ベジータ「ハルヒ達と孤島に夏合宿することになった」 (104)

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406739076/
の一年ぶりの続編。

半分くらい書いたままで死蔵も勿体無いので投稿します。


ここまでのあらすじ

常識を学ぶためにと高校に通うことになったベジータ。
宇宙の帝王を倒したり、神様が助けを求めにきたり、人類が地球ごと消滅することもない日常系。


※ベジータ……娘のブラが可愛くて仕方がない。ついでに親の気持ちが痛い程解るようになった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1441135180

夏休みとなった。ようやくブルマ達と過ごせる日々がやってきたのだ。

古泉から習ったオセロとやらでブラと遊んでいたオレにブルマが声をかけてきた。

「ねぇ、そういえばそろそろ合宿じゃないの?」

「が、合宿?いったいなんのことだ?」

実は学期末にハルヒが古泉の用意した島で三泊四日の合宿をすると言っていたのだ。

家族との団らんを重視しているオレは、もちろんそんなくだらん行事は無視することに決めていた。

「部活動の合宿よ!悟天くんから聞いたのよ。まさか忘れていたんじゃないでしょうね?」

くそっ!悟天のヤロウ余計な真似をしやがって!!

「それでいつなの?旅行鞄とか持ってないんだし、そろそろ買わないと………」

「……今日だ」

「え!?なにが?」

「だから今日がその合宿の日なんだ」

「ちょっと!今からじゃ間に合わないじゃない!!」

「ああ、そうだな。仕方がないから今回の合宿は諦めて家で過ごすことにするぞ」

「諦めるなんてねえだろベジータ!!」

「カ、カカロット!!」

いつの間にかカカロットのヤロウがいやがった。

「あら、孫くんじゃない何か用?」

「よう、ブルマ!悟天の奴がさ、『ベジータさんが着ていないから様子を見てきてください』って言うもんだからよ」

くそっ!!またしても悟天か!!

「ベジータなら飛べばすぐ着くだろ?」

カカロットが平然と言ってきた。

「ふん!残念だったな!ブルマにあいつらの近くで飛ぶのは禁止させられてるんでな」

「……事情が事情だけに今回は飛んでもいいわよ。ただし、あんまり見られないでよね」

「だってよ!よかったなベジータ!」

「だ、だが着替えも何も用意していないぞ!!」

「でぇじょうぶだ!!それはオラが後で届ける!」

「良かったわね、ベジータ!持つべきものは友達よね」

「うるせぇ!!カカロットのヤロウと友達になった憶えはねえ!!」

「パパ、喧嘩してるの?」

ブラが心配そうに声をかけてきた。

「い、いや!そんなことはないぞ!!パパたちは仲良しだからな!」

「じゃあ、仲良しのお友達を信頼して行ってらっしゃい」

「くっ!!」

ブルマに強引に送り出されてしまった。

ブラを抱きしめたのち、待ち合わせの港のフェリー乗り場に向かってオレは飛び去った。

フェリー乗り場は流石に人が多いので、適当な場所に降り立ち歩いて合流した。

他の連中は既にきていた。

「ベジータ遅い!!遅刻!!」

ハルヒはオレを見るなり声をかけてきた。

「ああ、サボる気だったからな」

「ちょっと!何を堂々と言ってるのよ!!」

ハルヒはそこまで言ってオレが手ぶらできていることに気が付いたのか、

「あんた着替えとかは?」

と、心配そうに聞いてきた。

「うるせぇ!説明するのも面倒だ。てめぇで考えやがれ」

「……ってあんたねぇ!!」

「あの船に乗るんだろう?愚図愚図してたら出てしまうぞ」

「ちょっと!!あんたが遅刻してきたから時間がギリギリなんでしょ!!なんで一番に乗り込もうとするのよ!!」

オレは喚くハルヒを無視して船に乗り込んだ。

船中、オレは気になったことがあったので悟天に聞いてみた。

「おい!その鞄の中の奴は誰だ?」

「へ!?嫌だなぁ、着替えとか歯ブラシとかそんなのですよ」

悟天は妙なことを言われたといった表情をしたのち、まさかといった表情となり鞄を開ける。

「ばぁ!」

悟飯の娘であるパンが出てきた。

「す、すいません!!!」

悟天が謝っている。

「来たがっていたのを断ったのですが……いつの間にか…」

そんな手があったとは!オレもブラを連れてくれば良かったと激しく後悔した。

ハルヒ達とパンが仲良く遊んでいるのを眺めているうちにフェリーは目的地に到着した。

フェリーを降りると新川という執事と森というメイドが出迎えた。

二人はオレ達に挨拶を済ますと「こちらです」と新たな船に案内する。

飛べばすぐに済むのにめんどくせぇ連中だぜ。

もっとも、朝比奈やハルヒ達は喜んではしゃいでいるようだからまだいい。

この様な移動にも意味があるのだろう。

船が進むと一軒の洋館が見えてきた。

「別荘でございます」

はしゃぐハルヒに新川とか名乗ったジジイが説明している。

船が波止場に着くとこの館の主人である多丸圭一とその弟の裕が出迎えた。

古泉と親しげに話し、古泉がオレ達の紹介をしていた。

めんどくせぇ野郎どもだ。

館の部屋割りは決まっていた。

オレは悟天と同室らしい。

「おい。この部屋割りは何なんだ」

「何か問題がありますか?」

古泉が不思議そうに聞いてくる。

王子であるオレが下級戦士であるカカロットの息子と同室とか、コイツは嘗めてやがる。

「オレは個室だ」

「そう言われましても……」

もう一つの事に気が付く。

「それとパンは悟天と同じ部屋にしやがれ」

パンが変な事を言ってしまっては台無しだからな。

「いえ、ですから……」

「それではオレは寝てくる。飯が出来たら呼びに来い」

愚図愚図言ってる古泉を無視してオレは部屋に向かった。

後ろでハルヒが「ちょっと!!海で遊ぶ予定なのにどうするのよ!」なんて叫んでいるが知ったことでは無い。

夜となり、メイドがオレを呼びに来た。

「あの……晩御飯ができましたが」

「………」

オレは無言で部屋を出た。

晩御飯は驚くほど少なかった。成長期のガキどもが多いのにここの主人は何を考えてやがるんだ?

まして、ガキどもに酒まで出してやがった。ぶっ殺しておくべきなのか悩んだ。

そして深夜、ドアの向こうに気配を感じた。

「悟天か?」

「あ、はい。ちょっといいですか?」

用事の予想はつくがドアを開ける。

「あの……パンが愚図っちゃって………」

悟天はパンの手を引きながら困り果てた様子だった。

「飯が少なかったからな。大方、空腹で眠れないんだろう」

「やっぱり、少なかったですよねー。僕もお腹が空いちゃって」

「……ついて来い」

オレは悟天たちを先導して厨房に向かった。

「好きなだけ喰え」

厨房に着いたオレは悟天達に飯を勧めた。

「えっ!?いいんですか?」

「腹が減ってるんだろう?」

「ええ……まぁ、そうですけど」

「こういうところの食い物は勝手に補充されるんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。少なくともブルマの家はそうだ。オレが何時冷蔵庫を覗いても満載だからな」

この星は妙な部分の技術が異様に発達していると毎度のことながら感心するぜ。

「そういうことなら、遠慮なく食べちゃいますね」

冷蔵庫を漁る悟天とパンを見ながら、オレは台所に置いてあったパンを食べた。

もちろん、食物的な意味でだ。

「よう!ベジータ」

オレがハムの塊を齧っているとカカロットの野郎がやってきた。

「随分と遅かったな」

「いや、わりぃ、わりぃ。パンが居なくなったとかで大騒ぎになっててよー」

そのパンはというとカカロットに会えて嬉しいのか抱きついていた。オレも早くブラに抱きつかれたいぜ!

「そうか。小さな子が急に居なくなったら騒ぎにもなるな」

勤めて平静にオレはそう言って悟天のケツを蹴り上げた。

「痛っ!!なにをするんですか!!」

「てめぇがパンを無断で連れ出したから騒ぎになったんだ」

「連れ出したんじゃなく、勝手に……」

「うるせぇ!ぶっ殺されてぇのか!」

「まぁまぁ。そんなに怒んなって。騒いでたのはほとんどがミスターサタンなんだしさ」

カカロットは冷蔵庫にあった鳥のモモ肉を咀嚼していた。

勝手に食うとは非常識なヤロウだぜ。やはり下級戦士は躾が出来ていない。

突然に窓が破られた音がした。

「お!ここに居たのか」

「なんだ。ブウじゃねぇか」

音の原因はブウのヤロウだった。

「サタンに言われてパンを探しに来た」

「サタンも心配性だなぁ」

カカロットのヤロウは娘を持ったことがないから、オレやサタンの気持ちはわからないのだろう。

「パンは悟天が連れてけぇるってサタンに伝えといてくれよ」

「わかった」

「ブウも食って行けよ」

カカロットのヤロウが勝手にブウを誘う。相変わらず勝手なヤロウだ。

「おう。そうするぞ」

ブウもそう返事をすると遠慮なくケーキを一気に飲み込んだ。

ふざけるな!!あれはオレが目を着けていたんだぞ!!クソッたれ!

「ふぃー食った、食った」

カカロットは満足気に腹を擦る。かく言うオレも満腹だ。

「お腹が一杯になったのかパンも眠そうです」

悟天はパンに膝枕をして頭を撫でていた。

「それじゃあ、オラとブウはもう帰るな」

悟空はブウと共に瞬間移動で立ち去った。

そこでオレはあることに気が付いた。

カカロットのヤロウ、荷物まで持ち帰りやがった!!

翌朝、ハルヒの怒鳴り声が館内に響いた。

「事件よ!事件よ!」

そう大声を出しながらドアを叩く。

「なんだ?フリーザでも復活したか?」

「そうよ!フリーザーが荒らされたのよ」

「フリーザが荒らされた?」

「ううん。フリーザーだけじゃないの厨房にあった食べ物が全部なくなってるの」

よくわからないままに、厨房に連れて行かれた。

「これは……どうなってやがる………」

オレが目にした厨房は窓は破られ、冷蔵庫は解き放たれているだけでなく、そこらに食い物の残骸が転がっている有様だった。

「アルコールの類を残してほとんどの食糧が失われてしまっています」

古泉にしては珍しく深刻な顔だ。

「あたし思うんだけど、窓が破られてるから、狐とか狸が食べていったんだと思うのよ」

ハルヒが腕を組み、自慢げな推理をしている。

だが、そんなことはどうでもいい。

「くだらねぇことを言ってねぇで、さっさと朝飯を用意しやがれ!」

オレは連中を一喝してやった。

「ですから食料がなくて朝食を用意できないのです」

古泉が心底困り果てた様に返答してきた。

「ふみゅ~……朝ご飯はなしですかぁ~」

朝比奈が寂しそうに呟く。

育ちざかりのガキに朝食抜きはキツイだろう。まして、昨日の夕飯も少なかったんだ。

「おい!ここの主はどこだ‼」

補充を怠った責任者を追及しようと古泉に問い質す。

「え!?田丸氏ですか?二階の奥の部屋ですが……」

「オレ様に任せろ」

オレは胸に親指を当てて宣言した。

「ちょっと!!あたしを差し置いて勝手に行くな!!」

「べ、ベジータさん!ちょっと落ち着きましょうよ」

ハルヒは文句を言うし、悟天は何故かオロオロとしているが、そんな事は知ったことか。

二階に上がると悟天が俺の前を行き、先にドアの所に行った。

「あ!ドアの鍵がかかってるみたいです。起きてくるまで待ちましょうよ。そうしたら少しは頭も冷えますし……」

悟天は何故かオレを宥めるかのように言ってくる。

そんな悟天に構わず、隣の部屋のドアを蹴破った。

「ちょっと!あんた何をしてんのよ!」

オレはハルヒの抗議に構わずに部屋に入ると、当のハルヒもついてきた。

そしてパンチ一撃、壁をブチ破った。

「凄い!!今のって壁ドンよね!あたし、ちょっとドキッっとしたわよ!!」

ハルヒが興奮気味に後ろで喚いているが、構わずに壊れた壁の向こうに呆然と立っていた屋敷の主の胸ぐらを掴んだ。

「おい!さっさと食い物を補充しねぇか!」

「く、食い物って…君は一体何を言ってるんだい?」

と、ドアが破られた。

「ベ、ベジータさん!!乱暴は止めましょうよ」

ドアを破壊して侵入してきた悟天がオレにそう言う。

朝倉が家に来ていた時もドアを破壊して部屋に入ってきていたし、カカロットのヤロウはこいつにドアの開け方を教えてないのか?

オレが呆れていると悟天と共に入ってきた古泉がオレが掴んでるヤロウに説明を始めた。

「実は厨房が荒らされまして、ほとんど食べ物が無いのです」

「そんな!君たちが来るし、嵐も近づいているとかで一か月分以上の食料は置いていたはずだよ!?」

「うるせぇ!!そんなことはどうでもいいんだ!!さっさと食料を補充しやがれ!」

言い訳を続ける田丸とかいうヤロウを一喝してやった。

「申し訳ございません。嵐が近づいている所為で船を出せないのです」

新川とかいう執事が謝ってきた。

「それがなんの関係があるんだ?」

「ですから、船が出せないので、食料の補充が出来ないのです」

「な……まさか………」

オレが恐怖していると悟天が失望の声をあげた。

「ええ~!?じゃあ朝食は抜きですか~?お腹がペコペコなのに……」

能天気な悟天に呆れる。

「本当の地獄はこれからだ……」

悟天に現実を教えてやる事にした。

「……いいか。嵐が止むまで飯が無いってことだぞ」

「ええーー!!まさか今日一日中とか!?」

「下手をすれば明日もだ……」

オレの考えを聞き、悟天の顔が恐怖に彩られる。

「あの~なにを深刻な顔をしてるんですか?」

朝比奈みくるが何かを食べながら、話しかけてきた。

「食い物が無い話だ……」

「それでしたら災害時用の保存食がありますのでご安心を」

朝比奈と一緒にやってきたメイドが冷静に答える。

「そ、そうか」

一安心したオレだったが、見せられた食い物の量はとてもじゃないが一食分にも満たなかった。

「これだけあれば、この人数でも二日か三日なら持つと思いますのでご安心ください」

メイドが微笑みとともに安心させようとする。

足りないのは誰の目にも明らかだろうに。

「そうね!これだけあれば問題なさそうね。遭難したみたいで面白そうじゃない」

ハルヒもメイドに続く。コイツは部長らしいから他の連中を安心させようとしているのだろう。

普段は好き勝手しているようだが健気だ。ブラにもこう育って欲しいものだ。

「でも、どうして食べ物が無くなったのかしら?動物かと思ったけど、毛とかも落ちてないし……泥棒?」

ハルヒが不安を抱かせない様に話題を逸らす。

「いえ、ここは孤島ですし、それは無いと思います。仮に侵入者がいたとしても一人、二人では持ち出すのは不可能です。それに食べ物だけを盗むというのも納得できません」

古泉がハルヒに説明する。確かに不可解だ。オレ達が食べた後に補充された食料を食ったヤロウは誰なんだ?ぶっ殺してやる。

「それじゃあ、やっぱり動物なのかしら?」

「でも、椅子を使った後がありますよ?」

「それじゃあ、人間ね。もしくは宇宙人」

堂々巡りを朝比奈に阻止されたハルヒは新たな考えを発表した。

「うん。そうよ!宇宙人に違いないわ!食べ物に困った宇宙人がここに来て食事して帰ったのよ。そして余った分はお土産に持ち帰った!それに決まってるわ」

奇遇にもオレの結論はハルヒと同じだった。

「悟天!ちょっと来い」

「えっ!?あ、はい!」

「あの、朝ご飯はいらないのですか?」

保存食の乾パンを咥えた朝比奈がオレ達に聞いてくる。

「ちょっと、食べ物を調達してくる。オレ達の分は……長門、お前が食っていいぞ」

長門が意外に大喰らいだったことを思い出した。

「……感謝」

長門の礼を受けながらパンにも声をかける。

「……パンも来い」

「は~~い」

「ちょっと!嵐の中に子供連れ出してどうするのよ」

ハルヒの抗議を背に受けて館の外に出た。

「あの、どうしたんです?」

外に出るなり、朝食にありつけずに不満げな悟天が聞いてきた。

「今から街に行って買い物をしてくるぞ」

「ええっ!?この人たちの近くじゃ飛んじゃダメって言われてませんでした?」

「今回は特別に飛んでいいらしい」

「そうなんですか?よかった~。あの量じゃ足りないし、どうしようかと思ってたんです」

「事情が事情だけにな」

そしてパンの頭を撫でて、

「カカロットから聞いてるぞ。鍛えてるらしいな、ついて来い。荷物持ちだ」

女でも鍛えなければならない下級戦士の境遇に同情しつつ、オレ達は飛んで行った。

「しかし、変な話ですね」

道中、悟天が聞いてきた。

「ベジータさんの話だと、食べ物は自動で補充されるんでしょ?」

「ふん。こんな簡単な話もわからないのか?」

「ベジータさんにはわかったんですか!?」

下級戦士の息子が驚いていやがる。

「あれだけの量の食糧をオレ達に気づかれずに食えたり、持ち出せると思うか?」

「それは無理ですよ~」

「ああ、無理だろうな。……普通の地球人なら」

「それってまさか………」

「オレ達にはあの量の食糧を食いきれる連中に心当たりがある」

「それって……」

「ああ。サイヤ人だ。サイヤ人の胃袋に常識は通用しないからな」

「で、ですけど……サイヤ人って言っても僕もベジータさんもお父さんもパンもあの場にいたじゃないですか」

悟天が狼狽える。

「ふん。要するにアリバイって奴だな。勿論、オレ達にはあの後に補充された食い物を食べることなんかできないし、食う気もなかっただろう」

「え、ええ。結構お腹が一杯でしたし」

「だが、他にもサイヤ人は居るだろ?」

「まさか……」

「ああ。悟飯にトランクス、……それにブラだ」

「いったい、なんのために………」

驚き、戸惑っている悟天にネタばらしをしてやった。

「偶然にもサイヤ人が一堂に会することがあると思うか?」

「ちょっと、考えられません」

「ブルマだ。もしかしたらカカロットのヤロウも一枚噛んでいるかもしれんがな」

「ブルマさんとお父さんが!?」

「カカロットの瞬間移動でブルマ達を連れてくるだろ」

「はい」

「そして食事会だ。悔しいがカカロットのヤロウはナンバーワンだ。あと後も食べれたかもしれない。それでも残ればブルマがホイポイカプセルとやらで持ち帰ればいい」

「確かにそれなら消えた食料の説明ができますね」

「その後は補充出来ない無いようブルマが細工する。帰りはカカロットの瞬間移動」

「なるほど!それなら補充が無かったことも、僕たちが気が付かなかったことも説明できます。流石はベジータさんです」

「下級戦士の息子とはいえ、てめぇももう少し頭を使いやがれ!」

「そ、それよりもブルマさんは何の為にそんなことを……」

「そもそも、今回は飛んでいいと言った時点で仕込んでいたんだ。飛べば食料が調達できるからな。大方、食い物がなくなってもオレが怒らないか試したんだろう。今のオレ様はその程度の事で心は揺らがないがな。おい、街が見えたぞ」


そして食料以外にもオレの着替え等を買い終えた後に、仙豆も調達した。

荷物が多すぎると流石に不自然だから、俺達は仙豆を一粒食べて島での空腹に備えることにしたのだ。

食い物を持って帰ったオレ達にハルヒが「どうやって調達したのよ!」なんて喚くものだから、「説明するのも面倒くせぇ!てめぇで考えやがれ!」と自分の頭で考え、推理する楽しみを教えてやった。

もっとも、悟天のヤロウが「えっと……泳いで」等と嘘をいうものだから、「あんたたちオリンピックに出れるわよ!」などと台無しになっていたが。

ともあれ、合宿は無事に終わり、オレはブルマやブラ、トランクス達の待つ家へと変えることが出来た。

孤島にサイヤ人襲来症候群(了)

夏休みとなり、オレは充実した毎日を過ごしている。

重力室でトレーニングをし、トランクスに稽古をつけてやり、ブラと遊び、ブルマと過ごす。

しかし、その完璧な日々も終わりが近づいてきていた。

八月が終わる。そう夏休みが終わってしまうのだ。

延々と八月を繰り返せれば、どれほど素晴らしい事だろうか。

オレがそんな風に悩んでいると、メイドロボットがオレを呼びに来た。

「ベジータサマ。オキャクサマデス」

「客?誰だ?」

「ドウキュウセイトオッシャッテイマス」

ハルヒ達だろうか?とりあえず、表に出てみる。

「こんにちは。ご無沙汰しております」

笑顔で挨拶してきたのは古泉だ。朝比奈と長門もいる。

「何の用だ?」

「一日でいいので涼宮さんと遊んで頂けないでしょうか?」 

「ふざけるな!何でオレが家族との時間を犠牲にしてハルヒと遊ばなければならないんだ」

外に出て正解だった。こんな会話をブルマに聞かれたら、「折角なんだから行きなさいよ。あんたが遊びに誘われることなんて滅多にないんだから」とでも言われただろう。

「一万五千四百九十七回」

オレが家の中に戻ろうと背を向けると、長門が抑揚のない声で呟いた。

「それだけのシークエンスが行われた」

長門は何を言っているんだ?

「あの、一万五千四百九十八回目の今回でようやくベジータさんに行きついたんです。お願いします。涼宮さんと遊んであげてください」

朝比奈が涙目になりながら訴え出る。

「ベジータさんと夏休み中に一回くらい遊びたいと涼宮さんが思っているのです」

古泉はそう言うが、合宿に行ったし、それが一万五千回とやらとどう関係があるんだ?

「涼宮さんを満足させないと、このループから抜けられないのです。そして、次回もベジータさんにまで到達できるかもわかりません」

三人の表情は真剣そのものだった。

なんで、こんなくだらない妄想を垂れ流すんだ?

そして気が付いた。こいつらはハルヒをダシにしているだけだ。当のハルヒがここに居ないのが何よりの証拠だ。

長門も朝比奈も孤児だ。オレを父親と見做して、夏休みの家族の思い出って奴が欲しいのだろう。

クソッ!オレは自分の家族の事ばかり考えていた。

「そこまで言うのならいいだろう。付き合ってやる」

「ホントですか!」

朝比奈みくるが目を輝かす。やはりオレの予想は当たっていたのだろう。

「ただ、一個条件がある」

「条件ですか?」

古泉が表情を崩さずに聞いてくる。

「ああ、朝倉も呼んでやれ」

あいつも親がいないしな。

「了解した。朝倉涼子へは私の方から連絡をしておく」

長門が事務的に返事した。


古泉のジェットでハルヒの元へ向かった俺達は、夏祭りという奴に行った。

ハルヒ達は金魚掬いとかいう下らねぇ遊びを嬉々としてやっていた。


そして九月となり夏休みが終わった。さらば我が家族との日々。



エンドレスじゃないエイト(了)

「文化祭よ文化祭。違う言葉で言えば学園祭。公立の学校はあんまり学園と言わないような気がするげど、それはいいわ。文化祭と言えば、一年間で最も重要なスーパーイベントじゃないの!」

後ろの席のハルヒがいつになく、ハイテンションではしゃいでいた。

文化祭という以上は、地球の文化を見せ合う祭りなのだろう。

この惑星の文明は高いのか低いのか未だに解らない。

良い機会だ。今回は傍観者立場で観察してやるぜ!

この文化祭。どうやらクラスや部活で出し物をやるようだ。

クラスの方は朝倉がなにやら取りまとめていた。

こっちはあいつに任せておけばいいだろう。

問題は部活の方だ。

ハルヒのヤロウが何をするのか他の連中に相談してる様子もない。

ハルヒは幼稚だから見てるこっちがヒヤヒヤしてくる。

傍観者のつもりが親になった気持ちで見ていた。

ついでだから、温かく自主性を尊重して見守ってやろうじゃねぇか!

そして放課後、ハルヒは部活で宣言した。

「あたしたちSOS団は、映画の上映会をおこないます!」

一瞬、この惑星の文化である映画を放映するのかと思ったが、どうやら自分達で撮影するつもりらしい。

翌日、ハルヒはキャスティングを発表した。

・製作著作……SOS団
・総指揮/総監督/演出/脚本……涼宮ハルヒ
・主演女優……朝比奈みくる
・主演男優……古泉一樹
・脇役……長門有希
・助監督/撮影/編集/荷物運び/小間使い/パシリ/ご用聞き/その他雑用……ベジータ、孫悟天

このキャストをみてオレが思うことは一つだ。

「おい」

「なによ。文句でもあるの?」

「オレが主役だ」

「はぁ?あんたなに言ってるの?」

ハルヒにアドバイスしてやったオレは部室を後にした。


ようやくオレが主役……ナンバー1の時代が来たようだ。

その夜のことだが悟天によれば、

「あの後、涼宮さんが暴れて大変だったんですよ。
 古泉くんが『彼がやる気になるのは珍しいですし、ここは主役にしてみましょう』
 って説得してくれて収まりましたけど」

という出来事があったらしい。

何が原因で揉めたのか言わない悟天は所詮は下級戦士の息子だ。

それからというもの、ハルヒ達は商店街の協力取り付けなどに奮闘したらしい。

ハルヒがオレに「あんたも手伝いなさいよ!」などと文句を言ってきたことがあったが、

「うるせぇ!」

と一言で物の道理をわからせてやった。

あんなのは主役の仕事じゃない。お前は根回しなんかしたことはないよな?カカロット。

それに今回のオレは主に傍観するつもりだしな。

やがて下準備が終わったのか、ハルヒが作品に関する具体的なキャストを発表した。

『戦うウェイトレス朝比奈ミクルの冒険(仮)』
☆登場人物
・朝比奈ミクル……未来から来た戦うウェイトレス。
・べじーた……超能力少年改め、超能力中年。
・長門ユキ……悪い宇宙人。
・エキストラの人たち……通りすがり。

オレは一瞬で理解した。
・朝比奈ミクル……未来から来たトランクス
・長門ユキ……フリーザ

……オレはグルド役なのか?いや、このキャストはフリーザが地球にやってきた時のだろう。

・エキストラの人たち……フリーザの迎撃に集まったオレ以外の雑魚ども----ナメック野郎やヤムチャといった有象無象----とトランクスに一蹴されたコルドや手下達

そうすると主役のオレはカカロットか?

確かに瞬間移動を使えたり、頭に手を当てると考えてることが解ったり、夢の中で現在起きてることを把握してたりしてたからな。

オレがカカロット役というのは気に食わんが、カカロットのヤロウがナンバー1だったのは事実だし仕方がないだろう。

しかし、まさか……事実を元にしたノンフィクション映画を撮るとは思ってなかったぜ!

「なに?また文句でもあるんじゃないでしょうね」

考え込むオレにハルヒが居丈高に聞いてくるがオレは軽く、微笑み「フン」とエールを送っておいた。

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