絵里「どうしたの?こんな時間に…」
『えっとね…えへへ、絵里ちゃんを予約しておこうかなーって!』
絵里「私を予約…?どういうこと?」
『まぁまぁ、それは置いておいて、ちょっと穂乃果とおしゃべりしようよ!』
絵里「今から?明日も朝練があるんだから、早く寝ないと起きられなく…」
『ちょっとだけだよぉ!あと10分だけ!ね?』
絵里「もう…仕方ないわね。少しだけよ」
『やった!』
絵里「それで?何の話がしたいの?」
『うーんと…』
絵里「……」
『えーっと…』
絵里「……」
『……』
絵里「…考えてないの?」
『うん…』
絵里「えぇ…ホントになんのために電話してきたのよ…」
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『あーそうだ!しりとり!しりとりしようよ!』
絵里「しりとり?もうわけがわからないんだけど…」
『いいからいいから!ほらいくよ!りんご!』
絵里「はぁ…じゃあ…ごまだんご」
『ゴール!』
絵里「ルール」
『る…る…ルーレット!』
絵里「トマト」
『時計!』
絵里「憩い」
『イノシシ!』
絵里「新聞紙」
『…ん?』
絵里「どうかした?」
『あ、ううん。気のせいかな?』
絵里「ほら、『し』よ」
『んっと…試合!』
絵里「勢い」
『い、息』
絵里「キツツキ」
『うわ、やっぱり気のせいじゃない!穂乃果が出したのと同じ文字が返ってきてる!絵里ちゃんすごーい!』
………
……
…
『あ…あ…見つけた!アクア!』
絵里「アラビア」
『うぇっ!?あ…あ……ダメだ、えっと…アホウドリ』
絵里「利回り」
『なにそれ…りす』
絵里「スパイス」
『スイカ。すごいねぇ』
絵里「感化」
『カルタ』
絵里「田畑。で、いつまで続けるのこれ。もう日付変わっちゃうわよ」
『た…た…えっ!?もうそんな時間!?』
絵里「もうそんな時間よ…ふわぁ…」
『ホントだ!!しりとりに気を取られてて心の準備が…!!』
絵里「心の準備…?」
『んんっ…いくよ絵里ちゃん…10、9、8、7…』
絵里「…?」
『…3、2、1、0!絵里ちゃんっ!』
絵里「は、はい」
『誕生日おめでとう!!』
絵里「……!」
絵里「………浦島太郎」
『いや、しりとりしゃなくて!!』
『…3、2、1、0!絵里ちゃんっ!』
絵里「は、はい」
『誕生日おめでとう!!』
絵里「……!」
絵里「………浦島太郎」
『いや、しりとりじゃなくて!!』
絵里「呆れた…予約ってこういうこと?」
『うん!一番におめでとうって言いたかったから…誰かに先を越されないように、絵里ちゃんをキープしとこうと思って!』
絵里「なにそれ…フフ、あはは…!あははははっ」
『お、おかしいかな…?というかごめんなさいだよね、こんな遅くに…』
絵里「…ううん」
絵里「すごく嬉しい。ありがとう、穂乃果…」
『絵里ちゃん…!えへへへ…』
絵里「お陰で17歳最後の時をしりとりなんかして過ごすハメになったけど」
『…そう聞くと、なんだかお間抜けさんな感じだねぇ』
絵里「ほ~の~か~?」
『あっ!ごめんごめん!穂乃果が誘ったんだよね、うん!』
絵里「ホントよ…何事かと思ったんだから…」
『あはは…』
『それにしても18歳かぁ…大人な響だよねぇ』
絵里「そうかしら?」
『そうだよ!だってコンビニで堂々とえっちな本を買っちゃったりできるんだよ!?』
絵里「いや、買わないけど…」
『「あなたは18歳以上ですか?」って聞かれて堂々と「はい」って答えられるんだよ!?』
絵里「だからそんなこと……ちょっと待って。普段そんな警告が出るようなサイトを見てるの?」
『え』
絵里「…穂乃果のえっち」
『わー!わー!違うよ!ほら、穂乃果ってドジだから、変な広告を間違ってクリックしちゃったり…!』
絵里「はいはい。そういうことにしといてあげる♪」
『絵里ちゃ~ん!』
絵里「フフ…!」
『もー…でもさ、やっぱり17歳と18歳じゃ全然違う気がするんだよねー』
絵里「そうやって比較されると、そうかも」
『でしょ。16歳と17歳じゃそんなに変わらない気がしない?』
絵里「たしかに」
『ね?高坂穂乃果(16)と高坂穂乃果(17)じゃおんなじ感じだけど、高坂穂乃果(17)と高坂穂乃果(18)じゃ…』
絵里「え、なんて?」
『だから、高坂穂乃果(16)と高坂穂乃果(17)だとそんなに変わらないけど、高坂穂乃果(16)と高坂穂乃果(18)だと…あれ、間違えた?えっと、高坂穂乃果(16)
と…』
絵里「ストップストップ!そんなに穂乃果穂乃果言われても電話越しじゃさっぱり伝わらないわよ!ぷっ…あははは!」
『あれー!?』
絵里「はー、おかしい…!」クスクス
『うーん…こういうところがまだ子どもなのかなぁ、穂乃果は』
絵里「そうねぇ」
『否定してほしかったよ…それに比べて絵里ちゃんは元から大人っぽいのに、この一年でどうなっちゃうんだろう』
絵里「何言ってるの。人が一年でそんなに変わるわけ…」
絵里「……」
『…絵里ちゃん?』
絵里「…ううん。なんでもない」
『うん…?』
絵里「…私ね、よく大人っぽいとか言われるけど、逆。ホントはとっても子ども…穂乃果の方が大人なんじゃないかってくらい」
『えー!?全然そんなことないと思うけど…』
絵里「そんなことある。私、けっこう穂乃果に甘えてると思うんだけど」
『そうかな?でも最近は一緒にいることが多いよね。おしゃべりもたくさんしてる』
絵里『そうそう、そういうのも含めて。でも、みんなの前では隠してる」
『…穂乃果には、隠さないんだ』
絵里「うん」
『それは…なんというか…うれしいかも』
絵里「えっと…迷惑じゃない?」
『それこそ全然そんなことない、だよ!』
絵里「そう…よかった…」
『でも……どうして?』
絵里「何が?」
『どうして穂乃果にはそんな話をしてくれるの?知られたくないから、隠してたんでしょ?』
絵里「…それは」
『…それは?』
絵里「どうしてだろ」
『えー』
絵里「うーん…説明が難しいわね…」
絵里「穂乃果の笑顔が……私の心……太陽…」ブツブツ
『おーい』
絵里「あ、ごめんなさい。とにかく、どうしてかわからないけど、穂乃果の前でなら素の私になってもいいかなって思えるの。…違うな、素にさせられるって言った方が近いかな。穂乃果といると優しい気持ちになるっていうか…って、それじゃ自分で素は優しい人間ですって言ってるみたいね…そういうことじゃないんだけど…」
『あ、あのさ!』
絵里「なに?」
『もしかしたら…そうだったらいいなーなんて思ってるだけなんだけどさ…』
絵里「うん?」
『えっと…あれ、でも自分でこんなこと言うのって変じゃないかな…』
絵里「もったいぶらないでよ」
『じゃ、じゃあ言う、けど…というか、今日思い切って聞くつもりだったんだけど…』
絵里「うん」
『穂乃果の前では、とか、穂乃果と一緒にいると、っていうのはさ…』
絵里「うん」
『穂乃果のことが好きだから…とか』
絵里「……」
『お、おーい』
絵里(…ああ)
『絵里ちゃーん…?』
絵里(なんだ)
『な、何か言ってくれないと…』
絵里(とても簡単なことだったんだ…)
『絵里ちゃ
絵里「そうね」
『! そ、そうって』
絵里「うん。…好き」
『…!』
絵里「私は、穂乃果のことが好き」
『そそそれって、likeじゃなくて…!』
絵里「ええ…loveよ。って恥ずかしいこと言わせないでよ…」
『穂乃果もっ!穂乃果も絵里ちゃんのことが好き!大好き!』
絵里「一応聞いておくけど、likeじゃなくて?」
『うんっ!!loveだよっ!!』
絵里「…は、恥ずかしくない?」
『絵里ちゃんのことが大好きだって気持ちに、恥ずかしいことなんて何もないよ…!!』
絵里「……」
絵里「…そっか。そうよね」
絵里(私は穂乃果のそういうところが好きなんだものね…)
『もう!ホントは誕生日パーティーが終わった後に告白するつもりだったのに!』
絵里「穂乃果が変なこと思いつくからじゃない」
『だって18歳になった絵里ちゃんを独り占めしたかったし…でも、うわぁー!電話で告白なんて穂乃果らしくないよー!』
絵里「フフ、そうかもね。代わりに明日、ちゃんと聞かせてくれる?」
『もちろん!何回でも好きって言う!』
絵里「い、一回でいいわよ…」
『一回じゃ足りないくらい好きなんだもん!』
絵里「そんなこと言ったら私だって何回も言わないといけなくなるわ」
『たくさん言い合おう?毎日言い合おう!』
絵里「それじゃバカップルじゃない…」
『いいじゃんいいじゃん!バカップル上等、だよっ!』
絵里「はいはい…考えておくわ。だから…今日はこの辺にしましょう?もう時間も遅いし」
『あ…うん、そうだね!そうしよう!あーでも眠れるかなぁ!』
絵里「なかなか眠れずに朝練に遅刻しました、なんてことにならないようにね」
『絵里ちゃんもね!』
絵里「…ええ。お休みなさい、穂乃果」
『うん!お休み絵里ちゃん!』
絵里「……」
『あ、最後にもう一度…』
絵里「!」
『誕生日おめでとう!これからも、よろしくね…!』
絵里「……」
絵里「…………はぁ」ボフッ
絵里(…一度にたくさんのことが起き過ぎて、頭が追い付かないわ)
絵里(でも、一つだけわかるのは…)
絵里(明日穂乃果と会ったとき、私たちは恋人同士だってこと)
絵里「……」ゴロン
絵里「…!」
絵里(着信が…希と、にこからね…)
絵里(LINEにも通知が…あ、メールも…って長!海未からね…)クス
絵里(読むのは…朝起きてからにしよう。なんだか疲れて…急に眠気が…ごめんね、みんな)
絵里(…それと……ありがとう)
絵里(ああ…そっか…これって、まんまと穂乃果に独り占めされちゃったってこと、ね…)
………
……
…
たった一年だけで、人がそんなに簡単に変わるわけがない…と言おうとしたけれど、現に私はこの一年で大きく変わっていた
去年の私はどんな気持ちで誕生日を迎えたんだっけ
生徒会長に選任され、来年は最終学年…自分のためにも、学校のためにも、より気を引き締めていこう…とか考えてた?
それが今年は…しりとりをして誕生日を迎え、えっちな本やサイトの話をして誕生日が始まった…
嗚呼…なんと気が緩んでいることだろうか
…でも、こっちの方がいい
絢瀬絵里は、こっちの方がずっといい
今年は誕生日を祝ってくれる仲間が、友達がたくさんいて…そして、穂乃果がいる
去年よりも少しだけ夜更かしした私は、去年よりもずっと幸せな気持ちで眠りにつき―――
―――寝坊して大事な朝練に遅刻…興奮してなかなか眠れず遅刻したと言う恋人と共に、18歳にして初めて正座でお説教をくらうのだった
終わり
読んでくださった方ありがとうございます。絵里ちゃん誕生日おめでとう!
前回のほのえり!
絵里「もうすぐ穂乃果が来るし、死んだふりでもしてみようかしら」
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