ボルト・クランク「他人とは食生活が合わない」チノ「えっ……」 (87)


チノ「あの、ご注文は……?」

ボルト「悪いが」


ガサゴソ、カリッ、ボリボリ


ボルト「他人とは食生活が合わない」

チノ「えっ……」


チノ「ネジを、食べてます……」




      「EAT-MAN」×「ご注文はうさぎですか?」


          『ご注文はネジですか?』





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449034099


ttps://www.youtube.com/watch?v=CpuKzXcKSa8


ティッピー「相変わらずじゃな、ボルト」

ボルト「…………」ボリボリ

チノ「お知り合い、なんですか?」

ティッピー「ボルト・クランク、世界一の冒険屋じゃ」

チノ「冒険屋……」


チノ「その、冒険屋さんのお仕事は、ネジを食べることなんですか?」

ボルト「違う」ボリボリ


ティッピー「……お前は本当に変わらんな」

ボルト「そういうアンタは、随分変わったな」

ティッピー「うるさいわいっ」


ココア「あれ? チノちゃんがお客さんと話してる」

ココア「どうかしたの?って」


ボルト「…………」

ガリッ、ボリボリ


ココア「わぁーー!!」

ココア「お客さん何してるの!?」

ココア「ペッしないとダメだよ!! ペッ!!」


ボルト「…………」


チノ「ココアさん、ボルトさんはネジが食べれるらしいです」

ココア「えぇっっ!?」

チノ「私も、まだ信じられないのですが……」

ココア「……手品師なの?」

ボルト「冒険屋だ」


ココア「冒険屋!? なんかカッコいい響き!!」

ボルト「…………」

ココア「冒険屋ってネジを食べる以外なにするの!?」

ボルト「ネジを食べるのは仕事じゃない」

ティッピー「冒険屋は、依頼されたら何でもやる仕事じゃよ」

チノ「何でも屋さん、ということですか?」

ボルト「冒険屋だ、何でも屋じゃない」

チノ「な、なるほど……(何か違うのでしょうか……)」

ティッピー「世界中を冒険するから、冒険屋なんじゃよ」


ココア「緑のロングコートで世界中を冒険……カッコいい!!」

ココア「私もなる!! 冒険屋になりたい!!」


ボルト「やめておけ」

ボルト「お前に冒険屋は似合わない」


ココア「えぇ~~!? なんで~~!?」


ボルト「その服のほうが似合っている」


ティッピー「そうだボルト。カウンターの電球が切れてるんじゃ、交換してくれんかの?」

ボルト「それは違う依頼か?」

ティッピー「お前の背丈なら楽なもんじゃろ、ササッと終わらせてくれんか」

ボルト「あぁ、手早くやってしまおう」


チノ「待って下さい。あそこの電球は外すのにコツがいるので私がやります」

ココア「でもチノちゃんじゃ全然背が足りないよ?」

チノ「むっ……。確かに届きませんからココアさん脚立を持ってきて下さい」

ココア「チノちゃんが怒った~~!!」

チノ「怒ってません。ココアさん早く行って下さい」

ボルト「…………」

チノ「それにお客さんにこんな事をやらせるワケには」

ボルト「…………」

チノ「な、なな、何ですか?」

ボルト「こうすればいい」

チノ「わっ、きゅ、急に何を、お、下ろしてくださいっっ」

ボルト「電球を外してくれ」

チノ「えっ……」

ボルト「外すコツがあるんだろう?」

チノ「あ、はい……」


チノ「いきなりで驚きました……」

ボルト「依頼内容が早くしろだったんでね」


リゼ「チノをどうするつもりだ変質者!!」

ボルト「…………」

チノ「あ、リゼさん……」

リゼ「大丈夫だチノ、安心しろ。すぐに私が助けてやるからな……!!」


ココア「リゼちゃん待って~~!!」

チノ「リゼさん誤解です……」


リゼ「そこの大男、私の銃がどこを狙っているか分かるか?」

ボルト「…………」

リゼ「銃口がお前の急所を確実に狙っているぞ……!!」

ボルト「そのようだ、いい腕をしている」

リゼ「大人しくしてもらおうか……!!

ボルト「…………」


ガリッ、ボリボリ、ボリボリ


リゼ「わ、私の、銃を、食べて……」




ティッピー「美味いのか、それ」


ボルト「おもちゃの味だ」




リゼ「本当にすまない!!」

リゼ「まさかチノの知り合いで、電球を交換しようとしてただけなんて……」

ボルト「…………」ボリボリ

チノ(……厳密には私ではなく、お爺ちゃんの、ですが……)

ココア「もう、リゼちゃんはあわてんぼうさんだなぁ」

リゼ「し、仕方ないだろう、ボルトさんみたいなお客さんはウチじゃ珍しいんだから」

チノ「確かに、そうですね」

ココア「夜のラビットハウスのバーのほうが似合ってる感じはするね!!」

ボルト「俺もそう思う」


リゼ「ところで、なんでココアは脚立を持ってるんだ?」

チノ「ココアさん遅すぎます、もう終わりました」

ココア「えぇ!? っていうかチノちゃんどうやったの!?」

チノ「それは……内緒、です……」




ボルト「店の雰囲気も随分変わったようだ」

ティッピー「騒がしい店になった、お前も落ち着かんじゃろう?」

ボルト「そうでもない」

ティッピー「なんじゃ、お前のことだから砂漠のほうが落ち着くとか言うかと思ったが」

ボルト「そろそろ砂漠も見飽きてきた頃だったんでね」


ボルト「たまには、華がある場所も悪くない」


「キャーーーー!!!!」


「ひったくりだーーーー!!!!」




リゼ「なにっっ!?」


チノ「店の外、結構近くから聞こえましたね」

ココア「チノちゃん危ないよ!! もし犯人が立て篭もりに来たらどうするの!?」

チノ「そう、ですね。一応お店の鍵を閉めましょうか」

ココア「って、リゼちゃんがいないーー!?」

チノ「ま、まさか、ひったくり犯を追いかけて……」


ティッピー「まぁ大丈夫じゃろ」

チノ「ティッピー……?」

ティッピー「奴が付いてるなら安心じゃ」


ココア「そういえばボルトさんもいないよ!?」


ティッピー「久し振りに、世界一の仕事ぶりを見せてもらえるかの」


リゼ「こんなときに分岐道なんて……」

リゼ「犯人はどっちかに行ったんだ、どっちだ……!?」


ボルト「…………」ボリボリ


リゼ「うわっ!? って、ボルトさん!?」

ボルト「危険だ、後は警察に任せて」

リゼ「ボルトさん、いいところで出会った、困ってたんだ」

ボルト「おい」

リゼ「私はこっちの道を行く、ボルトさんはあっちの道を頼む!!」


ボルト「待て」


ボルト「持っていけ」


シュッ、パシッ


リゼ「これ、さっき食べられた、私のモデルガン……」


リゼ「助かる、今これがあればいいと思ってたんだ!!」


ボルト「…………」


犯人「クソッ、行き止まりか……!!」


リゼ「観念するんだな、もう逃げ場はないぞ!!」


犯人「なんだ追いかけて来てたのは、嬢ちゃんか」

リゼ「動くな!!」

犯人「じゅ、銃……!?」

リゼ「大人しく交番に行ってもらおうか」

犯人「……クク、そんなハッタリが効くかよ」

リゼ「なに?」

犯人「俺は銃に詳しいんだ。勿論それは本物じゃねぇし、見たところ改造もされてねぇ」

リゼ「そ、それは……」

犯人「そんなの撃たれても痛くも痒くもねぇんだよ!!」




「なら試してみるか?」




リゼ「ボルトさん!?」

犯人「クソッ、仲間がいたのか……!!」


ボルト「銃に詳しいらしいな」


ボルト「この俺が持っている銃は、本物か偽物か、当ててみてくれ」


犯人「バカか、そもそもこの国に本物の銃なんか……」

ボルト「どうした?」

犯人「いや、そんな、外国で撃ったことあるが、まさか、それ……」

リゼ「ほ、本物……?」

ボルト「試してみよう」

犯人「ひっ……」


ボルト「撃てば本物か偽物か分かる、銃とはそういうものだ」


犯人「や、やめ、やめてくれ……。撃たないで~~!!」


警察「ご協力感謝します」




リゼ「あの、ボルトさん、その、ありがとう。助かったよ」

ボルト「気にするな、それより」

リゼ「今回のことで反省したよ。もう無茶な真似はしない」

ボルト「そうか」

リゼ「……私は、冒険屋にはなれそうにないな」

ボルト「そうでもない」

リゼ「えっ……?」


ボルト「冒険屋に一番必要な資質を、お前はもう持っている」


リゼ「それにしても、まさか本物を持ってるなんて驚いたよ」

ボルト「本物?」

リゼ「そのボルトさんが持ってる銃のこと」

ボルト「…………」

リゼ「なんでそんな物を持ってるかなんて聞くつもりはないけどさ」

ボルト「誤解があるようだ」

リゼ「誤解?」

ボルト「…………」


パァン……


リゼ「は、旗……銃口から……」

ボルト「お前と同じモデルガンだ」

リゼ「そ、そんな、ハッタリだったのか……!?」


ボルト「犯人も言っていた。この国に銃があるはずがないと」

ボルト「もちろん俺も持っていない。捕まりたくないんでね」


リゼ「とか言って、その胃袋の中には沢山あったりして」


ボルト「…………」


リゼ「あーー!! 黙ったなーー!!」


シャロ「リゼ先輩!! 大丈夫ですか!?」

リゼ「シャロ? それに千夜まで」

千夜「ココアちゃんから、リゼちゃんがひったくり犯を追いかけていったって聞いて心配で来たのよ」

リゼ「そうか……。二人とも、心配かけたな、すまない」

シャロ「せ、先輩が無事で良かったです……」


ココア「結局、ひったくり犯はどうなったの?」

ボルト「彼女が追いつめたら、犯人が自首した」

リゼ「えっ……!?」

ボルト「嘘は言っていない」

ココア「すごーーい!! リゼちゃん犯人捕まえたの!? お手柄だよーー!!」

リゼ「お、おい、私は……」


チノ「あれが、冒険屋さんのお仕事ですか」

ティッピー「世界一の冒険屋の、じゃ」


千夜「この人が、ココアちゃんの言ってた噂のボルトさん……」

ボルト「…………」ボリボリ

シャロ「ほ、本当にネジ食べてる……」


千夜「私、決めたわ」

ココア「気になります、じゃなくて? って、何を?」


千夜「ボルトさんと漫才をやるわ!!」


リゼ「ボルトさんと漫才は無理だろ……」

千夜「大丈夫よ、見ててね。ボルトさん、ちょっとだけここに立っててもらえませんか?」

ボルト「…………」


ボルト「…………」

千夜「いやぁ、それにしても寒くなってきたわね」

ボルト「…………」ボリボリ

千夜「って、何ネジ食っとるねーん」バシッ

ボルト「…………」

千夜「ボルトさん、寒いとやっぱり鍋かしら?」

ボルト「…………」ボリボリ

千夜「って、鍋の話で何ネジ食っとるねーん」バシッ

ボルト「…………」


ココア「凄いよ千夜ちゃん!!」

千夜「どうかしら?」

ココア「ボルトさんはネジ食べてるだけなのに漫才っぽく見えたよ!!」

チノ「そ、そうですか……?」

千夜「これは、イケるわね……。ボルトさん、一緒にテレビ局に行きませんか?」

ボルト「遠慮しておこう」


シャロ「テレビ局なんか行ったら……」

リゼ「漫才じゃなくビックリ人間のほうで出演決まりそうだな……」


千夜「分かったわ。確かに突然過ぎるわよね」

リゼ「そういう問題なのか……?」

千夜「まずは、ボルトさんの相方に立候補します!!」


ボルト「悪いが間に合っている」


チノ「ま、漫才の相方がいるんですか……」

千夜「……そうよね。ボルトさん程の腕をお持ちなら既に相方がいるわよね」

ココア「その相方っていうのは、どこにいるの?」


ボルト「砂漠に置いてきた」


シャロ「放置プレイ!? ツッコミ激しすぎない!?」

千夜「こ、これは勝てそうにないわ……」

リゼ「というか、ボルトさんがツッコミなのか……」


タカヒロ「昼間は娘たちが、お世話になったそうですね」

ボルト「そうでもない」

タカヒロ「フフ……」

ボルト「どうした?」

タカヒロ「いえ、貴方から見たら、酒も飲めなかった子供が今はバーで酒を出している」

タカヒロ「きっと、変な感覚なんだろうな、と思いまして」


カラン……


ボルト「いや」


ゴク


ボルト「いい腕だ」


タカヒロ「……世界一の冒険屋に褒められるのは、悪い気分ではありませんね」

ティッピー「ふんっっっっ」

タカヒロ「なんだ親父、いたのか」

ティッピー「さっきからおったじゃろっっ!!」

ボルト「お前も一杯やるか?」

ティッピー「こんな格好で飲んでも絵にならんわーー!!」


シャロ「今日は色んな事があったわね」


ボルト「…………」ボリボリ


シャロ「ってなんでボルトさんがウチにいるんですか!?」

ボルト「隣の彼女に、宿を紹介してくれと言ったらここに案内された」

シャロ「ウチは宿じゃなーーい!!」

ボルト「宿じゃないのか?」

シャロ「えっ、ボルトさんにはウチが宿に見えるんですか?」


ボルト「立派な宿だ」


シャロ「そ、そうですか……」

ボルト「砂漠では雨風を凌げれば立派な宿なんでね」

シャロ「やっぱりウチは宿じゃなーーい!!」


ボルト「それは?」

シャロ「えっ、あぁ、その割れたカップ?」

シャロ「それは、リゼ先輩に貰ったカップなんです」

シャロ「私のいつものドジで割っちゃって……」

ボルト「それは残念だな」

シャロ「先輩に謝ったら、気にしないでいいよって言ってくれたんですけど」

シャロ「いつか必ず、お金を貯めて、そのカップを修理してもらうんです!!」


ボルト「そうか」

ボリボリ


シャロ「って、なに食べてるんですかーー!?」

ボルト「…………」ボリボリ

シャロ「ボルトさんに食べられるぐらいなら私が食べるわよーー!!」

ボルト「やめておけ、体に毒だ」


シャロ「……そんな、綺麗サッパリ全部食べられるなんて……」

シャロ「せ、先輩に、なんて謝れば……」

ボルト「それほど大事なら」

ズリュ


シャロ「そ、それ、私のカップ……な、なんで、どうやって……!?」


ボルト「次からは割らないように扱うことだ」


ボルト「そろそろ寝よう」

シャロ「えっ、な、なんでウチの床で寝ようとしてるんですか!?」

ボルト「宿代は払ったはずだが」

シャロ「だからウチは宿じゃ……あっ、それは、その、カップは嬉しかったですけど……」

ボルト「駄目なら仕方ない、出て行こう」

シャロ「ボルトさん、当てはあるんですか?」

ボルト「いや、ない」

シャロ(……それじゃ、私が追い出したせいでボルトさんは野宿!?)

シャロ(私のせい!?)


ボルト「…………」ボリボリ


シャロ「し、しし、仕方ないから、泊めてあげてもいいですよ」


ボルト「それは助かる」


シャロ(……な、なんでこんな事に……)


シャロ(男の人を泊めるなんて私は何をやってるのよーー!?)


シャロ(……ね、眠れない……)

シャロ(ボルトさんは寝てるのかな……)


ボルト「…………」ガサゴソ、ガサゴソ


シャロ(……な、何かやってるーー!?)

シャロ(まさか、本当の目的は私の家の物を盗む為に!?)

シャロ(ウチに盗る物なんてあったかな……って、そうじゃない!!)

シャロ(やっぱりチノの知り合いだからって泊めるんじゃなかったーー!!)


シャロ(……何を盗るつもりなの、薄目で見てみよう……)


ボルト「…………」


シャロ(こっち見てるーー!?)

シャロ(本当の本当の目的は私!? お、おお、襲われる!?)

シャロ(お、落ち着くのよ……)

シャロ(ボルトさんが近付いたら、まず走って千夜のところに逃げ込んで、それから警察を)

シャロ(それからそれから……)


ボルト「…………」ガリッ


シャロ「…………」


ボルト「…………」ボリボリ


シャロ「ZZzz……」


ボルト「…………」ゴクン



チュンチュン


シャロ「……ハッ!? ね、寝ちゃったーー!?」

シャロ「ボ、ボルトさんは!?」

シャロ「いない……。そりゃ泥棒だったんだから当たり前よね……」


シャロ「何を盗っていったのかしら、探さなきゃ」




シャロ「おかしい……。何もなくなってない……?」




シャロ「ん……?」

シャロ「あれは、今まで私が家やお店で割りに割ったお皿やカップが入ったダンボール?」

シャロ「いつも捨てようと思うんだけど、いつか何かに使えるかもって貧乏性が……」


シャロ「でも、なんでこんなところに……?」ガサゴソ


シャロ「!?!?!?!?」

シャロ「う、うそ……これ、全部、直ってる……?」


シャロ「…………」


シャロ「ボルトさん……」


千夜「今日もイイ天気になりそうね」

ボルト「こんな早朝から店前の掃除とは、大変だな」

千夜「ボ、ボルトさん!? 今どこから……」

ボルト「宿から出てきたところだ」

千夜「ほ、本当にシャロちゃんの家に泊まっ……!?」


千夜(私の計画では、シャロちゃんがボルトさんを追い出すドタバタコメディが後で聞けるはずだったのに……!!)


千夜「えっと、ボルトさん、宿はどうでした?」


ボルト「いい宿だった。宿代が高くついたがね」


千夜「そ、そうですか」


千夜「あの、宿で、何かありました……?」

ボルト「あぁ」

ボルト「たっぷり食わせてもらった」

千夜「!?!?!?!?」




千夜「…………」プシュー




千夜「シャ、シャロちゃ~~ん!!!!」




シャロ「うわっ!? 何よ千夜、こんな朝早く……」

千夜「大丈夫シャロちゃん!? シャロちゃん食べられちゃったの!?」

シャロ「な、何の話よ……」




ボルト「…………」ゲプッ

ボルト「しばらく、食器は遠慮しよう」




青山「こんにちは」

ボルト「…………」ガリッ

青山「公園の向こうから見てたら、貴方が何を食べてるのか気になってしまって」

ボルト「…………」ボリボリ

青山「隣に、座ってもいいですか?」

ボルト「あぁ」

青山「それは、ネジ、ですよね? 美味しいのですか?」

ボルト「ネジの味だ」

青山「そう、でしょうね」


ボルト「…………」ボリボリ


青山「…………」ジー


ボルト「なんだ?」

青山「いえ、私が子供の頃に好きだった本に、貴方みたいに何でも食べる人の物語があったのを思い出して……」

青山「その本は、外国のとても古い本なんですけど、私は本当に好きで沢山読みました」

ボルト「そうか」


青山「本の内容は、作者がその食べる人に依頼すると何でも解決してくれるんです」

青山「その解決方法が奇想天外で、とても面白くて」


ボルト「…………」ボリボリ


青山「でも、私が一番好きなのは、作者の後書きなんです」

青山「この物語はフィクションじゃない、ノーフィクションだ。って、毎回書いてあるんです」

青山「夢物語を壊さないようにする作者の配慮が、素晴らしいと思いませんか?」


ボルト「そうだな」


青山「……あぁ、思い出しました。その本の題名。確か『世界一の何でも屋』です」


ボルト「何でも屋じゃない、冒険屋だ」


青山「えっ、あ、確かそうでした。世界一の冒険屋、ご存知だったんですか?」


ボルト「あぁ、その作者の依頼で、仕事をしたことがあるんでね」


青山「それって……まさか……」




ボルト「信じるか信じないかは、お前の自由だがな」




マヤ「チノーー!!」

メグ「チノちゃん?」


チノ「マヤさんにメグさん、それに」


ボルト「…………」ボリボリ


チノ「なぜボルトさんまで……」

マヤ「ボルトは凄いんだぜ!? だってネジ食べれるんだからな!!」

メグ「何でも食べちゃうんだよ~」

チノ「それは知ってますが、いつの間に仲良くなったんですか……」


マヤ「ボルト、次はこれ!! これ食べてみせてよ!!」

ボルト「…………」モシャモシャ

メグ「あっ、そのプリントって……」


マヤ「ふっふっふっ……」

マヤ「引っかかったなボルト!! それは今日の宿題のプリントだよ~~!!」


チノ「な、なんてことを」

ボルト「一杯食わされた」

マヤ「明日先生に、宿題はボルトに食べられたって言うからな!!」

チノ「ボルトさんはヤギか何かですか……」


ボルト「…………」ズリュ

メグ「あれ~? ボルトさんが持ってる用紙、マヤちゃんのじゃない?」

マヤ「えっ!? なんで!? 食べたはずなのに……」

マヤ「しかも、途中までやってたところが白紙になってるーー!?」

ボルト「そいつは残念だな」

マヤ「ご、ごめんボルト。謝るからさ、もう一回食べて途中までの解答返してよ~~!!」


ボルト「悪いが今日はもう満腹でね。依頼は明日以降聞くとしよう」

マヤ「明日提出の宿題なのに、明日以降じゃ意味ないよ~~!!」


メグ「マヤちゃん、もう一回始めからやるしかないね~」

チノ「そうみたいですね」


マヤ「チノ、また明日な~~!!」

メグ「バイバイ、チノちゃん」

チノ「はい、また明日」




ボルト「…………」

チノ「ボルトさんは、不思議な人ですね」

ボルト「そうか」

チノ「人見知りな私には、少し羨ましいです」


チノ「そういえば、ボルトさんはどうしてこの街に来たんですか?」

ボルト「依頼だ」

チノ「依頼……。冒険屋さんの、お仕事ですか?」

ボルト「あぁ」

チノ「その、お仕事の依頼というのは、私でも出来るのでしょうか?」

ボルト「報酬があればな」

チノ「お金は、そんなにありません……」

ボルト「何か依頼したいことがあるのか?」

チノ「そ、それは……その……」

チノ「いえ、ボルトさんに頼む前に、自分一人の力で何とかしてみようと思います」


ボルト「いい心掛けだ」


チノ「でも、私一人ではどうしても言えなかったときは……」

チノ「依頼を聞いてもらえますか?」


ボルト「あぁ、約束しよう」


チノ「……ありがとうございます、ボルトさん」



コンコン


タカヒロ「どうぞ」


ガチャ


チノ「…………」


タカヒロ「チノ、こんな夜中にどうしたんだい?」

チノ「それは……。あっ……」

チノ「その、カレンダーの印は……?」

タカヒロ「あぁすまない。チノにまだ言ってなかったか」

タカヒロ「その日は、とても大事な仕事の用事で一日中いないんだ」

タカヒロ「バーのほうも臨時休業にするつもりだから、チノも覚えていてくれ」


チノ「そう、ですか……。分かりました」


タカヒロ「チノ? 何か話があったんじゃないのかい?」


チノ「いえ、何でもないです」


チノ「ココアさんしっかりして下さい。次はあれです。その次はこれをお願いします」

ココア「うぇぇ~~ん、今日のチノちゃんはスパルタだよ~~!!」

チノ「まったく、ココアさんは……」


ボルト「随分忙しそうだ」

ココア「あっ、ボルトさん」

ココア「聞いて聞いて!! とうとうチノちゃんが私を頼ってくれるようになったんだよ!!」

ボルト「そいつは良かった」

ココア「お姉ちゃんに任せなさい、だよ!!」


ガシャーン


ボルト「これは頼りになりそうな姉だ」

ココア「え、えへへ。し、失礼しました~~!!」


ココア「ご、ごめんねチノちゃ~~ん!!」

チノ「しょうがないですね、ココアさんは」




ボルト「今日は人使い、いや、姉使いが荒いようだ」

リゼ「そうなんだよ。チノに何かあったのか聞いても何もないって言うし」

リゼ「まぁ、ココアに厳しいのはいつものことだから、多分怒らせるようなことしたんだろう」

ボルト「…………」

ガリッ、ポリポリ


チノ「…………」


ボルト「…………」


ティッピー「チノ、やはりもう一回ちゃんと話してみてはどうじゃろうか」

ティッピー「もしかしたら、ということも」

チノ「いえ、必要ありません」

ティッピー「チノ……」

チノ「それに、始めから」


チノ「授業参観なんて、どうでもよかったですから」








ボルト「…………」











ガリッ




ボリボリ




……ゴクン




ボルト「……完成」




ティッピー「とうとう授業参観当日になってしまった……」

ボルト「…………」

ティッピー「ボルト、世界一の冒険屋に依頼するような内容ではないとはいえ……」

ティッピー「まさか依頼を達成出来ないとは思わんかったよ……」

ティッピー「あーー!! もうこうなったらお前に変装して行ってもらうしかない!!」

ボルト「遠慮しよう」

ティッピー「それじゃどうしろと言うのだ!? わしに行けと言うのか!?」

ボルト「そうだな」

ティッピー「行けるなら行っておるわ!! 孫の勇姿が見れるなんて本当は誰にも譲りたくないわい!!」

ボルト「なら、お前が行けばいい」



ズリュ……


ティッピー「!?!?!?!?」


ティッピー「これは……昔の、ワシ……?」

ボルト「その姿でも中に入って操作出来るヒューマノイドだ」


ティッピー「この街に来て、ずっと何を食べているのかと思っとったら、これを……」


ボルト「依頼内容は、『孫の授業参観に家族を参加させたい』だったな」


ボルト「参加すればいい」




ボルト「お前もその家族だ」




クラスメイト「今日の授業参観、チノちゃんのウチは誰が来るの?」

チノ「私の家族は、今日は忙しくて誰も来れないみたいです」

クラスメイト「そうなんだ、それなら仕方ないね」

チノ「はい……」


教師「それじゃ、授業を始めます」


チノ(……家族が来てないのは、私だけのようですね……)

チノ(別に気になりません。マヤさんやメグさんの楽しそうな姿を見てるだけで私は十分です)


チノ「…………」




「すみません、遅れました」




教師「えっと……」

「あぁ、私は香風智乃の祖父です。遅れて申し訳ない」

チノ「えっ……?」

教師「あぁ、そうでしたか。どうぞ、お入り下さい」


チノ(……ティッピー、じゃなくて、お爺ちゃん……!?)


クラスメイト「チノちゃんのお爺ちゃんカッコいいね」ヒソヒソ

クラスメイト「なんか、ダンディって感じ♪」ヒソヒソ

チノ「そ、そうですか?」ヒソヒソ


メグ「チノちゃん嬉しそう」

マヤ「だな」

チノ「べ、別に、そんな事ないです」


チノ(……でも、どうやって、お爺ちゃんは確かに……)

チノ「あっ……」


教師「香風さん?」


チノ「い、いえ、何でもないです」


チノ(今、校門にいた人影、微かに見えた緑のコート……)

チノ(きっと、見間違いじゃないです)




チノ(ボルトさん……)




ボルト「いいのか?」

ティッピー「一思いにやってくれ」


メキメキ、ガリガリ、ボーリボリ


ティッピー「うっ……自分が食われとるのを見るのは気分がいいもんじゃないのう」

ボルト「だろうな」

ティッピー「またこういう時の為に残しておきたいが、誰かに見つかったら大事件じゃ」

ティッピー「今日のことは、チノも学校の人達も、夢か幻とでも思ってもらおうかの」


ボルト「依頼は完了だ。報酬は貰っていくぞ」

ティッピー「もう行くのか、あの子達に挨拶はしないのか?」

ボルト「あぁ」


ティッピー「本当に相変わらずじゃな、お前は」


ボルト「…………」


ガリッ


ティッピー「だがなボルト、世界一の冒険屋ならもっと上手く作れたんじゃないのか?」

ティッピー「よく覚えといてほしかったわい」


ティッピー「ワシはもっと男前だったよ」


ボルト「…………」


ボルト「お前が珈琲屋のマスターだったのを忘れていた」


ティッピー「なに?」




ボルト「苦い評価だ」




チノ「……そうですか、もう行ってしまったんですね」

ココア「別れの挨拶もなしに行っちゃうなんて酷いよ~~!!」

リゼ「本当に、不思議な人だったな」

シャロ「お礼、言いそびれちゃった……」

千夜「もう会えないのかしら」

リゼ「どうだろうな。冒険屋がどこに行くのかなんて見当もつかない」

チノ「いえ、いつの日か、このお店に来てくれるはずです」

ココア「チノちゃん?」


チノ(私はまだ、報酬を払っていませんから)



チノ「でも、もしボルトさんにお礼をするなら、何がいいんでしょうか……」


リゼ「それは、きっと」


シャロ「ですよね」


千夜「でしょうねぇ」


ココア「もちろんアレだよね!!」




ttps://www.youtube.com/watch?v=fxZshSId85o



「なぁ、前から気になってたんだけど、この特別メニューってなんなんだ?」


「あぁ、それは私のお婆ちゃんのお婆ちゃんがね、あれ、お婆ちゃんのお母さんだっけ?」


「なんだそれ? 昔々あるところに、ってやつか?」


「ちーがーう!! 昔話じゃなくて本当にこのお店であったことなんだって!!」


「お喋りは終わりです。お客さんが来られましたよ」


「いらっしゃいませ~~!! ご注文はお決まりですか?」


「これを貰おう」


「……え……えっと、本当に、ですか……?」


「あぁ」


「か、確認させていただきますね……」








「ご注文は、ネジですか?」








「…………」


カリッ




END



ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございましたm(__)m
もし多少なりとも皆様に楽しんでいただけたのなら幸いですm(__)m

読んでいただきありがとうございますm(__)m

EAT-MAN本当好き
うしとらも再アニメ化したしさ、EAT-MANもまたアニメ化して欲しい……
EAT-MANのアニメ見たい……見たくない?

というかEAT-MAN15巻を映画で見たい!!
俺は15巻大好きなんだよ!!
毎回泣くぞ俺15巻はマジで!!

そうですそうです、あと冒険屋の由来とか
作者が前書きで映画でも観るつもりでって書いてるけど、マジで見たい

もしEAT-MAN知らないでここまで読んでくれてる人がいたら
検索すれば試し読みで一話読めたりするから読んでみてくれ!!
めちゃくちゃ面白いぞ!!
そして、月刊少年シリウスでEAT-MAN THE MAIN DISHが連載中だぞ!!
みんなも読もうぜ!!

バーニング・ブルーいいですよね、本当好きですわ
最近まんだらけで105円でCD買ったっていうのをニコ動で見て驚きました

ベッドシーンは子供心に、なんだこれ?ってなった記憶がある

あー、その気持ち分かります。
個人的には新しい惑星で新しい冒険でも全然良かったんですけどね。
まぁ勿論読むんですけど!!

本当によく分かります、テロメアとの別れかたは本当に良かったですからね。
あのボルトが食べようとするけど、やっぱり食べないあの感じ、あそこ好きですわ。
まぁ、またあのコンビが見れる!って思ったら、気にしないほうがいいのかなぁとも思ったり。


ここまでお付き合い頂きありがとうございましたm(__)m

そろそろHTML化依頼だしてきます

EAT-MANもごちうさも全く関係ない過去に自分が書いたSSを紹介していくスタイル


うしおととらSS

とら「うしお、あにめってなんだ?」
うしお「……聖杯戦争?」
うしおとシオン


神のみぞ知るセカイSS

中川かのん「あっ……雨、だね……」
ほむら「落とし神に魔法少女を攻略してもらう」桂馬「魔法少女だと」
エルシィ「にーさまを攻略女子の水着で落としてみせます~~!!」
エルシィ「この人達みんな駆け魂が入ってますーー!!」夜空「ん?」
梓「………」 「ドロドロドロ」 エルシィ「!?」


その他

青年「勇者が村を出ない」
アーク「リーザをデートに誘いたい?」エルク「こ、声が大きいって」
来夏「喜翆荘?」緒花「合唱時々バドミントン部?」


もし興味がありそうなスレがありましたら良かったら読んでみてくださいm(__)m

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