スーツの女「男君、人殺しになってくれないか?」(6)


※この話はフィクションです


男「……何を突然に」

女「君、就職活動に失敗して仕事がないって言ってたよね」

男「そうだけれど」

女「そして家族がいなくて友人も多くない。頼れる人がいなくてお金に困っている」

男「……だからなんだ」ギロッ



女「おおっと。そんなに睨まないでくれよ。怖いなあ」

男「ヘラヘラ笑いながらそんな事を言われても」

女「それは失礼した。でも私の言いたいことはわかっているんだろう?」


女「君は人殺しに向いている。だから人殺しになってくれ」

男「そんな馬鹿な話、受けるはずがないだろう」

女「大学の友人の頼みでもかい?」

男「大学での唯一の友人の頼みだったとしても、だ。そもそも普通の友人はそんなことを頼まない」

女「普通の人間は君なんかの友達にならないよ」

男「……それはお互い様だろう」

女「まあね」



女「ビジネスとして見ても悪くない話だよ。一人殺すだけで50万円が手に入るんだ」

男「人間一人の人生の値段が50万? 安いものだな」

女「月に1人殺すだけで暮らしていける。月に2人殺せば夢の年収1000万越え。素晴らしい仕事だと思わないかい」

男「1年で24人殺してもたったの1000万だろう」

女「24人殺すだけで1000万だよ」

男「そもそも人殺しは警察に捕まって死刑だ。死刑じゃなくても一生塀の中。そんなこと割にあわないだろう」

女「捕まらないよ」

男「は?」

女「警察に捕まらないよ」

男「そんなわけあるか」

女「……そんなことを可能にするところから依頼なんだよ」

男「そんなこと、あるわけがない」

女「私が嘘を言うと思うのかい?」


男「あんた、冗談にしてはタチの悪いことを言うんだな」

女「冗談? これが冗談じゃないのはわかっていることだろう。入学式、私がしでかしたことを知らないのか」

男「……まさか。あんたと友達になったのは、それがきっかけだっただろう」

女「ああ、そうだったね」クスクス

女「それで、君はこの仕事を受けるの?」

男「受けると思っているのか」

女「もちろん」


男「……」



男「あいにく、受けない理由がない」

女「残念だったね。それじゃあ契約成立だ」



女「君は今日から人殺しだ」



男「今日からか?」

女「ああ。ついて来てくれ」

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