一ノ瀬志希「科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース」 (85)


P「はぁ……」

P(今日も仕事疲れた……)

P(最近は色々な子の人気が上がり始めて……仕事も莫大に増えて……)

P(嬉しい事ではあるけど、猫の手を借りても足りないくらいに忙しくなってしまった……。
  自分ながらに仕事は出来る方だと自負していたが……)

P(寝不足だしまともな食事も摂れてないし、いつ体を壊すか……)

P「うぅ、今日は久しぶりに家に帰れる……早く帰って寝よう……」

比奈「あ、プロデューサーだ」

P「はぁ、疲れたなぁ……」フラフラ

比奈「何だかフラフラと……大丈夫っスかね……」

P「……」トボトボ

比奈「あ、プロデューサー! 赤信号の交差点に入っちゃ駄目っスよ!」

P「家に帰ろう、帰ろう……」


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ププーッ


比奈「わっ、と、トラックが! プロデューサー! 危ないっス! トラックが!」

P「ん? 比奈の声がするような……あ、向こう側にいたのか」

比奈「避けないとヤバイっス! 危ないっス!」

P「えぇ?」


キキーーーーッ
ドッカーーーン


P「ぎゃああああああああっ!」

比奈「プロデューサーッ!」


ピューンッ
ガシャッ ドテッ


比奈「ぷ、プロデューサーが……トラックに……」


「おい、どうしたんだ!」
「人が轢かれたみたいだぞ!」
「とりあえず救急車呼べ救急車!」


比奈「あ、あぁ……」ヘナヘナ


――


ピーポーピーポー


比奈「あぁ……ヤバイっス、ヤバイっスよこれ……」

看護師「あ、先程運ばれた患者さんの関係者さんですか?」

比奈「あ、は、はい! それでプロデューサーは! プロデューサーは無事なんでスか!?」

看護師「はい。患者さんは幸運にも極めて軽傷です。一応精密検査などはしますが、命に別状は無いそうです」

比奈「ほ、本当でスか!」

看護師「はい」

比奈「良かった……良かったっス……」

看護師「それでは私は失礼します。何かあったらまたお伝えしますので」

比奈「は、はいっ」

比奈(良かった……プロデューサーが無事でっ……)

比奈「……あっ、皆にも連絡しないと……」


……


P「う、うーん……」

P(ここはどこだ……俺は一体……)

P(はっ……そういえば俺は車に轢かれて……まさか俺は死んだのか!?)

??「ハーイ? だいじょーぶ?」

P「わっ!」

??「そんなにビックリしなくても良いのに」

P「え、誰君? というか、ここ何処? え、病院?」

P(病院にしちゃなんか物騒な物が沢山置いてあるんだけど……)

??「まぁまぁ落ちついて。キミは事故に遭って病院に運ばれて来たんだよ。
   それでここは病院の……集中治療室ってとこかな」

P「は、はぁ」

??「で、あたしは一ノ瀬志希。海外から来た……お医者さんだよ♪」

P「そ、そうですか(随分若いな)」

志希「まぁ手術でもしようかと思ったんだけど、残念な事に軽傷だから色々な事はできないんだけどね~。ホント残念っ」

P(何で残念なんだそれが……)


P「ま、まぁ……軽傷で済んでるなら良かったよ。何かトラックに轢かれたような気がしたから死んだかと……。
  というより、君は本当にここのお医者さんなのかい? 随分若く見えるけど……高校生とかじゃなく?」

P(白衣は着ているけど、その下に見えるのは……学校の制服か?)

志希「キミ、この状況でもちゃんと人を観察できたりするんだね。感心感心。えーと、うーん……」クンクン

P「え、何。なに臭い嗅いでるの」

志希「……うん、やっぱりキミは良い匂いがするね! あたしの予想通り! ね、あたしキミの事気に入っちゃったから、やっぱり集中治療する事にするよ♪
   何か望みの治療とかある?」

P「の、望みの治療?」

志希「はい、これがメニュー。好きなの選んでよ」

P「は、はぁ……(メニュー? 何だこれは……)」


>心身共に疲れている
 髪の毛を増やしたい
 精神面を強化したい
 特殊な能力を身に付けたい
 今より強くなりたい


P(な、何だこのメニューは……)

志希「どれも無料だからね、遠慮しないでね」

P「さ、さいですか……」


P(心身共に疲れてる……うーん、まぁ今現状はこれなんだけどなぁ)

P(髪は遺伝的にハゲたりしないから大丈夫だからいらないとして……)

P(精神面を強化かぁ、強くなったら売り込みとかももっと上手くできるようになるかな……いやそれ以前に……)

P(この最後の二つが気になるんだけど……これは一体何なんだ?)

P(特殊な能力……何だろう、超能力かなんかか?)

P(そして今より強くなってどうするんだろう……)

P「え、えっとぉ……」

志希「なになに? 質問?」

P「この能力って言うのは……」

志希「あぁそれ? それで成功すればね、逆境に強くなったりチャンスに強くなったりするよー」

P「へ、へぇ……(成功すれば? 失敗もするのか?)」

志希「ねぇー早く選ぼうよー。あたし待つの嫌いなんだー」


P「えぇ? じゃ、じゃあ……えっと……っていうかこの治療って絶対選ばなきゃ――」

志希「はいっ! 今より強くなりたいねっ、りょうかーいっ♪ キミはパイオニアだねー♪」

P「え、まだ何も」

志希「はいはい、とりあえずこれにサインしてねー」

P「え、えぇ?」

志希「まぁ捺印だけでも良いよ、後でこっちが勝手に足すから」グイッ

P「ちょ、ちょっと」ペタッ

志希「はいオッケー♪ ゲドー君、準備開始!」

ゲドー「ギョッギョー」


ガシンッ ガシンッ


P「わっ、何だ! 足と手が! ていうか今の誰だ!」


志希「あんまり薬剤の中で暴れられると大変だからねー。ちなみに麻酔とかも無いから安心して♪」

P「ま、麻酔無しっ? え、何かの手術でもするの?」

志希「手術じゃないよ。人体実験」

P「もっと性質が悪いじゃないか!」

志希「さすがのあたしでもこの実験の成功確率は50%を切るからね、頑張って♪」

P「待て! 失敗したらどうなるんだ!」

志希「……」

P「おい! 何で黙る!」

志希「さぁゲドー君! カプセルの中に入れちゃって♪」

ゲドー「ギョギョ~」

P「わーっ! 運ぶな! やめろーっ!」

志希「科学ノ進歩ニ犠牲ハツキモノデース。うーん、一度言ってみたかったんだー♪」

ゲドー「ギョギョ」ガチャンッ

P「わっ、なんだこのカプセルは! 出してくれ!」


志希「さぁゲドー君。この前作った『アレ』でカプセルを満たして!」

ゲドー「ギョギョ~……」

志希「弱気になっちゃ駄目だよ。あたしが満たしてって言ってるんだから満たして」

ゲドー「ギョ……」


オオオオオオオンッ
ブクブクブク


P「わっ! 床が開いて……何だこの液体!」

志希「じゃあ実験開始!」

P「なんだよこの液体! く、臭い! 夏場に放置し過ぎてチョコレートみたいな見た目になったベーコン並に臭い!」

志希「じゃあ気をしっかり持って! あんまりその液体飲むと大変だからねー」

P「ううううわああああああっ!」


……



志希「気絶しちゃったみたいだね」

ゲドー「ギョ」

志希「もう良い時間かなー。ゲドー君、薬剤抜いて」

ゲドー「ギョッ」


ブクブクブク


志希「ふんふん……よし実験成功♪ じゃあゲドー君、元の場所に戻してきて」

ゲドー「ギョッ!」


――



看護師「Pさん」

P「うーん……」

看護師「Pさん、起きて下さい」

P「ん~……ここは……」

看護師「病院ですよ。貴方は事故でここに運ばれて来たんです」

P「え? あぁ……確かそんな事があったような……」

P(あれ……なんか頭の中から抜け落ちてるような……)

看護師「これで治療は終わりです。もうお帰りになって結構ですよ。軽い怪我で良かったですね」

P「は、はい。お世話になりました」

P(うーん、思い出せない……)

P(でもまぁ良いか。何か体が気分爽快だしっ)


スタミナが上がった。
攻撃コストが上がった。
守備コストが上がった。
振り分けポイントを30手に入れた。
疲れがとれた。
『ケガしにくい』になった。


……



比奈「……」

P「あれ、比奈。どうしたんだこんな所で」

比奈「あっ……ぷ、プロデューサー……」

P「あぁー、えっと……見舞いに来てくれたのか?」

比奈「プロデューサー!」バッ

P「うわっ」ギュム

比奈「私、心配したんでスよ! あんなデカイトラックに轢かれて、死んじゃうんじゃないかって……」

P「あ、あぁ……ごめんな」

比奈「ほ、ホントに心配したんでスよ……」

P「……うん……」


「P君の病室ってどっち!」
「こ、こっちのはずです!」
「急いで!」
「わ、わかってます!」


P「……おっと、人が来た。比奈、悪いけどもう離れないと」

比奈「あ、ハイ……」サッ


タタタッ

瑞樹「P君!」

若葉「Pさん!」

ちひろ「プロデューサーさん! ……ってあれ、普通に立ってる」

P「あぁ……これはどうも、皆で……」

瑞樹「P君大丈夫!? トラックに轢かれたんでしょう!」

P「え? あぁ、まぁ轢かれましたけど命には別状無いようで、内臓とかにも響いてないし医者が帰って良いと……」

若葉「ぐすっ……ほ、ほんとうにだいじょうぶなんですか」

P「わっ、どうした若葉。目真っ赤じゃないか」

ちひろ「若葉ちゃん、ここに来る途中ずっと泣いてましたから……」

P「あぁ……」

若葉「だ、だって、事故に遭ったって聞いて、比奈ちゃんが凄い事故だって……」

P「あぁ、ごめんな心配かけて……よしよし」

若葉「うぅ、Pさん……」

瑞樹「本当に大丈夫なの?」

P「えぇ。この通りピンピンしてます。むしろ事故に遭う前よりも元気というか……」

瑞樹「えぇ?」

P「いや、何でも無いです。まぁとにかく、俺は無事です。心配させてしまったようで、本当に申し訳ない」


瑞樹「そ、そう……まぁP君がそう言うのなら大丈夫なんでしょうけど……」

ちひろ「最近イベントばかりで激務続きでしたからね……それでフラフラとして、信号無視したりしたんじゃないですか? プロデューサーさん」

P「あはは……まぁ、その通りなんだけど……」

瑞樹「もう! 気をつけないと駄目よP君! 今回は運が良かったのかも知れないけど、一歩間違えたら死んじゃう所だったのよ!」

P「はい、すいません……皆に迷惑かけてしまって……」

瑞樹「……無事で、本当に良かったわ。本当に……」

P「……すいません」

ちひろ「比奈ちゃんにも謝らないと駄目ですよ。
    事務所に連絡入れてくれたり、ここでずっとプロデューサーさんを待ってくれたりしてたんですから」

P「あぁ、まぁ……ごめんな比奈も。色々迷惑かけて」

比奈「え? い、いや、私はもう大丈夫っスよ。別に謝る事でも無いでスし、さっきちゃんと話したじゃないっスか」

P「そ、そうか。まぁでも……ごめんな」

比奈「は、ハイ……」

ちひろ「……もう帰りましょうか。もう帰らないと日を跨いじゃいますし、プロデューサーさんも早く休んだ方が良いでしょうから」

P「あ、はい。そうですね。ほら若葉、もう帰るよ。このままだとだっこして帰る事になっちゃうぞ。もう放れて? な?」

若葉「ぐすっ……は、はい……」

ちひろ「じゃあ行きましょう。荷物とかは大丈夫ですか?」

P「あ、病室に置きっぱなしでした」

ちひろ「なら私は先に駐車場に行って車で待ってますね。プロデューサーさんは焦らないでゆっくり来て下さい」

P「わかりました。すいませんホントに」

ちひろ「いえ、今はこれくらいしかできないですから。それではお先に」



スタスタスタ


P「……」

瑞樹「……どうしたのP君。荷物、取りに行くんでしょう?」

P「え? あ、あぁ……そうですね。行きましょうか」

瑞樹「大丈夫? 本当は脳にダメージ行ってたりして頭がボーッとしちゃうんじゃないの?」

P「いえ、ただ少し考え事をしてただけですよ。行きましょうか」

瑞樹「……そう。なら良いけど」

P「……」


スタスタスタ


P(うーん……やっぱりどう考えても記憶が抜け落ちてるなぁ……事故のショックか?)

P(というより、トラックに跳ねられて即日退院ってあり得るのか? いくら軽傷って言ったって……。
  取り調べとかした記憶も無いし……)

P「……」

P(はぁ、考えても無駄だな。とりあえず無事だったんだ、その事に感謝しよう)


――


(それから二ヶ月)


P「はい。はい、ありがとうございます。それではまたその件についてそちらで……はい、宜しくお願いします。
  それでは失礼致します……」


ガチャッ


P「ふぅ……」

ちひろ「プロデューサーさんお疲れ様です。お茶淹れたのでどうぞ」コトッ

P「あぁすいません。ん、苦い」ゴクッ

ちひろ「疲れた時は渋い方が良いらしいので。それにしても、最近調子良いですねプロデューサーさん」

P「わかりますか。いやぁ最近は何だか疲れを感じなくて、自分でもビックリするくらい仕事ができるようになったんですよ」

ちひろ「お仕事の量は増えてるのに凄いですね。一体どうしたんですか? 仕事のし過ぎでふっきれちゃいましたか?」

P「なんでしょうねぇ。前には出来なかったような事が出来るようになったって言うのが大きいですね。
  でかいライブの構想もこう、パッと浮かぶようになりましたし、その為の営業だってバリバリ行けるようになりましたし」

ちひろ「……あの時の事故で何かツボでも押されたんじゃないですか?」

P「ツボ? まぁ、そうかも知れませんね。あはは」

ちひろ「ふふっ、でも本当に最近のプロデューサーさんは凄いです。いえ、前から凄かったですけど、更に磨きがかかったというか。
    でも何にせよ、無理はしないで下さいね。社長も休みは無理にでも消化しなさいって言ってましたし」

P「えぇ。でも今有給なんてとってたらこの勢いが無くなりそうですからね、まだ休めませんよ」

ちひろ「そうですか……でも事故には本当に気をつけて下さいね」

P「わかってます。じゃあ、そろそろまた打ち合わせなんで行ってきます」

ちひろ「あ、はい。行ってらっしゃい」



ガチャッ


ちひろ「……」

比奈「あれ、プロデューサーは?」

ちひろ「あ、比奈ちゃん。プロデューサーさんなら今出て行った所よ」

比奈「あちゃー、マジっスかー。新しいサイン思い付いたんで見せようと思ったんスけどねぇ」

ちひろ「……ねぇ比奈ちゃん」

比奈「何でスか?」

ちひろ「何か最近のプロデューサーさん、変だと思わない?」

比奈「変? 何がっスか?」

ちひろ「何て言うか……バイタリティに溢れ過ぎてるというか、何と言うか……」

比奈「バイタイリティに溢れるのは良い事じゃないっスか」

ちひろ「いやそれにしても……プロデューサーさん、あの事故起きて少し休暇貰ったでしょう? 二日くらい。
    それ以来あの人休んでないのよ……」

比奈「え、そんなに休んでないっスか」

ちひろ「えぇ。しかも大体誰よりも早く来て誰よりも遅く帰ってるから……心配で……」

比奈「それじゃまたこの前みたいにフラフラしてトラックにでも轢かれかねないっスね……」

ちひろ「そうなのよ……それによく蝋燭が一番燃えるのは消える直前だなんて言うし……」

比奈「それは縁起でも無いっスよちひろさん」

ちひろ「そ、そうね……少し考え過ぎなのかも……」

比奈「でもさすがにそろそろ休んで貰った方が良いんじゃないっスか」

ちひろ「そうねぇ。まぁ一応来週に連休を捻じ込んであるから大丈夫だとは思うんだけど……」

比奈「じゃあ……一応大丈夫っスね」

ちひろ「うーん……そうねぇ……」



……


(一週間後)


P「おはようございまーす」

ちひろ「おはようございます……って、あれ? 何で今日来てるんですか? 今日休みですよね?」

P「えぇ。でも良いアイディアを思いついちゃって居ても立ってもいられず……あ、会議室開いてますか?
  皆の邪魔にならないようにそこで少し草稿書くんで、借りますね」

ちひろ「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って下さい」

P「なんですか?」

ちひろ「きょ、今日はお休みですよ? 二ヶ月ぶりの」

P「えぇ。でも休みの日にやる事もなくて……」

ちひろ「だったらお家で寝ましょうよ。ここ最近働きっぱなしだったじゃないですか」

P「でも」

ちひろ「でもじゃないですよ!」

P「……ち、ちひろさん」

ちひろ「事故起きた時の状況覚えてますか? あの時だってぶっ続けで働いてたから事故が起きたんですよ?」

P「え、えぇわかってます。でも今回はあの時みたいに疲れなんて感じてません」

ちひろ「疲れを感じてなくても、人は休まないといけないんですよ。人間は機械じゃないんですから。
    いえ、機械だってメンテナンスとかでお休みします。だから人であるプロデューサーさんは尚更休まないといけないんです」

P「でも……」


ちひろ「あぁもうこのワーカーホリックは! 事故に遭った時の若葉ちゃんと川島さん見ましたよね!
    あんなに心配してたんですよ! 比奈ちゃんだって、とっても心配して連絡をくれたんですよ!」

P「……」

ちひろ「何かあってからじゃ遅いんです。病気でも事故でも、何かあってからじゃ……」

P「ちひろさん……」

ちひろ「……ほらほら! 帰った帰った! 事務所は遊び場じゃないんです! 休みの人間が油売りに来る所じゃないんですよ!」

P「うわっ、ちょ、ちょっと、押さないで下さいよ」

ちひろ「さっさと帰って温かくして寝てなさい! 良いですか! プロデューサーさんには休んで貰わないと困るんですよ!
    もしまた何かあったらお仕事も回らなくなっちゃいますし、皆が心配するんですから!」

P「わ、わかりました。わかりましたから押さないで下さいよ、ちゃんと出て行きますから」

ちひろ「はい、じゃあさようなら!」


ガチャッ
バタンッ


P「……」

P(追い出されてしまった)

P「はぁ……別に眠くないしなぁ……」

P(街に行ってもさしてやる事ないし……)

P「……帰るか」


……


トボトボ


P「はぁ……俺そんなに働いてたかなぁ……」

P「ていうか最近は働いてるっていう感じじゃないんだよなぁ。何て言うかこう……趣味? してるみたいな……」

P(前から仕事は楽しかったしそれなりに自分でもできると自負してたけど、最近は調子良くてもっと楽しく感じてたからな)

P「もう疲れなんてそうそう感じないし、もう半分趣味みたいな感じになっちゃったしなぁ仕事が」

P「そりゃ活き活きもするさ、だって趣味だもん……だから別に大丈夫だって言ってるのに……」

P「腹筋とかも最近イキナリバッキバキになったし……あれ、何で腹筋割れたんだっけ。俺筋トレしたか?」


ガサガサ


P「ん?」

志希「ハーイ、ミスター♪」

P「わっ、何だイキナリ。誰だ君は、何で茂みの中に……というか俺になんか用か」

志希「あぁそうだった、記憶戻さないと。はい、このハンカチの匂い嗅いでー」

P「うっ、何だこの臭いは……三角コーナーの臭いが……ん、あれ? 君はこの前の……」

志希「ふっふ~、さぁこの間の続きをするよっ」

P「は、はぁ……」


……



志希「さてと、じゃあ何の治療にする?」


>心身共に疲れている
 髪の毛を増やしたい
 精神面を強化したい
 特殊な能力を身に付けたい
 今より強くなりたい


P「またこれか」

志希「うん。キミはバクダンとかついてないからメニューは必然的に少なくなっちゃうからしょうがない」

P「バクダン? あぁ、肘とかの話か」

志希「それで今回はどうするの?」

P「……あれ? 俺前何を選んだんだっけ」

志希「今より強くなりたいってやつ」

P「あぁそうそう、それで……ん、待てよ? ここ最近疲れを感じなかったのってこれのせいだったのか?」

志希「そうだよ~。実験成功したからかなり強靭な肉体になったはずだよ」

P「……君一体何者なの」

志希「あたし今はふつーのJK~♪」

P「……」

志希「まぁとりあえず今回も強くないたいで良いよね♪ はいじゃあゲドー君!」

P「え、ちょ、まっ」

ゲドー「ギョッギョー」


ガシンッ ガシンッ
ブクブクブク


P「またこれかー!」

志希「科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース」

P「うううううわあああっ!」


……


P「……うーん」

P(頭がグワングワンする……ここはどこだ……)

P(……ここは……公園、か。帰りに寝ちゃったのかな……ていうか冬の公園でよく寝たな俺は)

P「わっ、もう夜じゃないか。俺どれだけ昼寝してたんだ」

P(うーん、休みの日にいくら何もする事が無かったとは言え、これだけ昼寝してしまうとは何だか勿体ない気がするな……)

P「まぁでも、気分も悪くないし別に良いか」


スタミナが上がった。
攻撃コストが上がった。
守備コストが上がった。
振り分けポイントを30手に入れた。
疲れがとれた。


志希「……ふんふん」



――



(翌日)


P「……ふわぁ~あ……今何時だ……」

P「……六時か……いつもより少し早く起きたな」

P(今日も休みか。今日はどうしようかなぁ、昨日みたいに寝て過ごすのも何だし、街に出てみるか)

P(にしても何処に行くか……)

P「……事務所の周り、散歩でもしてみるか。昼に食べる所探すのも良いかもな」


……


P「ふぅ……つい最近まで冬だと思ってたけど、もういつの間にか暖かくなったな」

P(この公園いつも通勤の通り道にしてるけど、こうやってゆっくり歩くとまた違って見えるな……)

P(今はジョギングする人なんかが大半だけど……昼過ぎになったら親子連れが来て、この枯れ木ばかりの公園も、
  少しは黄色く、明るく色付いて見えるのかも……)

P(……ふっ、我ながら詩的だ)


サササッ


P「……ん?」

P(なんだ? あの茂みの方から人影が見えたような……あそこ立ち入り禁止じゃ……)


サササッ


P(気のせいじゃないな、やっぱりあそこに人がいる。一瞬姿が見えたが、髪の長さからして女か。
  それに公園の管理人か職員という風貌でも無かった)

P「……子供が火遊びでもしてるか?」

P(何か悪さでもしてたらアレだしな。見に行くか)


スタスタ


P「えっと、確かこっちに……」

志希「あっ」

P「あ、いた。君、こんな所で何してるんだ? 見た所高校生みたいだが……あれ、君何処かで……」

志希「逃げちゃえ~♪」タタタッ

P「あ、おい。どこ行くんだ」

P(追った方が良いのか?)

P(……はぁ。気持ち悪いな……何だ? あの子と何処かで会ったような、いや遭ってしまったような気がする……)

P「……しょうがない、追うか」


……


志希「……どうやらまいたみたいだね」

P「誰をまいたって」

志希「あれ、ついて来てた。おかしいなぁ気配は感じなかったのに」

P「別に普通について来たぞ俺は」

志希「まぁいいや。そっちの方が好都合だし」

P「……何なんだここ。色々物騒な物が置いてあるけど」

志希「はいハンカチの臭い嗅いでー」ヒラヒラ

P「うっ、臭い……あれ、君は……一ノ瀬だったか」

志希「さて、治療の続きをしようか♪」

P「……」

志希「あれ、どうしたの? 何か乗り気じゃない感じ」

P「普通に考えて人体実験に乗り気な人間なんてそういないよ」

志希「そんな事ないよ、キミはちゃんと誓約書にサインして受けたんだから。ほらこの紙」ヒラヒラ

P「そんなもの無効だ。捺印があったってちゃんと本人のサインが無いと」

志希「えー」

P「えーじゃないよ。死ぬ思いをしたんだぞ俺は」

志希「その割にはあんまり怒ってなさそうだけど」

P「怒ってるよ。というよりも、色々事態が呑み込めなさ過ぎて戸惑ってるだけだよ」


志希「あ、何かあたしに質問したいって事?」

P「……まぁそうだね。とりあえず聞きたい事は山程」

志希「あはは、じゃあキミの為に治療前の質問タイム設けちゃうよ。何でも聞いて♪」

P「(治療は決定事項なのか)とりあえず……君の今の職業は? 高校生でいいのか?」

志希「そうだよ。海外の学校で飛び級とかやってたけど、つまんないからこっちに帰って来たんだー。
   戻ってくる前に学校のテストで低い点とか取ってたのもあるんだけどね」

P「……俗に言う天才って奴か、君は」

志希「ギフテッドって言うんだってさ、あたしみたいなの。人と違うみたいだけどあんまりよくわかんないけどね」

P「ギフテッド? なんか聞いた事あるけど」

志希「常人よりも何かの才能、例えば勉強だとか、芸術だとか、リーダーシップなんかを先天的に高く持った人間の事だよ。
   小難しいでしょ定義が」

P「……そうだな。それで、君は勉強の才能が高かった訳か」

志希「うん。一応あっちでは薬学を習ってたよ」

P「今は?」

志希「今は高校で周りと同じ勉強してる」

P「退屈じゃないか? レベルが違い過ぎて」

志希「うーん、どうだろうね。あっち居てもつまらなかったしあんまり変わらないよ」

P「そういうものか」

志希「そういうことー」

P(天才で、よく見ると……いやよく見なくても顔立ちも良い……天は二物を与えたな。
  この子をアイドルに……いや、これ以上仕事を増やすとちひろさんに何か言われかねない。
  それにこんな得体の知れんのを入れたらどうなるか……)


P「とりあえず君の素性は何となくわかった。で、何で普通の女子高生が人体実験なんてやってるんだ」

志希「あぁ、それね。話すと長くなるけど聞いちゃう?」

P「あぁ、聞くよ。今日は時間だけはあるから」

志希「そう? じゃあ話すよ。まずあたしのお父さんがお医者さんでさ。あ、お父さんも頭良いけどギフテッドとかじゃないんだって。
   それで、お父さんの知り合いにスポーツ医学の権威の人がいてね、ちょっとそういうのに興味があったからその人の手伝いとかしてたんだけど、
   その博士が一時的に帰国するっていうから、この部屋を貸して貰ってるの」

P「スポーツ医学の権威?」

志希「うん。最近は野球選手とかを研究対象にしてたかなー。プロに入った選手も何人か博士が改造……じゃない手術してるよ」

P「……え、人体改造したプロ選手が何人もいるの?」

志希「いるよ、本人には自覚無いだろうけど。手術受けた記憶は消しちゃってるからね」

P(あぁそういえば俺も人体実験受けた事忘れてたな……まぁ人体改造までするんだ、記憶を消すのくらい訳ないか)

P「なぁ、人体改造って事は……サイボーグ的な感じになるのか? 機械を埋めたりとか……」

志希「違うよー。博士がやってたのは人体の再構成とかだからそういうのはないない」

P「人体の再構成?」

志希「ほら、そこのでっかいミキサーみたいなのあるでしょ?」

P「あぁ、その物騒な……」

志希「それで一度体を砕いてからまたこっちで再構成するんだよ」

P「……」

志希「……」


P「……はぁ!?」

志希「その再構成が難しいんだー。良い方向に再構成できるのなんて、博士でも三回に一回成功するくらいだから」

P「え、人体を砕く? 死ぬだろそれ」

志希「それで手術が終わった後とかに博士が、科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース、って決め台詞言うの♪
   カッコ良いでしょ?」

P「いや、全然カッコ良くない! 人殺し一歩手前の行為をしてその台詞はヤバイだろ!」

志希「ダイジョーブ、ダイジョーブ。再構成自体は簡単なんだけど、良い方向に構成するのが大変なんだー。
   だから死人は見てきた中ではゼロだったよ。まぁ、ちょっと体が悪くなっちゃった人はいたけど」

P(見てない時に死人があったんだろうなぁ、そんなぶっ飛んだ手術……)

志希「ねぇねぇ、他に質問ない? 何でも聞いて良いんだよ~」

P「え? あぁ、そうだな……君は何度もこういう事を?」

志希「ううん、キミで初めてだよ。嬉しいでしょー♪」

P「あ、そうなんだー」

志希「素っ気ない声だなー。これでもあたし自信が気に入った人しか実験対象にしないってポリシーを持ってるんだよ。
   キミを街で見かけた時にビビッと来て、だからトラ……何でもない♪」

P「今トラックって言いかけたろ、何だよオイ。あれは君が差し向けたのか?」

志希「はいこのハンカチの臭い嗅いでー」

P「うぐぅ」

志希「はい、もう良いよー」

P「あれ、俺は何を……」


志希「あたしに質問してたんでしょ、続き続き♪」

P「え? あぁそうだっけ……で、御両親はこの事は?」

志希「お父さんもお母さんも知らないよー。お父さんには研究室の手伝いしてるとは言ったけど、博士の所にいるとは言ってないからね」

P「だよな(知ってたら普通止めるだろうし)」

志希「……キミってさ」

P「ん?」

志希「案外動じないタイプだよね」

P「動じない?」

志希「だって今まで二回も人体実験やって、その後に記憶も戻した状態で結構平然とあたしに質問するからさ。
   うーん動じないって言うか、すぐに適応するタイプかな」

P(口ぶりからして自分がやってる事が異常だと言う事は自覚してるんだな)

P「まぁ、ね。もうアラサーだし、冷めたって言う方が当たってるかも知れない」

志希「ふーん。でもその割には若く見えるね」

P「……とりあえず、色々と君の事はわかったよ。それでなんだけど、とりあえず今日の実験は無しにしてくれるかな」

志希「え、しないの?」

P「うん。俺は十分強くなったし、もう良いよ」

志希「そっかー。残念」

P(この前は強制的にやらされたが、案外簡単に断れたな……それとない流れで言いだしてみて良かった……)


志希「でもその代わりにさ」

P「ん?」

志希「これからは仕事終わりとか、暇な時間ににここに遊びに来てよ」

P「えぇ?」

志希「あたしは買い物したりする以外にはこの研究所に四六時中いるから、いつでも来て良いよ♪」

P「え? ここに住んでるのか?」

志希「うん、最近はずっとここにいるよ。生活する為の物は揃ってるし、駅もそれなりに近いし便利だから」

P「……大丈夫なのか?」

志希「何が?」

P「いやぁ、親御さんとかが心配するだろ。こういう実験とかしてるのは知らないのに、ずっと外にいるって」

志希「キミ文系?」

P「あぁ」

志希「理系だと研究室に籠るとかザラだから案外普通だよ、家に数日帰らないのなんて」

P「あぁ……確かにそういう話は聞くな。でもさ、やっぱり心配させちゃうだろ。何日も家に帰らなかったら」

志希「……しないよ」

P「え?」


志希「ふっふ~。とりあえず実験しないならもう今日は残念だけどお開きかなー。
   あたしも少し調合しないといけない物があって時間無いからねー」

P「あ、あぁ」

志希「時間があったらいつでも寄ってね♪ というか毎日でも来て♪」

P「いや、休みは今日でおしまいだからそう何度もは来れないよ」

志希「そっかー……」

P「でもこの公園は通勤の時に通るから、帰りに寄れたら寄ってみるよ」

志希「本当に?」

P「あぁ」

志希「やったー♪ じゃあ絶対に来てね!」

P「わかったわかった。じゃあ俺は帰るな」

志希「うん! じゃあまたねー♪」

P「あぁ、またな」


ウィーン バタンッ


P「……」

P(何だか知らないが遊ぼうという話になってしまった)

P(まぁ何だか心配だし、時々様子を見に来る事にするか)

P「……それなりに面白い子だったしな。遊びに来ても、良いか」


志希と遊べるようになりました。
ぶらつくコマンドで会いに行けるようになります。


P「……ん? 何だ今のナレーション」



――


(翌日)


P「ふぅ、今日の仕事が終わったぞ」

ちひろ「早いですね」

P「えぇまぁ」

ちひろ「やっぱり休んだ方が効率上がるじゃないですか」

P「え? はぁ、まぁ」

P(人体改造のおかげで疲れ知らずだから別段休まなくてもとは言いだせないしな。
  ……今頃気付いたけど俺軽く人間じゃないんだな)

ちひろ「? どうしたんですか、何か怖い顔して……」

P「い、いえ。何でも……」

ちひろ「そうですか? まっ、とにもかくにも、早く帰ってご飯をしっかり食べて、早く寝て下さいね」

P「はいはい……俺の母親か何かじゃないんですから」

ちひろ「だって、すぐ無理しようとするんですからプロデューサーさんは。
    いいですか? プロデューサーさんはうちのエースなんですよエース。
    だから体を壊されたら損失が出るんですよ」

P「エースって……野球じゃないんですから……」

ちひろ「それと、仕事の能力の他にも、アイドルの士気も関わってきますからね」

P「はい、肝に銘じます……じゃあ帰ります。お疲れ様でした」

ちひろ「はい。お疲れ様でした」

P(アイドルの士気……うーん、まぁ皆この前凄く心配してたしなぁ。体大事にしないといけないな。
  もうそう簡単に体壊せるのかわかんないけど)

P(士気……うーん、志希の所に寄ってみるか)


……


P(えぇい、しかしこの林が鬱陶しい……はぁ、やっと着いた)

P「おーい、志希。いるかー」トントン

「いるよー。扉開いてるから入ってきてー」

P「(不用心だな……)入るぞー」ガチャッ


ギュムッ


P「ぬおっ」

志希「もう、来るの遅いってー」

P「これでも今日は早く終わった方だよ。ていうかいきなり抱きつくな」

志希「にゃははー。とりあえず今日の分の酸素補給~」スンスン

P「臭いをかぐんじゃ……ていうか何だこの部屋臭いな、何作ってるんだ」

志希「あぁ、これ? 今日は色んなの作ってたからね、臭いが混ざってるんだよ」

P「(何を作ったのかは聞かないでおこう)喚起くらいしたらどうだ」

志希「うんそうだねー。あーでも朝から何も食べてなくて元気出ないから喚起するの無理」

P「もう夜だぞ。一日何も食ってないのか」

志希「うん。熱中しちゃうとお腹減るの忘れちゃうし、食べるのも面倒だったしさ」

P「……はぁ。じゃあ喚起してる間に、飯でも食いに行くか。奢るからお前もどうだ」

志希「え、ホントに? 行く行くー」


P「えぇと……換気扇あるだろ、それ回して、扉にちゃんと鍵かけて出るんだぞ」

志希「りょーかーい」

P「じゃあ俺は外で待ってるよ。ここ臭くてかなわんから、そしていい加減放せ」

志希「えー」

P「えーじゃない。ほら、行くぞ」

志希「んー、じゃあ換気するからちょっと待っててねー」

P「あぁ」


……


P(で、志希が目に留まった定食屋に入ろうだなんて言いだした為に定食屋に入ったが……)

P「お前白衣脱がないの」

志希「え? 白衣?」

P「こんな所まで来て白衣着ることないだろ、何でそのままなんだ」

志希「えーどうして? ご飯食べる時こぼしてもこれで服汚れなくて便利だよ?」

P「あぁまぁ非常に論理的な回答なんだけどさ……こう……見てくれとかあるじゃないか」

志希「別にそういうの気にしないよ」

P「あぁそうですか……というより、こんな店で良かったのか? もっとこう、イタ飯屋とか焼肉屋とかでも良かったんだぞ?」

志希「そういうのはあっちで散々食べてきたから飽きちゃったよ。それに焼肉なんてしたらキミの匂いが薄くなっちゃうでしょ?
   それに、今は和食が食べたい気分!」

P「……そうか。じゃあしょうがないな」

志希「それに、日本にいる時でも外食なんて滅多にしなかったからさー」

P「どうして」

志希「……それはまぁ、家庭の事情というか」

P「……そうか」


志希「あはは、そんな暗い顔しないでよ」

P「いや、どう反応したら良いか困ったから……」

志希「はいはい。とりあえずさ、何食べるか決めよーよ」

P「……そうだな。何が食べたい?」

志希「キミは何食べるの?」

P「俺か? 俺は……どうしようかな。あ、このトンカツ定食にしようかな」

志希「ホントに? じゃああたしもそれにしよっかなー」

P「これ二枚も付いてくるぞ? 食べきれるのか?」

志希「その時は全部キミにあげちゃう♪」

P「やっぱ俺変えるわ」

志希「あははっ」

P「えっと……」


……


P(結局、俺はトンカツ定食、志希は刺身定食という事で落ちついた)

志希「おー! おいしそうだねー」

P「そうだな。ここの店、元が魚屋さんだったらしいから魚は良い物使ってるらしいぞ」

志希「へーそうなんだ。じゃあ食べるね」

P「あぁ、どうぞ」

志希「もぐっ……うーん、おいしー♪」

P「ははっ、そうか」

志希「久しぶりに和食、というかマトモな食事を摂ったよー」

P「そうなのか?」

志希「うん。ほら、基本ラボにいるって言ったでしょ? ずっと研究に熱中してるとご飯食べるのも面倒でさ、
   だから料理は適当に済ませてたんだー」

P「あぁー、それはわかるな。お腹空いてるけど、面倒になるのは」

志希「そうそう。だから最近は飲むだけで一日中お腹空かない薬でも作ろうと思ったんだけどさ。
   気付いたら餓死しそうだからやめたんだー」

P「……」


志希「キミは普段どんなの食べてるの?」

P「俺か? 俺は……弁当屋の弁当」

志希「コンビニの弁当じゃないの?」

P「いや、コンビニ弁当はなんか……怖いから」

志希「あぁー、色々入ってるからねー。でもさ、他にも沢山食べ物とか売ってるし、便利じゃない?」

P「そりゃそうなんだけどな。一応……健康には気を遣ってるんだよ、これでも」

志希「そっかー」

P「随分適当な返事だな」

志希「あはは。あ、唐辛子だ。お味噌汁に入れちゃお」

P「辛いの好きか」

志希「うん。沢山入れるとおいしいんだよー」フリフリ

P「……おい、表面唐辛子だらけになったぞ。大丈夫か」

志希「ダイジョーブ、ダイジョーブ」ズズズ

P「……」


志希「……あ、それで何の話だっけ。あーそうそう、キミって何処ら辺に住んでるの?」

P「……あ、俺か? 俺はこの街に住んでるぞ」

志希「へー、近いんだ」

P「あぁ。社宅だから」

志希「社宅? あぁ、寮みたいな感じかな」

P「んー、まぁそんな物だと思ってくれて良いよ」

志希「それで、社宅ってどんな所なの? 面白い?」

P「ただのアパートと変わらないよ。家賃が安いだけ。あと下の人がうるさいってくらい」

志希「なーんだ、ちょっとガッカリ」

P「それでガッカリされてもなぁ」

志希「ねぇじゃあさ、仕事は何してるの?」

P「うん? 仕事? 仕事は……普通のサラリーマン」

P(嘘は言ってないよな)

志希「えー、それもふつーだね」

P「俺は普通の人間だからな。大概の事は普通だよ」

志希「うーん、そうかなー。何となくキミは人とは違うと思うけど」

P「違う? まぁ……今はお前のせいで人とだいぶ違うだろうけどな、色々と」

志希「あはは。そういう意味じゃないよ」

P「じゃあ何だ?」

志希「何て言うかさ、キミは変わった事してるでしょ?」

P「変わってる?」


志希「うん。初めて街でキミを見かけた時は沢山の女の人と肩並べて歩いてたから」

P「……え?」

志希「あぁ、あたしさ、キミの事はあの事故の前から知ってるんだよね」

P「……え、どういう事?」

志希「キミの事はさ、街で見かけた時から実は気になってたんだよねぇ」

P「街で? 俺と会った事あるのか?」

志希「うん。でもキミは気付いてないよ」

P「それからなんだ……事によると俺をずっと観察してたとか?」

志希「おー、正解~」

P「半分ストーカーじゃあないか……」

志希「この件に関する事実というピースを組み合わせ、結果を多角的に見て様々なアプローチを用いて事象を説明するとそう言える可能性も無きにしもあらずだねー」

P(要はストーカーとは認めないのか)

志希「それで色々調べて、キミならあたしの研究材料にちょうどいいかなーって」

P「ちょうど良く研究材料にされた側はたまったもんじゃないぞ」

志希「でもそのおかげでキミは無敵のボディを手に入れたんだよー。もっと誇っちゃえ!」

P「このっ……はぁ……まぁ、実際こうなってから仕事が捗ってしょうがないから有難いと言えば有難いんだが……」

志希「うんうん。術後観察中もずっと仕事してたねー。でもあの程度じゃ良いデータは取れないから、
   もっと過激な事して欲しかったなー」

P「例えば?」

志希「ホッキョクグマと渡り合うとか」

P「殺す気か!」


志希「大丈夫だよー。計算上では今のキミはホッキョクグマと普通に戦えるくらいにはなってるはずだから」

P「普通に戦え……え?」

志希「とにかく、実験は成功。キミは人体実験のおかげでキャプテンジャパンになれたんだからそれでオーケー♪」

P「いや、普通は良くないと思うが……」

P(はぁ……もう怒る気力も出ん……)

P「……ん? そう言えば俺をずっと監視とかしてたって事は俺の事色々知ってるんだろ? 何でさっき俺の家とか職業とか聞いたんだ?」

志希「あーそれ? それはほら、こうやってふつーのご飯食べてる時にはふつーの世間話した方が良いかなって」

P「何だその理論……」

志希「ふぅ……ごちそーさまでしたー」

P「あれ、もう食べたのか」

志希「ご飯早く食べるのには慣れてるからねー」

P「そうか。まぁ俺ももうすぐ食べ終わるけど」

志希「あ、優しい志希ちゃんがキミのトンカツに唐辛子かけてあげよっか?」キュポン

P「いらん事するな。ていうか何でお前内蓋まで取ってんだそれじゃドバッとかかるだろうが」

志希「まーまー、よいではないか~♪」ドバドバ

P「あっ! こらお前!」

志希「さーイッキーイッキー♪」

P「いやイッキーじゃないだろお前……」

志希「あれ、食べないの?」

P「こんな衣の代わりに唐辛子がついたようなの食えるか!」

志希「えー、せっかく唐辛子かけてあげたのに……」

P「食いもので遊ぶんじゃない……」


志希「なら食べ物を残すのも良くないと思うけどなー」

P「いやお前、それはさすがに通らないだろこの状況で……」

志希「ホッキョクグマとも渡り合えるであろう人間がそのくらいの唐辛子に怖気づくなんて……。
   うーん、これは帰って恐怖心を綺麗サッパリ跡形も無く消し去る薬を作らないとなー」

P「おい待て、何物騒な事考えてる」

志希「その後キミの気付かないうちにキミの職場に潜入して飲み物にそういう薬を仕込んじゃおうかなー」

P「おい」

志希「それとももう一度人体実験をしてタイガー戦車にも負けないような体に出来るかチャレンジしてみようかなー」

P「わかった、わかった。食うから落ちつけ」

志希「おー、話がわかるねー♪」

P「お前は何だ、そんなに俺を玩具にして面白いか」

志希「うん! すっごく面白い♪」

P「屈託の無い笑顔で言うなぁコイツ……」

志希「さぁ一口でイッてみよー♪」

P「くっ、こうなったらヤケだ……よく見とけ、俺の男気!」パクッ

志希「おー」

P「……」

志希「……」

P「ごふっ」バタッ

志希「あっ」


……


唐辛子が気管に詰まって一瞬気を失ったもの、強靭な肉体のおかげで俺は何とか難を逃れた。
しばらく呼吸をする度にヒューヒューと隙間風のような音がなっていた。


疲れがたまった。
二千円消費した。
志希の好感度がかなり上がった。



――


(後日)



P「ふぅ……今日の仕事も終わったぞ」トントン

P(二日程志希の所に行ってなかったが、さて今日はどうするか……)

志希「あ、仕事終わったのー?」

P「あぁ。だからとりあえず今日は志希の所に行くかどうか悩ん……は?」

志希「ハーイ、ミスター♪」

P「……え、ちょっ、お前。何で事務所にいるんだよ!」

志希「だってキミがあたしの事を二日も放っておくから。つまんないから来ちゃったんだー」

P「いや、どうやって入ったんだ。一応セキリュティとかでそう易々とは……」

志希「鍵持ってるから全然大丈夫だよ」

P「何でお前がここの鍵持ってるんだよ」

志希「それはほらー、志希ちゃんだから♪」

P「答えになってないぞ」

志希「にゃっはっはー。ねぇねぇ、とりあえずお腹減ったからまたどこかに食べに行こうよ」

P「いやだからお前……はぁ……お前、誰にも見られなかったよな」

志希「見られたって別にあたしみたいな感じの子は沢山いるからへーきへーきー」

P「それは……まぁそうか。とりあえず外出るか」


……


P「で、何でこんな高そうな回らない寿司屋に来ちまったんだ」

志希「あたしが食べたかったから」

P「ふざけるなおい。俺、今日給料日前だぞ。普通の人はカッツカツなんだぞ給料日前っていうのは」

志希「えー、嘘だー。キミ全然お金使ってないから貯まってるはずだよー」

P「いや、そりゃ使う時間が無いから俺自身は金あるっちゃあるが……ていうかそこも調べてあるのか」

志希「志希ちゃんの目に見通せないものはないのだ~♪」

P「……俺はいよいよお前が末恐ろしくなってきたよ。いや最初から恐ろしかったが」

志希「そこまで食べないから大丈夫だよー。一万円分くらい♪」

P「聞いてないなコイツ……ていうか割と食うじゃないか」

志希「えっとねー……とりあえずこの活アワビのお刺身とかていうの行ってみよっか」

P「え゛っ……おい! それも三千円もするじゃないか!」

志希「……駄目?」

P「そんなとってつけたような上目遣いで俺がどうにかなると思うのか。俺はな、プロデューサーだぞプロデューサー。
  女の涙にも色仕掛けにもなびかないのさ」

志希「そういう割にはあの中学生くらいの子は相当可愛がってる気がするけど」

P「中学……いや、あれな、二十歳だから。まぁ……可愛らしいと言えば可愛らしいけど」

志希「えー、あの人もう大人なんだ。凄いね、免許とか持ってるの?」

P「持ってるらしいぞ。何でも群馬じゃ必須だとか何とか」

志希「へー。うーん、二十歳だけど見た目は中学生かぁ……キミはロリコンさんなのかノーマルなのかどっちなのかな?」

P「いや、若葉ちゃんにはそういう感情は持たないよ。まぁ、何だ。娘というか……何と言うか」

志希「ふーん」

P「本人には言うなよ。多分、怒るから」


志希「はーい。じゃあとりあえず注文するねー」

P「え、俺まだ何も見てない」

志希「たいしょー、とりあえずここからここまで全部」

P「おい!」

志希「にゃっはっはー♪」

P「え、えっと、冗談だよな?」

志希「え? 普通に食べるよ?」

P「おいおいマジかよ……」

志希「いやーでもこうやってお寿司食べるの久しぶりだなー」

P「はぁ……何だ。久しぶりだからってそんな頼むのか」

志希「家族とは外食しなかったけど、たまにお寿司だけは食べる時があったんだよねー。
   だからなんか感慨深いっていうか」

P「……そうか」

志希「あっちでもお寿司はあったって言えばあったけど、やっぱり日本で食べる方がおいしいかな」

P「そうか」

大将「へいお待ち」

志希「おー、早い」

P「うっ……大トロにアワビにシャコに……何だってお前高いのばっかり……」

志希「いただきまーす♪」

P「あぁ……おい……」

大将「旦那はどうしますね。まだ窺っておりやせんが」

P「(何だこの大将こえぇ……)えっと、かんぴょう巻きで……」



結局その後志希に食いたい放題された。俺はひたすらかんぴょう巻きを頼んで難を凌いだ。
一万五千円消費した。
疲れがとれた。
志希の好感度が上がった。


――



(後日)



P「ふぅ……今日の仕事も終わったぞ」

P(今日も早めに終わったなぁ。ここ最近はずっと志希に振り回されっぱなしだったが……)

P(今日も行ってやるか……行かないと向こうから来るしな)



……



P「はぁ……この林はどうにかならないかな。スーツが傷ついちまう」ガサガサ

P「さてと。おーい、志希ー」トントン

P「……」


シーン


P「あれ、おかしいな。いつもなら開いてるから入って良いよーとか飛びかかってくるとかするのに」トントン

P「……」

P(尚も返事が無い、か)

P「まぁ、いつも通りに開いてるだろ」


プシュー


P「お、やっぱり開いてた。おーい、志希ー。勝手に入るからなー」

P(しっかし、いつ来ても不用心というか何と言うか……)

「うーん……」

P「そこにいるのかー?」バサッ

志希「あー……おはよー……」

P「おはよ……ん?」

P(何だコイツ……妙にだるそうだが……)


志希「いやー……風邪、引いちゃった……」ズルズル

P「え、風邪引いたって、お前大丈夫か? うわ、本当だ。凄い熱いぞお前」

志希「へーきへーきー……抗生物質くらい作れるからー……」

P「飲んだのか?」

志希「ううーんー……作ろうと思ったけど、体が動かなかったー……」

P「馬鹿、お前。それじゃ駄目じゃないか。ていうか、この部屋なんか寒くないか?」

志希「あー……この間、部屋の換気しろーとか言ってたでしょー? だからもうずっと外の空気とかずっと入れるようにしてたんだー」

P「だからこんな寒いのか、そりゃ風邪も引くだろ。もう少しで冬は明けるだろうけど、まだ寒いんだからそんな事しちゃ駄目だろ」

志希「にゃははー……そうだねー……」

P「……とりあえず、どうする。病院行くか」

志希「んー……キミの家がいいなー」

P「アホ。俺の家社宅だって言ったろ。そこにお前なんて連れ込んでみろ。どんな噂が立てられるか……」

志希「大丈夫だよー、目撃者の記憶は消しちゃえばいいからさー……」

P「そんな物騒な事させられるか! そういうのやるのは俺だけにしろ!」

志希「……」

P「どうした」

志希「いやー……今の言葉はちょっとジーンと来たなーって」

P「何がだよ」

志希「にゃはは~……」


P「はぁ……とにかく、ほら、行くぞ」

志希「何処にー?」

P「病院。送って行ってやるから」

志希「えー、キミの家が良いー」

P「だから……」

志希「キミの家に送ってくれないとこの間の実験でついでに仕込んだ毒薬を解放しちゃおうかなー」

P「……は?」

志希「いやー、キミも凄く強くなったでしょ? それでもし何かの間違いでも起きて凶暴とかになっちゃったらいけないから、
   その時の対処用として仕込んだんだよねー」

P「……」

志希「あれ、どうしたの、そんな汗かいて。暑いなら窓開けていいよー」

P「もう全開だわ! え、ていうか、そ、そんなの仕込んだのか?」

志希「だから言う事聞いてくれないと、うっかりその薬を発動させちゃうかもしれないな~……。
   あー、キミの家に行きたいなー」

P「……」

志希「……駄目?」

P「……良いです」

志希「やったー♪」



……



P「自分の家に玄関以外から入る事になるとは思わなかった」

志希「三階くらいならあたしをおぶった状態でも飛んでいけるって言ったでしょー。
   人通りの少ない道に面してる窓側から入るから見られる心配もあまりないからね」

P「……俺、本当に人間やめちまったんだな」

志希「どうする? まーるい盾とか作る?」

P「いや、やめとく。俺あそこまで頭良くないから。ていうか作れるのか?」

志希「うーん、無理」

P「そこは速答なのか」

志希「あたしは薬学だからね。工学は無理かなー」

P「そうか……」

P(ていうか俺、本格的になんかヒーローとかやった方がいいんじゃないのか世の中的には。
  プロデューサーじゃなくて)

P(いや、でもこの仕事好きだからやめたくないな……)

志希「どうしたのー? 寒いから窓閉めようよ」

P「え? あ、あぁ。すまん」ガラガラ

P(ていうか、さっき志希が使ってた外から簡単に窓鍵を開けられる機械って何だよ。
  博士の物って言ってたがやっぱりその博士とやらも志希並のイリーガル人間か)


志希「いやー温かいねーこの部屋」

P「ん? あぁ、だろ? 夏は暑いが、冬はちょうど良い部屋なんだ」

志希「へー。さってとー。じゃあとりあえずキミの布団に寝るねー」ボフッ

P「お、おい。臭いし汚いからやめときなさい。いや、ていうか人の布団に勝手に寝るな」

志希「あ~……これ良いな~……」スンスン

P(どれだけこいつは俺の臭いが好きなんだ……)

志希「う~ん……あたしこれ気に入りました! 持って帰りたい!」

P「やめなさい。それが無くなったら俺は何で寝れば良いんだ」

志希「あたしの研究所で寝れば良いよー」

P「寝てる間に絶対何かされるから嫌だ」

志希「つれないなー……ごほっ、ごほっ」

P「あ、あぁすまん。喋らせ過ぎたな。ちょっと待ってろ、水分とか色々持ってくるから」

志希「うーん、お願い~……」

P「えっと、薬は何処だ、薬は……」

志希「……」

P「あったあった。で、体温計体温計……あった。で、もっと毛布あった方が良いかな……。
  えっと確か押し入れに……」

志希「……」

P「すまん、お待たせ。とりあえず飲み物持ってきたぞ。で、体温計で熱計っておけ」

志希「わかったー……」


P「よし。で、お腹は減ってるか?」

志希「うーん、どうだろ……」

P「減ってないか。じゃあ……林檎おろしたら食べられそうか? 薬飲まないといけないし、何か食べないと」

志希「うーん、それなら食べられるかなー……」

P「わかった。じゃあちょっと待ってろ。林檎、すぐそこで買ってくるから」

志希「えー、何処か行っちゃヤダよ……」

P「すぐ戻るから。な?」

志希「……」

P「お前の作った超人だ。俺の脚を信じろ、すぐに戻ってきてやる」

志希「……なんかさー」

P「ん?」

志希「キミ、だいぶふっきれたねー」

P「余計なお世話だちくしょう……」

志希「にゃははー……」

P「まぁとにかく、買ってくるから安静にしてるんだぞ。良いね?」

志希「うん……」

P「よし、じゃあ行ってくる」

志希「いってらっしゃーい。トラックに気をつけてねー」

P「うるせえやい」


ガチャッ バタンッ


志希「……」


ガチャッ


P「ただいまー」

志希「ほ、本当に早かった……」

P「ん、どうした」

志希「本当に買い物してきたの?」

P「いや、実家から送られてきた物資に林檎入ってるの忘れてた」ガサゴソ

志希「えー……」

P「あったあった。すぐ作ってやるからな、待ってろよ」

志希「んー」

P「えっと……おろしがねどこやったっけ」

志希「そこの棚の二段目にあるよー」

P「え、二段目……あった。な、なんでお前知ってるんだよ」

志希「ゲドー君に侵入させて隅々まで調べさせたりしたから」

P「犯罪じゃないか! いや、余罪は山ほどあるからぶっちゃけまぁそれくらいやってるとは思ってたが……」

P(ていうかあの黒いのはゲドー君っていうのか。時々見かけたが、アレは何なんだ?)


志希「おいしく作ってね~……」

P「お、おう。任せとけ」

P(おろすだけなのにどうやったらおいしくなるんだ。まぁいいか適当におろそう)


ゴリゴリ


P「よし。ほら、できたぞ志希。上半身だけでも起こせるか?」

志希「うん、大丈夫。ありがとー。あっ、愛情はちゃんと込めてくれたかな?」

P「贅沢な野郎だ、そんなものお前にはやらん」

志希「えー……」

P「……まぁ、なんだ。元気になれとは思って擦ってやったから。早く食べなさい」

志希「うーん……次第点だなぁ。でも……ありがと」

P「あぁ」

志希「……うーん。やっぱり手に力入らないから食べさせて♪」

P「言うと思ったわ」

志希「あれ、予想済み?」

P「あぁ。何となく、お前の行動パターンも読めてきた」

志希「あれ、おかしいな。そんな簡単には読めないはずなのに」

P「まぁあれだ。今は風邪で思考とかが鈍ってるから単純になってるんだろ。いや、そんな事はどうでも良い。
  ほら、食べさせてあげるから、口開けなさい」

志希「はーい」アー

P「ほれ」

志希「……」ングング

P「どうだ、おいしいか」

志希「うん、おいしい」


P「そうか。食べられるだけで良いからな」

志希「うん」

P「……」

志希「……」モグモグ

P「無理して早く食べないで良いんだぞ」

志希「無理してないよ」モグモグ

P「……そうか」

志希「ふぅ……ごちそうさまー」

P「おー、食べきれたな。凄いじゃないか」

志希「えへへーもっと褒めて良いんだよー」

P「……」

志希「どうしたの?」

P「いや、ちょっと考えあぐねた」

志希「えー、そこは素直に褒めようよー」

P「……はぁ、全部食べれて偉いっスねー志希さんは」

志希「何で事務所の子の真似しながら言うかなー」

P「何でわかるんだよ」

志希「そりゃわかるよー。キミについての事なら何でも知ってるから」

P「……お前本当、探偵とかなった方が良いんじゃないか。一財を築けるって」

志希「あー、そういう道もあるのかー」

P「割とお前なら出来る気がするぞ」


志希「名探偵志希ちゃんか~。それはそれで面白そうだなー」

P「……時に、志希」

志希「んー、なになに?」

P「お前、なんか将来の夢とかあるのか?」

志希「お、それ聞いちゃうー?」

P「いや、何て言うか……そういう道もあるのかーとか言ったろ今。何か、将来とか決まってるのかなって」

志希「うーん……正直全然決まってないかなー」

P「そうか。じゃあ、何かやりたい事とかは?」

志希「うーん……今はキミといて、色んな実験をして、キミの匂いを嗅いだり、からかったりするのがやりたい事かなー」

P「……それ全部俺が色々被ってるじゃん」

志希「にゃははーそうだねー」

P(はぁ……なぁんでお前みたいなのになつかれたかなぁ俺も……)

P「まぁ、いいや。お前には色々酷い事をされたが、まぁ……何だろうな、嫌な気はしないからなぁ」

志希「あれ、あれあれ~? 告白とかしちゃう空気?」

P「やめろよ。何でお前にそんな事しなきゃいけないんだ」

志希「えー、ひどーい」

P「はぁ……まぁ、お前といると楽しいってのは確かだよ。
  うん……気付いたらずっと仕事ばっかやってて、女性と話したりする機会は腐る程あったけどさ。
  何かこう……馬鹿やれてるっていうのは、お前のモルモットにされたりしてる時だけだなぁって」

志希「最後の方凄いロマンも何も無い言い方だねー」

P「……とにかく、まぁ、今までは仕事が趣味だって思ってたよ。でもさ、結局仕事は仕事で。
  こう、何も考えないで遊んだり、それに付き合ってくれる相手ってのも、大事だなって」

志希「……」


P「どうだ。俺良い事言ったろ」

志希「それ言ったら全然イイ雰囲気にならなーい」

P「あーそっすか……」

志希「……ごほっ」

P「あ、すまん。また長く話し込んじゃったな」

志希「んーんー、全然イイよ。キミと話してるのも面白いし」

P「俺で実験してるのと話してるのどっちが面白い」

志希「実験!」

P「コイツ……」

志希「……いや、んー、どうだろ」

P「ん?」

志希「最近はあれかなー。同じくらい」

P「それでも同じくらいか……」

志希「それでも志希ちゃんの中ではカタストロフ的な変化だよ」

P「……そうかい」

志希「やっぱり……」

P「ん?」

志希「やっぱり、キミに目をつけて良かったなーって」

P「……そうか」


志希「ちょっと眠くなってきちゃったから志希ちゃん寝ちゃうねー……」

P「あぁ。ゆっくり……って、おい。薬飲んでないじゃないか」

志希「ダイジョーブ、ダイジョーブ。キミの愛情たっぷり林檎を食べたからへーきだよ♪」

P「えー……でもなお前」

志希「イイのイイの。こうやって誰かに看病されたのだって、もうしばらく無かったからさー……」

P「……お前」

志希「だからそれだけで志希ちゃんに元気が集まってるからダイジョーブダイジョーブ」

P「……何でお前大丈夫って言う時だけそんな胡散臭くなるの?」

志希「博士から移ったクセなのだー♪」

P「……はぁ、もういい。寝なさいもう」

志希「うん、おやすみー♪」

P「おやすみ」

志希「あーちょっとちょっと、何処行くの」

P「え? 何処って……俺はあっちの廊下で寝ようと……」

志希「駄目だよー何処か行ったら」

P「だからって……お前と一緒の空間に寝るのは二重の意味でヤバイだろ。病気と倫理的に」

志希「えー。キミは風邪になんかならない体だよ?」

P「あ、そっかそうだった。いやいや、でもお前一応同じ屋根の下で若い男女がだな……」


志希「ダイジョーブだって、何もしないから」

P「お前が何かしでかす側なのかよ」

志希「あれー、じゃあキミが何かしちゃうの?」

P「嫌だよ。お前になんかしたら怖いもん。毒とか盛るんだろ?」

志希「あー、あれ嘘だよ」

P「嘘?」

志希「うん。キミはやさしーから。そういう風にならないってわかってるもん」

P「……」

志希「だから一緒にいよーよー」

P「……でもな」

志希「一緒にいてくれないと志希ちゃん風邪で死んじゃうー」

P「……わかったわかった。そこの……ソファで寝るから」

志希「やったー♪」

P「はぁ……」

志希「ねー、何かお話してよー」

P「馬鹿、そんな事したら寝れないだろ」

志希「えー。あたしショートスリーパーだからへーきだよ」

P「いや、病気なんだから早く寝ないと」

志希「えー」

P「えーじゃない。早く寝なさい。俺ももう寝るから」

志希「……はーい」

P「……」

志希「……」


P「……」

志希「……」ガサゴソ

P「こら何寄ってきてんだ」

志希「よいではないかよいではないか~」

P「だから駄目だって」

志希「あたしが寄ると何か駄目なのかなー?」

P「うん。俺が寝れなくなる」

志希「どういう意味で寝れなるのかなー?」

P「う、うっとうしいからに決まってるだろ」

志希「えー、キミの匂いを嗅ぎながら寝ればすぐ寝れると思ったのになー」

P「いや無理だろ」

志希「ゴホッゴホッ、あー、キミの匂い成分が足りなくて酸欠に……」

P「下手な芝居やめろ……わかったわかった。もうさっきからキリないじゃないかお前の言う事聞いてたら」

志希「にゃっはっはー。ダイジョーブダイジョーブ、これが最後だから」ガサゴソ

P「本当か?」

志希「ほんとーほんとー♪」ギュウ

P「……はぁ」

志希「変な事したら駄目だよ?」

P「お前、どの口で言うんだおい。それもう一度言ってみろベランダ放り出すぞ」

志希「鬼ー悪魔ー」

P「ちひろってか? はぁ、もう寝なさい。匂い嗅ぐなりなんなりご自由にして良いから」

志希「はーい。うーん、イイ匂い……」ハスハス

P「……はぁ」

志希「……ねぇねぇ」

P「ん?」

志希「おやすみ」

P「……あぁ、おやすみ」




――


P(ちくしょう……暑苦しくって寝れなかった……)

P(そして途中でちょっとだけアイツを女と意識しそうにもなったのが悔しい……)

志希「ふにゃあー……おはよー」

P「ん? おう、おはよう。どうだ体調の方は」

志希「うん、もうへーきだよ」

P「そうか。あ、結局昨日熱計ってないじゃないか……ほら、計ってみろ」

志希「はーい」

P「その間に飯の準備するから。何か食べたいものあるか?」

志希「うどん!」

P「わかった。それならあるはずだから、すぐ作るから待ってろ」

志希「はーい」


……


志希「六度八分だってー」

P「凄いな、もう治ったのか」

志希「だから言ったでしょー。キミの愛情の賜物だね♪」

P「ふーん、俺の愛情がそんな効くとはねぇ。入れた記憶一切無いけど。ていうかそんな効くなら俺の愛情を錠剤にしたら風邪の特効薬になるんじゃないか」

志希「それは無いかな。ていうかそういう概念みたいなのを物質化させるのがまず無理」

P「そんな真っ当に否定するなよ悲しいだろ」

志希「にゃははー。うーん、でもそれが出来たらあたしには効くかもねー。
   とりあえず匂いの成分とかはどうにかすれば錠剤に出来ると思うよ」

P「いや、してどうするんだよ」

志希「あたしの興奮剤になる!」

P「やめなさい」

志希「あ、うどん出来た?」

P「切り替え早いな本当に……もうすぐだから器出して待ってなさい」

志希「はーい」ゴトッ

P「何処にどんぶりあるのかまでわかってやがる……はぁ、ほら出来たぞ」

志希「唐辛子は?」

P「馬鹿。風邪引いてたんだからそんな刺激物は駄目だ。喉に悪いだろ」

志希「えー」

P「ほら、早くうどんだけ持っていきなさい」

志希「はーい」


P「よし、俺のも出来たっと……」

志希「早く早くー」

P「わかったわかった。熱いんだからちょっと待ってくれ」ゴトッ

志希「はい、じゃあ、いただきまーす」

P「いただきます」

志希「……」ズルズル

P「……」ズズッ

志希「んー、おいしー♪」

P「そうか。良かったな。おいしいって言えるくらいならもう風邪も治っただろ」

志希「うん。志希ちゃん完全復活ー♪」

P「ただあまり調子に乗るなよ、ぶり返すから」

志希「はーい」ズルズル

P「本当にわかってるのかね……あ、そうだ。お前、今日の事親御さんとかには連絡したのか?」

志希「えー? しないよー? 何で?」

P「いや、仮にも風邪引いたんだろ? だったら連絡しとかないと」

志希「あー、別に平気だよ。そんな連絡しなくったって」

P「だがなぁ……」

志希「イイのイイの」ズルズル

P「……」

P(こいつ、知り合いの博士の所で手伝いしてるとか、あの研究所で寝泊まりしてるって言ってたけど、
  親と仲が悪いんじゃないか?)

P(もしかして、家出とか……うん、その可能性大だろ。今までの素振りを見るに)

志希「……あれ、どーしたの? 早く食べないとのびちゃうよ?」

P(だったら、言ってやらないとな)


P「……なぁ、志希」

志希「何?」

P「お前、家に帰れ」

志希「……え?」

P「聞こえたろ。家、帰りなさい」

志希「どーしたの、急に」

P「その……親御さんにさ、ちゃんと顔見せてやれよ。何があったとか、そういうのは俺は全く知らない。
  でもさ、その、お前くらいの歳ならまだ間に合うんじゃないかな」

志希「何が?」

P「いや、その……家族と仲悪いんだろ? なんか、話聞く分にはそんな感じだし……。
  だから、俺みたいなのと一緒にいたら、それこそ親御さんが心配するし、早く帰った方がさ――」

志希「あたし別に家出とかしてないよ?」

P「うどん食ってからでも……え、何、今何て言った?」

志希「家出してない。お昼とかに時々帰ってるよ」

P「……は?」

志希「いや、キミと会ってるのって基本夕方以降でしょ? その前に学校行ったり家帰ったりしてるよ?」

P「え……あー、そう……」

志希「……」


P「……え、いやいや。何かさ、飯食いに行った時とか色々言ってたろ? ほら?」

志希「色々?」

P「あれだ……ほら、家庭の事情で外食が出来なかったとか言ってたろ?」

志希「あぁあれ? あれはお母さんの作る料理がおいしくて、お父さんがあんまり外食したがらなかったから。
   あ、でもたまーにお寿司とかは出前取って食べてたよ?」

P「えー……あ、き、昨日だって、しばらく看病なんて誰にもされてなかったとか言ってたろ?」

志希「あれ? あー、あたしさ、昨日の風邪九年ぶりの風邪なんだよねー。そりゃしばらく看病もされないよ」

P「……」

志希「まぁもっと帰ってきなさーいとかは言われてるけどねー。
   お母さんもお父さんも割とてきとーだから、全然ダイジョーブだよ」

P「……」

P(えー……なんか……)

P(なんか……諸々を加味して、愛情に飢えた家出少女と設定づけてたのは……俺の、勘違いか?)

志希「そうキミの勘違い!」

P「心を読むな!」


志希「あははっ。まぁあたしが天才って言っても案外普通なもんだよ、そういう所は」

P「……そういうものか」

志希「そーいうもの。あたしだって……大きな目でみたら、普通の中の一人なのかもね」

P「……なんか色々崩れた」

志希「あははっ、なんかごめんね♪」

P「でも、そうか……」

志希「何?」

P「なんか……ある程度お前が人体実験なんてものをやってる理由に、察しがついたような気がする」

志希「え?」

P「何て言うかな……長くなりそうだけど聞くか?」

志希「うーん……時間はあるし、聞く♪」


P「……お前はさ、確かに天才だ。その歳で人体と物質の作用を熟知している。ていうか知り過ぎてて怖い。
  でも、自分の周囲は普通なもので満ち溢れていた。海を渡り飛び級なんて常人には出来ない事もした。
  だが結局、周りの年齢が上がった所で凡百の辺り触りの無い人間ばかりいる事に変わりは無い。
  だからお前は普通で無いものを求めるがあまり、非合法な人体実験に手を染めるようになった」

志希「……」

P「実験自体は楽しかったんだろう。けど、何だろうな。お前最近、俺で実験がどうのこうのって言う割にはそういう事全然しないだろ?
  その……自惚れかも知れんが、単に俺と遊んでるだけでも実験やってる時と同じくらい楽しくなってたんだろ?
  何て言うか、お前はとにかく退屈を潰したくて……実験もそれの為の道具に過ぎないって、そう俺は感じた」

志希「……」

P「自分の能力を生かせるし、実に非日常的だったからあの実験をやっていただけで、本当は何か面白い事がやりたかっただけなんだろ?」

志希「……」

P「だったら……ああいう危ない事は、もうしないで欲しいとは思う。
  その、俺で良いなら暇つぶしの相手にはなるから」

志希「……」

P「あぁー……その、まぁ俺はそういう風に考えたんだが……」

志希「……なるほど。キミ、面白い考察だね。面白いよ、やっぱりキミ。キミもギフテッドかなんかじゃないの?」

P「お前みたいにぶっ飛んでないから頭は常人だよ。それに俺は芸術も勉強もからっきしだったよ」

志希「えー、嘘だー」


P「なぁ志希」

志希「何?」

P「俺は、お前にとって面白い人物足り得てるか?」

志希「……うん。足りてる足りてる。その点においてはあたしの薬とかいらないと思う」

P「そうか」

志希「……」

P「……正直、ああいう実験をするのは止めて欲しいと思う」

志希「まぁ、だよねー」

P「だからお前に、もっと変わった事をして貰おうかなと思う」

志希「え?」

P「なぁ志希、アイドルになってみないか?」

志希「……アイドル?」

P「うん、アイドル。俺がアイドル事務所のプロデューサーだって知ってるだろ?」

志希「うん、知ってるよー」

P「だからさ、お前も俺にスカウトされてアイドルにならないかって話だ」

志希「……ふーん」

P「俺は……うん、さっきまでお前をアイドルにしようとは思ってなかった。けど、今はお前を是非アイドルにしたいと思ってる」

志希「あたしを?」

P「あぁ。知ってるか? 相当可愛いんだぞお前」

志希「カワイイ? うーん、そういうの気にした事ないから良くわかんないけど……」

P「あぁ、とっても可愛いさ」

志希「特にどの辺が?」


P「え? そうだな……猫みたいにおっきくて、人懐っこい吸いこまれるようなその目とか。ウェーブのかかった綺麗な髪もそうだし。
  潤って柔らかそうな色っぽい唇も……それに志希は身長とかもある方だし、色んな衣装着ても似合うと思う」

志希「……よく見てるねー」

P「どこがその子の魅力になり得るのか、そこをどう魅せるかを考えるのも俺の仕事だからな。
  前から志希はアイドルにしたいなって思ってはいたから、余計に」

志希「……そっか」

P「どうかな。志希が今までいた文壇の世界とは全く違う世界だ。今までやってきた事なんて全く通用しない所かも知れない。
  お前がアイドルを面白いかそうでないと感じるかはわからない。でもお前に知らない世界は見せてやれる、それは保証する。
  だから、ああいう危ない事をするより、その……俺と一緒に来て、アイドルになって欲しい」

志希「……」

P「どうかな」

志希「……うん」

P「ん?」

志希「……うん、それ面白そーかも!」

P「そうか!」

志希「うーん、でも今までやってきた事使う事はなくなるかなー。
   そうなると我ながら才能放り捨ててる感じ」

P「才能が無くても楽しめる事はあるし、努力で覆せる事だって無いとは言い切れない。
  ほら、のび太だって射撃の才能はあるけど活かす道に進んでないだろ?」

志希「あー確かに。ていうかあたしのび太と一緒かー」

P「いや、のび太は凄い奴だぞ……劇場版とか。ま、まぁでもお前は既にその顔立ちとかで十分才能の一つはあると思うけどな」

志希「そーかな? でも、キミが言うならそうだよね♪」

P「やってくれるか?」

志希「うん! キミとアイドルやったら面白いことがあるかも♪ ううん、キミが言うんだから面白いよね!」

P「……あぁ」

志希「じゃあこれから宜しくね!」

P「こちらこそ、よろしくな」

志希「ふっふ~」


――



志希「という事があったんだー」

七海「へぇ~、凄いれすね~」

志希「もう猛烈アタックでねー、困っちゃったよ」


ガチャッ


P「……コラ。こんな所いたのか志希、そろそろ撮影お前の番だろ、ここで何やってるんだ」

志希「あん♪ 見つかっちゃった♪」

P「はぁ全く……逃げちゃえ~じゃないよ、宣材撮るってのに……。あぁそれと、根も葉もない事七海に教えるなって。
  七海、今言った事ぜーんぶ嘘だからなー」

七海「そうなんれすか~?」

P「あぁそうだ。ほらこっち来い志希」

志希「あーれ~。七海ちゃんたすけて~」ズルズル

七海「いってらっしゃ~い」


ガチャッ バタンッ



志希「……」

P「……はぁ。他の人には本当の事言わないって約束しただろ?」

志希「えー、でも良いじゃん。個人的に面白い話だと思うんだけどなー」

P「いや、結構ヤバイ話が色々入ってるからさ……人体実験やらトラックけしかけた云々。お前下手したら捕まるからな?」

志希「あはは、そうかもねー」

P(記憶の全容は戻して貰ったが全く反省の色は無いというのが逆に凄い気がしてきたぞ……)

志希「わかったわかったよー。もう人には言わないから怒らない怒らない♪」

P「はぁ……はいはい。もう怒ってないよ」

志希「ほんとに~?」

P「本当だ。だからササッと宣材撮ろう。な?」

志希「うーん、まぁキミにそこまでお願いされたらしょうがないねー。あ、七海ちゃんとこに荷物忘れた」タッ

P「その手は食うか」ガシッ

志希「あん♪ もー、素早いなー」

P「誰かさんが相当俺の筋力と反応速度を上げてくれたからな。非合法な方法で」

志希「ふっふー、そんなに感謝されると困っちゃうなー」

P「誰も感謝してないわ!」

志希「あーんまた怒ってるー」

P「全く……何で小脇にアイドルを抱えて撮影現場に戻らないといけないんだ……」


志希「……隙ありー♪」ギュウ

P「あ、馬鹿っ。お前。こんな所で抱きつくな!」

志希「己の刃が届く距離は敵の刃が届くと位置と思えー♪」スンスン

P「口調と内容が全く一致してないぞ! というか臭い嗅ぐのやめなさいくすぐったい!
  そしてあらぬ誤解を受けるから!」

志希「あー……トリップしそう~……」スンスン

P「やめろ、誰か来たら……」


「P……さん?」


P「うっ……」

志希「あ、若葉ちゃんだ」

若葉「……」アワアワ

P「あー、若葉? これな、こいつがアホみたいにじゃれてるだけだからな?」

志希「にゃははー、やっぱりキミのは良いなー、好き~……」ギュウ

P「馬鹿野郎もっと抱きつくんじゃない! そんで変な事言うな!」

若葉「け……」

P「ん?」

若葉「け、結婚式には、呼んで下さいー!」ピュー

P「あ、逃げた! は、放せ志希! あのままほっといたらヤバイぞ!」

志希「ヤバイのー? じゃあほっとこー♪」

P「い、いや逆だろ!」


志希「逆じゃないよー♪ 危ないから面白いんだよ♪」

P「あ、アホ! おい若葉! 待ってくれ! これは誤解だ! こいつの頭がおかしいだけなんだ!」

志希「あ! おかしいと言えば! 新しく薬作ってきたんだー。さーさー、キミもこれを吸っておかしくなろーよ!」キュポン

P「バッ、嗅がせるな……臭い! 生ゴミの臭いがする! 何でお前の作る薬全部臭いの!?」

志希「全部は臭くないよー。キミに嗅がせてるのだけ♪」

P「ちくしょう! うっ、視界が……」

志希「にゃははー、あ、この隙に失踪しちゃおうかな~」

P「も、もう……」

P(もう薬は、こりごりだ……)


ガクッ


志希「……あれ? 気絶しちゃった。おかしーなー配分間違えたかな」

志希「まーでも、とりあえず……」

志希「……科学ノ発展ニギセイツキモノデース」

志希「……逃げちゃえ~♪」

終わりです
志希にゃんみたいなボケっぱなしうちっぱなしな娘は楽しいですね

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