八幡「やはり俺の守護霊は間違っている」ルルーシュ「違うな。間違っているぞ!」 (163)




ルルーシュ「ここは……どこだ」

ルルーシュ「俺は確か……そうだ、ゼロレクイエムを成し遂げ、ゼロによって殺されたはず」

ルルーシュ「ふん、地獄はもっと暗い場所かと思っていたんだがな」

ルルーシュ「……しかし死者の国にしては、妙に生活感にあふれている」

ルルーシュ「まるで、何の変哲もない男子学生の部屋のようじゃないか。フハハ」

八幡「………おい」

ルルーシュ「………」

八幡「………」

ルルーシュ「誰だ貴様は!!」

八幡「お前が誰だ」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444295501


ルルーシュ(はっ!?しまった顔を晒してしまっている!!これでは皇帝が生きているとばれ……)

ルルーシュ(いや、そもそも現実なのか!?死者の世界でなく!?俺が死んでないにしてもこのシチュエーションはなんだ!?)

ルルーシュ(!そうだギアスがあるじゃないか!力が使えるのかわからないが試してみる価値はある!!)

ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。我が質問に答えろ」キュィィィン

八幡「どろぼ……わかった」

ルルーシュ(よし、ギアスは使えるな。ということは少なくともコードが移っているわけではない、か)

ルルーシュ「俺を知っているか」

八幡「知らない」

ルルーシュ「ブリタニア99代皇帝ルルーシュの名は」

八幡「聞いたことがない」

ルルーシュ(こいつが死ぬほど無知なだけか、それとも………)

ルルーシュ「ブリタニア帝国とエリア11についての情報を詳細に教えろ」

八幡「………」

ルルーシュ「これも知らないだと?なぜだ。ブリタニアは存在していないのか?」

八幡「そんな国の名前は過去にも存在していない」

ルルーシュ「んな!?……ということは何百年、いや何千年先か前の時代なのか?大して俺のいた時代と風景が変わらないのを見ると、
      パラレルワールドと仮定したほうが腑に落ちる。これもCの世界の意思だというのか」



八幡(泥棒にしては派手だなぁこの人。酔っ払いのレイヤーさんか?部屋間違えました的な。いやねーよどうやって家入った。やっぱ泥棒か)

八幡「あのぅ……うちには金目の物はありませんよマジで」

ルルーシュ「断じて泥棒ではない。信じろとは言わないが、すまない。頭が混乱している」

八幡(悪い人には見えないが……ダメ!八幡!それが騙される人間の兆候よ!ガルルルルルル)

八幡「と、とりあえず、名前聞いても?」







  * * *







八幡「はぁ。つまりルルーシュさんは世界を破壊し創造した悪逆皇帝であると」

八幡(頭の中を破壊して妄想してたの間違いじゃねーの)

ルルーシュ「ぐっ……。まあ要約するとそうだ」

八幡「そんで使命を全うし、命が絶たれたと思いきや今ここに、なぜか俺の部屋にいると」

ルルーシュ「……ああ」

八幡「………」

八幡(これがガチの中二病なのか。俺の比じゃねーな。女の子で眼帯してたらいいラブコメの予感だったんだけどなー)

八幡「ま、まあとりあえず俺は学校いかなきゃなんで。そろそろ下行かなきゃ妹も怒るだろうし」

ルルーシュ「あ、ああ。すまない。……ん?妹がいるのか」

八幡「まあ」

ルルーシュ「……そうか。大切にしろよ」

八幡「あ?お、おう。なんだよ急に」


コンコン


小町『お兄ちゃーん?起きてるー?遅刻するよー小町が』

八幡「起きてるぞー。つか俺をタクシー代わりにすんのやめろ」

小町『小町専用のタクシーでしょ?』

八幡「おう」

ルルーシュ「シスコンかお前は」

八幡「うるせー。千葉では当たり前の風景だ」

ルルーシュ「そうなのか?」


小町『誰かいるの?』

八幡「!」

ルルーシュ「!」

八幡「いやいや、小町ちゃん。自分の部屋にあげるような知り合いが俺にいるとでも?」

小町『ま、いるわけないよね』

八幡「即答と断定に傷ついたぞ」

ルルーシュ「友達がいないのか?」ヒソヒソ

八幡「今は黙ってろって」ボソボソ

小町「ほんとなにやってるのお兄ちゃん?」ガチャ

八幡「」

ルルーシュ「」


八幡「こ、こまち」

小町「ありゃ、なんにもない。どこに隠した~」

八幡「な、なにを」

小町「どうせ女の子がたくさん出てくるゲームとかやってたんじゃないの?」

八幡「いやほんとなんもないって。よくあるだろ?一人になると独り言多くなるやつ」

小町「えー……。それはちょっと小町的にポイント低いよ。ま、どうでもいいけどはやく降りてきてね」



ガチャン



ルルーシュ「………俺に気づかなかった、のか?」

八幡「………それはないだろ」

ルルーシュ「とりあえず俺も下に行こう」

八幡「だな。もしかしたらあらぬ誤解を与え、見て見ぬ振りをされた可能性まである」

ルルーシュ「どういうことだ?」

八幡「口にもしたくないっての……」






  * * *






小町「はやく食べちゃってねー片付かないから」

八幡「あ、ああ。……あのー小町さん」

小町「どうしたの?」

八幡「この人はなんか頭がアレで、酔ってうちに迷い込んだみたいなんだが、別に悪い人ではなさそうっていうか……」

小町「は?」

ルルーシュ「おい!もっとましな説明があっただろう!」

八幡「逆に気を使ったつもりなんだが」

ルルーシュ「酔って迷い込んだとか完全に不審者じゃないか!」

八幡「だから完全に不審者なんだよあんた」

小町「……お兄ちゃん」

八幡「……はい」

ルルーシュ「………」ゴクリ

小町「うぅ、お兄ちゃんには小町がいるから。だからそんな妄想の世界に逃げないで」

八幡「い、いや俺じゃなくてこの人が」

小町「そこには誰もいないよ!お兄ちゃん!目を覚まして」

八幡「へ?」

ルルーシュ「む?」

小町「イマジナリーフレンドとかいうやつでしょ?聞いたことあるよ小町も」

小町「お兄ちゃんがそんなになるまで気づかなかったなんて……ごめんね、お兄ちゃん」グスッ

ルルーシュ「ほわぁ!?なに妹を悲しませている早く慰めろ八幡!!」

八幡(いきなり呼び捨てかよ。つか外人だよな?こいつ)

八幡「いや、だからこの隣にいるー」

ルルーシュ「まて」スッ

八幡「おいなに人の妹に触れて……は?」

ルルーシュ「やはり。触れられないか」

八幡「ちょ、え、まじ?俺気づかぬうちにガチでようせいさん作っちゃってたの?」

小町「お兄ちゃぁん……」ウルウル

ルルーシュ「とりあえず今までのことは冗談ということにしておけ。ここでは俺は存在してない風に振る舞え」

八幡「お、おう」コクッ

八幡「あー小町今の冗談。ちょっと幽霊がいる風な感じで怖がらせようとしてただけだ。すまん」

小町「……ほんと?」

八幡「俺は小町には嘘はつかないだろ?」

ルルーシュ「………」

小町「そうだったかなぁ。って今嘘ついたばっかじゃないの?」ジトー

八幡「この世にはついていい嘘と悪い嘘があるだろ?そういうことだ」

小町「はいはい。ま、ほんとに大丈夫そうだけど、小町は深く傷つきました!」

八幡「悪かったって」ナデナデ

小町「んふふー。ちょっとだけ許す!完全に許して欲しかったら帰りにアイス買ってきてね?高いやつ!」

八幡「へいへーい。じゃあちょっと準備してくるな」

小町「2度寝しないでよ?」

八幡「おー」





  * * *





八幡「んで、どういうことだこれ」

ルルーシュ「お前が自分で答えを出していただろう。幽霊だ」

八幡「は?まじで言ってんの?」

ルルーシュ「そうとしか考えられないだろう。確かに俺は死んだ。ここは俺の知らない世界。存在を認識されず、触れられもしない」

八幡「俺に触れられるし見えるし話せるのは」

ルルーシュ「お前に取り憑いているからだろ?」

八幡「まじかよ……。ちょっとお祓い行ってくる」

ルルーシュ「まあそれがいいだろう。俺も咎人だ。たとえ霊体でもこんなところにいていいわけがない」


八幡「つーかこんなこと現実にあんのかよ……」

ルルーシュ(ギアスがあったくらいだから俺は驚かんが。むしろそれがきっかけになっている可能性が高い)

ルルーシュ(だとするとお祓いでどうにかなるとは思わん。なにか解放される条件があるのが必然)

ルルーシュ(人の願いを形にするのがギアス。であれば、こいつに取り憑いたのは彼の願いを叶えろということなのか?)

ルルーシュ(いや、それは短絡的すぎる。とりあえず今は情報を集めなくてはな)

八幡「おい、これからどうするんだ」

ルルーシュ「とりあえず学校に行け。学生の本分は勉強だ。お祓いなんかそのあとでいいだろう」

八幡「お前は?」

ルルーシュ「ルルーシュと呼べ。俺は当然お前に憑いて行く。なんせ俺は、お前の守護霊なんだからな。フフハハハ」

八幡「はぁ……」



八幡「やはり俺の守護霊が皇帝なのは間違っている」




***

とりあえずここまでコードギアスクロスだけど需要あれば書く。なければ依頼出しとく
時系列は原作1巻前日譚てことで

TURN 1



平塚「なぁ、比企谷。私が授業で出した課題は何だったかな?」

八幡「……はぁ、高校生活を振り返ってというテーマの作文ですよね?」

平塚「そうだな。それでなぜ君は犯行声明を書き上げてるんだ?」

ルルーシュ「フハハハ。言われているぞ八幡」

八幡(だまっとけ)

平塚「聞いているのか!君の目はあれだな、ゾンビみたいだ」

八幡「そうですね。倒れても起き上がる不屈の精神である次第です」

ルルーシュ「いちいち返しが的確だな」

八幡(うるせぇ……)

平塚「……君という奴は。まぁいい。言いたいことはわかるな」

八幡「すみませんでした。書き直します」

平塚「最初から素直でいてくれると助かるんだがなぁ…… 」


ガラガラガラ


ルルーシュ「まあ、あの内容では大衆には受け入れられないだろうとは思っていた」

八幡「ふざけんなよ。GOサイン出したのルルーシュだろうが」

ルルーシュ「これでいけるとは言ってない」

八幡「このやろう……」

ルルーシュ「しかし、一つわかったことがある」

八幡「なにが?」

ルルーシュ「お前を肯定することだけでは意味がないということだ」

八幡「作文のことだけで判断することか?」

ルルーシュ「ああ。お前を安心させる、認める、ということと喜ばせる、満足させるというのは直結しない」

ルルーシュ「褒めるだけが教育ではないように、道標となる必要があると判断した」

ルルーシュ「つまりは、八幡の理想の状態を叶えることを目指すべきということになる」

八幡「別に俺は今のままで十分満足してるぞ」

ルルーシュ「それは主観的、表面的なものだろう?何かないのか」

八幡「つってもなぁ」




ガラガラ



平塚「お、まだ居てくれたか。……今誰かと話していなかったか?」

八幡「い、いえまさか。すみませんすぐ立ち去ります!」

平塚「ああいやちょっと待て。一つ聞き忘れたことがあってな。君は部活をやってなかったな?」

八幡「まぁ、はい」

平塚「……友達はいるか?」

八幡「びょ、平等を重んじるのが俺のモットーなので、特に親しい人は作らないようにしてるんですよ!俺は!」

平塚「そうか!いないか!やはり私の目に狂いはなかったな」

ルルーシュ「失礼極まりないな」

平塚「よし、君にはペナルティとして奉仕活動をしてもらう」

八幡「え、今の会話の流れからどうしてそうなるんですか」

平塚「問答無用だ。ついてこい」ツカツカツカ

八幡「……はぁ」

ルルーシュ「いいじゃないか奉仕活動。八幡の腐った心根を矯正するにはぴったりじゃないか」

八幡「方針変わってからずいぶんな毒舌だな……」

ルルーシュ「そんなことはない。これもお前の……いや、俺たちのためだ」

八幡「はいはい。行けばいいんだろ」

ルルーシュ「ああ。……忘れていないだろうな。契約を」

八幡「……当たり前だ」







―――
――――――

*数日前*



八幡「ただいま」

ルルーシュ「ふむ。家族は帰宅していないみたいだな」

八幡「まあ共働きだしな」

ルルーシュ「妹は部活か?」

八幡「生徒会だ。つっても割と早く帰ってくるけどな」

ルルーシュ「なるほど。感慨深いな」

八幡「何が?」

ルルーシュ「俺の妹も生徒会にいたんだ。といっても正式役員ではないが」

八幡「妹いたのか。どんなやつだったんだ?」

ルルーシュ「……明るくて優しい子だった。さて、誰もいないのはちょうどいい。今後の方針について決めるぞ」

八幡「ん、おう。とりあえず除霊だな」

ルルーシュ「そうはいっても、場合によっては数万から数十万かかるがいいのか?」

八幡「げ、まじかよ。つってもこのままってのもな」

ルルーシュ「それにあの手の類は効果があるのか実証できない。無駄に金取られて終わることも想定しなければ」

八幡「確かにな。俺も非科学的なものは信じるたちではないし。つっても目の前に非科学がいることが証明の一つでもある」

ルルーシュ「それもそうだな。それは最終手段として、別の視点で考えてみるぞ」

八幡「例えば?」

ルルーシュ「俺が、あるいはお前が満足した時に成仏するとか」

八幡(守護霊っていうより地縛霊じゃねぇか。つか日本人には見えないけど成仏とか知ってんだな)

ルルーシュ「個人的にはそれが一番可能性が高い」

八幡「その根拠はどこにあるんだ。別世界の革命家が俺を喜ばすことに価値があるとは思えないが」


ルルーシュ(……ギアスについての情報も開示したほうがいいのだろうか)

ルルーシュ(少なくとも新聞、ニュースを見る限りギアスのような力が世界に悪影響を及ぼしてる事態はないようだが)

ルルーシュ(いや、これ以上ギアス関連に巻き込むのはやめておこう。必要であれば時期を見て、だな)

ルルーシュ「それは訳あって言えない。が、なんでも試してみる価値はある。少なくとも悪い話ではあるまい」

八幡「既にこの状況が悪い話なんだが。そんでルルーシュを満足させるにはどうしたらいい」

ルルーシュ「こちらから可能性を提示してなんだが、俺が満足することで状況が改善されることはないだろう」

八幡「は?」

ルルーシュ「俺は既に目的を達成し、眠りについた。これ以上何かを求めることもない」

ルルーシュ「あるとすれば、贖罪だ。この状況を作り出したのも俺の罪の一つなのかもしれない」

八幡「傍迷惑な話だな。現実味のない話ばかりでそっちの妄想だとしか思えない」

ルルーシュ「それは……すまない。だが、こうなってしまった以上先に進むしかない」

ルルーシュ「不満や文句はいくらでも聞く。だから、お互いのためにも協力してくれないか」スッ

八幡「……まあ、そうするしかないか。そばに人がいるといつまでも落ち着けないしな」ギュッ

ルルーシュ「ありがとう。契約、成立だな」

八幡「おお。目的のためならなんでもやってやる」



ルルーシュ「俺たちは」

八幡「共犯者だ」





――――――
―――





八幡(とは言ったものの……。俺ばかり負担かかるとか理不尽じゃね?何かミスっても自己責任とか冗談じゃない)

八幡(別に俺は何も望んでないし、そもそもの原因はルルーシュにあるようだ。不満がでないわけがない)

八幡(だが、現状を嘆いてても仕方ない。さっさと解放されるためにも何かしなくちゃとは思う)

八幡(ほんとこれが可愛い女の子とかだったらずっとそばにいてもらっても構わないんだけどなー)


平塚「ここだ」ガラガラ


雪乃「平塚先生。入るときにはノックを、とお願いしていたはずですが」


平塚「すまんすまん」

雪乃「………。それでその後ろのぬぼーっとした人は」

ルルーシュ「なかなか誠実そうな子だな。見たところ一人だし、お前の友達になってくれそうじゃないか」

八幡(絶対無理だろ。学校でも有名な秀才美女だぞ)

平塚「彼は比企谷。入部希望者だ」

八幡「あ、ども。えーっと」

ルルーシュ「こういう時は第一印象が大事だ、俺に続け。いいか―――」

八幡「っておい。どういうことですか入部って」

平塚「君には作文のペナルティとして、この部での活動を命じる。君は目も根性も腐ってるからな。
   人との付き合いを学べば少しはましになるだろう」

ルルーシュ「なにしてる馬鹿が!初対面の前で半ギレなんてしたら印象最悪だろう!!」

雪乃「……先生が殴るなり蹴るなりして躾けたほうが早いのでは?」

ルルーシュ「それみたことか!」

八幡(まじでうるせぇ……)


平塚「最近は上がうるさくてな。私なりに平和的な解決を考えてみた」

雪乃「お断りします。そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます」

平塚「まあそう言わずに。彼の更生が私からの依頼だ」

雪乃「……はぁ。先生の頼みということなら仕方ありませんね。承ります」

平塚「そうか!じゃああとはよろしく頼む」

ルルーシュ「ほう……。お前を受け入れてくれるとは、なかなか器量のいいやつじゃないか?」

八幡(毒吐きまくってるやつのどこがだよ)

ルルーシュ「なんにせよ、こいつの攻略からスタートだな。フフハハハハ!」

八幡(早く成仏してくんないかなぁ)








  * * *






雪乃「………」ペラッ

八幡「………」

雪乃「……そんなところで立っていないで座ったら?」

八幡「え、あ、はい。すいません」

八幡(うわぁこえぇ。俺なんかがこんな美人さんと絡む機会があるとは夢にも思わなかったな。帰りてぇ……)

ルルーシュ(ふむ。割と強気な子なのか。カレンを彷彿とさせないでもない)

ルルーシュ「よし、まずは彼女を知ることからだ。なんでもいい、なにか質問しろ」

八幡(んな無茶言うなよ。話しかけたら二酸化炭素吸って酸素を吐きなさいとか言われそうだ)

ルルーシュ「おい、黙っている時間が増えると悪印象だぞ」

八幡(くそっ……なんでこんな目に)ジロ

雪乃「………何か?」

八幡「ああ、悪い。どうしたものかと思ってな」

雪乃「何が?」

八幡「いやだってわけわからん説明しかなくここへ連れてこられたもんだから」

ルルーシュ(確かに。そもそもこの部活はなんだ?文芸部か?)


雪乃「……そうね、ではゲームをしましょう」

八幡「ゲーム?」

雪乃「そう。ここが何部か当てるゲーム。さてここは何部でしょう?」

八幡(どうすんだ?)チラッ

ルルーシュ「情報がないとなんとも言えないな。そもそも部員はこいつだけなのか?」

八幡「他に部員はいないのか?」

雪乃「いないわ」

八幡(それ部として成り立つのかよ)

ルルーシュ(あの教員が言ってた奉仕活動とはなんだ?この子を助けてあげることか?それとも部活の活動内容にあるのか)

ルルーシュ(八幡を奉仕活動させたいということは、この部自体がそうなのか?奉仕部……さすがにそんなものは部としてありえないか)

ルルーシュ「状況を見るに文芸部が一番近いと思うが……」

八幡「(意見が一致したな)文芸部か」

雪乃「へぇ……。その心は?」

八幡「特殊な環境、特別な機器を必要とせず、人数がいなくても廃部にならない。つまり部費なんて必要としない部活だ」

八幡「加えて、あんたは本を読んでいた。答えは最初から示されていたのさ」ドヤァ

ルルーシュ(なかなかロジックで考えることができるのか八幡は。いいぞ、やれるじゃないか)


雪乃「はずれ」フッ

ルルーシュ「んな!?」

八幡「………」イラッ

雪乃「では、最大のヒント。私がここでこうしてることが活動内容よ」

八幡(オカルト系か?こいつミステリアスなとこあるし)

ルルーシュ「オカルト研究部という可能性もあるな。どことなく人を寄せ付けない雰囲気から察するに、特殊な子なのかもしれない」

八幡「(よし)オカルト研究部だ!」

雪乃「はずれ。……はっ、幽霊だなんて馬鹿馬鹿しい。そんなのいないわ」

ルルーシュ「………」

八幡(こ、こいつ。つーかルルーシュ使えないぞ大丈夫か)

ルルーシュ「……フフハハ。フハハハハハハ!!。いいだろうこの俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやる!!」

八幡(大丈夫じゃなさそうだ)

ルルーシュ「八幡!ホラーは苦手か聞いてみろ。このままコケにされていては腹の虫が収まらんからな」

ルルーシュ「こいつのオカルトへの反応、そして足を組んだところから突かれたくない話題の可能性がある。いけ」

八幡「(負けず嫌いかよ)あーお前怖いの苦手なの?」

雪乃「!な、なにを急に言いだすの。根拠のない発言は控えてもらえるかしら」

ルルーシュ「ククク、いい反応じゃないか。動揺を指摘してやれ」

八幡「(やっぱこいつ悪人だよな)今吃ったよな」

雪乃「言いがかりはやめてもらえるかしら」

雪乃「そもそも幽霊や怪談、悪魔なんて存在は人が恐怖感を得るために作られた創作よ」

雪乃「対抗恐怖という心理状態があるのだけれど、自ら恐怖を感じるものに直面し、自分は大丈夫だと安心するというものね」

雪乃「つまり自尊心を満たしたいがために自分を追い詰めるマゾということになるわ。私のように自身のある人間は元よりそこに飛び込む必要がないのよ」

ルルーシュ「なんだ。自分からポロポロこぼすじゃないか。チェックだ」

八幡「つまり怖いのは苦手ってことか」

雪乃「……あなたと話していると不快な気分になるわ」

ルルーシュ「クハハハハハハ!!みろ奴の悔しそうな顔を!!」

八幡(ほんと極悪人だな。つーか状況悪化してんぞ。追い出されるまである)

ルルーシュ「はっ!?しまった!くそ、こういう女は自尊心を満たしてやれば良いというのに……」

八幡(やっぱだめだった)

雪乃「フフッ。私に牙を向くとはいい根性をしているわね。矯正のしがいがありそうだわ」

ルルーシュ「………」

八幡「………」

ルルーシュ「割と悪くない反応か?これは。とりあえずこの部活は何か聞いて話を逸らそう」

八幡「あ、あーそれでここなんの部活なんだ?」

雪乃「比企谷くん。女子と話したのは何年ぶり?」

八幡「………」

雪乃「持つものが持たざるものに慈悲の心をもってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの」

雪乃「困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」スッ

雪乃「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ」ニコッ









  * * *




ルルーシュ「割といい感じだったんじゃないか?」

八幡「どこがだよ。終始悪態つかれてたぞ。帰り際に挨拶の一つもねぇ」

ルルーシュ「フハハ。いきなり高難易度に出くわしたな。しかし、手を差し伸べてくれたあたり、悪くないようだぞ」

八幡「あのやりとりのどこに好感度上がる場面があったんだよ」

ルルーシュ「みたところ、彼女もお前同様気難しい人間なんだろう。意図的に人を遠ざけているような節がある」

八幡「辛辣だから人が離れていくの間違いじゃねーの」

ルルーシュ「学年トップの美少女に加え、家柄的に悪くない。調べたところ身体能力も高いようだ」

八幡「は?そんなのいつ調べたんだよ」

ルルーシュ「そんなことはどうでもいい。情報というのは力だからな。集められるものは集める」

八幡「……んで、そのなんでも超人ともなれば嫉妬の対象ってか?」

ルルーシュ「だろうな。特に女社会は強いと聞く。無用なトラブルを避けるためにも人を遠ざけているのかもしれない」

八幡「結果的に言えばぼっちってことだろ」

ルルーシュ「そうなのだが、割と人望はあるようだ」

八幡「まじかよ……」

ルルーシュ「お前とは別タイプのぼっちだ。残念だったな」

八幡「別にどうでもいいっての。俺には関係ない」


ルルーシュ「そうだな。ここ数日の八幡をみてきて思ったが、お前はだいぶ歪んでいる」

八幡「そうかよ。んで、その矯正ができれば成仏するとでも?」

ルルーシュ「違うな、間違っているぞ。人は人に変えるきっかけを与えることはできても、変えることはできない」

ルルーシュ「お前は、今の自分が好きみたいだからな。その枠内でお前の望みを叶えよう」

八幡「……だからなんもないっての」

ルルーシュ「それはおいおい見つけるさ。とりあえず二人の時はいいが、人がいる時にお前の声が聞けないのは不便だ」

八幡「そこはテレパシーでも使ってくれよ」

ルルーシュ「俺のギアスは心を読むことはできない」

八幡「は?ギアス?」

ルルーシュ「あ、ああいや、なんでもない。幽霊の能力だとでも思え」

八幡「ほーん。じゃあどうする。声だしたら頭おかしいと思われるぞ」

ルルーシュ「携帯を使おう。メールを打ってるフリをして俺に伝えろ」

八幡「いちいちめんどくせぇ……」


ルルーシュ「これには他人への興味付けにもなる。ぼっちという印象を逆手にとって、メールを打つ相手がいることを思わせる」

八幡「フリはやめなさい。とか罵倒されるぞ」

ルルーシュ「そしたらそれに乗っておけばいい。無駄に否定するから焦り、バレる。今日のホラーしかりな」

ルルーシュ「余裕のある面を見せておけば必ず食いつく。特に雪乃は負けず嫌いなところがあるからな」

八幡(雪ノ下まで呼び捨てかよ。さすが外人)

ルルーシュ「お前より優れているぞというアピールをすれば積極的に会話をしてくるだろう」

八幡「(負けず嫌いはお前もだろ)一方的な罵倒が会話と呼べるんならな。まあやってみるか」

ルルーシュ「よし、では俺自身にできることの情報を教えよう」

八幡「あ?」

ルルーシュ「壁や床は任意で通り抜けられる、ある程度浮遊もできるようだ」

八幡「まじかよ。そいつは楽でいいな」

ルルーシュ「そしてお前に乗り移れる」

八幡「霊体ってのも悪くねぇ。………って乗り移るってなんだよ!」

ルルーシュ「そのままの意味だ。少し体を拝借させてもらった」

八幡「させてもらったって……、は!?お前が雪ノ下の情報集めたってのそれか!」

ルルーシュ「察しがいいな、その通りだ。ちなみに乗っ取れるのはお前だけ。離れられる距離は半径500m園内といったところだろう」


八幡「割と離れられるのな。途中で奉仕部抜けたのはそれを調べるためか」

ルルーシュ「ああそれもあるが、俺の力が特に必要ないと判断したら席を外すようにする」

八幡「お前の力微妙だったけどな」

ルルーシュ「うるさい。人の感情思考は未知数だ。必ずしも正解など出せない」

八幡「まあな。今回のもなぜか雪ノ下は受け入れてくれたし。普通追い出されるとこだろあれ」

ルルーシュ(結果から考えられる後付けの理由ならあるが、特に話す必要もないだろう)

ルルーシュ「そうだ。雪乃の攻略に関してはお前の自然体が有効だろう」

八幡「ギャルゲかなにかかよ……」

ルルーシュ「なんだそれは」

八幡「いや、知らなくていい。それより乗っ取りはやめてくれ」

ルルーシュ「今後は許可をとる」

八幡「お前何するかわからねーんだよ」

ルルーシュ「善処しよう」

八幡「おい………」

ルルーシュ「なにはともあれ、拠点活動場所は決まり、方針も固まった。あとは行動するのみだな」

八幡「そうだな」

ルルーシュ(奉仕部を拠点とし、八幡の友達を作る。閉鎖的、排他的な思考を破壊し、開放的、社交性のある人間へと造り変える!)

ルルーシュ(恐らく八幡の望みは交友を得ることだろう。でなければこんな卑屈なぼっちになりはしない。ならば目標達成は簡単だ)

ルルーシュ(やれる、やれるぞ!なぜなら俺は、世界を破壊し、創造した男!ゼロなのだからな!)フフハハハハハ

八幡(楽しそうだなーこいつ)








***

ここまで
割と需要あって焦った

憑依はギアス使うためのご都合ですさーせん

TURN2




平塚「君はあれか、調理実習にトラウマでもあるのか」

ルルーシュ「既視感を感じるな。またも現国教師に呼ばれるとは」

八幡「先生って現国の教師だったんじゃ……」

平塚「まずは調理実習をサボった理由を聞こう。簡潔に答えろ」

八幡「や、あれですよ。クラスの連中と調理実習とかちょっと意味わかんなかったんで」

平塚「その回答が意味わからないよ比企谷。どの班にも入れてもらえなかったのか?」

八幡「いやいや、なに言ってるんですか先生。俺はより実践に近いことをする必要があると思っただけです」

八幡「母親はいつも一人で料理していますよね?それなのにグループを組む必要性が意味わからないんですよ」

平塚「それとこれとは話が違うだろう」

八幡「先生!それは俺の母親が間違ってるっていうんですか!話にならねぇ!」

ルルーシュ(ほんと面白いやつだな)

平塚「逆ギレでごまかそうとすんなコラ」

平塚「おいしいカレーの作り方というレポートに、薄っぺらいやつほど人に影響されやすいのと同じ」

平塚「薄く切ったほうが味がよく染みる…。誰が皮肉を混ぜろといった。牛肉を混ぜろ」

八幡「先生、うまくいったみたいな顔するのやめてください。見てるこっちが恥ずかしいです」

ルルーシュ(ちょっと面白かった)


平塚「うるさい。いうまでもなくわかってると思うが、再提出だ」

八幡「はい」

平塚「君は料理をするのか?」

八幡「主婦の必須スキルかなって」

ルルーシュ(まあ俺も一通り得たし、あって損はないな)

平塚「専業主婦にでもなるつもりか」

八幡「将来の選択肢の一つです」

平塚「ドロドロとした目でいうな。進路はある程度決まっているのか?」

八幡「まずそれなりの大学は卒業します」

ルルーシュ(理由は十中八九就職までの道を遠ざけたいからだろうな)

平塚「ほう、その後就職はどうするんだ?」

八幡「美人で優秀な人を見繕って結婚します。最終的には養ってもらう方向で」

平塚「就職でといっただろう!職業で答えろ!」

八幡「だから主夫」

平塚「それはヒモというんだ!ったく、もういい。君と話していると腐ってしまいそうだ」

ルルーシュ「随分な言われようだが正論だな。関わっているだけ無駄だ」

八幡(お前はどっちの味方だよ)


平塚「女子から手料理の一つでも振る舞われれば君の考えも変わるかもしれんな……」グィ

八幡「ちょ、ちょっと!何するんですか!痛い!痛いっつーの!」

平塚「奉仕部で勤労の尊さを学んできたまえ」



  * * *



奉仕部



ルルーシュ「しかしこの部活とやらは存在意義があるのか?依頼なんて一つもこないぞ」

八幡(こない方が助かるけどな)



コンコン



ルルーシュ「ん、噂をすればきたか」

八幡(まじかよ)

雪乃「どうぞ」

「し、失礼しまーす」キョロキョロ ハッ

「な、なんでヒッキーがここにいんの!?」

八幡「……いや、俺ここの部員だし」

ルルーシュ「ん、友達か?なんだお前にもいるじゃないか。ヒッキーとは引きこもりのことか」

八幡《しらん誰だこいつ》カチカチ

ルルーシュ「なに?」

雪乃「まあ、とにかく座って」

「あ、ありがと……」

雪乃「由比ヶ浜結衣さん、ね」

結衣「あ、あたしのこと知ってるんだ」パァ

八幡「お前よく知ってんなぁ……。全校生徒覚えてじゃねぇの?」

雪乃「そんなことはないわ。あなたのことなんて知らなかったもの」

八幡「そうですか……」


ルルーシュ「なに、しょげることではない。むしろお前のことをなにも知らなくてラッキーだと思え」

八幡《どういう意味だよ》カチカチ

ルルーシュ「お前がどんな人間か知っていた上で関わろうとするやつなんてそうはいないだろう」

八幡(余計な御世話だちくしょう)

雪乃「別に落ち込むようなことでははないわ。むしろ、これは私のミスだもの」

雪乃「あなたの矮小さに目もくれなかったことが原因だし、何よりついあなたの存在から目を逸らしたくなってしまった私の心の弱さが悪いのよ」

八幡「それ慰めだとしたらどんだけ下手だよお前。最後完全に俺が悪いみたいになってるじゃねぇか」

雪乃「自信過剰ね。慰めではないわ。皮肉よ」

結衣「なんか、楽しそうな部活だね」

雪乃「別に愉快ではないけれど……。むしろその勘違いが酷く不愉快だわ」

結衣「あ、いやなんていうかすごい自然だなって思っただけだから!」

ルルーシュ「そうだな。傍目から見ていると痴話喧嘩に思えなくもない」

結衣「ほら、ヒッキーもクラスにいる時と全然違うし、ちゃんと喋るんだーって」

ルルーシュ「俺しか相手がいないからな」

八幡「いや、喋るよそりゃ……」


雪乃「そういえばあなたもF組だったわね」

八幡「え、まじで?同じクラス」

ルルーシュ「それすらも知らなかったのかお前は……。もっと人に興味を持て。人脈は価値だぞ」

八幡「価値をもつやつは勝ちってか?」

ルルーシュ「声に出てるぞ」

八幡(やべ)

雪乃「文脈につながりが見えないのだけれど。国語は得意というのは嘘のようね」

八幡「ちげーから。メール打とうと思ったら声に出てただけだから。あるだろ?そんくらい」

結衣「ヒッキーメール打つような相手いたんだ!?てか、あたしのこと知らないとかありえなくない!?だからキモいんだし!」

八幡「うるさいぞビッチ」

ルルーシュ「おい!俺の話を聞いていなかったのか!相手の逆鱗に触れるような発言は控えろ!」

結衣「ビッチってなによ!あたしはまだ処ーーうわわ、なんでもない!」

ルルーシュ「……アホな子で助かったな」

八幡《わかっててやったぜ》

ルルーシュ「嘘をいえ」

雪乃「別に恥ずかしいことではないでしょう。この年でヴァージ――」

結衣「わーわーわー!なに言ってんの!?高2でまだとか恥ずかしいよ!女子力たんないんじゃないの!?」

雪乃「……くだらない価値観ね」

ルルーシュ「まったくだ」

八幡(頭のネジが飛んでるような概念だよな)




  * * *




結衣「……あのさ、平塚先生から聞いたんだけど、ここって生徒のお願いを叶えてくれるんだよね?」

八幡「そうなのか?」

ルルーシュ「奉仕というからにはそれに準ずるものだろう」

雪乃「少し違うかしら。奉仕部は手助けをするだけ。願いが叶うかはあなた次第だわ」

雪乃「飢えた人に魚を与えるのではなく、魚の獲り方を教えるもの。自立を促す、ということかしらね」

結衣「な、なんかすごいね!」

雪乃「必ずしもあなたの願いが叶うとは言えないけれど、できる限りのことはするわ」

結衣「あ、あのね!クッキーを……」チラッ

ルルーシュ「呼ばれているぞ?クッキーくん」

八幡《クッキーじゃなくてヒッキーな。いやヒッキーでもねぇよ》

雪乃「比企谷くん」クイ

八幡「……ちょっとスポルトップ買ってくるわ」

雪乃「私は野菜生活100イチゴヨーグルトミックスでいいわ」

八幡(ナチュラルにパシリかよ)

ルルーシュ「雪乃は人を率いる才能がありそうだな」




  * * *




八幡「んで、どうするよ」

ルルーシュ「どうもできんな。どうやら女の子同士でしか話せない内容か、人に知られたくないことのようだ」

八幡「まあそしたらなにもすることはないか」

ルルーシュ「俺だけ聞くこともできるが、気が進まんしな」

八幡「なんだ、目的のためなら手段は選ばないんじゃなかったのか」

ルルーシュ「間違った方法で得た結果に意味はないからな。親友の受け売りだが」

八幡「友達いんのかよ」

ルルーシュ「おまえと一緒にするな。要するに自分の使い方。処世術、世渡り上手というやつだ」

八幡「じゃあ俺にも優しくしてくれてもいいんじゃねぇの」

ルルーシュ「なんだ、甘やかされたいのか」

八幡「……気持ち悪いからいいわ」

ルルーシュ「ふん。そろそろ戻るか」

八幡「だな」




  * * *



雪乃「遅い」

八幡「はいはい悪かったよ。ほれ」

結衣「あ、ありがと。はい、お金」

八幡「ああ、別にいいよ」

ルルーシュ「なかなか気が利いてるじゃないか。そういうことはできるのになぜぼっちになった」

八幡《雪ノ下が払わないのにおまえは金よこせなんていえるか》

ルルーシュ「理由はどうあれ、さりげなく奢るのは女性からしたら評価ポイントだ」

八幡(奢ってもらうのが当たり前なんて虫酸が走るけどな)

ルルーシュ「まあ、思うところはあるだろうが、人が付いてくる人間はそういうことができるやつだ。頭の隅には置いておけ」

八幡《りょーかい》

八幡「んで、話しはどうなったんだ」

雪乃「家庭科室に行くわ。比企谷くんも一緒にね」

八幡「なにすんの?」

結衣「クッキー……クッキー焼くの」

雪乃「彼女は手作りクッキーを食べて欲しい人がいるそうよ」

八幡「でも自信がないから作りかたを教えて、ということか。そんなの俺たちより友達に頼めよ」

結衣「う……それは、その。あまり知られたくないし、多分馬鹿にされると思うから」


八幡「あっそ」

結衣「ムカッ!興味ないなら聞くなし!……でも、あたしみたいな子がこんなことするの、変だよね」

雪乃「まあ、イメージとは違うわね」

結衣「あはは……だよねー。やっぱやめとこうかな」

ルルーシュ「八幡、絶好のフォローポイントだぞ。キーワードはギャップだ」

八幡「(了解)まあやりたくないならやめればいいだろ」

結衣「そう……だね」

八幡「でも、逆にお前みたいな見た目のやつが乙女なことしてるってのは、ギャップ萌えになるんじゃねーの」

結衣「!」

八幡「んで、やんの?やんないの?」

結衣「や、やってみる!……その、ヒッキーもギャップとかあると、好き?」

八幡「ちょー好きだね。一発で惚れてフられるまである」

結衣「片想いなんだ!?」

ルルーシュ「一言余計だが、まあお前らしいか」

八幡「まあ、カレーぐらいしか作れねーが手伝うよ」

結衣「あ、ありがと……」

雪乃「別にあなたの料理の腕に期待はしてないわ。味見して感想をくれればいいのよ」





  * * *




ルルーシュ「そういえば平塚先生が女子の手作りがどうとかいっていたな。これのことか」

八幡(ああ、だからすぐ依頼きたのか)

雪乃「曲がってるわ。あなた、エプロンもまともに着られないの?」

結衣「ごめん、ありがと。……えっ!?エプロンくらい着れるよっ!」

ルルーシュ「今後の展開に嫌な予感がしてきた」

八幡《奇遇だな。俺もだ》

雪乃「そ、ならちゃんと着なさい。適当なことをしているとあの男のように取り返しのつかないことになるわよ」

八幡「人を躾けの道具に使うな。俺はなまはげかよ」

雪乃「初めて人の役に立てたのだから喜びなさい。……ああ、なまはげといっても別に比企谷くんの頭皮に
   対して何か含むところがあったわけではないから安心してね」ニコッ

八幡「最初から心配してねーよ。やめろよ、優しげな顔で俺の頭皮を見るなよ………」


ルルーシュ(やはり雪乃は八幡との波長が合うように感じる。下手なことはしないように誘導する必要があるな)

ルルーシュ(近づいてくる同性は、ステータスとして、あるいは牽制のため)

ルルーシュ(異性は下心で接してくる。それを同性に妬まれるような人物)

ルルーシュ(彼女に関しては、八幡の他人に対して諦めが入ってる接し方というのが逆に都合がよかったわけだ)



結衣「……」

雪乃「まだ着てないの?それともやっぱり着れないの?……はぁ、結んであげるからこっちに来なさい」

結衣「……いいの、かな」チラッ


ルルーシュ(二人のやりとりで自分の居場所がわからなくなっているようだな。なるほど、周りの空気に敏感な子というわけか)

ルルーシュ(教室での彼女を見たことがあるが、目立っているのに目立たない。いや、それにより当てはまる人物がもう一人いるな)

ルルーシュ(なんにせよ、合わせるということを最優先に持ってくる彼女にとって、この状況は居心地が悪かろう)

ルルーシュ(逆に一度こちらに引き込んでしまえば、彼女にとっても自然体で居られるような場所を提供できるかもしれない)

ルルーシュ(クラスの上位カーストグループ内では一番御し易い人柄だからな。ここを落とせば今後が動きやすくなる)


雪乃「早く」

結衣「ご、ごごごめんなさい!」

結衣「………なんか雪ノ下さん、お姉ちゃんみたいだね」

雪乃「私の妹がこんなに出来が悪いわけがないけれどね」


ルルーシュ「八幡、さっきカレーしかといっていたが、料理は得意なのか?」

八幡「いや、そのまんまだよ。料理といえるようなものはそれだけ。あとは誰でもできる炒め物くらいだ」ヒソヒソ

ルルーシュ「そうか。では、今回は味見以外に出番はないな」


結衣「よーっし!やるぞー!」


ルルーシュ「どうする?特に俺は出番がなさそうだが」

八幡「まあ、どっかいってもらっても構わないけどな」

ルルーシュ「そうか。では、俺は調べ物でもしておこ……コーヒー?」

八幡「ん?ああ、由比ヶ浜か」


八幡「気が利いてるな。まあ飲み物があったほうが食は進むからな」

結衣「は?違うんですけど。これ、隠し味だから。男子って甘い物苦手な人多いじゃん?」ダバァ

ルルーシュ「!?」

八幡「全っ然隠れてねぇ!!」

結衣「え?あー。じゃあ砂糖入れて調整するよ」ドバァ

ルルーシュ「こ、これは典型的だ。シャーリーのほうが分量手順を踏もうとするだけましだ」

八幡《なんで料理下手な奴ってアレンジしたがるんだろうな》

ルルーシュ「料理下手にも二つある。手際が悪いか、頭が悪いかだ。これは完全に後者だ!」

八幡(あーあーなんだあの物体Xは。人殺せるんじゃねぇの?嫌いな奴に食わせてやりたい)

ルルーシュ「八幡、見ていられない。俺が介入する」

八幡《料理得意なのか?何する気だ》

ルルーシュ「人並みにはできる。身体を貸せ、本当の料理という物を教えてやる」

八幡《やだよ》

ルルーシュ「家庭的で主夫にほしいという方におすすめです!という広告にもなるぞ。由比ヶ浜は交友が広いだろうからな」

八幡《たのんます先生!》


結衣「な、なんで?」

雪乃「理解できないわ。どうやったらあれだけミスを重ねることができるのかしら」

結衣「見た目はアレだけど……食べてみないとわからないよね!」

雪乃「そうね。味見してくれる人もいることだし」

八幡「ふはははは!雪ノ下。お前にしては珍しく言い間違いしてるぞ。これは毒味だ」

ルルーシュ(俺のキャラが写ってきてないか)

八幡《おい、今変われ早く変われ》

ルルーシュ「せっかくの女の子の手料理だ。それを邪魔するほど無粋ではない」

八幡《建前なんていらねぇ!変わってくれ!》

ルルーシュ「必死だな」

結衣「どこが毒よ!……毒、うーんやっぱ毒かなぁ」

八幡「おい、これまじで食うのかよ。ジョイフル本田で売ってる木炭みたいになっるぞこれ」

ルルーシュ「酷い言い様だが、木炭は的確な表現だ」

雪乃「食べられない原材料は使ってないから問題ないわ、たぶん。それに」

雪乃「私も食べるから大丈夫よ」ボソ

八幡「マジで?ひょっとしてお前いい奴なの?それとも俺のこと好きなの?」

雪乃「……やっぱりあなたが全部食べて死になさいよ」

八幡「すまん、気が動転しておかしなこと口走りました」

八幡《お菓子だけに》

ルルーシュ「くだらないことを一々伝えるな」

雪乃「……死なないかしら」

八幡「俺が聞きてぇよ」




  * * *





結衣「うぅ~、苦いよ不味いよ~」

雪乃「さて、じゃあどうすればより良くなるか考えましょう」

八幡「由比ヶ浜が二度と料理しないこと」

結衣「全否定された!?」

雪乃「比企谷くん、それは最後の解決方法よ」

結衣「それで解決しちゃうんだ!?」

ルルーシュ「ツッコミがやかましいな」

結衣「やっぱりこういうの向いてないのかな……。才能っていうの?そういうのないし」

雪乃「解決方法がわかったわ。努力あるのみよ」

八幡「それ解決方法か?」

雪乃「立派な解決方法よ。由比ヶ浜さん、最低限の努力をしない人に、できる人間を羨む資格はないわ」

八幡(急に厳しいな)


ルルーシュ「無能な人間は努力をせず、努力をした人間を羨み、蔑む」

ルルーシュ「八幡、なぜそのようなことが起こるかわかるか?」

八幡《なんだ急に。努力をしない言い訳だろ?》

ルルーシュ「違うな。結果しか見えていないからだ」

ルルーシュ「結果を判断基準とし、それまでの過程をがんばった、と言い訳して自分を守る」

ルルーシュ「人々は過程が大事とのたまっておきながら、その実結果しか見えていない」

ルルーシュ「最初でこけたら向いていない。最初からできる人は才能があるからできる」

ルルーシュ「努力だなんだのは結果が出るから認められるという世界の共通認識だからな」

ルルーシュ(そうだ、結果は何よりも優先される。綺麗事だけではないかを成し遂げることはできないんだよ)

八幡《同意だ。だからコミュニティができる。同等の人達が自分たちの世界を守るために》

ルルーシュ(……やはり、八幡がぼっちである理由はそこか。しかしもう少し掘り下げる必要があるな)

ルルーシュ(理解を深めればなにを願っているか見えてくるはずだ。交友という点は間違っていないはずだが、単純ではなさそうだ)

結衣「で、でもさ。こいうの最近みんなやんないっていうし。やっぱりこういうの合ってないんだよきっと……」ヘヘ

ルルーシュ「あってないというレベルではないがな」

八幡《将来に支障が出るレベルだよな》

雪乃「……その周囲に合わせようとするのやめてくれないかしら。酷く不快だわ」

雪乃「自分の不甲斐なさ、無様さ、愚かしさの遠因を他人に求めるなんて恥ずかしくないの?」

結衣「………か」


八幡(これは帰るっていってもしかたないな)

ルルーシュ(まあ、それも一つの結果か)

結衣「かっこいい!!建前とか全然言わないんだ」

雪乃「な、なに言ってるの?今の聞いてたかしら?」

結衣「うん、ぶっちゃけ引いたけど。でも、本音って感じがするの。やっぱ、やるよ。本気で」

雪乃「………」

ルルーシュ「なかなか強い子じゃないか」

八幡(だな)

ルルーシュ「よし!俺が力を貸してやろう」

八幡《変なことするなよ?》

ルルーシュ「当然だ。お前に不都合があると俺にも影響が出るからな」スゥ…

八幡『正しいやり方を教えてやる。ちゃんと見ていろ結衣』

結衣「え、う、うん。ってなな、なんで名前で呼んで!?」

八幡『ん?結衣じゃなかったか?』

結衣「いや、そうだけど!そうじゃないっていうか……」カァァ


雪乃「あなたにまともなものが作れるのかしら?」

八幡『当然だ。まあ見ていろ雪乃』

雪乃「なっ……」ドキッ

八幡『いちいち難しく考えるから失敗する。初心者のうちは手順をちゃんと踏め』カチャカチャ

八幡『アレンジなんてものは相応の経験を積んだからこそできるもの』サッサッ

八幡『上手くいかないと思ったら上手いやつの真似をする。基礎を叩き込み技を奪え』チーン

八幡『試行錯誤を繰り返し、意見をもらう。それを素直に出来るからこそ成長する』コト

八幡『そのなかでいろんな感情と戦い向き合う。それが努力だ』

八幡『さぁ、食べてみろ』

結衣「う、うん。なんかすごい出際いいね」サク

雪乃(まるで人が変わったみたいね)サク

結衣「!?お、おいしぃ~!!」

雪乃「……あなたにしてはやるじゃない」

八幡『今のはなにもアレンジを加えていないレシピ通りのものだ。だが例え同じレシピでも作り手によって質は変わる』

八幡『質をよくするには経験しかない。俺の言葉の意味をしっかり理解したなら、君は成長するだろう』

結衣「う、うん!……なんか思ってたのと全然違うね」

八幡『な、なにがだ?』

結衣「あ、悪い意味じゃなくてね!なんか、うまく言えないけど……うん。なんでもない!」

八幡『そ、そうか。じゃあ初めから一緒にやってみようか』

結衣「うん!」





  * * *





雪乃「これなら十分人に渡せるわね」

結衣「ほんと!?やったー!……でも、なんかまだ全然普通っていうか」

八幡『確かに特質したものではないが、これではだめなのか?』

結衣「そういうわけでもないんだけど……できるだけおいしいって言われたいし」

八幡『違うな。間違っているぞ。目的を誤るな』

結衣「え?」

八幡『万人から評価されるものを作りたいならパティシエにでもなっている』

八幡『だが、目指すところは渡した相手に喜ばれたいということだろう?』

八幡『気持ちが伝わればどんなものだって嬉しいし、美味しくなる』

八幡『手作りというものは、それを伝えることができる。愛はパワーだからな』

八幡『もちろん最高のものを作りたいというならこちらも全力で指導するつもりだが』

結衣「……ううん。十分だよ、ありがとうヒッキー!」

結衣「その……ヒッキーも手作り貰ったら、嬉しい?」

八幡『ん?まあ、そうだな』

結衣「そっか……。よーっし!あとは自分で頑張ってみるよ!二人とも今日はありがとね!」

八幡『そうか、がんばれ』

雪乃「私はあまり手伝えなかったけれどね」

結衣「そんなことないよ、雪ノ下さんが叱ってくれなかったらダメダメなままだったから……。だからありがと!」

雪乃「……ど、どういたしまして」プイッ

ルルーシュ(俺の役目もここまでだな)スウゥ

八幡「………んあ。あれ?どういう状況これ?」




  * * * 




八幡「なあ雪ノ下、依頼はどうなったんだ?」

雪乃「あれで完遂、ということでいいでしょう。」

八幡(やべぇなんもわかんねぇ。あいつなんか変なことしてないだろうな……。つか、どこいった)

雪乃「それにしても」

八幡「あ?」

雪乃「あなた、以外と熱い人間だったのね。少し驚いたわ」

八幡「は?……え、えっとどこら辺が?」

雪乃「平気で臭いセリフを吐いてしまう辺りかしら」

八幡(あのやろう……まじでなにしやがった)

雪乃「突然人が変わったみたいになるものだから気持ちが悪かったわ」

八幡「そ、そうですか(まじで人が変わってるからな)」

雪乃「……でも、少しあなたという人間に興味が出てきたわね。これからもよろしくお願いするわ」ニコッ

八幡「……お、おう」ドキッ

雪乃「さて、私たちも帰りましょうか」

八幡「だな」

雪乃「また、明日。比企谷くん」

八幡「……また明日」






  * * *









八幡(一体ルルーシュがなにしたか依然わからないが、悲惨なことにはなってないみたいだ)

八幡(それどころか雪ノ下との関係性も少しは良くなった気がする)

八幡(由比ヶ浜も翌日お礼にとクッキーを渡してきたが、あの炭とは比べものにならないくらいになっていた)

八幡(至って普通だったが、マイナスがでかかった分涙が出るくらい美味く感じた)

八幡「もしかして、あいつ成仏でもしたか?」

八幡(ったく、いきなり現れていきなりいなくなりやがって。しかも状況説明もなにもせず)

八幡(なにはともあれ、これで俺の平穏なぼっち生活が帰ってきたことになるわけだ)

八幡「少し寂しい気もするけどな。……あいつがもし生きていたら、友達になれてたんだろうか」




八幡「ただいまー」ガチャ


ルルーシュ「帰ったか!八幡!」




八幡「………え?なんでいるの?」

ルルーシュ「なにを寝ぼけている。俺はお前の守護霊だろう」

八幡「いや、だから完全に地縛霊……じゃなくて!成仏したんじゃないのかよ!」

ルルーシュ「そんなわけないだろう。たかだか依頼一つこなしたくらいで八幡は何か変わったのか?」

八幡「……それはないな。じゃあしばらくどこいってたんだよ」

ルルーシュ「たった1日空けただけだろう。なんだ寂しかったのか?」

八幡「……ちげーよ。小躍りするところだったってーの」

ルルーシュ「ふん。リサーチだ」

八幡「リサーチ?」


ルルーシュ「雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣。両名は今後お前にとって大きな存在となり得ることを仮定して、その周囲関係までしっかり情報を得た」

八幡「は?なにしてんのお前」

ルルーシュ「そして新たに分かったことに、お前の心身の変化に対応して俺のできることが変わる」

ルルーシュ「俺個人の活動限界距離が大幅に更新された。心の距離が変わったからかもな」

八幡「なに上手いこと言ったみたいな顔してんだよ」

ルルーシュ「うるさい。それに伴い、いままで以上に情報が得られることとなった。ククク、これからはより面白くなるぞ」

八幡「………はぁ。要するになにも終わってないってことなのな」

ルルーシュ「当然だろう。なにを寝ぼけている。自分がそんな単純な人間だとでも思ったのか?」

八幡「いーや?俺とかあれだし?最難関攻略物件だし?」

ルルーシュ「よくわかってるじゃないか。そう、なにも終わってなどいない。むしろここからが本番というわけだ!」

八幡「へーへー。じゃあ明日から頑張るわ」

ルルーシュ「いまやれ!明日やろうというやつに明日はこないぞ!」

八幡「なにやるんだよ」

ルルーシュ「まずは俺の集めた情報から、明日以降の行動に関して作戦会議だ」

八幡「あ、悪い。撮り溜めたアニメ消化しなきゃいけないから今日は無理だわ」バタン

ルルーシュ「おい!?なにを腑抜けたことを抜かしている!おい、ハチマァァァァン!!」




八幡「ったく。この状況いま思うとなんかのアニメの主人公みたいだな」

八幡「ほんと、やかましい皇帝がパートナーなんじゃあなー」クク

八幡「やっぱ俺の青春ラブコメは間違ってるわ」






***


ここまで
ところで俺たちの戦いはこれからだ!って終わりどう思う

TURN3




ルルーシュ「八幡は運動神経は悪くないのだな」

八幡「なんだ突然」

ルルーシュ「いや、なに。今日の午前の体育の授業をみて思ってな」

八幡「まあ俺は大抵のことなら難なくこなすからな。超有能」

ルルーシュ「人付き合い以外はそうなのかもな」

八幡「そういうルルーシュはどうなんだ。運動できんのか」

ルルーシュ「さほど好きではない。俺は頭脳で戦うタイプだからな」

八幡「なんだ以外と運動だめなんだな。いや、見たまんまか」

ルルーシュ「できないとは言っていない!ただ俺の強みを活かすことを考えたら不要だから手をつけてないだけだ!」

八幡「あーあー、雪ノ下と同じじゃねぇか。見苦しいぞ」

ルルーシュ「ぐっ……」

結衣「あれー?ヒッキーじゃん。なんでこんなとこいんの?」

八幡「普段ここで飯食ってんだよ」

結衣「へー、そーなん。なんで?教室で食べればよくない?」

八幡「………」

ルルーシュ「結衣は無意識でお前を傷つけるのがうまいな」

八幡「お前こそなんでここいんの?」

結衣「それそれっ!実はね、ゆきのんとゲームでジャン負けしてー、罰ゲームってやつ?」

八幡「俺と話すことがですか………」

ルルーシュ「フフハハハハハアハッハゴホッ!泣くな八幡!」

八幡(お前こそ笑い泣きやめろよ)

結衣「ち、違う違う!負けた人がジュース買ってくるってだけだよ!」

ルルーシュ「ハハハよかったな」

八幡「かっ、内輪ノリってやつね」

結衣「なにその反応。感じ悪。そういうの嫌いなわけ?」


八幡「嫌いに決まってんだろ。あ、内輪もめは好きだ。なぜなら俺は内輪にいないからな!」

結衣「理由が悲しい上に下衆だ!?……ていうかヒッキーだって内輪ノリしてんじゃん」

八幡「いつしてたよ」

結衣「部活の時とか。あーあたし入れないなーってこと多いし」

結衣「あたしももっと話したいなー……べ、別に変な意味じゃなくてね!?」

ルルーシュ「だそうだぞ八幡。これがツンデレというやつなんだろ?」

八幡(そういうことまで調べなくていいんだよ)

八幡「安心しろ。お前相手に変な勘違いは起こさない」

結衣「どういう意味だし!……ん、おーい!さいちゃーん!」

ルルーシュ「む?」

結衣「よっす、練習?」

戸塚「うん、うちの部すっごい弱いからお昼も練習しないとね。由比ヶ浜さんと比企谷くんはここで何してるの?」

ルルーシュ「八幡の名前をちゃんと覚えているやつなんて材木座以来じゃないか」

八幡《材木座なんて存在はいなかった》

結衣「やー別になにもー?」

戸塚「そうなんだ」クスクス

結衣「さいちゃん授業でもやってるのに大変だね」

戸塚「ううん、好きでやってることだし。あ、そういえば比企谷くん。テニスうまいよね」


ルルーシュ「!」

戸塚「フォームがとっても綺麗だったから」

八幡「いやー照れるなーはっはっは」

八幡《だれこいつ》

ルルーシュ「だろうと思っていた。お前と同じクラスの戸塚彩加。男だ」

八幡(え?まじで?こんなに可愛いのにナニついてんの?)

戸塚「えっと……。僕のことわかるかな?」

八幡「同じクラスの戸塚だろ。よろしく」

戸塚「あ、うん!よろしく!知っててくれたんだ」パァ

八幡「まあ、クラスメイトだしな」

結衣「……あたしのこと知らなかったくせに」

八幡「それよりよく俺のこと知ってたな」

戸塚「あ、うん。だって比企谷くん、目立つもん」

結衣「えー?そうかなー?すっごい地味くない?余程のことがないと気づかないと思うけど」

八幡「ばっかお前、俺とか超目立つから」

結衣「どこが?」

八幡「……ひ、一人ぼっちで教室の隅にいたら目立つだろうが」

ルルーシュ「ついに自虐し始めたな」

結衣「あ、なんか、ごめん……」

戸塚「それよりさ、比企谷くんテニス経験者なの?」

八幡「いや、マリオテニスやってたくらいだ。リアルではやったことない」

ルルーシュ(初めてでうまいのか……)

結衣「あ、あれ面白いよね!みんなでやったりすると!」

八幡「……俺は一人でしかやったことないけどな」

結衣「うぇっ!?ご、ごめん」

八幡「お前なんなの?俺の心の地雷処理班なの?トラウマ掘り起こすことが仕事なの?」

結衣「ヒッキーが爆弾抱えすぎなだけでしょ!?」


キーンコーンカーンコーン


戸塚「戻ろっか」

結衣「そうだねー」

八幡「………」

結衣「どうしたのヒッキー?」

八幡「いや、お前パシリはいいのか」

結衣「はぁ?……あっ!」





 * * *






後日




ルルーシュ「今日も相変わらず壁打ちに励んでるのか。プロ目指して毎日素振りしてる野球少年のようだな」

八幡「これが授業じゃなければな」パコーン

ルルーシュ「戸塚が近づいてくるぞ」

八幡「俺に近づいてるわけじゃないだろ」チョンチョン

八幡「あ?」プスッ

戸塚「あはっ、ひっかかった」ニコ

八幡「ど、どした?」ドキドキ

戸塚「うん、今日さ、いつもペア組んでる子がお休みなんだ。だから……よかったら僕とやらない?」

ルルーシュ「肯定しかな――」

八幡「ああ、いいよ。俺も一人だしな」

ルルーシュ「………即答か」

八幡(こんな天使の頼みを断れようか、いや、ない)

ルルーシュ「最近は関わる人間が増えたな。これもいい兆候だ」

ルルーシュ(戸塚彩加。女子の一部では王子と呼ばれているそうだ)

ルルーシュ(守ってあげたくなるような顔立ち、振る舞いからそう名付けられたのだろう)

ルルーシュ(八幡に接してきた理由はテニス部への勧誘か?やたら上手いと連呼しているあたりな)

ルルーシュ(それ以外では接点がなさそうだが、ぼっちを放っておけなかった線も濃厚だろう)

戸塚「やっぱり比企谷くん上手だねー」

八幡「壁打ってたからなー。テニスは極めたー」

戸塚「それはスカッシュだよー。テニスじゃないよー」

戸塚「ふぅ……。少し休憩しよっか」

ルルーシュ(そういえば1年の時も八幡と同じクラスだったみたいだが、その時から気にかけていたのか?

ルルーシュ(しかし、その時点ではテニスは未経験。それ以外になにかあったか)

ルルーシュ(1年時の八幡の情報までは得られないからな。なんとも言えないか)

戸塚「あのね、ちょっと比企谷くんに相談があるんだけど」

八幡「相談、ねぇ」

戸塚「もしよければでいいんだけど……比企谷くん、テニス部に入ってもらえないかな?」

戸塚「比企谷くんもっともっとうまくなると思うし、部員にいい刺激になると思うんだ」

戸塚「ほら、うちの部って弱いから、新入生とかも身が入らないみたいで……」

戸塚「比企谷くんがいれば、僕も頑張れると思うし。あ、へ、変な意味じゃなくて!」

ルルーシュ(天使だな)

八幡「お前は弱くてもいいよ。……俺が守るから」

戸塚「え?」

八幡「あ、すまん。間違えた。悪いそれはちょっと無理だ」

ルルーシュ「まあ、兼部になってしまうし、何より八幡にはまだ集団行動は無理だろうな」

八幡(俺の自由時間がなくなっちまうからな)

戸塚「……そっかぁ」

八幡「まぁなんだ。何か方法を考えてみるよ」

戸塚「ありがとう。比企谷くんに相談して少し気が楽になったよ」

八幡(いい子だ)

ルルーシュ(この優しさ、気遣い、笑顔。……ナナリー。今頃どうしているだろうか)






  * * *





雪乃「無理ね」

ルルーシュ「なぜだ!?彼を救ってあげたいとは思えないのか!?」ガンッ!

八幡「いや無理って。お前さー」

雪乃「無理なものは無理よ」

八幡「ほら、俺が入部することで一種のカンフル剤的な」

雪乃「あなたに集団行動ができると思っているの?あなたみたいな生き物受け入れてもらえるはずないでしょう?」

ルルーシュ「雪乃は受け入れてくれたじゃないか」

八幡「お前は俺の入部受け入れたじゃん」

雪乃「なっ……あ、あれは平塚先生の依頼だったからであって、あなた個人を快く受け入れたわけではないわ。勘違いしないで」

雪乃「私しか部員がいないというのはリスクでしかないから数合わせのために承諾したにすぎないわ」

雪乃「そもそも集団行動の有無で変わってくる話なのだからここは関係ないでしょう」

八幡「へーへー」

雪乃「……もっとも、あなたという外的を得ることによって一致団結することはあるかもしれないわね。」

雪乃「けれど、排除するための努力であって、それが自身の向上に向けられることはないの。ソースは私」

八幡「なるほどな。……え?ソース?」

雪乃「ええ。中学の時に海外から編入したのだけれど、クラスの女子は私を排除しようと躍起になったわ」

雪乃「誰一人として私に敵うための努力をする人はいなかった……あの低能ども」

ルルーシュ「く、黒い。なだめろ八幡……」

八幡「ま、まあお前みたいな可愛い子が来たらしょうがないんじゃねーの」

雪乃「………っ!え、ええ、まあそうでしょうね。彼女たちと比較して私の――」


ガラガラ


結衣「やっはろー!……あれ、どうかした?」

雪乃「い、いえ。なんでもないわ。……そこの男からセクハラを受けていただけよ」

八幡「おい、いい加減なことを言うな」

戸塚「あ……比企谷くん!」

八幡「……戸塚か」

結衣「部員の一員として、今日は依頼人を連れてきてあげたの」フフン

ルルーシュ「ん?部員になったのか」

八幡「シラネ」

雪乃「由比ヶ浜さん」

結衣「いやー、いいってお礼とか!当然のことをしたまでってゆーか?」

雪乃「あなたは別に部員ではないのだけれど」

ルルーシュ「なんだ違うじゃないか」

結衣「違うんだ!?」

八幡(違うんだ)

雪乃「で、戸塚彩加くんでよかったかしら。何かご用かしら?」

戸塚「あ、えっと……テニスを強く、してくれる、んだよ、ね?」

雪乃「由比ヶ浜さんからどんな説明を受けたか知らないけれど、強くなるかどうかはあなた次第よ」

雪乃「ここは自立を促すところであって、便利屋ではないわ」

戸塚「そう、なんだ」

ルルーシュ「八幡、このままでいいのか」

八幡《いいわけないだろ。戸塚は俺が守る!》

ルルーシュ「いい心意気だ!……といっても単純にテニス部を強くするのは至難の技だろう」

八幡《まあ結局は個人の努力次第だからな》

結衣「ん?どうしたの?」

雪乃「どうしたのではないわ。あなたの無責任な発言で一人の少年の淡い希望が打ち砕かれたのよ」

結衣「ん?んんっー?でもさ、ヒッキーとゆきのんなら、なんとかできるでしょ?」

ルルーシュ「!」

雪乃「!」

八幡(あーあー負けず嫌いに火をつけてくれやがって)

雪乃「ふ、ふふ」

ルルーシュ「ふはは」

雪乃「あなたも言うようになったわね。この私を試すようなことを言うなんて」

ルルーシュ「ならば見せてやろう……。俺は奇跡をおこす男、ゼロ!なのだからな!」

八幡(なんだよゼロって……。もう材木座に取り憑いとけよ)






  * * *




ルルーシュ「目標は戸塚個人の戦力強化に伴う集団的士気向上だな」

八幡「まぁ、それしかないわな。他の奴とは接点ないし、部長が頑張ってたら影響されるだろ」

ルルーシュ「ああ。王が自ら動かなければ兵はついてこない。簡単なことだ」

八幡「戸塚自身は向上心もあるし、あとは成長スピードといったとこか」

ルルーシュ「その成長を効率良く促さなければならないのだが……」

八幡「どうした?」

ルルーシュ「いや、なに。戦術訓練ならまだしも、個人スポーツとなると……俺の分野ではない」

八幡「ああ、運動苦手っていってたもんな」

ルルーシュ「……あまり経験がないから教えられることがないだけだ」

八幡「つっても戦闘とスポーツなんて似たようなもんじゃないか?個人の駆け引きとか」

ルルーシュ「読み合いだのなんだの頭でどうにかなることは教えられるだろう」

ルルーシュ「しかし、それに体がついてこられるかは別だ。技もいろいろあるわけだしな」

ルルーシュ「使えるスキルが多ければ多いほど戦術も変わる。が、そのスキルを教える術がない」

八幡「そこは雪ノ下に任せればいいんじゃないのか?あいつ運動神経いいんだろ?」

ルルーシュ「確かにな。……だが、彼女の基準値を普通の人に当てたらどうなると思う?」

八幡「………キャパオーバーでぶっ倒れかねないな」

ルルーシュ「だろう。彼女は人にものを教えるのには向かない。出来て当たり前と考えているからな」

八幡「んーじゃあどうする。俺も由比ヶ浜も素人だぞ」

ルルーシュ「一先ず雪ノ下に任せ、お前が戸塚に合わせてコントロールしろ」

八幡「えぇ……。雪ノ下に指導者失格とかで追い出されないか?」

ルルーシュ「そうだな……」



「ハーッハッッハッハッ八幡」

八幡「高笑いと俺の名前を繋げるな。何の用だ材木座」

材木座「こんなところで会うとは奇遇だな。今ちょうど新作のプロットを渡しに行こうと思っていたところだ」

八幡「あー、悪い。ちょっと忙しいんだ」

材木座「……そんな悲しい嘘をつくな。お前に予定などあるわけないだろう?」

ルルーシュ「面倒だ無視しろ。雪乃を待たせると後が怖いからな」

八幡(言われなくとも無視するさ)スタスタ

材木座「え、ちょ、八幡?はちまぁぁぁぁん!!」ガシィ

ルルーシュ「このぉ!しつこい!」

八幡「おいまじで急いでるから」

材木座「ふっ、わかるぞ、八幡。つい見栄をはりたくなってしまって小さな嘘をついてしまったんだよな」

材木座「そしてその嘘がばれるのを防ぐためにさらなる嘘を――」

戸塚「比企谷くんっ!ちょうどよかった、一緒に行こ?」ギュ

八幡「お、おう」ニギニギ

材木座「は、八幡……。そ、その御仁は……。き、きさま!裏切っていたのかっ!?」

材木座「この半端イケメン!失敗美少年!ぼっちだからと憐れんでやっていれば調子に乗りおって……」

ルルーシュ「イケメンと褒められてるぞ。よかったじゃないか」

八幡「半端と失敗は余計だ。あと落ち着け。戸塚は女じゃない。男だ。……たぶん」

材木座「ぷ、ぷぷ、ぷじゃけるなーーー!こんな可愛い子が男の子なはずない!」

ルルーシュ(たしかにそこは疑わしい顔立ちをしているよな)

戸塚「あの、比企谷くんのお友達?」

ルルーシュ「そうなのか?」

八幡「どうだろうな」

材木座「ふんっ。きさまのような輩が我の強敵であるはずがない」

八幡「戸塚行こう」

戸塚「あ、うん………材木座くんだっけ。比企谷くんのお友達なら僕も友達になれる、かな」

戸塚「そうだと嬉しいんだけど。ぼく、男子の友達あんまり多くない、から」

ルルーシュ(……ほぅ。ではぼっちの八幡を見かねて接触という過程は当たらずとも遠からず、だな)

ルルーシュ(一人でも堂々と飄々としている八幡は、自分と比べて対照的に映ることだろう)

ルルーシュ(そこへの憧れや、特異性に惹かれたのではなかろうか)

ルルーシュ(女子にも男子にも可愛がられる存在にとって八幡は友達に求める条件に見合っていたのか)

材木座「フッ、くっ、クゥーックックック。如何にも我と八幡は親友。否、兄弟」

材木座「否否否、我が主であやつが僕。……まあそこまで言われては仕方あるまい。なんなら恋人でもいい」

戸塚「うん、それはちょっと……無理、かな。友達ってことで」

ルルーシュ「そろそろ行かないとまずいぞ」

八幡「戸塚、行こう。遅れると雪ノ下がキレる」

材木座「む、それはいかんな。急ごうではないか」

八幡(お前もくんのかよ)








*数日後*



ルルーシュ「ようやく基礎特訓は終わりか。お前もなかなか体が引き締まってきたんじゃないか?」

八幡「戸塚に付き合ってるうちに無駄にな。しっかし雪ノ下スパルタだなぁ」

結衣「うわっさいちゃん大丈夫!?」

ルルーシュ「むっ、戸塚が足を擦り剥いたみたいだぞ」

八幡「うおぉ……いてぇ」

ルルーシュ「ん、雪ノ下がどこか行くみたいだな」

八幡「トイレじゃね?」

ルルーシュ「女性に対して失礼だぞ」

結衣「もう、疲れた~。ヒッキー交代してよ」

八幡「わかった代わる」

結衣「やった。あ、これ5球で飽きるから気をつけてね」

ルルーシュ「早すぎるだろう……」


「あ、テニスしてんじゃん、テニス!」


ルルーシュ「三浦か……やっかいだな」

八幡「嫌な予感しかしねぇ」


三浦「ね、戸塚ー。あーしらもここで遊んでいい?」

戸塚「三浦さん、僕たちは別に遊んでるわけじゃ、なくて……練習を」

三浦「え?なに?聞こえないんだけど」

八幡(さすが女王様こえぇー)

戸塚「れ、練習だから……」

三浦「別にあーしらが使っても良くない?」

戸塚「だ、だけど……」

八幡「あー、悪いんだけど、このコートは戸塚がお願いして使わしてもらってるもんだから、他の人は無理なんだ」

三浦「は?あんた部外者なのに使ってんじゃん」

八幡「え?いや、俺たちは練習に付き合ってるわけで、業務委託ってかアウトソーシングなんだよ」

三浦「はぁ?なに意味わかんないこと言ってんの?キモいんだけど」

葉山「まぁまぁ、あんまり喧嘩腰になるなって。ほら、みんなでやったほうが楽しいしさ、そういうことでいいんじゃないの?」

葉山「じゃあ、こうしよう。部活者同士で勝負。勝ったほうが今後昼休みにテニスコートを使えるってことで」

八幡「は?」

葉山「もちろん戸塚の練習に付き合う。強い奴と練習したほうが戸塚のためにもなるし、みんな楽しめる」

三浦「テニス勝負?……なにそれ超楽しそう」ニヤ





  * * *



「HA・YA・TO・フゥ!HA・YA・TO・フゥ!」




ルルーシュ「で、どうしてこうなった」

八幡「こっちがききてぇよ……」

八幡「遊びに来た奴に練習場奪われるとはな」

ルルーシュ「実に気に食わないな……。力のある奴が弱いものを虐げるなど反吐が出る」

八幡「でも、強いやつとの実践のほうがためになるってのは一理あるだろ」

ルルーシュ「当然だ。だが、こちらとあいつらでは戸塚個人に対する意識が違う」

八幡「遊びか本気かってことか?」

ルルーシュ「そうだ。こちらは正式な部活動として、戦力強化という依頼に真摯に向き合っている」

八幡「それに比べ、あっちはただ楽しめればそれでいい。その一環で強くなれたら一石二鳥……だな」

八幡(まぁ正直ちゃんとやってんのは雪ノ下ぐらいだけどな)

ルルーシュ「明確な目的、目標のない行動からは何も生まれない。努力をしてるという嘘をつくことになる」

八幡「だったら、さっき言ってやればよかったんじゃねぇの?」

ルルーシュ「三浦は正論だとかロジックでどうにかなる相手じゃない」

八幡「まぁ自分がいいと思った意見以外は排他的だな」

ルルーシュ「だからより効率的で、はっきりするもので捩じ伏せればいい。力には力で対抗する」フハハ

八幡「そういうことか。言葉で言ってわからなきゃ、認めざる得ない状態を作ればいいと」

ルルーシュ「ああ。ちなみに三浦はテニス経験者のようだ。県選抜にも選ばれている」


八幡「は!?なのに受けたのかよ!こっちは未経験者の上に由比ヶ浜がパートナーだぞ!?」

ルルーシュ「……問題ない。お前のやるべきことは時間稼ぎだ」

八幡「稼いでどうする?デュースにでも持ち込むって意味か?」

ルルーシュ「対等に戦えるならそれでもいい。あくまで雪乃が戻って来るまでの時間稼ぎだ」

八幡「あいつ今どこにいんだよ」

ルルーシュ「保健室で薬品を取ってきている。戸塚のためのな」

八幡「あぁ、なんか三浦が現れたあたりからルルーシュの声きかねぇと思ったら探してたのか」

ルルーシュ「なんらかの諍いが起きるのは目に見えていたからな。三浦は自分の思い通りに物事を通したくなる人物であることから容易に想像つく」

ルルーシュ「とはいえ、お前の潜在能力にも期待してる。勝てるなら勝って雪乃にドヤ顔でもかましてやれ」

八幡「へいへい」

ルルーシュ「……ところで、壁打ちや戸塚との打ち合いを見て思ったが、狙ったところに打てるのか?」

八幡「まあ、一応。じゃなきゃあっちこっち玉飛んで疲れるからな」

ルルーシュ「十分だ。俺の指示通りに動け」

八幡「……任せるぞ」




  * * *





八幡「めっちゃ強いじゃん」

結衣「だから言ったじゃん」

八幡「てか、お前さっきから全然球触れてねぇだろ」

結衣「いやー、テニスってあんまやったことなくてさ」

八幡「……お前やったことないのにここにいんの?」

結衣「む!わ、悪かったわね!」

八幡(どんだけいいやつだよお前は)

八幡(つーか指示出す的なこと言っておいて黙ってるルルーシュはなんなの?負けちゃうよ?)

ルルーシュ「よし、八幡はなかなかやるようだとわかった。それゆえに相手も結衣を集中的に狙うようになってきたな」

八幡(ようやく口開いたか)

ルルーシュ「ここでは携帯のやり取りはできないから、不審に思われない程度に相槌しろ」

八幡(了解)コクッ

ルルーシュ「まずポジション変更。結衣を前衛におき、八幡は後衛に回れ」

八幡「由比ヶ浜、お前前衛いろ。基本俺が後ろで捌く」

結衣「ん、お願い」

ルルーシュ(いやいやしていた基礎トレが役に立つな。ある程度無茶な動きもできるだろう)

葉山「お、ポジション変えてきたな」

三浦「そんくらいじゃ何も変わらないっしょ」ニィ

ルルーシュ「ゲームスタートだ」


ルルーシュ「まずは由比ヶ浜に打たせる気はなく、全部俺が拾うというアピールだ。大げさに動く」

八幡「うっし」ザザッ

ルルーシュ「次、葉山のサーブを三浦のほうに返せ」

三浦「一人でやる気なわけー?」

ルルーシュ「由比ヶ浜に俺が行くと合図し前に出るふりをしたのち、右に跳べ。葉山側に返す」

葉山「おっ、追いついたか。でも……」

ルルーシュ「よし、そのままスタートしやすい姿勢に戻れ。次、左に来るぞ。葉山が打ってから動き出せ」

葉山「……やるな」

ルルーシュ「真ん中に上げろ。スマッシュを打たせる」

三浦「ちょうしに、ノンなっての!」スパーン

ルルーシュ「顔に飛んでくるぞ。左を狙え、軽く当てるだけでいい」


ポンッポンポンポン………


三浦「ん、なっ……」


「すげー!全部読んでたぞあいつ!」

「たまたまじゃないのー?」


ルルーシュ「フフハハハハハ!!やれるじゃないか!」

ルルーシュ「自分の思考を読まれ、挑発の一発も返され自身の失点となる。これほどメンタルにくることはない」

ルルーシュ「よくやった八幡。お前のスペックが功をなしたぞ」

八幡(まじかよ。つかルルーシュに褒められるとか珍しいな。でも)

ルルーシュ「この流れは相手がこちらを舐めきっていたこと、三浦の読みやすい性格からできた策だ」

ルルーシュ「流石に警戒してくるだろうから、そうなんどもうまくいくわけではない」

ルルーシュ「だがこれで十分。チェックだ」








雪乃「この馬鹿騒ぎは何?」





結衣「ゆきのん!」

八幡「おーようやく帰ってきたか」

雪乃「これを取りに行ってたのよ。はい、手当は自分で出来るわね?」

戸塚「あ、ありがとう」

結衣「詳しい事情は後で話すから、はい!ゆきのんバトンタッチ!」

雪乃「ちょ、ちょっとなにがどうなっているの……」

八幡「まぁ、この勝負に負けたら奉仕部の威厳がなくなると思え」

雪乃「……あなた、一体なにしたのよ」

八幡(別に俺が何かしたわけじゃないにゃしぃ)

結衣「まぁまぁ、このまま負けるのはヤーな感じだし、お願い!」

雪乃「なんで私が……」

結衣「だってこんなこと頼める友達ゆきのんしかいないもん」

雪乃「とも、だち?」

八幡「普通面倒ごと友達に頼むか?なんか都合よく利用してるだけな気がするけど」

結衣「え?友達じゃなきゃ頼まないよ普通。だってこんな大事なことどうでもいい人に頼めないよ」

ルルーシュ(………ほぅ)

八幡「………なぁ多分そいつ本気でいってるぞ。バカだから」

雪乃「あまり舐めないで貰えるかしら。これでも人を見る目には自信あるのよ」



三浦「雪ノ下サン?だっけ?悪いけど、あーし手加減とか出来ないから。オジョウサマなんでしょ?」

三浦「怪我したくなかったらやめといたほうがいいと思うけど?」

雪乃「私は手加減してあげるから安心してもらっていいわ。その安いプライドを粉々にしてあげる」

八幡(さっきの攻防でショック受けてたのにさらに追い打ちとは……。さすが悪逆皇帝の策略。エグいなぁ)






  * * *







材木座「フハハハハハハ!圧倒的じゃないか我が軍は!薙ぎ払えー!!」

ルルーシュ「フフハハハハ!」

八幡(うるさいのが二人もいる……)

ルルーシュ(ここまでは完璧。雪乃の加入で戦力差は圧倒的となった)

ルルーシュ(雪乃を避け、八幡を狙ったところで、俺というアドバイザーがいる)

ルルーシュ(しかし、相手も気づいたのだろう。先ほどまでの余裕のなさとは一転、笑みすら溢れ始めた)

ルルーシュ(そう、雪乃のガス欠が思ったよりもはやい。その技術は見事なものだが、体力が致命的だった)

ルルーシュ(相手も機を伺っている様子。ここでキメの一つでも入れられては風向きが変わってしまう)

ルルーシュ(………一つ手をうっておく必要があるな)




雪乃「あっ……」ポーンポーンポーン

八幡「大丈夫か雪ノ下」

雪乃「ええ……。彼女、完全に私だけを狙って来てるわね」

八幡「……まさかこんなに体力ないと思わなかったぞ」

ルルーシュ「ボール取りに行ってやれ」

八幡(わーったよ)テクテクテク

八幡「あーわるい、そこのボール――」

ルルーシュ「体を借りるぞ」

八幡「を、って、は?」スゥ…

八幡『すまない、そこのボール取ってもらってもいいかな?』ニコッ

「え?あ、うん、はい!」

八幡『ありがとう。あ、そうだ一つ頼みごとをしてもいいかな?』キュイイイイン




雪乃「何をしていたの」

八幡「あ?何ってボール拾いだけど」

雪乃「そうではなくて……いえ、なでもないわ」

八幡「?」

三浦「なにしてんのー?もしかして体力ないから休憩?それってせこくなーい?」

葉山「まぁまぁ」

雪乃「……では、お望み通り叩き潰してあげるわ」パコーン!




ルルーシュ(応酬が続く。ギリギリでこちらが上回っているが……)

ルルーシュ(相手のペースが上がり、こちらの点入りが悪くなってきた)

ルルーシュ(もう三浦は雪ノ下を追い込むことしか見ていない)

ルルーシュ(雪乃も意地でなんとかなってる状態だ)


雪乃「フゥ……」パコーン

葉山「っよ」パコーン

雪乃「ハァ……ハァ……。っふ!」

三浦「………ホラァ!」

雪乃「っく……。あっ……」ポーン

三浦「……!もらっ、たぁ!!」ニヤァ

ルルーシュ「八幡、襟に血がついてるぞ」

八幡「え、まじで」クイッ



「きゃああああああああ!!!」



雪乃「!」

葉山「!」

三浦「!?」ポン

ルルーシュ「八幡、チャンスボールだ見逃すな」

八幡「お、おう?」スパーン!




ピピー!




戸塚「あ、えっと。げ、ゲームセット」

三浦「………はっ!?ちょっと待てし!今のはノーカンだから!」

戸塚「え、でも、一応入ってたし……」

三浦「そういうことじゃないっしょ?外野がなんかあったから気逸らされたせいなわけ、わかる?」

戸塚「あの、でも……」

雪乃「自分の不祥事を他人に押し付けるなんて、スポーツマン失格じゃないかしら」

三浦「なに?途中参加のくせになに偉そうにしてんの?」

雪乃「それを言うなら、経験者さんが初心者を随分と痛めつけてたみたいだけれど?」


八幡「おい、大丈夫かあれ」ボソボソ

ルルーシュ「俺の言う通りに少し追撃してやれ」


八幡「気を逸らして負けたのは完全にそっちのせいだろ」

八幡「つっても、今の勝ち方はこちらとしても不本意なわけだ」

八幡「時間もないし、ラストだけやり直しってのはどうだ?」



ルルーシュ「1戦だけなら雪乃も全力を出せる。八幡を狙ったところで読まれる」

ルルーシュ「ゆえにプライドの高い三浦なら、仕方ないから負けてあげた、という選択になる」

ルルーシュ「どちらを選ぶにせよ三浦に勝ちはもうない。これでチェックメイトなんだよ」



三浦「……あーあ。なんかシラけた。もうあーし、テニスなんかどーでもいーや」

三浦「せいぜい頑張って練習したらー。いこ」

戸部「いやーあれは完全に優美子の勝ちだったわー。ヒキタニくんないわー」

大岡「それな」



八幡「あーなんとかなったな」

葉山「やぁヒキタニくん。なんかいろいろすまなかったな」

八幡「うおっ!?い、いや別に……。部外者ってのは正論だしな」

葉山「ははっ、君はいいやつなんだな」

八幡「……お前の方がいいやつだろ」

葉山「そんあことないよ。じゃあ先行くな。戸塚も騒がしくしてごめんな」

戸塚「あ、僕は大丈夫、だから」

葉山「そっか。それじゃ」




  * * *




雪乃「試合に勝って、勝負に負けた……というよりなくなった、という感じかしら」

結衣「観客もシラけてつまんなそーに帰っちゃったしね~」

八幡「馬鹿言え、俺とあいつらじゃハナから勝負になってねぇんだよ」

結衣「たしかに眼中にないとかはあるよね」

八幡「おい、言葉に気をつけろ。言葉ってのはしっかり選んでいかないと人を傷つける刃になる」

結衣「でも、ヒッキー途中かっこよかったよ!一人であの二人を相手にしてた時とか!」

雪乃「その話、どうも信じられないのだけれど」

結衣「ほんと全部相手の動き読んで先回りしててさー、優美子もちょー!驚いてたし!」

八幡「たまたまだあんなの」

八幡(たまたま幽霊が憑いてたおかげでな)

八幡「怪我、大丈夫か」

戸塚「うん…」

戸塚「比企谷くん、あの……ありがと」

八幡「別に俺はなんもしてねぇよ。礼ならあいつらに……先行ったのかよ」

八幡「おい、ゆきのし」ガチャ

結衣「な、なななな!」ブラチラ

結衣「もうほんと死ね!」ボゴッ

八幡(やるじゃん。ラブコメの神様)




  * * *





ルルーシュ「お疲れ様だな」

八幡「ああ、柄にもなく目立っちまったな」

ルルーシュ「観客からしたらあまり記憶に残らない出来事だったとは思うがな」

八幡「そのほうが助かる。三浦はあのあとなんか言ってたか?」

ルルーシュ「特に気にしてないようだな。結衣と遊びに出かけたらしい」

八幡「そうか、そこも問題ないみたいだな」

八幡「………なぁ、あの時なにしたんだ?」

ルルーシュ「あの時?なんのことだ」

八幡「ほら、なんかここぞってときに、見計らったように叫んでたやつがいただろ?」

ルルーシュ「あれは運がよかったな。あれがなければ危うく負けてたかもしれん。フハハ」

八幡「そうじゃなくて、なんか仕込んでたんじゃないのか?」

ルルーシュ「仕込む?見ず知らずの他人に叫べと?確かに、お前にそういう交友があればべつだが」

八幡「まぁ、無いわな。……でも、あのときルルーシュは」

ルルーシュ「なんだ?」

八幡「……いや、やっぱなんでもねーや」

ルルーシュ「そうか」

八幡「そういや、あれから戸塚は練習に熱が入ったみたいだぞ」

ルルーシュ「それはよかった。お前も全力で戦っただけのことはあるな」

八幡「それが効いたのかどうかはわかんねーけどな」

ルルーシュ「結果オーライというやつだ。一応依頼は達成したということでいいだろう」

八幡「だな。モチベを与えるだけしかしてないけど」

ルルーシュ「それも立派な貢献だ。モチベーションの獲得、維持が難しいから人は思い切りがつかない」

ルルーシュ「それを与えられたのは、お前たちの力だ。誇っていいぞ」

八幡「そいつはどーも。んじゃそろそろ帰ろーぜ」







ルルーシュ(あのとき、ギアスを使う必要はあったのだろうか)

ルルーシュ(今回はたまたま結果がよかっただけ)

ルルーシュ(当然、ギアスを使ったからには、成功する算段はあった)

ルルーシュ(相手が外野に気をとられるということも、八幡はそれに動じないということも)

ルルーシュ(だが、使わなくともどうにかなったんじゃないのか?)

ルルーシュ(もし、雪乃や八幡が奥の手を残していたとしたら、邪魔になってしまったんじゃないか)

ルルーシュ(いや、もしもなんてない。待っていれば奇跡は起こるなんて弱者の考え)

ルルーシュ(俺はより確実性のある策に身を投じただけ)

ルルーシュ(では、あの試合に勝つ必要性は?こちらが負けたときのリスクはあまりない)

ルルーシュ(精々、戸塚が苦労するくらいだ)

ルルーシュ(しかし、勝ったときのメリットはあった)

ルルーシュ(戸塚との交友は切れず、今後も頼られることもあろう)

ルルーシュ(彼は八幡にとって、重要なキーパーソンになるはずだ)

ルルーシュ(そして大衆に八幡の認識を強め、改めさせる)

ルルーシュ(カーストトップの葉山たちからの評価もまた変わってくるだろう)

ルルーシュ(必要性は大いにあった)



『間違った方法で得た結果に、価値なんてない』



ルルーシュ(………俺はまた間違ったのだろうか)

ルルーシュ(ギアスに巻き込まないといいつつ、巻き込んでしまっているのではないか)

ルルーシュ(だが、結局この世の中は結果が全て。結果を出さなければ、なにも変わらなかった)

ルルーシュ「だから――――」









***


ここまでである
やっと原作1巻分だけど終わんのかこれ

ルルーシュが八幡にとりついて外出(情報収集)するための八幡をイメージできなさそうな服かだて眼鏡やサングラスといった変装グッズ的なのをカマクラが奪って逃走
という感じの、ゼロの仮面をアーサーが奪った騒動みたいなイベントとかもみたい

TURN4





*サイゼリア*





ルルーシュ「勉強なら図書室とかでいいんじゃないのか」

八幡「図書室だと静かすぎて逆に集中できねー」

ルルーシュ「なぜだ?喧騒あるほうが気が散るだろう」

八幡「雑音の中で黙々とやってると周りの音が気にならなくなんだよ」

八幡「それによって自分は集中できていると実感してさらにのめりこめる」

八幡「一種のシナジー効果だ。お店は客入って嬉しい、俺は勉強捗る。みんなハッピー」

ルルーシュ「ドリンクと少しのつまみだけで長居されると迷惑だと思うがな。しかし、ふむ。そういうものか」

八幡「ああ。それに図書室でお前と話してると頭おかしいと思われるしな」

ルルーシュ「それはここでも同じだろう」

八幡「皆和気藹々とやってる中で他人を気にする奴なんかいないだろ」

八幡「イヤホンつけてたら単語のリスニングやってるか、電話してるとでも思わせられるしな」

ルルーシュ「変に気を回すんだなお前は………」

ルルーシュ「別に八幡が勉強しているのを邪魔する気はない。そういうことなら俺はどこかいってる」

八幡「勉強教えてくれよ」

ルルーシュ「それなら尚更家とかのほうがいいだろう」

八幡「家だとゲームかアニメ見ちまうからな」


ルルーシュ「まぁ自宅では他のことに目が移ってしまうのは仕方ないか。しかし、意外だな。お前が人に教えを請うとは」

八幡「数学はからっきしなんだ。助けてくれ」

ルルーシュ「なるほどな。まあいいだろう」

ルルーシュ「……そうだ、教える前に一つ聞いておきたいことがあるんだが」

八幡「あん?」

ルルーシュ「チェーンメールが流行ってるそうなんだが、なにか知っているか」

八幡「なんだそりゃ」

ルルーシュ「チェーンメールとは不特定多数への転送を求める内容が書かれたメールのことで」

八幡「意味くらい知ってるっての。なんでそれを聞いてきたのかってことだ」

ルルーシュ「どうやらお前のクラスで悪質なメールの転送がやりとりされているようなんだが、来ていないか」

八幡「ほーん。お生憎、俺はクラスの輪から外れてるからな。そういうメールをやりとりする相手がいないし」

ルルーシュ「結衣とアドレス交換していただろう?」

八幡「緊急時の連絡先程度であって、お話ししよ?的なもんじゃないっての」

ルルーシュ「……まぁ確かに会って話せば良いことをわざわざメールする必要もないか」

八幡「……え、まさかそのチェーンメールの内容が俺についてだったりすんの?」

ルルーシュ「自意識過剰だな。お前の言った通り、クラスの輪から外れてるであろうお前には関係ない内容だろう」


八幡「なんでそう言い切れんの?」

ルルーシュ「先ほど部室で、結衣が変なメールが来たと言っていたのは覚えているか」

八幡「ああ、なんか言ってたな。……そういえば、クラスのことだから俺は関係ないとも言ってた」

ルルーシュ「あれはチェーンメールだろう」

八幡「なんでそんなのわかるんだよ」

ルルーシュ「クラスの奴らを観察していればある程度わかる」

八幡「え、なに。お前いつもそんなジロジロ他人を見てんの?」

ルルーシュ「必要なことだからだ!いついかなる時にお前が有利になる情報が入ってくるかわからないだろう」

八幡「チェーンメールとか、まったく有利な情報じゃないんだが。むしろ耳に入って不快まである」

ルルーシュ「それはすまなかったな。だが、この件のせいで不利益が生まれることになる」

八幡「なんでだよ。つか、なんのだよ」

ルルーシュ「俺たちの願いを達成するには、他人の力が必要不可欠と考えている」

ルルーシュ「その対象となる奴らがそれどころではなく、お前に構っている暇もないとなれば計画に支障が出かねない」

ルルーシュ「なんなら、自分らに被害の及ばない孤立無縁のお前を犯人に仕立て上げる可能性まで出てくる」


八幡「マジかよ最低だな。那珂ちゃんのファンやめます」

ルルーシュ「は?」

八幡「すまん、なんでもない。……しかしそれはシャレにならねぇな。俺の平穏な学生生活が地獄と化す」

ルルーシュ「ネットスラングをリアルで吐くのは気持ち悪いぞ」

八幡「知ってんのかよ!この世界に馴染みすぎだろ……」

ルルーシュ「まあいい、平穏かどうかは微妙なところだがつまりはそういうことだ。早々に対処すべき問題になる」

八幡「そんで?俺たちで犯人探しでもすんの?仮に特定したとしても、それを本人にやめるよう言ったところで逆に面倒なことにならないか?」

ルルーシュ「そうだな……。そもそも内容がわからないとなんともな」

八幡「ルルーシュが人の携帯盗み見ればいいんじゃねーの?」

ルルーシュ「たとえ霊体だとしても、他人のプライバシーを侵すようなマネはしたくない」

八幡(俺のプライバシーは無いも同然だけどな)

ルルーシュ「それよりも、もっと確実で有効な手があるだろう」

八幡「……由比ヶ浜か?」

ルルーシュ「そうだ。彼女はこの件をよく思っていない立場の一人。その解決に協力するとなれば」

八幡「由比ヶ浜から好印象で一石二鳥、ってか?あほくせぇ……」

ルルーシュ「お前のためだ。なんでもするのだろう?」

八幡「……まぁ、由比ヶ浜がどうとかは置いておくにしても、俺まで飛び火するのはよろしくないな」

ルルーシュ「決まりだな。明日の部活にでも聞いてしまおう」


八幡「了解。んじゃ数学教えてくれ」

ルルーシュ「わかったわかった」

結衣「あ!」

雪乃「……あら」

ルルーシュ「ん?……これはこれは」

八幡「げっ」

結衣「ヒッキー、ここでなにしてんの?」

八幡「や、勉強だけど」

結衣「おお、奇遇。やー、あたしとゆきのんも勉強をしにちょっとここまで……じゃ、じゃあ、一緒に勉強会、する?」

ルルーシュ「はは、数学はまた今度だな。彼女たちと楽しく勉強会するといい。俺は事件についてできることがないか探しておこう」

八幡(りょーかい)コクッ





  * * *





材木座「ふむん……。闇の時間が、始まるか……」

ルルーシュ「なに!?まさか、きさま!?」

材木座「封印を、外すときが来たようだな……」

ルルーシュ「やめろおおおおおおおおお!!」





八幡《やかましい!誰にも聞こえないからってはっちゃけすぎだろ!》カチカチ‼︎

ルルーシュ「いや、なに。こいつがなんども同じセリフを吐くものだからつい、な」

ルルーシュ「というか、いい加減反応してやれ」

八幡(はぁ……)

八幡「材木座……なんか、用か?」

材木座「ああ、いやすまんな。いいフレーズが出てきてしまったものだから無意識に口に出していたようだ」

材木座「ふっ、やはり我は骨の髄まで作家だというのかな……」

雪乃「作家ってなにかを作りだす人だと思っていたけれど……なにか作ったのかしら?」

材木座「んがっぐぐっ!……ほ、ほむん。そう言っていられるのも今の内だけだ……。我はついに手にしたのだよ、エル・ドラドへの道筋をな!」

八幡「なんだよ受賞でもしたのか」

材木座「い、いやっそれはまだだ……。我は此度の職場見学で出版社へと赴くことにしたのだ!つまり、わかるな?」

ルルーシュ「さっぱりわからん」

八幡「わかりたくもねぇな」

結衣「職場見学かぁ……。ね、ヒッキーどこ行くの?」

八幡「自宅」

ルルーシュ「いい加減飽きたぞそのネタは」

八幡《ガチ、だとしたら?》

ルルーシュ「なん、だと……?」


結衣「や、その線はもうないから」

八幡「グループの奴らがいきたいとこじゃね」

結衣「なんなんその人任せ感」

八幡「いや……、昔からそうなだが、最後余り物でグループに入れられるから発言権ねぇんだわ」

結衣「なーるほ、あ、ああー、ごめん」

ルルーシュ(まあそうだろうな。今の八幡を無理に発言させたところで、周囲からの評価はマイナス)

ルルーシュ(しかし環境に甘んじてなにもしないのもどうだろう)

ルルーシュ(せめて戸塚や結衣がグループであればよかったのだが……)

雪乃「由比ヶ浜さんはどこへ行くか決めたの?」

結衣「ん?あたしなら―――」


ルルーシュ(職場見学か。そういえば教室でもその話題が主体であったな)

ルルーシュ(………グループは三人一組。この時期にチェーンメール騒動で教室の雰囲気が悪くなった)

ルルーシュ「八幡、折を見てチェーンメールの話題を出してみろ」

八幡《なんかわかったのか?》

ルルーシュ「多分な。ただ未だにメールの内容はわからん。確証が欲しい」

八幡《了解》

八幡「なぁ、由比ヶ浜――」



コンコン


雪乃「こんな時間に……。どうぞ」

葉山「お邪魔します」

八幡(葉山?なんでこんななんでも持ってそうなやつがここに)

ルルーシュ(ここで葉山か……まあいい、これは嬉しい僥倖だ。クラス……強いては校内のトップカーストとも言えるやつに貸しをつくれるのだからな)

葉山「こんな時間に悪い。ちょっとお願いがあってさ」

葉山「いやー、なかなか部活から抜けさせてもらえなくて。試験前は休みになっちゃうから、どうしても今日のうちにメニューをこなしときたかったっぽい。ごめん」

雪乃「能書きはいいわ」

雪乃「なにか用があるからここに来たのでしょう?葉山隼人君」

八幡(ん?)

ルルーシュ(これは……)

八幡《なんか怒ってねーか?早く帰りたいから?》

ルルーシュ「違う、とも言い切れないが。葉山が原因だろうな」

八幡《なんで断言できる》

ルルーシュ「………勘だ」

八幡《ほー》

八幡(なんか知ってるような気がするが)

ルルーシュ「まあ今は置いておけ。先に葉山の依頼を解決する」


ルルーシュ(間違いなくチェーンメールのことだろう。これでは結衣のためにも八幡が行動を起こすという形式ではなくなってしまったが、このケースも想定していた)

ルルーシュ(彼がここにくる可能性は低いと踏んでいたが、こんなにも行動が早いとはな)

葉山「ああそれなんだけどさ、これを見てくれないか」スッ

八幡「……おい、これ」

ルルーシュ(チェーンメール……。葉山の取り巻きの男子3名に対する悪評を広めているようだ)

結衣「昨日言ったでしょ?うちのクラスで回ってるやつ……」

雪乃「チェーンメール、ね」

葉山「これが出回ってから、クラスの雰囲気が悪くてさ。それに友達のことを悪く言われれば腹がたつし」

葉山「止めたいんだよね。こういうのってあまり気分のいいものじゃないからさ」

葉山「あ、でも犯人捜しがしたいわけじゃないんだ。丸く収める方法を知りたい。頼めるかな」

八幡(は?)

ルルーシュ(は?)

雪乃「つまり、事態の収拾を図ればいいのね?」

葉山「うん、まぁそういうことだね」

雪乃「では、犯人を捜すしかないわね」

葉山「うん、よろし、え!?あれ、なんでそうなるの?」

ルルーシュ「バカなのか?犯人を特定しなければなにも事態は変わらないというのに」

八幡《多分あれだ、こんなの気にしないようにしよう!って風潮があればいいとか思ってんだろ》


ルルーシュ「なるほど……。こいつは保守的な人間ということか。特定し、注意することでその相手の心になんらかの変化を与えることさえ拒む」

ルルーシュ「こういうのを聖人君子とでもいうのか?」

八幡《へたれなだけだろ》

ルルーシュ「確かに人というものに恐れを抱いているとも取れるが、結果的にはそれで周囲の調整ができているのだから認めるべきだろう」

八幡《まあ結果だけみればこいつはすげーよ》

八幡(俺にまで声かけてくれるくらいだからな。ふひっ)

ルルーシュ「まぁ、この件は時期がたてば解決することでもあるからな。そういう解決でも問題ない」

八幡《なんで?》

ルルーシュ「原因は職場見学のグループ決めだ」

八幡(……あー。そうかグループは3人まで。4人仲良しなところがあるとすると1人のけ者になる)

八幡(のけ者になるパターンはもともと4人か7人以上のグループであったことが条件)

八幡(だが7人以上のグループはそうそうできない。となると候補は絞られる)

八幡(葉山とグループを組みたいやつの犯行という可能性もあるが、その線は薄い。つまり………)

八幡《葉山んとこの3人の中に犯人がいるってことか》

ルルーシュ「気づいたか。そうだ、これは葉山グループ内部で起きた犯行だ」

ルルーシュ「外部の人間が、葉山と組みたいがためにグループを瓦解させようとした線はない」

ルルーシュ「それについて詳しく掘り下げる必要はないだろう」

ルルーシュ「そもそもしかける時期が意味不明だ。交友を崩せる足がかりがない。悪評を広げて取り入った先にあるのは、事件の犯人ではないかという噂になる」




雪乃「メールが送られ始めたのはいつからかしら」

葉山「先週末からだよ。な、結衣」

雪乃「先週末から突然始まったわけね。」



ルルーシュ「人は付け入る隙がなければ仕掛けようと思いにくい。しかし、逆に言えばこの時期だからこそ悪評を流す価値があると思うやつがいる」

八幡《ハブにされるのを恐れただれか、だな》

ルルーシュ「ああ。だが正確には違う。ハブにされるのを恐れているのは全員だ」

八幡(………そういうことか)

ルルーシュ「もうわかったな。あとは解決策だが―――」




雪乃「私は犯人を捜すわ。一言いうだけでぱったり止むと思う」

雪乃「その後どうするかはあなたの裁量に任せる。それで構わないかしら」

葉山「ああ、それでいいよ」

八幡「いや、必要ないぞ」

雪乃「………比企谷くん。あなたまで葉山くんと同じことを言い始める気かしら」


八幡「そういうわけじゃない。お前が犯人を特定する必要がないってだけだ」

雪乃「あら、ではあなたが捜してくれるのかしら?」

八幡「だから捜す必要がないんだよ。もうわかったからな。解決策もある」

雪乃「………へぇ。では聞かせてもらおうかしら」

八幡「簡単な推理だ。俺のように他人を観察するのが得意だからこそ導き出せた……な」ドヤァ

ルルーシュ(これはうざいな)

雪乃「由比ヶ浜さん、通報お願い出来るかしら。ここに盗撮盗聴をする変質者がいると」

八幡「おいやめろ」





  * * *








戸塚「おはよ、八幡」

八幡「……天使か?あ、いや戸塚か。どうかしたか?」

戸塚「あ、いや、グループ分けだけど……」

八幡「ん?ああ、そうだな。そろそろ順調に決まってきた頃だなー」

ルルーシュ「うまくいったようだな。戸部、大岡、大和の3人のグループになっている」

葉山「おかげで丸く収まった。サンキュな」

八幡「別に俺はなんもしてねぇよ」

葉山「そんなことないって。……俺、いままでみんな仲良くやれればいいって思ってたけどさ」

葉山「俺のせいで揉めることも、あるんだな」




ルルーシュ「状況はクリアされたな」

ルルーシュ「葉山隼人に貸しを作ることもでき、八幡にトップカーストとの交流を持たせるきっかけにもなった」

ルルーシュ「今回のことで葉山と同じグループも組めたことだ。せっかくの機会、一気に距離を詰めるチャンス」

ルルーシュ「戸塚も加わったことでさらに状況は良いものとなった」

ルルーシュ「徐々に手数が増えて行く。案外目標達成も間近なのかもしれないな」ククク




葉山「じゃあ名前書きに行こう。場所はどうする?」

八幡「任せる」

「あ、あーし隼人と同じとこにするわ」

「うそ、葉山くんそこ行くの?あ、うちも変える変えるぅ!」

「あたしもそこにしようかなー」

「隼人ぱないわ。超隼人ぱないわ」

八幡「………」

戸塚「………」





ルルーシュ「…………まぁ、そうなるな」







***

短いけどここまで
流れ的に次はサキサキの話なんだろうけどルルーシュを絡めた話が思いつかないからカットでもいいかな。原作通りに八幡が解決したってことで

>>145ちょっとイメージ湧かなかった……けどアイデア出しはありがたいので騒動系考えてみる

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月09日 (金) 10:01:24   ID: Awja-XXn

続きはよ

2 :  SS好きの774さん   2015年10月09日 (金) 20:31:14   ID: rG30LfMI

続き、待ってます

3 :  SS好きの774さん   2015年10月10日 (土) 10:32:10   ID: 60THWCl4

次も待ってます

4 :  SS好きの774さん   2015年10月10日 (土) 15:02:31   ID: wepb50YD

いやぁ
面白いです!
続き待ってます!

5 :  SS好きの774さん   2015年10月13日 (火) 19:44:19   ID: 0XRk2-kM

これは面白い!!

6 :  SS好きの774さん   2015年10月13日 (火) 21:55:51   ID: BBRe4xCB

めちゃめちゃ続きが気になる!!!

7 :  SS好きの774さん   2015年10月13日 (火) 22:41:46   ID: v62p7Crk

やれるじゃないか!

8 :  SS好きの774さん   2015年10月13日 (火) 23:42:16   ID: UGFBAuPw

これは期待www

9 :  SS好きの774さん   2015年10月13日 (火) 23:54:34   ID: VU08gdRY

おもしろい

10 :  SS好きの774さん   2015年10月14日 (水) 03:55:08   ID: gikiuqEo

さすがです!にいさん!

11 :  SS好きの774さん   2015年10月14日 (水) 20:26:03   ID: _AQKDUfF

クソワロタw

12 :  SS好きの774さん   2015年10月17日 (土) 19:14:49   ID: xVkbJpTp

シスコン同士波長が合ってるな

13 :  SS好きの774さん   2015年10月17日 (土) 23:14:38   ID: mj6zHzdL

はよ・・・はよ!!!

14 :  SS好きの774さん   2015年10月21日 (水) 14:53:18   ID: IrvxfVbr

面白かったです

15 :  SS好きの774さん   2015年10月24日 (土) 09:01:11   ID: n4HvLquj

先が気になります!

16 :  SS好きの774さん   2015年10月25日 (日) 10:21:34   ID: zry_oj-W

面白いと、言わざるを得ない(^^)

17 :  SS好きの774さん   2015年12月14日 (月) 17:12:40   ID: OXZC-Oga

続き、待ってました。
面白かったです。

18 :  SS好きの774さん   2015年12月18日 (金) 23:59:07   ID: EzDMNoTn

おもしろかったです!!期待してます

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom