穂乃果「私はただの傍観者」 (18)
梅雨が明けて、いよいよ夏らしくニュースなどで真夏日などという単語を見かけたりするようになった初夏のこと。
「暑い暑い暑い~~」
燦然と照りつける太陽を睨めつけながら私は言った。
「暑いって…。夏だから仕方ないでしょ、それにそんなに暑いって言ってると余計暑く感じるじゃない。」
確かに言われてみればそうだ。前に海未ちゃんに同じことを言われた気がする。
(真姫ちゃんは暑くないのかな…?)
ちらりと横を見る
本当に涼しそうな顔をしている。
しばらく見つめていると見られているのに気づいたようで面倒くさそうな顔をして
「何ジロジロ見てるのよ…。」
と言った。
その顔を見ていて、こういう顔をした時の真姫ちゃんは弄りがいがある、と希ちゃんがこの前話していたことを思い出した。
(ちょっといたずらしちゃお)
思い立ったら即行動である。
昔から考えるより先に体が飛び出してしまう性分なのだ。
私の中でいたずらをするときはくすぐりかわしわしで定評がある。
どちらもやる分にしては相手の反応が見れて楽しいのだが、どうにもどちらをやるか迷ってしまう。
「今度は何変な顔してるのよ」
さすがまきちゃん、鋭い。
いや、私の顔に悪巧みって書いてあったのかもしれない。
どちらにしようか迷って、真姫ちゃんの顔を凝視していると顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
わしわしをされた後の海未ちゃんほどではないが、なかなか可愛らしい反応だ。
(うん、こういうときはわしわしにかぎるんやって希ちゃんも言ってたよね!ファイトだよ!)
悩んだ末、希ちゃん直伝のわしわしを叩き込むことに決まった。
どうやるか、それが問題だが今はそっぽを向いてるので、案外らくにできそうだ。
私はわしわしの構えをとり、オーバーなモーションで真姫ちゃんの背後に回り、
指をくにゃくにゃ動かしながら真姫ちゃんの背中に抱きつき、わしわしを仕掛けた。もちろん、周囲に人はいない。
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『わしわしわし〜」
そう言いながら真姫ちゃんの柔らかいな乳房を制服の上から揉む。
初めて真姫ちゃんをわしわししたが、制服越しなのにこんなに柔らかいとは思わなかった。
(私と同じぐらいのはずなのに…。)
少し敗北感を感じた。これ以上わしわしをすればせいしんえいせいじょーよろしくないと思い、ラストスパートをかける。
すると、動きが変わったのがわかったのか、真姫ちゃんの・がより一層赤くなった気がした。
さらに動きを早めていくといい加減疲れたのか
「穂乃果、そろそろやめて…。」
ため息混じりにそういった。
本人はとても恥ずかしいということを隠しているのか、トマトみたいに顔を赤くしながら、澄まし顔でこちらを見ている。全く、可愛い後輩である。それでこそ弄りがいあるというものだ。
手の動きを止めて背後から抱きしめながら、耳に顔を近づけ小声で
「真姫ちゃん、またして欲しかったら言ってね」
と少し色っぽさ?を出して言う。
しばらく硬直した後顔の色をさらにトマトに近づけながら(とまとというよりはリンゴに近いが)ほ、ほ、ほほほ、と何やらブツブツ言っている。
それを見ながら達成感を感じていたら急に真姫ちゃんは大口を開けて
「穂乃果のバカァああああ」
と、大声で叫び
そして更に
ぱしいいいん
と、強烈なビンタをわたしにおみまいした。
「イタタタタ.…」
私は保健室にいた。
保健室には海未ちゃんとことりちゃんと真姫ちゃんがいる。
・に手を当て痛がっていると、
「自業自得です!」
いつもの説教面をしながら、海未ちゃんが声を張り上げた。
そしてまきちゃんの方を見た瞬間、
表情一変にこやかな、それでいて慈愛に満ちた笑みを向ける。俗に言う顔芸である。無論、自覚はない。けっこう、かなり面白い。
海未ちゃんは気づかなかったかもしれないが、真姫ちゃんも怒った顔をしているのに一瞬笑いそうになっていた。
この真姫ちゃんの表情の機微は真姫ちゃんマイスターである私(と希ちゃん)にしかわからないだろう。
「別に怒ってないわよ」
あくまで怒った表情は崩さず(むしろ笑いをこらえてそうなっている)に冷たくそういった。私に対しては演技が下手になるのかもしれないな、と嬉しく思いながら、ニコニコと真姫ちゃんを見つめる。
またもや真姫ちゃんは顔を赤くする。
そして澄まし顔である。
そしてその仕草がまた、可愛らしいのである。
ことりちゃんも様子が変わったのに気づいたのか
「どうかしたの真姫ちゃん?」
と患者をいたわるような声で言う。
あくまで、怪我をしてるのは私だけれども。
すると、今度は不思議そうな顔をして海未ちゃんが
「え?どうかしたのですか?真姫」
と素っ頓狂な声で言う。どうやら、これすら気づかなかったようである。
このままだと海未ちゃんは将来独身かもしれない。
初めてなので、色々アドバイスがあったら教えてください
・・は顔です
「ぷふっ…海未っ…。別にどうもしてないわ。」
それほど海未の反応がおかしかったのか、いつの間にかトマトのように赤かった顔が元の美白とも言える白色に戻っていた。
「それならいいのですが…」
こんなにも表情が変わっているのによく気づかないなぁ、流石はトランプが弱いだけのことはある。呆れ半分関心半分といったところだ。
「あ、そういえば穂乃果。あなたのせいですっかりやろうと思ってたことを忘れてたを。音楽室で待ってるから、痛みが治まってきたらなるべく早く来なさいよ。」
「うん、さっきはごめんね真姫ちゃん。」
「別にいいわよ、穂乃果のことだから仕方ないわ、どうせ希に仕込まれたってところでしょ。」
呆れつつ笑いながらそう言った。
「じゃあ、私は行くわ。待ってるわよ、穂乃果」
「うん、じゃあまた後で」
「今日は練習は休むから…。さよなら2人とも」
「バイバイ♪真姫ちゃん」
「さようなら、真姫」
笑顔で別れの挨拶をして真姫ちゃんは保健室から出て行った
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