魔王「今日から本気だす」 (17)

側近「魔王様バンザーイ!魔王様バンザーイ!」

魔物達「「「「魔王様バンザーイ!魔王様バンザーイ!」」」」

魔王「うんありがとうありがとう、先代達に負けないようにがんばるよ」

側近「つきましては早速領内の視察や、他国との会談などを」

魔王「いやその前にやることがあるぞ」

側近「は?」

魔王「まず先代達の無念を晴らすべく、人間界を手に入れるんだ!」

側近「えっ?いきなりですか!?」

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魔王「何を驚く?そもそも魔王の根本的な仕事は三つ、魔界の統治、神との対決、人間界の征服だろう?ならば人間界の征服から行っても問題はないだろう?」

側近「いえまぁそうなんですけど、いきなりなんて無理ですよ、先代が当時の勇者に倒されてからわが国の国力は弱まるばかり、これでは人間界の支配など到底」

魔王「確かに勇者は恐ろしい相手だ、時に仲間と共に、時に単独で魔王を倒す人間達の希望、そして魔王の宿敵」

側近「今勇者が現れたらわが国は滅んでしまいますぞ、それにこう言っては何ですがその……魔王様は……」

魔王「構わん私が一番分かっているつもりだ、私は歴代の魔王でも最弱と言っても過言ではない」

側近「はっ……はぁ……ですのでその……今人間達と事を起こしては勇者が現れてしまいます、そして魔王様が敗れればもうわが国に魔王となれる者は居なくなってしまいます」

魔王「確かにそうなればわが国は滅ぼう」

側近「ですのでまずは失った国力などを取り戻すべく」

魔王「側近よ、誰が勇者と戦うと言った?」

側近「は?」

魔王「簡単な事だ、人間界を征服するのに勇者が邪魔、そしてその勇者が倒せないならば、戦わなければよい」

側近「えっ?」

魔王「」

魔王「勇者と戦わなければ人間界を落とすのは容易い事だ!」

側近「あの?意味が分かりかねますが?」

魔王「順を追って説明してやろう、幼い頃の私は将来魔王の補佐、ようは側近となるべく勉学に励んでいた」

側近「はい存じております、魔王様はその……単独の強さはそれほどではありませんが、様々な指南書や過去の戦争などの資料を読んでおりました」

魔王「うむ、まぁ今はその私が魔王とは皮肉ではあるがな、とりあえず過去の勇者達を調べて見た所、勇者の現れる方法はおおよそ三つのパターンが存在している」

側近「三つですか?」

魔王「まず一つ目は神や精霊などの加護を受け、勇者として覚醒するパターンだ、これはよくあるパターンであり、勇者達の多くはこれに該当する」

側近「先代を倒した勇者も精霊の加護を受けていましたな」

魔王「二つ目は一つ目のパターンの者などを祖先とする、勇者の家系または特別な力を持つ家系から勇者が現れるパターンだ、これはあまり多くは無いが勇者の息子や子孫が勇者となるというのは度々聞こう?」

側近「はい、確か四代前の魔王様がそういった勇者に敗れたと記憶しております」

魔王「これは長い伝承などで弱まっている場合と逆に強くなっている場合があるからな、良いとも悪いとも言えん」

側近「なるほど、それで三つ目は?」

魔王「異世界などから勇者を召喚するパターンだ、これもまたよくあるパターンだな」

側近「勇者の召喚!?確かにそれもまた聞き及びます」

魔王「これはどんな勇者か全く分からないし、どこで現れるか検討を付けにくい最も厄介な勇者とも言えるな」

側近「なるほど」

魔王「だがそんな勇者達にほぼ共通している事がある」

側近「勇者達の共通点?」

魔王「魔物や魔族との戦いを重ね、成長していくという事だ」

側近「はっ!?」

魔王「勇者達は加護なり特別な力なりで、人間の限界を超える程の強さを手に入れる者達だ、だが決して最初から強い訳ではない!」

側近「そっそれもそうですね!確かに一度は勇者を退けたものの、再び現れた勇者に敗れた魔王様もいたかと」

魔王「人間達の限界を超えた勇者達は強敵だ、歴代魔王が敗れてきたのがその証明だ……だが!それもあくまで戦いの中で成長したがゆえ!ならば成長させなければよい!勇者となったばかりならば私でも負ける事はまずありえん!」

側近「目からウロコです魔王様!」

魔王「更に勇者の出現傾向だが、主に弱い魔物が多く生息している辺境の地や、そういった国の城で王の命を受け旅に出る事が多いようだ」

側近「なるほど!ではそういった地域に強力な魔物を多数送り込めばよいのですね?」

魔王「いや、それでは不十分だろう、それにあまり沢山送れば先に住んでいた魔物が行き場を無くす恐れもある」

側近「確かに!すみません魔王様、私が浅はかでした」

魔王「いや、勇者の出現した所に強力な魔物を向かわせるというのは間違いではないぞ、要はそのやり方なのだ」

側近「やり方ですか?」

魔王「簡単な事だ、勇者の出現した地域に多少の強力な魔物を送ると共に、スライムやオオモグラなどの弱い魔物に人間を襲わない事を命ずるのだ、こちらから襲いにいかず隠れていれば勇者は強力な魔物と戦わざるを得ない、そして倒す事かなわずに敗れるのだ」

側近「おおっそれは素晴らしい!」

魔王「成長出来ないとなれば勇者と言えども人間、突然強くなるなどまずない」

側近「おお!完璧ではありませんか!」

魔王「いやまだだ、まだ穴がある」

側近「穴ですか?一体どこに?」

魔王「どこに勇者が現れるかが分からん、特に召喚されるパターンでは極論この城の近くで勇者が現れる可能性とてゼロではない」

側近「むっ確かに場所をある程度絞らねばなりませんな」

魔王「うむ、そこでだな?予知や予言、更には未来視や占いなど何でもよい、あらゆる手段を使って勇者の出現を探り当て、先手を打ち対策を講じるのだ」

側近「なるほど!先手を打つのは大事ですからな!」

魔王「これで六割と言ったところか?」

側近「なんとまだ六割!?」

魔王「これらは勇者が現れる時の対策だ」

側近「それ以外の事も必要と?」

魔王「勇者を実際に倒した場合の対策が必要なのだ」

側近「倒した場合?はて?何でしょうか?」

魔王「勇者は倒してそれで終わりではない!倒しても倒しても再び勇者が現れるのだ!」

側近「なんと!そうでした!そこを失念しておりました!」

魔王「我々魔族も魔王が敗れれば新しい魔王を選ぶ、それと同じだ」

側近「確かに勇者は人間達の希望と言われています、それが一度負けたからといってそれで終わりにはなりませんな」

魔王「勇者を倒した場合もいくつかパターンがあるが、おおよそ三つに分類される、まぁそれに合わないパターンもあるが今は置いておこう」

側近「またもや三つですか?」

魔王「まず一つ目は新しく勇者を選ぶパターンだ、これは神が新しく加護を与えたり、一族から選ばれたりといった具合だな」

側近「新たな勇者の誕生ですな」

魔王「そして二つ目は一つ目と多少被るが、力を受け継ぐパターンだ、死んだ勇者の仲間や一族、あるいは近くにいた者など様々なパターンがあるが、勇者としての力をそのままあるいは一部を受け継ぎ新しい勇者となるパターンだ」

側近「確かに一つ目と多少似ていますが、あれですな?周りの者が新しい勇者を選ぶか、もしくは死んだ勇者が新しい勇者を選ぶかの違いとでも申しましょうか?」

魔王「まぁその様な感じだな、そして三つ目だが、ある意味これが最も面倒くさく厄介なパターンだ」

側近「最も面倒くさくて厄介?」

魔王「その勇者自体が復活するパターンだ、これは大抵加護の力で死んでも魂が国へ戻り、そこで復活するというのが多いな」

側近「ああっありました!確かに同じ勇者が何度死んでも復活してくる事が!」

魔王「先の二つと違い、これは本人であるが故に知識や情報、経験などをそのまま持っているのがまた厄介なのだ、ただでさえ何度も倒さねばならないのは面倒くさいというのにだ」

側近「確かに最も面倒くさくて厄介ですな」

魔王「これらの勇者が再び現れる事をひっくるめて、勇者サイクルと呼ぶ事にするが、この勇者サイクルのパターンや状況次第でこちらもまた戦術などを変える必要があるのだ」

側近「さすが魔王様、まさか既にそこまでお考えになられているとは」

魔王「これらの勇者サイクルを止める手段は大きく分けると二つ考えられる」

側近「ふむふむ」

魔王「まず一つ目は勇者を出現させる存在を倒す事だ、神や精霊を倒す、または一族を滅ぼすなどだな」

側近「勇者を出現させる大元がいなくなれば勇者は現れませんからね」

魔王「そして二つ目は勇者の心を折る、または捕らえるなどでその活動を止めさせる事だ」

側近「なるほど、心を折ればいくら復活できても魔王様に逆らいはしませんな、それに捕らえてしまえば生きている間は新しい勇者は現れないと」

魔王「そのような所だな、勿論これらのパターンに含まれない勇者が現れる可能性もあるし、勇者以外の者が台頭してくる可能性もある、不足の事態に備え常に余裕を持ち準備を怠らない事が大事なのだ」

側近「魔王様!私感服いたしました!まさかそこまでお考えだとは!私もはや側近という立場を返上いたしたいです!」

魔王「それは困るぞ側近よ、補佐してくれる者がいなければ思わぬ落とし穴に嵌まるやもしれんからな、おまえにはしっかり働いてもらうぞ?」

側近「はい!ありがたきお言葉!しからばこの側近!魔王様に生涯お仕えし魔王様を補佐していく所存です!」

魔王「有無頼むぞ、では早速人間界の征服に着手する!」

側近「了解しました!よいな皆の者!」

魔物達「「「「おおー!」」」」

魔王「さて、やることは山ほどあろうな」

大臣「国王!魔王から宣戦布告が!人間界を征服すると!」

王様「なんじゃと!?ええいなんとしても魔王を倒すのだ!勇者を!勇者をさがせぇい!」

大臣「はいー!」



勇者「さて、今日から勇者か……神様の加護って言うけどあまり実感がないなぁ……」

戦士「何だ?自分が勇者だって自覚もないのか?」

勇者「だって今朝まで普通の城下町の一市民だったんだよ?」

魔法使い「まぁそのうち否が応でも自覚を持つことになるわよ」

僧侶「そうですよ勇者様」

勇者「そういうものかな?……でも変だね?さっきから魔物が全然見当たらないや」

魔法使い「確かに変ね?これだけ歩いていればスライムの一匹や二匹見かけないはずは……」

戦士「……おい武器を構えろ!何かくるぞ!」

勇者「えっ?何かって?どこにもいないよ!」

戦士「殺気だっ!スライム共じゃねえ!」

僧侶「はっ上です!」

勇者「上!?」

ドラゴン「ギャオオオオン」

勇者「……え?」

戦士「……ドラ……ゴン?」

魔法使い「何でこんな所に?」

僧侶「みっ見かけ倒しかも……」

ドラゴン「ギャオオオオン」

戦士「ぐわぁぁぉぁぁ!」

魔法使い「戦士!?」

勇者「そんな一撃なんて……」

僧侶「……全然見かけ倒しじゃないですね……かっ回復魔法」

戦士「……あ……うっ……」

魔法使い「……ねえ勇者?とりあえず……」

勇者「うん戦士は何とか運ぶよ」

僧侶「かっ回復魔法!回復魔法!」

魔法使い「逃げるわよ!」

勇者「戦士さんしっかり!」

僧侶「回復魔法!回復魔法!あっ魔力がもう」

ドラゴン「ギャオオオオン」

勇者「うわぁぁぁぁぁ!」


勇者2「ここは?」

長老「おお成功じゃ!勇者様が現れたぞ!」

勇者2「勇者?俺が?」

長老「実は斯く斯く然々で」

勇者2「なんだよそれ……とは言え召喚されたなら、やっぱり魔王を倒すしかないのか?それまで帰れないってのがお約束だよな、仕方ないやれるだけやろう、とりあえず向こうに行けばいいんだな?」

長老「はい、この剣をどうぞお持ちください」

勇者2「剣ねぇ……RPGなら王道だけどまさか俺が実体験する事になるとはね、最初はやっぱりスライムかな?」

ケルベロス「グルルルル」

勇者2「あはははは……そりゃねぇよ……くったぁっ」

ケルベロス「?」

勇者2「……ですよねー」

ケルベロス「グワオゥ」

勇者2「だあっくそっ!村から出たらいきなりあんな化け犬とか!どんなクソゲーだぁくそがぁ!KOTY確定だな!とによぉ!」

ケルベロス「グワオゥ」

勇者2「ぎゃぁぁぁぁぁ」

魔王「ふむふむ、ここのエリアは順調だな、こっちは?兵站の確保が必要かもしれんな」

側近「魔王様!勇者が現れました!」

魔王「きたか!それで?どんな感じだ?」

側近「はい!二人の勇者を確認していますが、それぞれ事前に絞り込んでいた地域から出現しました、そしてそれぞれドラゴンとケルベロスが勇者を倒しました、密偵によりますとどうやらどちらも本人が復活するパターンとの事です」

魔王「そうか、なら引き続き警戒と勇者の討伐を任せると伝えてくれ」

側近「はっ」

魔王「勇者……ついに現れ始めたか、だが私は負けん!なんとしても先代達の無念を晴らし!魔族と魔物達を救ってみせる!」

側近「魔王様!新たな勇者の情報が入ってまいりました」

魔王「うむ聞かせてくれ」

とりあえずここまで

とりあえず酉付けて来れたら後でまた来ます

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