商業科生と吸血少女 (37)
中学の頃、成績が悪く、勉強などしたくなかった。
だけど、外部テストなどの成績は良かったため、ある程度の学校を勧められた。
だが、受験勉強をしないために偏差値低めの商業科と普通科の高校に入った。
人数の多い商業科のほうが入るのが楽だと思って入ったが、正直検定で忙しくて後悔していた。
進路も明確に決まらないまま、高校三年になったある日を境に、隣の席の子と話すようになった。
スレ立て&こんなにまじめに書くのは初めてなので、ぐだぐだになると思います。
読んでくださる方、ありがとうございます。
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二年の時に出席番号順の席になって以来、席替えなどしていない。
最前列一番前の真ん中右側の席は三年になっても変わらず、二時限目の後の休み時間、おなじみのお隣さんを眺めていた。
もう一人のセンター、羽生夏姫は黒髪ロングで身長が可愛らしい色白ギャルだ。
一人教室をきょろきょろと眺めている自分とは違い、グループの奴らに囲まれて声をあげて笑っている。
「はぁ・・・」
思わずため息をつく。
それが何に対するため息なのかわからなかった。
「あおい?」
そう呼ばれ、とっさに声のした方とは別の方を向く。
そして、声のした方にゆっくりと顔を向ける。
「あ・・・羽生さん、おはよう」
「おはよう。なんか、ため息ついけたけど大丈夫?」
「う、うん、大丈夫・・・」
大丈夫じゃない。
あまり話したことのない人に話しかけられるのは慣れない。
「いつもため息つけるけど、悩んでたりしない?ちょっと気になってて」
「悩んでは・・・癖みたいなもんだからつい」
「そうなんだ。あんまり、いい癖じゃないね」
「うぐっ・・・」
「あはは。あおいって話すと面白いよね」
「え?」
キーンコーンカーンコーン
授業開始のチャイムが鳴る。
先生がすぐ来てしまったせいで、続きは聞けなかった。
授業は数学だった。
「この公式は・・・」
初老の先生の声はゆっくりで低く、眠気を誘う。
ふと、隣を見る。
彼女が唇を噛んでいるのが見えた。
紅い色に目を奪われる。
血が出るほど強く噛んだのか。
よく見ると、何回も噛んだ跡が残っていた。
だが、さらに脳裏に焼き付いた光景があった。
ぺろっと舌を出し、血を舐めとった後、上唇で下唇を隠した。
満足そうに少し微笑んだその顔から目を離せなくなる。
横顔から見える瞳に恍惚そうな表情が見えた気がした。
視線に気づいた彼女が、こちらに目を向ける。
目と目が合った。
動けない。
そう思った。
「先生、ちょっとトイレ行ってきていいですか?」
「ああ、いいよ」
「失礼します」
そう言って彼女は席を立った。
思わず手を伸ばしかけたのを制する。
彼女の後ろ姿に普段とは違う違和感を感じる。
その違和感の正体がわからず、彼女が戻ってきても、授業が終わっても悶々としており、授業に集中できなかった。
そして、またいつもの休み時間がやってきた。
自分と彼女を除いて。
「あおい」
そう呼んだ彼女の声に今度は迷わず反応する。
「見た?」
彼女の言っていることが血を舐めていたことだとわかり、うなずく。
「私、血を飲むのが好きなの。普段は我慢してるんだけど、時々授業中とかに我慢できなくなるとああやって唇を噛んで舐めて我慢するの」
「血を飲むって・・・」
「安心して。吸血鬼じゃないわよ。人間よ」
「あ、うん」
「今のところ、誰の血も飲んだことないわよ。自分の血以外」
「そう、なんだ」
「ひいてる?」
「え?いや、別に・・・」
「初めて言ったんだけどね」
「え?」
「このこと、まだ誰にも言ってないの。パパやママにも。家族にも内緒なの」
「え・・・」
そんなこと、自分が知ってもいいんだろうか。
「もう見られちゃったし、あなたなら言わなそうだしね」
「まあ・・・」
言わないだろう。
「口止め料、払っとくね」
「え」
口に人差し指が押し付けられる。
血の味だ・・・
そう思ったころには、彼女は友達の方へと行ってしまっていた。
家に帰り、宿題を広げる。
だが、手を付ける気にならなかった。
「いたっ」
ノートの紙で指を切ってしまう。
血が出ていた。
思わず、眺めてしまう。
彼女だったら、舐めるのだろうか・・・
そんなことを考えたが、すぐにティッシュで拭き取り、絆創膏をつけると勉強を始めた。
何かしていないと、血を舐めていた彼女の幸せそうな笑みを思い出してしまいそうだったからだ。
秘密を知ってしまったことの罪悪感?
二人だけの秘密を共有している優越感?
彼女に関わると何かが壊れてしまいそうだ。
そう思ったが、惹かれてしまったことを隠すこともできなかった。
続きは翌日に書きます。
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