化け物達の日常【オリジナル】 (7)

あらすじ

人間達が生活している表の世界
妖怪、怪物、モンスター等が生活している裏の世界

二つの世界は表裏一体であり、生活している種族と、そこから生じる多少の違い以外はほぼ同じだ。

この物語は、そんな裏の世界の日本で生活する1人の青年の日常物語


※だらだら更新※

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午前6時
表の世界でも裏の世界でも仕事、学校と言うものから逃げる事はできず、今日もまた忙しい一日が始まる。


「……よし。弁当と朝食完成」


1人の青年が満足そうな顔でエプロンを脱ぎ、食器を机に並べる。

彼の名前は鬼柳 鉄鬼(きりゅう てっき)(180歳)
日本の妖怪で最もメジャーな鬼の一族である

身長3mと、若い鬼の中ではかなり背が高く、力も強い。同年代の鬼の中では最強の部類に入る。
二本の長くて太い角が生えており、同種の憧れの対象だ。

食器を机に並べ終えた鉄鬼は、リビングから顔を出して二階に向かって声を張り上げる。


「鬼怒!朝飯出来たからさっさと起きろ!!」


鬼柳 鬼怒(きりゅう きぬ)(150歳)
鬼柳家長女で鉄鬼の妹

身長170㎝と鬼の中では小柄な方で、角も小さいし力も弱い(ただし胸は……)
小柄で愛らしい容姿をしている為、世間からの評判は良い。

鉄鬼が鬼怒を呼んでから2分後、階段を下りる音がし始めた


「ん~……お兄ちゃんおはよう」

「おはよう。さっさと食って準備しろよ」

「うん……」


ちなみにこの兄妹は両親が仕事の関係上一緒に住めないので、父親が購入してくれた家で2人暮らしをしている。

「鬼怒。もう友達はいるのか?」

「お兄ちゃん……もう6月だよ?そりゃあ沢山いるに決まってんじゃん」

「……中学の時の友達以外で……だぞ?」

「え……えっと、それは……はうぅ……」


鬼怒の声は次第に小さくなっていき、鉄鬼はそれを見てため息をつく。


「まあ、中学時代の友達が離れてないだけマシか」

「そ、そうだよ!僕はまだマシな方だよ!世の中には小中高合わせて友達が1人もいないか、いても片手で数えれる程度っていう悲しい人もいるんだから!」

「……お前の中学時代の友達も、片手で数えれたよな?」

「はうっ!?そ、それは言っちゃだめ!」

「へいへい。それより早く飯食え」


鉄鬼は知っていた。鬼怒に友達ができない理由が、見た目がアレなので友達や恋愛対象としてよりも、保護対象として見る奴の方が圧倒的に多いからだという事を。

だが、友達がいなくて一人ぼっちって訳でもないので教えたりはしていない。


「そ、そんな事よりお兄ちゃん!」

「なんだ?」

「そう言うお兄ちゃんは彼女の一人ぐらいできたの!?」

「できてねえよ。数人から告白されちゃあいるが、全部保留にしてる」

「保留!?お兄ちゃんモテるのになんで?」

異性に魅力を感じる要素は様々だが、人間の場合最も多いのが『容姿・金・地位』だろう。
裏の世界では一番に強さ。その次に容姿、金、地位と順番だ。

裏の世界では、不細工でも貧乏でも地位が低くても、強者であればそれなりにモテる。

鉄鬼はその並外れた強さに加え、所謂『肉食系』を体現したようなワイルドなイケメンであり、家事スキルがあって(親の仕送りとバイトの給料で)経済力もそこそこある。

無論、周りの女性が放っておく訳ないのだが……


「何でそんな勿体ないことしてるの?もしかしてお兄ちゃんってホモ?」

「何でそうなる!?ってかもしそうだったら保留にせずに断るだろ……」

「そ、それもそうだね。じゃあなんで?」

「守れる自信がねえからだよ」

「……へ?」

「付き合うってことは、男の俺には相手を守る義務が発生する。俺は複数人から好意を寄せられているし、複数人と恋愛することが禁じられている訳でもないから承諾する時は全員承諾するつもりだ」


鉄鬼は一度言葉を止めてお茶を啜る


「今俺に告白してきてるのは3人。1人でも不安なのに、3人ともなるとほぼ不可能だ。だから、だから全員を守れるぐらい強くなるまで俺は承諾しない」

「……なんて言うか、流石お兄ちゃんだね」

「安心しろ。彼女が何人できようが、最優先で守るのはお前だからな」

「え……も、もう!急にそんなこと言わないでよ……」


鬼怒は赤面し、鉄鬼から目を逸らす。


「肉親を守るのは当たり前の事だろ?親父達は守る必要無いぐらい強いんだし、そうなると必然的に最優先は妹であるお前になるに決まってるだろ」

「も、もう……照れるじゃん」

「兄妹なんだし、照れることねえだろ?」

「兄妹でも照れるの!」

よし、寝る

「ほ、ほら!そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ!」

「本当だな。少し喋り過ぎたか」


食器を片付け、支度を済ませる。


「行くぞ鬼怒」

「うん!」


家から学校までの距離は大体10㎞
俺と鬼怒は毎日走って登校している


「今日は少し遅いからペース上げるか」

「えー……汗かくからやだ~」

「んじゃあどうすんだよ?」

「おんぶ」

「……」


高校一年生にもなる妹が、兄貴におんぶして学校まで連れて行ってくれと頼む……駄目だこりゃ


「お前……兄貴におんぶされて学校に行って恥ずかしくねえのか?」

「全然?」

「……仕方ねえな」


結局は甘やかしちまう俺も……どうかしてる

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