姫川友紀「本場の味、見せてあげるよ!」 (45)
————20:00 居酒屋
モバP「それじゃあ友紀、楓さん。今日の撮影お疲れ様」
高垣楓「お疲れ様です」
姫川友紀「お疲れ様ー!」
P「と、いうわけで今日は自分のオゴリだ。好きなもの頼んでいいぞ」
友紀「ほんと?やったー!じゃあビール…」
P「ただし、酒は明日に響かない程度にな」
友紀「うっ……わ、分かってるよ〜」
楓「じゃあ、私は日本酒をちょこっと」
P「楓さん俺の話………まあいいか」
友紀「前から思ってたけどプロデューサーって楓さんに甘くない?」
P「そんなことないって」
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店員「いらっしゃいませー!御注文はお決まりですかー?」
友紀「私、生中!」
楓「日本酒を、熱燗で」
P「ウーロン茶一つ」
友紀「あれ、飲まないの?プロデューサー」
P「俺が飲んだら誰がお前らを送って帰るんだ」
店員「ご注文以上でよろしいですかー?」
P「えっと、じゃあ適当に食べるものを…」
友紀「あっ、チキン南蛮がある!ねえねえプロデューサー、頼んでいい?」
P「え?ああ、もちろんいいけど」
友紀「すみません、チキン南蛮一つ!」
P「俺は……サバの味噌煮定食一つ」
楓「すみません、イカの一夜干しを」
友紀「おお、ガッツリ飲む気マンマンだね楓さん」
P「ほどほどにしてくださいよ……とりあえず以上で」
店員「かしこまりましたー」
友紀「楽しみだなー♪」ルンルン
P「そんなに好きなのか?」
友紀「ふっふっふ……プロデューサー知らないの?
チキン南蛮は全国に誇る宮崎県発祥の料理なんだよ!」
P「へぇーそうなのか」
友紀「地鶏の炭火焼と並んで宮崎県民のソウルフードと言っても過言ではないね!」フンス
楓「あら、鶏の炭火焼は私も好きよ」
友紀「おっ、さすが楓さん話がわかるね!
礼さんも来ればよかったのになあ」
P「声はかけたんだけどな」
楓「来られなかったんですか?」
P「社交ダンスのレッスンだって。長いこと休んでるし、
競技会も近いから今日は休めないんだと。
本人は来たがってたんだけどな」
友紀「まだ続けてるんだね、社交ダンス。私もやってみたいなあ」
P「おお、いいんじゃないか?昔そんな企画もあったし」
楓「懐かしいですね、社交ダンス部」
店員「お待たせいたしましたー♪」
友紀「キター!」
店員「生ビール、日本酒熱燗、ウーロン茶と、チキン南蛮とイカの一夜干しでーす」
店員「定食のお客様はもう少々お待ちいただけますかー?」
P「あっ、はい」
店員「恐れ入りまーす♪」スタコラ
友紀「よし、じゃーまずは乾杯かな!」
楓「ふふっ、そうね」
P「じゃあ、とりあえず今日一日お疲れ様でした」
『カンパーイ』
友紀「さぁ食べよ……え?」
P「友紀?」
楓「友紀ちゃん、どうしたの?」グビッ
友紀「………何これ」
P「何って、友紀が頼んだチキン南蛮だろ?」
友紀「チキン南蛮…………?」
http://i.imgur.com/CYcA1jq.jpg
友紀「これが?」
友紀「おかしい!おかしいよコレ!2アウト満塁で代打ガッツよりおかしいよ!」
P「何が?」
友紀「これだよ!これチキン南蛮じゃないじゃん!チキンカツじゃん!」
P「えー。でもタルタルついてるだろ」
友紀「そうだよ!タルタルがノッてるチキンカツだよコレは!」
P「それがチキン南蛮じゃないのか?」
友紀「だからぁぁぁぁぁあ!!」
………
……………
…………………
————翌日 モバマス芸能事務所
友紀「………っていうことがあってさ!」
篠原礼「————私がレッスンに行ってるあいだにそんなことが…」
友紀「そのときのプロデューサーのすっとぼけた顔がまた腹立つんだよ!」プンプン
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http://i.imgur.com/uPEX2Wh.jpg
姫川友紀(20)
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高垣楓(25)
礼「それで、楓ちゃんは?」
友紀「楓さん?ニコニコ笑いながら一人で飲んでたよ!
『友紀ちゃん、自分で頼んだものはチキンとたべなきゃだめよ……ふふっ』とか言いながら!」
礼「目に浮かぶようね」
友紀「とにかく、二人ともチキン南蛮がそもそもどういう料理なのかフワっとしか分かってないみたいでさ」
礼「まぁ……仕方ないんじゃないかしら」
友紀「だけどアレが標準的なチキン南蛮だと思われたらたまんないよ!
まじおこだよ!」
礼(まじおこ……?)
ちょっと休憩します
友紀「だから二人に言ったんだよ!」
友紀「『よーしわかった!そこまで言うんだったら私が本物のチキン南蛮ってやつを二人にに食べさせてあげる!』」
友紀「『本場の味、見せてあげるよ!』」
友紀「……ってね!」ドヤッ
礼「そう……で、どうしてその話を今私にするのかしら」
友紀「………」
礼「友紀ちゃん?目が泳いでるわよ?」
友紀「えーっと……
恥ずかしながら私こと姫川友紀は料理の方があまり得意ではなくてですね……」
友紀「実家のお母さんに作り方は教わったんだけどサッパリ上手くいかなくて……」
礼「…………」
友紀「お願い!礼さん、手伝って!!」
礼「はぁ……そんなことだろうと思ったわ」
友紀「プロデューサーの前で大見栄切った手前相談できる人がいなくて、
もう事務所で頼れるのは礼さんしかいないんです!!」
礼「……わかったわ」
友紀「えっ!?」
礼「私も郷土料理が誤解されたままなのは心外だしね」
友紀「………ありがとう礼さん!!
ミヤグニくんより好きー!」ギュッ
礼「もう……調子がいいんだから」クスッ
……………
礼(その日から、女子寮の厨房を借りて特訓がはじまりました)
…………
礼「友紀ちゃん、鶏肉は一口大に切るのよ」
友紀「えー?でも大きい方がおいしそうじゃない?」
礼「火の通りが悪くなるでしょ」
友紀「なるほど!」
…………
…………
友紀「タルタルソースはこんな感じかな」ペロッ
礼「問題は甘酢ね」
友紀「何か足りないよねー」
???「………?」ヒョコッ
…………
…………
礼「特別ゲストを連れてきたわ」
友紀「ゲスト?」
横山千佳「こんにちは、友紀ちゃん!」
友紀「おー千佳ちゃん!ゲストって千佳ちゃんのこと?」
千佳「おかあさんがね、これ持っていきなさいって!」ヨイショ
友紀「これは?」
礼「千佳ちゃんのお母様が作った甘酢よ」
千佳「お母さんのチキン南蛮とーってもおいしいんだよ!」
礼「レシピも教わってきたわ」
友紀「……千佳ちゃんありがとう!サカモトより好きー!」
…………
…………
————数日後 女子寮・食堂
楓「友紀ちゃんに呼び出されて来てみたけど、どうしたのかしら」
輿水幸子「ボクを呼び出したうえに待たせるなんて……
まあいいでしょう。ボクはカワイイ上に優しいので!」
鷺沢文香(……今日は積んでる本を崩そうと思ってたんですが……)
荒木比奈「まー何でもいいッスけどね。夏コミ落ちて抱えてる原稿もないでスし」
P「俺が当り前のように居るのは問題ないのか」
幸子「いいんじゃないですか?姫川さんにはプロデューサーだけは縛ってでも連れて来いと言われてますし」
P「えー」
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輿水幸子(14)
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鷺沢文香(19)
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荒木比奈(20)
ガラガラッ
友紀「あー、皆さまお揃いでしょうか!」
P「お」
楓「あら」
友紀「あっ、プロデューサーもちゃんと居る。
幸子ちゃん、ありがとね」
幸子「どうってことはありません!」フフン
P「友紀、こんなところにみんなを集めて何をするつもりだ?」
友紀「プロデューサー、この間私言ったよね。
本場のチキン南蛮を食べさせてあげるって」
P「え」
友紀「その約束を果たしに来たよ!」
P「もしかして………本当に友紀が作ったのか?」
友紀「もちろんだよ!!」フンス
P(友紀の手料理だと………!!)
P(食えるものが出てくるのか………!!!?)ゴゴゴゴ
荒木「プロデューサー、姫川さんに失礼なこと考えてないッスか?」
千佳「千佳も手伝ったんだよー」ヒョコ
P「千佳!帰ったんじゃなかったのか?」
礼「プロダクションの懇親会ということで親御さんの許可はもらってきたわ」
千佳「礼お姉さんのところにお泊りするの!」
P「礼さんそれ俺の仕事……」
楓「礼さんも手伝ったんですか?」
礼「ええ。少しだけど」
P「だったらまぁ……安心かな」ボソッ
友紀「………何か聞こえたけど、まあいいや。
それじゃあさっそくお披露目しようかな」
http://i.imgur.com/voy7FpA.png
友紀「これが本物の『チキン南蛮だよ!』」
P「見た目は……まぁ普通だな」
楓「でも、お店で出てきたのとは少し違いますね」
友紀「さぁ、食べて食べて!」サアサア
楓「いただきます」パクッ
幸子「誰よりも早く高垣さんが行った!」
P「だっ、大丈夫ですか楓さん!ヘンな味とかしませんか!?」
荒木「いい加減姫川さんもキレますよ?」
楓「………」
楓「おいしいっ」
友紀「よっし!」
文香「………おいしい、ですね……」モグモグ
幸子「鷺沢さんもいつの間に……ぼ、ボクもいただきます!」
比奈「アタシも一つもらっていいッスかねー」
礼「やったわね、友紀ちゃん」
千佳「やったね!」
友紀「礼さん、千佳ちゃん……
えへへ!二人ともありがとう!」
楓「すごい、お店で食べたのと全然違う」
礼「一番違うのは衣じゃないかしら」
楓「ころも?」
友紀「居酒屋で出てきたのはカツレツみたいにパン粉を使った衣だったでしょ?
本当のチキン南蛮は小麦粉と卵だけで揚げるんだよ」
礼「正確には小麦粉をはたいた後溶き卵にくぐらせるんだけどね」
比奈「へぇー衣だけでそんなに違うものなんスねぇ」モグモグ
文香(……おいしい……)モグモグモグ
幸子「さっきから鷺沢さんが黙々と食べ続けてるんですが……
あ、高垣さんそれボクが狙ってたお肉ですよ!」
楓「黙々とモグモグ……ふふっ」パクッ
幸子「あーーー!!!」
礼「大丈夫よ、まだ沢山あるから」
ワイワイ
P「………」ソーッ
友紀「待って、プロデューサー」
P「!」ビクッ
友紀「何か私に言うことあるよね?」
P「………スミマセンデシタ」
友紀「何が?」
P「うっ!」
友紀「プロデューサーは何が悪かったと思ってるのかなー?」ゴゴゴゴゴ
P「……正直に申し上げると、言うほど大したことはないだろうと侮っておりました」
友紀「それはチキン南蛮を?それとも私の料理の腕を?」
P「……………両方です」
友紀「フーン……」
P「すまん友紀俺が悪かった!許してくれ!そしてソイツを食べさせてください!
今日は仕事が立て込んで朝も昼もロクに食ってないんだ!!」グゥー
友紀「……よしっ!許す!」
P「ありがとうございます!!」
友紀「そのかわり条件が二つ」
P「何なりと!」
友紀「一つ、二度と私の料理とキャッツをバカにしないこと」
P「ハイ!!」
友紀「オッケー。……じゃあ、約束通り食べさせてあげる」
P「ハイ!って、アレ?二つ目の条件は……?」
友紀「だから、『食べさせて』あげるのが二つめ」
P「へ?」
友紀「はい、プロデューサー……あーん♪」ススッ
P「」
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