教室
教官「初めまして。貴女たちを立派なサキュバスにするため、今日から指導する者です。よろしく」
「「よろしくおねがいします」」
サキュバス(流石は歴戦の悪魔。とっても美人だなぁ。私もがんばらないと)
教官「最初に言っておきます。数あるクラスの中でも非常に厳しいものです」
教官「時には汚らわしいオスの部分を見ることも、触れることもあるでしょう。しかもそれを数多く繰り返さなくてはならない」
教官「これから行われる実技も実践に近い形で行われます。それはつまり……」
「エッチなことですよねー」
「きゃー」
教官「静粛に。その通りです。ですが、その分他のクラスよりも早い出世が見込まれる。より高位の悪魔になることができます」
教官「決して楽ではありません。覚悟の無い者は今の内にこの教室から出なさい。今からでも受講科目を変更することができます」
サキュバス(私は絶対に変えない。私もお母さんみたいな立派な悪魔になるって決めたの。だから、どんなに辛いことでも耐えてやるっ)
教官「……退室する者はいないようですね。分かりました。これより弱音を吐くことは許しません。そのつもりでいるように」
「「はいっ」」
サキュバス(どんな困難が待ってたって構わない。私は諦めたりしないんだから!!)
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教官「まず、サキュバスとしての心構えから教えなければいけません。そこの貴女」
サキュバス「は、はい!」
教官「一流のサキュバスを目指す者に大事なことはなんだと思う?」
サキュバス「勿論、オスを籠絡させることであります!」
教官「ええ。そうです。それが最も重要なことです。我々の目的はオスから生気を奪い尽くすことなのですから、そこができなくてはなりません」
教官「では、その目的を達成するためにはどうしたらいいと思う?」
サキュバス「え、えーと、メスの部分を磨くことであります!」
教官「具体的には?」
サキュバス「ぐ、具体的に……? えーと……その……。あ! お化粧をします!!」
教官「……」
サキュバス「口紅とかに気を使ってみたりします!!」
「あとあれだよね。可愛い服を着ちゃうとか、よくない?」
「可愛いアクセサリーも必須だよねー」
「そのオスが好きなものをリサーチするのも手だと思うなー」
教官「なるほど、なるほど」
サキュバス「オスと約束した日には絶対に遅刻しないことも大事だと思われます!!」
「それ、マジ重要じゃん?」
「甘いってぇ。ワザと遅刻するのがいいんじゃん」
サキュバス「それは相手に失礼ですよぉ」
優等生「分かっていないわねぇ。ほんとにあなたたちはサキュバスを目指しているのかしらぁ?」
サキュバス「え……?」
教官(あの生徒は、確か好成績でこのクラスに入ってきた子ね)
優等生「まさかこんなお子様の集団だとは思わなかったわ」
サキュバス「では、貴女の意見を聞かせてください」
優等生「ふっ。男を籠絡させるためにまず、磨くことはね……」
教官(ふむ。あの妖艶さ。期待できそうだ)
サキュバス「な、なんでありますか」
優等生「料理よ。美味しいお弁当を作って、約束した日に持っていけば男なんて一発よ。どうしてそんなことも知らずにサキュバスになりたいなんて考えたのかしら」
「「おぉー!!」」
教官「……」
サキュバス「なるほど!! 料理ですか!!」
優等生「オスの好きな食べ物は最初に調べる。趣味も調べて、話を相手に合せる。これで落ちないオスはいないのよ」キリッ
「さっすがよね。やっぱり、他のサキュバスとやることが違うっていうか」
「マジ尊敬する」
優等生「ふふん。私は貴女たちのような劣等生とは違うのよ」
サキュバス「悔しいですが、反論できません……!!」
教官「いい加減にしろ」バンッ!!!!!
優等生「ひっ」ビクッ
教官「あなたたち!! サキュバスになる気があるのですか!! えぇ!?」
サキュバス「あ、あります!!」
教官「ならば、何故そのような方法ばかりを挙げる!! オスの生気を奪う方法は何なのか、分からないのか!!」
優等生「お言葉ですが、教官。話は最後まで聞いて欲しいものです」
教官「どういうこと?」
優等生「手作りお弁当を作り、オスとピクニックに出かける。これはあくまでも第一段階でしかありません」
サキュバス(ピクニックをしなければならないっと)メモメモ
教官(話を聞いてみるか。若い子の意見というのも大事だし、私のようなベテランには思いつかない方法を編み出すこともあるもの)
優等生「その場で一緒にオスと駆け回る。これだけ容姿端麗な私が駆けだせば、オスは馬鹿面下げて追いかけてくることでしょう」
優等生「そうなればもうこちらのものです。オスが疲れきるまで、私は草原を走り続けるだけでいい」
「すげー」
「マジ、ヤバくない?」
教官「それから?」
優等生「はい?」
教官「サキュバスがオスにすることは?」
優等生「無論、エッチなことです」
教官「その疲れ切ったところを狙って、そういう行為に及ぶ。そういうわけですね?」
優等生「そうです」キリッ
教官「……わかりました。そうした理由があるのなら、いいでしょう」
優等生「お褒めに預かり光栄です」
教官(獲物を動けなくするための手段としては悪くない。まぁ、若干まどろっこしいけど)
サキュバス(成績優秀者であるのは伊達じゃないってことね。私も負けてられない……!)
教官「では、早速試してみましょうか」
優等生「試すとは?」
教官「その作戦が上手くいく自信は?」
優等生「あります」
教官「はい。ならば、実践してみましょうか」
優等生「これからですか?」
教官「勿論です」
優等生「しかし、教官。今から人間界へ出向いたところで、約束を取り付けるだけもそれなりの時間がかかるかと」
教官「いきなり人間界などには行きません。全員、グラウンドにでなさい。そこで試します」
優等生「あら、オスをご用意してくれるのですか? いいのでしょうか、そのオスが干からびてしまっても」
教官「そこの貴女」
サキュバス「はい!」
教官「オス役をしなさい」
サキュバス「私がでありますか!?」
優等生「そういうこと。まぁ、いいですけど」
グラウンド
教官「では、始め!!」
サキュバス「あの、どうすれば……」
優等生「そうですね……。とにかく私が走ります。貴女は追いかけてきなさい」
サキュバス「わかりました!!」
優等生「ほら、いきます」タタタッ
サキュバス「まてまてー」
優等生「早くしないと私が逃げてしまいますよー。うふふふ」
教官「……」
「がんばれー」
「にげきってー」
サキュバス「うおぉぉぉ!!!」
優等生「なんて速度……!! ここで捕まってしまえば作戦が台無しになる……!!」
サキュバス「逃がすかぁ!!!」
優等生「全力で逃げ切らなければ……!!!」
教官(5分経過か……)
優等生「はぁ……はぁ……」
サキュバス「捕まえたぁ」ギュッ
優等生「くっ……想定外……です……」
「あーあ、つかまっちゃったぁ」
「ダメじゃん」
サキュバス「これから、私にエッチなことをするのですか?」
優等生「この……はぁ……はぁ……状態、で……は……ちょっと……むり……です……」
サキュバス「そうですかぁ……。あ、私が貴女にエッチなことをするのもありですか」
優等生「え……!? な、なんて悪魔的な発想……!!」
サキュバス「よーし」
優等生「近づかないで!!」パシンッ
サキュバス「えー?」
教官「そこまで!!! どうやら、貴女の作戦には穴が多いようね」
優等生「そんな……!! この私の作戦は完璧だったはずなのに……!!」
教室
優等生「悔しい……!! こんな劣等生に……私が負けるなんて……!!」ダンッダンッ
サキュバス「ごめんなさい。私、体力だけは自信があって……」
優等生「道理で色気のかけらもないと思ったわ」
サキュバス「うぅ……」
教官「はい、席につきなさい。講義の続きをします」
「「はーいっ」」
教官「どうやらあなたたちは基本的なことが何一つ理解できていないようですね。サキュバスに対するイメージすら間違っているように思えます」
サキュバス「そんなことはありませんっ」
教官「ならば、答えてみなさい」
サキュバス「はっ! サキュバスとはオスに対してエッチなことをし、生気を根こそぎ奪いつくす悪魔であります!」
教官「ええ。そうです。しかし、どうしてエッチなことをするまでの間にあのような無駄なことをするのか、私には分かりません」
優等生「無駄? あの行為が無駄だというのですか」
教官「無駄です。生気を奪うのに何故、オスとピクニックに行き、それも手作りのお弁当までし、化粧にまで気を使うのか。私にはわかりません」
サキュバス「エッチなことをするまでには過程が大事だと私は母親から教わったであります」
教官「過程……?」
サキュバス「はい! オスの寝こみを襲い、生気を奪うサキュバスなど、三流だと」
教官「ふむ。それは面白い。詳しく教えて」
サキュバス「はっ! 母親が言うには無理矢理に生気を奪うのは最も簡単ではあるが、非効率的らしいです」
サキュバス「何故なら、そのオスはその一回しか使えないから。オスを一度きりで使い切っては、オスが減少してしまう一方だ。夜這いなどエレガントではない。そう言っていました」
優等生「一理ありますね。一匹のオスを繰り返し利用できれば、最低限の労力で生気を集めることができる」
教官(確かに……)
サキュバス「だからこそ、エッチなことをするまでにはきちんと段階を経てからじゃないと、いけない。そう教わったであります」
教官「なるほど。貴女の話は参考にさせてもらいます」
サキュバス「恐縮です!」
教官「歴史的に見てもサキュバスはオスを一気に押し倒し、そのまま生気を奪っていました。そしてそのオスは使い物にならなくなる」
教官「その方法こそが最適だと私も教わってきました。でも、貴女の意見は理にかなったところがある」
サキュバス「えへへ。全て母親の受け売りでありますが」
教官「それでは訊ねましょう。貴女の母親がどのような過程を踏み、エッチなことへ到達したのかを」
サキュバス「はっ!! 僭越ながら説明させていただきます!!」
サキュバス「――私の説明は以上であります」
優等生「へぇ……」
「結構、よくない?」
「いいじゃん、いいじゃん」
「やってみたーい」
教官「貴女の母親はそうやって一匹のオスを捕え、今でも飼い続けていると?」
サキュバス「はい。そして、そんな母親から生まれたのが私であります」
優等生(この子、ひょっとしたら……)
教官(逸材の可能性もある、か)
サキュバス「あの、何か?」
教官「貴女のいったことが成功するかどうか、俄かには信じられません。なので、三日後に実地研修をしてみましょうか」
サキュバス「い、いきなりですか!?」
教官「このクラスを選んだ以上、皆さんにはより多くの実践を受けてもらいますから」
サキュバス「そ、そんな……」
優等生(実地研修……。そこで私の実力を皆にみせつけてやるわ。うふふ)
教官「本日はここまで。それは解散」
「「ありがとうございました」」
サキュバス「うぅー、緊張してきました」
「はやすぎぃ」
「私は楽しみだけどなー」
「でもでも、オスとエッチなことしなきゃいけないんでしょ?」
「サキュバスなんだから、当たりまえじゃん」
優等生「あなた達、危機感というものを持っておいたほうがいいんじゃないかしら」
サキュバス「危機感ですか。緊張感ならあるのですが」
優等生「第一回の実地研修でいつも半数はこのクラスを去ってしまうのよ」
「マジで!? なんで!?」
優等生「サキュバスの厳しさを知ってしまうから。まぁ、最初の振るい落としというやつね」
「うそー!?」
「こわーい……」
優等生「怖いと思うのなら、教官が言っていたように受講科目の変更をしなさい。この程度でビビっているようでは、サキュバスになんて到底なれないわ」
サキュバス「……」
優等生「貴女も怖くなったの?」
サキュバス「はい。正直にいうと怖いです」
優等生「ふん。だったら――」
サキュバス「でも、怖いからって逃げ出したくはありません」
優等生「……!」
サキュバス「サキュバスとして生きることを選んだ時点で、私はオスとエッチなことをする覚悟はできています」
優等生「言うじゃない。なら、今から見せてもらいます。貴女の覚悟というのをね」
サキュバス「どういう意味ですか?」
優等生「私が今から言うことを見知らぬオスに実行できるかどうか、答えなさい」
サキュバス「む……。私を試すのですか」
優等生「強がってもいいのよ。でも、質問事項はとびっきりエッチなことだから、きっとすぐ顔に出ると思うけれど」
サキュバス「……いいですよ。どうぞ」
「大丈夫なのぉ?」
サキュバス「大丈夫です。私はサキュバスになるんですから。どんなエッチなことだって……耐えなきゃいけないんです……!!」
優等生「見知らぬオスと手を繋ぐことはできるの?」
サキュバス「ぐっ……! それが最初の質問ですか……!!」
「やだー!!」
「いきなりとかありえないんですけどー」
優等生「ほら、どうなの?」
サキュバス「て、手ぐらい、繋げますけど、なにか?」
優等生「へぇ……。やるわね。なら、一緒のソファーに肩を寄せ合って座れる?」
サキュバス「なぁ……!?」
「エッチすぎ!!」
「想像しちゃったぁ……」
優等生「どうなのよ? えぇ? 見知らぬオスとそこまで密着できるわけ?」
サキュバス「あ、あなたはどうなんですかぁ!?」
優等生「無論、できるわ」キリッ
「すごーい!!」
「サキュバスの鑑ね……」
サキュバス「うぅ……」
優等生「その程度のことも躊躇してしまうのでは、その先のことなんて到底できないんでしょうね」
サキュバス「その先……?」
優等生「オスから生気を奪うためにするエッチなことってなにか知ってる?」
サキュバス「当たり前です。オスと寝ることです」
優等生「そう。私はそれぐらいできるわ」
サキュバス「私だって!! 寝ることはできます!!」
優等生「言ったわね」
サキュバス「ええ!! 言いましたとも!!」
優等生「では、三日後、勝負しましょうか」
サキュバス「しょ、勝負?」
優等生「実地研修でより多くのオスとエッチなことをしたほうが勝ち。これでどう?」
サキュバス「私闘は禁じられています」
優等生「どうせ成績に反映されるんだから、いいじゃない」
サキュバス「む……」
「やめなよー」
「ケンカなんてしないでー」
優等生「逃げるつもり?」
サキュバス「……やります」
優等生「ふっ」
優等生(ここでこの子を潰しておけば、私が見えない影に怯えることもなくなるはずよ。この子の才能が開花する前に芽を摘んでやるわ)
サキュバス(どうしてこの人がここまでいうのかはわからないけど、でも、ここで逃げたらきっとお母さんみないな立派な悪魔にはなれない)
優等生「三日後が楽しみだわ」
サキュバス「わ、私のほうこそ、武者震いが止まりません」
優等生「うふふふ。それじゃあ、また明日ね」
サキュバス「はい。よろしくお願いします」
「いいのー?」
サキュバス「この勝負だけは逃げられません」
「でも、オスとエッチなことをたくさんしなきゃいけないんでしょ? 体、壊れちゃうよ」
サキュバス「うっ……。いえ、サキュバスの宿命です。そういうことだって、しないと……」
三日後 人間界
教官「これより実地研修を行う。これはあくまでも研究です。無理だけはしないように」
「「はーい」」
教官「研修期間は一週間。その間により多くの経験を積むように。いいですね」
「「わかりましたー」」
優等生「教官。その経験回数、10回以上でもいいのですか」
教官「サキュバスなのだから10回と言わず100回でも1000回でもしてきなさい」
「せ、1000回も!?」
「えぇ!? 無理ですぅ!」
教官「甘ったれるな!!! 私たちはサキュバス!!! 1000回などまだまだひよっこレベルです!!」
「しつもーん。教官の経験回数は?」
教官「抱いたオスの数など、覚えていませんよ」
「かっこいい!!」
サキュバス(歴戦の悪魔は言うことが違うなぁ。私もあんなふうにカッコいいサキュバスになれるのかな……)
優等生(1000回以上なんてまるで悪魔のような試練ね。でも、それを越えないといけないのよ……私は……!!)
教官「それでは、開始!!!」
サキュバス「……」
優等生「……」
ザワザワ……ザワザワ……
教官「ん? どうしたのですか? もう始まっていますよ」
サキュバス「あの。どうすればいいんですか?」
優等生「足がかりが欲しいのですが」
教官「最近の若い子はこれだから……。オスにエッチなことをする。それが最終目標でしょう。なら、まずは声をかけなさい」
サキュバス「私の母親は街を歩いているときに、獲物から声をかけられたと言っていました」
優等生「順序が違います」
教官「あなた達から声をかけようが、オスから声をかけられようが違いはない!!! さっさといけ!!! アバズレのメス豚ども!!!」
「ひぃ」
「ど、どど、どうしよう……」
「ねえ、一緒にいこ」
「うんっ。そのほうがいいよね」
サキュバス「どうしましょうか」
優等生「困りましたね。教官からはもう少し何らかの支援があると思っていたのに」
サキュバス「支援って?」
優等生「オスを何匹かここへ連れてきてくれるとか、そういうのです」
サキュバス「確かに。それぐらいはしてほしかったですよね」
優等生「ここまでの放置なんて想定外よ」
サキュバス「でも、私たちも行かないと……。もうみんな二人一組とか三人一組のグループを作ってますよ」
優等生「仕方ないわね。甚だ不本意ではあるけれど、ここは一時休戦と行きましょう」
サキュバス「いいですね!! 私も不安だったんです!!」
優等生「でも、いつでも抜け駆けがアリですから。それはお忘れなきように」
サキュバス「いつでも出し抜いてください。私だって負けませんから」
優等生「そうと決まればまずはどうしましょうか」
サキュバス「とりあえず街を歩きましょう。お母さんと同じ行動をすればオスから声をかけてくれるかもしれませんし」
優等生「いい考えね。そうしましょう」
優等生(おバカさんね。利用するだけして、捨ててやるわ)
某街
ザワザワ……
「なんだよ、あれ。コスプレかぁ?」
「かわいいー。つーか、コスがエロすぎな件について」
「今日ってなんかイベントあったっけ?」
「萌えー」
サキュバス「オスたちの視線が集中しているような気がします」
優等生「これはオスから声をかけられる可能性が高いわね」
サキュバス「そのときはどうしますか?」
優等生「最初の一匹目は貴女に譲るわ」
サキュバス「いいんですか!?」
優等生「今は同盟関係でしょ?」
サキュバス「ありがとうございます!!」
優等生(どんなふうにするのか、研究させてもらうわ。うふふふ)
「あの悪魔コス、かわいすぎるだろ。写真撮ってスレたてるお」
「あ、あぁ、あの……」
サキュバス「(きた!! 来ました!!)」
優等生「(チャンスよ。たっぷり、生気を奪い取ってあげなさい)」
サキュバス「(それはまだ気が早いですよぉ)」
「あ、あの……」
優等生「(ほら、獲物が待っているわよ。早くなさい)」
サキュバス「(わ、わかりました!! が、がが、がんばります!!)」
サキュバス「な、なんでありますか!? わ、わわたしに、なにか、ごようでしょーか!!」
「写真、いいですか?」
サキュバス「はっ!! どうぞ!!」
「ありがとうございます」カシャカシャ
サキュバス(うぅ……こんなに写真をとられるなんて……)
「……」カシャカシャ
優等生(ちょっと何枚撮らせる気なのよ。体の大安売りじゃない……。悔しいけどやっぱりサキュバスとしての素質はあるようね……)
サキュバス(はずかしい……早くおわって……)プルプル
「隣の人もいいですか?」
優等生「な、なにが!?」
「写真です」
優等生(ここで弱気見せたら終わりよ。強気でいくのよ、私!!)
優等生「勿論。好きなだけ御撮りなさい」
「こっちはお嬢様感でてていいなー」
「俺、こっちの子が好きだなぁ」
サキュバス「うぅー」プルプル
「清純派悪魔ってアリじゃん?」
「清純そうなのにこのエロいコスがたまんねーお」
カシャ……カシャ……
サキュバス「(このあとは……!?)」
優等生「(とにかくオスたちにエサを与えるのよ。そのあとは私たちの手のひらで転がってもらえばいいわ)」
サキュバス「(そういうことですか。わ、わかりました。私、耐えます)」
優等生「(この辱めが終われば、群がったオスたちの生気を奪い尽くしてやるわ!! うふふふ……!! あーっはっはっはっは!!!!)」
夕方 駅前 ベンチ
サキュバス「はぁ……」
優等生「あぁ……」
教官「おや。お二人とも、随分と疲れ切っていますね」
サキュバス「色々……ありまして……」
優等生「何十人というオスに蹂躙……いえ、オスを蹂躙してやりました……」
教官「初日にしてそれだけのことを。流石ですね」
サキュバス「なので、疲れたであります……」
優等生「火照った体を冷やすためにここで休憩していたんです」
教官「ほほぉ。最終日が楽しみでなりませんね。では、このあとも頑張ってください」
サキュバス「あれ? 帰らないのですか?」
教官「は? 期間は一週間といったでしょう」
優等生「でも、寝る場所もありませんし」
教官「寝る場所? 捕えたオスの寝床がその日の宿泊地に決まっているでしょう」
サキュバス「えぇぇぇぇ!?」
優等生「いくらなんでもそれは過酷です!!」
教官「では、逃げ出してもいいのですよ。その時点で落第、ということになりますが」
サキュバス「……!」
優等生(第一回目の研修で半数以上が脱落する理由は、こういうことだったのね……。迂闊だったわ……)
教官「では、私はこれで。約束があるので失礼します」
サキュバス「約束って……?」
男性「ごめん、まったか?」
教官「ううん。今、来たところよ」
男性「それじゃあ、どこに行こうか?」
教官「そんなの私に言わせないでよぉ……」モジモジ
男性「何、言ってるんだよ」
教官「今日は、うふふ……」
男性「行こうか」
サキュバス「教官殿……既にオスを捕えていたのでありますか……」
優等生「あれがホンモノのサキュバスなのね……」
サキュバス「私たちはこれからどうすれば……。このままでは、最悪の場合、野宿ということも」
優等生「シャワーを浴びれないのは痛手ね」
サキュバス「家に泊めてくれそうなオスを探しますか」
優等生「どうやって探すわけ? 手あたり次第にオスに訊ねるの? 今日、泊めてくださいって」
サキュバス「それしかありません。私たち、人間界の貨幣は持っていませんし」
優等生「そうよね……」
サキュバス「あの! ここは一つ、お手本を見せてください!!」
優等生「はい?」
サキュバス「恥を承知で頼みます!! お願いします!!」
優等生「お待ちなさい!! 私が一晩泊めてくれそうなオスを探すの!?」
サキュバス「ダメですか?」
優等生「ダメというか……そういうこと……したことないし……」
サキュバス「でも、成績優秀なあなたなら、きっとできると思うんですが」
優等生「くっ……」
優等生(ここで私の実力を見せつけるのは良いけど……オスに寝床の交渉をするなんて、入試にだってなかったのに……)
サキュバス「がんばってくださーい」
優等生「任せなさい」
優等生(とはいったものの、どう声をかけたものか……)
ザワザワ……
優等生(オスたちの視線はこちらに向けられている。つまりは私の美貌に魅了されている。ということは、声をかければ一発OKということに違いない)
「(あの子、なにしてんだろうな)」
「(あの服装なら隣街から来たんだろ)」
「(ここまで店の宣伝しにきたのか。かわいそうに)」
優等生(しかし、偏に声をかけるといっても、第一声はどのような言葉が正解なのか聞いたこともなければ、考えたこともなかったわね)
優等生(まずいわ……。このままではあの子に恥をさらすだけになってしまう。けど、声をかける手段が……)
優等生「あ、あの……あ……」オロオロ
サキュバス(なんだろう、困ってるみたいだけど……)
サキュバス(まさか……!)
優等生「あ、あぁ……」オロオロ
サキュバス(困ったフリをして声をかけてもらう作戦ですね。お母さんがオスを嵌めたときに使われた作戦……。早速、実践するとは、流石です)
優等生(そうだわ。あの子の母親はオスに声をかけられるまで街を歩いていたと言っていた。私の美貌をもってすれば、立っているだけでオスは寄ってくるはず)
優等生(現にさっきも歩いているだけでオスどもは寄ってきたのだから……)
優等生「ふっ」キリッ
サキュバス(待ちの態勢に入りましたね。これは完璧にお母さんと同じ戦法です)
優等生(さぁ、どんどん声をおかけなさい。哀れなオスたち)
「(可愛い子だなぁ)」
「(バイトかな?)」
「(高校生ぐらいか?)」
優等生「……」
サキュバス(動きがないですね)
優等生(何故……。どうしてオスどもは目はむけても、声はかけないの……!! どうして……!!)
「(なんかこっち睨んでるなぁ)」
「(すげーかっこう。恥ずかしくないのか)」
優等生(今なら、最初に声をかけてくれたオスの家にいってやるわよ!! ほら!! 早い者勝ちよ!!!)
サキュバス(すごい気迫です! これは期待できそう!)
優等生「……」
「(どんな店で働いてるんだろう?)」
「(アニメ好きなのかなぁ)」
優等生「くっ……!」
優等生(やってくれるわね、人間のオスども……!! ここまで私を愚弄したオスはあんたたちが初めてよ!!!)
サキュバス(疲れてきたのかな。もうあれから1時間以上、立ちっぱなしだし……)
優等生(この絶望的状況……どうしたら……!!)
サキュバス「うーん……。ん?」
女性「ただいま、割引をおこなっていまーす!! ぜひ、よっていってくださーい!! 駅前居酒屋をよろしくおねがいしまーす!!」
サキュバス「……!」
優等生(おのれ人間め!! お高くとまってるんじゃないわよ!!)
サキュバス「あの」
優等生「なに? もう少しで今日のホテルが決まるから、待ってなさい」
サキュバス「あれです。ああやって呼びかければいけますよ」
優等生「あれって?」
サキュバス「大声で私たちを泊めてくれる人はいませんかーって叫ぶんですよ」
優等生「ちょ……!! なんて悪魔染みた作戦……!! 思いついたって実行できるわけないでしょう!!」
サキュバス「でも、確実だと思います」
優等生「うぅん……でも……」
サキュバス「一緒にやりましょう。それなら恥ずかしくないはずです」
優等生「そ、そうね。ここで立ち止まるわけにはいかないもの。やりましょう」
サキュバス「はい!」
優等生「せ、せーの、でやるのよ」
サキュバス「了解です!」
優等生「せーのっ」
サキュバス「……」
優等生「あ……ぅ……」
サキュバス「(すみません!! やっぱり恥ずかしいです!!!)」
優等生「(ちょっと!! 私、言いかけたのよ!? ふざけないでもらえる!?)」
「(なんか女の子がケンカしてる)」
深夜
サキュバス「すっかり夜になってしまいましたね」
優等生「そろそろ悪魔が動き出す時間帯ね」
サキュバス「人間のみなさんは寝静まっている時間ですねぇ……」
優等生「どうりで人通りが途絶えたと思ったわ」
サキュバス「私たち……これからどうなるんでしょうか……」
優等生「ねえ、このままじゃ私たちは落第になるわよ」
サキュバス「それは嫌です……」
優等生「私だっていやよ。私だって……高位の悪魔になって……」
サキュバス「決めました!!」
優等生「な、なによ」
サキュバス「次、私たちの前を通ったオスに声をかけましょう」
優等生「なんですって?」
サキュバス「ここで待っていたって、声はかけてもらえない。だったら、こっちから行動に出ないといけません。待っているだけじゃ、ダメなんですよ」
優等生「そうね……。奇跡を待つなんて、劣等生のすることだわ。私ほどのサキュバスになれば、奇跡は起こしてみせるわ」キリッ
サキュバス「こい……誰でもいいから……こい……」
優等生「さぁ、来なさい……!!」
童貞「はぁ……」
サキュバス「きた!!!」
優等生「よし!! いくわよ!!」
童貞(今日も残業で……こんな時間か……毎日怒られてばっかりだし……はぁー……この仕事、向いてないのかなぁ……いいこともないしなぁ……)
童貞(エロ漫画みたいなことおきねーかなぁ)
サキュバス「あ、あああ……あああの……」
童貞「……!?」
優等生「ちょ、ちょ、ちょっと……その……よ、よろ、よろしいでしょうか……?」
童貞(なんか変な女がきた……!!)
サキュバス「その……今日、あな、あなたの家に……とめ……て……」
優等生「よ、よろしければ、あなたの、いえでね、ねても、いいでザマス」
童貞「ひぃぃ」タタタッ
サキュバス「あぁ……逃げたぁ……」
優等生「ここまでなの……。そんな……一流のサキュバスになるために血の滲む家事特訓をしてきたっていうのに……!!」
サキュバス「諦めちゃダメです!!」
優等生「え……」
サキュバス「追いかけましょう!!」
優等生「追いかけるって……」
サキュバス「私!! 体力には自信がありますから!!」
優等生「ふふっ……」
サキュバス「なにがおかしいんですか!? 私は大真面目に……!!」
優等生「いいえ。自分自身が情けなくなったのよ。私はすぐに挫折しようとしたのに、貴女はまだ膝を折っていなかった」
サキュバス「だって、立派な悪魔になるのが私の夢ですから!!」
優等生「そうね。私も同じよ」
サキュバス「行きましょう!!」
優等生「ええ」
サキュバス「貴女はここで待っていてください。追いかけるのは私の役目です」
優等生「冗談。そう簡単に抜け駆けなんてさせないわ」
童貞「ふぅ……ふぅ……。びっくりした……」
童貞(なんだったんだ、あの子たち……。なんか酔ってたのか……それともクスリかなんかで……)
童貞(怖かった……。顔は、まぁ、可愛かったような気もするけど……)
童貞「早く帰ろう……。明日も仕事だし……」
タタタタッ……
童貞「え……?」
サキュバス「うぉぉぉぉおおお!!!!」
童貞「ひぃぃ!?」
サキュバス「みつけたぁ!!!」
優等生「ひぃ……ふぅ……はぁ……よ、よし……はやく……そのまま……尾行……して……はぁ……」
サキュバス「了解!!!」ダダダッ
童貞「ひぃぃ!!」ダダダッ
サキュバス「にがすかぁぁぁ!!!」
優等生「ぐっ……うぅ……」
優等生「あとは……たのんだわ……よ……」ガクッ
マンション
童貞「はぁ……はぁ……!! 早く!! 家の中に……!!」ガチャガチャ
サキュバス「そこかっ!!」
童貞「ひぃ!!」バタンッ
サキュバス「……ここがオスの住処ですね」
サキュバス「305号室。覚えました」
サキュバス「まずは合流しましょう」
サキュバス「よーしっ。なんだかいけそうな気がしてきたー」テテテッ
童貞「……」ガチャ
童貞「な、なんだったんだ……」
童貞(とりあえず、警察に電話するか?)
童貞(そのほうがいいよな……多分……)
童貞(あぁ、でも、鬱陶しいことになるのも嫌だしなぁ……)
童貞(とりあえず……次に来たら、通報しよう……)
童貞「寝よう……」
サキュバス「ここです。この部屋です」
優等生「なるほど……ここに……先ほどの……はぁ……オスが……」
サキュバス「大丈夫ですか?」
優等生「流石に一日食事をしないと、こうなるわよ……」
サキュバス「そういえば、お腹もすきましたね」
優等生「早くオスの部屋に入るわよ」
サキュバス「そうですね。では、お願いします」
優等生「なにが?」
サキュバス「お先にどうぞ」
優等生「あら。ここは貴女に花を持たせてあげるわ」
サキュバス「そんな! 優等生たる貴女が先に行くべきではないんですか!?」
優等生「オスの寝床に侵入するなんて、はしたない行為をできるとでも」
サキュバス「私たちはサキュバスですよ。恥じらいは捨てるべきです」
優等生「なら、貴女からお先にどーぞ」
サキュバス「いえ。ここは貴女から」
翌日
童貞「はぁ……。さぁ、行くか」ガチャ
童貞(昨日は変な女に追いかけられるし……ホントいいことねえなぁ……)
サキュバス「すぅ……すぅ……」
優等生「う……うん……」
童貞「なっ……!?」
サキュバス「ん……あ……」
優等生「あ……ん……?」
童貞「き、昨日の……!」
サキュバス(扉があいてる……!)
優等生(オスが出てきている……!)
童貞(やべえ、逃げなきゃ――)
サキュバス「うおぉぉ!!!」ガバッ
優等生「捕まえたぁ!!」
童貞「ぐえぇ!?」
室内
優等生「早く扉をしめて!!」
サキュバス「はい!!」ガチャン
童貞「……!」
童貞(なんだ……俺、どうなるんだ……)
サキュバス「あ、あの……えっと……」
優等生「あー……その……」
童貞(殺されるのか……童貞のまま……こんなのって……)
サキュバス「あ、あ、お邪魔します」
優等生「どうも。初めまして。不束者ですか、よろしくお願いします」
童貞「……」
サキュバス「よしっ。とりあえず、初エッチは成功ですね」
優等生「何言ってるの。これはまだ押し倒しただけでしょう」
サキュバス「でも、オスに触れることはできましたし、ましてや、こうして挨拶をかわすなんて、もうエッチではないでしょうか」
優等生「これだからお子様は。いいこと? エッチとはもっと長時間触れ合ってからのことなの。一瞬触れるだけでエッチなら、サキュバスも苦労しないわ」
童貞「あ、あの……お前たちは……」
サキュバス「えっと、私たちは……その……見ての通り、悪魔、なんですけども……」
優等生「光栄に思いなさい。貴方は私たちに選ばれたオスなのよ」
童貞「ど、どういうこと……」
優等生「つまり……。ほら、あなたから、言いなさいよ」
サキュバス「私がですか!?」
優等生「サキュバスはあの決め台詞を言うってのが常識でしょう」
サキュバス「そ、そうですけど……あれ、練習で同じサキュバス相手にしか言ったことがなくて……」
優等生「その練習の成果をここで見せるときでしょう」
サキュバス「は、はい」
優等生「さぁ、いいなさい」
サキュバス「……わかりました」
童貞「……」
サキュバス「タクサン エッチ ナ コト シテアゲル ウフフ」
童貞「おぉぉ……なんで片言なんだ……」
童貞「すみません……。はい、そうなんです……一時間ほど遅れ……ええ、はい、一時間ほど遅れますので……はい、すみません……」
童貞「はぁ……」
サキュバス「ど、ど、どちらに連絡を?」
童貞「会社、ですけど」
サキュバス「おぉ。私たちの世界にも会社はありますよ!! き、奇遇ですね!!」
童貞「……」
優等生「どうぞ。紅茶を淹れました。飲みなさい」
童貞「あ、ありがとう」
サキュバス「早速、自分のものを相手に飲ませるなんて……」
優等生「ふっ。私のものがオスの血肉となる。これこそ、エッチの真髄。そう習ったでしょう」
サキュバス「くぅぅ……」
童貞「あの」
サキュバス「は、はい!! なんでありますか!!」
童貞「俺に何か用が、あるって、話だったような気がするんだけど」
サキュバス「そ、そう、そうです。貴方に重大な用があるのであります! 聞いてくださいますか!?」
童貞「ああ、はい」
童貞(美人局だろうし、テキトーにきいてやって、しつこいようなら警察に……)
サキュバス「私たちは、見ての通り、悪魔であります」
童貞「それは聞いたけど……」
サキュバス「そして、悪魔の中でも淫魔と呼ばれるクラスの者……を目指す者なのであります」
童貞「い、淫魔って……」
優等生「そう。オスとエッチなことをする悪魔のことよ」
童貞「……」
優等生「驚きで声も出ないようね。それは仕方のないことよ。ほーっほっほっほ」
童貞(どうして俺に背負向けてるんだろう……この子……)
サキュバス「今は第一回目の実地研修なのであります」
童貞「それで……」
サキュバス「研修は一週間であります。その間、私たちサキュバスは獲物の寝床で寝泊まりをしなければいけないことになっているのであります」
優等生「つまり、オスである貴方は私たちの獲物。もう逃げられないわよ。覚悟を決めることね」
童貞(何言ってんだ……背を向けたままで……)
サキュバス「というわけで、これから貴方は私たちとエッチなことをしてもらい、生気を根こそぎ奪われる運命にあるのであります!!」
優等生「どう? うれしいでしょう。このような魅惑の悪魔に身をゆだねることができるのだから。あの世で自慢するといいわ」
童貞「……」
サキュバス「……」
童貞「……」
サキュバス「そ、そんなに見つめないでください……」モジモジ
童貞「それだけですか?」
サキュバス「それだけ?」
優等生「あなた!! これ以上、何を求めるというの!?」
童貞「いや、ほら、何か買ってくださいとか」
サキュバス「私たちは商売をしに来たわけではありません」
童貞「あとで、何か、あるんでしょう」
サキュバス「な、なにかって……」
優等生「貴方は私たちとエ、エッチをすればいいの。それ以上のことは求めませんっ」
童貞(エッチなことって……そんな話があるわけ……)
サキュバス「では、早速、エッチ、し、しちゃいますか?」
童貞「えぇ!?」
優等生「いい考えね。獲物に拒否権なんてないし、そのままやってしまえばいいのよ」
童貞「ちょ、ちょっと待って……!!」
サキュバス「逃げ場なんて、ありませんよ……」
童貞「な……な……」
童貞(ここで変なことしたら、きっとあとで怖い人がくる……!! それで法外な金を請求されて……)
サキュバス「私とじゃ、エッチなこと、できないですか?」
童貞「う……!」
童貞(ああ、もう、どうなってもいいか……。こんなに可愛い女の子と……できるなら……)
童貞(どうせ、童貞のまま死ぬなら……!! 最後くらいいい思いをしたって……!!)
サキュバス「行きます!!!」ギュッ
童貞「……!」
サキュバス「あっ……すみません……ちょっと、強く手を握っちゃいましたね……。痛くなかったですか?」
童貞「あ、はい」
サキュバス「うおぉぉぉ!!!」ダダダッ
童貞「……!?」
優等生「ちょっと!! どこに行く気!?」
サキュバス「うぅ……」
優等生「カーテンの裏に隠れて、なんのつもりよ」
サキュバス「……はずかしい」
優等生「はぁ!? お笑いね。立派な悪魔になるためにこうしてやってきたというのに、オスの手を握っただけでその有様とは」
サキュバス「だって……出会って間もない人と手を握ったんですよ……これは、もうサキュバスとしての大きな第一歩かと……」
優等生「情けないわね」
サキュバス「そ、そこまでいうなら、貴女もやってください」
優等生「私は既に紅茶を飲ませたわ。それで初めては完了している」
サキュバス「紅茶、一口も飲んでいませんよ」
優等生「なんですって!?」
サキュバス「ずっと後ろを向いていて気がつかなかったんでしょうけど」
優等生「どうして私のものが飲めないの!? 毒なんで一切入っていないのに!! 入っているのは真心だけなのに!! ここまで私をコケにしたオスは貴方が初めてよ!!」
童貞「なんか、すみません」
優等生「許せないわ……!! 絶対に許さない!!」
サキュバス「私に向かって怒らないでください」
童貞「……そろそろ、俺、仕事があるので、出て行ってもらえませんか?」
サキュバス「え……」
優等生「出ていけですって? あーっはっはっは。何を言うのかしら。私たちは貴方の生気を絞りつくすまでここにいるつもりだから」
童貞「いや、でも、俺、今から出かけないと……」
サキュバス「では、お留守番してます」
童貞「いや、見知らぬ女性を家になんて……」
優等生「私を信用できないと?」
童貞「背中向けっぱなしの貴方は特に……」
サキュバス「そんな……私の初めてをあげたのに……」
童貞「う……。いや、手を握ってきただけじゃないですか」
サキュバス「初・手を握るは貴女にささげたのでありますぅ……」モジモジ
童貞(ぐっ……なんで……なんでこんな理不尽なことを言われているのに言い返せないんだ……。あ、俺が童貞だからか……)
サキュバス「お留守番してます!」
童貞「け、警察、呼びますよ」
優等生「私、知っているのよ」
童貞「何がですか」
優等生「オスの一人住まいにメスが二匹。そんな現場にケーサツなる組織がどう思うか」
童貞「どういうことですか」
優等生「二股男とその相手の女がケンカしているだけとケーサツは判断する!!」
童貞「そ、そうなんですか!?」
優等生「そう。つまり、貴方に私たちを追い出す手段など、ないのよ。おわかり?」
童貞(そうなのか……よくわからんねえ……二股どころか女とも付き合ったことないし……)
サキュバス「私たち、出ていかなくてもいいんですか?」
優等生「ええ。勿論よ。安心なさい」
サキュバス「わーいっ」
童貞「……」
優等生「まだいるようね。オスの視線が背中に突き刺さるわ。早く出かけないと、約束の時間に遅れるのではなくて?」
童貞「と、とりあえず、会社にいかないと、俺、怒られるんで……行きますけど……」
サキュバス「いってらっしゃいであります」
童貞「その、もし、何かを盗んで、ここを出て行ったら……」
優等生「ケーサツなりショーボーシャなりを呼べばいいのよ。私たちは逃げも隠れもしませんわ」
サキュバス「お仕事、がんばってください!!」
童貞「あ、はい。行ってきます」
サキュバス「お気をつけてー」
童貞(なんで言いくるめられたんだ……。あ、俺が童貞だからか……)
バタンッ
優等生「出ていった?」
サキュバス「はい」
優等生「ふぅ。相手の顔を見ずに話すのって、結構疲れるわね」
サキュバス「どうして見てあげないんですか。失礼ですよ。これから生気を奪い尽くす相手だっていうのに」
優等生「ちょっと顔が熱くなってただけよ。そんなことより、オスの寝床の番を任された以上、しっかりしないとね」
サキュバス「はい! まずはお洗濯とお掃除からです!!」
夜
童貞「はぁ……疲れた……」ガチャ
童貞「あれ……なんで明かりが……。あぁ、そうか……今朝、変な女の子が二人……」
優等生「ちょっと!! お味噌いれすぎ!!」
サキュバス「えー? でも、お味噌のスープなら味が濃いほうが……」
優等生「どいて!! 厨房には入らないでちょうだい!! 貴女はテーブルでも拭いてなさい!!」
サキュバス「はぁーい」
童貞「……」
サキュバス「あ! お帰りなさいであります!!」
優等生「もう帰ってきたの!? ちょっと!! 帰るなら帰るって一報ぐらいほしいわ!! こっちには心の準備ってものがあるんだから!!」
童貞「ホントに逃げてなかったんですね……。てっきり、俺、金目のものを持って出て行っているもんだと……」
サキュバス「こちらの世界で金目のものを盗んだって、意味ないですから」
優等生「そんなことも分からないの? これだからオスは。下半身でモノを考えているっていうのは本当なのね」
サキュバス「オスって、下半身に脳みそがあるんですか……こわい……」
童貞(これ、現実なんだよな……)
優等生「知らないの? オスの下半身には小さな脳みそが二つ、あるらしいわよ」
サキュバス「マジですか!?」
童貞「あの……」
サキュバス「ああ。すみません。別に股間の脳みそが見たいわけではないんです」
童貞「いえ……これ、晩御飯、用意してくれたんですか……」
優等生「そうよ。文句あるの?」
童貞「ありがとう……ござまいます……」
優等生「ふんっ。もっと感謝してほしいわっ」
サキュバス「疲れたでしょう。さぁ、ごはんを食べてください」
童貞「ええ……」
優等生「しっかり食べて精をつけるがいいわ。でないと、このあとのメインイベント、一瞬で死んでしまうかもしれないもの」
童貞「な、なにかあるんですか……?」
サキュバス「言ったじゃないですか。私たちはあなたの生気を奪いたいのです。一流の悪魔になるために」
童貞「は、はぁ……」
優等生「期待してくれていいわよ。極上の夜にしてあげるわ。うふふふふ」
童貞「ご馳走様でした。とてもおいしかったです」
優等生「ふんっ。当たり前よ。私のものに失敗はないもの」
サキュバス「これで初・料理をごちそうが達成ですね。これはエッチポイントが高いです」
優等生「また貴女との差がひらいてしまったわね。あーあ、残念。私が天才すぎるが故に、貴女が恥をかいてしまうなんて」
サキュバス「でも、ここからは私の番ですよね」
優等生「なんですって?」
サキュバス「食器の洗い物があります!!」カチャカチャ
優等生「くっ……! 先を越された……!!」
サキュバス「初・食器お片付け。オスの体液がついた食器を素手で洗う……。かなりのエッチです」
優等生「やるじゃないの……」
童貞(体液って唾液のことかな)
サキュバス「うぅ……これに触れたら……体液が体についちゃう……」
優等生「ふ。お子様にはまだ早いんじゃないかしらぁ?」
サキュバス「いいえ!! 体液が染み込んでいる服の洗濯だってできたんです!! 食器ぐらいは……ぐらいは……!! うおぉぉぉ!!!」ゴシゴシゴシ!!!!
童貞(服に染み込んだ体液って汗のことかな……。いや、パンツも洗ってくれてるなら、あってるけど)
サキュバス「うおぉぉぉ!! 何も考えない!! 無心で洗います!!! 意識すれば一巻の終わりであります!!!」ゴシゴシゴシ
童貞(なんであんな子が、あんな派手な服を着てるんだろう……。恥ずかしがるところが全然違うような気がする)
優等生「ところでそろそろ、お、お風呂にでも入ってきたら、どうなの?」
童貞「え? そうですね」
優等生「ちゃんと隅々まで洗いなさいよ。垢がちょっとでも残っていたら、許さないから」
童貞「あの、本当に……その……」
優等生「今更、命乞いをしても無駄よ。貴方は今夜、このサキュバスに生気を絞られるのだからね」
童貞「あぁ……はい……」
童貞(どうなるんだろう……俺……。マジで……こんな美人が……?)
サキュバス「フォーク、洗えました!! 次はお皿です!!」
優等生「フォークを洗うだけで何分かけてるのよ。そんなことじゃ一流にはなれないわよ」
サキュバス「そ、そんなこといわれても、体液がついたファークを洗うのには勇気が……」
優等生「サキュバスの才能がないんじゃないの?」
サキュバス「そんなぁ!?」
童貞(あ、パンツだけ洗ってない……。パンツに触るのは嫌だったのかな……)
童貞「上がりました」
優等生「やっと出てきたの。ちょっと遅いんじゃない?」
童貞「隅々まで洗えって……」
優等生「次は私が入るわ」
サキュバス「すごい!! オスが入った直後の浴室に入るなんて!!」
優等生「……!!」
サキュバス「これはもう……私ではとても……」
優等生「や、やっぱり、あ、貴女に譲るわ。どうぞ、入って」
サキュバス「でも、私はまだ、洗い物が残ってますから」
優等生「卑怯だわ!! こうなることを予測して、洗い物をわざとゆっくりしていたのね!!!」
サキュバス「そ、それは誤解ですよぉ」
優等生「ちぃ……。仕方ないわね……。行くわ!! ええ!! いってやりますとも!! 直前にオスが使った浴室ぐらい、なんてことないもの!!」
サキュバス「やっぱり貴女はサキュバスの中でも秀でているんですね。尊敬します」
優等生「見てなさい。これがサキュバスになるということよ」
童貞(俺が入ったあとには入りたくないよな……そりゃ……。いやいや、違うだろ。嫌なら、出ていけばいいだけの話だろ)
サキュバス「はぁー、やっと洗い物が終わりましたー」
童貞「ありがとうございます」
サキュバス「いえ。気にしないでください。これは生気を奪い取る一環であります」
童貞「そうなの?」
サキュバス「生気を奪うために最も効率がいいのは、やはり体液を頂くことですから」
童貞「洗い流してたような気も……」
サキュバス「それでも……その……少しは指に、貴方の体液が……ついたと思うので……」モジモジ
童貞「え、あの、その言い方は……」
サキュバス「うぉぉぉ!!」ダダダッ
童貞「あぁ……またカーテンの裏に……」
サキュバス「……恥ずかしいでありますぅ」
童貞(俺もなんか恥ずかしくなってきた……)
優等生『あぁん! オスの使ったシャワーが私の体を蹂躙してる!! なんたる屈辱……!! ここまで私を汚したオスは貴方が初めてよ!!!』
サキュバス「がんばってください!!」
童貞(この子たち、なんかおかしいなぁ……)
優等生「ふぅ……。辛く、厳しい戦いだったわ」
サキュバス「こんなに濡れてしまって……。早く、拭いてください」
優等生「ええ。サキュバスになるのが怖くなったんじゃない?」
サキュバス「そんことありません。これぐらいのことは覚悟していましたから」
優等生「言うじゃない。それが過信でないことを祈るわ」
サキュバス「では、私も入浴してくるのであります」
童貞「ど、どうぞ」
優等生「私が入ったことでいくらからは中和されていても、オスが使った湯水よ。それが貴女の穴という穴から侵入していくの」
サキュバス「……っ」
優等生「この悪魔のような時間、耐えることができるかしらね」
サキュバス「最大の試練ではありますが、私はサキュバス。この程度のエッチは乗り越えますっ」
優等生「ま、骨ぐらいは拾ってあげるわ」
サキュバス「行ってきます!!」
優等生「見ものね。うふふふ」
童貞「……」
サキュバス『ふわぁぁぁぁ……!!』
優等生「苦しんでる、苦しんでる。うふふふ。この音色が心地いいわ」
童貞「あの」
優等生「なによ?」
童貞「こちらを振り向いてください」
優等生「この部屋には貴方と私しかいないのよ。振り返れるわけないじゃない」
童貞「まぁ、別にそれはいいとして、俺の使ったあとの浴室を使いたくないんであれば、無理に使うことはないと思いますけど」
優等生「他に浴室でもあるの?」
童貞「ないですけど……。ほら、銭湯にいくとか」
優等生「セントウってなに?」
童貞「公共のお風呂屋さんです」
優等生「それって、不特定多数が一緒に入浴する場所のこと?」
童貞「はい」
優等生「ふん。何を言い出すかと思えば。他人に晒すほど、私の肌は安くないのよ。相手の事情を考えもせずに発言する。これだからオスは。生気を奪われるためだけに生きていればいいのよ」
童貞(人前で肌をさらすのが恥ずかしいだけなのかな……。でも、こんな露出度の高い服を着てるし……わかんねえ……。女の子のこと、全然わかんねえ……)
サキュバス「私もサキュバスとして一皮むけたであります」キリッ
優等生「あの程度の苦行でサキュバスになれるなら、悪魔はいらないのよ」
サキュバス「あの程度……。貴女にとってはあの程度なのですか……」
優等生「勿論よ」キリリッ
サキュバス「くっ……どれだけの実力差が……」
童貞「あの」
サキュバス「はっ! なんでありますか!!」
童貞「そろそろ寝ようかなって思うんですが。明日も仕事なんで」
優等生「うふふ。さぁて、眠れるかしらね」
童貞「え……」
サキュバス「今宵は私たちと一緒に寝てもらいます」
童貞「ね、寝るって……あの……寝るんですか……」
優等生「そうよ。寝るのよ。これから三人でね」
童貞(マジでか……これが現実なのかよ……。こんな美人と……これから……)
サキュバス「サァ カクゴ シテクダサイ コレカラ トッテモ エッチ ナ ヨル ガ ハジマリマス ヨー」
童貞「えっと、その、どうしたら、いいですか?」
優等生「まずはベッドに寝なさい」
童貞「ね、ねました」
優等生「灯りを消して」
サキュバス「はい」パチンッ
童貞(おぉぉ……ついに……これから……。騙されててもいいや……もうどうにでもなれ……)
優等生「あ、ちょっと、真っ暗で何も見えないじゃないの」
サキュバス「大丈夫ですかー?」
優等生「ここかしら」グニッ
童貞「ぐぁ……」
優等生「あら、失礼」グニッグニッ
童貞「ふ、踏んでる……腹を踏んでるからぁ……」
サキュバス「暗闇で腹を踏む……。これが噂にきいたSMですか!!」
優等生「そ、そうよ。こんな高等テクニック、貴女には真似できないでしょうね。ほーっほっほっほっほ」
優等生(SMって鞭を使うだけじゃないのね……。覚えておきましょう)
童貞(こんなの聞いてないけど……まぁ、いいか……)
優等生「ここにオスがいるのね」
童貞「あ、はい」
優等生「位置はわかったわ。私はここで寝ましょう」
サキュバス「私は……えーと……えーと……」
優等生「こっちにきなさい」
サキュバス「ここ、ですか?」ギュゥ
童貞「ふぐぅ……」
サキュバス「あ、すみません!!」
童貞「い、いや、いいんですけど……」
優等生「少し狭いわね」
サキュバス「仕方ありません。でも、オスと寝ることはできます」
優等生「そうね。それじゃあ、たっぷりと寝て、生気を奪ってやるとしますか」
サキュバス「緊張しますが、よろしくお願いします!!!」
童貞「こ、こちらこそ!!」
童貞「……」
童貞(あれから何分、たったんだろう)
童貞(俺の身には何も起こらない……)
サキュバス「すぅ……すぅ……」
優等生「んん……すぅ……」
童貞(女の子の匂いがする……)
童貞「あのぉ」
サキュバス「すぅ……すぅ……」
童貞(寝るって……本当に寝るだけなのか……)
優等生「ぅん……」
童貞(これ……俺が襲っても……二人は文句言えないよな……)
童貞(そうだ。ここで俺が二人に……)
サキュバス「すぅ……すぅ……」
童貞(駄目だ!! ダメだ!! そんなことしたくない!! 無理矢理なんてどうかしてる!!)
童貞(でも淫魔だとか……言って……。それでも!! ダメだ!! でも……うーん……!!)
翌朝
サキュバス「ふわぁ……。んー、よく寝たぁ」
優等生「ん……? もう朝ぁ……? まだ、眠いわ……」
童貞「おはよう、ございます……」
サキュバス「おはようございますであります!!」
優等生「あらぁ。随分とやつれているようね」
童貞「ええ……寝れませんでした……」
サキュバス「そうなんですか? それって……!!」
優等生「考えるまでもないでしょう。オスの生気の無い顔を見れば一目瞭然じゃない」
サキュバス「私たちが生気を奪い取った……!!」
優等生「そういうことね。ふっ。まぁ、私にかかればこんなところよ。一晩では絞りつくせなかったようだけど」
サキュバス「どうやら、たっぷりと生気を持っているようですね」
優等生「うふふ。これは今晩も楽しめそうだわ」
サキュバス(お母さん! 私、やったよ!! オスと初めての夜を過ごしたよ!! これでお母さんに近づけたかな……?)
童貞「うぅ……ねむい……」
優等生「はい。朝食よ。心して召し上がれ」
童貞「あ、ありがとうございます。あれ……?」
優等生「なにか?」
童貞「いえ、背を向けてないなって思って」
優等生「私と貴方は既にい、一夜を共にしたじゃない。そんな相手には、もう、遠慮なんて、必要ないでしょう」
童貞「は、はぁ」
サキュバス「考えてみれば、そうなんですよね。私たちは貴方の生気を奪いましたが、貴方は私たちの初めてを奪ったことになるんですよね」
優等生「こんなオスに私の初めてを……奪われることになるとはね……。生気を奪うためとはいえ、腑に落ちないわ」
サキュバス「いいじゃないですか。めちゃくちゃにされたわけでもないんですし」
優等生「め、めちゃくちゃってなによ!?」
サキュバス「それは、ほら、あの……指をなめられ、たり、とかぁ……」
優等生「な、なんて悪魔的な情事を!! あなたの頭の中は淫靡なことしか詰まっていないのね!!!」
サキュバス「そんな!! 変態みたいな言い方はやめてください!!」
優等生「ふん! 貴女はどうやらサキュバスではなくてただの変態なのよ!! この変態!! ヘンタイ!!」
サキュバス「やめてくださいっ!! ヘンタイじゃないです!!」
童貞「そろそろ、行ってきます」
サキュバス「はっ!! お気をつけて!!」
優等生「いってらっしゃい」
童貞(なんでこんなにも流されてるんだろう……俺……。あ、童貞だからか……。童貞なら仕方ない……)
童貞(昨日、捨てられたんじゃないか……? でもなぁ……無理矢理とか……気が進まないしなぁ……)
バタンッ
サキュバス「さぁて、今日はどうしましょうか」
優等生「どうせ、オスが帰ってくるまではすることがないんだし、今日もお掃除とお洗濯よ」
サキュバス「お掃除はいいとして、お洗濯は殆ど終わっていますよ」
優等生「あれは何かしら?」
サキュバス「あ、あれは……その……」
優等生「オスの下着だけを残したのは、何か意味があるのでしょう?」
サキュバス「あ、あれを洗えというのですか!? いくら、一夜を共にしたからといっても、下着に触れるなんて……!!」
優等生「最悪、こちらがオスの生気に中てられて、どうにかなるかもしれないわね。けれど、オスの下着こそ、生気の塊よ。触れずしてどうするのよ」
サキュバス「そ、それは、そうなんですけどぉ……」
優等生「早く洗いなさい。私はお掃除をしておくから」
サキュバス「待ってください!! ここは要相談です!!」
優等生「却下。もう、私はお掃除する態勢が整っているもの」
サキュバス「くぅ……」
優等生「精々、身籠らないようにね。うふふふ」
サキュバス「オスの下着を……手に取るなんて……私には……」
サキュバス「ううん!! ここで逃げたら私は一流のサキュバスにはなれない!!」
サキュバス「やってやる……やってやるんだから……!!」ギュッ
サキュバス「こ、これがオスの下着の感触……!! なんて、なんて禍々しい……瘴気……!! このままでは、本当に妊娠してしまうかもしれない……!!」
優等生(やるわね。まさか本当にオスのパンツを素手で持つなんて……。この子、サキュバスとして才能が開花しつつあるの……)
サキュバス「これを洗う……!! これを……洗わないと……!!」
優等生(どこまでやれるのか、見せてもらおうじゃないの)
サキュバス「――やっぱり持てません!!!」ブンッ!!!
パサァ……
優等生「え」
夜
童貞(あの子たち、まだいるのかな……)ガチャ
童貞「ただい――」
優等生「……」
童貞「おぉ……!? ど、どうしたんですか、玄関で膝なんて抱えて……」
優等生「……した……に……し……た……」
童貞「え?」
優等生「にんしんした……にんしんした……にんしんした……」
童貞「あの……」
サキュバス「おかえりなさいであります」
童貞「この子、どうしたんですか?」
サキュバス「貴方のパンツを顔面で受けてしまい……その……妊娠してしまったようで……」
童貞(どういうことだ……)
サキュバス「モロに顔面だったので、もう、色々なものが鼻や口から入ってしまっていることでしょう。サキュバスとして汚辱以外のなにものでもありません……」
優等生「にんしんした……にんしんした……にんしんした……」
童貞「あの」
サキュバス「なんでありますか」
童貞「義務教育は受けてるんじゃないんですか」
サキュバス「勿論です。悪魔の義務教育は修了しています」
童貞「な、なら、どうやったら妊娠するかも知っているでしょうに」
サキュバス「はい。オスの体液が体内に入ると子どもを授かります」
童貞「だったら、下着が顔についたところで、妊娠なんてしないじゃないですか」
サキュバス「何を言っているでありますか!! 下着には体液がこびりついているではありませんか!!」
童貞「そりゃそうだけど……」
サキュバス「彼女にはもう新しい息吹が……」
優等生「なまえ……きめないと……」
童貞(やっぱり、変だな……。でも、冗談にも見えないし)
童貞「あ、あの、普通はエ、エッチとかしないと、妊娠なんてしないんだけど……」
サキュバス「……え?」
優等生「……!?」ガタッ
童貞「え?」
サキュバス「そうなのでありますか!?」
優等生「おかしいわ……。それならエッチしまくりのサキュバスは何度も妊娠しているはず……」
サキュバス「どういうことでしょうか。私たちだって、昨晩はあんなにエッチを……」
童貞「あの……ええと……」
優等生「ふっ。これは人間の嘘ね。エッチしたからって、妊娠なんてしないわ」
サキュバス「やはり、体液が体内に入らない限りはありえませんね」
優等生「そう。だから、私は……にんしんした……にんしんした……にんしんした……」
サキュバス「……」
童貞「いや、あの、そうじゃなくて……」
サキュバス「生まれてくる子のためにも今晩は生気を思う存分、奪いましょう」
優等生「そうね。それしかないわ」
童貞「君たちにも母親と父親がいるでしょう? どうやれば妊娠するかなんて自ずと理解できると思うんですけど」
サキュバス「いえ、私はお母さんととってもかっこよくて優しいオスの三人暮らしですから。チチオヤなんていません」
童貞(そうか……複雑な家庭環境なんだな……この子……)
優等生「サキュバスにはチチオヤなんていないのよ。いるのは母親だけなの」
童貞「なら、どうやって君たちは生まれてくるんですか」
優等生「奪い取るオスの生気がこちらの許容量を大幅に越えたとき、このお腹に命が宿るとされているわね」
サキュバス「簡単には越えないんですけど、下着にこびりついた生気なんかを思い切り吸い取ってしまうと、妊娠してしまう可能性はあると、友達の間では専らの評判であります」
童貞「噂なのか」
優等生「ええ、そうよ」
童貞「噂なら、妊娠しないかもしれないんじゃ……」
優等生「確かに、その可能性もなくはないけど……」
サキュバス「もしかしたら許容量を越えていないかもしれないとかってありえますか?」
優等生「む……。その発想はなかったわ。そうね。天才の私がオスの下着にこびりついた体液程度で妊娠するなんて、おかしいわ」
サキュバス「つわりってやつもないですよね」
優等生「そうよ!! つわりがないじゃない!!」
サキュバス「妊娠、してませんよ!!」
優等生「そうよね。そんなことだろうと思ったわ。ほーっほっほっほ。やるじゃないの、人間!! 私をここまで追い詰めたのは貴方が初めてよ!! でも、詰めが甘かったわね!!!」ビシッ
童貞(どういう教育を受けたら、こんな風に育つんだろう……)
優等生「今日は気分が良いから、一品だけ増やしておいたわ。感謝することね!!」
童貞「ああ、はい」
サキュバス「強気ですね。妊娠していなかったことが分かって、とても張り切っています!」
優等生「そんじょそこらにいるサキュバスとは一味どころか七味も違うのよ。私はね。それが証明できたことを誇りに思うわ」
童貞(うまいな……この料理……)
優等生「ちょっと作りすぎてしまったこの肉じゃがも食べればいいのよ。そして生気を思う存分、蓄えるがいいわ。私は、オスがもつ生気程度で妊娠なんてしないもの!!」
優等生「あーっはっはっはっは!!! 私は無敵!! 並のオスは一晩で干からびてしまうほどの力があるのよ!!」
童貞「……」モグモグ
優等生「ククク……。どうやら悔しくて返す言葉がないようね」
童貞「いえ、これ、美味しくて」
優等生「言い訳なんて見苦しいわ!! 貴方はただ、私のものを体内に押し込む作業を続けていけばいいのよ!!」
サキュバス「やはり、この人は天才……。でも、負けたくない……!!」
優等生「あんたみたいな劣等生には到底無理ね」
サキュバス「くっ……。まだ、わかりません。私だって……オスの下着を持っても妊娠はしませんでしたから……」
優等生「ふんっ。オスの下着を覆面代わりにすることができれば、認めてあげてもいいけどぉ?」
童貞「――あがりました」
優等生「それじゃ、次は私がシャワーを浴びるわ。もうオスが使った直後でもシャワーができる。なぜなら……」
優等生「私は妊娠なんてしないからっ!!」
童貞(何言ってんだろう、この子)
サキュバス「……」
優等生「未だにオスの体液まみれのお皿を洗うのに30分もかけているような劣等生だと、懐妊しちゃうかもしれないけどね。うふふふ」
サキュバス「うぅ……」
童貞「あの……」
サキュバス「わ、私だって……オスのパンツを顔にかぶるぐらい……」
童貞「あ……え……」
サキュバス「かぶるぐらいぃぃ……!!」プルプル
童貞「やめてください。俺が、その、恥ずかしいし」
サキュバス「止めないでください!! これは私に与えられた試練なのであります!!!」
童貞「……あの、ちょっと待ってて」
サキュバス「はいっ」
童貞「すごく、恥ずかしいんだけど、こ、これ、見てみて」
サキュバス「これなんですか?」
童貞「これはPC」
サキュバス「へぇー」
童貞「で、あの、ここに妊娠って打ち込んで……」カタカタ
サキュバス「おぉ!! 文字がでてきました!! すごいであります!!」
童貞「妊娠のメカニズムなんかがここに書いてあるから、読んでみて」
サキュバス「難しい言葉がたくさん並んでいて、読解には時間を要するでありますぅ。結論だけ教えてくれませんか」
童貞「結論……って……」
サキュバス「妊娠の条件とはなんでありますか!?」
童貞「あ、あの、それじゃあ、このヘッドホンつけて」
サキュバス「はいっ」
童貞「で、ここを……」カチカチ
サキュバス「む。画面が変わりました。何が始まるでありますか?」
童貞「俺は、向こうにいるから……流れる映像でも……その、見てみればどうやって妊娠するのか……わかると思うよ」
優等生「――ふぅ。良いお湯だったわ。サイコーね」
童貞「……」
優等生「あら、待ちきれなくて私が出てくるのを待っていたのかしら?」
童貞「いえ……その……」
サキュバス『うぉぉぉぉぉ!!! おぉぉぉぉぉ!!! んひぃぃぃ!!!』
優等生「な、なによ?」ビクッ
童貞「俺はただ……教えてほしいっていうから……その、教えただけで……」
優等生「何をしたの?」
童貞「お気に入りの動画を……見せてただけなんだ……」
童貞「俺は間違ってない……」
サキュバス『ひぃぃ!! あぁぁぁぁ!! おぉぉぉ……おぉぉぉお……!?』
優等生「あの子に何をしたのよ!!」
童貞「俺は間違ってない……間違ってないはずだ……」
優等生「オスのくせにサキュバスを貶めようとしたのね。油断していたわ……」
サキュバス『ほぉぉぉ……!! すっごい出てる!! 出てるよ!!』
優等生「ちょっと!! どうしたのよ!!」
サキュバス「あ……あぁ……」
優等生「大丈夫!? 何があったの!?」
サキュバス「はぁ……はぁ……」
優等生「こんなに体を震わせて……。余程、恐ろしいものを見たのね」
サキュバス「うぅ……ぐすっ……」
童貞「あの……」
優等生「近づかないで、この悪魔!!」
童貞「え……」
優等生「メスを泣かすなんて、オスとして最低よ!!」
童貞「いや、だって……教えてほしいって……。俺だって、あまり、見せたくなかったんだけど……」
優等生「何を見せたのよ?」
童貞「それは……後ろを見れば……」
優等生「後ろですって?」
優等生「……!?!?」
童貞「そろそろ寝ようかと、思うんですか」
サキュバス「……」
優等生「……」
童貞「あのー」
サキュバス「すごいものをみてしまいました……」
優等生「教官も言っていたじゃない。時には汚らわしいオスの部分を見ることも、触れることもあるって」
サキュバス「あんなにすごいものなんですか。オスの……あの……あれって……」
優等生「私も初めてみたわ……。あんなものが、入るわけないじゃない。おかしいわ」
サキュバス「でも、あのメスの中へスムーズに……うっ……!!」
優等生「思い出そうとしちゃダメよ。気をしっかりもちなさい」
サキュバス「すみません……」
優等生「忘れましょう」
サキュバス「はい」
童貞「おやすみなさい」
童貞(明日、ちゃんと謝ろう)
深夜
童貞「すぅ……すぅ……」
サキュバス「起きてますか?」
優等生「眠れないの?」
サキュバス「あの映像が脳裏に焼き付いて……」
優等生「そうね。私もよ」
サキュバス「もしかして、エッチなことって……」
優等生「言わないで。おぞましい」
サキュバス「教官殿が怒っていた理由、今理解できました。きっと、私たちがエッチに関してとんでもない勘違いをしていたからなんですよ」
優等生「あれがエッチなこととは限らないわ」
サキュバス「そんな!! オスとメスが一糸まとわぬ姿で体を密着させ、汗を流しながら、うおぉぉぉぉ!!!」ダダダッ
優等生「身をカーテンに隠しても、現実は同じなのよ」
サキュバス「私、オスに対してあんなことをしなければいけないでありますかぁ……?」モジモジ
優等生「それがサキュバスの宿命なのよ。……私はやるわよ」
サキュバス「やめてください!! 体は大事にするべきです!!」
優等生「焦らないで。言ったはずよ。あれがエッチなこととは限らない」
サキュバス「どういうことですか?」
優等生「もしあれがエッチなことならば、サキュバスとして避けては通れない道。でも、エッチなことでなければ無視しても構わない」
サキュバス「試す、ということですか」
優等生「そう。これはサキュバスにとっての通過儀礼というやつね」
サキュバス「エッチなことではないとどこで判断するんですか? そもそもあんなに肌と肌をこすりつけていたのに……」
優等生「生気を奪えるか奪えないか。全てはここにかっている」
サキュバス「そうか……。映像と同じことをしても生気が奪えないのなら……」
優等生「あれは忘れることができる」
サキュバス「……」
優等生「サキュバスの宿命よ。エッチなことかどうかを見極めるのはね」
サキュバス「わかりました……。では、えっと……」
優等生「始める前に確認しておかないとね」
サキュバス「確認って?」
優等生「先にオスの大きさは見ておかないと、その、怖いじゃない」
サキュバス「な、なるほど……確かに……」
童貞「すぅ……すぅ……」
優等生「衣服を脱がすわよ」
サキュバス「できるんですか?」
優等生「できる、できないじゃない。やるしかないのよ」
サキュバス「そう、ですね……」
優等生「私だってあの映像がエッチなことだとは信じたくない。けれど、試さないことには分からない」
サキュバス「なんて残酷な宿命なのですか……」
優等生「いくわよ……」
サキュバス「は、はい」
童貞「すぅ……すぅ……」
優等生「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
サキュバス「おぉぉぉ……」
優等生「はっ!!!」ズルッ!!!
童貞「んん……? うーん……。すぅ……すぅ……」
サキュバス「どうですか!? どんな感じでですか!?」
優等生「静かに! 今、ズボンを下ろしたところですから」
サキュバス「生で見てしまってもいいのでしょうか。これ、ものすごくエッチなことだと思うのですが」
優等生「そうね。でも、私たちは映像で先に見ている。予習はバッチリよ」
サキュバス「生で見るのはまた違うと思いますぅ」
優等生「さぁ、次、下着、行くわよ」
サキュバス「おぉぉ……つ、ついに……」
優等生(覚悟を決めるのよ、私。もし大丈夫そうな大きさなら、そのまま映像と同じことをする。そして生気を奪えるのかどうか……)
サキュバス「うぅぅー……」
優等生「いち、にの、さんっ!!」ズルッ
サキュバス「やっぱりダメ!!」パチンッ
優等生「ちょっと! 灯りをつけなさい!! 真っ暗で見ることができないじゃない!!」
サキュバス「こんなの間違っています!! 相手に断りもなく、盗み見るなんて、私にはできません!!」
優等生「けど!! あの映像がどこまでエッチなのか、調べなければならないでしょう!?」グニッ
優等生(ん? なにこれ? なんか柔らかいものに触れているわね……)フニフニッ
翌朝
童貞「う……。朝か……」
童貞「なんか、やけに下半身が涼しいような……」
童貞「な……!?」
童貞(なんで俺、何もはいてないんだ!? どうなってんだ!?)
童貞(こういうときって……もしかして……)
サキュバス「すぅ……すぅ……」
童貞(女の子が隣で寝てる……下半身丸出しの俺……)
優等生「すぅ……すぅ……」
童貞「あぁ……間違いない……」
童貞(俺……知らないところで……童貞卒業したんだな……)
サキュバス「えへ……へ……」
童貞(記憶は全くないけど、こんなかわいい子に奪ってもらえたなら、俺は本望だ……)
童貞「ありがとうございます」
サキュバス「すぅ……すぅ……おか、あ……さん……やったよ。私……立派な……サキュバスにぃ……」
優等生「はい」
童貞「あ、ありがとう」
優等生「ふんっ」
童貞「……いただきます」
童貞(なんか気まずいな。付き合ってもいないし、そもそもいきなり転がり込んできた女性と関係をもったら、こんな感じになるか……。経験したっていう実感はないけど)
優等生「(結局、昨日は何もできなかったじゃない)」
サキュバス「(やはりオスの局部を強引に見るのはダメですよ。生気を奪うのに何も関係のないところじゃないですか)」
優等生「(昨日の映像からして、関係ないとは今のところ断言できないでしょうに)」
サキュバス「(裸のオスとメスがあんなことをしていたんです。しかも、その、何かたくさん出ていましたし……エッチなことでは、あるのかもしれません……)」
優等生「(そうと決まったわけじゃない。だからこそ、確認するためにはああいうこともしないとダメなの。昨日、説明したはずよ)」
サキュバス「(思ったんですけど、私たちが教わってきたエッチなこととはかけ離れていますし、あれはただのヘンタイ行為ではないですか?)」
優等生「(それは私も考えていたわ。そもそもエッチなことをするのに裸になる必要があるかしら?)」
サキュバス「(ありません。だいたい人前で裸になるのなんて、ただの露出狂ですよ)」
優等生「(ふっ。どうやら結論が出てしまったようね。あれは露出狂同士の戯れなのよ)」
童貞(何を話してるんだろう……。それはそうと、俺はどちらの子と関係をもってしまったんだろう。もしかしたら、二人と……俺は……)
童貞「行ってきます」
サキュバス「いってらっしゃいであります!!」
優等生「……」
童貞(なんか態度がよそよそしいなぁ……。もしかして……俺は……)
優等生「早く行きなさいよ」
童貞(この子と……!?)
童貞「そ、そ、それじゃ……」
サキュバス「お気をつけてー」
バタンッ
サキュバス「さぁ!! 今日もお掃除とお洗濯です!!」
優等生「待ちなさい」
サキュバス「なんですか?」
優等生「サキュバスが二人もいて、オスの一匹すら干上がらせていないなんて、まずいんじゃないの」
サキュバス「ええ、まぁ……。でも、まだ研修期間内ですし」
優等生「今日で何日目だと思ってるわけ? 既に四日目よ。半分を切ったの。お分かり? このままじゃ落第よ。落第」
サキュバス「うっ……。もうそんなに時間が……」
優等生「もう少し焦りなさい。全く」
サキュバス「すみません。けど、昨日だって一緒に寝ましたし、順調に生気は奪っているはずです」
優等生「ええ。今朝だって、オスはあからさまに元気がなかった。生気は着実に減っている。でも、これだけ時間をかけてもまだ生きているのよ」
サキュバス「いいんじゃないですか。今の状況はまさに私のお母さんが永遠のオスを捕えた状況に似ていますし」
優等生「そういえば、図らずもそうなってしまっているわね」
サキュバス「はい。オスの家に転がり込み、誠心誠意お世話をする。そのうちに、オスの心を掌握。そして最後には虜にしてしまう。そういう流れです」
優等生「半永久的にオスから生気を搾り取れるのは魅力的ではあるけどね。悪魔的にはどうなのよ」
サキュバス「これが成功し、教官殿に認められたら、私たちも一躍時のサキュバス候補になれるかもしれませんよ」
優等生「あなたの母親がどれほど優秀なのかは知らないけど、やはりここは数をこなしたほうがいいと思うわ。エッチした回数が多いほうが目をかけてもらえるんじゃない」
サキュバス「うーん。どこで評価されるかにもよりますよね……」
優等生「あとね、昨日の映像もそうだけど、私たちにはまだ知らないことが多い。それって、私たちでは想像すらできないエッチも世の中にあるってことじゃないかしら」
サキュバス「そ、それはどのような!?」
優等生「今日はそれを調べましょ。悪魔界の常識に囚われない、画期的なエッチを探すのよ。問題はどうやって探すかだけど」
サキュバス「はい!! それならいい方法があります!! あのぴーしーというものを使わせてもらいましょう!!」
優等生「これで何かできるわけ?」
サキュバス「少し待ってください。ええと、たしかここを……」カチッ
優等生「なにか出てきたわね」
サキュバス「で、ここに調べたいことを入力するんです。すると、様々な情報が一瞬ででてきます」
優等生「まさか。知識の泉とでもいうの」
サキュバス「何を入力しましょうか」
優等生「もちろん『エッチなこと』で調べるのよ」
サキュバス「わかりました。えーと……ここを叩けば……」カタカタ
サキュバス「出ました!!」
優等生「男性がひそかに憧れているエッチ……?」
サキュバス「おぉぉ……こ、こ、これは、いいものがでてきましたよ……」
優等生「ちょっと、早く見てみなさいよ。ほら」
サキュバス「せかさないでくださいよぉ」
優等生「じらさないで!!」
サキュバス「ええと……萌えるコスプレ、ベッド以外で愛し合う、脱がないことに意義がある、演技力が命です……。よくわかりませんね」
優等生「本当におバカさんね。目の前に知識の宝庫があるのだから、それで調べればいいじゃない」
サキュバス「そうですね。まずは萌えるコスプレから調べてみましょうか」
優等生「あら、写真がでてくるのね」
サキュバス「どれも人間のメスですね。しかし、この服を手に入れるにはこの世界の貨幣が必要になってきます」
優等生「コスプレというのは諦めるほかなさそうね」
サキュバス「待ってください!! これ、このコスプレ! 私たちの制服に似ていませんか!?」
優等生「見習いサキュバスの全員が着るこの服がこちらにも存在しているというの……」
サキュバス「このボンテージというのがとても酷似しているように思えます」
優等生「なるほど。だからね」
サキュバス「なんのことですか?」
優等生「研修初日を思い出しなさい。オス共が群がってきたでしょう」
サキュバス「とても苦い経験ですぅ」
優等生「あれは既に私たちがエッチなことをしていたからなのよ」
サキュバス「あんな公衆の面前でエッチなことをしていたんですか!?」
優等生「そういうことになるわね。私ってなんて罪作りな悪魔なのかしら。自分の底なしの才能が嫌になるわ」
サキュバス「やだぁ……私ってなんて恥知らずな悪魔なんだろう……」
優等生「いい加減、サキュバスってことを自覚なさい。恥をかいたんじゃない。オスを魅了したのよ」
サキュバス「考えたかた一つということですか。それにしても、耳が真っ赤ですよ」
優等生「そんなことないわ」
サキュバス「いえ、真っ赤です」
優等生「ゆるさい!! 私のことはどうでもいいでしょ!! 今はエッチなことよ!!」
サキュバス「すみません!!」
優等生「ほら、コスプレはクリア済み。次よ、次!!」
サキュバス「ベッド以外で愛し合う、ですね」
優等生「それはまぁ、言葉通りの意味でしょうね」
サキュバス「愛しあうことはエッチなことなのですか?」
優等生「言ったでしょう。常識に囚われてはいけないのよ」
サキュバス「わかりました。では、次ですね」
優等生「脱がないことに意義がある、か。私たちは別に露出狂でもなんでもないもの、脱ぐことはないわね。あの映像のオスとメスのような痴態は晒さないわ」
サキュバス「ですね!!」
優等生「最後は演技力……。これはどういう意味なのかしら」
サキュバス「演技の上手さ、ではないですか」
優等生「そんなの分かっているわよ。どういった演技をするのかってことよ」
サキュバス「この4項目を総合的に考えると、コスプレをしながらベッド以外で愛し合い、服は脱がない演技をしろということですか。エッチって実は難しいんですね」
優等生「大馬鹿ね、あなた。それだと意味がわからないでしょうに」
サキュバス「では、どういうことなのですか」
優等生「並び替えればいいのよ。コスプレ服を脱がないで、ベッド以外で愛し合う演技をするってことよ」
サキュバス「おぉ。確かにしっくりくる順番ですね!!」
優等生「私たちの制服はコスプレではないけど、人間界ではコスプレという特殊服の一種のようだから気にしなくていい」
サキュバス「理解できました。愛し合う演技をしろ、そういうことですね」
優等生「そう。それもベッド以外でね」
サキュバス「愛しあうか……。もっとも難しいですね」
優等生「母親と優しいオスが愛し合っているところぐらいは何度か目にしてきたでしょう?」
サキュバス「それはもう! 私、お母さんとかっこいいオスが愛し合っているのを見て育ってきたといっても過言ではありません」
優等生「それを見本にすればいいじゃない。それでエッチを完遂できるわ」
夜
童貞(どんな顔をしていればいいんだろう……。恋人でもないっていうのに……)
童貞(どうして彼女は俺と関係を持ってくれたんだ……。もしかして、あれか、本当に淫魔で……)
童貞(聞くのも恥ずかしいし……)
童貞「はぁ……」ガチャ
サキュバス「お、おかえりなさいませ、あ、あなた……」
童貞「え……」
サキュバス「きょ、きょ、今日も疲れた、でしょう? ごはんにする? お風呂にする? それとも、あなたのせ、せい、せ、い、生気をく、く、くれ……くれ、くれ……」
童貞「え、ええと……」
サキュバス「うおぉぉぉぉぉ!!!!」
童貞(まただ……)
サキュバス「ひぃぃん……」モゾモゾ
優等生「困ったらカーテンの裏に隠れるの、やめなさいよ」
サキュバス「やっぱり、はずかしいですぅ……こんなのむりですぅ……照れますぅ……」
優等生「無理でもやるのよ。母親のようなサキュバスを目指すのなら、当然でしょ!!」
童貞(どうなっているんだ……なにがあったんだ……)
サキュバス「顔があつい……」
優等生(ククク……。さぁ、貴女の実力を見せてみなさい。そして、私が貴女の真似をすれば……。漁夫の利ではあるけれど、私がまた大きくリードすることができるわ)
童貞「あの、今のは……」
サキュバス「……」モジモジ
優等生「いつまで恥ずかしがっているつもり? 愛し合うって決めたんでしょう?」
童貞「あ、あいし、あう……? 俺と……?」
サキュバス「……うんっ」
童貞(こ、これって……もしかして……もしかして……!!)
優等生「ふっ」
童貞(そうか。俺は思い違いをしていたんだ……!! 俺と関係をもってくれたのは……!!)
サキュバス(お母さんみたいな台詞、うまくいえないよぉ……やっぱりサキュバスの才能がないのかなぁ……)
童貞(この子なのか!!!)
サキュバス「私とは、その、愛し合えませんか……?」
童貞(ありがとうございます)
サキュバス「とりあえず、あの、ご、ごはんでいいですか?」
童貞「ああ、はい」
サキュバス「す、すこし待っていてください!!」テテテッ
童貞(昨日まで彼女いない歴イコール年齢で童貞だった俺が、こんな可愛くて美人でエッチな服を着た女性で童貞を卒業しただけでなく、愛し合おうとまで言われるなんて)
童貞(生きてみるもんだな……)
サキュバス「あ、あの、今日は、私が作ったんですけども……」
童貞「そ、そうなんですか」
サキュバス「がんばってお米を炊きましたであります!! お口に合えば光栄であります!!」
童貞「……おかずは?」
サキュバス「私……お米の炊き方ぐらいしか知らなくて……」
童貞「あ、いえ、いただきます」
サキュバス「どうですか? 初・お米炊きですが……」
童貞「うまいです。何杯でもいけます。こんなにおいしいごはんを食べたのは生まれて初めてですよ」
サキュバス「ほ、ほんとうでありますか!! いっぱい食べてください!! がんばってたくさん炊きました!!!」
優等生(まさか白米のみでオスからここまで感謝されるとは……。やるじゃない……)
童貞「ごちそうさまでした」
サキュバス「お粗末さまでした」
童貞(本当に白米だけだったけど、俺は幸せだ)
サキュバス「そろそろ、お風呂にしますか?」
童貞「あ、今日は貴女たちから先に入ってください」
サキュバス「それはいけないであります!」
童貞「ど、どうして?」
サキュバス「私の母は常々いっていたであります。一番風呂は絶対にオス。メスであるサキュバスが最初に入るなど、言語道断だと」
童貞(この子のお母さんって淑女だったんだろうか)
サキュバス「だから、あ、あなた、から、お入りになって……」
童貞「そ、そう?」
サキュバス「わ、わわ、私は、その、あなたの、す、すぐあとで、入る……から……」
童貞「う、うん」
サキュバス「はっ!! すぐあとに入るっていうのは!! その貴方が出てきてから入るということで!! 決して、貴方の入浴中にお邪魔してしまうことではありませんから!! ご安心を!!!」
童貞「わ、わかってます……」
童貞「じゃ、入ってきます」
サキュバス「ごゆっくり」
優等生「ちょっと」
サキュバス「なんでしょうか? 私、上手く愛し合えていると思うんですが……」
優等生「もう忘れたの? オスが望むエッチは、ベッド以外で愛しあうことなのよ」
サキュバス「だから、ちゃんとこの居間で愛しあっていたじゃないですか」
優等生「ベッド以外、なのよ。それってキッチンでも、トイレでも、お風呂でも愛し合わないといけないでしょ?」
サキュバス「えぇぇぇぇ!?」
優等生「よく思い出して。貴女の母親は、ベッド以外でもオスと愛し合っていたんでしょ?」
サキュバス「それは、はい……」
優等生「リビングだけだったわけ?」
サキュバス「い、いえ、お母さんと優しいオスは場所を選ばず愛し合っていました」
優等生「それはどこだったわけ?」
サキュバス「キッチンとかもありました……。お風呂も……。トイレは流石に見たことがないですけど……」
優等生「それを真似てみなさいよ。ほら。さっさとする。見たことのない場所は応用でなんとかするの」
浴室
童貞「はぁー……」ゴシゴシ
童貞(今日も……あの子が……)
童貞(それなら、今日こそは起きていないと……)
サキュバス『あ、あのー。あな、あなたー?』
童貞「え? あ、俺の、こと?」
サキュバス『ここ、に、きが、え、おいておくでありんす!』
童貞(ありんす……!?)
サキュバス『うぉぉぉ!!!!』
優等生『なにやってんのよ』
サキュバス『ああいうことはもう少し親密になってからでないと、失礼のような気がしますぅ』
優等生『ふん。私たちは悪魔でありサキュバスよ。相手の事情なんて気にしてどうするの』
サキュバス『ひぃぃん』
童貞(そうか、夫婦になったときの予行練習をしているんだ……)
童貞(よくわからないけど、俺がしっかりと彼女の想いを受け止めてあげないといけないのかな)
キッチン
童貞(風呂上りに冷たいものでも……)
サキュバス「あ、あの!」
童貞「はい? あ、お風呂、入らないんですか?」
サキュバス「あ、あぁ……あぁ……あ……い……あ、い……」
童貞「え……?」
サキュバス「あいしてるぅ!!」
童貞「……!?」
サキュバス「う……」
童貞(突然、なんだ……。この子、よくわかんねえよ)
サキュバス「うわぁぁぁ!!」
優等生「ひゅーひゅー。アツアツじゃないのー」
サキュバス「茶化さないでください!!」
優等生(うふふ。どんどん資料が集まっていくわね。私がエッチマスターになる日も近いわ)
童貞(何を考えているのかわからないけど、俺はとても嬉しいです)
トイレ
童貞「ふぅ……」
コンコン
童貞「あ、入ってます」
サキュバス『あ、あの……』
童貞「はい?」
サキュバス『ご、ご一緒しても……?』
童貞「あ、いえ、や、やめてください」
サキュバス『ですよね!! ごめんなさいであります!!!』
童貞(まさか、そっちの趣味が……)
サキュバス『断られました!!!』
優等生『まぁ、トイレはないわよ』
サキュバス『貴女が行けっていったのにぃ!!』
優等生『ホントにいくなんて傑作だわ』
サキュバス『う……。うおぉぉぉ!!! 赤っ恥でぇす!!』
童貞「そろそろ寝ましょうか」
サキュバス「はい! お疲れ様でした!」
優等生「照明を落とすわよ」パチンッ
童貞(今日は起きてよう……。彼女の愛に応えるためにも)
サキュバス「(今日はエッチしすぎて、体中が火照ってます)」
優等生「(あれだけのエッチができれば、まぁサキュバスとしては及第点じゃない? 生気も相当奪えたはずよ)」
サキュバス「(だといいんですが……。うぅ……はずかしかった……。あれならまだ裸で体を重ねたほうが、マシ……でもないです)」
優等生「(新たにエッチなことを学べはしたけど、あの映像の真意を知りたいところではあるわね)」
サキュバス「(ただのヘンタイ行為ということにするって決めたじゃないですか)」
優等生「(ヘンタイ行為をわざわざ映像に残しているのよ? 何のためにって考えないわけ?)
サキュバス「(ヘンタイさんのことなんて考えたくもありません)」
優等生「(ヘンタイ行為ではあっても映像資料として残す価値があるのだとしたら、どうする?)」
サキュバス「(何がいいたいのですか?)」
優等生「(明日、調べてみましょう。あの映像がただのヘンタイ行為を映したものなのか、それともサキュバスにとっても有益なヘンタイ行為なのかをね)」
サキュバス「(と、ということはあの映像をもう一度、見るのですか!? うぅぅ……トラウマになりそうですぅ……)」
翌朝
童貞「うぅ……」
優等生「どうかしたの?」
童貞「い、いえ……すこし……疲れて……」
優等生「うふふ。そう。大変ね」
童貞「はぁ……」
サキュバス「顔色が悪いですね」
優等生「やはりかなりの生気を奪えたみたいね。昨日のがかなり効いているわ」
サキュバス「はぁー、よかったです」
優等生(この研修、私にとってはかなりの収穫ね)
童貞(結局、何もなかった……。朝まで起きてたけど、彼女は熟睡していただけだった……)
サキュバス「はい、どうぞ。朝ごはんです」
童貞「ありがとう」
優等生「よく噛んで味わい、私のことを崇拝するように飲み込みなさい」
童貞(俺は多くを求めすぎだな。成り行きとはいえこんな美人に朝ごはんを作ってもらえているんだ。贅沢をいってどうする。こんな冴えない俺にとっては天国ともいえる状況じゃないか)
サキュバス「食事はお済ですか?」
童貞「ああ、うん。ご馳走様でした」
サキュバス「では、お片付けしますね」
童貞「お願いします」
サキュバス「任せてください!」
優等生「はい。そろそろお仕事の時間でしょ。行ってきなさい」
童貞「あ、今日は、その、お休みなんで」
優等生「え。なら、今日はずっと家にいるつもりなの?」
童貞「食べ物とかは買いに行きますけど……」
優等生「くっ……予想外の事態だわ……」
童貞(なんだろう。俺が家にいたら都合が悪いのかな)
サキュバス「(どうするんですか? あの映像、もう一度見せてもらえるように頼んでみますか?)」
優等生「(前回はオスから無理矢理に見せてきたけど、今回は私たちからお願いするってわけ?)」
サキュバス「(こっそり見るのは無理っぽいですよ?)」
優等生「(けど、あのヘンタイ映像を見せてくださいなんて、まるっきりヘンタイじゃないの。貴女が頼んでくれるわけ? それならいいけど?)」
童貞(何を話してるんだ……。よく二人だけでコソコソしてるみたいだけど)
サキュバス「(わわ、私からなんていえませんよぉ!! そんなこと言ったら私がヘンタイと思われちゃうじゃないですかぁ!!)」
優等生「(貴女が見たいって言ったんでしょ!!)」
サキュバス「(貴女の提案で私じゃないです!!)」
童貞「あの……」
優等生「なによ!?」
童貞「あ、その、俺、外に出てようか?」
優等生「何か用事でもあるの?」
童貞「なんか、俺がいたら悪いのかなって」
サキュバス「ち、違います!! 決してそんなことはないのであります!!」
優等生「ここはアンタの寝床でしょう。私たちに気を使う必要なんてないわよ」
童貞「あ、そ、そうですか」
サキュバス「(今日は諦めましょう)
>>124
ミス
童貞(何を話してるんだ……。よく二人だけでコソコソしてるみたいだけど)
サキュバス「(わわ、私からなんていえませんよぉ!! そんなこと言ったら私がヘンタイと思われちゃうじゃないですかぁ!!)」
優等生「(貴女が見たいって言ったんでしょ!!)」
サキュバス「(貴女の提案で私じゃないです!!)」
童貞「あの……」
優等生「なによ!?」
童貞「あ、その、俺、外に出てようか?」
優等生「何か用事でもあるの?」
童貞「なんか、俺がいたら悪いのかなって」
サキュバス「ち、違います!! 決してそんなことはないのであります!!」
優等生「ここはアンタの寝床でしょう。私たちに気を使う必要なんてないわよ」
童貞「あ、そ、そうですか」
サキュバス「(今日は諦めましょう)」
優等生「(仕方ないわね。時間がないっていうのに……)」
サキュバス「(いいじゃないですか。あれがエッチなことなのか、それともヘンタイなだけなのかなんて、別に焦って調べる必要もないはずですし)」
優等生「まぁ、そうかもね」
サキュバス「はいっ」
童貞(彼女の言う通り、俺の家なんだし、堂々としていればいいよな)
優等生「それはそうと今日一日は暇ってことよね」
童貞「え、ええ、まぁ」
優等生「つまり、一日中エッチをしてもいいってわけよね」
童貞「え……」
サキュバス「おぉぉ!! そういえばそうですね!!」
優等生「どうやら、今日がオスの命日になるわ。残念だけど、私たちのために死んでもらいましょうか」
サキュバス「一宿一飯どころか、既に三宿十二食ぐらいは頂いていますが、これもサキュバスの使命ですからね」
優等生「今日こそは生気を絞り尽くして、干からびさせてやるんだからね」
サキュバス「絶好のチャンスというわけであります」
童貞「な、なにを……するつもりなんだ……」
サキュバス「たた、たくさんエッチなことをシテアゲルー」
童貞「おぉぉ……そこだけ棒読みになるんだ……」
優等生「これで完成っと。ん。これはアンタの分よ」
童貞「……」
優等生「なに? まだ足りないの? あんたのは特別大きく作ったつもりなんだけど?」
童貞「これ、お弁当……ですよね……?」
優等生「そうよ。しかも、精力がつく食べ物ばかりを選んでやったわ。うふふ、私たちだって楽しめないとやってられないもの」
サキュバス「水筒の準備、できました!!」
優等生「このカバンにつめなさい」
サキュバス「はっ!!」
童貞「あの、これから、どこへ?」
優等生「まだ分からないの? オスは下半身でしかモノを考えられないってのは本当みたいね」
サキュバス「あの映像を見る限り、下半身に脳みそはなさそうでしたが。代わりに私たちにはないモノが」
優等生「変なこと思い出せないでちょうだい!!」
サキュバス「す、すみません!!」
優等生「ほら、立ちなさい!! 出発するわよ!! 私が考えた究極のエッチをしにね」
童貞「マ、マジですか……? 一体、どんなことが……」
公園
サキュバス「わー、お花がいっぱいありますよー」
優等生「いいところね。ここにしましょうか」
童貞「あ、あの……」
優等生「なにぼけーっとしてんのよ。ほら、このシートを広げなさい」
サキュバス「了解です」
童貞「て、手伝います」
サキュバス「ありがとうございます!!」
優等生「ほらほら、オス。キリキリ働きなさい」
童貞(これって……あれだよな……)
サキュバス「準備、完了です!!」
優等生「完璧ね」
サキュバス「まさかこのエッチを実践するとは思いませんでした」
優等生「貴女の作戦ばかりじゃ私が面白くないもの。ニンゲンのオスにも通用するのか確かめたかったしね」
サキュバス「流石です!!」
優等生「ん……ふぅー……。気持ちいいわ……」
童貞「……」
サキュバス「はい。良い風が吹いていますねー」
優等生「ニンゲンの世界にもこうした場所があってよかったわ。堅そうで高い建造物ばかりかと思ってたけど」
サキュバス「ちょっとだけ向こうのお花を見てきてもいいですか?」
優等生「目の届く範囲にいなさいよ」
サキュバス「はぁーい」テテテッ
優等生「ガキなんだから」
童貞「あのー」
優等生「なに? もう疲れたの? ふふ。まぁ、これだけの遠出してのエッチですもの。この四日間を乗り越えたオスでも疲弊するのは仕方のないことよ」
童貞「ああ、はい」
優等生「でも、地獄はこれからよ。快楽が苦痛に変わっても逃れる術なんてないんだから」
優等生「あーっはっはっはっは」
ざわざわ……
童貞(視線がすごい……。子ども連れの人もいるのに、この二人の服装は場違いすぎる……)
サキュバス「お花で冠を作ってみました! どうでありますか!?」
童貞「う、うん。いいと思う」
サキュバス「おぉ! お褒めにあずかり光栄です! では、これは貴方へ」
童貞「いいの?」
サキュバス「はっ! ぜひとももらってください!」
童貞「あ、ありがとう」
サキュバス「いえいえ」
優等生「さぁ、良い時間だし、食事にしましょうか」
サキュバス「私、お腹がすきました!!」
優等生「オスのほうも大分やつれてきたみたいだし、ここで回復させておかないとね」
サキュバス「まだまだがんばれそうですか?」
童貞「う、うん。まぁ」
優等生「食事のあとは第二回戦よ」
サキュバス「何から食べますか?」
童貞「そ、それじゃあ、あの、ソーセージから」
優等生「味はどうなの」
童貞「お、美味しいです」
優等生「ふっ。聞くまでもなかったわね」
サキュバス「今、飲み物をご用意しますね」
「なんだあれー」
「すっげえ女の子をつれてるなぁ」
童貞(周囲の視線が痛い。けど……)
サキュバス「はいっ。どうぞ」
童貞「あ、ありがとう」
サキュバス「私もいただきますね」
優等生「私に感謝しながら食べなさいよ」
サキュバス「わかりましたっ」
童貞(俺は今、世界で一番幸せなんじゃないか……。こんなに可愛い女の子と、あ、愛し合いながら、公園でお弁当たべて……)
サキュバス「そんなに見つめないでください……恥ずかしいでありますぅ……」
童貞「す、すみません!!」
優等生「さ、ごはんも食べたし、始めるわよ。私が考案した、エッチをね」
童貞(何をするんだろう……。外で……とか……?)
優等生「それじゃ、私を追ってきなさい」
童貞「え?」
優等生「ほーら、早くしないと私が捕まえられないわよー」
童貞「こ、これは……!!」
サキュバス「うおぉぉぉぉ!!!!」
優等生「あんたはこなくていいのよ!!!」
サキュバス「つかまえたぁ!!!」ギュッ
優等生「きゃぁ!! バカ!!! オスに追わせないといけないのよ!! まずはオスを弱らせるの!!!」
サキュバス「あ、すみません」
童貞(漫画とかでしか見たことないけど、現実にこういうことをする女の子っているんだなぁ)
優等生「気を取り直して……。ほーら、早くしないと私が逃げてしまうわよー」
童貞「ま、まってー」
優等生(うふふ。引っかかったわね。オスの体力を奪う罠ともしらずに……。ホント、オスは操りやすくて助かるわ)
童貞「はぁ……はぁ……」
優等生「どうしたの? もうへばったの?」
童貞「だ、だって……はぁ……はぁ……もう……」
優等生「ふふ。だらしないのね」
童貞「はぁ……きみが……すごい、から……」
優等生「いいわ。そこに寝なさい」
童貞「こ、こう?」
優等生「頭を私の膝にのせて」
童貞「あ、はい」
サキュバス(これは……!! 高難易度のエッチ!! 膝枕!? あんなに自然な流れでこのエッチにまでもっていくとは……!!)
優等生「どう? 脱力していくでしょう? うふふふ」
童貞「は、はい、色々、サイコーです」
優等生「うふふふ。身も心も蕩けるまでこうしていていいのよ」ナデナデ
童貞「ありがとうございます」
優等生(男の生気がみるみる減っているのが手に取るようにわかるわ!! これでオスもイチコロね。私が考えたエッチに隙がないことはこれで証明されたわ)
童貞「……」
優等生「あら? 死んじゃった?」
サキュバス「えー? 私、何もしてないのに」
童貞「すぅ……すぅ……」
優等生「なんだ。気を失っているだけみたいね」
サキュバス「これでもまだ絶命に至らないとは……。この人、相当な生気です」
優等生「サキュバス二匹に囲まれて四度の夜を乗り越えただけのことはあるわね」
サキュバス「考えてみれば、もう五日目なんですよね……」
優等生「それなりに得られたものがあるとはいえ、オス一匹すら殺せないのは自信を無くすわ」
サキュバス「貴方でも無理だなんて、サキュバスって本当に難しいんですね」
優等生「私も少し侮っていたわ。オスなんてただ気持ちよくさせれば簡単に生気を吸い取れると思ってたんだけどね」
サキュバス「淫魔の道は険しいですね」
優等生「悪魔の中でもエリートと呼ばれるクラスは伊達じゃないってことよ」
サキュバス(お母さんってこんなにも大変なことをしてたんだ……)
優等生(このままオスの一匹から生気を奪い尽くせないまま研修を終えたくない。この状況を打破するのは、やっぱりあのヘンタイ映像だけなの……)
童貞「ふわぁ……あ……よく寝た……」
優等生「……」プルプル
童貞「え? ああ、ずっと膝枕をしていてくれたんですか」
優等生「そ、そうよ」
童貞「とてもよかったです」
優等生「あ、あたりまえじゃないの……私のエッチはサイコーなのよ……」
童貞「どうかしたの?」
優等生「べつに」プルプル
童貞「でも……」
サキュバス「あ、おはようございます。みてください、今度はお花で首飾りを作ってみたんです」
童貞「おぉ、すごいですね」
サキュバス「はい、どうぞ」
童貞「あ、ありがとう」
サキュバス「そろそろ寝床に戻りましょうか」
優等生「え、ええ、そ、そうね。ただ、ほんの少しだけ時間をもらえないかしら?」プルプル
サキュバス「どうしてですか?」
優等生「耳を貸しなさい」
サキュバス「はいはい」
優等生「(やられたわ。オスは私に攻撃を仕掛けていたみたい)」
サキュバス「(えぇぇ!?)」
優等生「(足に異常があるの。尋常ない痺れで立てないのよ)」
サキュバス「(あんなに優しそうな顔をしているのに……)」
童貞「もしかして、足がしびれたんですか?」
優等生「くくく……やるわね、ニンゲンにしては……。わたしを……立てなくしたのは、アンタが初めてよ……」プルプル
童貞「ずっと膝枕をしていてくれたのは嬉しいけど、頭をどかしてくれてもよかったのに」
優等生「なるほどね。ただでは生気を奪わせない……ってこと……油断してたわ……」
サキュバス「悪魔のような戦術……。参考にさせていただきます!!」
童貞「ああ、うん」
優等生「ふぅー……ふぅー……ぐっ……んぎぃ……!! ひぎぃ……!!」ビクンビクンッ
サキュバス「無理はしないでください!!」
マンション
サキュバス「やっと戻ってこれましたね」
優等生「地獄を垣間見たわ」
童貞「なんか、ごめん」
優等生「いいのよ。私が未熟だっただけの話だからね」
童貞(自分に厳しくて他人には優しい子なんだろうな)
サキュバス「では、恒例のエッチタイムです。食事を作りますね」
優等生「今日は私がやるわ」
サキュバス「そんなぁ。今日も私がオスと愛し合いたいです」
優等生「ふん。膝枕の一つもできないガキにはまだ早いのよ。大体、昨日だってずっと緊張していたじゃない」
サキュバス「だって……愛し合ったことなんてないんですもん……」
優等生「ま、私が食事の準備をしている間に膝枕でもしてあげれば?」
サキュバス「わ、わわ、私が……!?」
優等生「できればの話だけどね。うふふふ」
サキュバス(確かに……ここでできなきゃ私はサキュバス失格……!! やるよ、お母さん!! みててね!!)
童貞(なんだかんだで楽しかったなぁ。女の子と遊んだことなんて生まれて初めてだし)
サキュバス「あぁぁ、ああ、あの……あのぉ……」モジモジ
童貞「え? なに?」
サキュバス「あ、えと……あの、で、ありますね……その……よ、よければで、いいのですが……」
童貞「あ、はい」
サキュバス「わ、わたしの上で寝てください!!」
童貞「あ、いえ、まだ夕方ですし……その……俺も恥ずかしいというか……」
サキュバス「おぉぉ!! うぉぉぉ!!!」
童貞「あぁ……」
優等生「またカーテンで身を隠して……。何かあったわけ?」
サキュバス「断られたでありますぅ」
優等生「あーっはっはっはっは!! サキュバスとしての魅力がないからそうなるのよ」
サキュバス「勇気を振り絞ったのにぃ」
童貞「あ、あの! 夜!! 夜なら!! 夜なら、いいですけど……」
サキュバス「ホントでありますか!? わ、わかりました。私、がんばりますっ!」
夜
優等生「そろそろ寝ようかしらねー」
サキュバス「夜になりましたね」
優等生「ま、がんばりなさい」
サキュバス「はい」
優等生(さぁ、どうなるか。見ものね)
童貞「あ、えっと、体を洗って……来ました……」
サキュバス「は、はい。で、では、どうぞ、こちらへ」
童貞「よ、よろしくおねがいします」
サキュバス「こちらこそ、不束者ですが、よろしくお願いしますであります」
童貞「ええと、その、どうしたらいいですか?」
サキュバス「あの、照明は……その……暗くしてくれると……たす……かります……」
童貞「ああ、うん! 待ってて」
サキュバス「すみません……顔を見られると、きっと恥ずかしくて何もできなくなるので……」
童貞「お、俺も、多分、そうなると思う……」
童貞「じゃあ、その消すから……」
サキュバス「はい」
童貞「……」カチッ
サキュバス「こちらに来てください」
童貞「う、うん。ここ、かな」
サキュバス「ここです」ギュッ
童貞「おぉ……」
サキュバス「寝てください」
童貞「ああ、はい」
童貞(柔らかい……この感触は……!!)
サキュバス「どうですか?」
童貞「ええと……」サワサワ
サキュバス「あ、あの、触らないでください……くすぐったいであります……」
童貞「ご、ごめん!」
サキュバス「私に身をゆだねてください。貴方を気持ちよくしますから」
童貞「……」
童貞(いつになったら、始まるんだろう。今はなんとなくだけど、膝枕をしてくれてるような……)
童貞(これはこれでいいけど)
サキュバス「ふ……ぁ……んっ……」
童貞(え……?)
サキュバス「あっ……はぁ……ん……んっ……」
童貞(彼女の息遣いが荒い……これは……もしかして……!!)
サキュバス「はっ……はぁ……あぁ……ん……」
童貞(真っ暗で分からないけど、一人でしてるのか……!? こんなプレイがあるなんて……!!)
サキュバス(足がしびれてきましたぁ……ひぃぃ……)プルプル
童貞(すげえ興奮するけど……俺もしていいのか、これ……わかんねえ……童貞だったから、何もわかんねえ……)
サキュバス「はぁ……はぁ……もう……だ……め……」
童貞(うおぉぉ……どうしたらいいんだ……)
サキュバス「ひぃぃん!! あぐ……あぁ……!!」ビクンビクンッ
童貞(ぬおぉ……この子、すごくエロいんだなぁ……。このあと、きっとものすごいのが待ってるんだ……!)
翌朝
童貞「……ん?」
童貞(朝、か。いつの間にか眠ってたんだな……。そういえば昨日は……)
サキュバス「うっ……ぐすっ……うぅ……」
童貞「ど、どうしたの!?」
サキュバス「ひどい……私……痛くて何もできなかった……」
童貞「え、なに、が?」
童貞(俺、何したか!? 昨日は彼女の喘ぎ声をずっと耳元で聞いているだけだったような気がするんだけど……!)
サキュバス「あんなにメチャクチャにされたのは、初めてでありますぅ……」
童貞「な……あ……」
童貞(やべえ!! 何もおぼえてねえよ!! くそぉ!! また俺は自覚なしにヤってしまったってのか!! こんな美人と!!)
サキュバス「あんなことしてきたのは、あなたが初めてであります……」
童貞「……」
童貞(ありがとうございます)
優等生「おはよぉ。昨日は随分と騒いでたわね。そんなによかったの、この子の膝枕が」
サキュバス「夜通しで膝枕を慣行しましたが、生気を奪い尽くすことには失敗しました」
優等生「なんですって。一晩中エッチしても死に至らしめることができないなんて、どういうことよ!?」
サキュバス「私にはサキュバスの才能がないのでしょうか……」
優等生「認めたくないけど、私も貴女と同じなのかもね」
サキュバス「それは違うんじゃあ……」
優等生「昨日だって半日以上はエッチをしていたのに、このオスは一度気絶しただけだったでしょ」
サキュバス「そういえば……」
優等生「悔しいけど、私たちではオスの一匹すら仕留めることができないのよ」
サキュバス「そ、そんな……そんなことって……」
優等生「自分の限界、なのかもね」
サキュバス「……嫌です。私は諦めたくない!! お母さんみたいな立派な淫魔になりたい!!」
優等生「私だって諦めたくなんてないわよ!! 淫魔を極めて高位悪魔にならなきゃいけないの!! でないと……」
サキュバス「なにか、あるのですか?」
優等生「私のお姉さまたちは、皆高位悪魔なのよ。それも淫魔からのね。私だけが淫魔になれなかったら、きっと勘当される。それにお姉さまたちの顔に泥を塗ることになる」
優等生「だから、私は絶対に淫魔になって、高位悪魔にならなきゃいけないのよ!!」
童貞「ごめん、少しだけいい?」
サキュバス「はっ。なんでありますか」
童貞「昨日は膝枕しただけ?」
サキュバス「だけって……」
優等生「アンタ、膝枕をするってどれほど勇気がいるのかわかってないわけ?」
童貞「そ、それは嬉しいんだけど……その……エッチなことっていうから、俺、期待しちゃって……その……」
サキュバス「なにか他にも希望があったのですか」
優等生「毎日三食料理は作ってるし、体液がついた食器もあらってる。オスの使った浴室も使ってる。トイレだって一緒じゃない」
サキュバス「昨日、一昨日なんてあ、あいし、あったわけでありますしぃ……」
童貞「けど、ここに君たちがきた次の日は、その、あの、してくれた……わけですし……」
サキュバス「次の日って」
優等生「研修三日目のことでしょ。そういえば、添い寝だってしてるじゃない。それ以上のエッチってなにがあるわけ?」
童貞「……もしかして、あの日は寝ただけですか?」
優等生「寝ただけとはなによ!?」
サキュバス「私たちの初夜をそんな風に言わないでください!! 悲しくなります!! 私たちだっていい思い出にしたいんですから!!」
優等生「初夜はここに来た日に済ませてある気もするけどね」
サキュバス「でも、その次の日のほうが色々と思い出深いですし」
優等生「あの映像を見てしまった日ですものね。人生観が変わってしまったというか」
童貞「あの動画みたいなことを、してくれんたんじゃないんです、か?」
サキュバス「え……!? え……!!」
優等生「な、なな、なにをいってるのよ!!! ばっかじゃないの!! 私たちはサキュバス!! 淫魔!! ヘンタイじゃないんだからね!!!」
サキュバス「そ、そそ、そうです!! あんなこと普通のサキュバスにはできません!!!」
優等生「というか、は、はだ、裸で……オスと……メスが……なんて……」
サキュバス「うおぉぉぉ!!!」
優等生「待ちなさい!!」
サキュバス「思い出しただけで体が火照ってしまうですぅ……」
優等生「私だって同じよ!! いいから、カーテンから出てきなさい!!」
サキュバス「うぅ……」モジモジ
優等生「アンタもアンタよ!! 私たちにあんなことをさせようとしていたわけ!? どんでもないヘンタイね!! 流石は下半身でモノを考える種族なだけはあるわ!!!」
童貞(俺……まだ童貞だったのか……なんてぬか喜びを……)
童貞「うぅぅ……」ガクッ
優等生「あら。急に生気が抜けたようね」
サキュバス「今頃ですか」
優等生「我慢していただけみたいね。ま、どちらにせよ、そこまで生気を奪えてはいないみたいだけど」
サキュバス「はぁ……明日で研修も終わりなのに……こんなことでは……卒業すらままならないかも……」
優等生「……」
童貞「だって……エッチなことっていうから……期待するじゃないか……あんなことやそんなことを期待するじゃないか……童貞の妄想は無限に広がるじゃないか……」
童貞「エッチなことについては、あの動画で教えた気になってたのに……なのに……」
優等生「ちょっと」
童貞「一つ屋根の下で可愛い女の子が二人もいたら、普通はそういうことになじゃないか……!!」
優等生「ちょっと!!!」
童貞「え?」
優等生「今、なんていったの?」
童貞「一つ屋根の下で可愛い女の子が二人もいたら……」
サキュバス「可愛いだなんて……うれしいでありますぅ……」
優等生「ありがとう。でも、そこじゃないわ。エッチなことについては、なんだって?」
童貞「あ、あの動画を見せたから、その、エッチなことについては、分かってもらえたかなって……思ってて……」
サキュバス「あれが……エッチ……なこと……」
優等生「ニンゲンの世界ではあれをエッチなことと定義してるわけ?」
童貞「そ、そうですが」
サキュバス「ひぇぇぇ……ニンゲンの世界ってどうなってるんですかぁ……」
優等生「は、恥ずかしく、な、ないわけ?」
童貞「それは恥ずかしいですけど、でも、エッチっていえば、ああいうことだと……」
サキュバス「では、手料理を振る舞ったり、添い寝したり、愛してるっていうのは、エッチなことじゃないんですか?」
童貞「う、うん。違う、んじゃないかなぁ」
優等生「そ、そんな……」
サキュバス「今、わかりました」
優等生「な、なによ」
サキュバス「私たちが生気を奪い取れない理由を。きっと、エッチなことを何一つ、していなかったからです」
優等生「なん、ですって……」
サキュバス「教官殿が教室で激昂したのも、きっと私たちがエッチのなんたるかを全く理解できていなかったかではないでしょうか」
優等生「料理することがエッチではないから……。そうね……そうなのかも……」
サキュバス「私たちは無知すぎたのであります」
優等生「でも、おかしいわ。私はお母様にも教わった。『エッチとはオスに奉仕すること』だと」
サキュバス「私もお母さんからそう聞きました」
優等生「奉仕っていえば、お料理つくったり、お洗濯したり、お掃除したり、寝かしつけたり、そういうのでしょ」
サキュバス「私もそう考えていました」
優等生「貴女の母親がとった作戦だって、そうじゃない。生気を半永久的に奪うために、オスを飼い続けているわけでしょ」
サキュバス「教室で一度説明しましたが、お母さんの戦術はあくまでもエッチなことへ到達するまでのものでした」
サキュバス「ニンゲンの世界へ行き、人通りの多い場所で立ちつづけ、声をかけられるまで待つ。声をかけられたあとはゆっくりできる場所を探して、その場所で会話する」
サキュバス「良いオスだと判断したときは家までいき、更に仲を深め、最終的にエッチなことをしたのです」
優等生「そうよ。そのときに料理とか作ったんでしょ」
サキュバス「きっと違うんですよ。お母さんがしたエッチなことは……きっと、違うんです……」
優等生「あ、あの悪魔のような映像と同様のことを、したっていうの……?」
サキュバス「私は、そう思います……」
優等生「やっぱり、あれは……エッチなことだったのね……。認めたくなんてなかったけど……」
サキュバス「オスのアレをココに出し入れしないといけないんですね」
優等生「入るわけないじゃない!!! あんなものが!!!」
サキュバス「けど、しないとサキュバスにはなれないんですよ!?」
優等生「あんなものを刺すなんてニンゲンはどうかしてるわ!!!」
童貞「お、俺に言われても……」
サキュバス「どうしますか?」
優等生「私たちがしてきたことは何一つエッチではなく、あの映像のことこそがエッチだった……か……」
サキュバス「……」
優等生「……私はやるわ」
サキュバス「え……!?」
優等生「エッチかどうかを見極めるのがサキュバスの宿命。そして見極めてしまった以上、それを実行するのがサキュバスの運命なのよ」
サキュバス「で、できるんですか……」
優等生「私は天才。先祖代々サキュバスの家系に生まれた、天才なの。あれぐらいのことでビビってどうするのよ」
サキュバス「おぉぉ……!! わ、私だって……負けていられません……私も一流のサキュバスになるんです……!!」
童貞(この子たちは普通の学校にいってないのかな……。もしかして悪魔って本当のこと……?)
優等生「そうは言っても、予備知識なしにあんな行為はできないわ。あまりにも危険すぎる」
サキュバス「怪我をする可能性もありますよね」
優等生「ええ。まずは知らないといけない。無知のまま実行なんて無謀にもほどがあるわ」
サキュバス「ここは……」
優等生「そうね。ねえ、少し、その、お願いが、あるんだけど」
童貞「な、なに?」
サキュバス「あの、えっと……ですね……よ、よろしければ……あの、映像をもう一度……みせて……ほしい……なぁ……って……」モジモジ
童貞「あ、あれを……」
優等生「い、嫌とは言わせないわよ!! あんたが無理矢理に見せてきたものなんだから!!」
童貞「別に、いいですけど……」
サキュバス「ありがとうございますっ」
優等生「あの映像だけではなんとも言えないわね。書物も用意して。エッチなことなんのかがよくわかる書物をね」
童貞「えぇ……それは……本って言われても……エロ漫画ぐらいしか……」
優等生「なんでもいいから見せなさい!!」
訂正
>>157
優等生「あの映像だけではなんとも言えないわね。書物も用意して。エッチなことなんのかがよくわかる書物をね」
↓
優等生「あの映像だけではなんとも言えないわね。書物も用意して。エッチなこととはなんなのかがよくわかる書物をね」
童貞「ど、どうぞ」ドサッ
優等生「こんなに書物が……」
童貞(俺、なにやってんだろう……。女の子にこんなのを見せるなんて……。あ、俺、童貞だもんな。場の空気に流されても仕方ないよな)
サキュバス「い、色々あるんですね……」
童貞「お、俺、ちょっと外に出かけてくるから……」
優等生「仕事?」
童貞「仕事は休み……だから……適当に時間、潰してくる……」
優等生「そう」
サキュバス「すみませんであります。気を遣わせてしまって」
童貞「い、いいよ。それじゃ……」
童貞(漫画喫茶にでもいくかな)
優等生「貴女はどちらを見る?」
サキュバス「まだ、刺激が少なそうな書物を……」
優等生「私も本から目を通したいわね。一緒に見ましょう」
サキュバス「は、はい!!」
優等生「こんな年端もいかない小さなメスが……トイレで……オスと……」
サキュバス「おぉぉ……。こ、これ見てください。兄妹でエッチなことをしています」
優等生「家族でエッチなことをするの!? ニンゲンの世界のモラルって一体……」
サキュバス「魔界では考えられませんよね……」
優等生「これを見て。メスがエッチなことを強要されて嫌がっているわ」
サキュバス「それが自然だと思います」
優等生「でも、物語が進むと……」ペラッ
サキュバス「わわわ……。こんなだらしない顔に……しかもピースサインまで……」
優等生「アヘ顔ダブルピースと呼ばれるポーズみたいね」
サキュバス「エッチなことを強要され続けると、メスはこうなってしまうと……」
優等生「ニンゲンに負けたメスの末路ってわけね」
サキュバス「エッチなことって、恐ろしいですね……」
優等生「研修で半数以上が脱落する理由。それはエッチとはなんなのかを知り、同時にその恐ろしさも知ってしまうから、だったのね」
サキュバス「こんな風に堕ちてしまいたくないです……」
優等生「サキュバスとしての尊厳を失うかもしれない。アヘ顔ダプルピース状態なんて、考えたくもないわ」
サキュバス「うおぉぉぉぉ!!!!」
優等生「どうしたの!? 急に大声出さないでちょうだい!!」
サキュバス「す、すごいものをみ、見つけてしまったでありますぅ……」
優等生「アヘ顔や男の娘とかいうインキュバスもどきよりもすごいものなの?」
サキュバス「こ、これ……私たちサキュバスのことを記した書物です……」
優等生「なんですって……」
サキュバス「ほ、ほら。サキュバスと名乗る悪魔がオスの部屋に侵入して……それで……それで……」
優等生「オスはかなり衰弱しているわね……」
サキュバス「おちんぽミルクとかいうのを飲むことでこのサキュバスはお腹を満たしているみたいですね」
優等生「な、なによ、その飲み物。聞いたことないわ」
サキュバス「オスなら誰でも出せるらしいですが……」
優等生「おちんぽミルク……。それを飲むのはサキュバスとしてただしいわけ?」
サキュバス「この書物を読む限りでは」
優等生「なら、それでいいじゃない。あんなものを出し入れするよりはよっぽど楽だし」
サキュバス「いや、しかし、これもオスには裸になってもらう必要がありますが……」
童貞(結局、5時間以上無駄な時間を過ごしたなぁ……。あの子たちはどうなったんだろう……)
童貞「ただいま」
サキュバス「お、おかえりなさいませ、ご主人様」
童貞「え……」
サキュバス「あの、この、卑しいメスにおちんぽミルクをください……」モジモジ
童貞「なにを言ってるの……?」
サキュバス「え……。ダメですか、おちんぽミルク……」
童貞(誘っているのか……? これは誘われているのか……)
優等生「……」
童貞「はっ……!?」
優等生「……い、一度しか、言わないわよ」
童貞「は、はい?」
優等生「わ、私にも、おちんぽミルク、く、ください」
童貞「……」
優等生「これ以上、エッチなことを私たちに言わせるつもりなの!? いいから、早く出しなさい!!」
童貞「そ、そういうわけじゃなくて……」
サキュバス「わかりました。あれをやればいいんですね」
優等生「待ちなさい。ダメよ。サキュバスとしてのプライドはないの」
サキュバス「私たちはまだサキュバス見習いです。プライドよりもサキュバスに成ることを優先します」
優等生「言うじゃない……」
童貞「あの、あれって……?」
サキュバス「自信はありませんが精一杯やるので、見ていてください」
童貞(一体、何をするつもりなんだ……)
サキュバス「……」プルプル
優等生(無理しちゃって。あんたみたいな臆病な子にできるわけが――)
サキュバス「あ、あへぇ……」プルプル
童貞「おぉぉぉ……」
サキュバス「は、はい! これでおちんぽミルク、くださいっ!」
童貞「そ、そんなこと急に言われても」
サキュバス「えぇぇー!? 今のアヘ顔ダプルピースではだめなんですかぁ!? うぅ……確かにあんなポーズ一朝一夕でマスターできるわけないけど……でも……」
優等生「分かった。分かったわよ。私もやればいいんでしょ」
童貞「え……」
サキュバス「い、いいんですか?」
優等生「貴女の言うことも一理あるわ。まだサキュバスになれていないのに、守る矜持なんてありはしないわ」
サキュバス「……」
優等生「一緒にやりましょう。そして、おちんぽミルクをお腹いっぱい飲むのよ」
サキュバス「はいっ!! 私、がんばります!!!」
童貞「あの……」
優等生「よく見ていなさい。私にここまでエッチなことをさせたオスは、貴方が初めてなんだから。光栄に思いなさい」
サキュバス「いくであります!!!」
童貞「い、いえ、ちがう……だから……」
サキュバス「あ、あへぇ……」プルプル
優等生「えっち、さいこぉ……」プルプル
童貞「うおぉぉ……!!」
童貞(俺はどうしたいいんだ……!! 童貞だからわかんねえよぉ……!!!)
サキュバス「んへぇぇ……」プルプル
童貞(待て。こんな顔を真っ赤にして凌辱に耐える女の子を目の当たりにして、俺は逃げるのか……。童貞だからって言い訳して……)
優等生「んほぉぉ……」プルプル
童貞(この子たちはとても純粋なんだ。キスで子供ができるとか考えていたぐらい、純粋な子だったんだぞ)
童貞(俺が訳も分からず、エロ動画やエロ漫画を見せてしまったから、こんな風に偏った知識をもって……)
サキュバス「あへぇ……」
童貞(料理を作ることがエッチだと思っていた女の子を俺は穢してしまったんだ……)
童貞(本当にいいのか。純粋無垢に育ってきた女の子をここまで変えてしまって……本当にいいのか……)
童貞(俺は童貞だ。女の子と付き合ったこともないし、エッチなことだって店でもしたことがない)
優等生「もっとちょうらいぃ……」プルプル
童貞(このままならエッチなことをさせてくれるかもしれない。この子たちなら、きっとおちんぽミルクをあげると言えば、簡単に騙されて……)
童貞(童貞を捨てたい……俺だってこのまま女の子の温もりとかを知らずに仕事に忙殺されて歳をとっていきたくない……)
童貞(でも……でも……!!)
童貞「やめて、ください……。それは、エッチなことではなく、ただのヘンタイ行為ですから」
サキュバス「んほぉぉ……。え?」
童貞「アヘ顔ダプルピースとか、おちんぽミルクとかはヘンタイのすることです。エッチなことでもなんでも、ない」
サキュバス「けど、貴方が見せてくれた資料にはこうして……」
童貞「君たちをヘンタイにしようとしただけなんだよ。でも、君たちはヘンタイになさそうもない。だから、もういい」
サキュバス「わ、私たちをヘンタイに……!?」
優等生「まさか、そんな悪魔級に下種な思考をもっていたなんて」
童貞「エッチなことについては、君たちが言ったことのほうが正しい」
サキュバス「と、いうと?」
童貞「エッチとは、つまり料理や掃除や洗濯のことだ。男に奉仕すること全般をエッチっていうんだ」
優等生「でも、それだけだとアンタの生気を奪えなかった」
童貞「それは、あの……君たちが未熟だから、どかじゃないですか……? よく知らないけど」
サキュバス「未熟だから……」
優等生「サキュバス見習いだし、未熟で当たり前なんだけど……それだと納得できないことも色々……」
童貞「淫魔になりたいなら、もっと料理の腕とかを磨いたほうがいいんじゃないですか。洗濯だって俺の下着は洗えてないみたいだし」
サキュバス「うぐ……。そこを言われると、言い返せません……」
優等生「もう一度、確認するわよ。この書物に描かれていることや、あの映像はヘンタイ行為であって、エッチなことじゃないのね? ホントね?」
童貞「そうです!」
優等生「ふっ。まぁ、最初からそんなことだろうと思っていたけどね。あーっはっはっはっは」
サキュバス「……」
優等生「どうしたの? 貴女も喜びなさいよ」
サキュバス「うおぉぉぉぉ!!!!」
童貞「おぉ!?」
サキュバス「わ、わたし……もう……ヘンタイさんになってしまったでありますぅ……」モジモジ
優等生「ヘンタイ行為をしたっていうのは私たちだけの秘密にするわよ。大丈夫だから出てきなさい」
サキュバス「でも、でも……お母さんに顔向けできません……」
優等生「アンタも、誰にも喋らないように」
童貞「言いませんよ。言っても信じて、もらえないでしょうし」
優等生「なら、いいのよ。さぁ、そろそろ夕食にしましょう」
童貞「あ、作ってくれるんですか? 俺、酷いことをしたのに」
優等生「正直に話してくれたから特別に許してあげるわ。ここまで私を許させたオスはアンタが初めてよ」
サキュバス「恥ずかしいでありますぅ……今なら恥ずかしさで死ねますぅ……」モジモジ
優等生「はい、できたわよ」
童貞「あ、ありがとう」
サキュバス「最後のエッチになりますね」
優等生「ええ。明日で研修も終わりだもの」
童貞「終わりって……」
サキュバス「六日間、お世話になりましたであります」
優等生「色々と勉強させてもらったわ。一応、礼をいっておくわね」
童貞「あぁ、そうなんですか」
サキュバス「あ、でも、今晩はたっぷりエッチさせていただきますので」
優等生「生気を奪い尽くせはしないだろうけどね」
童貞「……」
サキュバス「どうかしましたか?」
童貞「いや、なんでもありません。いただきます」
優等生「ふっ。感謝されるのも今日が最後ね」
童貞(これでいいんだ……。俺は間違ってない……)
サキュバス「では、照明をおとしますよー」
優等生「いつでもいいわよ」
サキュバス「えい!」
童貞「……」
優等生「ふぅー。貴方と寝るのもこれで五度目か」
サキュバス「オスと五回も寝れば、サキュバスとしては上々ではないですか?」
優等生「教官は100回とか言っていたけど、冷静に考えて七日間では無理よね」
サキュバス「できたとしても体がおかしくなると思います」
優等生「エッチは一日10回ぐらいでいいのよ」
サキュバス「朝昼版のお料理に、お洗濯に、お掃除に、いってらっしゃいとおかえりなさいのご挨拶、それから……」
優等生「お風呂にはいったり、一緒のトイレを使ったり、添い寝したり、ね」
サキュバス「一日に10回もエッチしていたなんて……」
優等生「そう考えたら二人で100回はエッチしたことになるわ」
サキュバス「おぉ!! これは教官殿からも褒められますね!!!」
童貞「……」
翌朝
童貞「ん……」
サキュバス「荷物はありませんね」
優等生「とーぜんでしょ。ほら、行くわよ」
サキュバス「はぁーい」
童貞「あ……」
優等生「起きたの? 朝食はそこにあるから」
童貞「あ、ありがとう」
サキュバス「では、そろそろ行きますね」
優等生「もう会うことはないでしょうけど、元気でね」
童貞「あ、はい」
サキュバス「大変、お世話になりましたであります!! それでは!!」
優等生「バーイ」
童貞「……ごはん、食べよう」
童貞「……」モグモグ
集合場所
「どうだったー?」
「ちょー大変だったよー」
「だよねー。私なんてニンゲンのメスと知り合いになってさぁ、そのままエッチなことしちゃったぁ」
「えー!? メスとぉ!? チョーヤバくない?」
「そのメスのほうがエッチうまくてさぁ」
教官「今年は多いほうだな」
サキュバス「到着!」
優等生「ふぅー。疲れた」
教官「二人も戻りましたか」
サキュバス「はっ!!! ただいま戻りました!!」
優等生「地獄からね」
教官「成果はありましたか?」
サキュバス「もっちろんです!!! 100回以上、エッチしてきました!!」
教官「それはそれは……。何人のオスを仕留めたのですか?」
サキュバス「一匹であります!!」
教官「たった一人のオスと100回も……?」
「そのオス、干からびてるんじゃない?」
優等生「それがなんとも生命力の高い人間で。あれは数十匹のサキュバスで取り囲んだとしても、どうなるか」
教官「普通、100回もエッチをすればオスの生気は枯渇するはず……」
サキュバス「図らずもお母さんと同じ方法で生気を吸い取っていったからだと思われます!!」
教官「本当にエッチなことをしたのですか?」
優等生「無論です。オスがいうエッチなことを全て実践いたしました」
教官「そのオスがどうなったのか、興味があります。貴方達の成果のほどを見てみますか。案内してください」
サキュバス「え?」
教官「そのオスのところへ案内しなさいと言ったのです」
サキュバス「はっ! こちらです」
教官(この子のやり方でどの程度、オスの生気を奪えたのか、見ておく必要がある。全く新しい生気収集の方法が生まれたかもしれない)
「100回もエッチだってさ」
「すごいよねー。わたしなんて20回もしてないよー」
駅前
教官「ここで待っていれば、会えると」
サキュバス「はい!」
優等生「噂をすれば……。教官、あのオスです」
教官「どれどれ」
童貞「はぁ……ぁ……」
童貞(美味しいはずの朝食もあまり美味くは感じなかったな……)
童貞(今日、風俗にでも行こうかな……。さっさと童貞捨てよう……)
教官「確かにあの生気のない顔は、貴方達の成果とも言えますね」
サキュバス「ありがとうございます!!」
優等生「ふっ。殺せなかったのは心残りではありますが、それでもこの結果はサキュバスにとって意味のなるものだと思います」
教官「うーむ……」
サキュバス「何か気になることでもあるでありますか」
教官「戻ってからで構いませんので、レポートを提出するように」
翌日 教室
「それでそれでー?」
優等生「そのときは大変だったのよ。オスがヘンタイ行為を映したものを見せてきてね」
「ヘ、ヘンタイ行為って!?」
「もしかして、首輪とかつけて、お散歩するとかぁ? きゃー!!」
サキュバス「いえ、もっとすごいものでした!!」
優等生「オスとメスが裸になって――」
教官「席につきなさい」
サキュバス「おはよございます!! 教官殿!!!」
教官「貴方たちのレポート、読ませていただきました。みなさん、見習いサキュバスとしては、がんばったようですね」
優等生「ふっ。サキュバスとしては基本的なことですけどね」
教官「しかしながら、気になるレポートを提出してくれた者が二名います。あなたと、あなた」
サキュバス「私ですか!?」
優等生「何か問題でも?」
教官「……貴方達、本当にエッチなことをしてきましたか?」
サキュバス「しました!!」
優等生「そこに書いてあるはずですが」
教官「料理を振る舞い、洗濯をし、掃除をした。これだけ?」
サキュバス「手を繋ぎましたし、押し倒しもしました!!」
優等生「添い寝だってしましたが、なにか?」
教官「はぁ……」
「マジで……?」
「ヤバくない?」
「うそー……」
サキュバス「えっと、あの、なにか……?」
教官「全然、なっとらん!!!」バンッ
優等生「ひっ」ビクッ
教官「七日間もありながら、お前たちは何一つ学んでいないではないか!!! えぇ!!!」
サキュバス「お、お言葉ですが教官殿!! これでもたくさんのことを学びました!! レポートにもそれは記述があります!!」
教官「ええ。目を覆いたくなるほどのヘンタイ的な文言が並んでいますね。しかし、エッチなことが何一つ書いてないですよ。どういうことですか」
優等生「オスからはエッチなことについて教えてもらいました」
教官「騙されたのですよ。オスに。まんまと」
サキュバス「え……!?」
教官「そのオスはきっと貴方達がサキュバスであることに気が付き、嘘の情報を流したのです」
サキュバス「つまり、それらはエッチなことではないと?」
教官「全然、違います。全く、オス相手に手玉にとられるとは……。サキュバスとしては落第と言わざるを得ません」
優等生「待ってください!! それではエッチとはなんなのですか!! 私はオスに奉仕することだと教わりました!!」
サキュバス「私もであります!!」
教官「その奉仕の意味を間違えているのですよ」
優等生「では、一体……」
教官「その意味を知ってもらうための研修だったのですが……。まぁいいでしょう。第二回の研修もあることですし、教えておきましょうか」
サキュバス「お願いします!!!」
「はぁーい。エッチなことが何か、ちゃんと調べましたー」
教官「では、答えてみてください」
「オスにキスすることでーす」
サキュバス「キス!?」
優等生「あーっはっはっは。それはありえないわ。キスなんてそのオスと永遠の愛を誓ったときに初めてするとお母様が――」
教官「その通り」
優等生「な……!?」
「あと胸を押し付けるように腕に抱きつくとかもエッチなことだよねー」
「そうそう。あとM字に開脚するのもエッチなことじゃん」
「耳に息を吹きかけるとかもあるし」
教官「うんうん」
「胸の谷間を見せてあげるのは?」
教官「それはヘンタイのやることです」
サキュバス「そんなにエッチなことが……!!!」メモメモ
教官「ともかく、キスはエッチの基本にして絶対。これをできないサキュバスはいくら努力しても生気は奪えない」
優等生「あのオスの生気は見事に奪っていましたが」
教官「そこは不思議なのです。どのようなオスにも通用するのか、実験が必要になりますね」
サキュバス「ううむ……M字開脚はいいとして、流石にキスは……。お母さんとかっこいいオスは毎日キスしてるけど、あれはお母さんだからできるわけで、私は……」
教官「次回の研修ですが、実験的になります。殆どの者にはこのレポートに書かれた内容と同じことを行うように」
「これするんですか?」
「オスにここまで優しくできるかなぁ」
教官「貴方達は他のサキュバスが行ったエッチ行為をするように」
サキュバス「これを全てでありますか!?」
優等生「待ってください!! 流石に体の負担が大きいです!!」
教官「これらはすべて基本。基本的なエッチができないサキュバスに未来はありません」
サキュバス「ぐっ……!!」
優等生「教官。では、研修初日に捕えたオスとはエッチしたのですか」
教官「私はサキュバスの教官ですよ。キスどころではありません」
「マジっすか!?」
「どんなことしたんですかー!?」
教官「キスするときに舌をいれてやりました」
「きゃー!!! ヘンタイ一歩手前のエッチー!!」
サキュバス(お母さん……私はダメな子です……。エッチの基礎すらわかってなかった……でも、次こそは……必ず……!!)
数週間後 駅前
童貞「つかれた……」
童貞(あれから結局、風俗もいけないし……もう一生童貞かな……俺……)
サキュバス「いた!! いましたよ!!」
童貞「え?」
優等生「待ちなさい!! 同じオスを選ぶってどうなのよ!?」
サキュバス「慣れた人のほうがエッチしやすいって、レポートに書いてます」
優等生「それはそうなんだけど……」
童貞「君たちは……」
サキュバス「お久しぶりであります!!!」
童貞「どうしたの?」
サキュバス「今日から第二回目の研修なのでありますが、こんなにも課題を渡されてしまいまして」
童貞「はぁ……大変ですね……」
優等生「で、アンタで全部消化しようかと、このバカが提案したのよ」
サキュバス「えへへ。結構、名案だと思ったんですが」
童貞「消化って……?」
サキュバス「無論、エッチなことであります!!」
童貞「また料理とか、そういうの?」
優等生「違うわよ。同じことを同じオスでするとでも思うわけ?」
童貞「それって……」
サキュバス「今度は正真正銘のエッチを、させていただきたいのであります」
優等生(前回は運よく生きながらえたみたいだけど、今回は本当にエッチする。今度こそ、生気を奪い尽くしてやるわ」
童貞「マ、マジで?」
サキュバス「はい。なので、私もかなり緊張しているであります。ほら、こんなにも手に汗が」
童貞「そう、なんだ……」
優等生「そんなことより例の台詞を。やっとスムーズにいえるようになったでしょう?」
サキュバス「はい。では、僭越ながら、私が。――たくさんエッチなことしてあげる。うふふふ」
童貞「おぉぉ……ついに……脱童貞か……」
サキュバス(お母さん!! 私はこの研修を成功させてみせる!!! キスも頬ぐらいならなんとかなるし!! 絶対、一流のサキュバスになるからね!!)
おしまい
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