岡崎泰葉「もう一歩、その先へ」 (35)
―――事務所
加蓮「――泰葉の……」
李衣菜「ソロLIVE、ですか?」
P「ああ! 前々から企画してたんだけど、やっと実現したんだ!」
李衣菜「……おお」
李衣菜「おぉー! やりましたねPさんっ!」
P「おう! しかもかなり大きな箱でな、たくさんの観客に見てもらえるはずだ!」
李衣菜「ほんとですかっ? すごいなぁ……!」
泰葉「……ソロLIVE……」
加蓮「ふふっ。二人ともテンション高いよ……ほら、本人はこんなに落ち着いて――」
泰葉「――あわ、あわわわわ。わわわわわ」
加蓮「なかったね」
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泰葉「ほ、本当ですか、Pさん。私の……ソロLIVEだなんて」
P「ああ、本当だよ。泰葉の――泰葉だけの、大舞台だ」
泰葉「……ほんとにほんと?」
P「ふふ。ほんとにほんとだ」
泰葉「…………」ツネッ
李衣菜「……あにょひゃ、なんれじうんのほっへれしにゃいの? いひゃいんらけろ」グニー
加蓮「あはは、李衣菜変な顔~♪」ケラケラ
泰葉「夢じゃ、ないんですね……」
P「あぁ、夢じゃない。泰葉の努力が実を結んだんだよ」
泰葉「……えへ。必ず期待に応えてみせます。見ててください、Pさん」
P「もちろん。泰葉の全部を、LIVEにぶつけてみろ!」
泰葉「はいっ!」
加蓮「頑張って、泰葉! 私も全力でサポートするからっ!」
泰葉「うん、ありがとう加蓮っ」
李衣菜「…………」ムスッ
泰葉「李衣菜も、応援してくれる?」
李衣菜「あー痛いなー、ほっぺたがー」
泰葉「ふふ、許して李衣菜?」
李衣菜「……へへっ。泰葉の本気、見せてくれたらね!」
泰葉「ええ、任せて!」
李衣菜「よしっ、LIVEとなったらレッスンもたくさん入るよね!」
加蓮「衣装も決めないといけないし、忙しくなるよ!」
李衣菜「頑張るぞー!」
加蓮「おーっ!」
泰葉「二人とも、私のLIVEなのに……まったくもう」クスクス
P「はは、いいじゃないか。それだけ二人も嬉しいんだよ、きっと」
泰葉「……はい。そうだと……私も嬉しいな。ふふふっ♪」
―――
――
―
泰葉「――んー、ここの台詞は……」
李衣菜「――泰葉。どう、捗ってる?」トテトテ
泰葉「あ、李衣菜」
李衣菜「それ、LIVEの進行表――ってあれっ? ドラマの台本?」
泰葉「うん、LIVEもだけどこっちの収録もあるから……」
李衣菜「うわ、スケジュール大変だね……。なにか手伝えることある?」
泰葉「そうね……、ここの台詞、解釈が色々ありそうなの。演技付き合ってくれる?」
李衣菜「おっけ、任せてよ」
泰葉「ふふ、お願いね。えっと、『ちょっと待って、それどういうこと?』って台詞なんだけど……」
李衣菜「どれどれ……ふんふん、前後の台詞だと確かに、せつなそうだったり怒ってる感じでもいけるね」
泰葉「ね。やってみましょうか」
李衣菜「うんっ」
泰葉「『ちょっと待って……、それ……どういうこと……?』――どうかな?」
李衣菜「おぉー、短い台詞でもせつない感じ伝わってくるなぁ……さすが泰葉」
泰葉「う……つ、次は李衣菜の番っ」
李衣菜「へへ、じゃあ怒ってる感じで――『ちょっと待ってよ! それどういうこと!?』……あ、少し台本と違っちゃった」
泰葉「ううん、大丈夫。……うん、怒り気味の演技も良さそう」メモメモ
李衣菜「あ、ちゃんとメモするんだ。あはは、私も見習わないとなー」
泰葉「ふふ。どんなときも、何事も勉強ですから」
李衣菜「はー……ほんとストイックだよね、泰葉。尊敬する!」
泰葉「、~~っ」カァ
李衣菜「あは、照れてる♪」
泰葉「もうっ! ほ、ほらっ。もっと色々演技してっ」
李衣菜「ふふ、はいはいっと。――『ちょっと、待って……! それっ……どういうことッ!?』」バンッ
泰葉「きゃ……! こ、心の底から怒ってるみたいっ」
李衣菜「へへん、どーだっ」
泰葉「李衣菜だって充分やるじゃない……私も負けてられない!」
李衣菜「望むところっ!」
――ちょっと待って! それどういうことっ!?
加蓮「あ、あああ……!」オロオロ
ちひろ「? どうしたんですか加蓮ちゃん。中、入らないの?」
加蓮「な、なんか二人が今までに無いくらい本気で喧嘩してて……! どど、どうしようっ……!?」
ちひろ(その後、加蓮ちゃんは恥ずかしさでゆでダコになりました)
―――
――
―
泰葉「――これが、新しい私の衣装……」
http://i.imgur.com/Ryq43ld.jpg
加蓮「素敵……! 泰葉、すごく似合ってるよ!」
泰葉「ふふ、ありがとう。この衣装……最初にもらった衣装に似てるかも。意識してくれたのかな」
加蓮「あ、そういえばそうだね。懐かしいなぁ……私たちみんな、初めてもらったのは水色基調の衣装だったよね」
泰葉「そうそう。私がもらったのは『イノセントブルーム』で……」
加蓮「私が『エレガンスアクア』で、李衣菜は『ピュアスカイ』だよね」
泰葉「初心に返って、最初の衣装でLIVEするのもいいかもね」
加蓮「あはは、楽しそう♪ 李衣菜がまたあのワンピース姿を披露してくれるかが問題だけどっ」
泰葉「大丈夫よ、今の李衣菜なら」クスッ
加蓮「かなぁ? ふふ、まぁそれはそれとして。――泰葉、一人だって思わないでね」
泰葉「え……?」
加蓮「初めてのソロステージで、気負ってるんじゃないかと思ってさ。信じてるけど、一応ね」
泰葉「……うん。離れてても想いは一緒だって……私も信じてるから」
加蓮「ん、ならばよしっ」
泰葉「ふふっ……でも、あんまり心細かったら呼んじゃおうかな」
加蓮「あは。行くよ、だったら。一応振り付け覚えてるし」
泰葉「え――し、進行表見たけどステージに上がらないでしょう!?」
加蓮「だって覚えたいもん、泰葉と同じダンス。李衣菜も一緒にトレーナーさんに教えてもらってるし♪」
泰葉「そ、そんな無駄なこと……!」
加蓮「無駄じゃないですー、いつか泰葉のバックで踊るかもしれないじゃん?」
泰葉「そんなの、そのときになったらで……」
加蓮「あーもう、いいのっ。私たちがやりたくてやってるんだから」
泰葉「で、でも……二人にも別のお仕事が」
加蓮「はーいはい、この話は終わり終わり~。時間余ってるし他の衣装も着てみてよっ、ほらほら♪」グイッ
泰葉「あっ、ちょ、ちょっと加蓮っ! 分かったから引っ張らないで――!」
―――物陰
ちひろ「うひひ、泰葉ちゃんのナース姿~♪ ちっひっひっひ……!」パシャパシャ
―――
李衣菜(通りかかったらなんかちひろさんが泰葉にゲシゲシ蹴られてた)
李衣菜(幸せそうだったのでそのままにしといてあげた)
―――
――
―
がちゃり
泰葉「ただいま、戻りました……」フラッ…
ぼふっ
泰葉「はふ……ぅ」クテー
泰葉「ん……」ゴロゴロ…
P「――おかえり、泰葉。お疲れだな」
泰葉「はっ!!?」ガバッ!
泰葉「あ、やっ、こここれは違うんです! 疲れてたとかじゃなくて!」
P「いや、疲れてるだろ? だいぶスケジュールきついもんな……ゆっくり横になっててもいいぞ?」
泰葉「だ、大丈夫です。ご心配なく、Pさんっ」
P「……心配させてくれよ。泰葉は根を詰めすぎるからな」ポフ
泰葉「あ、う……」
P「確かによく頑張ってるけど……それだけじゃな。疲れたままじゃ、楽しめるものも楽しめないだろ」
泰葉「……はい。すみません」
P「ふふ、怒ってるわけじゃないよ。俺は怒らないけど、あの二人がどう思うかは……な?」
泰葉「……たぶん、引っ叩かれちゃいますね。『ちゃんと休め!』って」
P「じゃあどうする? 毛布持ってくるけど」
泰葉「そんなの、横になる以外選択肢がないじゃないですか。……お願いします」
P「あはは、はいよ」
―――
泰葉「――大変です、Pさん。このままだと……」
P「ん、どした?」
泰葉「ぁふ……ねむって、しまいそうでふ……」トロン…
P「よーし、プロデューサー子守唄歌っちゃうぞー」
泰葉「目が覚めてしまうのでやめてください」
P「大の大人が泣いてしまう」
泰葉「うふ、冗談です……歌ってくれるなら、私は……んぅ……」
P「歌わなくてもよさそうだな……本当に寝ちゃうか?」ナデナデ
泰葉「…………ん……」
P「……ふふ。聞こえてない、か」
泰葉「…………」スゥ…
P「おやすみ、泰葉――」
がちゃっ
李衣菜・加蓮「「戻りましたー!」」
P「うおっと!?」
李衣菜「あ、Pさん。お疲れさまですっ」
加蓮「お疲れさまー。って、あ! 泰葉だっ」
泰葉「すや……」
P「二人とも、しーっ。今さっき眠ったばかりだから」
加蓮「あー……やっぱり疲れ溜まってたんだ?」
李衣菜「スケジュールかなり詰まってたもん……仕方ないよ」
加蓮「私も釘刺したつもりだったんだけど……無理してたかぁ」
李衣菜「加蓮が『無理するな』って言ってもあんまり説得力が……」
加蓮「むー、なによぅ!」
李衣菜「おっと口が滑ったー、あはは」
泰葉「んん……」コロリ
P「静かにしろってのに」ペシ ペシ
李衣菜「あうっ」
加蓮「きゃぅっ」
李衣菜「えへへ、怒られた」
加蓮「もー、李衣菜のせいだからねっ」
P「まったく。……で、また今日も自主レッスンか?」
加蓮「あ、うん。ふふ、ついに完成したんだよっ」
李衣菜「泰葉に渡しといてくださいっ。リズムの取り方とか、歌い方のポイントとか、メモにまとめたんで!」
P「ん、了解。二人も忙しいってのに、よくやってるなぁ」
加蓮「ううん、泰葉に比べたら全然だよ。少しでも力になりたいもん」
李衣菜「ステージには一緒に立てないけど、気持ちだけは、って思っただけですから」
P「その気持ちを正直に伝えたらいいのに」
加蓮「言わなくてもいいのっ。ね?」
李衣菜「言わなくたって、きっと伝わってますからねっ」
P「……うん、そうだな」ニコ
泰葉「…………」
泰葉(……だから振り付け練習してたんだ)
泰葉(もう、なんて言葉にしたらいいか分かんないなぁ……)
泰葉(どんなに感謝の気持ちを伝えても、全部伝わる気がしないし……)
泰葉(――この想いは、ステージで……!)
泰葉「……くぅ……くぅ……」フニャ…
加蓮(……起きてるよね?)ヒソ
李衣菜(へへ、たぶんね)ヒソ…
P「どうした?」
加蓮「んーん、なんでも♪」
李衣菜「なんでもないですっ♪」
泰葉「……♪」
―――
.
―――
――
―
ちひろ「――さぁ、そろそろ開演ですよ。準備は出来てますか、泰葉ちゃん?」
泰葉「はいっ、いつでも……!」
ちひろ「ふふ、気合充分ですね♪ さっきまで小さなメモを見てましたけど、そのおかげかしら?」
泰葉「へっ……!? ち、違いますっ、そんなもの見てませんよっ」
ちひろ「ふふふっ♪」
泰葉「もうっ。本番直前に変なこと言わないでくださいっ」
ちひろ「あら、ごめんね♪ ……お守りみたいなもの?」
泰葉「……そうですね。一歩を踏み出す、勇気の魔法が掛かってるんです」
ちひろ「ふふっ……その魔法を掛けてくれた二人も、きっと観客席のどこかで見てくれてますよ」
泰葉「……はい!」
P「――よ、泰葉。ちひろさんもここでしたか」
泰葉「あ、プロデューサー……」
ちひろ「忙しいプロデューサーさんの代わりに、アイドルをリラックスさせようかと思いまして♪」
P「ほんとですか? 余計なこと口にして慌てさせたり……」
ちひろ「はうっ!?」
泰葉「くすくす……大丈夫です、プロデューサー。ちゃんとリラックスできましたから」
P「そっか? ならいいんだけど」
泰葉「ちひろさん、気にしないでくださいね?」
ちひろ「あぁ、泰葉ちゃんは天使……!」
P「あはは。……なぁ、泰葉」
泰葉「? はい?」
P「衣装、似合ってるぞ」
泰葉「……! はいっ。プロデューサーがくれた、私だけの衣装ですからっ」
P「ふふ、そうだなっ」
ちひろ「……ふふ♪」
泰葉「ついでに、今だから言いますけど……実は」
P「ん、なんだ?」
泰葉「――『ここ』に来たときの『ピュアドロップ』は、ちゃんとしまってあるんです」
ちひろ「!」
P「そう、なのか?」
泰葉「はい。一時はどうしようかと思ってたんですけど……やっぱり、私の歩いてきた道ですから。大切にしなきゃ、って」
P「……そっか。強くなったな、泰葉」
泰葉「いいえ……強くしてくれたんです。私を信じてくれた、みんなが」ニコッ
ちひろ「泰葉ちゃん……!」
泰葉「……もうすぐです。もうすぐ、始まります」
P「……ああ。泰葉のファンが、今か今かと待ってるぞ」
泰葉「はい、ここまで声が聞こえますから。……いっぱい、いっぱい楽しんできます。ファンに笑顔を届けるために」
P「うん」
泰葉「プロデューサーも、ちひろさんも……笑顔になってくださいね。私のステージで!」
P「……ああ!」
ちひろ「ここで、見てますよっ!」
泰葉「行ってきます――!」タタッ
泰葉(私は……もう、独りじゃない)
泰葉(いつも、いつでも、一緒にいてくれる人たちがいるから。小さな歩幅でも、一歩ずつ共に進んできた)
泰葉(今、ステージへ昇るのは私一人だけれど……積み重ねてきた想いがここにある)
泰葉(だから私は、)
泰葉(もっと先へ……大きく踏み出していくっ!)
たんっ……!
――わぁぁぁぁぁあああああああ……ッ!!
おわり
というお話だったのさ
ついにぷちデレラ揃ったよやったね!!!!
ピュアドロップとイノセントブルーム
前の事務所でもらった衣装、ここに来て初めてもらった衣装
そんな感じで落ち着いたよ
いつかその辺の話も書きたいね
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