白露「いっちばーんになれない」【艦これ】 (62)
未着任の春雨と山風は出ません
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『いっちばーん』
・正確には「白露が一番」で、それを短くするといっちばーんになる。
・笑顔をキメて片腕を上げたポーズだと、もっとよさげ。
・那珂ちゃんさんと被らないようにする。
・いっちばーん!
――白露のいっちばーんなビボー録より抜粋
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
時雨――休日にて
時雨「あ、また当たった」
村雨「時雨姉さんはほんとによく当たるね。いつもガリガリ君の当たりが出てない?」
時雨「そうでもないよ。雪風と勝負したことあるけど、あっちは11回連続で当たり出したけどボクは10回で止まったし」
村雨「そんな勝負が成立する時点でおかしいような……」
時雨「そうかなあ。姉さんはどう思う?」
白露「あたしはまた外れ。食べる速さなら一番なのに!」
時雨「あはは、それ当たりには関係ないじゃないか。それにトラックは暑いんだから、もっと味わって食べないともったいないよ」
白露「味わって早食いしてるから大丈夫!」
時雨「もう、姉さんってば」
白露「でも時雨はほんっとに強運だよね。こればっかりは天性だしすごいよ」
村雨「そうよ、私たちの中でも一番なのは間違いないでしょうし」
時雨「一番かい?」
村雨「そうじゃない?」
白露「……そーだね」
村雨「幸運のお裾分けとかできないのかな?」
白露「何それ、すっごくほしい」
時雨「……じゃあ今日はどれだけ当たりが続くかに挑戦してみようかな。たくさん当たったら姉さんも村雨も食べてよね?」
白露「マジ? やった~!」
村雨「いいじゃない。姉さんたちがお腹を壊しても困るもんね」
時雨「なんだかやる気が出てきたよ。僕の幸運に乞うご期待かな?」
白露「大丈夫、時雨なら絶対にできるから! だからアイス頼んだよ!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
村雨――起床時にて
村雨「うーん、これはどうなのかな……?」
白露「どしたの、村雨?」
村雨「服がなんだかきつくて……もしかしてふと……ううん、そんなはずは……でも時雨姉さんとアイスいっぱい食べてるし……」
白露「あー、これはあれかぁ」
夕立「村雨は大きくなったっぽい」
村雨「やっぱり!? どうしよう……」
白露「なんでそんなに凹むかな。大きくなったのはおっぱいでしょ」
夕立「ぽい」
村雨「でも、お腹周りもだらしなくない? ここだけ大きくなるなんて」
白露「平気でしょ。ま、スタイルのバランスなら白露が一番だけど!」
夕立「お姉ちゃんは夕立とそんなに変わらないっぽい」
白露「何おう! 比べてみるか、夕立!」
夕立「別にいいけど……」チラリ
白露「ん?」ツラレ
村雨「本当に変じゃないかな?」ユサユサ
夕立「どんぐりの背比べっぽい!」
白露「ぐあああっ!?」
夕立「村雨は白露型の中じゃ一番体つきが大人っぽい。だから平気っぽい!」
白露「……そうだよね、やっぱ」
村雨「うーん……」
白露「もうそんなに気になるなら新しい服を買えばいいんじゃない? 村雨はおしゃれさんだし、いい気分転換にもなるでしょ」
村雨「そう、かな? それなら、よければ今度の休みにみんなで行ってみない?」
白露「いいね。じゃあ一番いいのを買わないとね!」
夕立「その前にお姉ちゃんは夕立と出撃っぽい!」
白露「そういえばそうだった……とにかく村雨は心配しなくてよし!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
夕立――カスガダマ沖海戦終了後にて
鳥海「今回のMVPは」
白露「あたしがいっちばーん!」
鳥海「夕立さんですね。戦艦一隻に巡洋艦二隻を撃破とは、さすがです」
白露「そんなぁ!」
夕立「素敵なパーティーにしてあげたっぽい!」
加賀「そうね。後方から見てたけど獅子奮迅とはああ言うのかしら」
霧島「まさかル級を単独の砲戦だけで沈めるほどとは、この霧島の目をもってしても見抜けませんでした」
榛名(逆に戦艦組が仕事してないと思われてそうですが榛名は大丈夫です!)
鳥海「そんな夕立さんには司令官さんからこちらを預かっています。日頃の活躍もありますので」
夕立「間宮券! どうもありがとうございます! っぽい」
霧島「私たちには何かないんですか?」
榛名(どうして霧島は自分から火中の栗を拾いに行くような真似を……でも榛名は大丈夫です!)
鳥海「お二人は……駆逐艦を一隻ずつですか」
榛名(秘書艦さんに生暖かい目で見られても榛名は大丈夫です!)
鳥海「その、もっと夕立さんを見習っていただけると司令官さんも助かると思いますよ」
夕立「それなら次も夕立が一番活躍するっぽい!」
白露「いっちばーん……」
夕立「お姉ちゃん、早速食べに行こう。今日は夕立が奢るっぽい!」
白露「え、マジ? やったー!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
○時雨
・白露型の頼りになる次女。
・本人は大人でクールなつもりらしいけど、そうでもない。
・提督はダックスフントみたいって言ってた。ちょっと分かるけど失礼しちゃう!
・改二艤装に更新したのはいいけど、ライバルの雪風が異動して少し寂しそう。
・この子がいるなら色々大丈夫。
・時雨煮は作れない。
○村雨
・白露型の流行の最先端を行く三女。
・髪形や服装で迷った時は真っ先に相談に行く。
・本人はお嬢様を意識してるみたいだけど、お嬢様然とした鈴谷と熊野のどちらに似た雰囲気かは姉妹の中でも意見が分かれる。
・あたしは熊……鈴谷にしておいてあげよう。
・時雨がちょっと天然入ってるからか、たまに時雨の姉と間違われる。
・電磁ナイフと指向性の爆弾を夕張さんに装備させられたことがあった。
○夕立
・白露型が誇るケルベロス。
・前門の綾波、後門の夕立と訓練中に誰かが言ったらしい。
・実際、あたしならそんな状況は全力で避けたい。
・改二になってから、一層ぽいぽい言い出すようになった気がする。
・髪を梳かれるのが好き。
・着任してこない春雨のことで提督を困らせたことがあった。でも気持ちはすっごく分かる。
・忘れてた、四女。
短いですが、とりあえずこんな感じ。
秋イベやりながら全三回か四回更新の予定。
春雨の前に秋月やプリンから掘らなきゃならないんでさあ……
とりあえずE3に嫁を投入して大正解だった(掘れたとは言ってない)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『一番』へのこだわり
白露は一番艦である。
白露は長女。
一番は特典が多い。
目指すべきは一番。
よって白露は一番である。きゅーいーでぃー。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
五月雨――訓練中にて
五月雨「避けてえ、お姉ちゃん!」
白露「はいはーい! お箸持つ方に避けるよ!」
五月雨「逆に転蛇します!」
白露「ってなんで真っ直ぐ突っ込んでく――」
五月雨「あれぇっ!?」小破
白露「うわーっ、しまった!」小破
五月雨「お姉ちゃん、大丈夫!?」
白露「うぅ、また衝突するなんて……でも訓練中でよかったあ……」
五月雨「ごめんなさい!」
白露「あー、いいのいいの。今のはあたしの不注意でもあるんだし。それより怪我してない?」
五月雨「うん、お姉ちゃんこそ大丈夫?」
白露「もっちろん! なんてったって一番だからね! 打たれ強さだっていっちばーん!」ツー
五月雨「お姉ちゃん、血! 鼻血が垂れてる!」
白露「あ、なんか急に目の前が暗く――」
五月雨「お姉ちゃーん!?」
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白露「うーん……」
五月雨「あ、お姉ちゃん。体はどう?」
白露「よく寝たぁ。でもなんで五月雨が?」
五月雨「……もしかして記憶が」
白露「え? 待ってよ、ちゃんと思い出すから」
五月雨「う、うん」
白露「あたしは記憶力もいっちばーん」
五月雨(それで思い出せちゃうんだ)
白露「あ、また衝突しちゃったのか。くそー、艦娘になった今度こそはぶつからないって決めてたのに!」
五月雨「ごめんなさい……ドジで本当にごめんなさい……」
白露「わわっ、待ってったら。あたしは別に怒ってないよ」
五月雨「お姉ちゃんを気絶させちゃったし、こんな迷惑をかけるドジなんて……」
白露「まあまあ、五月雨ってば頑丈だしすごいじゃん」
五月雨「そんなの関係ないよ」
白露「五月雨がそうやって変わろうと……一番努力してるのは知ってるし、あたしが気にしてないんだからそれで問題なし。でしょ?」
五月雨「でも訓練中に事故を起こしちゃったんだよ?」
白露「そうだった……まー、さすがに提督も怒るかもだけど、その時は一緒に怒られてあげるよ」
五月雨「お姉ちゃんまで?」
白露「避けられなかったのはあたしもだし、箸を持つほうってどんな指示よって話になっちゃうし。その後でもうドジっ子なんて言わせないようにしていけばいいんじゃない」
五月雨「……ありがとう。私、決めた。もうドジっ子なんて言わせないんだから!」
白露「うんうん、その意気その意気」
五月雨「新しいタオル持ってくるね、お姉ちゃん!」
白露「気をつけてよ」
五月雨「大丈夫、いくら私でもこのぐらいは――ほあああああっ!? 角に小指ぶつけた!? なんでっ!?」
白露「やっぱドジだね、あの子。一番の頑張り屋なのに」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
涼風――その後にて
涼風「姉ちゃん、生きてるかぁ!」
白露「生きてるよ! どしたの、涼風?」
涼風「あれ、なんか聞いてた話と違うな。危険が危ないって五月雨が言っててさ」
白露「意味分かんないし。あ、なになに。もしかして心配してくれたの?」
涼風「てやんでえ! 当ったりめえだろ!」
白露「……なんかごめん」
涼風「なんもないならいいけどさー。五月雨も五月雨でもうちっと落ち着けばいいのに」
白露「あの子も悪気はないんだから許してあげてよ」
涼風「あたいだって怒ってないよ。それよりお粥作ってみたんだ、怪我人にはこれがいいって聞いて」
白露「もしかして、あたしのために?」
涼風「……じゃなきゃ作らないって」
白露「あーもう、涼風はいい子だなあ」
涼風「褒めたってなんも出ないぞ!」
白露「もしかして食べさせてくれるの?」
涼風「甘えんな!」
白露「えー、食べさせてくれないの? どうしてもダメ?」
涼風「そんなに食べさせてほしいのかよ?」
白露「こんな機会なんて滅多にないし」
涼風「ぽんぽん衝突したり怪我されてたまるか!」
白露(ほんと、いい子だなぁ)
涼風「もう置いてくから姉ちゃんが好きに食べてよ。器は後でまた取りに来るからさ」
白露「うん、分かった」
涼風「へへっ、でも大したことなさそうでよかったな」
白露「……いっちばーん」
涼風「何か言ったかい?」
白露「んーん、なんでもないよ。なんでも」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
○五月雨
・白露型を震撼させる六女。
・五月雨の行く所、犬は棒に当たり猿は木から落ちるという。
・時雨が幸運なら五月雨は波乱。別に五月雨が悪いわけじゃないはずだけど。
・よくよく考えると、あたしって結構な被害者なのかも。
・その一方で五月雨はがんばる。すごくがんばる。
・空回りしてるんじゃなくて、五月雨が奮闘してるからこの程度で済んでるんだと考えよう。
・でもドジっ子の汚名を返上した姿をちっとも想像できない。
○涼風
・白露型の気さくな末女。
・豪快で威勢がいいんだけど、本当は繊細で気配りのできる子。
・料理もなかなか上手。しかも凝ったのを作るのもざら。
・改白露型が一人しかいない時期が続いていたからか、自己紹介で特型と大雑把なくくりで呼んだことがある。
・白露型でいいのに、とあたしが言った時の顔は今でも思い出せる。
・五月雨と同じ服装なのは涼風なりの気遣いもあるのかも。
・今だと海風たちと同じような服を着てみたいのかな?
今回更新分はこんな具合で。涼風のしゃべりが難しい……
この三連休中は二日出勤しなきゃならんので、秋イベがあまりできない代わりにSSは逆に捗りそうです
Guten Morgen!
というわけでプリンが着任しました!
秋月? 秋月はそうねぇ……E3面白くないし。まあ、そうなるな。
白露型がかわいいのは世の真理。されども自分にそれを伝えられるのかは自信なし。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『豆腐メンタル』について
・精神的に打たれ弱いとこう言われるらしい。
・あたしはどうなんだろ?
・馬に蹴られたら砕けそう。
・でも豆腐の角に頭をぶつけて死んだ人がいるらしい。
・つまり……実は結構硬い? 謎が深まった。
・とにかく人生は塞翁が馬。艦娘だけどね。
・木綿より絹豆腐のほうが好き。
・涼風の作る麻婆豆腐は辛い。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
江風と海風――川内型との合同演習にて
神通「今のは江風が一番よく動けてましたね。海風もなかなかよかったです」
海風「ありがとうございます」
江風「んっ? 聞いたかー、白露の姉貴。江風が一番だってさ?」
白露「なかなかやるじゃん」
江風「きひひー、悪いねー。江風がいっちばーン」
白露「……んー」
神通(今のはどうでしょうか……釘を刺したほうがいいのか、それとも)
海風「浮かれすぎですよ、江風」
江風「んっ、ごめンごめン」
神通「海風の言う通りです。確かに江風が一番動けてはいましたが、一番動ける者が一番の戦果を挙げられるわけではありません。その逆も然りです」
江風「んっ、分っかりました」
海風「あの、後で私がちゃんと言っておきますから」
神通「ええ……では帰投しましょう。姉さんと那珂ちゃんもそろそろ終わる頃でしょうし」
江風「ふー、おつかれおつかれー!」
白露「よーし帰投だよー。帰るのはあたしが一番なんだから!」
海風(白露姉さん……)
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海風「白露姉さん、先ほどは江風がすみませんでした」
白露「へ? なんで謝るの? 江風が何かしたっけ?」
海風「調子に乗って姉さんに失礼な真似を」
白露「あー、あれか。あれは確かにね」
海風「あの子も悪い子じゃないんですけど……」
白露「頭にきました」キリッ
海風「そんなに……ですか?」
白露「ちょっと、今のは笑うとこ!」
海風「す、すみません……どういうことなんですか?」
白露「すべった冗談の説明しろとかひどい!」
海風「ご、ごめんなさい」
白露「今のは加賀さんの真似」
海風「あっ……私、加賀さんには会ったことないので……」
白露「あちゃー、最初っから人選ミスだったか。面白いお姉さんなんだよ、あの人」
海風「あの、それより」
白露「江風のこと? そうだね……あんまり気にはしてないつもりだけど、あのぐらいで天狗になられちゃ困るかな」
海風「言って聞かせます。姉さんこそ大丈夫なんですか? 悔しそうでした」
白露「そりゃ悔しいに決まってるじゃない。一番になれなくて。でもさ、あそこであたしが怒ってもただの嫉妬じゃん」
海風「姉さんはやっぱり姉さんなんですね……」
白露「えーっと?」
海風「姉さんは一番だっていうことです」
白露「よく分かんないけど嬉しい!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
○江風
・白露型随一の夜戦バカな九女。
・同好の士の某川内さんとよく一緒に夜に騒ぐ。
・夜は静かに! お肌にも悪いし、なんて村雨は怒ってた。
・もし妹じゃなかったらケンカ友達みたいな関係だったのかもしれない。
・この前、自己紹介で噛んだせいで一部の艦娘からナンナちゃんと呼ばれてる。そのうち忘れられるまでの辛抱だよ、江風!
・そうこうやってる内に今度は何故かまろんとか呼ばれて恥ずかしがってた。
・まろーん。
しまったー! 某軽巡さんって書かないとばればれじゃん! 逆だよ逆!
○海風
・白露型切っての優等生である七女。
・隠しても隠しきれないお嫁さんオーラが漂ってるような。
・もしかすると一番近くて一番遠い妹なのかもしれない。
・海風から下は改白露型、あるいは海風型なんだけど海風本人は海風型と呼ばれるのを嫌がってるような?
・川内型とは意外に接点が多くて、特に神通さんに結構気に入られてるみたい。
・朝から晩まで神通さんの訓練に付き合わされても付いていけるのには、さすがのあたしもすごいと思った。
・たぶんシスコン。江風をすっごく大事にしてる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
あたしは一番になれない。
張子の虎、空気、影の薄い長女。
妹たちに勝てない。みんな、どこかで先に行ってしまっている。
どうでもいいようなことでなら一番になれるけど艦娘として大事なことでは何も。
たまに妹たちが怖くなる。
いつか、あたしなんか除け者にされてしまうかもしれない。
姉らしいことができないあたしは必要ないって思われてるのかも。
それでも、今日もあたしは謳う。一番だって。
だって、それがあたしなんだから。
はい、弱音はおしまい!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
白露「昨日は時雨や海風たちとご飯。しかも色々分けてもらえちゃったし」
白露「あー、村雨じゃないけど太っちゃうかも」
白露「どうして一緒に食べるご飯ってこんなに美味しいんだろ?」
白露「まあ妹に甘えるのは長女としてはどうなのって話だけど」
白露「たまには逆に奢ってあげたいなぁ……や、いっそ作っちゃってもいいな」
「話は聞かせてもらいました!」
白露「大淀さんだーっ!」
大淀「私があなたの悩みを解決してみせましょう!」
白露「えー……」
大淀「ちょっとお願いしたい任務があるんです。あ、ちゃんと提督の許可も下りてる正規の任務なのでご安心を」
白露「うーん……そういえば非合法の任務なんてあるんですか?」
大淀「ここだけの話、鎮守府の闇は深いんですよ……提督も大本営や秘書艦の目を盗んで夜な夜な」
鳥海「勝手な話を作らないでください」
大淀「あら、鳥海。ごめんなさい、つい出来心で」
白露「あたしにご用でも?」
鳥海「ええ、大淀さんがどう言ったかは分かりませんけど任務をお願いしたいんです」
白露「是非とも聞かせてください」
大淀(私の時と態度がまるで違う……どういうことなの?)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――そして姉のいない日。
時雨「今のままじゃ、まだ第一線を任せるわけには行かないね」
江風「あンだよ、あたいの動きじゃ不安だってのか?」
時雨「率直に言えばそうだね。背中を任せるには頼りないし、逆に江風を守るのをばかり意識しながら戦わなくちゃならなさそうだ」
江風「……白露の姉貴よりは動けると思うンだけどな」
時雨「冗談はよしてよ」
江風「……」
時雨「もしかして本気で言ってたのかい? 僕は姉さんと一緒に組んでも不安を感じたことはないよ」
江風「けど前の訓練じゃあたいのほうが動けてた」
時雨「そういう反応が出てしまうようじゃ江風はまだまだかな。それに誤解もあるようだけど、姉さんは僕や夕立と遜色ない戦果を挙げてきてるよ。結果は嘘をつかない」
江風「なら姉貴はなンで。手でも抜いてたのかよ」
時雨「姉さんはいつも言ってるだろ、一番だって」
江風「んっ、言ってンな」
時雨「姉さんは自分が一番になりたがってるくせに、全体を見た上で艦隊にとって一番いい行動を取ろうとしてるんだよ。僕が安全に雷撃できるように敵の護衛艦を引き付けたりとかね」
江風「……海風もそンなこと言ってたっけ」
時雨「だから姉さんは大本営とかに受けそうな華々しい戦果みたいなのはないけど、一緒に戦う僕らからすればすごくありがたいんだ。提督だって、そこをよく評価してるからね」
江風「それが白露の姉貴なのか?」
時雨「今度よく見てるといいよ。姉さんの練度が一番とは言わないけど、ちゃんと意味のある動きをしてるから」
江風「姉貴の動きか……」
時雨「どうやら課題も見えてきたみたいだね。じゃあ訓練を続けようか」
江風「んっ、よろしく頼む」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
海風「前から涼風に聞きたかったんですが、なんで五月雨姉さんと同じ服を?」
涼風「五月雨姉ちゃんがなんでだか一人だけ違う制服だったからな。あたいもあの頃は独りだけで制服も浮いてた気がするから、それなら姉ちゃんに合わせようかなって」
海風「さびしい思いをさせてごめんなさい……」
涼風「別にいいって。でも江風姉ちゃんばかりじゃなくて、もうちょっとあたいにも構ってほしいな」
海風「そうしましょう。涼風はその、もう改白露型用の制服は着ないつもりなんですか?」
涼風「先のことは分かんないけど今はこれが一番だよ。白露型の一人だって実感できるんだ」
海風「そうですか……」
涼風「涼風も姉ちゃんには謝らないと」
海風「あら、どうしてです?」
涼風「昔のあたいは自分を改白露型とも海風型とも名乗れなくて、ただ特型としか言えなかったんだ」
海風「でも涼風が何か悪いわけでもないのでは?」
涼風「かもしれなくても、名乗れなかったのは海風姉ちゃんに悪いことしたのに変わりないし」
海風「気にしないでいいですよ、そんなの。私だって海風型を名乗るのには抵抗がありますし」
涼風「そうなの?」
海風「気恥ずかしいというのもありますが、私は白露姉さんから受け継いだ改白露の呼び方に誇りを感じていますから」
涼風「お姉ちゃんも白露姉ちゃんが好きなんだねぇ」
海風「当然じゃないですか。好きというか大好きですよ、とても」
涼風(同じ好きなのに別の言葉みたいに聞こえる……)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
村雨「はいはーい、前から気になってたんだけど」
夕立「ぽい?」
五月雨「なんでしょうか?」
村雨「あなたたちって私のこと、お姉ちゃんって呼ばないわよね」
夕立「村雨」
五月雨「村雨、ですね」
村雨「もしかして私ってあなたたちに姉らしいことしてあげられてない?」
五月雨「そういうわけじゃないですよ! そうだよね、夕立?」
夕立「っぽい。夕立は時雨でも時雨っぽい。お姉ちゃんって呼んでるのは白露お姉ちゃんだけっぽい」
五月雨「私もですね……お姉ちゃん以外は呼び捨てちゃってます」
村雨「理由聞いてもいい?」
五月雨「うーん……といってもこれといって理由がないような。自然と呼び捨てちゃってましたし」
夕立「夕立は白露お姉ちゃんは姉として尊敬してるから他の呼び方はしたくない。時雨や村雨は好きだけど、尊敬とはちょっと違う。だから呼び捨ててる……っぽい」
村雨「ふむふむ。つまり白露姉さんは特別だと言いたいのね?」
五月雨「そうなっちゃうんでしょうか?」
村雨「やっぱりそれって私にはお姉さんらしさが欠けてるってこと?」
夕立「そうなるっぽい!」
五月雨「そんなことはないですよ! 村雨……お姉ちゃん?」
村雨「……ありがとう、五月雨。でも取って付けたように言われてもね」
夕立「村雨お姉ちゃん……やっぱり村雨でいいっぽい」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
白露「ただいま。みんな元気にしてた?」
時雨「お帰りなさい」
夕立「お帰りなさいっぽい!」
白露(真っ先に来た……そういうとこ、やっぱり犬みたい)
時雨「そのクーラーボックスは?」
白露「みんなの分のお土産だよ。ほら秋刀魚」
五月雨「大漁ですね! でも、どうしたんです?」
白露「北方の鎮守府さんのお手伝いでね。大淀さんがソナーとかライト積んで漁の手伝いして、あたしと夕雲がその護衛とお目付け役みたいな? それで任務が終わった後にお礼ってことで分けてもらえたんだ」
五月雨「北はそんなこともやるんですね……」
白露「あ、それと今度はちゃんと衝突しなかったからね。タンカーと漁船なら同じようなものだよね?」
五月雨「違うんじゃないかな……」
村雨「はいはーい。もしかして任務って釣りだったの? それなら私にも声をかけてよ。姉さんったらずるい」
白露「ごめんごめん、急な話だったし。あと村雨って釣り好きだったっけ?」
村雨「最近はまったの。あれは魚との格闘技だから。姉さんもやろ?」
白露「じゃあ今度教えてもらおうかな。あ、涼風。七輪用意してくれる? まとめて焼いちゃお」
涼風「がってんだ!」
夕立「なら夕立は大根をおろすっぽい!」
時雨「全部塩焼きにしていいのかい?」
白露「あー、それもそっか。涼風、なんか他にレシピってある?」
涼風「酢漬けとか揚げるって手もあるさぁ!」
白露「それも美味しそうだね。選り分けとか任せちゃってもいい?」
涼風「任せといてぇ!」
海風「お疲れ様でした、姉さん」
白露「ありがと。でも楽しかったし、あんま疲れてないんだよね。大淀さんも加賀さん並に面白お姉さんだって分かったし」
海風「そうなんですか?」
白露「そうなんだよ。漁をやってる間は秋刀魚食べたいってずっと言ってたのに、向こうの食堂に着いたら真っ先にカツレツにさらにカツカレーの特盛りまで頼むんだよ? 秋刀魚要素どこに行ったのか分からなくてもうね」
海風「もっと硬そうな人だと思ってましたけど……」
白露「いやいや、かなり緩いからね、大淀さんって。加賀さん知らなくても大淀さんなら一緒に分かるよね」
海風「そうですね……今度じっくり観察してみます」
白露「あと夕雲に今度一緒にお茶でも飲もうって誘われたんだけど海風も来てよ。一番艦同士、ね」
海風「でも私は……」
白露「大丈夫。海風は立派な長女だってお姉ちゃんが保証してあげる」
海風「……はい!」
江風「んっ、白露の姉貴」
白露「なあに、どうかしたの?」
江風「……あたいさ」
白露「……そんなしょぼくれた顔しないの。あんたは無駄に自信持ってるほうがかわいいわよ」
江風「なンだよ! 意味分かンないンだけど……でも、あンがと」
白露「さあ、江風も秋刀魚焼こ? 白露型なら料理はしっかりできないとね」
江風「んっ、焼くだけなンだろ? たぶン簡単簡単ーっ」
白露(あれ、これってもしかして料理ダメな子?)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『いっちばーん』
・『白露型が一番』という意味でも使う。っていうか、こっちが今は主流。
・なのに、あたししか言ってない。なんでー!?
・でも、いつか春雨と山風を迎えたらこう言おう。
・白露は白露なんだから。
・そして白露型は最高なんだから。
・いっちばーん!
――白露のいっちばーんなビボー録より抜粋
了
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
「俺は海風SSを書こうと思ったら、いつの間にか白露SSを書いていた」
な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった。
頭がどうにかなりそうだった……ソロモンの悪夢だとか改白露型だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしい「白露がいっちばーん」の片鱗を味わったぜ……
このSSの経緯はこんな所です。
各自で自分たちの白露型を愛でて補完していただければ幸いです。
ちょっと時間が経ってしまいましたが、皆さん乙ありです
春雨が着任したら続きは……書くかもしれないですし書かないかもしれないです
もやもやと春雨も絡めた話は思い浮んできてるので、それが自分でも読んでみたい内容になれば書きますとだけ今は
このSSまとめへのコメント
みんな可愛い