傭兵「この剣、手入れしとけっ!」女「はいっ!」(57)

― 傭兵団アジト ―

傭兵「おいっ! この剣、手入れしとけっ!」ガチャッ

女「はいっ!」

傭兵「いいか……。しっかり手入れしとかなかったら、叩き斬るからな!」

女「分かってますっ!」

傭兵「……ちっ!」

女「皆さん! 装備のお手入れをしておきましたよ!」

戦士「お、サンキュー!」

剣士「いつも助かるよ!」

女「――あ、傭兵さんの剣もピカピカにしておきましたよ! いかがですか?」

傭兵「…………」

バッ!

もぎ取るように、剣を受け取る傭兵。

戦士&剣士「…………」

戦士「おいおい! ちょっと待てよ!」

剣士「ありがとう、の一言ぐらいいったらどうだい?」

すると――

ヒュオッ!

二人に剣先が突きつけられる。

戦士&剣士「ひっ!」

傭兵「さっきの強盗団討伐……お前ら、何人倒した? いってみろ」

戦士「さ、三人……」

剣士「二人……かな」

傭兵「俺はたしか、30人ぐらいだったかな。いちいち数えてねえや。
   ちなみにお前らが倒したのも、俺が弱らせた奴らだったよな」

戦士&剣士「うっ……」

傭兵「なにかいうことはあるか?」

戦士&剣士「あ、ありません……」

傭兵「おいっ!」

女「はいっ!」

傭兵「お前に至っては、一人も倒してねえ。なにしろ、戦ってすらいねえんだからな。
   俺はお前を認めねえ! 絶対にな!」

女「……認めてもらえるよう、頑張ります」

傭兵「ケッ! とっとと辞めちまえ!」

部屋を出ていく傭兵。



戦士「あんな奴のいうこと、気にすることないぜ!」

剣士「そうだよ。あいつ、どこかおかしいんだ」

女「大丈夫です! 私は全然気にしてません!」

傭兵団のサポーターとして、健気に働く娘であったが――



傭兵「ふぅ……今日も斬った、斬った」

傭兵「おいっ! この剣、手入れしとけ! よぉく斬れるようにな!」ガチャッ

女「はいっ!」

傭兵「ケッ!」



傭兵のいびりは収まるどころか、ますますひどくなっていった。



傭兵「おいっ、なにやってんだ!?」

女「はいっ! 次の任地の地図を見てまして……」

傭兵「ちっ、んなもんいくら見たって、作戦成功のたしにはならねえよ!
   まったくいいご身分だな!」

傭兵「俺らは傭兵だ。金をもらって、敵を斬るのが仕事なんだ。
   地理のお勉強するのが仕事じゃねーんだよ!」

女「すみませんっ! すぐ片付けます!」ガサガサ…



村人「……っていうことがあってね」

女「へぇ~、そうなんですか!」



傭兵「おいっ、いつまでおしゃべりしてやがる!」

傭兵「俺ら傭兵は、特定の組織や集団に肩入れするってのはご法度なんだ!
   今日の友は明日の敵、な稼業なんだからな!
   町民や村人と仲良くするのも程々にしとけ!」



女「はいっ! 失礼しましたっ!」



女「食料を運んできました!」ガラガラ…

戦士「お、サンキュー!」

剣士「長丁場の戦いになりそうだから、助かるよ!」

傭兵「ふん、俺らが戦ってた時に、お前はのんきにメシを運んでたってわけか。
   いいねぇ、女ってのは」

戦士「おい、傭兵! 言いすぎだぞ!」モグモグ…

傭兵「お前は働きに比べて、食いすぎだな」

戦士「うぐっ……」



団長「ご苦労だった。今月の給金だ」

女「ありがとうございます! 大切に使います!」

傭兵「ふん、人を一人も斬らずにいっちょまえに金はもらうってか」

女「す、すみません」

団長「おい、この娘も傭兵団の立派な一員だ。侮辱するようなマネは……」

傭兵「そうやって、部下に給金を払えるのは、いったい誰のおかげですかねえ?
   一人で20人分は斬ってる、誰かのおかげですよねえ?」

団長「う、む……」

― 傭兵団アジト ―

戦士と剣士が、団長に直訴する。

戦士「団長! いくらなんでも傭兵のあの態度、ひどすぎないっすか!」

剣士「そうですよ! あんまりです!」

戦士「特に、嬢ちゃんに対するいびりときたら、どんどんエスカレートして……
   そのうち、ホントに斬っちまうんじゃないかって心配になるほどですよ」

団長「……分かっている」

団長「だが、傭兵も決して意地悪だけで、あんなマネをしてるわけじゃないんだ。
   理由は……あるんだよ」

剣士「理由……? いったいどんな?」

団長「不思議に思ったことはないか?」

団長「なんであいつほどの腕の男が、一人(フリー)でやらず、
   私の傭兵団に所属しているかを」

戦士「そりゃあ、もちろんありますよ!
   普通、腕に自信がありゃ、一人なり少数でやりますからね。傭兵稼業ってのは」

剣士「なにしろ、取り分がちがいますもん」

団長「うむ、そのとおりだ」

団長「昔……あいつもフリーの傭兵だったんだ。一人であちこちを駆け回っていた」

団長「そしてある時……ある貧しい村から警護を依頼されたんだ」

団長「剣の腕は一流とはいえ駆け出しで、金よりもむしろ、
   腕試しの機会を欲していたあいつは余裕綽々で引き受けた。だが――」

戦士「だが……?」

団長「その山賊たちはかなり賢い集団でな。一枚上手だったんだ」

団長「傭兵をおびき寄せる隊と、村を襲う本隊を、分けてたんだな。
   陽動作戦ってやつだ」

団長「そして……まんまと村を襲われてしまった」

剣士「それで、村は……?」

団長「村人は……ほとんど全滅だったらしい」

団長「その後、あいつはその山賊団を死に物狂いで壊滅させたが……」

団長「一人での傭兵稼業に限界を感じ、私の下に入ったんだ」

団長「あいつは今も、非戦闘員が戦いに巻き込まれることを極度に恐れてる」

団長「だから……サポート役の彼女の存在が許せない。
   つらくあたって、辞めさせようとでも思ってるんだろう」

戦士「あいつにそんな過去が……」

剣士「知らなかった……」

剣士「ですが……それじゃあの子があまりにも気の毒じゃないですか!
   彼の過去は分かりましたけど、いびっていいことにはなりませんよ!」

戦士「そうっすよ! このままじゃあの子、辞める前に首くくっちゃいますって!」

団長「う~む……」

団長「私としても、傭兵のことはなんとかしたいと思ってるんだが、なかなかなぁ」

団長「私よりも強いし……。機嫌を損ねて、あいつがいなくなると困るし……」

戦士&剣士(結局そこかい)

周囲の不安や不満をよそに――



女「傭兵さん、鎧を洗っておきました!」

傭兵「そこ置いとけ。いちいち話しかけるな」

女「は、はい……失礼しますっ!」

傭兵「……ちっ」



結局、二人の関係はなんら変わることはなかった。

そんな時、傭兵団に大きな依頼が舞い込む。

― 傭兵団アジト ―

団長「王都で人斬り事件を起こし、騎士身分を剥奪された元騎士が、
   手勢を率いてこの近くの山中に逃げ込んだらしい」

団長「騎士団としてはなんとしてもこの元騎士を始末せねばならんが、
   大っぴらに騎士団を動かすと、身内の恥を晒すことになってしまう」

団長「そこで、なんとか我が傭兵団だけで“山賊”として討伐してもらえないか、
   という依頼が入った」

戦士「騎士が人斬り騒ぎを起こして、それを隠すために騎士が傭兵に依頼っすか」

剣士「世も末だなぁ」

団長「まったくだな。しかし、報酬は大きいし、
   我々の武名を高めるには絶好のチャンスといえるだろう」

団長「さて、王都がある南方はすでに騎士団が固めているので、
   奴らが逃げるとすれば北方に向かうだろう」

団長「そこで……奴らを逃がさないためにも、
   北方で待ち伏せする部隊と、山に入って奴らと対決する部隊に分けたい」

団長「うまくすれば、挟み撃ちにもできるからな」

傭兵「なら、俺が対決する部隊を引き受けましょう」

団長「やってくれるか」

傭兵「はい。騎士崩れ如き、俺が仕留めてみせますよ」

団長「うむ、相変わらず頼もしいことだ。しかし、相手が相手だ。
   彼女をサポート役として連れていってくれ」

女「よろしくお願いします!」



傭兵「――必要ありません!」

傭兵「こんな女に手助けされるほど、俺は堕ちちゃいませんよ」

団長「しかしだな……」

傭兵「どうしても連れていけってんなら、俺は傭兵団を辞めます」

団長「……わ、分かった! 彼女を入れるのはよそう!」

傭兵「ってわけだ。もし、俺をサポートするようなマネしやがったら……
   叩き斬るからな!」

女「……分かりました」

さっそく傭兵は“対決部隊”のメンバーを選抜し、作戦を練る。

ザワザワ…… ワイワイ……

傭兵「相手は決して多くないが、元兵士の集まりだし、なにより山に逃げ込んでいる。
   こいつは四、五日がかりの長期戦になる」

傭兵「山のどこかに簡単な拠点を作り、じっくりと兵士どもを狩ってくぞ」

戦士「ラジャー!」

剣士「了解!」



戦士「いけ好かない奴だが、任務の時は頼りになるよな」

剣士「ああ、今回も楽勝だね」

― 山 ―

傭兵率いる対決部隊が、入山する。

傭兵「よいしょっと」ドサッ

傭兵「ここに食料や装備を置いて拠点とする。
   もし、はぐれちまったら、ここに集まるようにしよう」

傭兵「んじゃ……敵を探して、狩っていくぞ」

戦士「ラジャー!」

剣士「了解!」

それからまもなく、傭兵たちと元騎士らの衝突が始まった。



元騎士「騎士団は、やはり追手を出せなかったようだな。
    キミたち程度の野良犬は、すみやかに片付けてくれよう」

傭兵「ふん、飼い犬にすらなれなかった駄犬にいわれたくねえな!」

元騎士「かかれっ!!!」

傭兵「いくぞっ!!!」







ワァァァァ……! ウォォォォ……!

キィンッ! キンッ! ギィン! ズシャッ! ガキィンッ!



傭兵「せあっ!」

ザシュッ!

兵士A「ぐはぁっ!」



傭兵「どあぁっ!」

ドシュッ!

兵士B「ぐあ……っ!」



傭兵は一歩も引かず、次々敵を倒していく。

しかし、正式な訓練を受けた経験のある集団であり、さすがに楽勝とはいかない。

やがて、日も落ち――





元騎士「ウワサ通りの腕のようだ。今日はこれまでだ。退くぞ」ザッ



傭兵「こっちも退くぞ!」ザッ





足場のよくない山中で、夜戦は互いに墓穴を掘ることになりかねない。

この日の戦いは終わった。

拠点にて――

戦士「くそっ、けっこう傷もらっちまった。やっぱり手強いな」

戦士「だが、傭兵は大したもんだ! あいつら相手にも全く負けちゃいない!」

剣士「うん、ウワサ通りだとか強がってたけど、あれは相当驚いてるよ」

傭兵「今日の戦いは拮抗してたし、おそらくもう二、三日こんな展開が続くだろう。
   だが、奴らの剣筋を覚えちまえば、こっちのもんだ」

戦士「へへっ、頼りにしてるぜ」

傭兵「任せとけ」ニヤッ

二日目――

ワァァ…… ワァァ……

キィン! ギィン! ガキンッ! キィン! ガッ!



傭兵「せあっ!」シュバッ

兵士C「ぐっ……!」ギンッ

傭兵(今日はずいぶん慎重だな、こいつら……)





傭兵の予想通り、互いに様子を見るような展開となった。

傭兵も奮闘したが、元騎士の手勢も防御に徹するような戦い方をしたため、
昨日ほどの戦果は上げられなかった。

二日目の戦いが終わり、拠点へと戻る一同。



ザッザッザッ……

剣士「あいつら、今日はずっと守りを固めてたね」

戦士「傭兵が予想以上にやるんで、怖気づいたんだろうよ」

傭兵「ふん、おそらく奴らは長期戦に持ち込むつもりだ。
   数や物量ではこっちが不利だからな」

傭兵「だが、そうはさせねえ。明日は、もっと攻めて、攻めて、攻めまくってやる」



ところが――

傭兵たちの拠点は、焼き払われてしまっていた。



傭兵「なんだと……!?」

剣士「食料は全て燃やされ、武器や防具も破壊されてる……!」

戦士「マジかよ……!」

傭兵(くそっ……! あいつら俺たちと戦ってる間に、
   他の部隊に拠点の場所を調べさせて、潰しやがったのか!)

傭兵(また、俺はこんな手に……!)



ワァァァ…… ワァァァ……

「野良犬どもを片付けろっ!!!」

戦士「奴ら、攻めてきやがった!」

剣士「最悪のタイミングだ……!」

傭兵(やられた……!)

傭兵(あいつら……ハナから長期戦なんかするつもりはなかった!
   今日……今夜、決めるつもりだったんだ!)



食事も取れず、装備も整えられないまま、傭兵たちは夜戦を強いられることになった。

傭兵の前に、元騎士が現れる。

元騎士「まんまとかかったねえ」ニヤ…

元騎士「どうやらキミは、戦いには慣れているようだが――
    拠点や補給が命綱となる“戦争”には慣れていないようだ」

傭兵「黙れっ!」

傭兵「メシなんか食わなくても、お前ら如きにッ!」

キィンッ! ギィンッ! キンッ!

――ザシィッ!

元騎士「うぐっ!」

元騎士「フ、フフ……やるじゃないか。そうこなくてはね……」

傭兵「お前ら、逃げろ! 全員でだ!」

戦士「なにいってんだ……! オレたちを見くびるなよ! そんなことできるか!」

傭兵「ここで全滅したら、団長たちの負担もでかくなる!
   山を下りて、このザマを団長たちに知らせてくれ! ――俺もすぐ追いつく!」

戦士「……分かった! 死ぬなよっ!」

ザザザッ……!

せめてもの償いにと、仲間たちを逃がす傭兵。



傭兵「さぁ、きやがれ!」チャキッ

元騎士「フッフッフ、仲間たちを逃がした、か……。
    まさかここまでシナリオ通りになるとはね」

傭兵「……どういう意味だ!?」

元騎士「この戦い、実をいうと狙いは“キミの首”だったのだよ」

元騎士「傭兵として特に名が売れているキミの首があれば、
    いわゆる裏社会でも、いきなり破格の待遇で受け入れられるだろうからね」

元騎士「そうすれば、彼らの庇護によって、危険を冒して逃亡する必要もなくなる」

傭兵「そういうことか……! 北に逃げるつもりなんてなかったってことか!」

傭兵「たしかに俺の首を持っていきゃあ、お前らを厚遇する賊どもは多いだろう。
   それだけ恨まれてるって自覚はあるからな」

傭兵「だが……そうと知ったらますます負けられねえなぁ!」

元騎士「フッ、たった一人で何ができる?」

キィンッ! ガッ! ガキィン! キィン! ガィンッ!

傭兵と元騎士が、白刃をぶつけ合う。

ビキッ……!

傭兵(ヒビが……!)

元騎士「今日、我々が守りを固めていたのは、キミの剣を消耗させるためだったのだよ。
    拠点は潰しておいたから、替えの剣ももちろんない」

元騎士「キミの敗北は、もはや決定事項だ!」シュバッ

バキィン!

ついに傭兵の剣がヘシ折れてしまった。

傭兵(いつもなら――)

傭兵(いつもなら……こんなことはなかった……)



傭兵『この剣、手入れしとけっ!』

女『はいっ!』



傭兵(あいつがピカピカに手入れしてくれてたから……)

傭兵(へっ、こんな時にあいつのことを思い出すなんてな……)



元騎士「さぁ、遊びは終わりだ。全員がかりで、ヤツの首を取るぞ!
    我らが裏社会で栄光を得るための第一歩だ!」

オーッ!!!

傭兵(全員で来るつもりか……! ここまでだな……)

傭兵(まぁいい、あの村を……自惚れと、下らないしくじりで守れなかった俺には……
   お似合いの最期だ……)

傭兵(せめて……刺し違えてでも、あの元騎士だけは討ち取ってやる!)ジャキッ

刃が折れた剣を構える傭兵。





その時だった。





「傭兵さぁ~ん!」

傭兵「!」

女「剣を持ってきました! どうぞ!」チャキッ

傭兵「な……!?」

傭兵「……お前、なんでここにいる!? なんでここに来た!?」

女「今はそんなことをいってる場合じゃないでしょう!」

傭兵「……ちっ!」

バッ!

剣をひったくり、傭兵があらためて構える。

元騎士「なにっ!? まだ野良犬どもが潜んでいたのか!?」

そこへ、退却したはずの戦士たちも戻ってきた。
さらには“待ち伏せ部隊”からの援軍も加わっている。



戦士「嬢ちゃんのおかげで武器を新調できたぜ!」チャキッ

剣士「借りはきっちり返すよ!」チャキッ



もちろん、装備はばっちり整えられている。



女「皆さん、チャンスです! 敵は浮き足立ってますよ!」

元騎士「くそっ! どういうことだ、これは!? なんだ、あの女は!?」

ギィンッ!

元騎士「うおっ!?」

傭兵の鋭い斬り込みに、元騎士がおののく。

傭兵「どうやら、お前は……戦争、っつっても勝ち戦には慣れてるが、
   こういう“ピンチ”には慣れてねえようだなぁ!」

キィンッ! ギィンッ! ガキンッ!

元騎士「わ、わわっ! ――お、おい、誰かっ!」

傭兵が大きく剣を振りかぶる。

傭兵「だあああああっ!!!」





ザバシュッ……!





元騎士「こ、こんなはず、じゃ……っ!」ガハッ…

ドチャッ……

傭兵の一閃が、元騎士を鎧ごと叩き斬った。

元騎士が倒れた後の敵集団は、もろくも崩れ去った――



傭兵「ハァ、ハァ、ハァ……」ドサッ

女「大丈夫ですか!?」

傭兵「水……くれ」

女「はいっ、パンと水をお持ちしました!」

傭兵「…………」ゴキュゴキュ…

傭兵「…………」ガツガツ…

むさぼるようにして、あっという間にパンと水を平らげる傭兵。

傭兵「……ありがとよ」

女「間に合ってよかったです。あの元騎士のことを調べたら、
  長期戦に見せかけ、短期戦を仕掛けるのが得意、とのことだったので……」

傭兵「……嫌な予感がしたってわけか」

傭兵「しっかし、なんで俺たちがいる場所が分かったんだ?
   それに、よくここまで食料や装備を持ってこれたな」

女「山のふもとで暮らす人たちから、山のどこが騒がしいかを聞いてきたんです。
  それと、地図で目立たないルートは調べておきましたから」

傭兵「ふふっ、なるほどな……」

傭兵(ふもとの住民から情報を得て、地理を熟知してたおかげってわけか……。
   こいつ……いつも遊んでたわけじゃ、なかったんだな……)

傭兵「だけど、もし……俺が劣勢じゃなかったら、どうするつもりだったんだ?」

傭兵「俺はあんだけお前を脅しつけてたんだぞ?
   怒鳴られたり、下手すりゃ殴られたかもしれないんだぞ?」

女「その時はその時です!」

女「傭兵さんが死んじゃうのに比べれば、どうってことないですから」

この答えに、傭兵は困惑する。

傭兵「……なんなんだ、お前? なんでそこまで俺に肩入れする?
   普通、こんだけ邪険にされたらイヤになるだろ?」

女「そりゃあ、傭兵さんはウチのエースですから! 大切にしないと!」

傭兵「なるほど……。案外ドライな感性してるんだな」

女「――ってのは、建前です」

傭兵「へ?」

女「ホントのホントは……」

女「傭兵さんは、私の村を助けようとしてくれたからです。
  兵士も騎士も、みんなが見捨てた、あのちっぽけな村を……」

傭兵「…………」ハッ

傭兵の目が見開かれる。

傭兵「お前……! お前……まさか……!」

女「はい……。私はあの村の……生き残り、です……」

傭兵「ああっ……!」

女「生き残った私は、どうしても傭兵さんの力になりたくて……。
  後方支援のノウハウを色々と勉強して……傭兵団に入ったんです……」

女「きちんとサポートできる人がいれば、傭兵さんはもっと活躍できるって……」

傭兵「俺の力になりたい!? なんでだよ! 俺はあの村を救えなかった!」

傭兵「恨まれこそすれ、恩を感じられる筋合いなんかない!」

女「いいえ、そんなことありません」

女「だって、あの小さな貧しい村の依頼を受けてくれたのは、
  あなただけだったんですから」

女「だから……山賊たちが村に攻め込んできた時も、
  傭兵さんに対して恨みごとをいってる人なんて、一人もいませんでしたよ」

女「もし自分たちがやられても、きっと傭兵さんならカタキを取ってくれるって……」

傭兵「…………」

傭兵「うっ……!」ホロ…

女「傭兵さん!?」

傭兵「うあっ……! うおおおおおおおおおおおっ……!」

傭兵「うあああああああああっ……!」



傭兵は涙を流した。

まるで、長年その胸につかえていたものを全て洗い流すかのように。



………………

…………

……

それから三ヶ月後――



― 町 ―

眼帯「おい、そこの女!」

女「は、はいっ!?」ビクッ

眼帯「てめえんとこの傭兵団のせいでよぉ、
   同業者のオレらは商売あがったりなんだ! どうしてくれんだ、ええ!?」

手下「そうだそうだ!」

女「そんなこといわれても……!」

眼帯「なにぃ~!? なんなら、オレらがこうむった損害を体で払わせてやろうか!?」

傭兵「おっと」サッ

女「あっ」

二人組の前に立ちはだかる傭兵。

眼帯「ゲ!?」

手下「ひいっ!」

傭兵「“俺の女”に手を出すんなら、まず俺を倒してからにしな」

眼帯「い、いやっ! いえっ! す、すみませんでしたっ!」タタタッ

手下「失礼しましたぁ!」タタタッ

傭兵「ったく、俺たちを妬む同業者も多いんだから、ああいう連中には気をつけろ!
   お前は傭兵団の要なんだからな!」

女「うん……ごめんなさい」

女「だけど私のことは、あなたが守ってくれるんだよね?」

傭兵「まぁ……な」コホン

傭兵「だが、俺が最高の戦いをできるよう、お前もしっかりサポートを頼むぞ!」

女「もっちろん!」






                                   ~おわり~

以上で完結となります

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