貴音「このような夜半に、空蝉の声が……」
ミミ…ミン……ミミ…ミン
貴音「この異様な暑さと、都会の街明かりのせいでしょうか……月光と、蝉の声……面妖な取り合わせですが、これもまた風流な」
ミ…ミミン…ミミミン……ミンッ
貴音「……? 近づいて、きている?」
ミミミン…ミミミン…ーサミンッ
貴音「せ、蝉ではないっ!? 何奴!! 何奴です!! 姿を見せなさい!!!」
ミミミン ミミミン
菜々「ウーサミン!!! ハイッ!!!!」ビョンッ
貴音「」
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菜々「メルヘンパワーに誘われて、ラブリーウサミン十七歳! 只今参上!! キャハッ!」
貴音「不審者です!! 誰か! 誰か!!」
菜々「ちょちょちょっとぉ~! 酷いですよ貴音さん! ナナですよ! 安部菜々!!」
貴音「はて……安部菜々……」
菜々「こないだ一緒にお仕事したじゃないですかぁ!」
貴音「この間……」
菜々「そうですよ! 新作ゲームの宣伝やったじゃないですか。貴音さん、美希さんと、杏ちゃん、それとナナで」
貴音「はて……覚えがありませんね」
菜々「えぇーっ! ボケるには早いですよ! ナナだってまだ……いえ! ナナも若いですけど! 現役JKなんですけど!!」
貴音「……」
菜々「四条さんだっていくら白髪でも……い、いえ、四条さんは銀髪ですけど!! ……アハハ」
貴音「…………」
菜々「は、ハハ……」
貴音「安部菜々」
菜々「は、はい」
貴音「貴方の自爆芸に、わたくしを巻き込むのはおやめなさい」
菜々「はい……ごめんなさい…………って、自爆芸じゃないですよ!」
菜々「っていうかやっぱり覚えてるじゃないですかぁ!」
貴音「はて」
貴音「わたくしを驚かせた罰です」
菜々「もー……」
貴音「そもそも、なぜこのような時間帯に、このような場所へ……うさみん星の方角とは異なるのでは……」
菜々「いえ、月の光に導かれ……というか」
貴音「ではわたくしが、月に代わっておしおきをば」ガシッ
菜々「あっやめてくださっあぁっ!? なにをっああぁーーっ!!?」ビクッビクッ
菜々「あ、あれ、なんだか肩が軽く……」
貴音「四条流、指圧術です」ファサッ
菜々「というか貴音さんの年齢でも知ってるんですね。セーラー……はっ! い、いえ、私も十七歳ですけど!」
貴音「長く愛されている作品であり、近年、復刻もされましたので」
菜々「そ、そーですよね! ナナも、ナナもリメイク版で知ったんです!」
貴音「それで」
貴音「なぜこんな夜中に奇声を発しながらわたくしに接近してきたのですか」
菜々「あ、あー、アハハ~……」
貴音「危うく四条流護身術が発動するところでした」
菜々「す、すみません……」
貴音「一瞬気がつくのが遅れていたら、ばらばらになっていましたよ」
菜々「バラバラに……?」
貴音「ばらばらです。しょっくのぱぁです」
菜々「ロボコ……いえ、……なんでもないです」
貴音「はて?」
菜々「…………」
貴音「どうかいたしましたか?」
菜々「い、いえっ、なんでもないです。アハハ……」
貴音「して、理由は」
菜々「え、えぇ~っと……じ、実はですね、しゅ……終電を逃しちゃいまして……」
貴音「それは……」
菜々「い、いえ! 飲んでません!! 飲んでませんよぉっ? ナナはまだ未成年なので! はい!」
貴音「知っています」
菜々「で、ですよね……それで、とぼとぼ歩いてどこか泊まれるところを探していたら、貴音さんの姿が見えたので……つい」
貴音「奇声を上げながら迫ってしまった、と」
菜々「……反省してます」
貴音「まぁ……もうよいのですけれど。心細かったのでしょうし……わたくしも、寂しい時に仲間を見つければ、ついつい、てんしょんあっぷ、してしまうやも」
菜々「そーなんですよ、嬉しくて、つい…………あの、ところで貴音さん」
貴音「なんでしょう」
菜々「貴音さんもこんな遅くに出歩いていたわけですけど……お家、この辺なんですか?」
貴音「……」
菜々「……」
貴音「とっぷしぃくれっとです」
菜々「やっぱり」
菜々「い、いえ! あわよくば泊めてもらおうだなんて、そんなさもしいこと考えてませんよ!?」
貴音「……申し訳ございません。わたくしの住む場所は、宿泊していただくことはできないのです……」
菜々「は、はぁ、そうなんですか……貴音さんもやっぱり、……他人に見せられないようなもの、あるんですか?」
貴音「いえ、とくには……」
菜々「マンガが山のように積まれているとか、下着があちこちに散らかってるとか、あ! 部屋じゅうがラーメンまみれとか!」
貴音「安部菜々」
菜々「は……はい」
貴音「四条流護身術、一の奥義……」ユラァ
菜々「ごごごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
貴音「あまり憶測で語るものではありませんよ」
菜々「そ、そうですよね…………で、でしたら!」
貴音「なんでしょう……?」
菜々「乙女同士の、ぶっちゃけトークとか……しちゃいませんか!?」
貴音「ふむ……乙女の、ぶっちゃけとぉく、ですか」
菜々「ほら、聞いてるのはお月様だけですし、一度ぶっちゃけてしまえば、変な憶測で語られることも」
貴音「それは貴方が自重すればよいのでは」
菜々「……ですよね、ハハ……」
貴音「しかし、面白い趣(おもむき)ではあります」
菜々「で、ですよね!!」
貴音「これを機に、本音で語らい、仲を深めるのも一興……かと」
菜々「そう! そうですよ!! そで擦り合うもなんとやら。ここで会ったのも何かの縁ですし!」
貴音「では、まずは……」
菜々「軽めに、お互いの第一印象、とかでどうでしょうか?」
貴音「……えぇ、それで。……わたくしの、うさみん嬢への第一印象は」
菜々「……」ゴクリ
貴音「蝉かと思いました」
菜々「それはさっきですよね?」
菜々「どれだけ根に持ってるんですか……」
貴音「ほんの、じょぉく。です」
菜々「で、実際のところは?」
貴音「そうですね…………非常に愛らしい方だな、と」
菜々「そ、そーですか?」
貴音「はい。姿形のみでなく、その所作も。とても洗練された愛らしさで」
菜々「いやーなんだか照れちゃいますね。そこまで言われると。長年頑張ってきたかいが……いえいえ! これは小さい頃からという意味でですね」
貴音「分かっております。……わたくしも、うさみん星のことは故郷で聞き及んでいましたので」
菜々「……へぇ! 故郷で…………ん?」
貴音「戒律の厳しいうさみん星から、憧れだけでここまで……さぞかし苦労もあったことでしょう」
菜々「は…………は、はい……はい?」
貴音「いくつもの銀河をめるへんちぇんじさせたという、うさみん星人の力……わたくしも幾度となく耳に……」
菜々「耳に……?」
貴音「耳に……」
菜々「ミミミン!!」
貴音「みみみん♪」
菜々・貴音「「ウーサミン!! ハイッ!!!」」
貴音「とはいえ、地球には移民を監視する番人……いえ、処刑人も存在します」
菜々「話終わらなかった……」
貴音「過去には、二十億三千の移民が、一瞬で抹殺された……との記録も」
菜々「ヒエッ……そ、そんな大勢の人が……」
貴音「…………処刑人は、すぐ側に潜んでいます…………ひょっとしたら、貴方の隣人が……」
菜々「あわわわわわわ」ガタガタ
貴音「……」
貴音「いっつあじょぉく」
菜々「で、ですよ、ね……」
貴音「では、うさみん嬢から、わたくしへの第一印象は」
菜々「み、ミステリアスな方だなぁ……と。あ、それは今もですけれど」
貴音「ふふ、よく言われます」
菜々「気品があって、オーラって言うんですかね? そういう、不思議な力を感じます。本当にお姫様みたいな……」
貴音「いえ、わたくしなどは」
菜々「そんな謙遜を」
貴音「王家とは名ばかりの、没落した身。民たちもこの広い宇宙で散り散りとなり……わたくしに、姫と呼ばれる資格など」
菜々「この話はやめましょぉおお!! はいはいやめやめ!!」
貴音「失礼……つまらない話をしてしまいましたね」
菜々「い、いえ、そんなことは……アハハ、ハハ」
貴音「では次は」
菜々「は、はい」
貴音「地球に来て一番驚いたこと、などはいかがでしょう。わたくしはやはり男女という性別の存在です。わたくしたちのような雌雄の区別がないいせいじ」
菜々「わああああああああああ!!! やめ!! やめましょぉー!!!」
貴音「はて?」
菜々「なしで!! ぶっちゃけトークはなしでお願いします!!」
貴音「そうですか……残念ですね。久方ぶりに、宇宙とぉくができると思ったのですが」
菜々「は、ハハハ……またの機会にお願いします……」
ホ……ホ……
貴音「おや……ふくろう、でしょうか」
菜々「こんな都会にもいるんですか?」
貴音「美希に知らせたら喜びそうですね」
菜々「そうなんですか?」
貴音「えぇ、美希は」
ホ…… ホ…… ホ
菜々「……」
貴音「……」
菜々「あの」
貴音「なにか」
菜々「……近づいてきてません?」
貴音「なにがです」
菜々「いやその」
ホ…… ホー……ホー ホ
菜々「ふくろう……らしき、なにか」
貴音「…………」
ホー ……イホー ……ホ ホ? ホー
貴音「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空」ブツブツブツ
菜々「唱えないで下さい!! 余計怖いですからぁ!!!」
ホー ホ ……ホ? ホ? ……イホー
貴音「色不異空! 空不異色! 色即是空! 空腹是色!!!」ブンブンブンブン
菜々「ひぃい……白目剥いてヘドバンしてるぅう」
ホー ホー ホ? ホ? ホ? ホ?
貴音「ああああああああ悪霊退散悪霊退散悪霊退散」ガックガックガックガック
菜々「こわいこわいこわい貴音さんがこわい!!」
ホ? ホ? ホ? ホ? ホ? ホ?
??「はいほーーーーーっっ!!!! なのです!!!」ピョーン
貴音「くせ者ぉおおおーーーーー!!!!!」シュバァアッ
菜々「ほげぇえええええええええええ!!!」グサァーー!!
まつり「ほ?」
貴音「うさみんは ばらばら になった」
……
菜々「ぅ、う~……ん」
まつり「しっかりするのです」
菜々「はっ!? ゆ、夢? 悪夢……? 貴音さんの手刀が、ナナのおなかに……」
まつり「ばっちり現実なのです」
菜々「…………貴音さんは」
まつり「ウサミンはこちらで介抱するということで、お帰りいただいたのです」
菜々「と、いうこと、は……」
まつり「はいほー」
まつり「ウサミンチャレンジ『秘密主義の銀色の王女から、秘密を聞き出せ!』はー」
まつり「失敗!!! なのです」
菜々「うわぁああああああああ!!!」ガクッ
まつり「というわけで、罰ゲームけってーい! なのです」
菜々「いやぁああああ!! あんなに頑張ったのにぃい!!!」
まつり「罰ゲームの発表は、CMの後で。なのです」
……
カゼヒクノー カゼヒクノー♪
杏「あー……いいねこの枕…………やわらかくって……どんどん沈みこんでく」
美希「……zzZ…………なの……」
杏「……もうここから一歩も動ける気がしないよ……ほら、なにしてんの。こっち来なよ」
美希「ん~……あふぅ…………ミキたちといっしょにぃ……お昼寝、……しよ?」
杏「だらだらするの気持ちいいよー?」
……ヒトをダメにする、フェアリーまくら。
……妖精が寄り添うような眠りを、あなたにも。
美希「抱き枕も~とってもいい感じだって思うな~」ギュウゥ
杏「ぐえっ、杏は抱き枕じゃなぁい!」
美希「ミキのおっぱいと枕、どっちがやらかい?」
杏「知るか!!」ベチン
美希「あぁんっ」
スイミン スイミン スイミン スイミン♪
スイミン ブソク♪
美希「おやすみなさ~い…………あふぅ」
杏「はぁ…………おやすみ」
……
響『はいさい! 来週のこの時間は!?』
幸子『カワイイボクと、カンペキな響さんが、またまた秘境探索に出かけちゃいますよ!』
響『果たして、珍獣ヌチャットパプスと友達になれるのか!』
幸子『ならないでいいですよ!!』
響『それ以前にまず生きて帰れるのか!!』
幸子『とりあえず毎回ボクに笑いダケを食べさせるのをやめ』
響『お楽しみにー!』
まつり「来週もわんだほーな冒険が見られそうなのです。そして、今週チャレンジに失敗したウサミンにはー」
まつり「なんと!! お二人の秘境探索に同行し、レポートしてもらうのです!!」
菜々「うぁああああ……頑張ったのに……あんなに頑張ったのに……」
まつり「結果が伴わなければ意味ないのです。だいたい貴音さんの秘密を探るどころか、自爆して醜態をさらすばかりで」
菜々「ぁあああ……」
まつり「最終的には完全に弄ばれていたのです」
菜々「もう……自爆テロに巻き込んで動揺させていこうかな……とか」
まつり「動揺どころか、たしなめられてたのです。しょっぱなで」
菜々「はい……格が違いました…………銀色の王女。さすがです……!」
まつり「そもそもよく挑んだのです」
菜々「ぅう……だって、だって……貴音さん、実はポンコツだって噂あるから……不意をつけばいけるかな、って……」
まつり「ポンコツ勝負ではウサミンの勝ち、ということなのです」
菜々「アタシ……ポンコツアンドロイド……」ガクッ
菜々「まつり姫さんより、キャラ崩壊を誘いやすいかなーって、思ったんですけどね……」
まつり「……ほ?」
菜々「あ、いえ! まつり姫さんは本当のお姫様ですよね! キャラとかじゃないんで!! アハハ!」
まつり「さん、はいらないのです。……それだと、さかなクンさん、みたいなのです」
菜々「あ、はい……まつり姫はキャラとかじゃないんで。無論、ナナもですけど!!」
まつり「言えば言うほどなので、ちょっと黙ってろなのです」
菜々「キャラ、崩壊してませんか……?」
菜々「でも本当に、貴音さんの部屋は見てみたいですよねー」
まつり「それは確かに、まつりも見てみたかったのです。きっとびゅーりほー! なのです」
菜々「いえいえ、見せられないってことは、かなりの汚部屋かもしれませんよ」
まつり「意外とミーハーで、男性アーティストのポスターが部屋じゅうにべたべた張ってあるかもしれないのです」
菜々「もしムチとかロウソクとかが置いてあったら見なくて正解だったかも。それじゃ王女じゃなくって女王様ですね! あははは」
貴音「……」
菜々「あとはなんでしょう。見られて困る……」
まつり「ほ?」
フリップ[安部さん! うしろうしろ!!]
菜々「うしろ?」クルッ
菜々「誰もいませんよ?」
菜々「やだなー、今時ドリフネタですか? 脅かさないでくださヒィイイ!!??」
貴音「…………」
貴音「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ あぶらまし めんかた」ユラァ……
菜々「あばばばばばばばばば」ガクガクガク
まつり「…………」
まつり「こほん。……まつり姫と愉快な仲間たちのわんだほーバラエティ」
まつり「来週も見るのですよ? ……ね?」
~♪
アタシ トンコツ アンドロイド
アナタサマ ス キ
貴音「どきどき 恋しちゃったの♪ すきすき あなた様 るん♪」
菜々「家政婦 地味ドロイドが♪ 恋してるなんて バカな♪」
[この番組は ゴランノスポンサー の提供でお送りいたしました]
[961エンターテイメント フェンリル広報部 モンデンキント]
アンドロイドは夢を見る~
メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ
の夢~
今は 家のベッドで おかゆつまむ夢よ~
END
ここまで読んで下さった方は、本当に有難うございます。
前作
美希「きょーおーもぉいつーもの♪」双葉杏「悪夢は無視ーしーてー♪」
輿水幸子「カワイイボクから相談されるなんて、響さんはカンペキですね!」
ではまた。
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