女「息をするように人を殺せる力?」男「ええ」 (16)

女「あはは、そんなもの私に必要ないなぁ」

男「おっと、それは失礼しました」

男「ではこの話は無かったということに」

女「うーん、私としては本当にこの力は必要ないし、でもあなたが悪人に手渡したりしたらヤバイと思うし、そもそも本当か嘘なのか分からないからとりあえず貰っとくね」

男「…」

女「ま、まぁまぁ」

男「…欲しいんですね?」

女「…」

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女「だいたい君怪しすぎるよ、いきなり路地裏から出てきて「力要りませんか?」って」

男「そんな怪しい人間の言葉を間に受けるあなたもどうかも思いますけどね」

女「…」

男「現実逃避、いえ」

男「なんでもいいから縋りたい、ですか」

女「…まぁ、ね」

男「そんな不気味な力を欲しがるほどにあなたは辛いんですね」

女「…君、何を知ってるの?」

男「さぁ」

女「まぁ、その話は置いといてさ」

女「その力ってどうやって貰えるの?」

男「あ、もうあなたは持ってます」

女「へ?」

男「気を付けてくださいね、マジで死にますから」

女「ちょちょちょ!」

女「せめて扱い方くらいは教えてくれない?」

男「えぇ、いいですよ」

男「例えばあなたが道で怖い男にすれ違うことがあるとします」

女「うんうん」

男「あなたは当然謝りますよね」

女「うん」

男「だけど向こうは許してくれそうにもない、それどころかお金を請求してきた」

女「うんうん」

男「殺しますよね?」

女「殺しません!」

男「そんな時、あなたが息をするように」

男「朝起きた時に関節の骨がなるかのように、コタツで寝たらのどか痛くなるように」

男「ごくごく当たり前に、その男が死んでくれる力ですよ」

女「…つまり?」

男「あなたが望めば皆死にます」

女「返品!」

男「無理です」

女「はぁ!?」

男「この力は譲渡は出来ても押し付けることは出来ない、もちろん、放棄もね」

女「…」

女「…あなたは」

男「ん?」

女「…使ったの?」

男「そりゃもちろん」

男「死因を思い浮かべれば自然に殺すことも出来ます」

男「どころかありえない死に方、例えば」

男「何も無いところですっ転んだ挙句、頭を強打してそのまま意識朦朧となりながらもあるき続けてうっかり持っていたナイフで自分の喉を刺す、とか」

女「何それ…」

男「警察に言わせれば自己と事件両方の可能性を、って奴ですね」

女「…」

女「…」

男「嫌なら使わなければいいだけです」

女「…そうだね」

男「もっとも、そんなわけにはいかないでしょうけどね」

女「…だから、何を」

男「さあ」

男「だけど、あなたが欲しがっているように見えた」

女「…」

女「どこか出会ったこと、ある?」

男「さあ」

女「ま、いいや」

女「…一応感謝はしとく」

男「はははー」

女「何空笑ってんのよ、言っとくけど君ものすごく怪しいからね」

女「私じゃなかったら警察呼ばれてるから」

男「へー」

男「まぁ、でも」

男「その力を使わなかったのなら大したものですよ」

女「…」

大学


女(…)

女(…人を殺せる力、かー)

女(はは、アホらしい)

女(そもそも思っただけで殺すことが出来るわけないじゃん)

女(デスノートかな)

女(…)

クスクス

女(…まぁ、たとえこれが目に見えるデスノートだとしても)

女(…私とキラ君じゃ大きな違いがあるよね)








「あいつさー、まだ学校くんの?」

「今度はマジ、昨日以上に髪の毛切ってやろーよ」

「いいねそれ、ついでに服もぬがしてさー…」





女(…はは、どうしてこうなったんだっけ)

「おいっ!」

女「…っつ!」

「あははは!」

「お前さ、学校来るなって言ったよね?」

女「…私の勝手じゃん」

ガンッ!

「勝手じゃねーんだよ!」

「こいつマジ調子乗ってんね」

「ハサミで可愛くしちゃおうよ!」

女「ひっ…!」

「大丈夫、ちょっとイメチェンするだけだから…」

ジョキッジョキッ…

女「…ひっ…ぐ…うぇえ…」

「あはは、泣いてんじゃん!」

「はははははははははははは!!!」






男「おや、また会いましたね」

女「…」

男「月曜日からその顔は凄いですね」

女「…ねぇ」

男「はい?」

女「…本当に、私は人を殺せるの?」

男「ええ」

女「…それって例えば、突発的に起こったりしない?」

男「あぁ、それは大丈夫ですよ」

男「願った時に心の中にスイッチが浮かんでくるんです」

男「それを押さないと、殺せません」

男「まぁ、ゲームで言うとルート分岐みたいなもんですよ」

男「と、言うことは殺すんですか?」

女「ううん、殺さないよ」

女「良かった、そんな風にクールダウン出来る時間があるなら…」

女「…って、アホらしい、本当かどうかもわかんないのに」

男「へぇ、殺さないんですか」

女「殺すわけないでしょ」

女「どんな事があっても、人を傷つけることはいけないことなんだから」

男「…誰からそう教わったんです?」

女「…」

女「…さぁ、誰だっけ」

チリンチリン

「ん?」

女「…あ、こんばんは…」

「君は高校生かね?」

女「えっ、やっ、違います」

「あぁ、ごめんごめん、てっきり若く見えたからね」

「でもこんな夜道を一人で歩いていたら危ないよ」

女「えっ?」クルッ

「ほら、明るいところまでつきそうから」

女「は、はい」

女(…あいつ…警察見た途端逃げた…)

「…最近この辺で怪しい人が出てきてねー…」

女(…)

女(…私は我慢できるかな)

女(…ついカッとなって)

女(そんなどこぞの殺人事件の動機みたいなもんで)

女(いや、それよりもっと簡単に)

女(人を殺せるとしたら)

女(辛い現実から逃げるために、人を、あっさりと殺せるとしたら)

女(…息をするように)

女(殺せるとしたら、私は)

女(我慢できるかな)


「ここまでくれば大丈夫だね、じゃ、気を付けて」

女「…あ、ありがとうございます」

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