兵士『おい待ってくれよ！これから俺はどうすりゃいいんだ！こんな育成学校出身の奴が働ける場所なんてここしかないだろ！』

兵士長『おや？君は知らないのか。育成学校の第一校舎に、職業斡旋のコーナーがあるんだよ？君みたいな人や、他に自分のやりたいことを見つけたい人のためにね』

兵士『……』

兵士長『そこでなら職は見つかるだろう。幸運を祈っているよ。それでは』ｽﾀｽﾀ



兵士『ちっくしょう……』

——回想終わり

兵士「あいつのせいだ！こんなクソド田舎に来なきゃいけないのはよ！」

兵士「何が集団行動だ！畜生！斡旋された職業っつーのも、魔術師の身辺警護とかそんなんだし！畜生！」

兵士「……」

兵士「……あー、なんか疲れた。休憩しよ」

兵士「……おっと、そろそろ日が暮れちまうか」

兵士「行かないと」

——同時刻　魔術師の館

魔術師「遅いわ、新しい警備の人。そろそろ日が暮れちゃうのに」

魔術師「ちょっと探しに行かせましょうかしら」ｶﾞｻｺﾞｿ

魔術師「だいぶ折り鶴のストックも少なくなってるわね」ｽｯ

魔術師「『生命よ　宿れ』」

折り鶴×10「……」ﾌﾜｯ

魔術師「この辺に男の人がいたら、連れてきてちょうだい。そうね、範囲はこの山のふもとまででいいわ」

折り鶴×10「……」ﾌﾜﾌﾜ

魔術師「お願いね」

——同時刻　山の中腹

兵士「まずいな、完全に日が暮れちまった。このままじゃどうしようもねえ」

兵士「これはまた明日にでも出直すしかないか？」

兵士「……第一印象最悪だよな」

兵士「しゃあねえ、探すか……ん？」

折り鶴「……」ﾌﾜﾌﾜ

兵士「何だこりゃ？奇妙な魔法だな。折り鶴が勝手に動いてやがる」

折り鶴「……」ﾌｩｰｯ

兵士「何だ？山のてっぺんの方に向かって……アレについて行ってみるか。一か八だ」



兵士「おい待てよ！折り鶴のくせに地味に移動速度はえーな！……おっ？」

兵士「ついてきて正解だったな。どうやら当たりみたいだ」

兵士「しかし、これは勝手に入ってもいいのか？おい折り鶴、お前主人からなんか聞いてないか？」

折り鶴「……」ﾌﾜﾌﾜ

兵士「……チェッ、そりゃ聞いたってわかるわけねえわな」

兵士「呼び鈴らしきものも見当たらねえし」

兵士「……待つか」

——同時刻　魔術師の館2階

魔術師「あら、案外早かったようねあの子たち。もう見つけてきたわ」

魔術師「……出迎えてあげましょうかしら」

魔術師「…………面倒くさいわね。やっぱり呼び鈴はつけるべきかしらね」ｽｯ

——同時刻　魔術師の館　門

兵士「……暇だな」

ｶﾞﾁｬ

兵士「おっ、誰かお出ましか」

魔術師「いらっしゃい。あなたが兵士さんね？話は聞いているわ」

兵士（おい、こいつ……）

魔術師「軽く今後の説明をするから、とりあえず上がって頂戴な」

兵士（かなり可愛え！）

魔術師「……聞いているのかしら」

兵士（クゥ〜ッ！感謝するぜ兵士長さんよ！俺をあんなむさくるしいところから放り出してくれて）

魔術師「……ちょっと、あなた」

兵士（こんな可愛い女の子と！四六時中！警護という名目で！一緒！それなんてパラダイス！）

魔術師「……」ｶﾁﾝ

魔術師「……『燃えよ』」

兵士「……ｱﾁﾁﾁﾁﾁﾁﾁ！何てことするんだ！」

魔術師「あなたが無視するからよ！話はちゃんと聞きなさいよ！」

兵士「……ｽｲﾏｾﾝ」

魔術師「まあいいわ。中に入って」

兵士「……ﾊｲ」

魔術師「……」ｽﾀｽﾀ

兵士（何あの子見た目より怖い）ｽﾀｽﾀ



魔術師「とりあえず夕食にしましょうか。お腹空いちゃったわ」

兵士「そうっすね」

魔術師「簡単なものしかないけれど、どうぞ」

兵士「いただきます」

魔術師「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兵士「……あ、美味しい」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

魔術師「……口にあったようでよかったわ」

兵士「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

魔術師「それじゃ、食べながらでいいから説明を聞いて」

兵士「はあ」

魔術師「あなたにやってもらう仕事は、主に身辺警護ね。それからもしかしたら力仕事をお願いするかもしれないわ」

兵士「へえ」

魔術師「まあ身辺警護って言っても、普段はこの屋敷……出来れば私の傍にいてくれればそれでいいわ」

兵士「……」

魔術師「もちろん外出する時もよ。私が一人でいるのは、なるべく少ない方がいいわ」

兵士（あれ？これって見方を変えれば、見た目16歳前後の女の子が『傍にいて……お願い』って言ってるようなものじゃ？）

魔術師「それで、…………！」

兵士（うわーめっちゃ可愛いわー。妄想がはかどるわー）

魔術師「…………！………………！」

兵士（『もう、一生私の警護して！』とか言われちゃったりして？）ﾑﾌﾌ

魔術師「…………！『燃え」

兵士「あああああスンマセン！聞きますハイ」

魔術師「もう……！もう一度説明するわ。あなたの部屋は二階の空き室ね、あとで案内するわ」

兵士「……へ？住み込みなんすか？」

魔術師「あなたは一体何を聞いていたのよ……あたりまえじゃない、私が一人の時間は少ない方がいいんだから」

兵士「ああ、そうでしたね

魔術師「それで、給料についてなんだけれど、そうね。月に金貨15枚くらいでどうかしら」

兵士「マジっすか！」ｶﾞﾀｯ

魔術師「ｷｬｯ！ちょっと、いきなり立ち上がらないで頂戴な」

兵士「……失礼しました」ｽｯ

魔術師「……給料については、いいわね？」

兵士「ハイ！ありがとうございます！」

魔術師「この屋敷にあるものは、適当に使ってもらって構わないわ」

兵士「わかりました」

魔術師「ただ、マジックアイテムには触らないで頂戴ね。危険なものもあるわけだし」

兵士「気を付けます」

魔術師「……以上で説明を終わるわ。何か質問は？」

兵士「……いや、特には」

魔術師「じゃあ部屋に案内するわ。ついてきてね」

——二階　空室

魔術師「とりあえずは、ここの部屋を使って頂戴。今日は疲れているだろうからゆっくり休んで、明日からよろしくね」

兵士「はい」

魔術師「じゃあ私は食器とか片づけないといけないから、これで失礼するわ」ｷﾞｨｰｯ　ﾊﾞﾀﾝ



兵士（この仕事は……見方を変えれば16歳前後の女の子との同棲……ッ！）

兵士（どことなく漂う犯罪臭……）



兵士（おっと、こんな童貞思考に走ってる場合じゃないな）

兵士（明日に備えて寝よう）

この時間で今日はここまでって言うとややこしいな
とりあえず暇なときに更新する感じ
後金の価値は金貨1枚＝銀貨100枚＝銅貨1000枚
王都なら金貨3枚で一か月くらいそこそこの暮らしができる（庶民並み）
くらいで考えてるけど実際崩壊するかも
おやすみ

——朝

兵士「…………朝か」ﾌｧｰｯ

兵士「……あー、随分とよく寝たな。いいベッド使ってるじゃねーか」

魔術師「失礼するわ」ｶﾞﾁｬｯ

兵士「オハザーッス」

魔術師「あら、もう起きてたのね。てっきりまだ寝てるのかと……」

兵士「まあ、兵士育成学校の寄宿舎じゃまだ日も昇らないうちから起こされてましたし？今日は遅い方っスよ」

魔術師「……そう。まあいいわ。早速今日から仕事、してもらうわ」

兵士「へーい」

魔術師「とはいえ、今日はどこにも行く予定はないし、研究レポートを作るだけだから、私の仕事部屋にいてくれればいいわ」

兵士「うす」

兵士「ところで、魔術師さんはどんな仕事してるんスか？」

魔術師「……そうね。簡単に言えば、魔法の研究」

兵士「と言いますと」

魔術師「新しい魔法……それも実用的なものね、それを研究したり、一般の人でも扱えるようにするのよ」

兵士「はあ」

魔術師「たとえば、農村の人たちが使う、局地的に天候を変える魔法、あるでしょ？」

兵士「ああ、見たことあるっス」

魔術師「ああいうのも、私たちが考案し、体系化して初めて使えるわけ」

兵士「そりゃまたどうして」

魔術師「最初期の魔法……つまりやりたいことをあらゆる手段を用いて実現するような、いわば『荒い』魔法ね、そういうのは使用魔翌力が大きすぎて」

兵士「一般人にはとてもじゃないが扱いきれない、と」

魔術師「私の台詞を取らないで頂戴。まあ、でもおおむねその認識でいいわ」

兵士「俺たち兵士が使うお手軽魔法も、魔術師さんみたいな人のおかげで使えるってわけっスね」

魔術師「そう。さて、長話をしすぎたわね、早く仕事に取り掛からないと」ｽﾀｽﾀ

兵士「あ、ちょっと待ってくださいよ」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

——2階　魔術師の仕事部屋

兵士「へー、仕事部屋っていうからてっきり大鍋とかおいてあると思ったけど、案外小奇麗なんスね」

魔術師「ええ、ここでは主に調べごととレポートしかしないからね。大鍋の類なんかは、地下に置いてあるの」

兵士「はー」

魔術師「じゃあ私は仕事に取り掛かるから、あなたはここに居て頂戴な」

兵士「へーい」

魔術師「気の抜けた返事ね」

兵士「はッ！」

魔術師「その方がいいわ」ｸｽｸｽ

魔術師「……」ｶｷｶｷ

兵士「…………」

魔術師「……」ｶｷｶｷ

兵士「…………」ｿﾜｿﾜ

魔術師「……」ｶｷｶｷ

兵士（あー、思ったより暇だな、この仕事）ｿﾜｿﾜ

兵士（……魔術師さん可愛えなあ）ｿﾜｿﾜ

兵士（…………後ろから耳フーしたら怒られるかな？）

兵士（なんちって。俺はそこまでバカじゃない。……でも怒った顔も見てみたいなあ）

魔術師「…………」

兵士（怒った顔も可愛いよ、なんて言ってみちゃったり？）

——一時間後

兵士（あー、いい加減暇すぎて死にそうだぜ畜生！）

兵士（そこらへんにあるものでもいじって遊ぼうかな）

魔術師「…………」ｶｷｶｷ

兵士（っつっても本しかねーか。なんか俺でも読めそうなものあるかな）ｽｯ　ﾋﾟﾗｯ

本「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

兵士「うわああああああああああああっ！」

魔術師「ｷｬｱｯ！ちょっと、あなた！勝手にいじらないで！」

兵士「ひいいいいいいいいいいいいいいいい」

魔術師「早くその本を閉じて！」

兵士「は、はい！」

本「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………」ﾊﾟﾀｯ

魔術師「ああ、びっくりした。心臓に悪いわ」

兵士「スンマセン」

魔術師「もう。勝手にそこらの物をいじらないで、って昨日言ったじゃない。これがただの変な本だったから良かったものの」

兵士「スンマセン」

魔術師「暇を持て余してるなら、折り鶴でも折っといて頂戴な。昨日あなたを探すために使ったので、最後だったのよ」

兵士「へい」

魔術師「じゃあ、これ紙ね。よろしく」ﾄﾞｻｯ

兵士（おいおいウソだろ、これ500枚は軽くあるぜ）

魔術師「…………」ｶｷｶｷ

兵士（まあ暇なのよりマシか。やるか）ｵﾘｵﾘ

——さらに一時間後

兵士（このペースでいくと、終わるのは一体何日後かね）

魔術師「…………」ｶｷｶｷ

兵士（っつーか俺の仕事ってこんなんだっけ？）

魔術師「…………」ｶｷｶｷ

兵士（護衛っつーから、まだほかのよりマシかと思ってきたのに）

魔術師「…………」ｶｷｶｷ

兵士（これじゃ育成学校の使用人でもやってる方がずっとマシじゃねーのかなー）

魔術師「…………」ｶｷｶｷ

兵士（恨むぜ兵士長さんよ！もとはと言えばあいつが俺を不合格にしたのが悪いんだよな）

魔術師「…………ふう」ｶｷｶｷ

兵士（でも魔術師さん可愛え）

——夕暮れ

魔術師「……あー、やっと終わったわ」

兵士（あー、やっと終わったか）

魔術師「これで明日王都に渡しに行けるわ」

兵士（マジで？明日王都に行くん？）

魔術師「……あら、だいぶいいペースで進んでいたのねあなたも。てっきりこれ全部終わるのに1年はかかると」

兵士「……それは嫌味っスか？」

魔術師「さあ、どうでしょうね」ｸｽｸｽ

兵士（見た目より嫌な奴。可愛いけど）

魔術師「あなたも、疲れたでしょうからもういいわ。これだけあれば、当分困らないわ」

兵士（そりゃそうだろうよ、一体何個作ったと思ってんだ。100個は軽いぞ）

魔術師「とにかく、今日の仕事はこれでおしまい。明日は王都に行くわよ。天気が悪くなかったらね」

兵士「そんな適当で、大丈夫なんスか？」

魔術師「……まあ、多分大丈夫ね」

兵士（ホント適当だな）

魔術師「だから、一応準備はしておいて頂戴」

兵士「うーい」

魔術師「…………あ、いけない」

兵士「なんスか」

魔術師「あなたに、お風呂の場所教えてなかったわね」

兵士「……あー、俺も忘れてたっス。道理でなんか足りないと思ったわけだ」

魔術師「ごめんなさいね。汗臭くなる前に、早いとこ入っちゃって」

兵士「アザース」

魔術師「こっちよ」ｽﾀｽﾀ

——風呂場

兵士「あー、極楽極楽」

兵士「ったく、暇な仕事だぜ。給料がいいのはいいけど、こうも退屈だとなあ」

兵士「…………ふぃーっ」ﾉﾋﾞｰ



兵士（ところで、この風呂場って魔術師さんも使ってんだよな？あの椅子とかも）

兵士（当然、裸で。あれ？ということはつまり）



兵士（……やめようやめよう。こんなこと考えてたらまるで変態じゃないか）

兵士（…………俺まだマトモだよな……？）

というわけで投下ここまで
実際この後の展開どうすりゃいいんだか

というわけで展開の希望があったら書いてくれ
その通りになるかどうかはわからんけどな

おやすみ

乙！
魔術師のキャラとしてエロいほうにはすごく疎いっていうのはどうだろうか

王都で国境警備隊っておかしくね？

——朝

魔術師「……晴れたわね」

兵士「そうっスね」

魔術師「……憂鬱だわ」

兵士「王都まで行くのが？」

魔術師「それもあるけど。私、曇りの日が好きよ。晴れてたら暑いじゃない」

兵士「まあこればっかりはどうしようもないんじゃないスか？」

魔術師「……そうね。仕方がないわ、行きましょう？」

兵士「うす」

魔術師「ちょっと準備を済ませてくるから、待ってて頂戴」

兵士「へーい」

————


魔術師（提出するレポートは持ったし、これで大丈夫ね）

魔術師（ところで）

魔術師（だいぶ待たせてしまってるけど、さすがに寝てはいないわよね……？）



兵士（魔術師さん遅いなー……もう20分くらい待ってんじゃないのか？）

兵士（……ほんっと、この仕事における待ち時間の比率って大きいな）ﾌｧｰｧ

兵士（……あ、来た）

魔術師「……待たせたわね。さあ、行きましょうか」

兵士「うっす」

兵士「ところで、魔術師さんは瞬間移動するような魔法とか使わないんすか？」

魔術師「そうね……普段は使わないこともないけれど、あれって結構疲れるのよ。それに」

兵士「…………？」

魔術師「あなたが護衛についてくれているんだから、せっかくだし散歩がてら歩いてみようと思ったのよ」

兵士「……へ？」

魔術師「よろしくね、兵士さん」ﾆｺｯ

兵士「……はっ！この身に代えてもあなた様をお守りする所存であります！」ﾋﾟｼｯ

魔術師「頼もしいわ」ｸｽｸｽ

兵士「行きましょう！」ﾋﾟｼｯ

魔術師「ええ」ｸｽｸｽ

——同時刻　館付近

山賊A「お頭、見えましたぜ！結構立派なお屋敷でっせ」

頭「でかした！あの屋敷には金目のものがたくさんありそうな気がするぜ」

山賊C「えー、根拠ってあるんですか？」

頭「いや、ただの俺の勘だが」

山賊C「……大丈夫ですかね？頭の勘に従っていいことがあったためしがないような気がするんですけど？」

頭「うるせーや！今回は当たってるんだ！俺の勘が告げてる！」

山賊B「……なんでも　いい　うまい　めし　くいたい」

山賊A「お前はそればっかだなあ」

山賊B「それいがいに　なにを　のぞむのか」

頭「とりあえずしばらくは様子見だな」

山賊C「その方が賢明ですね」

山賊A「下手に抵抗されても面倒でっせ！」

頭「ああ、そうだな。でも今回の作戦は一味違うんだぜ！なんせ盗賊仲間から便利な魔道具をたくさん買ったからな」

山賊A「並大抵の人が太刀打ち出来るような代物じゃありませんぜ！」

山賊C「……あの屋敷に住んでる人が、何らかの魔法を得意としたり、魔道具を無効にできたりしませんかね？」

頭「そんなスゲー奴がこんな山奥にいるもんか！いたとしたら間違いなく隠居したジジイ魔術師だな！」ｶﾞﾊﾊﾊﾊﾊﾊ

山賊B「そんなのは　おれが　たたきつぶす」

山賊C「なら、良いのですが」

——山のふもと

兵士「平和なもんっスね。魔物一匹出てきやしない」

魔術師「まあ、この辺一帯は私が結界を張ってるから、魔物の類は、よほど強大なものでもない限り、まず入ってこられないわ」

兵士「そういうもんなんスか」

魔術師「そういうものなのよ」

兵士「…………」

魔術師「…………」



兵士「ところで、このペースだと王都につくのは昼過ぎっスよね？今日中に帰ってこられるんスか？」

魔術師「無理ね」

兵士「え、じゃあ」

魔術師「もちろん泊まりよ。当たり前じゃない」

兵士「……あー、マジっすか」

魔術師「……あなた、もしかして」

兵士「ええ、着替えとかそういうもの、なんにも持ってきて無いっス」

魔術師「……ちゃんと言っておけばよかったわね。大丈夫よ、一日くらいなら安い麻の服でも買って着替えればいいわ」

兵士「…………ちょっともったいない気もするなあ」

魔術師「ごめんなさいね。私は外出するときはいつも持ってるから、忘れていたわ」

兵士「え、どこにっスか」

魔術師「この鞄よ」

兵士「いや明らかに小っちゃいっスよね」

魔術師「入るものなのよ」

兵士「魔法っすか」

魔術師「魔法よ」

——昼過ぎ

兵士「ふいーっ、やーっと着いたー」

魔術師「久々に歩いたから疲れちゃったわ」ﾌｳ

兵士（うっすら汗ばんでる魔術師さん可愛え）

魔術師「このまま城に行くけど、大丈夫？」

兵士「……え？城に入るんスか？」

魔術師「もちろん。だってこの書類、王様に頼まれたものよ」

兵士（国王陛下直々に頼みごとされるとかすごくね？だいぶヤバくね？）

魔術師「城まではちょっと距離があるから、飲み物でも買って飲みながら行きましょうか」

兵士「そうっスね」

兵士「…………」ｺﾞｸｺﾞｸ

魔術師「…………」ﾁｭｰﾁｭｰ

兵士「……プハーッ！あー、生き返るわー」

魔術師「大げさね」ｸｽｸｽ

兵士「長く歩いた後に冷たくて甘いものとか最高っスね、ホント」

魔術師「それには同意するわ」

兵士「いやーほんと美味い」

魔術師（面白い人ね）ｸｽｸｽ

兵士（笑うとやっぱり可愛いなあ）

————

魔術師「そろそろかしらね」

兵士「見えてきましたね」

ここまで

>>26
読み直してて俺も思ったわ
多分王都の周壁的なそういうもんの周りの警備のこと書きたかったんだわ
脳内変換で頼む

支援
山賊達からホームアローンばりのドタバタギャグストーリーが既に目に浮かぶ・・・
彼らは幕間？メインの一部？

魔術師「じゃあ、入るわよ」

兵士「うす」



番兵1「この城に何か用か？」

魔術師「今日国王陛下に謁見することになっている魔術師よ。入城許可証もいただいているわ。ほら」ﾋﾟﾗｯ

番兵2「ム……確かに。そちらの男は？」

魔術師「私の付き人よ」

兵士「そんなところっス」

魔術師「あなたは黙ってて」

番兵1「……分かった。魔術師とその付き人の入城を許可する」

魔術師「さあ、行きましょう」

兵士（城はいるのとか初めてだわー）

兵士（さすが城だけあって調度品の高級感がパねえ）ｷｮﾛｷｮﾛ

魔術師「…………」ｽﾀｽﾀ

兵士（中にいる人も気品漂う感じのばっかりだし、来てる服も高級品っぽいな）ｷｮﾛｷｮﾛ

魔術師「…………」ｽﾀｽﾀ

兵士（場違い感がマジパねえ）ｷｮﾛｷｮﾛ

ドシン！

モブ「おい！ちゃんと前見て歩いてくれ！」

兵士「ｱ､ｽ､ｽｲﾏｾﾝ……」

モブ「まったく……危ないじゃないか」ｽﾀｽﾀ

魔術師「……馬鹿ね」

兵士「うっ……」

————

魔術師「お久しぶりですわ、王様」

王「おお、魔術師よ。よく来たのう」

魔術師「先日の書類をお渡しに」

王「そうかそうか、それであの山奥から。ご苦労じゃったのう」

兵士（はー、王様と普通に喋ってるよ……魔術師さんスゲー）

王「ところで、そちらの方は？」

兵士「ファッ！？」

魔術師「私の付き人ですわ。ここ最近は物騒ですもの、一人であまり出歩きたくはありません」

王「それもそうじゃな」

魔術師「それで一緒に来てもらったんですわ」

王「そういうことじゃったか」

王「……立ち話もなんじゃのう。魔術師よ、すぐに帰るわけではなかろう？」

魔術師「ええ。今日はこの町に泊るつもりで来ていますわ」

王「ならばお茶にでもしよう」ﾎﾟﾝ

兵士（この王様何もないところからテーブルと椅子を召喚したよ……これが魔法かいな）

王「使用人よ。ティーセットと、それからお茶菓子を用意してくれ」

使用人「は、かしこまりました」

王「では、二人とも座ってくれたまえ」

魔術師「失礼しますわ」ｽｯ

兵士（……アレ？普通こういう時って従者は背後に立ってるもんじゃないの？なんでナチュラルに俺も座ることになってんの？）

魔術師「……遠慮しなくてもいいのよ。王様、寛大だから」ﾎﾞｿｯ

兵士（寛大とか寛大じゃないで済む問題じゃないだろ……）

王「どうかしたのか？」

兵士「い、いえ。特に何も」ｽｯ

王「ではワシも」ｽｯ

兵士（うっわー……俺みたいなのと王様が同席とかマジありえねー）

兵士（王様と魔術師さんはなんか仲良さげに喋ってるし……なんだこの状況。俺がおかしいのか？）

使用人「……失礼します。ティーセットとお茶菓子をお持ちいたしました」

王「おお、ご苦労じゃった」

使用人「……それでは」

兵士（すげー高級そうな菓子がいっぱい盛ってあるんだけど……）

王「それでは、いただくとしようか」

魔術師「そうですね。いただきますわ」

王「……うむ。なかなか美味じゃのう。後でこれをもっと作らせるように言ってこよう」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

魔術師「……こちらも美味しいですわ」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兵士（……俺も食べていい流れなの？）

魔術師「……どうしたの？折角だから兵士もいただいたら？」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兵士「あ、じゃあいただきます」



兵士（うんめえええええええええええええええええ！！）

兵士（っと思わず叫びそうになった）ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兵士（いや、こんなうまいもん食ったの初めてかもしれん）ﾓｸﾞﾓｸﾞ

————

魔術師「それでは、失礼いたしますわ」

王「うむ。また何かあったときは頼むぞ」

魔術師「はい」



魔術師「……びっくりしたでしょう？」

兵士「ええ……まさか俺まで同席することになるとは。てっきり従者は後ろで立ってるものだと」

魔術師「普通はそうよね。あの王様、とてもいい人でね、庶民でも全然分け隔てなく接する人よ」

兵士「そういう建前じゃなくてですか？」

魔術師「もちろん。週に一度開かれるお茶会みたいなものがあるんだけど、一般の人でも応募して抽選に当たれば、出られるのよ」

兵士「危なくないんですかね？」

魔術師「実際、危ないでしょうね。当初はボディーチェックを強化したりとかいろいろ試行錯誤してたみたいね」

兵士「当初は？」

魔術師「便利な魔法があるのよ。武器や毒薬とかそういうものに反応する」

兵士「便利っすね」

魔術師「魔法ですもの」

兵士「…………」

魔術師「それで、今もそのお茶会は続いているのよ」

兵士「そうだったんスか……まあ俺は美味い菓子をいただいたからそれで良しとしましょうかね」

魔術師「そうね。深く考えると疲れるわよ」

兵士「そうっスね

魔術師「あなたは特にね」ｸｽｸｽ

兵士「どういう意味っスか」

ここまで
王様マジぱねえ

>>37
一応メインに絡ませるつもり
あれだ、ロケット団（アニメ版）的な立ち位置？

魔術師「さて、と。そろそろ今晩泊まる宿を探さないといけないわね」

兵士「え？予約とかして無いんスか？」

魔術師「大丈夫よ。大抵、一部屋くらいは空いてるわ」

兵士「一部屋って……俺と魔術師さんで二部屋必要なんじゃ……」

魔術師「何言ってるの。私とあなたで一部屋に決まっているじゃない」

兵士「はぁあああああああああああああああああ！？」

魔術師「何か不服？」

兵士「い、いえ……」

魔術師「じゃあ決定ね。まずあそこの宿屋を当たってみましょうか……」

兵士「は、はあ……」

兵士（ダメだ……まるでダメだ魔術師さん……）

兵士（男と女が同室で泊まることの意味、それを全く理解していない……）

兵士（理解したうえでやむをえず、ならまだ良い。だがしかし……）

魔術師「……はあ。では部屋には空きはないのね？」

受付「申し訳ありませんが……」

兵士（俺が尊敬するかの大剣士様も、手記にこのように記しておられるというのに）

兵士（『とある事情で、一国の姫と同室に宿泊することになった。それだけなら良かったのだが……
　　　　部屋に行く際にその受付が、あろうことか私に「頑張れよ」などと囁いたのだ。当然こちらにもそして彼女にも
　　　　そのような意図はなかったことを明記しておく』）

兵士（『次の朝、私と姫が出発するときのことだ。その受付、にやけた顔で「昨夜はお楽しみでしたね」と言いおったのだ。
　　　　もちろん、断じて私は手を出していない。そんな勘違いをされては、仮にも一国の姫に対し、あまりにも失礼が過ぎるというものではないか。
　　　　ちなみに姫は、いったい何のことかわからないといった顔をしていた。可愛い』と！）

兵士（……いや、最後のはどうでもいいか）

魔術師「兵士、他の所を当たってみましょう」

兵士「……うす」

兵士（とにかく！魔術師さんは男女が同室で宿泊することの意味を全く！ミジンコほどにも！理解してないんだ！）

兵士（……しかし俺にはどうすることもできない、か）

魔術師「そう。じゃあその部屋に泊まるわ」

受付係「毎度あり。お夕食はいかがいたしましょう？」

魔術師「部屋に運んでもらえるかしら」

受付係「……申し訳ありませんが、部屋でお召し上がりになる場合は、厨房まで取りに来ていただくことになりますな。ただいま人手不足でして……」

魔術師「……なら、それでいいわ。そうして頂戴」

受付係「厨房はあちらでございます。分からなければ、取りに行く際に私に話しかけていただければ、案内いたします」

魔術師「ええ、分かったわ。行くわよ」

兵士（わー、マジで一部屋に泊まる気だよ）

——王都の宿　客室

魔術師「……ふうん。案外いい部屋じゃない。ベッドも上質だわ」

兵士（幸いベッドは二つあるようだな）

魔術師「……さっきから黙りこくってるけど、どうしたのよ？」

兵士「いや、特になんでもないっスよ。部屋がこんだけ立派だから、夕食にも期待できそうっスね」

魔術師「そうね。部屋だけよくて、夕食は美味しくない、なんてことにならなければいいのだけれど」

兵士「後風呂はどこにあるんですかね」

魔術師「お風呂ね……そういえば聞いていなかったわ。後で夕食取りに行くときにでも聞いてきて頂戴な」

兵士「あ、夕食取りに行くのは俺なんスね」

魔術師「他にだれが行くのよ」

兵士「えー……」

魔術師「なんてね。でもお願いね、兵士」ﾆｺｯ

兵士（あー、それは反則だわー）

魔術師「それじゃ、まだ夕食もできてないでしょうし、しばらくのんびりしてましょうか」ｺﾞﾛﾝ

兵士（魔術師さんのへそチラいただきましたーっ！超無防備）

魔術師「……ん。いい肌触りだわ」ｽﾘｽﾘ

兵士（なんか普段と雰囲気が違う！いつもより可愛い！しぐさが幼い！）

兵士（もちろん普段の大人びた感じもいいけど！知らない一面を垣間見たぜ）ﾊｧﾊｧ

魔術師「……私、夕食まで一眠りするわ。眠くなっちゃった」

兵士「え？」

魔術師「夕食、取りに行くときに起こして頂戴……」

魔術師「ｽｩ……ｽｩ……」zzz

兵士（寝付くの早っ！）

兵士（男の前で眠るなんて、無防備無警戒もいいところだぜ）

兵士（いまどきいいとこ育ちの純粋お嬢様だってここまで無防備じゃないのに……）

兵士（…………）

兵士（さっきからへそがチラチラ見えててめっちゃくぁいらしい）

兵士（もうこれは食っちゃう流れ……ｶﾞﾊﾞｯ）

兵士（とはいかないんだな……俺ヘタレだもん）

魔術師「……ﾝ……」zzz

兵士（ちっくしょぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ！）



受付係（さっきの客、今夜はやることヤるんだろうな……○ね！）

>>25を採用してみたかった

しばらくここに繋がんなかったのは何だ？結界かなんかか

兵士（……しかしこの仕事、ほんとやることないな……まあそれが一番なんだろうが）

魔術師「……ｽｰ……ｽｰ……」zzz

兵士（さすがに魔術師さんの寝顔見てﾊｧﾊｧするのにも飽きたし……）

兵士（暇な時間を有効活用したいよなあ…………）

魔術師「……ﾝﾝ……ｽｰ……」zzz

兵士（あー、暇だ……）



兵士（くそぉー……）

——夕食時

兵士（部屋探索してたら前の客が忘れていったらしい本が置いてあったぜ）

兵士（読みふけってたらもうこんな時間か……夕食取りに行かないと）

兵士「魔術師さん……起きてください」ﾂﾝﾂﾝ

魔術師「ん…………」

兵士「夕食取りに行くから、起きてくださいよ」

魔術師「……もうそんな時間？」

兵士「結構よく寝てたっスよ……」

魔術師「……そう？」

兵士「じゃあ俺は夕食取りにいくっス。ついでに風呂の場所も聞いてくるっスよ」

魔術師「あー……お願いね」

兵士「ちょっと受付の人。厨房ってどこっスか？」

受付係「厨房はあちらでございます。お夕食ですか？」

兵士「へえ」

受付係「案内致しましょうか？」

兵士「いや、それはいいっス」

受付係「……そうですか」

兵士「あざっス」

受付係「……ところで兄ちゃん」ﾎﾞｿｯ

兵士（なんだ？いきなり態度が変わったぞ）

受付係「あの別嬪のオジョーチャンとはどんなカンケーよ？」ﾎﾞｿﾎﾞｿ

受付係「やっぱ、やることはヤってんだろ？」

兵士（ちっくしょぉぉぉぉおおおおおおおおお！やっぱ勘違いされてるぅぅぅぅううううううううう！）

兵士「そんな事実は無い」ｷﾘｯ

受付係「またまたー、そんなこと言っちゃって　裏　で　は　？」ﾎﾞｿﾎﾞｿ

兵士（うっぜぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええ）

兵士「俺はあの人に雇われて護衛役をやってるんであって、それ以上でもそれ以下でもない」

受付係「へぇー」ﾆﾔﾆﾔ

兵士「うぜぇ、[ﾋﾟｰｰｰ]ぞ」

受付係「おっと、怒らせちまったか？」ｽｯ

受付係「……それでは、ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」ｽﾀｽﾀ

兵士（変わり身も早ぇ……一番ウザいタイプや）

兵士（潰れろ！潰れてしまえこんな宿屋！口コミで広めてやる！）

——厨房

兵士「それで、厨房はこっちだったかな、っと……？」

兵士「あ、風呂の場所聞くの忘れた」

コック「あ、兵士さんですね。お話は伺っています」

コック「こちらがお食事でございます」

兵士（おー、見た目がスゲー豪華……おっと涎が）ｼﾞｭﾙ

コック「結構重いんですけど……台車とかお使いになられます？」

兵士「いえ、力は結構自信あるんで大丈夫っス」

コック「わかりました。食べ終わった食器はここに置いといてください」

兵士「うす」

コック「では、失礼します」ｽﾀｽﾀ

兵士「あ、ちょっと」

コック「……？何でしょう」

兵士「風呂ってどこにあるか、ご存じっスか？」

コック「風呂、ですか。確か……地下に大浴場と、狭いですが各部屋にもお湯が引いてあったかと……」

兵士「あー、了解っス。よく考えたら、コックさんに聞くことでもなかったっスね」

コック「いえ、大丈夫ですよ。それでは失礼します」ｽﾀｽﾀ

兵士（まともなやつもいるのか……宿の奴全員受付係みたいなのだったらどうしようかと……）ﾋｮｲｯ



兵士（…………食事重ッ！超重ッ！）

——客室

兵士「……お待たせっス」ｾﾞｴｾﾞｴ

魔術師「……あら、お疲れ様。遅かったじゃない」

兵士「受付の人に絡まれてたっス」

魔術師「……それは、お気の毒にね」

兵士（……半分はあんたのせいだ、魔術師さんよ）

魔術師「ふうん、結構豪華な夕食なのね。食べましょうか」

兵士「……うす」

ﾋﾟｰｰｰｰｰは割とわざと
ウザかったら次からやめます

頭痛い夜コーヒーなんて飲むもんじゃないな

無理しないで頑張ってー
あと戦闘シーンは書く予定ある？

今だいぶ忙しいので顔出しだけで申し訳ない

>>65
一応ある予定

——夕食後

魔術師「美味しかったわね」

兵士「そうっスね……」

魔術師「どうしたの？いつもより静かじゃない？」

兵士（返しに行くときにまた受付に絡まれたらどうしようかとね）

兵士「いえ、なんでもないっス。それより……」

魔術師「なあに？」

兵士「なんで魔術師さんは、あんな不便なところに住んでるんスか？王都の方が何かと便利なんじゃないスか」

魔術師「そうね……人が多い所、苦手なのよ。身辺警護の依頼も一人だったでしょ？」

兵士「そうだったっスね」

魔術師「本当はあのサイズのお屋敷なら、少なくとも15人くらいは警備につけるんだけどね」

魔術師「でも私は一人暮らしだし、私にいつもついていてくれる人が一人いれば十分なのよ」

兵士「そうっスか……」

魔術師「まあ、あとはもう長年住んでるから、今更移住したくないのもあるわね」

兵士「ああー……なるほど」

魔術師「納得した？」

兵士「そっスね。なんかこんなこと聞いてスンマセン」

魔術師「いいのよ。別に隠すことでもないわ」

兵士「……じゃあ俺、食器返しに行きますね。そうそう、風呂は地下に大浴場と各部屋に小さいのがあるそうっス」

魔術師「そう。じゃあここの部屋のお風呂を使おうかしら。あなたが返しに行ってる間に、先に入っちゃうわね」

兵士「うっス」

——同時刻　館付近

頭「こんなに暗くなっても明かりがついてねぇってことはさ……今日は誰も居ないんじゃねぇ？」

山賊C「確かに、そのようですがね」

頭「突入しようぜ！」

山賊C「でも罠とか仕掛けられてるかもしれないじゃないですか。うかつに突入するのは危険ですよ」

山賊A「それに関しては問題ないでっせ！手持ちの魔道具の中に、罠をサーチする道具がありまっせ！」

頭「魔力を使った罠にしか効かないらしいが……いまどき魔力を使わない罠もないだろうしな」

山賊C「そう上手くいきますかね……」

山賊B「なんとか　なる　それより　はやく　めし」

山賊C（胃に穴が開きそうです……）ﾊｧ

頭「じゃあ各々準備しろ！得物を手にしろ！」

山賊A「了解でっせ！」ｼｬｷﾝ

山賊B「おれは　すでで　いい」

山賊C「仕方ないですね……くれぐれも、長居は禁物ですよ？」

頭「おう！金目の物取ったら、すぐ撤退だぜ！」

頭「それじゃ行くぜ野郎ども！突入三秒前！さぁーん！」

山賊A「にーぃ！」

山賊B「いち」

頭「突入！」ｽﾀﾀﾀﾀﾀﾀﾀﾀｯ

山賊A「イヤッハァァァァァァァアアアアアアア！！！！！！」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀｯ！

山賊B「オグァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ！！！！！！」ﾄﾞｼﾝﾄﾞｼﾝﾄﾞｼﾝﾄﾞｼﾝ!

山賊C「……お前ら狂戦士（バーサーカー）かよ……」ｽﾀｽﾀ

——同時刻　宿

魔術師「そろそろ寝ましょうか」

兵士「……そういや俺はどうすればいいんスかね？やっぱ寝ずの番スか？」

魔術師「……どうして？」

兵士「いやー、一応ここ館の外ですし」

魔術師「大丈夫よ。私の魔法で警戒させておくわ。万が一侵入者がいた場合に働いてもらうわ」

兵士「……俺寝起き悪いっスよ？」

魔術師「強制的に目覚めさせる魔法もあるわ」

兵士「そうっスか」

魔術師「それじゃあ。『命よ宿れ。我らに仇なすものの侵入を防げ』」

折り鶴×5「……」ﾌﾜｯ

兵士「またそれっスか。便利っスね」

魔術師「でしょう？」ﾌﾌｯ

魔術師「この子たちに部屋の外を警戒させておけば、私たちの部屋に入ろうとする人がいたらすぐ知らせてくれるわ」

兵士「ほー」

魔術師「もっとも、この王都のド真ん中で何かやらかそうって人もいないでしょうけど……」ﾌｧｧｧ

兵士「眠そうっスね」

魔術師「眠いのよ」

兵士「昼間寝てたのにっスか？」

魔術師「あら、私は多いときは一日18時間寝るわよ？」

兵士「…………」

魔術師「魔法って疲れるのよね。じゃあお休みなさい」

兵士「お休みなさいっス」

兵士（本当に警戒心薄いな……異性と同じ部屋だってのに）

——魔術師の館　内部

頭「なんだか、拍子抜けするくれぇ何もねぇな」

山賊C「本当ですね。これだけ大きな屋敷で、侵入者撃退用のトラップもないなんて」

山賊A「進むのが楽でいいことでっせ！」

頭「そだな！さあ、進むぞ！」ｽﾀｽﾀ

山賊A「お供しまっせ！」ｽﾀｽﾀ

山賊C「ああっ！ちょっと、そんな無警戒に進んでは……」

山賊B「おれも」ﾄﾞｽﾄﾞｽﾄﾞｽ

山賊C（もうこのグループから抜けていいですか）

山賊A「……！お頭、ここでっせ！」

頭「どうした！なんか見つかったか」

山賊C（……騒がしい）

頭「なんでぇ！銀貨がたったの5枚じゃねえか！」

山賊A「す、すんませんっ」

山賊B「これ　うまいな」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

山賊C「ちょっと、何入ってるかわからないですよ」

頭「ああ、確かに美味いな。高級なパン食ってやがんな」ﾊﾟｸﾊﾟｸ

山賊A「何もないならここで食いだめて行くしかないでっせ」ｶﾞﾂｶﾞﾂ

山賊C「っ！ああもう……」

頭「おい山賊C！お前ぇも食えよ！美味いぞ！」

山賊C「いいえ。私は遠慮しておきます」

頭「なんでぇ！ノリ悪ぃなあ」

山賊B「この　ほしにくも　なかなか」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

山賊A「おい！俺にも寄越せ！」

——朝

山賊C（結局みんなを放置して屋敷中探し回っても金目のものは何もありませんでした）

山賊C（ほかの奴らはどうしてるんでしょうか）

山賊C「そろそろ引き揚げ……ま……」

山賊B「ゴガァァァァァぁぁぁぁぁ」zzz

山賊A「もう……食えねえ……」zzz

頭「……」zzz

山賊C（どうしてみんなして寝てやがるんでしょうか）

山賊C（しかもこんなに食い散らかして）

頭「……んあ？山賊C、やっと帰ってきたか。でももう全部食っちまったぞ」

山賊C「それはいらないって言ったじゃないですか！なんなんですかアンタら！」

頭「山賊だけど」

山賊C「腑抜けすぎです！もっとシャキッとしてくださいよ！」

頭「敵いねぇんだからいいじゃんよー……グゥ」zzz

山賊C「んもう！私がいなくなったらどうなることやら」

山賊B「ゴッガァァッァァァァァアアアアアアアアアアアア！！！」zzz

山賊C（鼾うるさっ）

山賊A「お頭ぁ……そこ違……」zzz

山賊C（どんな夢見てやがりますか！こないだの迷宮屋敷ですか！？）

山賊C「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！！！！！」ｲﾗｲﾗ

山賊Cはなんか可哀想な人

散々待たせて少量で済まんかった

魔術師「さて、帰りましょうか。今から行けばお昼ごろには着くわ」

兵士「そうっスね」

魔術師「忘れ物は？」

兵士「そもそも何も持ってきてないっス」

魔術師「そうだったわね」

兵士（受付の人に絡まれないといいなあ……）



魔術師「出発するわ、チェックアウトお願いね」ﾁｬﾘﾝ

受付「ご利用ありがとうございました」

魔術師「それじゃあね」ｽﾀｽﾀ

受付「オイ兄ちゃんよ」

兵士「なんスか？」

受付「ゆうべはおたのしみでしたか？」

兵士「うっさい死ねッ」

受付「こいつは失礼」

魔術師「受付の人と、何を話していたの？」

兵士「いやー特に何も」ﾊﾊﾊ

魔術師「ふーん……」

兵士（言えるわけねーだろ！あんたと俺がヤってたかどうか聞かれたんだぞ！）

魔術師「まあ何もないならいいわ。行きましょう」ｽﾀｽﾀ

兵士（あーマジむかつく）ｽﾀｽﾀ

——昼前　魔術師の館

頭「んあー……寝過ぎたか」ﾌｧｰｱ

山賊A「頭が痛え……こりゃ完全に飲み過ぎでっせ……」

山賊B「ぐぉぉぉぉぉぉぉ……」

山賊C（あんたたち……ッ！たるみ過ぎですバカ！）

山賊C「いい加減ここの屋敷の主が帰ってくるのでは？面倒なことになる前に撤退しましょうよ」

頭「あーん？……あー、そーいやここ誰かの屋敷だったなー……」

山賊A「いつの間にか俺らのアジトに戻ってるなんてミラクルはねーっすか……」

山賊B「あたまが　われる」ｽﾞｷｽﾞｷ

山賊C「はーぁぁぁぁぁぁぁぁ」

——魔術師の館　入口

魔術師「……やられたわ」

兵士「そのようっスね」

魔術師「扉が破られてる……」

兵士「ここいらで最近暴れてる山賊どもの仕業っすかね？」

魔術師「……まるで強盗じゃない……」

兵士「ホントっスよ」

魔術師「兵士、あなたは戦闘の準備をしておいて」

兵士「やっぱりそうなるんスか」

魔術師「話が通じる相手だといいんだけど……」

——魔術師の館　内部

山賊C「ほら行きますよ！お頭、歩けなかったら肩貸します」

頭「うーい……あー、大丈夫だ歩ける」ﾌﾗﾌﾗ

山賊A「まったく、ここの屋敷は押し入り損ってやつでっせ」

頭「ほんとだよ！見た目は豪華だったのによー」

山賊B「おれは　まんぞくだ」

山賊A「お前はそうだろうけどさ」

山賊C「ほらほら、無駄話してないで早く！」

頭「はいはい……」

——入口

魔術師「入るわよ。十分警戒して進んで」

兵士「了解っス……あ？」

頭「ん……？」

山賊A「は？」

山賊B「？」

山賊C（最悪のパターン来たー）

魔術師「あなた達……あなた達ね！」

魔術師「私達の家の扉を壊したのは！」

兵士（そこかいっ！）

頭「……いかにも」

魔術師「……まあいいわ。それについては見逃してあげる。どうせ魔法でなおせるし」

魔術師「あなた達、何か盗ったりしてないでしょうね！盗ってないならすぐにここを去りなさい！」

山賊C「あー、あの

山賊A「そーいうワケにはいかねーなねーちゃんよ！」

頭「俺たちゃいろんな金目のもん盗ったからな！ガハハハハハ！」

魔術師「……なんだ、嘘じゃない。私、この家にお金になるものの類なんてほとんど置いてないもの」ｸｽｸｽ

山賊A「なっ……」

山賊C（バカ！相手を挑発してどうするんですか！しかも効いてない！）

頭「……何だよ！詐欺じゃねーかよ畜生！」

頭「こんな立派な屋敷構えといてよ、金目の物が無えなんていわせねーぞ！」

山賊A「どこにあるか吐かせてやる！」

山賊B「おれの　でばんか」

魔術師「……ちょっと」

兵士「魔術師さん、下がっててくださいっス。こいつらは、到底話が通じる相手じゃないっスよ」ﾁｬｷ

頭「おいおい付き人さんだか知んねえけどよ！そんなチャチな槍一本で俺たちを相手取る気か？」

山賊A「正気じゃねーっすよ」ｹﾗｹﾗ

頭「お前らだけで十分だな、山賊A、C」

山賊A「いい酔い覚ましでっせ！」

山賊C「やれやれ……仕方ないですね」

頭「————殺っちまえ！」

兵士（……来る！）

山賊A「応！」ﾄﾞｽﾄﾞｽ

山賊C「いざ！」ｽﾀﾀﾀ

兵士（鈍いな……あのバンダナっぽいのには注意は必要ない）

兵士（まずあの思慮深そうなのからやっつける）ﾀﾞｯ！

山賊C（はっ！？まず……いッ！速すぎる）

兵士（槍の柄で……鳩尾に一発！）

山賊C「…………がァッ!!」ﾊﾞﾀｯ

兵士「養成学校上がりを舐めるな雑魚め」

山賊C「そん……な。まさか……」

山賊A「山賊C！」ﾀﾞｯ

山賊C「来るな！……ｺﾞﾎﾞｯ」

山賊A「山賊C、大丈夫か！おい！」

兵士「フィーッシュ！かかったな！」

山賊A「……へ？」

兵士「お前アホそうだからな。一人叩きのめせば周りそっちのけで駆け寄ると思ってたぜ」ｼｭｯ

山賊A「嘘だ……ｺﾞｯ」ﾊﾞﾀｯ



魔術師（凄い……）ｷﾗｷﾗ

頭「フン！山賊AとCをここまで速く倒したのは誉めてやろう」

兵士「そりゃどーも、光栄だぜ」

頭「言ってろ。……山賊B、出番だ」

山賊B「りょうかい」ﾄﾞｼﾝ

兵士（改めて見るとこいつ……デカい）

山賊B「…………」

兵士（俺の身長の……2倍くらいないか？腕も丸太のように太え）

頭「フハハハハハハ！どうだ、怖気づいたのか？」

兵士（くっそ！やるしか……）

どンッ

兵士（！？）

山賊B「ぬゥん！」ﾋｭｯ

山賊B「はずしたか」

兵士（こいつ……杉の木を引っこ抜いてハンマー代わりにしやがった！人間かよこいつ！）

山賊B「つぎは　あてるぞ」ｼｭｯ

ドスン

兵士（……ひゅーっ、間一髪！）

山賊B「…………？」

兵士「鈍い！その隙が命取りだ！」ﾄﾞｽｯ

兵士（一発で決める！）

山賊B「……………………ｯ」

兵士「やったか！？」

山賊B「……なかなか　いたい　じゃないか」

兵士「……畜生！」



魔術師（兵士頑張れー）

だいぶ遅くなりました
魔術師ちゃんは肉弾戦が苦手なので巻き込まれないように下がって見てます

台本形式で戦闘って難しいですねどうやったら迫力が出るのでしょう
誰か教えてください

流石に人体の急所に打ち込んだ槍の柄は効いたのか、山賊Bの巨躯は微動だにしない。
しかし一方で、兵士も息を切らしていた。

「はーっ、はーっ、ぜーっ、何だこいつは！……ｲﾃﾃ」

直撃を免れたとはいえ、兵士の体にはかなりのダメージがあった。
しばらくは、まともに動けるとは思えない。
そして、彼より若干回復が早かった山賊Bは再び動き出す。

「……どうした　もう　おわりか」

そんな彼に、山賊Bは容赦なく手にした大木を振り下ろす。
またも兵士は、それを横に転がって躱した。

「……この、規格外野郎！」

そのまま反撃のチャンスとばかりに、山賊Bに向かって駆け出した兵士だったが、予想外のことが起きた。

「なっ……」

山賊Bが地面に打ち付け続けた大木のせいで、地面には大小様々のくぼみができていた。
それに足を取られ、転んだのだ。
当然、すぐに立ち上がるなど出来はしない。

そして山賊Bは、その大きな隙を逃さない。
巨木を大きく振りかざし。
兵士を叩き潰さんと、振り下ろした。

「ぬゥんッ！」

「兵士！」

最期に叫んだのは、誰だったのか。多分、自分の雇い主だろう。
兵士がそれを認識するかしないかのタイミングで、彼の視界一杯に巨木が広がり——

ぐしゃッ

鈍い音が響いた。地面に打ち付けられた巨木の下から、赤黒い液体が流れ出る。
それの意味するところは、つまり——

うわぁ……

とりあえず今日ちょっと書いてみた
駄目だったらもとに戻すのでどっちがいいか言ってください

頭「さて、2対1になったな、女ァ」

魔術師「……そうみたいね」

頭「……動じないのか、つまんねえ奴だ」ﾍﾟｯ

魔術師「あら、私内心では結構焦ってるわよ？」

頭「まあいい。殺っちまえ山賊B」

山賊B「…………」

頭「どうしたんだ？お前ならこの女を殺るのはたやすいことだろう？」

山賊B「…………ｸﾞｩ」ﾄﾞｻｯ

頭「!!!」

兵士「いやー、魔法ってすごいっスね。俺死んだかと思いましたもん」

頭「…………おい」

兵士「なんだ？」

頭「お前、なぜあれをモロに喰らって生きていられるんだ？」

兵士「さあな」

頭「バケモノめ！」

兵士「いやぁ、俺は普通の人間だぜ」

頭「そんなわけあるか！あの攻撃を喰らって死なないなんて、バケモノとしか……」

魔術師「あら、言ってなかったかしら。私、生命魔法は得意分野なのよ？」

兵士「凄いっスよね。下半身をミンチにされたのに、五体満足で復活っスよ」

頭「……女ァ！」ﾄﾞｯ

兵士「おっと、させないっスよ？」ｽｯ

頭「殺す。何が何でも貴様らだけは殺す」

兵士「やってみろ」

頭「随分と余裕そうだな」

兵士「実際余裕っス」

頭「ムカつくな」ﾌﾞﾝｯ

兵士「……剣って、やみくもに振って当たると思ったら大間違いっスよ？」ｽｯ

頭「…………！」

兵士「こうやって使うものっス」ﾌﾞﾝ　ｻﾞｸｯ

頭「ぐぁぁぁぁぁあッ！」

兵士「……ちょろいもんっス」

頭「ぜぇ……ぜぇ……」

兵士「いい加減諦めたほうがいいっスよ？別に命まで取ろうとは思ってないっス」

頭「…………」

兵士「だんまりっスか。さっさと降参すれば……」

ドスンッ

兵士「……あっちゃあ」

山賊B「だいじょうぶか」

頭「……起きたか山賊B。見ての通りだ、酷くやられた」

兵士「催眠魔法の効きが甘かったかなぁ。昔から魔法は得意じゃなかったんだよなぁ……」

兵士「先生が、『催眠魔法』と『治癒魔法』だけは確実に使えるようにしとけ、って言ってた意味が分かったよ」

頭「……いくらお前が頑丈だろうと、魔法が便利だろうと……」

山賊B「…………」

頭「……山賊Bを倒しきることは出来まい」

兵士「どうかな。やって見なきゃわかんないっスよ」ﾄﾞｯ

山賊B「むかえうつ」ﾀﾞｯ

————

兵士（流石にもう木を引き抜くほどの体力は残っていないか……）

山賊B「ごぁぁぁあああああああっ！」ﾌﾞﾝｯ

兵士（とすると気を付けるべきはあの大槌のような腕のみ）

山賊B「ぐるぁぁあああっ！」ﾄﾞｽｯ

兵士（…………勝てる！）ﾌﾞﾝ　ｻﾞｸｯ

山賊B「ごぁぁぁぁ……」

兵士（……刺さった！）

山賊B「……ぬぉ」

兵士「随分痛そうだな？」ﾄﾞｽｯ

山賊B「ぬぐぁぁぁぁっ」ﾌﾞｼｭｩ

兵士「……とはいえ、また回復されても厄介だし」

山賊B「ぐぉおおおおおお」ﾄﾞｸﾄﾞｸ

兵士「『催眠』」

山賊B「が……zzz」

兵士「あとは手足の筋を……断つ」ｻﾞｸｯ

山賊B「……」ﾋﾞｸｯﾋﾞｸｯ

兵士（……やり過ぎたか？）

頭「…………ッ！」

魔術師「いい加減降参したら？」

頭「そういうわけにいかねえんだ女ァ。俺らにもプライドってもんがあるからよぉ」

魔術師「……そう。ならせいぜい足掻くことね」

頭「ああ。そうさせてもらう」

魔術師「……！」

頭「お前は、人質だ」ｽｯ

魔術師（喉元に、ナイフ……。やられたわね）

魔術師「……最低ね。プライドの欠片も見当たらないわよ？」

頭「言ってろ。勝てばいいんだよ」

頭「おい男、山賊Bを倒したようだが……」

兵士「！」

頭「この状況、お前は手出しできるかな？」

兵士「……なんて卑怯な」

頭「なんとでも言え」

兵士（なんてこった。魔術師さんが……）

頭「お前はただ、俺になすすべもなく殺られればいいん……」ﾄﾞｸﾝ

兵士「……？」

頭（なんだ？まるで『心臓が跳ね上がった』かのような感覚が……）

兵士（……山賊の皮膚が、気持ち悪く紫色に染まっていく。……内出血？）

頭「……ごぼっ」ﾋﾞｼｬ

兵士（血を吐いた！一体何が）

魔術師「……いったい何が起こったのか、って顔をしてるわね」

頭「貴様……ッ！ごぼっ」ﾋﾞｼｬｯ

兵士（全身から血が噴き出した……）

魔術師「簡単なことよ。あなたの『血圧を10倍にした』だけ」

頭「……ごぼっ」ﾌﾞｼｬｯ

兵士「……えげつねぇ」

魔術師「いい加減頭に来てたのよ。安心しなさい、殺しはしないわ」

魔術師「1時間もしたら元に戻るわ」

兵士「でも、普通に考えて死ぬんじゃ……」

魔術師「大丈夫よ。私は生命魔法が得意分野なのよ？」

兵士「気にいったんスかそれ」

魔術師「ええ」

頭「……待、て……」ｺﾞﾎﾞｯ

魔術師「さ、行きましょう兵士」

兵士「そうっスね。中の様子も見ないとですし」

頭「貴、様……ら」ﾄｻｯ

兵士「しかしさっきの連中、なんだったんスかね」

魔術師「物騒な人達だったわね」

頭（何てことだ……）

兵士「あ、そういえば魔術師さん、首は大丈夫っスか？」

魔術師「ええ。ナイフを当てられてたところは、ちょっと痛んだけれど。もう治したわ」

頭（畜……生…………ッ）

————1時間後

山賊C「……大丈夫ですか？お頭」

頭「……くらくらする」

山賊A「そりゃあれだけ出血してるんでっせ。死なない方が奇跡っす」

山賊B「ぬぅ……」

頭（本当に殺さなかった……どころか全回復かよ……）

山賊C「行きますよお頭。あいつらにはもう関わりたくないですし」

山賊A「もっとヤワそうなのを狙うべきだったっす」

頭「……そうだな」

山賊C「肩貸しましょうか？」

頭「ああ、頼む」

————館内部

兵士「……すいません」

魔術師「どうしたの？」

兵士「本当なら魔術師さんを守るべきだったのに……」

兵士「逆に守ってもらった上に、アイツらに傷つけさせるのを許してしまうなんて」

魔術師「……あら、そんなことないわよ」

兵士「……？

魔術師「私たち魔術師の弱点は、魔法の構築と詠唱に長い時間がかかることだから」

魔術師「あなたが時間を稼いでくれたことが、十分価値があるのよ」

兵士「…………」

魔術師「だから胸を張っていいわ。これからもよろしくね」ﾆｺｯ

兵士「……！ハイ！」