No.23「奴隷No.23」No.51「……奴隷No.51」(81)

No.51「はっ…はっ…」

No.23「大丈夫ですか?No.51」

No.51「…あんまり………」

No.23「…そちらの石をお願いします。これは23が運びます」

No.51「…いや、交換したことがばれたらきっと酷い目にあうよ」

No.23「だから急いで下さい。おしゃべりもこれきりです」

No.51「………ありがとう」

ーーーー
No.51「…やっと、休憩…あ、もう水がないや」

No.23「はい、どうぞ」

No.51「それ、君のだろう?」

No.23「23は慣れていますし、あまり水分取らないので」

No.51「でも…」

No.23「遠慮なさらずに」

No.51「…ありがとう」

No.23「あとまだ労働は数時間残っています。今、水分が無くなると辛いですよ」

No.51「………」

No.23「さ、そろそろ休憩が終わります」

No.51「あと四時間か…」

ーーーー
No.23「……ふらついてますよ。No.51」

No.51「…………」

No.23「喋るのもきついですか?」

No.51「………」

No.23「無理もありません。まだ奴隷になって1日目じゃ身体がついてこないのでしょう」

No.51「……うん」

No.23「少しゆっくり運んでも大丈夫ですよ」

No.51「………でも」

No.23「今日はそろそろ終わりです。看守も鞭をしまい始めますから」

No.51「ん………」

No.23「では、また」

ーーーー
No.51「おわっ…た…」

No.23「…では寝床に戻りましょう

No.51「はは、重いもの持って歩いたあとに普通に歩くと腕の感覚がおかしくなっちゃうんだね」

No.23「そうですね。さ、急ぎましょう。看守の機嫌を損ねるとよくありません」

No.51「う…ん」

No.23「肩を貸しましょうか?

No.51「大丈夫…まだ歩けるよ」

No.23「そうですか」

No.51「…いつか慣れるのかな?」

No.23「きっとなれますよ」

ーーーー
No.51「……掛け布団は」

No.23「それは贅沢品です」

No.51「だってこれじゃただのゴザだよ」

No.23「ゴザです」

No.51「魔物の奴隷ってこんな扱いを受けるものなの?」

No.23「…人間の奴隷をしている時は馬屋で寝ていました」

No.51「そうなの?」

No.23「はい。藁の中は暖かいのですが、いかんせんねずみと虫が多かったですね」

No.51「…ごめんね」

No.23「No.51は悪くないですよ」

No.23「…でも、僕、奴隷がそんなところで寝てるなんて知らなかった」

No.51「暴漢に襲われないだけ外よりはずっと安全でしたから」

No.23「…寒いですか」

No.51「少し」

No.23「そばに行っても?」

No.51「…うん」

No.23「身体は大丈夫ですか」

No.51「足と手の皮が剥けちゃったよ」

No.23「慣れない暫くの間は痛みます。真夏ではなくてよかったですね」

No.51「夏だと余計痛むの?」

No.23「化膿してしまうんです。奴隷は毎日湯浴みは出来ませんし薬などは本当に悪化しない限りは頂けません」

No.51「湯浴みか…もう何日も身体洗えてないや。臭くないといいけど」

No.23「あまり匂えば水桶を渡されますよ。看守も臭いがきついのは嫌がりますからね」

No.51「水!?もうこんなに寒いのに…!」

訂正
No.23「…でも、僕、奴隷がそんなところで寝てるなんて知らなかった」

No.51「暴漢に襲われないだけ外よりはずっと安全でしたから」

No.51「…でも、僕、奴隷がそんなところで寝てるなんて知らなかった」

No.23「暴漢に襲われないだけ外よりはずっと安全でしたから」

No.23「下手すると肺炎を起こします。ここに来て老人が亡くなったのをみました」

No.51「酷い!」

No.23「奴隷の命は自分のものではなく主人のもの。ご存知でしょう?」

No.51「…うん」

No.23「でもNo.51はあまり臭くないから大丈夫ですよ」

No.51「君も臭わないね」

No.23「朝配られる水を少し布に垂らして身体と顔を拭くんです。一口分はうがいに使います」

No.51「へえ!」

No.23「ご主人たちの前に目やに付きの顔で出るわけにもいかなかったので昔からの習慣ですよ」

No.51「でもそれじゃさっきの水は貴重だったんじゃないの?」

No.23「私は明日は井戸から水瓶に水を満たす仕事がありますので少しチョロまかせるので大丈夫です」

No.51「バレたら酷い目に合うよ!!」

No.23「しっ!声が大きいです!」

No.51「あ…ごめん」

No.23「大丈夫、うまくやりますよ」

No.51「強いね…」

No.23「何がですか?」

No.51「君が」

No.23「…No.51、何事も慣れです。それに奴隷の暮らしにも良いことはあります」

No.51「そんな風にはとても思えないや」

No.23「…こんなお喋りは嫌いですか?」

No.51「まさか!君とのお喋りは少し気持ちが楽になるよ」

No.23「23もそう思っています」

No.51「そっか」

No.23「もちろんたくさん辛いこともありますが…」

「………」

No.51「…ねえ、この世界はどうなっちゃったんだろう?」

No.23「急に話が大きくなりましたね」

No.51「だって…」

No.23「勇者様のことですか…」

とりあえず今はここまで。

No.51「うん…まさか勇者様が殺されてしまうなんて…」

No.23「首から右肩にかけて真っ二つだったそうです」

No.51「…勇者様の仲間たちが泣いていたのをチラリとだけどみたよ」

No.23「そこまでになるともう回復魔法では何も出来ないらしいので悲しみは深かったでしょうね」

No.51「そんなにムゴイ事になっていたんだ」

No.23「道中の街で夜襲にあうなんて想定していなかったのでしょう」

No.51「僕の住んでいた街はもう無くなっちゃったって言われたよ」

No.23「そう…ですか」

No.51「きっと一生、あの夜の叫び声や炎の明るさは忘れないと思う…」

No.23「はい…」

No.51「それに庭の木に登ったことも、誕生日に貰った馬のことも、父様の部屋にあった箪笥の傷も忘れないんじゃないかな?」

No.23「それがいいと思いますよ」

No.51「勇者様の仲間たちはどうなったのかな」

No.23「わかりません…捕まったのかもしれませんし、また旅に出たのかもしれません」

No.51「逃げ延びていたらまだ世界は救われるのかな?」

No.23「さあ…勇者様がいないまま魔王に勝てるのか誰にもわかりませんし、あんな酷い姿の勇者様を見ても戦う気持ちは残ってるのでしょうか?」

No.51「………君はあまり悲しくないの?」

No.23「そう見えますか?」

No.51「僕ほど絶望してるようには見えないよ」

No.23「…奴隷は継ぐものなのはご存知でしょうか。23は生まれながらの奴隷です。母の代から奴隷をやっています」

No.51「うん」

No.23「この焼印が押された時点で死ぬまで奴隷のままですからあまり世界とは関係のない存在なんですよ」

No.51「だからあまり悲観してないの…?」

No.23「そうかもしれません」

No.51「そっ…か…」

No.23「もうお喋りはおしまいにしましょう。新入りには厳しい1日だったはずです。眠そうですよ」

No.51「うん…つか…れ…」スゥ…

No.23「寝つきがいいんですね。おやすみなさい」

ーーーー
No.23「おはようございます」

No.51「おはよ…」

No.23「水とパンをもらいに行きましょう」

No.51「うん…お腹すいたな…」

No.23「それならば23のパンをわけますよ」

No.51「大丈夫!大丈夫だから!」

No.23「遠慮なさらないでください」

No.51「遠慮じゃないから!朝まだ食べてないだけだから!ほらっ急ごう!」

No.23「そうですか…」

No.51「そういえば昨日聞いた水の使い方、僕もやってみようかな」

No.23「水袋から少しだけ使うのは慣れないと難しいですよ?」

No.51「試してみるだけ試してみるよ」

No.23「気を付けてくださいね」

ーーーー
No.23「ビショビショですね…」

No.51「うん…思ったより勢い良くでるんだね」

No.23「まだ今日は暖かい日でよかったです」

No.51「そうだね…」

No.23「昼の休憩時に水を分けますので待っていてください」

No.51「いいよ、昨日も今日もお世話になれないよ」

No.23「昨日も言ったように私は水汲みに回りますので大丈夫です」

No.51「あ、そっか。うん…」

No.23「本当は水袋を満たしてあげたいのですが流石に持っていないと怪しまれますからちゃんとぶら下げていて下さい」

No.51「わかったよ」

No.23「では、また」

乙ありがとう。今はここまで。

ーーーー
No.23「大丈夫でしたか?」

No.51「なんとか…」

No.23「水袋をこちらに」

No.51「あ、ありがとう」

No.23「いえ、午前中に水瓶は溜まったので午後は私も掘削の仕事に回されます」

No.51「そうなんだ…ってその手!」

No.23「ああ、これですか?井戸のロープは麻縄なのでたまに摩れるんですよ」

No.51「痛いよね…ごめん、薬とか持っていたらよかったんだけど」

No.23「…No.51は優しいですね」

No.51「僕が?優しいのは君だと思うよ。新入りの僕を気にかけてくれるし」

No.23「…休憩が終わります。ではまた」

No.51「うん、またね」

ーーーー
No.23「No.51行きましょう」

No.51「ん…あ、今日は終了か。必死になってて号令が聞こえなかったや」

No.23「急がないとムチが来るかもしれません。今日は看守の気が立っています」

No.51「わ、わかった!でもどうして?」

No.23「歩きながら話します」

No.51「うん」

No.51「…で、どうして看守はイライラしてるの?」

No.23「…女奴隷の一人が看守に刃向かったのです」

No.51「ええ!そんな騒ぎ聞いてないよ!」

No.23「掘削作業の奴隷ではなかったのであまり噂は広まらなかったようです」

No.51「そうなんだ…でもどうして刃向かったんだろう…」

No.23「そこまでは存じません。ただ、今日は午後の休憩が男女別でしたよね?」

No.51「うん。よくあることなの?」

No.23「いえ、ここへ来て初めてです」

No.51「そうなんだ」

No.23「どうも女奴隷が持っていたナイフは結んだ髪の中に隠していたようで女は一斉に身体検査をされたのです」

No.51「…大丈夫だった?」

No.23「23は大丈夫でした。多分明日は看守が増えた上で男性の身体検査も行われます。どうぞお気をつけて」

ーーーー
No.51「…嫌だな」

No.23「魔物に身体をまさぐられるのはあまりいい気分ではありませんね」

No.51「だよね」

No.23「でも明日は良いこともあります」

No.51「良いこと?」

No.23「湯浴みの日です」

No.51「本当に!?」

No.23.「はい、掘削作業のあとはあちこちがパサパサしますからね。湯を浴びるだけでも少し気持ちが楽になります」

No.51「髪の毛がゴワゴワするのが嫌だったんだ」

No.23「わかります」

No.51「でも、君も僕も傷だらけだから染みるかもね…」

No.23「それは仕方のないことです」

No.51「さっきの女性の奴隷の話なんだけどさ」

No.23「はい」

No.51「酷い目にあってないかな?」

No.23「…あっていると思います」

No.51「そう…だよね」

No.23.「見せしめの処刑はされていませんがそれは生存してないからという可能性もあります」

No.51「…最悪もう、死んでる…?」

No.23「行き過ぎたリンチになればそうですね」

No.51「…こわいよ」

No.23「ただ、看守はあくまで看守です。奴隷は看守のものではありませんからその辺りは主人の命令次第かと」

No.51「ああ、そっか。こんなんでもまだ救いはあるんだね」

No.51「冷えてきたね」

No.23「…震えてるんですか」

No.51「…手をつながない?」

No.23「…23とNo.51がですか?」

No.51「手が痛くなくて、もし君が良かったらの話だけど」

No.23「構いませんよ」

No.51「甘えてごめんね」

No.23「あなたは子供ですし怖いのは普通のことですよ」

No.51「男のくせに情けないって呆れてるよね…」

No.23「そんなことないです」

No.51「…母様も父様も街の皆も死んじゃったか行方知れずなんだ」

No.23「…はい」

No.51「最後にみかけた勇者様の仲間はね。側を離れるんじゃなかったって、一人にしたのが間違いだったって叫んでた」

No.23「…はい」

No.51「僕も皆と離れちゃったから一人で死んでいくのかな?」

No.23「…No.51、23で良ければ死ぬまで側にいます」

No.51「…気を遣わせてごめん」

No.23「では少なくとも今、私たちは一緒ですよ」

No.51「…うん…」

No.23「男の子も泣くものなんですね」

No.51「今日だけだよ」

いまはここまで。乙ありがとう!

No.23「おはようございます」

No.51「あ…あのまま寝ちゃったんだ…」

No.23「はい、目ヤニがついてますよ」

No.51「んぁ…顔がカピカピする」

No.23「水とパンを貰いに行きましょう。その時に布を濡らしてあげます」

No.51「ううん、自分でやるよ」

No.23「昨日のようになりますよ」

No.51「大丈夫。この生活にも少し慣れないと」

No.23「そうですね。では、行きましょう。男性の身体検査もあるはずなので休憩は別かと思われます。水の量に気を付けてください」

No.51「あ、そっか。じゃあ行こう」

ーーーー
No.51「やっぱり今日の休憩も男女別か…」

No.51「今日は僕は薪運びを延々とさせられてるけどなんの薪なんだろう…」

「………」

No.51「人に聞くにも他の人は僕に無関心だし…」

「………」

No.51「身体検査、思ったより簡単に済まされたな。僕がまだ子供だからかなぁ」

No.51「……水」

「………」

「………」

No.51「…戻る時間だ」

No.51「どうしたの!?」

No.23「いえ…なんでも…」

No.51「なんでもって感じじゃ無いよ!顔真っ青じゃ無いか!」

No.23「本当に、大丈夫ですから寝床へ戻りましょう」

No.51「……背中、触ってもいい?」

No.23「っ!ダメです!!」

No.51「…ムチでやられたの?ねえ!?」

No.23「…ここでやりとりするのは目立ちますから」

No.51「……歩こう」

No.23「はい。心配をかけてすみません…」

No.51「いいから、ゆっくり行こう」

時々場面転換忘れる
>>28>>30場面転換してます

ーーーー
No.51「何か反抗的なことしたの?」

No.23「いいえ、砂袋を落としてしまったのです」

No.51「嘘だ。そんな理由で鞭打ちなんてされてたら僕もう背中なくなっちゃってるよ!」

No.23「おかしな言い方しますね」

No.51「はぐらかさないで」

No.23「本当です。看守の機嫌が良くなかったので小さなミスでも打たれてしまいました」

No.51「…確かに昨日のことのせいかピリピリしてたね」

No.23「はい。気をつけていたつもりなんですが手を滑らせてしまって…」

No.51「そんな…」

No.23「一度や二度鞭で叩かれても意外と大丈夫ですよ」

No.51「こんなに顔色が悪いのに、嘘つかないでよ」

No.23「…背中の古傷と同じ所に当たったので昔のことを思い出しただけです」

No.51「…嫌なこと?」

No.23「それより湯浴みへ行かなくていいのですか?楽しみにしていたのですからどうぞ」

No.51「君は?」

No.23「今日は…無理そうです。早く寝たいのでもうこのまま眠ろうと思います」

No.51「そんなに気分悪いの」

No.23「大丈夫ですよ。寝たらよくなります」

No.51「…僕も止めておこうかな」

No.23「…ならば23は行きます。そうしたらNo.51も行きますか?」

No.51「無理しないでよ。…ちゃんと僕一人で行ってくるから」

No.23「…せっかく薪を運んだのです。お湯を楽しんで来てください」

No.51「うん…あ、あれお湯沸かす用の薪だったんだね!」

No.23「そうですよ。労働が目に見えて返ってくるのは奴隷の仕事には珍しいのです」

No.51「じゃ、行ってきます」

No.23「では、おやすみなさい」

ーーーー
No.23「おはようございます」

No.51「君いつも早起きだね…」

No.23「奴隷はそういうものです」

No.51「言葉もちゃんと使うし」

No.23「奴隷はご主人を不快にさせる言葉は使えません。学ばなければならないのです」

No.51「僕もそういう風に喋ったほうが良いのかな?」

No.23「いえ、奴隷同士なら大丈夫ですよ。21はこの喋り方が一番慣れているだけです」

No.51「誰かに教わったの?」

No.23「独学で身につけました。故に間違いがある事もありますし読み書きはまともには出来ません」

No.51「読み書き出来ないの?」

No.23「はい。簡単な計算は出来ますがそれくらいですね」

No.51「そっか…あ、パンと水だね」

No.23「行きましょう」

ーーーー
No.51「思ったより元気そうで安心したよ」

No.23「はい。寝たらよくなりました。No.51は昨日はどうでしたか?」

No.51「湯浴みはやっぱり良かったな。ちょっと寒かったししみたけど」

No.23「それは良かったです」

No.51「次の湯浴みはいつなんだろう?」

No.23「どうも4日サイクルのようです」

No.51「意外だな。ひと月くらいあるのかと思ってた」

No.23「魔物は鼻がいいので人の匂いを気にしているようです。人間の奴隷の頃より湯浴みは多いですね」

No.51「へえ」

No.23「それにひと月入れなかったら流石に23も昨日入っています」

No.51「そうだよね。…行く?」

No.23「はい、看守の機嫌がよくなっていると良いのですが」

ーーーー
No.51「はっ…おもっ…」

No.23「その色の石は重いんですよ」

No.51「色によって重さが違うの?」

No.23「はい。白っぽい物が比較的軽く感じます」

No.51「注意してっ…みるっ…!」

No.23「適応は大切です」

No.51「そういうものっなんだ」

No.23「足に落とさないように気を付けてください」

No.51「うん」

ーーーー
No.51「だいぶ…作業は慣れたかな」

No.23「そうですか」

No.51「うん。適応だね」

No.23「奴隷であるには大切なことです」

No.51「…ん」

No.23「…まだ奴隷になったことは慣れませんか」

No.51「まあ」

No.23「No.51は23をナンバーで呼ぶのも抵抗があるようですね」

No.51「あんまり好きじゃないよ」

No.23「水は大丈夫ですか」

No.51「うん。休憩は終わり?」

No.23「そろそろだと思います。行きましょう」

No.23「今日はここまでのようです。行きましょうか」

No.51「うん。今日は昨日ほど看守がうるさくなかったね」

No.23「…噂、ですが」

No.51「うわさ?」

No.23「今日は看守が少なかったと思いませんか?」

No.51「そうかな?そう…かも?」

No.23「寝床を調査していたようなのです」

No.51「なんで?」

No.23「脱出用の抜け穴や反乱になるような武器を隠していないかを調べていたのでしょう」

No.51「ゴザしかないような場所なのに」

No.23「ツルハシや爆薬はある程度揃っている場所ですから魔物も注意しているのでしょうね」

No.51「そっか。明日されてたら僕も叱られたかも」

No.23「!何かしたのですか。危ないことはやめてください」

No.51「…これ」

No.23「これは…?石ですよね?」

No.51「うん、石ころ。運ぶときにくすねてきちゃった」

No.23「なぜ石を」

No.51「石の色が違うって聞いて色々見てたんだけど…この石、僕の住んでた街を囲ってた壁の石と似てるんだ」

No.23「…懐かしくて拾ってきたのですか?」

No.51「うん…でもどっちかというとお守りかな?僕、何も思い出を持ってこれなかったから。これを持ってればなんか少しでも忘れない気がして」

No.23「…No.51は思い出を大切にするんですね」

No.51「…ここに来てから昔のことよく思い出すようになったんだ。忘れてたことまで思い出したりして」

No.23「いい思い出が沢山あって羨ましいです」

No.51「…ごめんなさい」

No.23「いえ、私にもとてもいい思い出はあるので大丈夫ですよ」

No.51「そうなんだ?」

No.23「はい、その事を思い出せばなんだって出来そうな気がするんです」

No.51「どんな思い出なの?」

No.23「…昔、棒でしたたかに打たれていときに助けてくれた方がいたんです。奴隷に優しい言葉をかけてくれた…それがとても嬉しかったのです」

No.51「いい思い出だね」

No.23「ええ、きっと一生忘れません」

No.23「…でも、一番辛い思い出でもあるのです」

No.51「なんで?」

No.23「幸せを一度感じてしまうと現実がとても辛い時があるのですよ」

No.51「昨日言ってた古傷って…」

No.23「はい、その時の傷です。でも、もう大丈夫です」

No.51「うん…」

No.23「奴隷にとっていい思い出は時に活力に時に悲しみになります」

No.51「僕もそうなるの…?」

No.23「それはわかりませんが、私はその思い出を絶対に忘れません。どうか、No.51もその石を大切にしてください」

No.51「うん!ありがとう!」

No.23「そろそろ寝ましょう」

No.51「うん、おやすみなさい」

No.23「おやすみなさい」

とりあえずここまで。乙ありがとうございます。あと少しなのでお付き合いください

ーーーー
No.23「おはようございます」

No.51「おはよ…んにゃ…」

No.23「ねぼすけさんですね」

No.51「ん…お腹すいた…」

No.23「早めに行きましょうか?」

No.51「待って…石…石…あ、あった」

No.23「ポケットに入れていくんですか?」

No.51「うん」

No.23「落とさないように気をつけかてください」

No.51「ん」

ーーーー
No.23「…少し痩せましたね」

No.51「今日で5日目…6日目かな?足の裏が固くなってきた気がする」

No.23「5日目であってます」

No.51「君はどれくらいここにいるの?」

No.23「10日ほどです」

No.51「えっもっと長くいるのかと思ってたよ!」

No.23「奴隷は長いですがここでは新参者ですよ

No.51「適応してきたの?」

No.23「そうです。さ、No.51行きましょう」

No.51「ふーん」

ーーーー
No.51「なんだろ…なんか違和感がある」

No.51「………?」

No.51「ダメだ、わかんないや」

No.23「No.51、ぼうっとしているとムチをくらいますよ」

No.51「あ、うん」

No.23「ここの魔物はムチが好きみたいですからね。気を付けてください」

No.51「わかった、気をつけるよ」

ーーーー
No.23「今日はどうしたのですか」

No.51「えっなにが」

No.23「上の空、という感じですよ」

No.51「んー…なんかもやもやしてることがあって」

No.23「体調が悪いのですか?大丈夫ですか?」

No.51「ううん。そうじゃないよ」

No.23「こう…何かくしゃみをする前のふえっふえって感覚が続いてる感じ」

No.23「?」

No.51「この後は気をつけるよ。心配かけてごめんね」

No.23「良かったです。戻りましょう」

ーーーー
No.51「ごほっ…ごほっみ、みずっ…!」

No.23「どうぞ」

No.51「あ、ありがごほっごほっ…」

No.23「掘削中に息を深く吸ってはいけませんよ。気管支が強くないならなおさらです」

No.51「んっ…ごほっ気をつけるっ…ごほっ」

No.23「休憩はそろそろおしまいですが大丈夫ですか?」

No.51「んっ…」さ

No.23「では、水をもう一口飲んでから行きましょう」

ーーーー
No.51「今日はここまでかな…」

No.23「そのようです。行きましょう」

No.51「…これ、なにを掘っているんだろう?」

No.23「わかりません…何か建築の基礎でしょうか」

No.51「そっか。ここに連れて来られる時何も言われなかったからよく知らないんだよ」

No.23「確かに説明はなかったですね。馬車に押し込められて連れて来られただけです」

No.51「僕もだ。意外と街と近い場所だと思うんだよね。馬車で1日かからなかったし」

No.32「あまり遠い地域の奴隷はまた別の作業があるのかもしれませんね」

No.51「うん。収容所みたいなところでは毎日人が連れて来られてきたから色々な街や村が攻撃されてるんだと思う」

No.23「収容所…ですか?」

No.51「うん。あのほら…人がいっぱいいたところ」

No.23「23はそこは経由してませんね…」

ーーーー
No.51「そうなんだ。捕まった場所によるのかな?」

No.23「さあ…魔物が一度に運ぶ方が効率がいいと判断したのかもしれませんね」

No.51「なるほどね。そういえば馬車の御者は最初は人かと思ったよ」

No.23「ああ、人型の魔物でしたね。私も何回か森での薬草摘み中にみかけたことがあります」

No.51「えっ外で魔物とあったことあるの!?」

No.23「はい、そのような危険なことも奴隷の仕事ですから」

No.51「知らなかった…よく今まで無事だったね。戦闘が出来たり魔法が使えるの?」

No.23「そうではありません。逃げるだけです。奴隷は武器の所持や戦闘は許されていません。魔法が使える奴隷はより適切な仕事に回されます」

No.51「森に丸腰で行かなきゃいけない…って」

No.23「もし奴隷が力をつけたらご主人を殺してしまうかもしれないでしょう?」

No.51「…君にとっても殺したいくらい憎い存在だったの?」

手がかじかむから今はここまで。今日中には終わらせます。乙ありがとう

No.23「23は憎しみでご主人を殺すにはあまりに奴隷生活が長すぎますよ」

No.51「でも、嫌なこと沢山あったでしょ?」

No.23「そう…ですね。嫌なことはありました。けれど奴隷なら仕方のないことです」

No.51「…大人だね」

No.23「年はいくつかしか違いませんよ。それに大人だからではなく奴隷だから、です」

No.51「奴隷になったら諦めなきゃいけないこと沢山ありすぎてよくわからなくなってきちゃった」

No.23「…いいことを教えてあげましょう」

No.51「いいこと?」

No.23「奴隷もお星様に願えば必ず一つは叶うんですよ」

No.51「そんなの子供騙しの言い伝えだよ」

No.23「これは本当です。23は絶対に無理だと思っていた願いが叶いましたから」

No.51「そうなの!?」

No.23「はい、運命は思いがけずやってくるものですよ」

No.51「そっか…」

No.23「No.51の願いも毎日祈れば必ず叶いますよ」

No.51「だと、いいな」

No.23「はい」

No.51「なんか君はいつも僕の欲しい言葉をくれるね」

No.23「そうですか?」

No.51「うん。ありがとう」

No.23「いえ、そんな…今日はもう、寝ましょう」

No.51「照れなくてもいいのに」

No.23「…おやすみなさい」

No.51「おやすみ」

ーーーー
No.23「おはようございます」

No.51「……はよう」

No.23「…どうかしましたか」

No.51「………」

No.23「…おでこを触りますがいいですか?」

No.51「ん…」

No.23「やはり、熱がありますね。今日はこのまま寝ていて下さい」

No.51「…でも…」

No.23「大丈夫です」

No.51「………」

No.23「看守が後で仮病かの確認には来るでしょうが、熱があるぶんには問題ありません」

No.51「そうかな…」

No.23「老人ならば使い捨てですので無理矢理働かされるでしょうが、扱いやすい子供が命を落とすことの方が損害が大きいのです」

No.51「………奴隷だもんね」

No.23「そうです。あとで水を分けに戻ります。防寒のため23の替えの服をかけておきますが、あまり綺麗ではないので嫌でしたら横に置いておいて下さい」

No.51「…ごめん…」

No.23「では、おやすみなさい」

ーーーー
No.51(…寒い…)

No.51(ずっとあの人とくっついて寝てたからかな…)

No.51(…さびしいな)

No.51(………)

No.51(ポケットの石が時々…痛い)

No.51(………)

No.51(………大丈夫、すぐ治る…)

No.51(大丈夫…?)

No.51(うん…大丈…夫)

No.51(………)

No.51(…ああ…そっか…)

No.51(そうだったんだ…)スゥ…

ーーーーーー
No.51「ん…」

No.23「おきましたか」

No.51「あ、うん…」

No.23「なによりです」

No.51「今、休憩中?」

No.23「いえ、今日の労働は終わりました」

No.51「…一度も起きなかったよ」

No.23「熱は下がったようですね」

No.51「うん、かなり楽になったみたい」

No.23「では、これを」

No.51「パン?」

No.23「半分で悪いですが食べれますか?」

No.51「これ、君のじゃないの?」

No.23「半分は食べました」

No.51「いいよ、全部食べなよ」

No.23「大丈夫です。昔は夕飯抜きなどよくあることでしたから」

No.51「………ごめんね」

No.23「No.51が謝る必要はないですよ」

No.51「ううん、僕の父様が、ごめん…」

No.23「!!」

No.51「…思い出したんだ。あまり顔を合わせたことはなかったけど…君、僕の家の奴隷だった子じゃない?」

「………」

No.23「…………は…い」

No.51「やっぱり…」

No.23「なぜ、急に…」

No.51「僕の年齢や気管支が強くないことを知っていたり、ここに来たのが10日前って聞いてなにかずっと引っかかってたんだ」

No.51「君、僕のこと知っていたのかなって気が付いた」

No.51「…何より君が大丈夫って言うたびに不思議な気持ちになった」

No.51「昔、聞いたことあったからだ」

No.23「…そんなことまで…よく、覚えてましたね…おぼっちゃまは小さかったですし、忘れているものだとばかり…」

No.51「あの話って僕のことだよね?」

No.23「はい…ご主人…あなたのお父様に叩かれている時に小さなあなたは必死に止めてくださいました…」

No.51「でも、優しい言葉なんてかけた記憶が無いんだ。大丈夫?って聞いただけで」

No.23「それが私には十分優しい言葉でした…私を、奴隷を家畜ではなく人間として見てくれた…初めての方だったのです」

No.51「だからあの後から君を見かけなくなったの?」

No.23「…はい。ご主人は将来、屋敷の主人になるあなたに奴隷に同情心は持って欲しくなかったのでしょう。あの後から私は屋敷の敷地内ではなく外での労働が主になりました」

No.51「僕のせいで危険な目にあってたの…」

No.23「それは違います!私はあのこと以降何でも頑張れたのです!それは…あなたがいたからなんです…!」

No.51「じゃあ、なんで…なんで言ってくれなかったの?僕、あの街からは生き残りはいない…ひとりぼっちだと思ってたんだよ…」

「………」

No.23「…あの、勇者様が殺された夜の話です」

No.51「…うん」

No.23「夜襲に気が付き、街の男や奴隷は魔物に対抗するために武器を手に外へ出ました。私も例外にはなく、使ったこともない槍を手に」

No.51「君も?女子供は隠れろって言われたよ。だから僕も地下室の樽に隠れたのに」

No.23「私は奴隷です。女子供としての扱いはされません。あの混乱の中、私はどうしたらいいかわからずただ怯えて立っていました」

No.51「うん」

No.23「沢山の人が殺されていきました。ご主人の…命尽きる瞬間を今でもありありと思い出せます」

No.51「やっぱり父様は…」

No.23「はい…亡くなりました」

No.23「勇者様も、私からは見えたのです!騎士のような魔物の一太刀で身体が半分になる様を…」

No.23「…それなのに私は…怖くて逃げたのです」

「………」

No.23「奴隷なのに人の盾にすらなれず…あまりに申し訳がなく…」

No.23「…いえ、違います。おぼっちゃまに軽蔑されたくなかったのです……だから、言えませんでした」

No.51「ううん…君を軽蔑なんてしないし、君が生きていただけでも…良かったんだよ」

No.23「っ!」

No.51「僕はね…夜襲の後に…街から逃げたんだ…外が怖いくらい静かになって母様がここから逃げようって、ここは危険だからって」

No.23「はい」

No.51「外はあちこち火で明るくなってて、走ってる時に勇者様の仲間を見つけたんだ」

No.23「この前言っていた話ですね…」

No.51「うん。最初は話しかけようかと思ったけど…やっぱり無理で」

No.51「街から出て隣の村に向かおうとしてる時に捕まっちゃった」

No.23「…奥様は?」

No.51「わかんない。魔物から逃げてるうちに逸れて…遠くで悲鳴は聞こえたような気はするけど…その後は会ってない」

No.23「そうですか…」

No.51「でも、僕は生きてた。奴隷にはなっちゃったけど…」

No.51「ね、僕たち、会えてよかったね」

No.23「はい、はいっ…」

No.51「泣かないでよ」

No.23「ふふっおぼっちゃまも泣いてますよ」

No.51「君が笑ってるのも初めて見たな。照れても顔に出さないのに」

No.51「それに、もうおぼっちゃまじゃないよ。No.51だ」

No.23「病み上がりなのに、長く話をさせてすみません」

No.51「ううん。明日からきっとまた頑張れそうだよ」

No.23「はい」

No.51「僕ね、願い事が決まったよ」

No.23「なんですか?」

No.51「ずっと君といられますようにって」

No.23「恥ずかしいことを言うのですね」

No.51「そうかな。我ながらいい願い事だと思うな。君の願いはなんだったの?」

No.23「秘密です。もう寝ましょう」

No.51「君、照れるとすぐ話を終わらせようとするね」

No.23「そんなことありませんよ。おやすみなさい」

No.51「うん、おやすみ。また明日…」

No.23「はい…また、明日」










No.23「…もう眠ってしまいましたか?」

No.23「………私の願いはあなたと共に生きていきたい、それだけです。

奴隷である以上、絶対に叶わないと思っていました。
でも私はあの夜、気が付いてしまいました。願いが叶う可能性があることに。

だから…ご主人を槍で刺し、私を守ろうとした勇者様の背中を魔物の前に押し出した。その一瞬に全てをかけたのです。

あなたと共に奴隷としていきてゆくために、あなたを庇護する存在を殺し、人間の希望の命を捧げることで私の願いは叶いました。

私は今とても幸せです。
だけれども少しの罪悪感を持ってしまうのは、
結局
望みを手にした故の奴隷の贅沢なのでしょう。

奴隷の朝は早いですよ。明日も頑張りましょうね?

No.51」

以上で終わります。

読んでくれた方ありがとうございました!

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