八幡「虎の娘を拾った」 優美子「拾われてやったし」 (105)


前回、落としてしまいすみませんでした。


二ヶ月経つ一週間前に投稿しようとスレを見て見たら落ちてました。ごめんなさい。

今度は落ちないように長くても一ヶ月に一度なにかしら書き込みます。


完結目指して頑張ります。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439654359


この物語はボッチな男の子とワガママな虎の娘のお話です。


八幡「……」

この、目が残念なことになってる男の子は比企谷 八幡くん、この物語の主人公です。


八幡「ん?……なんだ、あれ?」


比企谷くんの目線の先には段ボールがあります。


八幡「なんか、書いてあるな……『ひろえ』なんで上から目線なんだよ」

八幡「捨て犬か猫でも入ってるのか?」

八幡「中でがさがさ音がするし……って、うお!?」


比企谷くんが段ボールを見ていると急にふたが開いて、中から獣耳と尻尾を生やし虎縞のワンピースを着た金髪縦ロールの女の子が出てきました。因みに大きさは手のひらサイズです。



優美子「ふぁーあ、ん?なに見てんの?キモいんだけど」

八幡「え?……ご、ごめんなさい」


取り敢えず謝る比企谷くん。日本人の悪い癖です。


優美子「ていうか超お腹減ったし、ねぇ、なんか食べ物持ってないの?」

八幡「……アイスならあるが」

優美子「あ~、今あーしアイスって気分じゃないんだよね」


女の子の発言にイラッとする比企谷くん。


八幡「そうか、じゃあな」


優美子「は?ちょっ、待てし」

八幡「……なんだよ」

優美子「あーしがお腹減ったって言ってんのに何行こうとしてんの?マジ有り得ないんだけど」

八幡「そう言われても、アイスしかないからどうしようもないだろ」

優美子「それはそうだけど……」


くぅ……


八幡「え?」

優美子「っ!」


女の子はお腹が鳴ったことが恥ずかしかったのか顔を赤くして震えています。とても可愛いです。


寝落ちしてました。


前に書いた物を少し修正したヤツを夜になったら投稿するので勝手なことはしないでください。



優美子「……」

八幡「……はぁ、ちょっと待ってろ」

優美子「え?」

八幡「コンビニ行っておにぎり買ってくるから」

優美子「あっ、待って」

八幡「なんだ?」

優美子「あーし、おにぎりよりもサンドイッチの方がいい」

八幡「…………わ、わかった」


今の発言でやっぱり買いに行くの止めようかなって思う比企谷くんでした。




八幡「ほれ、サンドイッチ」

優美子「ん、ってタマゴサンド!?あーし、ツナが良かったんだけど」

八幡「……わ、悪かったな」

優美子「まっ、いいけどさ」

八幡「……くっ」


女の子のあんまりな態度に怒りのボルテージがぐんぐん上がっていく比企谷くん。


優美子「はむはむ」

優美子「…………ありがとう」


八幡「え?」

優美子「サンドイッチのお礼」

八幡「お、おう」

優美子「はむはむ」

八幡「……」


さっきまでの怒りは何処えやら、女の子からお礼を言われて、にやける比企谷くん。チョロいです。


優美子「はむはむ」

八幡「じゃ、じゃあ行くわ」


優美子「はっ!? ちょっと待てし!」

八幡「なんだよ」

優美子「『なんだよ』じゃないから、なに? このままあーしを見捨てる気?」

八幡「そう言われても……」

優美子「あんたはあーしが死んでもいいっての?」

八幡「いや……」

優美子「ここに書いてあるしょ?『ひろえ』って」

八幡「……」


優美子「この意味わかる?」

八幡「……」

優美子「誰かに拾ってもらわなかったら生きていけないってことなんだけど」

八幡「……でも、うち猫飼ってるし」

優美子「は? あーし別に猫居ても問題ないんだけど」

八幡「……」


比企谷くんは思いました。こいつはなんで拾ってもらう立場なのに上から目線なんだろうと




優美子「……」

八幡「……」

優美子「誰もあーしのこと気にかけてくれない」

優美子「みんな見て見ぬふり」

優美子「もう食料もないし……」

八幡「……」

優美子「あーしこのままじゃ…………死んじゃう」

八幡「っ」


優美子「……お願い、あーしのこと、ひろてぇ……」


女の子は、さっきまでの上から目線が嘘のように態度が一変します。目を潤ませ上目遣いに手を胸の前で組み、お願いのポーズをします。


八幡「……わかった」

優美子「うしっ」

八幡「え?」

優美子「な、なんでもない」

八幡「さっきのは演技だったのか?」

優美子「ち、違うから!マジだから!」


八幡「はぁ……まぁいいや」

優美子「よしっ! そうと決まればさっさと行くよ!」

八幡「早まったか」

優美子「あっ!」

八幡「な、なんだ?」

優美子「部屋片付けてなかった」

八幡「部屋?片付ける?」

優美子「今部屋の中、物が散らかってって、そのまま行ったら移動する時の揺れとかで物が余計に散らかって、後で片付けるのメンドクなるじゃん? だから今のうちにやっとくの」

八幡「へ、へぇ」


優美子「だから移動はちょっと待ってくんない?」

八幡「お、おう」


そう言うと女の子は段ボールのふたを開けて中に入っていきました。


八幡「てか部屋って、これただの段ボールだろ」


女の子が段ボールに入って10分が経ちました。


八幡「遅いな……だいたい片付けるってそんなに物があるのかよ」


それからさらに10分経過……


八幡「いくらなんでも遅すぎるだろ。おーいまだか?」

優美子『あともうちょい』




さらに10分経過……


八幡「全然ちょいじゃねぇし……あっ、終わったみたいだな」


段ボールの中から女の子が出てきます。


優美子「ふぅ……って!なに見てんの!?」

八幡「ぇ?あぁ、すまん」

優美子「女子の部屋を覗くとかマジキモいんだけど」

八幡「うっ」

優美子「きも。早く段ボール持ってあんたの家に行くよ」


八幡「はい」


女の子のキモい攻撃で比企谷くんのライフはどんどん削られていきます。


優美子「ほら、早く」

八幡「ヘイヘイ」


上に乗ってる女の子ごと、段ボールを持ち上げる比企谷くん。


八幡「よいしょっ、って!おもっ!」

優美子「重いってなんだし!あーしはそんなに重くないから。ぐだぐだ言ってないで早くしろし」

八幡「いや、お前が重いってか、この段ボールが重いんだよ。これ中に何入ってんだよ」


優美子「はぁ?何でそんなことあんたに言わなきゃなんないの?きも」

八幡「いや、その」

優美子「どんだけ、女子の部屋気になんだし、マジキモいんだけど」

八幡「……」


女の子のまるでゴミを見るような眼差しに泣きそうになる比企谷くん。ぼっち男子には効果抜群です。


優美子「……きも」


もうやめて!とっくに比企谷くんのライフはゼロよ!



八幡「……」

優美子「早くいくよ」

八幡「はい」


その後、一人と一匹?は無言のまま比企谷くんの家に行きました。

~~




八幡「ちょっと休んでいいか?」

優美子「ん?どうしたん?」

八幡「腕が疲れてヤバい」

優美子「男の癖に情けなさ過ぎだし」

八幡「これ重いか、イテッ!」

優美子「重い言うなし!」


女の子は涙目になって比企谷くんを睨み付けます。女の子に体重のお話はNGです。


八幡「さっきも言ったがこの段ボールを重たいと言ってるんであって、お前を重いとは言ってないからな」


優美子「それでも、なんか自分が重いって言われてるみたいで嫌だし」


そう言うと、女の子は唇を尖らせてそっぽを向いてしまいます。


八幡「いや……あの……えっとぉ」


ぼっちな比企谷くんは、こういう場合はどうすればいいのか分からず、あたふたしてしまいます。


優美子「ねぇ、手を出してくんない?」

八幡「ん?ほら」

優美子「そんな所に手を出してどうすんの? あーしの前に手を出せて意味だし。そんくらい言わなくても分かるでしょ」

八幡「悪かったな気が利かなくて」

優美子「ホントだし」


八幡「……ほら」

優美子「っと」

八幡「うぉ!?」


比企谷くんが女の子の前に手を出すと、女の子は手の上に乗りました。


八幡「ど、どうしたんだよ」

優美子「……」

八幡「お、おい」

優美子「どう?」


八幡「は?」

優美子「だ、だから……あーし、重くない?」

八幡「えっ、あぁ……うん、軽い」

優美子「そっか♪なら良し」

八幡「そ、そうか……」


女の子の不意の笑顔にドキッとしちゃう比企谷くんでした。


八幡「というか、思ってたよりも軽いんだな。大体マッカンくらいだったから。250グラムくらいか?」

優美子「ぐ、具体的な数字を出すなし!……それと、もうちょっと軽いから」



比企谷くんのデリカシーのない発言に女の子は顔を真っ赤にして、ペシペシと攻撃しています。それと正確な数値は秘密です。女の子は秘密が多い生き物なんです。


優美子「つーか、マッカンってなんだし」

八幡「あ?マッカンってのはだな。この世で一番うまい飲み物のことだ」

優美子「へぇ、どんな味なの?」

八幡「甘い」

優美子「は?そんだけじゃ分かんないし。もっとなんかないの?」

八幡「そんなに気になるなら、うちにあるから後で飲むか?」

優美子「マジ!あるの?飲む飲む♪」


八幡「なら、味は飲んでからのたのしみでいいな」

優美子「そう言うことならさっさと行くし。ほら、早く!」

八幡「よっこら、しょっ……はぁ、重い三、四キロはあるだろ。マジで中になに入ってんだよ」



比企谷くんと女の子はついに比企谷家に到着しました。


優美子「ここがあんたの家?以外と大きいんだね」

八幡「そりゃ、どうもっと……たで~ま~」

優美子「お、お邪魔します」

八幡「いや、今日からお前もここに住むんだから、ただいまだろ」

優美子「え?……う、うん……ただいま」


比企谷くんの言葉を聞いて女の子は頬を染めて嬉しそうに言いました。




八幡「まず、妹にお前を紹介するけど、俺が出てきてくれって言うまで段ボールの中に入っていてくれないか?」

優美子「別に良いけど、何で?」

八幡「いきなり、お前が姿を見せたら妹が混乱して話がややこしくなるかもしれないだろ?」

優美子「そう言うことなら」


女の子は段ボールの中に入っていきました。比企谷くんはぼっちだけど、紳士なので女の子が中に入って行くさい、段ボールの中を覗こうとはしませんでした。けして、女の子に睨まれたからではありません。


八幡「おーい小町、言われた通りアイス買ってきたぞ」

小町「もー!遅いよ!コンビニにアイスを買いに行くだけなのにどんだけ時間掛かってるの?」



このとっても可愛い女の子はなんと! 比企谷くんの妹さんです。 比企谷くんとは違って目は腐っていません。 名前は比企谷 小町ちゃんです。


八幡「ちょっと色々あってな」

小町「なに?その手に持ってる段ボールが関係あるの?」

八幡「まぁな」


小町ちゃんは比企谷くんが持ってる段ボールを見ます。


小町「『ひろえ』なんで上から目線?」

八幡「何でなんだろうな」

小町「もしかして犬か猫でも拾ってきたの?うちにはカー君がいるんだよ?」


カー君とは比企谷家で飼っている猫のことです。名前はカマクラ君。ふてぶてしい態度がとっても可愛い猫さんです。可愛いと言っても人間の年齢で換算したらおっさんです。因みにカマクラ君の最近の悩みはお腹回りのお肉だそうです。何だかOLさんみたいな悩みですね。


八幡「そうなんだけど、うちで引き取るって約束しちゃったし」

小町「約束って言っても相手は犬か猫なんだから、そんなの分かってないでしょ」

八幡「そうでもないんだよ」

小町「?」

八幡「実はな」


比企谷くんは今までに起こった出来事を小町ちゃんに説明しました。




小町「……」

八幡「……信じられないかもしれないが本当の話なんだ」


小町ちゃんは慈愛に満ちた表情で、優しく比企谷くんに語りかけます。


小町「お兄ちゃん、もう高校二年生なんだからさ、いい加減にそういうのは卒業しようよ……ね?」

八幡「実の兄の言うことが信じられないのか?」

小町「逆に聞くけど、お兄ちゃんはいきなりそんな話されて『はい、そうですか』ってなる?」

八幡「なりません」


小町ちゃんの質問に普段はひねくれた事ばかり言う比企谷くんも、今この時ばかりは素直に答えます。



小町「でしょ?さっきの話は聞かなかったことにしてあげるから、さっさとその段ボールを捨ててきなさい」

八幡「はい」


比企谷くんがテーブルの上に置いてある段ボールを持って立ち上がり、リビングを出ていこうとすると、段ボールのふたがあきます。


優美子「なんでだしっ!」

八幡「うわ!」

小町「え!?」

優美子「何捨てに行こうとしてんの?あんたバカ?」

八幡「わ、悪い」


優美子「まったく、しっかりしろし」

小町「え?うえぇぇぇ!?」

優美子「ふん!」

小町「ほ、本当だったんだ……」

八幡「だから言っただろ」

小町「てっきり、お兄ちゃんの妄想だと思ってたよ」

八幡「妄想って……」

小町「お兄ちゃんよく妄想するじゃん」


八幡「してねぇよ!」

小町「名も無き神……」

八幡「うっ」

優美子「?」

小町「この世界には元々七人の神がいて」

八幡「や、やめろぉ……」


小町ちゃんが話し出すと比企谷くんは悶え苦しみはじめました。



八幡「わ、分かった、分かったから、もう止めてくれ」

優美子「ねぇ、さっきから何の話してんの?名も無き神ってなんだし」

八幡「いや、お前は知らなくていい」

優美子「は?そんなこと言われたら余計に気になるんだけど」

小町「あっ、じゃぁ、小町が後で教えますよ」

八幡「おい、余計なことしなくていいから」

優美子「じゃ、よろしく」

小町「お任せあれ!」

八幡「マジで止めて、お願い」


小町「っと、そんなことは置いといて、さっきのが本当のことだったら話は変わってくるよお兄ちゃん」

八幡「そんなことって、お前が話し出したんだろ」

小町「もー! 人の揚げ足を取らないでよ! 小町的にポイント低い!」

八幡「はいはい……じゃ、こいつを住まわせてもいいのか?」

小町「流石に目の前にいるのにダメなんて言えないよ」


小町ちゃんのその言葉にホッとする二人。


八幡「ありがとう小町」

優美子「……ありがとう」


小町「でも、小町が許してもお母さんがダメって言ったら無理だよ?」

八幡「そこで、親父じゃなくて母ちゃんが出てくるあたり流石は比企谷家だな」


比企谷家での男の地位はとても低いです。


小町「だって本当のことじゃん」

八幡「まぁな」

小町「お兄ちゃんも酷いね」

八幡「とりあえず母ちゃんに頼むときは小町も協力してくれよ? 俺だけじゃ不安だしな」

小町「オッケー♪ っていうことでよろしくお願いしますね。えっと……お兄ちゃんこの女の子の名前、何ていうの?」


八幡「あっ、そういえば、俺も知らないな」

小町「は?」

八幡「い、いや。特に困らなかったしよ」

小町「へぇ、じゃあ。お兄ちゃんは今日、会ったばかりの名前も知らない女の子を家にお持ち帰りしてきたんだ」


小町ちゃんが比企谷くんを睨みつけます。


八幡「おい、誤解を招くような言い方は止めろ。それじゃ俺が女の子を騙して家に連れてきた最低男みたいだろ」

小町「はぁ、小町は悲しいよごみいちゃん」

八幡「ごみいちゃん言うな」


優美子「ちょっと、あーしのこと放置しないでくんない?」


女の子が不機嫌そうに言います。


八幡「おぉ、悪い」

小町「あぁ、すみません」

優美子「まったく」

八幡「で、名前は何ていうんだ?」

優美子「三浦優美子」


ここで初めて女の子の名前が明かされます。



小町「優美子さんですか」

優美子「そう、あんたらは何て名前なの?」

八幡「ん?、あぁ、比企谷八幡だ」

小町「え?お兄ちゃん名前言ってなかったの?」

八幡「まぁ、聞かれなかったしな」

優美子「別に聞かなくても困らなかったし」

小町「いやいや、名前も知らない目の腐った怪しい男に着いていくとか危なすぎですよ」

八幡「ねぇ、そんなこと言わなくてもよくない? 俺はお前のお兄ちゃんなんだよ?」


小町「小町はそこの比企谷八幡の妹の比企谷小町です」


ナチュラルにお兄ちゃんを無視する小町ちゃん。鬼畜です。


八幡「無視って……」

優美子「小町にヒキオね」

八幡「なんで、小町は名前で俺はヒキオなんだよ」

優美子「はぁ? あんた、あーしに名前で呼んでほしいの? キモ」

八幡「そ、そういうわけじゃねぇけど」

小町「お兄ちゃん……」




小町ちゃんがダメな子を見るような目で比企谷くんを見ます。


八幡「その目をやめろ」


小町ちゃんはやれやれっといったポーズをします。


八幡「うぜぇ……」

小町「えっと、三浦さん」

優美子「なに?あと、優美子でいい」

小町「え?は、はい」

優美子「あんたはダメだかんね」

八幡「呼ばねぇよ」


そう言ってプイッとそっぽ向く比企谷くん。



小町「あっ、拗ねた」

八幡「拗ねてねぇよ」

優美子「どんだけ、あーしの名前呼びたいんだし」

八幡「だから、ちげぇよ」

優美子「ふーん」


優美子ちゃんがニヤニヤしながら比企谷くんを見ます。


八幡「なんだよ」

優美子「あーしの名前呼びたい?」

八幡「別に呼びたくねぇよ」


優美子「むっ、何かそういう風に言われるとムカつく」

八幡「知るか」

小町「素直じゃないねお兄ちゃん♪」

八幡「だから、違うっての」

優美子「素直じゃないヒキオは置いといて、さっき何て言おうとしたん?」

小町「え?ああ。優美子さんは何歳なのかなと」

優美子「ああ、歳ね。あーしは今年で16」

小町「えっと……それって16年間生きてきたってことですか?」


優美子「そうだけど?」

小町「えぇ!?」

八幡「マ、マジか」

優美子「な、何でそんな驚いてんの?」

小町「えっ……い、いやー お歳の割に見た目が若いなぁと」

八幡「歳上だったんだな。てっきり俺と同じくらいだと思ってた」

優美子「は?あんたらなに言ってんの?何か勘違いしてない?」


小町「え?」

八幡「は?」

優美子「ヒキオ、あんた何歳?」

八幡「16です」

優美子「何で敬語だし。キモ」

八幡「いや、歳上だから敬語の方がいいかと思いまして」

優美子「は?あんたとあーし、同い歳じゃん」


小町「え?」

八幡「は?」

優美子「ん?」

八幡「同い歳?」

優美子「そう」

八幡「いやいや、三浦さんの方が俺よりも歳上だと思うんですが」

小町「小町もそう思います」

優美子「意味わかんないんだけど。あーしは16であんたも16なんだから同じじゃん」


八幡「猫の16年は確か人間でいうと80歳くらいだったと思うんですが」

優美子「猫の16年?」

小町「はい、猫と人間では成長のスピードが違うんですよ」

優美子「いや、歳の取り方は人間と同じだから」

八幡「そうだったのか」

小町「小町はてっきり猫と同じかと思ってました」

優美子「てか、あんたらさっきから猫、猫言ってるけどあーし猫じゃなくて虎だから」


八幡「は?」

小町「え?」

優美子「ん?」

八幡「……」

小町「……」

優美子「……」

八幡「悪い、もう一回言ってくれないか」


比企谷くんのお願いに優美子ちゃんはめんどくさそうに答えます。




優美子「だから!あーしは猫じゃなくて虎だって言ってんじゃん!」

小町「えっと、猫じゃなくてですか?」

優美子「猫じゃなくて虎!」

八幡「虎縞の猫じゃなくてか?」

優美子「虎縞の虎!」

小町「虎ぽい猫じゃなくてですか?」

優美子「猫ぽい虎!」

八幡「虎柄の服を着た猫じゃなくてか?」

優美子「だから!何度も言わせんなし!あーしは猫じゃなくて虎!」


比企谷くんと小町ちゃんが何度も猫じゃないのかと聞いてくるので、優美子ちゃんはご機嫌斜めです。



八幡「ずっと猫だと思ってたわ」

小町「小町も猫だと思ってました 」

優美子「はん!野生を捨てて人間に飼われることを選んだ腰抜けと一緒にするなし!」

八幡「これから俺の家に居候しようとしてる奴がよく言うぜ」

優美子「うっ……あ、揚げ足とんなし!」


優美子ちゃんは顔を真っ赤にして怒ります。


小町「もう、お兄ちゃん!そういう時は気づいてても気を使って言わないもんだよ」

八幡「そんなことが出来てたら16年もボッチやってねぇよ」


どや顔で言う比企谷くん。悲しすぎます。




小町「そんな悲しいことをどや顔で言わないでよ。小町、時々お兄ちゃんの妹でいるのが嫌になってくるよ」

八幡「わ、悪かった。だからお兄ちゃんのことを見捨てないでくれ。小町に見捨てられたら俺は生きていけない」

小町「お兄ちゃんシスコン過ぎだよ」

優美子「キモ」


比企谷くんのあまりのシスコンぷりに小町ちゃんと優美子ちゃんがドン引きします。


八幡「うっ」


二人の反応に傷つく比企谷くん。自業自得です。




カマクラ「にゃ~」

小町「あっ、カー君」

優美子「カー君?」

小町「紹介します。この猫は比企谷家で飼っている猫のカマクラです」

優美子「あー、この猫がね」

小町「ほら、カー君。これから一緒に住む(仮)の優美子さんだよ。挨拶して」


小町ちゃんがそう促します。するとカマクラ君が『え?何?新入り?』っといった感じで優美子ちゃんを見ます。


優美子「っ」


自分よりも大きな生き物にジーっと見られて身を固くする優美子ちゃん。




小町「ほ、ほら。カー君挨拶」

カマクラ「……」


何も言わず優美子ちゃんを見続けるカマクラ君


優美子「な、何とか言えし!」

カマクラ「にゃ~」

優美子「は?なに言ってんだか分かんないんだけど」


自分で何か言えと言っておいて、今度は何を言ってるのか分からないと怒る優美子ちゃん。鬼です。


カマクラ「……」


優美子ちゃんの鬼対応に『ふーん、何か生意気だな』っといった感じで睨むカマクラ君




優美子「うっ」


カマクラ君に睨まれて怯む優美子ちゃん。


優美子「ね、猫の癖に生意気だし!あーしを舐めんな!」


そう言って優美子ちゃんはカマクラ君をポカポカと叩きます。勿論カマクラ君には効きません。


優美子「ひゃっ」


優美子ちゃんの攻撃が鬱陶しかったのか、カマクラ君は尻尾で優美子ちゃんのことを叩き飛ばしました。


優美子「ったぁ~」


叩き飛ばされた優美子ちゃんはお尻を強く打ってしまい涙目です。



小町「ちょっと!カー君何してるの!」

カマクラ「っ」


小町ちゃんに怒鳴られてビクンとするカマクラ君


八幡「お、おい。大丈夫か?」


比企谷くんが優美子ちゃんを心配して声をかけます。


優美子「うっさい!あーしに構うな!」

八幡「いや、でも……」

優美子「あーしは大丈夫だから!」


八幡「あっ、おい。何しに行くんだよ」

優美子「やられてばっかじゃ、あーしの気がすまないの!」


そう言って優美子ちゃんは無謀にもカマクラ君の所に行きます。


カマクラ「シャー」

優美子「ひっ」


カマクラ君が優美子ちゃんを威嚇します。優美子ちゃんの目いっぱいに涙が溜まります。


優美子「ね、猫の癖にぃ……」

八幡「な、泣くなよ」

優美子「な、ないてっ……なぃ……」


目いっぱいに溜まった涙は今にも溢れてきそうです。



小町「カー君いい加減にしなさい!」

カマクラ「にゃっ!?」


そう言ってカマクラ君の頭を叩いて優美子ちゃんから離します。


カマクラ「にゃっ、にゃーにゃー」


怒り心頭の小町ちゃんにカマクラ君はにゃごにゃごと言い訳をします。


小町「言い訳なんって聞きたくない。あっちの部屋で反省してなさい」

カマクラ「にゃぁ……」


カマクラ君はリビングから出されてしまいました。



優美子「ひっく……」


優美子ちゃんは泣きそうになるのを必死に耐えます。


八幡「大丈夫か?」


比企谷くんが優しく問いかけます。


優美子「ほっ……ぃ……てぇ」

八幡「ん?なんだって?」

優美子「と……ぇ」

八幡「全然聞こえないんだが」


小町「もー!なにやってるのお兄ちゃん!」

八幡「何って三浦が何か言ってるからそれを聞こうと……」

小町「もう!バカ!アホ!ぼっち!泣いてる子に無理に話をさせちゃダメって学校で習わなかったの?」

八幡「いや、そんなこと習わなかったから」

小町「とにかく、泣いてる子に無理に話をさせちゃダメなの。わかった ?」

八幡「お、おう」

優美子「ないて……ない……っ……」

小町「あぁ、そうですよね。優美子さんは泣いてないですよね」


優美子「うぅ……」

小町「もう、大丈夫ですよ。うちのダメ猫はいませんから」


小町ちゃんは人差し指で優美子ちゃんの背中を撫でながら優しく言います。


優美子「……やっ……ぃ……でぇ……」

小町「え?なんですか?」

優美子「だかっ……らっ……さしく………でってぇ……」


優美子「うぅ……」

小町「もう、大丈夫ですよ。うちのダメ猫はいませんから」


小町ちゃんは人差し指で優美子ちゃんの背中を撫でながら優しく言います。


優美子「……やっ……ぃ……でぇ……」

小町「え?なんですか?」

優美子「だかっ……らっ……さしく………でってぇ……」


小町「もう、少し大きな声で言ってもらえますか?」

八幡「おい、お前も聞いてんじゃねぇかよ」

小町「ありゃ」

八幡「ありゃじゃない。はぁ、三浦無理に話そうとしなくていいからな」


比企谷くんは人差し指で優美子ちゃんの頭を撫でながら優しく言います。すると


優美子「うぅ……ぐす……ふぇ……」

八幡「え!?なんで?」


とうとう優美子ちゃんが泣いてしまいました。目いっぱいに溜まった涙は滝のように流れます。



小町「お兄ちゃんなに泣かしてるの」


小町ちゃんがジト目で比企谷くんを見ます。


八幡「俺のせいなのか」

小町「ごみぃちゃんはあっち行ってて」

八幡「……はい」

小町「もう大丈夫ですよ。悪いごみぃちゃんはいませんから、泣かないでください」


小町ちゃんが優しく声をかけますが優美子ちゃんは泣き止みません。それどころかさっきよりも酷くなっています。




小町「あわわ!?」

八幡「どうすればいいだよ」

優美子「ふぇぇぇん」


号泣です。比企谷くんと小町ちゃんにはどうすることも出来ません。無力です。

しばらくして、優美子ちゃんは泣き止みました。


優美子「なんか、ごめん。二人に優しくされたら止まらなくなっちゃって……」


優美子ちゃんは顔を俯かせています。二人の前で号泣してしまったことが恥ずかしかったのです。



小町「確かに泣いてる時とか泣きそうになってる時とかに優しくされると、涙が止まらなくなりますよね」

八幡「俺の場合は泣いてても無視されたり煽ってこられたりして、涙が止まらなくなるがな」

小町「ちょっと今度は小町まで泣かせる気なの?」

優美子「ぷっ」


比企谷くんと小町ちゃんのやり取りを聞いて優美子ちゃんが吹き出します。


八幡「おい、そこは笑うところじゃないぞ。本当に辛かったんだからな」

優美子「ヒキオかわいそ過ぎだし」

小町「ホント、我が兄ながら情けないですよ」


そう言って小町ちゃんと優美子ちゃんは笑います。



小町「それにしても女の子を泣かすなんってカー君はまったく」

八幡「うちの猫が悪かったな」

優美子「いや、元々あーしがカマクラに突っかかったのが悪かったし」

小町「それでも女の子を泣かせた方が悪いんです」

八幡「でも俺、席替えで隣になっただけで女子に泣かれたんだけど、これも泣かせた方が悪いのか?」

小町「うぅ、お兄ちゃんはちょっと黙ってて」

優美子「ヒキオが話す昔のエピソードは悲しすぎだから、思わず優しくしそうになっちゃうじゃん」

八幡「そこはそのまま優しくしてくれよ」



そんなくだらない話をしてるとリビングの扉からカリカリと引っ掻く音がします。


カマクラ「にゃぁ……」


扉の向こうからカマクラ君の鳴き声が聞こえます。


優美子「……あーし、カマクラと仲直りがしたいから中に入れてもらっていい?」

小町「はい」


小町ちゃんが扉を開けてカマクラ君を中に入れます。カマクラ君はそのまま小町ちゃんに抱えられて優美子ちゃんの前に持ってこられます。


小町「ふぅ、さっきも思ったけどカー君ちょっと太った?前よりも重いんだけど」

八幡「カマクラも、もういい歳したおっさんだからな」


優美子「……」

カマクラ「……」


優美子ちゃんとカマクラ君はお互い黙ったまま相手を見ます。先に沈黙を破ったのは優美子ちゃんです。


優美子「えっと……さっきはあーしも色々と悪かったし……その……ごめん」


優美子ちゃんがカマクラ君に頭を下げます。


カマクラ「にゃ、にゃぁ……にゃぁおにゃぁにゃ」


カマクラくんも優美子ちゃんの謝罪ににゃごにゃごと答えます。何を言ってるのかは分かりませんが多分『お、おう……俺も悪かったよ』って感じでしょう。




優美子「だから、何言ってんのか分かんないつうの」

カマクラ「にゃ、にゃっ!?」


そう言って優美子ちゃんはカマクラくんの首に抱き付いて顔をすりすりします。


優美子「もふもふしてて超気持ちいい♪」

カマクラ「にゃ、にゃぁ……」


最初は驚いていたカマクラくんも可愛い女の子にすりすりされて満更でもないようです。


優美子「改めてよろしくね。カマクラ」

カマクラ「にゃん」


カマクラくんと優美子ちゃんは仲直りしました。良かったですね。



小町「よしっ!カーくんとも無事仲直り出来たことですし、今後について作戦を立てましょう」

優美子「作戦?」

八幡「なんの作戦だ?」

小町「もー!お母さんに対しての作戦に決まってるじゃないですか!」

優美子「あっ、そっか」

八幡「忘れてたわ」

小町「まったく、しっかりしてよね。ごみぃちゃん」

八幡「……はい」


小町「お母さんがダメって言ったら優美子さんはこの家から出ていくことになるんだからね」

優美子「ひきおぉ……」

小町ちゃんの『出ていく』という言葉に優美子ちゃんは不安そうに比企谷くんの顔を見ます。


八幡「心配するな、お前には小町がついてる」

優美子「そこ普通はあんたじゃないの?」

小町「お兄ちゃん……」


二人から非難の目で見られて慌てて言い繕う比企谷くん。


八幡「あ、あと俺もな」


小町「とりあえず作戦会議をしますか」



そんなこんなで作戦会議が開かれます。


小町「これより作戦会議を始めます。お兄ちゃんなんかいい作戦ない?」

八幡「小町が母ちゃんにひたすら頼み込む」

小町「真面目に考えてよ」

八幡「う~ん……ここは三浦を住まわせるメリットを母ちゃんに伝えるのが無難なんじゃないか?」

小町「おー!いいよお兄ちゃん!なんか作戦会議ぽいよ!」

八幡「ってことで皆でメリットを考えるぞ」


小町「おー!ほら、優美子さんも」

優美子「え?お、おー!」


そうして、三人は優美子ちゃんを居候させるメリットを考え始めます。三人が考え始めて十分が経ちました。


八幡「なんかいい案、浮かんだか?」

小町「ぜんぜん思い付かない……」

優美子「あーしも……」

小町「お兄ちゃんは?」

八幡「俺もだ」

優美子「……」


誰もいい案が浮かばない状況に優美子ちゃんは不安になってきて目に涙が浮かびます。



小町「だ、大丈夫ですよ。お母さんが帰ってくるまで、まだ時間がありますから」

優美子「……うん」

八幡「なぁ」

小町「なに?」

八幡「俺も小町も今日三浦に会ったばかりで、あんまりこいつのこと知らないだろ?」

小町「確かに……」

八幡「だからまずは俺らが三浦について知るのが先だと俺は思うがどう思う?」


小町「うん、そうだね!もっと優美子さんのことを知ろう!」

優美子「あーしのこと?」

八幡「あぁ、そうだ。長所とか短所とか色々な」

優美子「変態」


優美子ちゃんが比企谷くんから距離を取って自分の体を抱き締めながら言います。


八幡「いや、なんでだよ」

優美子「色々の所に下心を感じたし」

八幡「考えすぎだ。別にお前のスリーサイズを知りたいなんて全然思ってない……あっ」

優美子「変態」

小町「最低」


今度は小町ちゃんが優美子ちゃんを庇うようにして二人の間に入ります。


八幡「と、とにかく時間もないんだし。話をするぞ」

優美子「誤魔化した」

小町「誤魔化したねお兄ちゃん」

八幡「母ちゃんが帰ってくるぞ」

優美子「はいはい」

小町「お兄ちゃんはもう」

八幡「よし、じゃあ頼む」

優美子「は?いきなり振られても困るし」


小町「兄はあまり人と話したことがないので会話が苦手なんです。許してあげてください」

八幡「うっ」

優美子「まったく、どうしようもない男なんだから」

小町「本当に困りますよ。将来が心配です」

優美子「あれじゃあ彼女も出来ないでしょ」


小町「数えきれないくらい振られてますよ」

優美子「へぇ、でも告白はするんだ。まだ、いくらかましじゃん」

小町「ましってだけで良くはないですからね」

優美子「確かに」

八幡「おい、いつの間にか俺の話になってるぞ。それと小町兄の黒歴史を勝手に話すな」

小町「てへへ」

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