千早「春香……エセ関西弁はどうかと思うわ……」 (30)

春香「えぇ!? そないな事言わんでや〜!」

千早「……そのオーバーなリアクションもどうかと思うのだけど……」

春香「せやかてひな壇の上段に座ったらリアクション大きないと目立たんし!」

千早「……春香……私達はアイドルなのよ……」

春香「バラドルって素敵やん?」

千早「……」

春香「ノーリアクションは辛いよ……あ、辛いやん!」

千早「言い直すくらいなら普通に喋ればいいと思うわ」

春香「こほん……そないゆうたって今の業界では何かしら突飛したものないとあかんと思うねん!」

千早「……だからエセ関西弁なの?」

春香「せや!」

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千早「……はぁ」

春香「ちょ! 何かしらのレスポンス頂戴や!」

千早「……春香には現実を知ってもらう必要があるわね」

春香「え?」

千早「まずはエセ関西弁が世間からどう思われてるか知るところからね」

春香「え……あ、うん」

千早「よくあるのが“気付かれない”ってものね」

春香「な、ならなんの問題もないやん!」

千早「そうね。 だけどそれは関西以外の人達からすればの話よ」

春香「え」

千早「関西地方の人達が聞いたら『あれ? イントネーションおかしない?』 って感じらしいわ」

春香「そ、そないな事言われてもワイ知らんし」

千早「それよ!」

春香「うぇ!?」

千早「春香、貴女は女性よね?」

春香「う、うん」

千早「それなら“ワイ” ではなく“ウチ” の方が自然じゃないかしら?」

春香「あ」

千早「それにネットで読んだ知識だけど、“ワイ”って使う人は今の関西では少ないらしいの」

春香「そ、そうなの!?」

千早「そうらしいわ。 テレビやラジオ等で関西ってのを押し出す時には多用されるらしいけどね」

春香「そうなんだ……じゃ、じゃあそれ直したら問題ないよね!」

千早「いいえ、ダメよ」

春香「なんでやねん!」

千早「それっ!」

春香「うぇぇ!?」

千早「私さっき言ったわよね? 『あれ? イントネーションおかしない?』 って関西の人達は感じるって」

春香「う、うん」

千早「今春香が言った“なんでやねん”。 このイントネーションよ」

春香「……どこがおかしいの?」

千早「春香は今“なんでやねん”の、どこを強調して言った?」

春香「え、えっと……多分“な”の、部分のはず……」

千早「はぁ……」

春香「溜息!?」

千早「……いい春香? “なんでやねん”の正しい強調部分は“で”の部分なのよ!」

春香「えぇ!? ほんまでっか!?」

千早「そぉれっ!」

春香「うへぃ!?」

千早「あのね春香……“でっか”と“まっか”も関西地方ではほぼ使われない言葉になってきてるの」

春香「で、でも【ほんまでっか! TV】とか! 【もうかりまっか? ぼちぼちでんな】ってのがあるじゃない!」

千早「チッ……これだから素人は……」ボソッ

春香「い、今舌打ちしなかった? ……それに素人って……」

千早「こほん……【ほんまでっか!】 の方は関西ってのを押し出す為に使われているだけなの。 多分響きの良さや、聞いた時の覚えやすさってのも番組名に使われている理由でしょうね」

春香「へ〜……じゃあ【ぼちぼちでんな】の方は?」

千早「今では商売上での皮切りに使われる事がある程度らしいわ。 飲食店を始める時に飛び込み営業で来る酒屋さんとかね(※実体験です※)」

春香「じゃあ……普段使われる言葉じゃないんだ……」

千早「そうね」

春香「あ、あとは何かあるの?」

千早「あとは関西独特の言い方とかね」

春香「マクドナルドをマクドって略す感じのやつ?」

千早「セブンイレブンをセブイレって言うのもあるわね」

春香「それ初耳!!」

千早「ものさしを“さし”って言うのもね」

春香「へぇ〜」

千早「後は方言ね。 物を捨てる時には“ほかす”とか、くすぐる事を“こちょばす”とか“こそばす”とかね」

春香「知らなかった……」

千早「物を仕舞う時は“なおす”ってのも言うわ。 後は鳥肌を“さぶいぼ”とか」

春香「あ、さぶいぼはなんか聞いた事ある」

千早「後は変な事をしてる人に“けったいな事してんなぁ”とか、人を馬鹿にする事を“おちょくる”とか」

春香「あぁ! それ芸人さんが言ってた!」

千早「あと料理関係なら鶏肉の事を“かしわ”とも言うわ、かしわそばがいい例ね。 あとは焼き鳥でよくある砂肝の事を“砂ずり”って言ったり、おでんを“かんとだき”って言うのもあるわ」

春香「かしわそばってそういうとこからきてるんだ……」

千早「まぁ、まだあるのだけど……そろそろ分かったかしら?」

春香「え? なにが?」

千早「なにが? じゃないわよ。 春香のエセ関西弁についてでしょ?」

春香「あ、そうだったね……」

千早「仲間内で遊ぶ時にエセ関西弁を使うのはいいと思うの……いえ、盛り上がる為には必要不可欠なものであるのかもしれない……けれど考えてみて、春香はなんでエセ関西弁を使おうと思ったの?」

春香「なんでって……芸能界で生き残っていく為に……はっ!」

千早「気が付いたようね……自分がどれだけリスキーな事をしようとしてたか……」

春香「わ、私そんなつもりじゃ……」

千早「私達が話す事一つ一つが電波に乗って全国の人達の耳に届くのよ……勿論関西の人達にも」

春香「……」

千早「いい、春香。 私達はプロなの。 一つ一つの発言や行動を気を付けながらテレビに映らなくちゃいけない……そこで春香がエセ関西弁を使ったら関西の人達はどう思うかしら?」

春香「……」

千早「……笑ってくれる人も多いかも知れない。 けれど不快に思う人がいるのは事実なのよ」

春香「……」

千早「アイドルだから許される……それは最初の内だけよ。 必要にエセ関西弁を使い続けると関西の人達はこう思うかもしれないわ……『あれ? なんか関西弁を馬鹿にしてね?』って」

春香「……けどその可能性があるだけじゃ……」

千早「……可能性ね……けれどその可能性があるだけで十分危険因子になりうるのよ」

春香「うぅ……」

千早「いずれその小さな不満が大きな不満になる……小さな波が大きな波になるのと同じように」

春香「……」ポロポロ

千早「……ねぇ、春香……貴女はどういうアイドルになりたいの?」

春香「……わ、私は……皆を……グスッ……皆を笑顔にできるアイドルになりたい……!」

千早「そう……そうよね……春香ならそう答えてくれると思っていたわ……」

春香「ち、千早ちゃん……」

千早「春香……一緒に皆を笑顔にできるトップアイドルになりましょう……付け焼刃のエセ関西弁じゃなくて、春香が元から持っているセンスを活かして……」

春香「うん……!」

千早「ふふっ。 いい笑顔だわ」

春香「千早ちゃんありがとう! 私目が覚めたよ!」

千早「いいのよ春香。 私は何もしていないわy」

春香「私! もっと関西弁を勉強していつか本当の関西弁を使えるバラドルになるね!」

千早「ちょっと待って」

春香「あ! 関西弁だけじゃだめだよね! 間の取り方も勉強しないと!」

千早「いや、ちょっと待って」

春香「よーっし! ウチやる気出てきたよ! やったるでー!」

千早「くっ……! 私だけじゃ春香を止める事は出来ないのね……! そ、そうだわ! プロデューサーに止めてもらいましょう!」タタッ

――――765プロ事務所――――


ドアバーン


千早「プロデューサー! 春香がウケ狙いの為にエセ関西弁を使うのを止めさせてください!」

P「なんやて!?」

小鳥「ほんまでっか!?」

千早「よーし! お前らも説教だ! そこに直れ!」






おわりおわり

くぅ疲れてない

いやマジ疲れてない

関西の友達に聞いたりネットで調べながら書きました

後悔はしていない

じゃあの

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