杏子「イチゴリゾット」 (44)

杏子がマミさんと別れた後の話です。The different storyにミチルが出てたので、かずマギのキャラも出ます


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和紗ミチル

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飛鳥ユウリ

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杏子「――あたしは風見野に戻る。これからはあたしのやり方で戦うよ…….今まで世話になったね」


マミ「……佐倉さん。あなたは私にとって初めて志を共に出来た魔法少女だった」


マミ「他の魔法少女とは違うって信じてた」


マミ「本当にそれでいいの?」


マミ「一人で平気なの?」


マミ「あなたは――孤独に耐えられるの?」


杏子「………っ」


杏子「…あんたと敵対するより、ずっとましさ」


マミ「……っ…佐倉…さん…」


杏子(これからあたしは、自分の為だけに魔法少女の力を使う。だからマミさんとは一緒に戦えない)


杏子(…あんたなら、きっと良い仲間が見つかるさ)


杏子 (さよなら…マミさん)

ーーーーーーーー
ーーーー
ーー


ーー数週間後・魔女結界内ーー


魔女「ーーーーーーーー!」


杏子「ちっ、しぶとい野郎だ!」


杏子「おらっ!さっさとくたばりやがれ!」


魔女「ーーーーーーーー?!」


杏子「ふんっ!」


魔女「ーーーーーーーー!!」ドカーンッ


杏子「ふぅ………やっと死んだかか」


杏子「…っ痛。……畜生、一発かすってやがったか」


杏子(幻惑魔法も使えず、単独での戦闘。分かっちゃいたが中々慣れないもんだな…)


QB「流石だね杏子。見事なもんだよ」


杏子「ふん、当たり前だ。あたしが、こんな雑魚にやられるわけないっての」


QB「正直な話、能力が使えなくなった君は、もう長くないと思っていたんだけどね」


杏子「馬鹿いうな。能力が使えなくたってあたしは戦える」


杏子(そうさ…あたしは一人でも戦えるんだ)


QB「まあ僕としても杏子が死ぬのは魔法少女としての損失だからね。これは望ましい事だよ」


杏子「そうかい。そりゃあ、よかったよかった」


QB「じゃあまたね、杏子」タタッ


杏子「……………」


杏子(損失ね……あたしが死んだってもう悲しむ奴はこの世に――)


――佐倉さん。


杏子(………もうあいつは関係ないんだ)ブンブン


杏子「ちっ…………後一匹狩って終わるか」


ーーーー
ーー


杏子「魔女はここか…」


杏子「…?結界が歪んでいる?」


杏子(…他の魔法少女か?だったら少しめんどくさいな…)ダッ


ーー魔女結界内ーー


ユウリ「えいっ!!」


魔女「ーーーー!!」ドカーン


ユウリ「ふぅ。やったか」


ユウリ( まさか治療中に魔女が現れるなんて予想外だった)

ユウリ「………!誰?!」


杏子「………」


杏子(あの格好、やっぱり魔法少女か?見たことない奴だな………。側に倒れているガキは何だ?)


ユウリ「…あんた、魔法少女?残念だけどここの魔女は倒しちゃったよ」


杏子「そうかい……まあ魔女はいいさ。だけどお前ははここら辺じゃ見たことないな。どっから来たんだ?」


ユウリ「……あすなろ市よ」


杏子(あすなろ….なんでそんな所からわざわざ?縄張りを奪いに来たのか?)


杏子「そりゃ遠くからご苦労なこった。で、風見野に何のようだい?」


ユウリ「……ちょっと用事。魔女と出会ったのはたまたま。で、用事はもう終わるから直ぐに出て行くわ」


杏子「ふーん…」


杏子(まあ出て行くなら、無理にこっちから手を出して追い出す事もないか)


ユウリ「……….……ん」


少年「ん……うう….」


杏子(何だ?ガキにソウルジェムをかざして何をやっているんだ?)


ユウリ「…………ふぅ」


少年「…………う…ん」


少年「…あれ?ここは?お姉ちゃん誰?」


ユウリ「ふふっ、君は外を散歩中にベンチで寝ちゃったの。さ、早く病院に戻らないと。怒られるよ?」


少年「あ、そうだった!じゃあね、お姉ちゃん!」


ユウリ「バイバイ」ヒラヒラ

杏子(病院?あいつはあのガキに一体なにを……ソウルジェムをかざす?…まさか)


ユウリ「ふぅ…用事は済んだよ。じゃあ」


杏子「…アンタ、あのガキに何をしていたんだ?まさかソウルジェムの力で病気でも直していたのかい?」


ユウリ「…それが何か?」


杏子「いや、別に。ふーん、人の病気を…….ね。つー事は差し詰め魔法少女になったのも誰かの為ってところか」


ユウリ「は?だからそれが何なんだよ。魔法少女が皆の幸せを守って何が悪いの?」


――みんなの幸せを守る。それがあたしの願いなんだ。


杏子(…….っ?!)


杏子「………………ちっ。くだらねえ」ボソッ


ユウリ「………は?!おい、あんた今なんて言った?くだらないっていったな?」


杏子「….………そうだよ。くだらねえ。他人のために願うなんてくだらねえよ!」


杏子「魔法なんて自分の為だけに使うもんなんだよ!」ジャキッ


ユウリ「…….何をそんなに怒っているのか分からないけど。先にしかけたのはアンタだよ」


ユウリ「あたしの願いを侮辱した罰は受けてもらうよ!」ジャキッ

ーーーー
ーー


ユウリ「ふっ!」ガガガッ


杏子「くっ……」


杏子(注射器のガドリングガン、拘束用の包帯――マミと同じ遠距離型か!)


杏子(くそっ……こいつ、強い。近づけねぇ…)


杏子(ちっ、幻惑の魔法が使えれば……)


ユウリ「隙ありっ!」ガガガッ


杏子「ぐっ…うわああ?!」


ユウリ「…………」


ユウリ「…………………はぁ。やめた」


杏子「おい?!まだ勝負は決まってねえぞ!」


ユウリ「もういいよ。結果なんて分かりきっているでしょ。なんなのアンタの動き?なんて言うかチクハグでめちゃくちゃだよ」


杏子「……っ」


ユウリ「良く今まで生きてこられたね。……喧嘩を売るんだったらもう少し強くなってからにしな。じゃあね」スタスタ


杏子「くっ…………待て!」


杏子「あぐっ!」ズキッ


杏子「………………」


杏子「………………畜生。何なんだろうな。あたしは……」

ーーーー
ーー

ーー数日後ーー


魔女「――――――」ヒュンッ


杏子「すばしっこい奴だな…。どこまで逃げやがる!」


魔女「ーーーー」ヒュンッヒュンッ


杏子(マズイな、このままだと風見野を出ちまう。こっちの方角は……ちっ。あすなろ市か…)


杏子「くそっ、待ちやがれ!」


ーーあすなろ市ーー


杏子「おらっ!」


魔女「ーーーーー!?」ドガッ


杏子「とどめだあぁぁ!!」


魔女「ーーーーーー!!」グシャッ


杏子「ふ、ふぅ。やったか……手こずらせやがって」


杏子「結局………あすなろ市まで来ちまったか…」


杏子(魔女の野郎。嫌な場所に逃げやがって…)


杏子「…………」グウゥゥ


杏子「腹減ったな……」




杏子「………あ、林檎園だ…」


杏子(林檎…か….)


杏子「…………?」


杏子(誰かいる………二人?あの格好は魔法少女か?こんな所で何してんだ)


魔法少女1「あー、マジムカつくわ。あのジジイ」


魔法少女2「ぶっ殺しても良いけどめんどうだからね。ま、気晴らしでもする?」


魔法少女1「そうだなー」グシャッ


魔法少女2「お、ナイスショット。じゃあわたしもー」グシャッ


杏子「?!」


杏子(あ、あいつら林檎を潰して!遊んでやがるのか?!)


杏子(ふ、ふざけんな!)ジャキッ


杏子「うおりゃあああ!!」


魔法少女1「?!」


魔法少女2「?!」


杏子「くそっ…外したか」


魔法少女1「危ねえ危ねえ…何だお前は?」


魔法少女2「ここらじゃみない顔ね?」


杏子「…おい。お前らさっき何をしていた?」

魔法少女1「は?さっきて……この遊びの事か?」グシャッ


杏子「おいっ!やめろ!食べ物を粗末にするんじゃねえ!!ぶっ殺すぞ!」


魔法少女2「え…何、そんな理由で私たちに襲いかかって来たわけ?馬鹿じゃないの?」


魔法少女1「まあまあ。んー、どうやらこいつは私たちと戦いたいみたいだね」ジャキッ


魔法少女2「あ、じゃあ、気晴らしを邪魔された代わりに遊んでもらおうか」ジャキッ


杏子「かかって来い!後悔させてやる!」ジャキッ


ーーーー
ーー


魔法少女1「おらぁ!」ドカッ


杏子「くっ」


魔法少女2「はぁ!」ドカッ


杏子「うぐぁっ……!」


魔法少女1「ふ、ふぅ。中々手こずらせやがって…」


魔法少女2「ひ、一人にしては中々やっかいだったわね…」


杏子「く……」


杏子(ち、畜生……動けねぇ)


魔法少女1「さて、どうしてやろうか…」


??「はっ!」バシュウッ


魔法少女1「くっ?!」


魔法少女2「な、なに?!誰?!」


??「何やってるの!貴方たち!」


杏子(だ、誰だ……え……リボンに…マスケット銃…?)


杏子(くそっ…駄目だ…意識が……)




??「――――リーミティ・エステールニ!」

ーーーーーーーー
ーーーー
ーー


杏子(……………ん……?)


杏子(………いい匂いがする…)ガバッ


杏子(あれ?ここは……何処だ…?)キョロキョロ


杏子(あたしは……あいつらと戦って……誰かが来て…)


??「おはよう。どう、体の具合は?」


杏子「え?!……あ、あんたは?」


ミチル「ん?わたし?わたしはミチル。あなたと同じ魔法少女だよ」


杏子「魔法少女…。そうか、あんたが助けて…」グウゥゥ


杏子「あ……」


ミチル「あはは、お腹が空いているんだね。じゃあまずはご飯にしよっか!」


ーーーー
ーー


杏子「う、うめぇ!」ガツガツ


ミチル「ふふ。グランマ直伝のイチゴリゾット。気に入ってもらえてよかった」


杏子「ふぅ…ご馳走様!ありがとう!こんなに美味いのは初めて食べたよ!」


ミチル「そういってもらえると、きっとグランマも喜んでいるよ。…うん。ちゃんとご飯粒も残してないね」

ミチル「さて、そろそろあなたの事も教えて欲しいな」


杏子「あ、うん…。あたしは佐倉杏子。風見野で魔法少女をやってるんだ」


ミチル「風見野かあ。でも何であすなろまで来たの?」


杏子「魔女を追っていたらいつの間に来ちゃったんだ…」


ミチル「ふーん……そういえば何であの魔法少女達と戦っていたの?2対1なんてよっぽど腕に自信がなきゃ勝てないと思うけど。ましては知らない土地なのに」


杏子「………それは…」


ミチル「まさか、死にたがりさんじゃないよね?」


杏子(死にたがりか……ある意味そうなのかも知れないな)


ミチル「……もしかして林檎を粗末に扱う二人が許せなくて手を出した…とかかな?」


杏子「?!」


ミチル「……あの二人は前からああいう事をする娘達だから、もしかしてと思ったんだけど、図星みたいだね」


杏子「…………」



杏子「……あいつら林檎で遊んでやがったんだ。それを見たらついカッとなっちまって」


かずみ「にしても二人に挑むのは無謀だよ。私がこなかったら死んでたかもよ?」


杏子「……ごめん…」


杏子(また、あたしは…他人に迷惑ばかりかけてるな…)


杏子「…助けてくれてありがとう。あたしそろそろいくよ……痛っ」ズキッ

ミチル「あ、駄目だよ。怪我をしているんだから…」


ミチル「…杏子、怪我が治るまでここにいていいよ」


杏子「え、でも……」


ミチル「私ね、実は杏子に一つ謝らなきゃいけないんだ」


杏子「え?」


ミチル「さっき、杏子に死にたがりか、って聞いたけど本当は違うって分かってたんだ」


ミチル「お腹が減っていてご飯を食べたいと感じられるなら、その人はまだ生きたいと思っている証拠なんだよ」


杏子「…………あたしは」


ミチル「きっと何か辛い事があったんだろうけど、私は杏子に生きていて欲しいな。今食べた命の為にもね」

ミチル「グランマが言ってたんだ。ヒトは生きるためにご飯を食べる。だからその分まで生きる義務があるって」


杏子「生きる…義務」


ミチル「まあ、とにかく怪我が治るまでゆっくりしていきなよ。服とかも貸すしさ」


杏子「….…なんでミチルはあたしにそこまでするんだ。余所者の得体の知れない魔法少女なんだよ?」


ミチル「《パンを踏んだ娘は地獄に落ちる》。だけど食べ物を大事にする人に悪人はいないんだよ。だから…….林檎の為に怒った杏子は悪い人じゃないかなってさ」


杏子「…なんだそりゃ」


ミチル「私の持論だよ。杏子は食べ物を大切にする人だよね。リゾットのご飯粒も残さなかったし」


杏子「そりゃ…まぁ…」


ミチル「助ける理由はそれで十分!さぁ、怪我人はベッドに戻る!」グイグイ


杏子「わ、分かったよ。押すなって…」


杏子「……………ミチル」


ミチル「ん、何?」


杏子「その……ありがとう」


ミチル「…どういたしまして!」ニコッ

ーーーー
ーー

ーー数日後ーー


ミチル「もう、動いて大丈夫なの?」


杏子「ああ。ミチルのおかげですっかり良くなったよ」


ミチル「そっか、良かった」


杏子「あ、それでさ。魔女を倒すのを少し手伝わさせてくれないかい?もちろんグリーフシードは自分で集めるからさ」


ミチル「え、いいの?」


杏子「ああ。怪我中にグリーフシードの世話までしてもらったんだからこれぐらいはさせてくれよ」


ミチル「…分かった。じゃあ、よろしくね!杏子!」


杏子「うん……あ///」グウゥゥ


ミチル「あはは。魔女退治はご飯食べてからにしようか」


杏子「…う、うん///」


ミチル「杏子ってもしかして食いしん坊?」


杏子「ち、ちげえよ!」

ーーーー
ーー

ーー魔女結界内ーー


魔女「ーーーー」


杏子「よし。じゃあ打ち合わせ通り、あたしが前に出るよ!」


ミチル「うん、分かった!怪我明けなんだから無理はしないでね!」


杏子「ああ!」ダッ


ーーーー
ーーーー

杏子「ふっ!」ザシュッ


魔女「ーーーーー!?」


杏子(中々硬い奴だな…)


魔女「ーーーーー!!」ブンッ


杏子「おっと、当たらないよ!」


杏子(だけど、こっちは2対1だ!)


杏子「ミチル!」


ミチル「うんっ!」バシュッ


魔女「ーーーー?!?」


杏子「よし、もう一息だ!」


ミチル(……なんだろう。杏子がいると凄い戦いやすい。まるで杏子は二人で戦うことに慣れているかんじだね)


ミチル(誰かとペアを組んでいたのかな?)

杏子「よし、一気に決めるぞ!おらああああ!!」ドガッ


魔女「――――?!?!」


杏子「よし、ミチルっ。決めてくれっ!」


ミチル「うんっ!――リーミティ・エステールニ!!」


杏子(り、りーみてぃ・えすてーるに??)


魔女「ーーーー!?」ドカーンッ


ミチル「ふぅ……やったね!杏子!あなたのおかげでスムーズに倒せたよ!」


杏子「あ、ああ…」


ミチル「ん、どしたの杏子?」


杏子「いや、さっきのえーと。りーみてぃ……」


ミチル「リーミティ・エステールニ?私の必殺技だよ!」


ミチル「私の恩人のお姉さんのリスペクトだよ!イタリア語なんだ!」


杏子(ま、まさか……)


杏子「あー…….もしかしてその人って金髪で髪がクルクルしてる人か?」


とりあえずここまで
寝る

ミチル「…?!そうだよ!杏子もしかして、知り合いなの?!」


杏子「あー、知り合いっつーか……まあ知り合いだな…」


杏子(まじかよ……まあでも、マミのお節介癖ならありえる話か….)


ミチル「本当に!?あのお姉さん何処に住んでいるの?今も元気にしてる?」


杏子「見滝原で今も魔法少女やってるよ。多分元気にしてるんじゃないかな……。ミチルは助けられたのか?」


ミチル「うん…前に魔女に襲われている時にね。あ。な、名前教えて欲しいな…」


杏子「巴マミだよ」


ミチル「巴マミ…マミさん。そっか。今も元気でいるのね…よかった」


杏子「…………」


杏子(リーミティ・エステールニ…か…)


――佐倉さん、必殺技の名前考えてきたの!ロッソファンタズマよ!


杏子(………ちっ)

ミチル「杏子。マミさんが住んでる場所とかって分かる?」


杏子「……悪い。そこまで深い知り合いじゃないんだ」


ミチル「…….…?そ、そっか」


ミチル(………杏子?)


ーーーーーーーー
ーーーー
ーー

ーー数日後ーー


ミチル「ごほっ……ごほっ…」


杏子「お、おい。大丈夫か?」


ミチル「う、うん….…ちょっと辛いだけ。よ、よし。じゃあ魔女退治に……けほっ、けほっ!」


杏子「バカ!何が大丈夫だよ!熱があるじゃねえかよ………ほら、寝てろ!」


ミチル「あうう……。この前雨の中濡れて帰ったのが仇になったね…」


杏子「今日はあたしがグリーフシードとってくるから」


ミチル「うう…でも、悪いよ…」


杏子「悪いも何も…。あたしも怪我の時、世話になったんだ。じゃあ行ってくる!」


ミチル「ごめん……気をつけて…」

ーーーー
ーー

杏子「おらっ!くたばりやがれ!」


魔女「ーーーーーーーー・・」ドカーンッ


杏子「ふぅ……こんかもんかな…」


杏子(グリーフシードも集まった事だしそろそろ帰るか…)


??「ねぇ?あんたここで何してんの?」


杏子「誰だ?! っ………お前は」


ユウリ「…覚えてくれていたらしいね。はるばる風見野から、あすなろまで何の用事?」


杏子「……お前には関係ない」


ユウリ「関係なくないんだよね。ここ、あたしの縄張りだしさ。まさか、この前の仕返しに来たの?」


杏子「……いいから、どけよ」


ユウリ「どいて欲しかったら、目的を言ってよ」


杏子「…………」


ユウリ「…言えないなら体に聞くしかないかな」ジャキッ


杏子「…….上等だ、やってみろよ」ジャキッ

ーーーー
ーー


ユウリ「はっ!」ドガガ


杏子「くっ……」


杏子(啖呵を切ったのはいいけど……魔女の後の連戦はキツイな…)ゼェセェ


杏子(だけどミチルが待っているんだ。もたもたしてられねえ!)


杏子「おらっ!」ブンッ


ユウリ「………」


ユウリ(こいつ…前と全然動きが違う。前は意思が感じられなかったのに、今は何か意思を感じる)


ユウリ(……そういえば、前の時なんでこいつはあたしに噛み付いたんだ?)

杏子「よそ見してんじゃねぇ!」シュッ


ユウリ「…….…」ヒョイッガシッ


杏子「なにっ!く、くそ、離しやがれ!」


ユウリ「あんた…….前に他人の為に魔法を使うのはくだらない、って言ったよね。それは何で?」


杏子「あ?!何だいきなり?!」


ユウリ「苦しんでいる人々を魔法で救うことの何が駄目なの?」


杏子「………てめえは魔法で救った気になっても、実際はどうなんだろうな。本当に救った奴らはみんな苦しみから解放されるのかよっ!」ガンッ


ユウリ「ぐっ………。どういう事よ…」


杏子「さあな…自分で考えな…くっ」フラッ


杏子(….…ちっ。目の前が霞んで来た…)


??「ふ、二人ともやめて!!」


ユウリ「え……み、ミチル?」


杏子「…ミチル?!な、なんで….ここに….」


ミチル「だ、大丈夫?杏子…」


ユウリ「え、こ、これは……どういう事なの?あんたこいつと知り合いだったの?」


杏子「な、何だ?いったいどうなってやがる……」


杏子(くそ、ダメだ……限界だ…)バタリ

ミチル「き、杏子……」フラフラ


ミチル(あれ、目の前が……)


ミチル「ごめん、ユウリ……私と杏子を家まで連れてって……」バタリ


ユウリ「は?お、おい。ミチル!」


ミチル「」


杏子「」


ユウリ「な、何なんだよ……いったい」


ーーーー
ーー


ミチル「ん………う、うん。ここは……私の家…」


ユウリ「おはよう、ミチル。鍵は勝手に借りたよ」


ミチル「ユウリ…あ、き、杏子は?」


ユウリ「隣で寝ているよ。大丈夫、怪我はあたしが魔法で治療しといた」


杏子「すー、すー」zzz


ミチル「よかった…ありがとう。ごめんね、ユウリ」


ユウリ「それで…今回の出来事を説明してほしいんだけど」


ミチル「ああ、えっとね――」

ーーーー
ーー


ユウリ「――なるほどね。林檎園でか」


ミチル「うん….ユウリも杏子と知り合いだったんだ」


ユウリ「知り合いっていうか…前に一悶着あっただけだよ」


ユウリ「まあでも、ミチルの知り合いに手を出しちゃったのはごめん。あたしも冷静じゃなかったね…」


ミチル「ううん、ユウリの事を言ってなかった私が悪いんだよ。杏子にも悪い事しちゃったな……ごほっ、ごほ!」


ユウリ「ほ、ほら無理すんな。お前も病人なんだから……無茶しやがって…」


ミチル「ごめん…こほっ、こほっ」


ユウリ「…….なぁ。こいつは他人の為に魔法を使う事について何か思う所があるらしいが、ミチルは何か聞いているか?」


ミチル「分からない……でも多分、前に何かあったんじゃないかな。昔の事になると少し言い淀む時があるから…」


ユウリ「んー….……ん? こいつのリボンの中….これは十字架か?」


ミチル「あ、本当だ」


ユウリ「十字架………。あ!?ねぇ、ミチル。こいつの名前、佐倉杏子だよね」


ミチル「う、うん。そうだけど…どうしたの?」


ユウリ「ちょっとパソコン借りるよ。…….………やっぱり….。ミチル、これどう思う」


ミチル「え? な、何……………え………こ、これって」


ユウリ「少し前にあった風見野市で起こった教会の火災。警察は現場の状況から一家による無理心中と決定。長女を除く三人除く遺体が見つかった。名前は佐倉――か…」


ユウリ「…こいつは前にあたしに言ったんだ。他人の為に魔法を使うのはくだらないって。さっきは願いが他人の為になるとは限らないって言ってたかな…….」


ミチル「き、杏子の願いのせいで家族は死んだって言うの?」


ユウリ「さぁね……ただ、願いに否定的なのは、そういう事なんだろう……」


ミチル「そ、そんなの………そんなの酷すぎるよっ」


ユウリ「うん……あたしも、それはあんまりだと思うよ…」


ミチル「杏子っ……」


ユウリ(他人の為の願い…か。あたしもミチルも、そういう意味では同じなんだよね…)


ユウリ「ねぇ、ミチル。この娘にさ――」

ーーーー
ーー


――ねぇ、おとうさん。みんな何処にいくの?



――あたしは魔女じゃないよ!あたしは悪いことなんかしてないよ!


――おとうさん、おかあさん、モモ……あたしを置いてかないで


――あたしも連れてって!あたしをひとりにしないでっ!

ーーーー
ーー


杏子(……………)パチッ


杏子(夢……か)


杏子(…ここは。ミチルの家…)


杏子(あれ?体が痛くない…)ムクッ


ミチル「杏子、おはよう…」


杏子「あ…ミチル。ごめん…あたし」


ミチル「ううん…気にしないで。さ、それよりお腹空いたでしょ。まずは、ご飯にしよう」


杏子「え、ご飯って。だ、誰が作るんだ?」


杏子(ん….イチゴリゾットの匂いがする)


ミチル「それは心配ないよ、今日はシェフがいるからね」


杏子「し、シェフ?」


ユウリ「どうも…お待ちどうさま」


杏子「な……て、てめえは」


ユウリ「ごめん!」ペコリ


杏子「へ?」


ユウリ「あたし、アンタの事を誤解してたよ……」

ーーーー
ーー


杏子「…そうだったのか。ミチルの友達」モグモグ


ユウリ「ああ。ま、ミチルは友達って言うより恩人なんだけどね」モグモグ


杏子「さっきは、あたしも悪かったよ。ちょっとカッとなちまってね。ごめん……えーと…」


ユウリ「飛鳥ユウリ……ユウリでいいよ」


ミチル「杏子。ユウリは天才料理人なんだよ!」


ユウリ「み、ミチル。あ、あたしはそんな大層なもんじゃないよ」


杏子「いや、でも美味しいよイチゴリゾット。なんつーか、暖かい味がする」


ミチル「むー、教えたのは私だからね。イチゴリゾットだけはユウリに負けないんだから…」


杏子「別に張り合わなくても…」


ユウリ「そうだ。怪我の具合はどう?どこか痛む場所はある?」


杏子「うん。どこも痛くないよ。ありがとう」


ミチル「ユウリの治癒魔法はすごいからね!あたしも治癒魔法は使えるけどユウリには敵わないんだよね…」


杏子「……」


杏子(治癒魔法…願いの力….か)


ユウリ「………」


ユウリ「ねぇ…….杏子、ミチル。手伝ってほしい事があるんだけど…」


間違えた。>>30訂正


ーーーー
ーー


杏子「…そうだったのか。ミチルの友達」モグモグ


ユウリ「ああ。ま、ミチルは友達って言うより恩人なんだけどね」モグモグ


杏子「さっきは、あたしも悪かったよ。ちょっとカッとなちまってね。ごめん……えーと…」


ユウリ「飛鳥ユウリ……ユウリでいいよ」


ミチル「杏子。ユウリは天才料理人なんだよ!」


ユウリ「み、ミチル。あ、あたしはそんな大層なもんじゃないよ」


杏子「いや、でも美味しいよイチゴリゾット。なんつーか、暖かい味がする」


ミチル「むー、教えたのは私だからね。イチゴリゾットだけはユウリに負けないんだから…」


杏子「別に張り合わなくても…」


ユウリ「そうだ。怪我の具合はどう?どこか痛む場所はある?」


杏子「うん。どこも痛くないよ。ありがとう」


ミチル「ユウリの治癒魔法はすごいからね!あたしも治癒魔法は使えるけどユウリには敵わないんだよね…」


杏子「……」


杏子(治癒魔法…願いの力….か)


ミチル「ユウリの治癒魔法はすごいからね!あたしも治癒魔法は使えるけどユウリには敵わないんだよね…」


杏子「……」

杏子(治癒魔法…願いの力….か)


ユウリ「………」


ユウリ「アンタの事、調べたよ。風見野の教会全焼事件……アンタの事でしょ」

杏子「!!」

ミチル「ゆ、ユウリ!!」

ユウリ「どうやらそうみたいね。……アンタがあたしに言った事。今ならあたしにもどういう事かわかったよ」


杏子「っ……アンタに何が…」


ユウリ「あたしもミチルも、あんたと同じ。他人の為に魔法少女になったからさ」

杏子「………」

ユウリ「願いが必ずしも他人の苦しみを救っているとは限らない。その通りだよね」


ユウリ「あたしは傲慢だったよ。願いの力で病人を治療して、もしかしたら良くない事が何処かで起きているかもしれない。それを自覚してなかった」


ユウリ「……でもね。理解した上であたしは生き方を変えるつもりはないよ」

杏子「……悲しんでいる人がいるかもしれないって、分かっていてもか?」


ユウリ「…うん。みんなが幸せにはなれない。これも、魔法少女になって分かった事。だから、あたしは割り切った上で自分の生き方を貫くよ」


杏子「…アンタは強いんだね」


ユウリ「いや、杏子と比べる事じゃないよ。アタシも杏子と同じ境遇になったらどうなるか正直分からない」


ユウリ「だから、あたしは杏子の生き方を否定しない。自分の為に魔法を使う。それでも別に良いと思う」


杏子「………」


ミチル「ユウリ……」


杏子「あたしも…あんたを誤解してたよ。侮辱して悪かった…ごめん」


ユウリ「いや、いいさ。……それよりアンタ、魔法が使えないでしょ」


杏子「….…うん」


ユウリ「やっぱりか…」

ミチル「そっか……使わないんじゃなくて、使えないんだね…」


杏子「….…それは」


ユウリ「ああ、待った。事情はいいよ。願いの力による魔法は他人がどうこうするのは難しいからね」


ユウリ「だから、代わりに考えないか?魔法を補う戦い方を。あたし達も手伝うからさ」


ミチル「うん!」


杏子「え……で、でも…。あたしはアンタを侮辱したんだよ。助けてもらう資格なんか…」


ユウリ「《食べ物を大事にする奴に悪い人はいない》――ミチルから聞いたよ。林檎園の事。あたしも料理人の端くれだからさ。あんたは自分が思うほど悪い奴じゃないよ」


ミチル「杏子ほど、美味しそうに食べてくれる人は中々いないよ!」


杏子「ユウリ…ミチル………」


杏子「ありがとう…」

ーーーー
ーー


ユウリ「うーん、魔法が使えないとなると近接一本か…」


杏子「一応、槍は伸びるからある程度の範囲はカバーできるよ」


ユウリ「使えてた魔法は、どんな奴だったの?」


杏子「えっとロッソ……あ、いや幻惑の魔法で…」


ミチル「ロッソ?イタリア語?も、もしかして杏子も必殺技に名前を付けてたの?!」


杏子「い、いや、マミの奴が勝手に…」


ミチル「え?!マミさん直伝の名前なの!いいなぁー!私も是非名前を付けてほしいなぁ…」


ユウリ「どうやらミチルのアレのルーツは杏子に関係があるみたいだね…」


杏子「……まあね」


ミチル「ユウリはね、あたしが名前付けたのに必殺技の名前を叫んでくれないんだよ!」


ユウリ「絶対にお断り」


杏子「うーん、その気持ち分かるなぁ」


ミチル「えぇ……そんなぁ…」ガーン


杏子「あはは……」


杏子(なんか……この感じ懐かしいな…)

ーー数日後ーー


ユウリ「行くの?」


杏子「うん。ミチル、ユウリ。世話になったね。二人のおかげで多少はマシになったよ」


ミチル「杏子……本当に1人で大丈夫なの?」


杏子「同じ街に何人も魔法少女はいられないよ。元々あたしは他所者だしね」


ミチル「杏子……また会おうね。絶対に死んじゃだめだからねっ…」グスッ

杏子「おい…泣くなってば。大丈夫。あたしはまた、イチゴリゾットが食べたい。お腹が空いて食べたいと思うなら死にたがりじゃない、だろ」


ミチル「うんっ……うんっ……また食べに来てね…」


ユウリ「あたしも待ってるからな。また会おう。約束だよ」


杏子「ああ。この恩は必ず返すよ!じゃ、またな!!」ダッ


杏子(ありがとう…ミチル、ユウリ!)

ーーーーーーーー
ーーーー
ーー

ーー数週間後・風見野――


杏子「ふっ!!」ザシュッ


魔女「ーーーーーーーー」ドカーンッ


杏子「よし、いっちょ上がり!」


杏子(ふぅ……大分楽になったな)


杏子(そういや……あいつら元気かな…)


杏子(よし…)


ーーーー
ーー


杏子「ふんふんふーん」


杏子「これで、よしと…」


QB「やあ、杏子。何をしているんだい?」


杏子「おわ?!なんだお前か…びっくりさせんなよ。何かよう?これから出掛けるんだけど」


QB「くんくん……何の匂いだい?」


杏子「……アップルパイだよ。あげねえからな」


QB「別にいいよ。僕たちは美味しいという感情を持ち合わせていないからね」


杏子「はいはい、そうですか。じゃあ、あすなろまで遠出するからそろそろ行かせてもらうよ」

QB「あ、そうだ。あすなろと言えばその事で伝えておきたい事があるんだ」


杏子「は?なんだよ?」


QB「君と交流のあった和紗ミチル、飛鳥ユウリが―――」






――――死んだよ。






杏子「は?!…………………死んだ?あいつらが死んだのか?!おいっ、どういう事だよ!!」ガシッ


QB「どういう事も何もそのままの意味だよ。二人は魔法少女として力尽き死んだんだよ」


杏子「……………何でだよ。魔女にやられたのか………?」


QB「いいや、二人とも魔法少女としての技量は優れていた。理由としては、二人は自分の事以外に魔法を使い過ぎたんだよ」


杏子「……………」


QB「僕も警告はしたんだけどね」


杏子「…うせろ」


QB「杏子も気をつけ……」


杏子「失せろって言ってんだろうが!」


QB「……やれやれ。分かったよ」タッ

杏子「……………」


杏子「何だよあいつら……」


杏子「死ぬなっつったのはどっちだよ……他人の為に自分が死んでどうすんだよっ……」


杏子「馬鹿か……あいつら……」


杏子「….…っく………っ……馬鹿野郎が….」


杏子「………アップルパイが……無駄になったじゃねえかっ……」


杏子「くそっ、こんなもの!」ガシッ


――――食べ物を大事にする奴に、悪い人はいないよ。


杏子「…………」


杏子「……….…っ」ガサッ


杏子「…………」パクッ


杏子「不味い….…アップルパイだ….」


ーーーーーーーー
ーーーー
ーー


杏子「はっ!」ガギンッ


さやか「くっ………」


杏子「…トロいねぇ。そんなんで他人の為に戦うってほざくのかい?」


さやか「…っ。あたし達は、自分の事だけで、他人を顧みない魔法少女とは違う!」


杏子「ふーん…」ガギンッ


さやか「……くっ」


さやか「あんたみたいな魔法少女に、負ける訳にはいかないんだっ!!」


杏子「………馬鹿が」


杏子「他人の為に戦ったって意味ねえんだよっ!」


さやか「くっ……あ、あんたに何が分かる……」ギンッ


杏子「は、自分の命も守れない奴が何言ってんだ……。わかんねぇなら直接教えてやるよ!!」


杏子(そうさ、結局自分の為に戦うのが正しいんだ……!!)


ーー完ーー

とりあえず、おしり。かずみマギカは割と面白いから読もう

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