとりで着れるか?」

拓海「だいじょうぶ!」

涼「下着つけてパジャマに着替えたら、そこで待ってなよ。髪乾かしてやるから」

拓海「おう!」



ぶおー


拓海「~♪」

涼「お前さ」

拓海「ん~?」

涼「意外に髪キレイだよな?」

拓海「そうかー?」

涼「こんないいもん持ってんだから、もっと大事にしてやんなよ」

拓海「りょうのかみも、さらさらだぞ」

涼「ははっ。あんがとな」


拓海「ふわぁ……」

涼「眠くなったか?」

拓海「うん……」

涼「寝る前には歯を磨かなきゃな。ほら、歯ブラシ」

拓海「うん……」

涼「一人で大丈夫か?」

拓海「……だいじょうぶ……ふわぁ」


涼(半分寝てるじゃねーか)



涼「ちゃんと磨いたか?」

拓海「みがいたー……」

涼「見せてみな」

拓海「いー」

涼「よし、合格」

拓海「うさぎはー?」

涼「ほら、ここ。抱っこして寝るのか?」

拓海「うん。りょうはまだねないの?」

涼「アタシは明日の準備しとかないとな。ライブに必要な機材とか、セットリストの確認とか」

拓海「そっか……」

涼「アンタもしなきゃいけないんだけど……無理だもんな」

拓海「ねるー」

涼「はいはい。おやすみ」

拓海「おやすみー」


――――――――――――一時間後


涼「ふうぅ……こんなもんかな?」

拓海「りょう……」

涼「ん? 起きたのか? うるさかったか?」

拓海「ちがう……といれ」

涼「一人でいけるか?」

拓海「……」

涼「わかったよ。ほら、行こうぜ」

拓海「うん」



じゃー


拓海「ふわぁ……」

涼「どうだ? 眠れそうか?」

拓海「りょうはねないのか?」

涼「うーん、ホラー映画見ようかなと思ってるけど」

拓海「……」

涼「……わかったよ。寝るよ」

拓海「うん」


涼「ほら、これでいいか?」

拓海「もうちょい、こっち」

涼「はいはい」

拓海「て、にぎってて」

涼「わかったよ」

拓海「…………すぅ……すぅ」

涼「寝たのか……」



涼(こうやって寝顔見てるぶんにはかわいいんだけどな……)

涼(今日はいろいろあって疲れた……)

涼(アタシも寝るかな……おやすみ)


――――――――――――翌朝


涼「うーん……むにゃ……」


ふにょん


涼「ん……なんだ……この感触?」

拓海「……ぐーっ……ぐーっ」

涼「おっ! おおっ!! 拓海! 起きろ!!」

拓海「んー……何だよ?……もう少し寝かせろ……ぐぅ」

涼「寝てる場合じゃねえよ! お前、元に戻ってるぞ!!」

拓海「……!!」ガバッ


拓海「おおおおっ!! もどった!! ん? ここどこだ?」

涼「アタシん家だよ」

拓海「おお、そうか。あれ? バイクは?」

涼「事務所においてるぞ」

拓海「マジか! 取りに行ってくる!!」

涼「あっ! おい、バカ!!」


だだだだだ

がちゃん



<ギャー!

<ワー!



だだだだだだ

がちゃん


拓海「なんだよ! この格好!! なんでこんなピチピチのパジャマなんだよ!?」

涼「すぐ気づけよ……」


――――――――――――事務所


涼「すると、昨日のことは覚えてないのか?」

拓海「んー……晶葉のとこで飴食って、そこからよく覚えてねえ」

涼「呆れた奴だな。あの後すげえ大変だったんだぞ?」

拓海「マジか。そりゃ世話かけたな」

涼「まあ、別にいいや。アタシも新鮮だったし」

拓海「なんのことだ?」

涼「なんでもないよ」


拓海「ふーん……」モグモグ

涼「あれ? アンタ何食ってんの?」

拓海「ん? そこに団子あったんでな」



がしゃん



あやめ「拓海殿……その団子……」

http://i.imgur.com/1nG5ngt.jpg
浜口あやめ(15)

拓海「ん? これがどうした?」

あやめ「それは代々、浜口家に伝わる若返りの秘薬で……」




涼「いい加減にしろッ!!」





おわり

※これでおわりです
 面倒見の良い涼さんだから、きっと育児もうまいのではと思い書きました
 ロりたくみんもいいものです
 もちろん晶葉ちゃんはそんな発明しないと思います

 ここまで読んでいただいてありがとうございました

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