アニ「夕日からの時間」 (99)
進撃のSSです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439527000
アニ(日差しがうざったい・・・)
アニ(これなら訓練兵のときのほうがマシだったかも)
エレン「暇そうだな」
アニ(街で私に話しかけてくる奴なんて)
アニ「あんたもそうみたいだね」
エレン「久しぶり」
アニ「そうだね」
エレン「所属決めのとき以来か?」
アニ「何の用?」
エレン「何の用でもねーよ。いたから声かけただけだ」
アニ「ふーん、1人?」
エレン「アニもか?」
アニ「そう」
エレン「友達いなそうだもんな」
アニ「早く帰れば?」
エレン「あそこの売店で飲み物買ってくる」
アニ「帰りなよ」
エレン「ほら」
アニ「・・・」
エレン「いらないのか?隣置いとくぞ」
アニ「いるって言ってない」
エレン「そうか。いややるよ」
アニ「聞いてない?」
エレン「んっ?」
アニ「わかったよ。もらうから」
エレン「おう」
エレン「何してたんだ?」
アニ「なにも」
エレン「ふーん」
アニ「ここはいいところだから」
アニ「いるだけ」
エレン「いいところって」
エレン「この広場のベンチがか?」
アニ「なんだっていいよ」
アニ「私は1人が好きなんだ」
エレン「急になんだよ」
アニ「友達だとかどうとか」
エレン「気にしてたのたか」
アニ「してない」
アニ「まあ」
アニ「いないけど」
エレン「そうか」
アニ「そうだよ」
アニ「帰らないの?」
エレン「まだ俺の残ってるし」
アニ「ふーん」
エレン「あー久々だぁ。こんなのんびりしてるの」
エレン「何飲み物見てるんだ?」
アニ「もう終わり?」
エレン「まだ飲むか?いいけど」
アニ「いいや」
エレン「あそこで食い物も売ってるな」
アニ「そうだね」
エレン「食ったことあるか?」
アニ「ないよ」
アニ「・・・」
エレン「・・・」
エレン「食べるか?」アニ「食べる?」
アニ「・・・ハッ」
エレン「ははっ」
エレン「息がそろっちまったな」
アニ「まったくね、私はいいよ」
エレン「俺も、もう戻らなきゃな」
アニ「そう」
エレン「じゃあまたな」
アニ「・・・またね」
次の日
アニ「・・・」
エレン「おいっ」
アニ「わっ」
エレン「なんだ迷子か?」
アニ「迷っても子供でもない」
エレン「びっくりしてたな」
アニ「驚くって」
エレン「今日もここにいたな」
アニ「それはこっちのセリフ」
アニ「暇なの?」
エレン「暇じゃねーって」
アニ「じゃあ何で?」
エレン「来ただけだって」
アニ「はあ?」
エレン「それがどうかしたのかよ」
アニ「別に」
エレン「そうだ昨日の売店のとこのパン買ってきたから食おうぜ」
エレン「この前のベンチで」
アニ「いらないって言っても意味ないんだろうね」
エレン「いらないなら俺が食うだけだ」
アニ「もらうよ」
エレン「うまい」
アニ「そうだね」
アニ「子供の頃からそうなの?」
エレン「何がそうかは知らねーけど」
アニ「昔からそんな性格なの?」
エレン「そんなってどんなだよ」
エレン「わかんないな自分の性格とかさ」
エレン「多分変わってないだろ」
アニ「それはそれはみんな大変だったろうね」
エレン「そっそんなことねーよ」
アニ「嘘ばっかり」
アニ「きっと幼馴染に迷惑ばかりかけていたんでしょ?」
エレン「俺が助けに行ったりとかしてた」
アニ「否定はしないんだ」
エレン「いいだろ、お前は?」
アニ「さあ?」
エレン「そんな感じか?」
アニ「少なくとも・・・」
アニ「やっぱわかんないね」
エレン「そーか」
アニ「生暖かい風」
エレン「今日は風があるな」
アニ「うん」
アニ「吹き飛ばされるかも」
エレン「そんな訳ないだろ」
アニ「そんな訳ないね」
エレン「なにが言いたいんだよ」
アニ「そうだね」
エレン「まあいいや今日はもう帰るから」
アニ「そう」
エレン「じゃあな」
アニ「エレン」
エレン「?」
アニ「それでね」
エレン「それで?」
アニ「今日は風が強いね」
エレン「なら吹き飛ばされるなよ」
アニ「がんばるよ」
アニ(今日は遅いな)
アニ(パンも飲み物も全部買ったけど)
アニ(食べてないし)
アニ(この時間になっても)
アニ「人が多い」
エレン「独り言か?」
アニ「わっ」
エレン「毎回驚くなよ」
アニ「毎回急に出てこないでよ」
エレン「今日もいたんだな」
アニ「えっ?」
エレン「えっ?って」
アニ「いやなんでもないから」
エレン「あっ悪い」
アニ「なんでもないって」
エレン「なんか買ってくるか」
アニ「あるし」
エレン「おう、食べないのか?」
アニ「さあ?」
エレン「いやいいけどさ」
アニ「はぁ・・・いいよ」
エレン「んっ?」
アニ「食べていいよって言った」
アニ「忙しいの?」
エレン「調査兵団か?近々、大規模な作戦があるみたいだけどな」
アニ「ふーん」
エレン「憲兵団はどうだ?」
アニ「毎日あんたより早くいる時点で察して」
エレン「ふーん」
アニ「そう」
エレン「もう暗くなっちまうから帰るな」
アニ「うん」
アニ「でも」
アニ「もう少し・・・」
エレン「もう少しなんだ?」
アニ「もう少しってなんて言いたいんだろね」
エレン「暗くなったら」
アニ「だって」
アニ「夕日が綺麗になる」
エレン「夕日?・・・ほんとだな良く見える」
アニ「いいところだからね」
アニ「いつもは1人で見ていたんだけどね」
エレン「壁がなかったら最後まで見れるんだな」
アニ「うん壁がなかったらね」
エレン「おっ見てみろよ」
アニ「何を?」
エレン「人の影が」
アニ「影が?」
エレン「巨人みたいに大きいな」
アニ「あの人達は巨人じゃないから」
エレン「知ってるよ」
アニ(私達はどうなんだろ?)
エレン「どうした?」
アニ「どうもないよ」
エレン「じっくり見ることってあまりないけど綺麗だな」
アニ「いつもこんな風なら」
エレン「いいのになぁ」
アニ「良くないよ」
エレン「そうかあ」
エレン「ほらアニ来てみろよ」
エレン「俺は何mに見える?」
アニ「本当にバカだね」
エレン「どうだ?」
アニ「見えない」
エレン「何が?」
アニ「うまく顔が見えない」
エレン「だったら近くにさ」
エレン「ほら」
アニ「引っ張らないでって」
エレン「悪い、服が伸びちゃうな」
アニ「伸びちゃうよ」
アニ「近くにきたけど」
アニ「それでも」
アニ「よく見えないね」
エレン「目が悪いのか?」
アニ「さあ」
エレン「大丈夫か?」
アニ「全然大丈夫だよ」
アニ「それよりも」
アニ「もう夕日が」
アニ「見えない」
エレン「夜になるな」
アニ「帰るんでしょ?」
エレン「ああ遅いし」
アニ「じゃあ早く帰れば」
エレン「なんだよ」
アニ「いつも夜には帰るから」
アニ「そう言ったんだよ」
エレン「おうそうだな」
エレン「お前って時間に厳しいんだな」
アニ「あんたはさあ」
アニ「わからないんだね」
アニ(話す言葉が徐々に少なくなっていけば)
アニ(もう話すことなんてない)
アニ(それがいい)
アニ「それでいい」
アニ「わからないね」
エレン「怖いな」
アニ「なっ」
エレン「いてっ・・・蹴るなよ」
アニ「蹴ってない」
エレン「豪快な嘘だな」
アニ「うん」
エレン「今日は何も買ってないのか」
アニ「曇りだから」
エレン「雨降るか?」
アニ「それは知らない」
エレン「この前の巨人のような遊びできないな」
アニ「したくないよ」
エレン「いやだったか?」
アニ「別に」
アニ「1人でやっていたらバカみたいって」
アニ「思っていたくらい」
エレン「えっそうかよ」
アニ「そう」
アニ「でも全然」
エレン「それよりさ、雨が降ったらどうしような」
アニ「帰ればいいでしょ」
エレン「帰るかー」
アニ「降る前に帰ったほうがいいって」
エレン「お前は?」
アニ「近いから」
エレン「いいな」
アニ「いいでしょ」
エレン「じゃあ俺は帰るぞ」
アニ「結構歩くんだ」
エレン「まあな」
アニ「大変だ」
エレン「そんなことねーけど」
アニ「待っている人がいるんだから」
アニ「早くしないと忘れるよ」
エレン「忘れるって?」
アニ「帰る場所とか」
アニ「人とか」
エレン「忘れるかよ」
アニ「ほんとに?」
エレン「あっそうか」
アニ「なにがそうかなの?」
エレン「だからお前は独り言を言ってたんだな」
アニ「忘れてよ」
エレン「ああ忘れる」
アニ「あっ」
アニ「帰る前に」
アニ「帰ったきたことを知った人は」
アニ「なんて言うの」
アニ「なんて言ってくれるの」
エレン「いつも言っていることを」
エレン「聞くだけだろ」
アニ「おかえりとか」
エレン「ただいまとか」
アニ「言ったことは?」
エレン「言うよ」
アニ「ずいぶんいい子だね」
エレン「別に当たり前だっただろ」
アニ「そうだったね」
アニ「子供だった頃」
エレン「ずっとそうだと思ったけどな」
アニ「ずいぶん優しいよ」
アニ「どこかで聞いたことで」
アニ「昔を忘れていけば」
アニ「先のことを思わなくなる」
アニ「そしたら私達は死ぬことなんてない」
アニ「そうだっていうんだって」
エレン「そんなこと」
エレン「誰が言ってたんだよ」
アニ「言っていたような気がするよ」
アニ「知っている人から」
アニ「何回もね」
アニ「・・・」
アニ「いやそうじゃなくて走って帰ろう」
アニ「いい?」
エレン「おお!負けねーぞ」
アニ「いや勝負じゃないから」
エレン「おいっアニ」
アニ「えっ?ああエレン」
エレン「寝てたのかよ」
アニ「寝てないよ」
エレン「目が閉じてたぞ」
アニ「閉じてただけ」
エレン「よだれもか」
アニ「うん?」
アニ「雨が」
エレン「今日は降ってねーよ」
アニ「毎日毎日飽きもせず」
エレン「悪いか」
アニ「他のみんなはどうしてんの?」
アニ「あんたみたいに暇してる?」
エレン「俺も暇じゃないけど」
エレン「訓練してる」
アニ「へぇ昔と同じだ」
エレン「壁外調査をするためにな」
アニ「怖くないの?」
アニ「ああごめん。あんたは大丈夫だよね」
アニ「怖いものなんてないし」
エレン「そんなこと言っててなにかになるのか?」
アニ「悪かったね」
エレン「そうじゃねーよ」
エレン「・・・」
アニ「・・・」
エレン「動物は」
アニ「動物?」
エレン「巨人は動物襲わないんだよな。そうだよな」
アニ「まあそう習ったね」
エレン「じゃああれか動物に変装すりゃ襲われないのか」
アニ「やってみれば?」
エレン「うーん」
エレン「それで死んだら最悪だ」
アニ「確かにねえ」
エレン「だろ?」
アニ「動物に」
アニ「もし動物に生まれ変わったら」
アニ「鳥なんかどう?」
アニ「どこにでも行けるでしょ」
エレン「足が折れそうだな」
アニ「なんで?」
エレン「足が細いだろ」
エレン「お前に蹴られでもしたらひとたまりもないからな」
アニ「鳥蹴らないし」
アニ「その前に逃げてよ」
エレン「飛べるからな」
アニ「うん。飛べるから」
アニ「ほらっ今日も暗くなるから帰りなって」
エレン「走ってか?」
アニ「嫌だって」
エレン「じゃあ飛んでだな」
アニ「できるならどうぞ」
エレン「無理いうな」
アニ「バカ」
アニ「今日は悪かったね」
エレン「暗くなったら帰れって言う事が」
エレン「そんなに悪いのか?」
アニ「やっぱりあれだよね」
アニ「暗くなったら」
アニ「怖いでしょ」
エレン「お前が?」
アニ「私が」
エレン「本当かよ」
アニ「本当だと思ってくれる?」
エレン「本当ならな」
アニ「また」
エレン「ああ」
アニ「何回言えばいい?」
アニ「あっ」
エレン「今日は遅かったな」
アニ「・・・驚かないね」
エレン「驚かそうとしてたのか」
アニ「そうではないけど」
エレン「あってなんだよ」
アニ「不公平じゃない」
アニ「私だけが驚いているの」
エレン「じゃあさ、俺を驚かすことがあったら」
エレン「まとめて驚かせてくれよ」
アニ「それもちょっと」
アニ「良くないね」
アニ「そんなことしたら」
アニ「可哀相でしょ?」
エレン「俺が?」
アニ「どうだか」
エレン「もしそんなことがあっても」
エレン「平気な顔してやるからな」
アニ「へえ」
エレン「おう」
アニ「がんばって」
エレン「・・・あんまり何回も来てるとさ」
エレン「代わり映えしないよな」
エレン「この景色」
アニ「そう?」
エレン「そうだろ」
アニ「なら」
アニ「昨日の夕日の形を」
アニ「憶えてる?」
エレン「昨日のことだろ」
アニ「ちょっと説明してみて」
エレン「うっ」
アニ「できるでしょ」
アニ「どんな形だった?」
エレン「えっと」
アニ「じゃ手を出して」
アニ「広げて」
エレン「だからこういう形のさ」
アニ「うんうん」
エレン「わかったか?」
アニ「いや?」
エレン「おい」
アニ「ちゃんと見てなかったみたい」
アニ「もう一回」
エレン「見てろよ」
アニ「ははっ」
アニ「何回だっていいよ」
エレン「伝わらないな」
アニ「やっぱり難しいね」
エレン「難しいだろ」
アニ「それはいつもそう」
エレン「憶えてはいるんだけどなー」
アニ「うん」
エレン「お前はできるのかよ」
アニ「ほらやっぱりそれは」
アニ「私は見たの初めてだし」
エレン「初めてじゃないだろ」
アニ「うまく伝えることができなかったら」
アニ「・・・昔の事」
アニ「訓練兵団で過ごしたことなんて」
アニ「すぐに忘れてしまうんだろうね」
エレン「忘れるか?」
エレン「色々あったろ」
アニ「まあね」
エレン「成績良かったよな」
エレン「俺にはお前が何でも簡単にこなしているように見えたから」
アニ「これでもね」
アニ「精一杯だった」
エレン「そうは見えなかったな」
エレン「なあ」
アニ「うん忘れてほしいことはたくさん」
エレン「別にいい」
アニ「憶えているのは」
アニ「いつもは」
アニ「小雨の日とか曇りの日とか」
アニ「空は青いまま濃さを増して」
アニ「暗くなるから」
アニ「その中を」
アニ「帰るところがある人はいいね」
アニ「私達にも昔あったもの」
アニ「でも考えると帰るところがあったときでも」
アニ「いいななんて思わなかったから」
アニ「どうでもいいね」
アニ「もう帰っていい?」
アニ「エレン?」
エレン「子供が遊んでるな」
アニ「だから」
エレン「いいなって思っただけだよ」
エレン「なあお前の家ってどこにあるんだ?」
アニ「憲兵団の寮だって」
エレン「違う」
アニ「忘れたよ」
エレン「俺の家は」
アニ「知ってる」
アニ「言わなくていい」
エレン「俺は知らないけど」
エレン「忘れるわけないだろ」
アニ「帰るから」
アニ(どうやってばかり示されて)
アニ(どうしてなんて)
アニ(考える訳ないから)
アニ(今、どうしている?なんて)
アニ(誰のためかなんて)
アニ(もうとっくに失くして)
アニ(無い)
アニ(だからこの場所にいるのは)
アニ(昨日の夕日があるこの場所に)
アニ(いるのは)
アニ「おかしいでしょ」
アニ「なんでいるの?」
エレン「お前に言われたくねーよ」
エレン「ここに居るしかないだろ」
エレン「ここでしか会えたことがないんだし」
アニ「いつもいるみたいなこと」
エレン「怖い顔だな」
アニ「凶悪顔のくせに」
アニ「そんなこと言う?」
エレン「いやお前に言いたいことがあったんだ」
アニ「言いたいこと?」
エレン「いや聞きたいことか?」
アニ「どっち?」
エレン「お前」
エレン「やっぱり」
エレン「家族と仲悪いのか?」
アニ「・・・えっ?」
アニ「あははっ」
エレン「なんだよ。だってお前家族の話したとき」
アニ「ちょっと待って」
エレン「なんだよ」
アニ「・・・はぁ」
エレン「落ち着いたかよ」
アニ「うん」
アニ「それじゃあ」
アニ「私も聞きたいね」
アニ「今は昔の話をしている?それとも」
アニ「これからの話?」
エレン「今の話だ」
アニ「そうだね」
アニ「そうかもね」
エレン「あんまり言う事じゃないけどさ」
エレン「良くないんじゃねーか」
エレン「家族と仲良くないのは」
アニ「そんなのいいよ」
エレン「そんなのって」
エレン「後悔しても知らないからな」
アニ「もう後悔していたら」
アニ「しようもないね」
エレン「謝りにいくか?」
アニ「行かないよ」
アニ「誰に?私が悪いことになってない?」
アニ「私は謝らないから」
エレン「俺は謝りたいな」
エレン「言えなくなるなんてすぐだったから」
エレン「いつ最後になるなんてわからなかった」
エレン「なあ?」
エレン「どうした?」
アニ「悪いけど」
アニ「珍しく思ってた」
エレン「なんだと思ってたんだよ」
アニ「誰になんて聞かないけど」
アニ「ひとまず私に謝ってくれる」
エレン「はっ?」
エレン「やだよ」
アニ「たくさん驚かしたし」
エレン「それは悪かったな」
アニ「まあそれでいいよ」
アニ「じゃあ、あそこの店にいこうか」
アニ「あんたの奢りで」
エレン「奢りかよ」
エレン「絶対お前のほうがたくさん貰ってるだろ」
アニ「うるさいね」
アニ「さあ先に行って」
アニ「私も」
アニ「いつも最後だって思っている」
アニ「空いてる?」
エレン「ああ」
アニ「そう」
アニ「ここはいつも空いてるからね」
エレン「よく来るのか?」
アニ「まさか」
アニ「空いてるから来たいとは思ってた」
エレン「ここの店員愛想ないな」
アニ「まったくね」
エレン「一瞥しただけだった」
エレン「だから空いてんのかな」
アニ「だとしたらいいね」
エレン「いいか?それ」
アニ「うるさいよりはいいよ」
エレン「何頼む?」
アニ「なんでも、任せるよ」
エレン「じゃあ俺の好きなの」
アニ「あるんだ」
エレン「それはあるだろ」
エレン「別にお前も好きなの言えばいいだろ」
アニ「いや、任せるって言ったし」
エレン「流石憲兵団だな」
アニ「どういう意味?」
エレン「まじめだ」
アニ「なにそれ」
アニ「この飲み物」
エレン「知ってるか?」
アニ「初めて」
アニ「憲兵団のイメージがまじめって?」
エレン「えっ?そうだろ」
アニ「そうじゃないよ」
アニ「私はそんな風に見える?」
エレン「見えないな」
アニ「うん」
アニ「そんなすぐに答えなくてもいいけど」
エレン「じゃあ調査兵団のイメージはどんなだ?」
アニ「変人」
エレン「・・・そうだな」
アニ「当たり?」
エレン「先輩達が良くないのか?」
アニ「あんた達もどうかな」
エレン「えっ」
エレン「このパンって」
アニ「私が」
アニ「調査兵団に入ったらどうなっていたかな」
エレン「いまからでも入れると思うけどな」
エレン「いつも人いないからさ」
アニ「ありがと。でもそうじゃないんだ」
アニ「あんたが憲兵団に入ったら」
エレン「入らねーよ」
アニ「どこまで引き返せば」
アニ「間違いを治せると思う?」
アニ「それを考えてみてさ」
アニ「それがずっと昔からだったら」
アニ「それは自分じゃないね」
エレン「今日は話すんだな」
アニ「たまにはいいよね。今までの分も含めてさ」
アニ「外がよく見えるところだね」
アニ「まだ人が全然見える」
エレン「壁も見える」
エレン「知ってるかこんな噂?」
アニ「噂って?」
エレン「この壁の中に外の世界に抜け出す」
エレン「抜け穴があるんだってな」
アニ「それって」
エレン「知ってるのか?」
アニ「聞いたことある」
エレン「おう」
アニ「このパンって?」
エレン「教えてくれよ」
アニ「私が聞いたのはその逆」
アニ「壁の中に内地に行く」
アニ「抜け穴があるって」
エレン「内地ってどうなんだそれ」
アニ「普通の人はそうは思わないよ」
エレン「普通じゃないみたいに」
アニ「当然」
アニ「安全なほうに行きたいでしょ」
アニ「今度行ってみる?噂の場所はわかるよ」
エレン「おう、いこうぜ」
アニ「へえ」
アニ「このお店子供がいるんだ」
エレン「どこにだ?」
アニ「奥のほう。手を洗いにいったときにいた」
エレン「店の子かな」
アニ「そうでしょ」
エレン「へー・・・それでさ」
エレン「お前は行きたいところってあるか?」
アニ「じゃあ」
アニ「あそこ」
エレン「なんだよ外を指差して」
アニ「壁の上に行きたい」
エレン「なんであんな所に行きたいんだ?」
アニ「そう、憲兵団になってから行かなくてさ」
エレン「昔はよく訓練で行ったな」
アニ「行ったね」
アニ「そういえば訓練兵のときって」
アニ「あんた割とよく泣いたよね」
エレン「ぜっ全然、泣いたことなんてねーよ」
アニ「悪いなんて言ってないよ」
アニ「まあ私は泣いたことなんてないけど」
エレン「お前な」
アニ「あと何か頼む?」
エレン「まだスープがあるな」
アニ「頼む?」
エレン「えっと」
エレン「スープうまいな」
アニ「そうだね」
エレン「指輪」
アニ「えっ?」
エレン「着けてたんだな」
アニ「悪い?」
エレン「悪いなんて言ってねーよ」
アニ「繰り返しみたいな会話」
エレン「悪くないだろ」
アニ「そう」
エレン「これとかお前も作れるのか?」
アニ「うーん」
エレン「なんか料理得意な気がしてたな」
アニ「食べたことないよね」
エレン「まあそりゃあ」
エレン「でも調理当番の時とかは」
アニ「あれはそんなんじゃないよ」
アニ「それに私だって分かった?」
エレン「うーん」
アニ「ほら」
エレン「芋の皮むきが上手かった」
アニ「それって・・・どうなの?」
アニ「果物がきたよ」
アニ「果物だ」
アニ「デザート」
アニ「すごいね」
エレン「ああ・・・んっ?お前のほうが多くないか?」
アニ「知らないよ。この店のサービスじゃない?」
エレン「いいけどさ」
アニ「いる?」
エレン「お前のだから、いいよ」
アニ「みんなそう言うんだね」
エレン「じゃあくれよ」
アニ「少しは」
エレン「食べたか?」
アニ「食べたよ」
エレン「それじゃあ行くか」
アニ「払ったの?」
エレン「さっきな」
アニ「冗談だったんだけど」
エレン「使う時間なんてないからさ」
アニ「払うよ」
エレン「別に」
アニ「あー」
エレン「またでいいよ」
エレン「今度みんなでこようぜ」
アニ「できたらいいね」
アニ「でも」
アニ「今度って言えるほど」
アニ「私達」
アニ「そんなに生きていないでしょ」
アニ「ごめん」
アニ「バカみたいだから」
アニ「もう少しちゃんと言えたら」
エレン「・・・」
アニ「エレン?」
エレン「あそこ見てみろよ」
アニ「えっ?」
エレン「店の子供が手を振ってる」
アニ「なんで」
エレン「なんでなんてより」
エレン「手を振ってやれよ」
アニ「うん」
アニ「じゃあね」
エレン「ははっ」
アニ「何っ?」
アニ「今のお店良くなかった?」
エレン「?うまかったよ」
アニ「へえ」
アニ「ねえ」
アニ「行く?」
エレン「ああ、行こうぜ」
アニ「いまから?」
エレン「まさか」
アニ「そうだね」
エレン「装備を持ってこいよ」
エレン「じゃあな」
アニ「そうだね・・・」
アニ「今日は」
エレン「うん?」
アニ「また会えますようにって」
アニ「子供が言ってた」
エレン「さっきの子が?そういや何時仲良くなったんだ?」
アニ「指輪落としたんだ」
アニ「そしたら」
アニ「拾ってくれてね」
アニ「これはあなたの?だって」
エレン「うん」
アニ「そうだよって」
アニ「私は言って」
アニ「キラキラしてるって言ってた」
アニ「それで」
アニ「欲しい?って言ったんだ」
エレン「それで?」
アニ「そしたらね」
アニ「あなたのだからって」
エレン「大事にしなくちゃな」
アニ「ありがとうって言うよ」
エレン「来たな」
アニ「来たけどさ」
アニ「そんな言葉使うものなの」
アニ「来たなとか」
エレン「でっかいなー」
アニ「聞いてないふりは良くないね」
アニ「大きいのは知ってるし」
エレン「細かいんだって」
アニ「はいはい。そうだね大きいね」
エレン「だろっ?」
アニ「でも勝手に登っていいの?」
エレン「駐屯兵団に知り合いがいるんだ」
アニ「私の知らない?」
エレン「知らない人だな」
エレン「子供のときからの」
アニ「そう」
アニ「いこうか」
アニ「見上げていても何もない」
エレン「アンカー打つから、ちょっと離れてろよ」
アニ「・・・」
エレン「それにしてもさ、訓練でもないのにいるなんて変な気分だな」
アニ「変な気分は前からだけどね」
エレン「気分悪いのか」
アニ「あんたより平気だよ」
エレン「?ならいいけど、見つかるなよ」
アニ「えっ?許可とってないの?」
エレン「知り合いがいるって言っただけで」
エレン「俺が許可なんてとれる訳ない。そうだろ?」
アニ「威張られてもね」
アニ「壁の間際ってすごい暗いから」
エレン「ほんとに、ここは夜みたいで」
エレン「どこに日があるのかわからないな」
アニ「早くいこうか」
エレン「あせんなよ」
アニ「わかってる」
エレン「よっと」
アニ「流石5位早いね」
エレン「うるせーな4位」
アニ「誉めてるから」
アニ「素直に受け取るもんだよ」
エレン「わかったよ」
エレン「けどいつまでもそんなこと言ってても仕方ないな」
アニ「いつまでも言えることじゃないね」
アニ「だからほら」
エレン「着いたな」
アニ「・・・明るい」
エレン「アニ来てみろよ!」
エレン「俺らがいたところが見える」
アニ「あんな小さいところで話していたんだね」
アニ「でも」
アニ「外も見ようよ」
エレン「おう!」
エレン「どこまでも見えるな」
アニ「どこまでもは見えないけど」
アニ「うんすごく」
エレン「すごいな。やっぱりすげえな」
アニ「うん・・・でも」
アニ「何度も見てるのに?」
エレン「こんな風に見ることは無かったさ」
アニ「あんたが前に言ったことだよ」
アニ「私に」
アニ「もう忘れている?」
エレン「そうだっけか」
アニ「エレン下を見て、もう一度街を」
アニ「聞いてよ」
アニ「私達の影がさあ、街に映っていれば」
エレン「ははっ、そしたら今度こそ一番大きな巨人だ」
アニ「やっぱり」
アニ「そんな無邪気でさ」
アニ「いられるのはなんで?」
アニ「少し聞いてみたかった」
アニ「巨人になれることをどう思ってるの?」
エレン「・・・それはもうさ」
エレン「強くていいだろ、それで倒してやるんだ」
エレン「なにもかも、だから強くて」
エレン「やっつけてやる」
エレン「全然大丈夫だ」
アニ「あー」
アニ「しなくていいんじゃない」
エレン「何をだよ?」
アニ「無理してそんな子供っぽくしなくてもさ」
エレン「はぁ?」
エレン「言うなよ。そんな事を」
エレン「それにそれは」
エレン「お前もだろ」
アニ「それが?」
アニ「誰も言ってくれないよね。お互いに」
エレン「俺が無理してるんだったらお前は」
アニ「それっていい事だと思うよ」
アニ「誰も好きにならなくていいんだ」
アニ「さよならを言う手間も」
アニ「謝ることもしなくていいからね」
エレン「俺はただ単純にさ」
アニ「無理してるよ」
アニ「こんなところにいるんだ」
アニ「大切な作戦の前で」
アニ「逃げだした」
エレン「・・・」
アニ「訳じゃないよね」
アニ「でもそれに近い」
アニ「監視があるの?」
アニ「訓練がきつい?」
アニ「なんでいるの?」
アニ「許可はとれた?」
アニ「前にも聞いた?」
エレン「許可なんてとれるわけねーって」
エレン「さっき言っただろ」
アニ「ここにいたいんじゃなくて」
アニ「いたくなかったんでしょ」
アニ「あんたを知っている人達から」
アニ「例えば幼馴染とか」
エレン「知ったこと言うなって」
アニ「なんで逃げ出したかったの?」
アニ「なんで私?」
アニ「友達がいなさそうで」
アニ「唯一憲兵団に所属している私が」
アニ「話易かった?」
アニ「それとも憲兵団しか知らないような情報が」
アニ「欲しかった?」
アニ「こっそり壁の外に出るような情報が」
アニ「1人で壁の外に行って」
アニ「ボロボロになって」
アニ「しまいたかった?」
アニ(そう言って欲しいと願うのは)
エレン「俺はそんな弱くねーよ」
エレン「弱くないから」
エレン「強くなって」
エレン「全然大丈夫って言うんだよ」
エレン「お前に言ったみたいに」
アニ「私は練習?」
エレン「違う」
エレン「みんなが死んでしまうことなんて」
エレン「考えられないくらいに」
エレン「もっと強くなって、だから」
エレン「この力をもっと上手く使えれば」
アニ「だから壁の外で1人で実戦を?」
アニ「死ぬよ」
アニ「でも残念だったね」
アニ「勝手に壁の外なんか行けるわけないじゃない」
アニ「外にいけるなんて思ってたら結局は」
アニ「どこにも行けないんだ」
アニ「私達どこにも行けないでしょ?そしたら」
アニ「もう日が暮れて帰るしかない」
エレン「まだ暮れてないだろ」
アニ「うん」
エレン「ここにいるのは」
エレン「お前の言ってること、それだけじゃない」
アニ「それだけだって」
エレン「お前もそれだけじゃない」
アニ「要らないよ」
アニ「全然」
アニ「だからやめよう」
エレン「夕日のときって遊ぶ時間だったんだ」
エレン「子供の時、そうじゃなかったか?」
アニ「私はそんなこと無かった」
アニ「そんなことしてたら」
アニ「子供の時に見下げられると思うから」
エレン「だから」
エレン「俺らは戦いっぱなしで」
アニ「だったらあんたの幼馴染としてれば」
エレン「それも違ってさ」
エレン「俺、お前のそういうの見たことないんだ」
アニ「やっぱり」
アニ「思ってたとおりに」
アニ「ひどいね」
アニ(ずいぶん優しくて)
アニ(ごめん)
エレン「悪い、なんて言ったんだ?」
アニ「やっぱりって」
アニ「それは私だってここで」
アニ「話していたいって思うことだってある」
アニ「だけど最初から夕日になって話すから」
アニ「時間なんて無いんだ」
アニ「わからないけど」
アニ「しらないけど」
アニ「それはきっと誰かのためだから」
アニ「結局のところ」
アニ「今になってなんでそんなことを」
アニ「ちょっとだけだと思う」
アニ「言えるのは明るいとか眩しいねとか」
アニ「そんなことしか言えないでしょ」
エレン「なんでだよ。それで悪いのか」
アニ「それしか言えないんだもの」
アニ「それだけでも好きに言えるのは」
アニ「これで最後にしたいよ」
アニ「明日になったら」
アニ「そんなのには永遠に成れない」
アニ「それが終らないように思える」
アニ「私達、辿り着けないまま」
アニ「ここから壁が壊れる」
アニ「見てみてよ」
アニ「ある日突然くる脅威」
アニ「壁が壊れるとしたら」
アニ「それは私の名前みたくなっちゃうね」
エレン「今、壁が崩れたらどうしようもないかも知れないけど」
エレン「壁が壊れる音が聞こえたら」
エレン「ここにいてくれてありがとうって」
エレン「互いに言うのは悪くないだろ」
エレン「無理じゃないさ、そのくらいの時間あるだろ」
エレン「俺達がここにいたことなんてない」
エレン「なんていうか」
エレン「わかるか?」
エレン「俺は今わかった」
エレン「俺達がここにいたことなんてなかったんだよ」
エレン「だからなんとかなんだろ、しなきゃな」
アニ「なんとかなるかな?」
エレン「なんとかなる」
アニ「絶対に?」
エレン「絶対だ」
アニ「なら嬉しいかもね。でも」
アニ「嘘だったらあんたを笑ってやろうかな」
エレン「笑うなよ。本当だったらどうだ」
アニ「なら私を笑ってもいいよ」
エレン「笑うかよ」
アニ「別に・・・これからは・・・」
アニ「恐れないでいいよ」
アニ「怖かったら」
アニ「私に押し付けていい」
アニ「怖がることもないね」
アニ「私は」
アニ「なにも要るものなんてなくて」
アニ「ただ」
アニ「夕日が落ちるまでの間」
アニ「この時間だけでいいんだ」
アニ「私は」
アニ「それから昔も今も明日もずっと先も」
アニ「忘れていい」
アニ「なにも思わなくていい」
アニ「立ち止まった瞬間があって」
アニ「その瞬間が」
アニ「夕日の形が思い出せないような」
アニ「光の中の表情を思い出すような」
アニ「光の中で」
アニ「一瞬以下が」
アニ「私に残して」
アニ「残るから」
アニ「それを信じるんだ」
アニ「暗いね」
エレン「気をつけろよ」
アニ「暗いっていっただけだよ」
エレン「帰ろうぜ」
アニ「怖いね」
アニ「暗くなって」
アニ「どうだろう」
アニ「私達すぐに」
エレン「そういえばさ」
アニ「何?」
エレン「なんで壁の上に来たかったんだ?」
アニ「バカじゃない」
アニ「壁の上って」
アニ「最後まで」
アニ「夕日が見れるから」
エレン「子供泣いてるな」
アニ「嘘だ」
これで終わりです。ありがとうございました。
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感じがいい