メイド「何故ですか?」
勇者「何故って…君の力が必要だからに決まってるじゃん。だめ?」
メイド「…宜しいですが、私は戦闘に関しては役に立たないと思いますよ」
勇者「うーん、メイドさんは女の子なんだから傷ついてほしくないし。全然おっけーだよ」
メイド「勇者さまも女性ですよね」
勇者「んーまぁ勇者だし?細かいことはいーんだよ。それより魔王討伐の旅、これからよろしくね!」
メイド「こちらこそよろしくお願いします」
勇者「てゆーかさ。今私たちがいるの最初の街なんだけど…あと2人仲間が増えないと先に進めないんだよね」
メイド「それはまた何故ですか?…っていうか私以外に仲間がいないんですね。」
勇者「いや、酒場とかどこか分かんなくて迷ってたらでっかい屋敷に着いてさ?侵入してみたら君に会ったから仲間にした訳よ」
メイド「…普通は戦士とか魔法使いとかを仲間にするのに、メイドなんておかしいとは思ったんですよ」
勇者「いや~…あ、でもメイドさんの力が必要なのは本当だよ?絶対この先で役に立つよ。」
メイド「もう良いですよ…それより何故先に進めないのか教えて頂けますか」
勇者「あ、そうだった。なんでかと言うと、王様のところに行ったら『一人で旅をするなど危険すぎる!街の酒場に行き、仲間を増やして来るのじゃ!!』って言われてさ。それが4人くらいで人数的に良いらしいから探してるの」
メイド「そういうことですか…では、さっそく酒場に行きましょう」
勇者「おー!頼れる仲間探しじゃーー!!」
~街の酒場~
勇者「広いなぁ~ここ。内装が凄く綺麗だね!」
メイド「この世界では中々に人気が高い酒場ですからね。質の良いお酒を安く提供することでお客様を満足させているそうです。他にもまぁ、旅に役立つ道具を売ったり宿として利用できたり…旅の最初ではかなり便利な施設ですね。あとこの酒場の特徴ですが…」
?「うおらああああぁぁあぁっっ!!」
ガキィィイイィンッッ!!
勇者「うわっ、何!?」
メイド「ここでは力自慢の人同士が戦って賞金を手に入れるゲームがあるんですよ。優勝すると賞金10万Gですが…今まで優勝した人は数える程しかいないんだそうです」
勇者「へぇ~…でも参加者がお互いに戦うんだから一位は絶対現れるし、優勝者はいるんじゃないの?」
メイド「いえ、それがですね…って、今から始まるのを見ていれば分かりますよ」
勇者「?」
宿屋の主人「お見事、この戦いを制したのは街一番のケンカ男、荒くれ者だーーーっ!!」
荒くれ者「は、ははっ…なんだ、意外と一位になるのは余裕じゃねぇか…今までの奴らは弱すぎたんだな……」
宿屋の主人「さて、他の参加者を蹴散らしたキミには最後の戦いがあるぞ!これに勝利したら賞金10倍の100万Gッ!!観客の皆様、この戦いを見ることを希望しますかぁーーっ!!?」
観客たち「「「おおおーーーっ!!」」」ザワザワ
宿屋の主人「はい、という訳で決勝戦を行いまぁすっ!!」
荒くれ者「ハッ…んなもん余裕だぜ!おら、次の奴かかってこいや!!」
宿屋の主人「よーしよく言った!!この挑戦を受けたキミと戦うのは……このアタシだああぁっ!!」
勇者「え?宿屋の主人…??」
荒くれ者「ふん、てめーごとき一瞬でぶっ倒してやるぜ?覚悟しな」
宿屋の主人「それでは皆様、試合開始の合図をお願い致します!!」
観客たち「「「「「レデーーィッ、ファイト!!」」」」」
酒場の主人「おおーっとおぉ!!なんと、勝利したのは宿屋の主人だあああぁっ!!!」
宿屋の主人「いえーーぃっ!」
荒くれ者「」
なんと、試合開始から僅か1分。勇ましく突撃した荒くれ者を一撃で沈め、優勝したのは宿屋の主人だった。
勇者「なっ……え?あの人強くない??」
メイド「宿屋の主人さんはこの街の英雄らしくて、魔王軍が攻めてきても一人で全て追い返す程の猛者なんだそうですよ。」
勇者「もうあの人勇者でいいんじゃないかな」
メイド「そうそう、この時限定で飛び入り参戦はOKらしいですが行きますか?」
勇者「…いや、止めとく。ケガはしたくない」
メイド「ですよね。…あっ、そう言ってたら挑戦者ですよ」
勇者とメイドが話している間に、宿屋の主人の前には1人の男が立っていた。頑丈そうな鎧を着てはいるが、動きやすさを重視したような作りをしている。
宿屋の主人「…ほほぅ、アタシに挑むのかい?よーーしっ、さっそくやろうか!!!」
観客「頑張れ!主人を倒せーー!!」
観客「逃げちゃ駄目だぞーー!」
観客たちの期待も高まる中、試合は開始される。謎の男と主人は剣を抜き、お互いに向けてしっかりと構えた。
ガキィィンッ!
宿屋の主人「ふふ、アタシの剣を全て防ぐとは、中々やるねぇ」
謎の男「腐っても英雄。アンタ強いね…油断してると一発で倒れそうだ」
宿屋の主人「まぁ、油断しないことだね。…喰らいな、初級雷魔法!」
バリバリバリィィイッッッツ!!
宿屋の主人「あり、店を壊したくないから初級にしたけど…壁に穴空いたかなぁ?」
勇者「…倒した?」
メイド「いえ、魔法壁でガードしてますね」
宿屋の主人が放った雷魔法は、謎の男の魔法の壁によって防がれていた。
周りに被害が出ずに済んだが、謎の男の魔法壁は崩れてしまった。
宿屋の主人「お、防いでくれて助かったよ。壁を直すのは面倒だからね…」
謎の男「じゃあ放つなよ…俺も人のこと言えないけど。上級火炎魔法ッ!」
宿屋の主人「おいおいアタシの店が燃えるじゃないか。上級水魔法!」
ジュンジュワアァァァア…モクモク
観客「うわああぁっ!煙で前が見えねぇぇえぇえっ!!」
宿屋「くっ…しまった、目隠しか!」
謎の男「汚い手を使って悪いな」チャキッ
宿屋の主人「っ!?」
煙幕で視界を封じた隙に謎の男は宿屋の主人の背後に回り込み、首に剣を当てていた。
謎の男「直接倒してはいないが…俺の勝ちで良いか?」
宿屋の主人「へへっ、嫌だと言ったら喉をスッパリ斬られそうだね。…この勝負、挑戦者の勝ちだ」
宿屋の主人が敗けを認めた瞬間、酒場には観客たちの驚きの声が溢れ返っていた。主人を倒したあの男は何者なのか、こんな戦いを見るのは初めてだ等といった様々な言葉が交差していく。
そんな中、宿屋の主人と男は目立たないところで会話をしていた。
謎の男「よいしょっと、賞金は貰ってくぜ」
宿屋の主人「あぁ。…それにしても、アタシが負けるなんてねぇ。いったい何者だい?」
謎の男「…人様に迷惑かけてる魔物を倒す旅をしてる普通の旅人だよ」
宿屋の主人「ふ~ん?そうは見えないけどねぇ。…あ、そうだ。キミの宿代、無料にしてやるから泊まっていきなよ。アタシに買ったサービスさ!…他には内緒にしといてくれたら、だけどね」
謎の男「じゃあ、お言葉に甘えさせt」
勇者「ねーねー!それって主人さんに買ったら私たちもそのサービス受けれるの?」
宿屋の主人「…ん?なんだい、お前達は」
勇者「ふっふっふ…あなた方のおかげでしばらく影が薄くなってた勇者ちゃんと超絶プリティーな従者、メイドさんでーっす!!」ドーン
メイド「プリティーは余計ですよ勇者さま」
宿屋の主人「ま、まぁお前達のことはよく分かったが…アタシに勝ったらって、今は少し疲れてるとはいえそんなに限界って訳でもないぞ?良いのか??」
勇者「ふっ、良いのですよ。何故なら私は勇者!強い相手と戦いたくなる性分なのである。…あ、それと私が勝ったらそこの若いにーちゃん私らの仲間になってね」
勇者の突然のスカウトに謎の男とメイドが驚く。自分勝手すぎるから当然だ。
謎の男「お、お前…どんだけ勝った時の報酬多くしてんだよ。俺は俺より弱い奴には付いていく気がないし、そもそもそんな貧弱な女二人でこの人を倒せる訳ないだろ。嫌だね」
勇者「キミより強いことを証明したら良い訳だね?じゃあキミよりも早く主人さんを倒してあげるよ」
宿屋の主人「アタシには何も得が無いのはスルーかねぇ…」
メイド「本当にすみません…」
勇者「まーともかくさっさと戦おうよ。さっきのところで良いよね」
宿屋の主人「…なんならお前達、二人がかりでかかってきな。これでアタシが勝てば文句無しで宿代払ってくれるだろう?」
メイド「何故か私も巻き込まれた!?」
勇者「ふふふ、もちろん良いですよ!じゃあメイドさん、行こうか?」キリッ
メイド「私戦えないですってば~…もぅ」
先程激闘が繰り広げられた場所に、大剣を構えた宿屋の主人と普通の剣を装備した女勇者、短剣を二本装備したメイドが移動した。
勇者「へぇ、メイドさんって双剣っぽい感じなんだ~…あ、そうだ。作戦伝えるよ」ゴニョゴニョ
メイド「ひゃぁっ!?く、くすぐったいです…っ///」
勇者「か、可愛い…じゃなくて。主人さん、行くよー!」
宿屋の主人「あぁ、いつでも来な!」
宿屋の主人「(まったく、今日は3人も相手することになるとはね)」
宿屋の主人「(さっさと倒して宿代を払ってもr…!?)」
勇者「はああぁぁっ!!」
ガキィィイイィィンッッ!!
宿屋の主人「くっ…、このアタシが押されてる?この細い腕のどこからこんな力が」カタカタ
メイド「やあああぁああぁぁっ!」
宿屋の主人「ちっ!」
ギギギギギイィンッッ
メイド「んっ…やはり…強いですね!」
勇者からの重い一撃を剣一本で受け止めながら、メイドの背後攻撃をナイフで受け止める。
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