【安価・コンマ】聖杯踏査【募集】 (414)



 ――――開始。異界開門プログラムに接続。

 干渉、解錠、侵入。全て滞りなく終了。不安定因子の排除に移行。

 疑似心象世界群を確認。これが我々の探し求めていたものであることは、もはや疑いようもない。

 不安定因子、排除完了。追ってゲートを開放し、探査艇の準備に移行する。

 開放率56%。

 ゲートは長くは開けない。今回の試行では、一人を派遣するのが精一杯だろう。

 ―――開放率98%。

 一刻の猶予もない。

 これより『聖杯踏査』を開始する。



・fateシリーズの聖杯戦争をモチーフにした三次創作。
 あくまで借りているだけで、原作のあらゆる世界線とは別の平行世界。
 独自設定多め。
・鯖鱒wiki等からオリジナル・サーヴァントをお借りして使用。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438934996

 -設定-

【前置き】

 本来、作中で設定を公開するべきですが
 設定を披露することが目的ではないため、簡潔に済ませることをご理解ください。


 細かい裏事情などを抜きにしてまとめるならば、

 『固定した位置にいるサーヴァントを、一人のマスターがサーヴァントを率いて倒していく』
 『マスターは最初無個性で、物語の中で性格などを確立させていく』
 ための設定です。

 興味がない方は飛ばされても問題ないと思います。



 ―――――40XX年……人類は地球上から消え去った。


 きっかけが何かは最早不明である。
 甚大な世界大戦だったかもしれないし、宇宙より飛来した侵略者だったかもしれない。
 或いは人類を苛む疫病だったかもしれないし、或いはそれが天命だったのかも知れない。

 とにかく人類は消滅し、最早地上も地下にも空中にも海中にも、或いは星の外にすら、人類の息吹はまったく存在しなかった。

 しかしそれは、人類の滅亡を意味するのだろうか――――否。
 地球上からあらゆる人類が消え去る直前に、とある魔術師がプログラムを構築した。

 それは、二つの機構により成り立つ、人類を救済するための命綱。

 英霊の情報データをダウンロードし、独自に構築した異界内にサーヴァントを限定的な状態で召喚。

 そして、その中に聖杯機能を持ったホムンクルスを投入し、『聖杯』を半ば機械的に作成する、『聖杯踏査』を執り行う。


 擬似的に作り出された聖杯は、一つ用いるのでは足りないが、
 それを無限に重ねたならば、いつか人類の復活という、途方もない願いも叶えられる。

 故にその確率は無限大で、地球そのものが滅びるのに間に合いさえすれば、
 人類の復活は確約されたも同様である。


 この計画は一見、探索の当事者たるホムンクルスやサーヴァントにとって何ら益のない行為のようにも思える。

 サーヴァントの多くの願いは、正常に機能する人類社会に対して有効なものであって、
 もはや滅びた世界に対して願いをかけても空虚であり、
 ホムンクルスに至っては、ただ聖杯を重ねるための人柱としてしか扱われていないように見えるからだ。

 故に、以下のように対策を行う。

 サーヴァントについては、その願いの解決時期を『人類社会の復活後』とすることにより、それに対策。
 そして、人類を復活させるために転送されたホムンクルスについては――――
 『聖杯降臨に成功した場合、人格データをサーバーに保存。そして人類社会復活後、新たな肉体にそれを転送した後、
  必要ならば、その望みを叶える』――――こととする。


 この試行を『聖杯踏査』と呼ぶのは、ここで行われる聖杯戦争が、通常のものとは大きく違っているからだ。

 通常の聖杯戦争においては、聖杯は7人の魔術師がマスターとしてサーヴァントを1騎ずつ召喚し、

 それらのサーヴァントを争わせ、聖杯へと収納することによって聖杯を降臨させる。


 しかし今回、マスターは一人。転送されるホムンクルスしか存在しない。

 また、通常の聖杯戦争において、召喚されたサーヴァントはある程度の制限こそあれ自由に行動出来るが、
 今回の場合は、要塞(ギャリソン)によってその行動が大幅に制限されている。


 異界にはいくつかのエリアがあり、エリア毎に各個の英霊に対応する擬似的な心象世界を模倣した結界が設定される。
 マスターと契約していないサーヴァントは、その結界内に固定されることとなる。
 各疑似心象世界はそれぞれ、その英霊が過去に体験した景色を再現するものであり、特殊能力などはない。
 よって本質的には心象世界とは異なるものだが、今回は敢えてそう記載する。

 また、能力面においても制限がかかっており、条件に合わせて3段階ある解放条件を満たさない限り、
 サーヴァントはその宝具・スキル・諸々において、基本的な能力すらも発揮出来ない。

 解放条件と、制限要素は以下の通り。
 なお、解放条件を満たす度、擬似心象世界は変貌する。


 第一段階
 全ての宝具を失っている。
 一部のスキルを除く全てのスキルが機能しない。
 契約は行えない。

 ↓解放条件:対話により、ホムンクルスに対して戦意を表意させる。

 第二段階
 宝具の真名解放が不可能。
 一部の宝具については解放されない。
 一部のスキルが劣化。
 契約は行えない。

 ↓解放条件:ホムンクルスまたはそれが従えるサーヴァントが、真名を看破した上でそれを撃破。
         心象世界が再生すると共に、サーヴァント自身も復活する。

 第三段階
 宝具の真名解放が可能に。ただし、性能には制限がかかる。
 全てのスキルが使用可能になる。
 サーヴァント契約が可能となる。

 ↓契約を行うことにより、一切の制限を解除することが可能。

 契約サーヴァント


 以上の手段により、ホムンクルスはサーヴァントを獲得することが可能。
 当然、戦争を進めていく流れの中でサーヴァントを変更することも可能。

 この手順を繰り返すことによって七騎のサーヴァントを撃破し、自らの中にその魂を蓄積することによって、
 聖杯を完成させることになる。
 異界には常に7騎以上のサーヴァントがいるが、その全てを撃破する必要は無い。

 従って、どのサーヴァントを撃破するか、どのサーヴァントと共に戦うかは、ある程度ホムンクルスの裁量に任せられているとも言える。

 なお、通常ならば聖杯の機能を強化するにつれ、ホムンクルスは生命機能を失っていくものだが、
 今回は蓄積期間と人間としての部分を完全に分離することに成功しているため、その限りでない。


 ――追伸――

  今回にける特筆事項、即ち、ホムンクルスがどういう状態になっていたとしても、たとえ死んでいたとしても。
  核である聖杯機能が消失していない限り、降臨には事欠かないし、マスターとしての機能も失わないらしい。

  前者はこれまでの聖杯戦争でも確認されていたことだが、後者については今回独自の現象である。


  つまり、ホムンクルスとその現行のサーヴァントを殺してしまいさえすれば、死体となった聖杯を媒介として、
  ホムンクルスの許諾なく別のサーヴァントが探索者となり、聖杯を独占しようとする危険性がある。
  人類復活のための聖杯機構は、サーヴァントではなく、マスターたるホムンクルスの願いによってその中に魔力を貯蓄する。
  即ち、ホムンクルスが死亡した戦争においては、人類の修復作業はまったく機能しないということだ。

  場合によっては、戦闘に巻き込まれたことによりホムンクルスの肉体が破壊され続け、人類の修復が停滞する危険性がある。
  今回、ギャリソンの形式を取った理由の一端はここにあるのだ。

  さらに、ホムンクルスがサーヴァントと戦闘を行うためにはある程度の交流が必要不可欠だが、
  そのためにはある一定の時間、ホムンクルスの安全が確保されている必要がある。

  よって、過去使用されていた令呪の機能を援用し、サーヴァントの行動を限定的に拘束する『時限令呪』をシステム化。
  これによって異界に設定された偽装的な『朝・昼』に該当する時間、契約状態や段階にかかわらず、
  あらゆるサーヴァントは他の存在に対して攻撃を行うことができない。

  なお、通常の令呪については、一般的な聖杯戦争と同様に3画存在する。
  この令呪はたとえ途中で契約サーヴァントを更新しても維持される共通のものであることを、注意。


  一つのサーヴァントに与えられる時間は2週間である。
  それ以内に終わらなかった場合、ホムンクルスの機能は強制停止され、聖杯戦争は次代へと移行する。


【異界のエリア一覧は以下の通りである】
【場合によって、これは変更される】


                       ┌──┐
                       │ A1│

 ┌──┬──┬──┬┐        ├──┼──┬──┼──┼──┤
 │ B1│ B2 │B3 │ └┐      │ B4│ B5 │B6  │ B7 .│ B8│
 ┼┐  ├──┼──┤  └┬──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
   └┐│ C1│C2  │ C3│ C4│ C5 │ C6 │ C7 │C8 │ C9│ C10│
    └┼──┼──┤  ┌┴─┬┴─┬┴─┬┴─┬┴──┼──┼──┤
               ├─┤ D1 │D2 │ D3 │ D4 │ D5  │D6 │ D7 │
                  └┬─┴─┬┴─┬┴──┴───┴──┴──┘
                   │ E1  │E2 │

                   ┴───┴──┘

【長々と書きましたが】

 先述の通り、英霊攻略型の安価スレを作りたかったがための設定。
 設定はあくまでつじつま合わせのものであり、さほど重要ではないことをご理解ください。
 当然のように型月設定と矛盾しているところはあると思うけれど、
 根本的部分以外は平行世界ということでお願いします。



【その他注釈】

・聖杯探索終了後、次代に移るにあたって、第三段階以上に移行した全てのサーヴァントが所在するエリアには、
別のサーヴァントが設置される。それが撃破されているか否かに関わらず。

ただし、1度同じ理由で排除されたサーヴァントが、再び別の場所に設置される可能性はある

・サーヴァントを撃破した際に、ホムンクルスは『英霊の残滓』を習得する。
 これはその英霊が持つ能力の一端を結晶化したものであり、そのままでは本人には使用出来ないが、
 次代以降のホムンクルスに投与することによって、その能力を与えることができる。
 また、とある場所へ向かうと、手に入れた

 ただしあくまでごく一部であり、サーヴァントに匹敵するものとまでは言えない。

【ホムンクルス作成時の注意】

 主人公のホムンクルスを作成する際、判定を行うのは性別・魔術適正・身体適正・霊的適正の二つのみ。

 魔術適正は魔術の含有量、身体適正は身体能力を表す。1~10の10段階で、高いほど優秀。
 霊的補正は後述。

 また、来歴や性格も設定しない。

 来歴はそもそも存在せず、性格はこの聖杯遍歴を通して形成されていくからだ。

【当スレ独自の処理】

感情の輪を基準にし、序盤はこれによって主人公の性格を形成していく。
主人公の感情が揺さぶられうる出来事が起こる度に、以下の判定表を用いて判定。
さらに続けて判定を行い、その数値の大小によって、出来事に対する主人公の感情が明確化する。
ある程度明確化した時点で、これは行わないものとする。

1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


【18:00頃に主人公作成】


 ―――

 ―――――


 ――――――――――



 設定構築開始。

 規格を構築。ホムンクルスのアイデンティティー確立作業に移る。

 第一に、性別を設定。


 男性or女性

↓2


 性別:男性


 定義完了。

 続いて、魔術適正、身体適正、霊的適正を定義。

 以下、↓1、↓2、↓3 で順を追って設定。

1に近づくほど能力が低く、9に近づくほど能力が高い 0は規格外。


 魔術適正:9 ほぼ全ての魔術に適正を持つ

 身体適正:6 それなりに優秀な身体能力

 霊的適正:7 高い


 魔術適正、身体適正、霊的適正を定義完了。



 以上、ホムンクルスの形成に成功。


 完成した個体を、順次異界へと転送する。



 初期位置を確定する。

 以下の地図より、座標を指定。


                       ┌──┐
                       │ A1│

 ┌──┬──┬──┬┐        ├──┼──┬──┼──┼──┤
 │ B1│ B2 │B3 │ └┐      │ B4│ B5 │B6  │ B7 .│ B8│
 ┼┐  ├──┼──┤  └┬──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
   └┐│ C1│C2  │ C3│ C4│ C5 │ C6 │ C7 │C8 │ C9│ C10│
    └┼──┼──┤  ┌┴─┬┴─┬┴─┬┴─┬┴──┼──┼──┤
               ├─┤ D1 │D2 │ D3 │ D4 │ D5  │D6 │ D7 │
                  └┬─┴─┬┴─┬┴──┴───┴──┴──┘
                   │ E1  │E2 │

                   ┴───┴──┘

【安価】

↓2


 初期位置確定。エリアA1に目標を設定。

 ホムンクルスの転送―――――成功。



 では、観測を開始する。


 ――――――――――

 ――――――――

 ――――――

 ――――

 ――

 ―


 ――――

 ―――――――


 【A1:やわらかな砂丘】


 意識、覚醒―――――。

 偽物の太陽が空に輝いている。足下は砂地で、履いているスニーカーの中に白砂が幾粒か混入した。

 身に纏う洋装は、旧時代の一般人の服装を模倣したものらしい。



 『ぼく』がはじめて降り立ったのは、広い広い砂丘の上。

 斜面はなだらかで、草木も岩もなんにもないけれど、遥か遠くを見渡すと、

 灰色の大きなお城が二つ三つ、疎らな方向に散らばっているのが見えた。



 サーヴァントはあそこにいる。一つの城に、一人ずつ。

 ぼくの役目は、あの中のいずれかのサーヴァントと契約を結んで、その後、七つのサーヴァントを倒すこと。

 そうと決まったなら、まずはそのために歩き出さないと。



 今、視界には2つの城塞が映っている。

 一つは、ぼくがやってきたこの『A1』エリアの要塞。

 もう一つは、隣接する『B4』エリアの要塞。

 どちらにもサーヴァントがいて、もしかしたらそのどちらかと契約を結ぶことになるのかもしれないし、

 もしかすると、どちらとも結ばないかもしれない。


 さて、どちらに行こうか。

【安価】

1、A1
2、B4


↓1


 遠くに映るエリアB4の要塞の風景。

 エリアA1の様子も気になるけれど、できるだけ多くのエリアにアクセス出来る中央のエリアに移動した方が良い。

 とりあえずB4に行こう。あそこからならば、さらに多くのエリアに移動出来るから。



 ―――――

 ―――――――――

 ―――――――――――――

 ―――――――――

 ―――――

 【エリアB4:崖地】

 そして、エリアB4に到着する。

 エリアB4は、平らな砂丘だったエリアA1とは打って変わって、勾配の激しい急な坂道。

 向かって右手側は海に繋がっていて、うっかりしていると落ちてしまいそうだ。


 要塞(ギャルソン)は背丈も大きいので、見失うこと無く辿り着くことができた。

 岩の上に不安定に立つその要塞は、正面を除いてまったく出入り口のない密閉された鉄の檻。

 そして、唯一の出入り口は、正面にある大きな観音開きの門。

 この中にはサーヴァントと、そのサーヴァントにまつわる世界が広がっている。

 もしかしたら、ぼくのパートナーになるかもしれないサーヴァントが。

【安価】
1、入ってみよう
2、やめておこう


↓1


 折角ここまで来たんだ。入らないことに意味はない。

 僕は重厚な扉に手を掛け、勢いよく引っ張った。

 すると、魂ごと吸い込まれるようなぞっとするような風がやってきて、僕はふっと意識を失い―――――



 ――――

 ―――――――

 ――――――――――

 ――――――――――

 ―――――――

 ――――



 ……意識が回帰する。

 つむっていた目をゆっくり開いて、ぼくは周囲を見渡した。

 するとまず、ふと、自分を取り巻く異様な光景に気づいたのだ。


 ここは屋内だ。

 天井には輝くシャンデリア、見下ろすと真っ赤なカーペット。

 純白のテーブルクロスが掛けられたテーブルがずらりと並び、各椅子毎に陶器の皿が並べられていた。


 何が異様かと言うと、その一つ一つが大きすぎたこと。

 シャンデリアはガラス一つ一つがぼくの頭ほどの大きさがあり、

 絨毯の毛は僕の指ほど太い。椅子は僕の背丈の何倍も大きくて、そして。

 ぼくは皿の上に座っていた。


【感情判定】
↓1 感情の方向性
↓2 感情の大きさ
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


敬愛:1

 ……まあ、別段驚くほどのことでもないか。

 少し、この景色は綺麗だと思ったけど、それだけ。

 これから色々な城塞を回っていくことになるけれど、なんといっても英霊の過去を描いた擬似的な心象世界。

 奇天烈な世界が広がっているのは、考えるまでもないことだ。


 この位のことで、驚いていても仕方ないな。

 それよりも早く、この広い部屋のどこかにいるサーヴァントを探さないと。


 ぼくはそう思い、辺りを見渡した。

 すると、遠くの方に人影が見える。まっすぐと続く巨大テーブルを端から端へ、一番向こうの皿の近くに、

 ぼくと同じくらいの人影が見えた。

 行ってみよう。



 ――――

 ―――――――

 ――――――――――

 ――――――――――

 ―――――――

 ――――



 「……ん? お前、誰だ?」

 そこにいたのは、20歳前後ほどの青年だった。

 鼻筋が通って、瞳は宝石のように美しい。

 端正に整った、目も眩むような美青年の姿が、そこにあった。

 「ここでいったい何をしてる?」

【安価】
1、聖杯踏査のマスターとして来た
2、答えない
3、その他

↓3

↓3遠すぎたので加速


 「ぼくは聖杯探査のマスターです」

 ぼくがそう答えると、その青年の表情が僅かに歪んだ。

 「ええ? マジで? お前が? マスター?」

 「はい」

 「……んだよつまんねえ、男かよ!」

 どうやらその青年は、女性のホムンクルスが送られてくることを期待していたようだ……。


【感情判定】
↓1 感情の方向性
↓2 感情の大きさ
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


激怒:7

 ――――何故だろう。

 無性に腹が立った。

 人間を性別で判断したことにか? 初対面の相手にこの言いぐさなことか?

 或いはこの素敵な世界に似つかわしくない、軽薄な男に見えたからか?

 そうでなければ、あるいはこの青年の美貌と、この青年の言動が、あまりにも一致しなかったからか?


 ……とにかくぼくは、彼の言動に憤りを隠せなかった。

 「……なんでむすっとしてんだよ。ったく、面倒だな」

 そしてこの言いぐさである。

 彼は煩わしそうに首を振ると、ぼくに向かって追い払うような手振りを見せた。

 「んー、アレだ、アレ」

 「分かった、俺のこと当ててみろよ。俺が誰だか分かるか?

  分かったなら少し見直してやってもいい」


 何が悲しくて、お前に見直して貰わなくてはならないのだろう。


【返答】
1、答える(内容併記)
2、答えない(無言)
3、その他

↓2


 「これだけでわかるわけないだろう!」

 ……苛立ちが溜まっていたのか、つい、怒鳴ってしまった。

 どうしてだろう、この男の顔を見ていると、なんだか無性にイライラする。


 「分かんねえ? マジで? っべーな、それ」


 困惑するぼくを尻目に、その男は相変わらずの軽い口調で顔をしかめる。


 「俺ほどの人物何だったら、顔パスで通じるくらいじゃないと、っべーよなあ。

  つーか、マジ分かんね? このスーパーハンサムスマイルを見ても?」

 「……」

 スーパーハンサムスマイル。

 確かにそれは事実かも知れない。認めよう。目の前にいるこのサーヴァントは、

 人間の水準から遥かに逸脱した美少年だ。まるで神の手で作られたような、まったく足りぬところのない完成された面立ち。

 だが、だからこそ、そんな美貌を持っているような恵まれた人間が、この態度だとかんに障る。


 「お前なんかより、よっぽどイケメンだろ?」

 本当に、性格の悪い男だ。


 「あ、俺っち、脱いでもすげーけど、特別に見せてやろうか? おっ?」


【感情判定】
↓1 感情の方向性
↓2 感情の大きさ
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)

前回判定結果考慮:大きさが7以上ならば激怒に変更

00:複合型(強)

入り交じる三つの感情を判定
被った場合は被ったままで


【感情判定】
↓1、2、3 感情の方向性
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0特殊


 「……!」

 ぼくが止める間もなく、男は自分の衣服を脱ぎ去って、その上半身をさらけ出した。

 脱ぐ動きも華麗に滑らかで、まるで鳥が踊っているようだった。

 一挙一動が美に直結する華麗さは、本当に心を奪われる。

 そして、さらけ出されたその裸体もまた、まるでギリシア彫刻の手本のように、

 磨き上げられ、輝きを含んだ至高の骨肉。


 多すぎもせず、少なすぎもしない、バランスの良い筋肉が、彼の美しい顔を相乗効果をもたらして、ぼくの心をとろんとさせる。

 自分も絵画の一部になったような感覚を覚え、そして、もっと近くにいきたい、もっと自分を、至高の美に近づけたいと、心が要求してくるのだ。

 ああ、こんな男になら、掘られた―――――


 「――――!?」


 ……

 ―――――なんだ?

 今の、寒気のするような感情は?


 ぼくの中に刻み込まれた、常識のデータベースが警鐘を鳴らしている。

 ぼくは今、立ち入ってはならない禁断の世界の扉を、開けかけてしまったのではないか?


 おぞましい。自分の心がおぞましい。


 【行動】
1、接触を続ける
2、この場を去る
3、その他

↓2


 ……まずい。

 ぼくの中に、生まれてはならない因子が生まれようとしている。

 一刻も早く、この場を去らないと、きっともう元には戻れない。


 僕は震える足を懸命に動かして、男から走って逃げていく。

 「あっ、お前!」

 何か呼び止める声のようなものが聞こえたが、気にしている暇はない。余裕もない。

 全て無視して、巨大な皿やテーブルが並び立つ部屋の周囲をかけずり回り、

 ようやくカーペットの隙間付近に割れ目のようなものを見つける。

 あそこが出口だ。

 僕はテーブルの上から勢いよく飛び出し、割れ目へと身を投げ込んだ。


 僕の身体が心象世界の切れ目から、元の異界へと移動していく。

 また、魂が奪われる感触がする。

 僕の意識が正に消えようとしているとき、男の声が僅かに聞こえた。


 「俺の身体を見て逃げ出すとはいい度胸だ。

  お前、サーヴァントと契約したら、必ず俺のところに来い。

 お前は俺が、ぶっとばしてやっからよ」


 ――――そして、意識が途切れた。

そういや鯖のAAは極力表示しない方向なのかな、見たらバレるから

【エリアB4:崖地】

 目が覚めると要塞の外で、扉はいつの間にか閉ざされている。

 今だ収まらない心臓の動悸を整理しつつ、ぼくは要塞の壁にもたれかかった。


 あの男の顔を思い浮かべると、また悪心が浮かぶかもしれない。

 だから顔は思い出さないまま、垣間見たステータスだけを思い出す。


┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━┓
  ≪クラス≫:ライダー      【真名】:?                    【属性】:混沌・中庸
┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
   【筋】:E(10)    【耐】:E(10)     【敏】E(10)      【魔】:E(10)     【幸運】:B(40)    【宝】:?
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫

 【クラススキル】
 ◆対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。


 ◆騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。 

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


 ……これは、全体的に劣化しているステータスだ。

 聖杯踏査においては、要塞に封じられているサーヴァントは常に、通常より一歩劣化した状態である。

 勿論全てのスキル、ステータスが、ではないが、……殆どのステータスが1ランク程度劣化しているとみるべきだろう。


 ――――だが、問題はそこではない。

 劣化している状態とはいえ、全てのスキルが劣化しているわけではない。

 場合によっては、劣化していないスキルも存在する。

 だから、きっと、このスキルは―――――劣化していないスキルなのだろう。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

  【保有スキル】
 
 ◆魅了:A
 魔性の美貌により、老若男女を問わず対象の精神を虜にする。
 ここまでくると魅惑ではなく魔術、呪いの類である。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


 魅了:A。性別を問わず、人を虜にする魔貌。

 きっとぼくは、これにあてられて、あんな感情を抱いてしまったのだ。


【判定】
ヒント
5以上で成功 (0は0)


 ああ、やはり身の毛がよだつ。

 人格的には、決して好きなタイプの人間ではなかった。そんな男に心を奪われかけたというのは、やはり良い気分がしない。


 今もあの上半身が時折フラッシュバックして脳内を埋め尽くす。

 美しい肌、磨かれた肢体。そして―――――


 ああ、そういえば……と、心を奪われたもう一つの美を思い出す。


 さきほど彼をギリシャ彫刻のようだと言ったが、あれはまったくの比喩ではない。

 彼の左肩は、本当に人間の身体ではなかった。その肩は、乳白色の白くて硬い何かでできていたのだ。

 石よりは柔らかく、肌より硬いその構築物は、彼の整った身体に僅か見当たるアクセントとして、

 彼の美貌をより一層引き立てていた。



【今日はここまで】
【お疲れ様でした】

少し弄ってみた
テストスレ 第肆拾弐章 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438692142/164)

>>75 ありがとうございます】
【ついでに全体アップデート】


                                                  ┌─────┐
                                                  │          │
                                                  │ X1     . │
                                                  │          │
                                                  ├────┬┘
                                                  │ Y1   .└┐
                                                  ├──┬──┤
                                                  │.Z1....│.Z2....│
                                ┌──┐          ├──┼──┼┐
                                │ A1...|          │ A2...│..A3 .│└┐
              ┌──┬──┬──┬┐        ├──┼──┬──┬──┬──┤  └┐
              ..|. B1..|..B2 .| B3...|└┐      │..B4 .| B5...|..B6 .| B7...│..B8 .| B9.....│
  ┌──┬──┼┐  ├──┼──┤  └┬──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┐
  │C11 │ C0 .│└┐│ C1 .│ C2 .│ C3 .│ C4 .│ C5 .│ C6 .│ C7 .│ C8 .│ C9 .│C10 │
  ├──┼──┤  └┼──┼──┤  ┌┴─┬┴─┬┴─┬┴─┬┴──┼──┼──┤
  │..F1...│..F2...│.F3....│..F4...│...F5..├─┤ D1...|..D2 .| D3...|..D4 .|   D5   | D6...| D7...|
  └─┬┴──┼──┼┐  ├──┤  └┬─┴─┬┴─┬┴──┴───┴──┴──┘
      │ G1  . │ G2. │└─┤ .G3 │ G4 .│  E1   | E2  |
┌──┼───┴──┘    └──┴──┴───┴──┘
│ H1...│

└──┘

>>61 AAは一切出さない方針でやろうかと考えています】

【加えて、スキル劣化を設定から取り除きます】
【真名当てを阻害するだけになりそうだったので】

 第一段階
 宝具の使用が不可能。
 一部スキルが秘匿。
 契約は行えない。

 ↓解放条件:一回以上接触する。

 第二段階
 宝具の真名解放が不可能。
 一部の宝具については使用不可能。
 ごく一部のスキルが劣化。
 契約は行えない。

 ↓解放条件:ホムンクルスまたはそれが従えるサーヴァントが、真名を看破した上でそれを撃破。
         心象世界が再生すると共に、サーヴァント自身も復活する。

 第三段階
 宝具の真名解放が可能に。ただし、性能には制限がかかる。
 全てのスキルが使用可能になる。
 サーヴァント契約が可能となる。

 ↓契約を行うことにより、一切の制限を解除することが可能。

 契約サーヴァント

【更新は未定】

【次に出てくるサーヴァントの準備もあるのでほんの少しだけ】


 ……精神状態は少しずつ落ち着いてきている。

 大丈夫だ。

 あの迷走に惑わされ続けることはもうない。



 それに、ここでずっと立ち止まっているわけにはいかないんだ。

 地球換算で二週間、つまり336時間しか、ぼくが動ける猶予はない。

 さて……この世界に侵入した時から数えて、今何時間ほど経過しただろうか。



【判定】
経過時間
コンマ/2(切り上げ)



【直下でお願いします】
【以後、特に記されていなければ直下で】


《現在時刻 一日目 AM3:00》

 手元の時計を確認。

 三時間経過―――――。思ったほど経っていないとみるか、想定より経っていたとみるか。

 この三時間がまったく無為とは言わないが、それでも時間を浪費したであろうことは事実だ。

 食事こそ必要ないものの、睡眠は取らなければならないし、その時間も考慮に入れなくてはならない。



 とにかく時間は限られている。

 ぼくに与えられた僅かな時間を利用して、ぼくは聖杯を得ねばならないのだから。



 ……そういえば、ぼくはどうして聖杯が欲しいのだろう。

 ぼくが取った聖杯は、それそのものの願望機機能については、人類の復活のために使用される。

 しかし、もしぼくが聖杯を得ることに成功したならば、ぼくの精神はサーバーに保管され、

 人類復活後、ぼくはぼくの願いを叶えられた状態で復活する。



 でも、ぼくの願いとはいったいなんなのだろう?

 ぼくにはまだ世界が見えていない。

 滅びる前の世界も、見たことがない。

 今のぼくには、何の願いも存在しない。

 ……この戦いで、何かを見つけられるのだろうか。



【行動】
1、移動する(移動先指定)
2、その他

↓1


 それでは、次はエリアB5の方に行ってみよう。

 獣道に突き出して視界を遮る岩と岩との狭間のさらに向こう側、地平線の彼方まで視野を広げると、

 エリアB5の一部を捉えることができる。


 空の色をつらぬく澄み渡った海と、青から黄土色へのグラデーションを描く入り江。

 エリアA1の一面の砂丘とはまた違う、爽やかさとみずみずしさを持つ砂の一帯。

 あれがエリアB5で間違いないだろう。




【→エリアB5へ】

【今回はここまで】

【テンポの問題上、エリア移動→新規エリアならば自動的に要塞に侵入することとします】


 ――

 ―――――

 ――――――――


 荘厳、壮麗、そして異様。
 黄土で気づかれた宮殿にはエキゾチックな香りが漂い、彩色煌びやかな絨毯が、玉座への道を輝かせる。

 そう、これがエリアB5の要塞(ギャリソン)、その内部。
 要塞を発見したぼくは扉を開き、またもやこの異世界へと連れ込まれた。

 周囲は砂漠。100メートルほど向こうには、エジプトのプラミッドを思わせる四角錐の構築物。否、恐らくピラミッドそのものだろう。
 東西北に三つ立ち並ぶピラミッドの中央にあるのがぼくが今居る宮殿で、長い回廊を抜けた視界の先には二つの玉座がある。

 一つは空席で、もう一つには女性の姿。
 周囲の華麗な装飾に見合わないほど、質素で簡素な衣服を纏っていた。

 ぼくが呆然として留まっていると、その女性の方からぼくに話しかけてきた。

 優しい微笑みと、柔和な声を添えて。

 「あら、もしかして貴方が聖杯踏査のマスターさんですか?」

 「遠路はるばる、態々こんなところまで良く来てくださいました」

 「私はランサー。不肖ながら、この地を守らせていただいております」

 「もし私にできることがあれば、なんなりとお申し付けくださいね」


 そして、手に持つ長槍を、ふぅわりと優雅に持ち上げた。

 その武器は『槍』であるにも関わらず、どこか攻撃性に欠けていて。

 そしてどこか、暖かなぬくもりを含んでいた。


【行動】
1、会話
2、ここを出る
3、その他

↓1

【会話】

内容
↓3 21:30時点で達していなければ、その時点での一番↓


 「えーと」

 周囲の景色。玉座。
 彼女が『何』であるかは一見して明らかに見える。
 だからこそ―――――見えるからこそ、本当に正しいのかと訝しんでしまう。

 「ファラオの方ですか?」

 「かつては、そう呼ばれていたこともありました」

 彼女――――ランサーは玉座を降りて、ぼくのところに近づいてきた。

 「ですが、そう大仰な者ではありませんよ。

 私はただ、人々が安寧に暮らせることを願っていただけですから」



 「……あなたは、どうですか?

 戦争と平和、どちらが好きですか?」




【返答】
1、戦争
2、平和
3、その他

↓1


 「もちろん、平和の方が好きです」

 「だからと言って、そこに衰退があってはなりませんが」

 ぼくがそう言うと、彼女はきょとんとした表情になりました。

 「衰退、ですか? 随分と唐突ですね」

 「……!」

 言われてみれば、確かに多少、脈絡に欠けていたかもしれない。
 だけど多分、間違ったことは言っていないはずだ。
 ただ闇雲に平和を愛するだけで、自分から何一つ変えようとしなかったなら――――その先にあるのはどう転んでも衰退だ。


 「……ですが」

 「あなたの仰ることも分かります」

 「私の息子は常々、そういうことを唱えていました」

 「平和を貫徹するのみでは、本当に大切なものを守ることはできない、と」

 「……貴方は、息子と同じ事を仰るのですね」


 そういう彼女の目はどこか寂しげだった。


 「……」

 「……!」

 憂いげな表情が表に出ているのに気づき、彼女は取り繕うように笑顔を作った。

 「……ごめんなさい。あなたの考え方もきっと正しいんだと思います。私の息子が、結果的に私より正しかったように。

 それを間違っているとか、何が正しいとか、私が偉そうに言える立場ではありませんし」

 「ただ、それでも……」

 「私は、たとえ眠るように穏やかに、衰退と呼ばれる何かがやってきたとしても、

  それはそれで、素敵な世界なのではないかな、と思います」


 「ごめんなさい。変な話になっちゃいましたね」

 「さて、本題に入りましょうか」

 「あなたは、まだサーヴァントを携えていらっしゃらないようですが……」

 「誰か、あてはあるのですか?」

【選択】
1、ある
2、ない

↓1


 「いえ、まだ。聖杯探査、始めたばかりなんです」

 既に一カ所訪問しているが、まさかあれと契約することはないだろう。相手としてもこちらとしても、全く益のない丸損な契約になる。

 「……」

 するとランサーは、なにやら考え込むように顎に手を当てた。

 「……そうですか」

 

 「しかし、これから聖杯踏査を行うにあたって、道連れがいなければ何かと不便でしょう。

 ……よろしければ、私があなたのサーヴァントになって差し上げましょうか?」

 「どれだけ、お役に立てるかは分かりませんが……」



【返答】
1、お願いします
2、本当にいいんですか?
3、お断りします
4、もう少し待ってください
5、その他

↓1


 「……もう少し待ってください。まだ、決められない」

 安易に答を出して良いものではない、と思った。
 たとえ、サーヴァントを改めることそのものは可能だったとしても。最初のサーヴァントを決めるのが、そんな行き当たりばったりではいけないはずだ。

 半分、そんな答えが返ってくるのが分かっていたように。ランサーは安心したような表情になった。

 「そうです、か。そうですよね、まだ、来たばっかりだと仰っていましたし」

 「時間が許す限り、様々なものを見、学び、知ってから、結論を出すのでも遅くはありません」


 「……」

 「ですが、時間は有限です。ただ考え続けるだけ、とはいきません」

 「そのことはどうか、お忘れ無きよう」



【行動】
1、会話を続ける(内容併記)
2、この場を去る
3、その他

↓1


 ……ランサーの言うとおりだ。

 時間はまだあるが、時間は有限。限られた時間の中で、ぼくにできることをしなければならない。

 そうと分かれば、ずっと同じ場所に立ち止まっているというわけにも行かないだろう。

 ぼくは一礼し、その場を去る旨を告げた。
 ランサーは小さく頷くと、ぼくの近くにやってきて、手を握った。

 「さようなら、ホムンクルスさん。聖杯探し、頑張ってくださいね」

 「もし私が力になれることがあれば、いつでも、なんなりと、仰ってくださいね」


【判定】
↓1、↓2
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


 「あっはい。また、機会があれば」

 「……はい」

 そうしてぼくは、B5エリアを去った。

 きっと、もう一度訪れることにはなるだろう。



 ―――

 ――――――

 ――――――――

┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━┓
  ≪クラス≫:ランサー     【真名】:?                       【属性】:秩序・善     英霊
┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
  【筋】:E(10)      【耐】:D(20)      【敏】:D(20)     【魔】:B(40)    【運】:E(10)     【宝】:B(40)
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫

  【クラススキル】

  ◆対魔力:C
   第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


時間経過判定

【直後コンマ/2(切り上げ)時間を消費】

現在時刻
【一日目 AM7:00】

 もうここに来て7時間が経過した。

 もたもたしている暇はない。さあ、次の要塞を見に行こう。


【行動】
1、移動(移動先併記)
2、その他

↓1


 今は異界内を東へ、東へと移動している。ならば次も、東へ向かうべきだろう。

 ぼくはエリアB6――――鳥の鳴き声が聞こえてきそうな、のどかな田園へと足を伸ばした。


 そろそろ、サーヴァントを選ばないと。



 ――――――

 ――――――――――

 ―――――――――――――――


【B6 : 要塞内】


 要塞の扉を開け、また疑似心象世界へ侵入したぼくは、そこで驚くべき光景を目にすることになる。

 「……?」

 そこは、英霊の疑似心象世界とはとても思えない、ある種異彩を放った空間だった。

 目の前には鉄筋コンクリートのビル群と、アスファルトで固められた道路。

 駆け抜けていくフォルクスワーゲン。

 街灯の光はまばゆく七色に輝いている。


 この景色、この世界。

 一つ確信出来ることがある。

 この世界に住まう英霊は、相当新しい時代の英霊だ。



【今日はここまでです】
【お疲れ様でした】

【書き貯めようとしたら判定に衝突したので】
【この判定だけお願いします】

 ここは、過去の……20世紀頃のドイツだろうか?

 喧噪が響く。道路をすれ違う人々は皆それぞれの姿、服装をもって、別々の方向へと歩いて行く。

 これはあくまで偽物で、過去を真似ただけの幻想だ。

 しかし、本物の幻想だ。
 この要塞(ギャリソン)の主は、この光景を生前に必ず認識している。

 認識したその景色を、ここに、擬似的に投影しているのだ。
 だからそのかたちは偽物でも、目に映る情景は本物で、かつて地球に息づいていた人類の営みを鮮烈に、性格に映し出している。

 ぼくは、この景色を知らない。
 ぼくが生まれたこの時代には、とうに、人類は滅んでしまっていたから。


【判定】
↓1、↓2
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)

恐怖:6

【ありがとうございました】

【間が空いて申し訳ない】

【更新の前に】
【このキャラの内的精神力と外的精神力を改めて判定します】
【内的精神力=感情判定でそれ以下の数値が出た場合は精神的に動揺しない】
【外的精神力=感情判定でそれ以下の数値が出た場合はその感動が表に出ない】


【判定】
↓1、↓2で、より大きい方が外的精神力 小さい方が内的精神力


 【メンタル弱い】

 「……!」

 ぞわりとした。表情筋が怯えで僅かに動く。

 この感情を言葉にするとしたら、さしずめ、恐怖としか言い表せない。


 一見するとこの世界は、20世紀から21世紀にかけて見られたような、ごくありふれた市街地の景色のようにしか見えない。
 町中の文字を見るに、ここはドイツの再現だろうか。街路も、建物も、道行く人々も、なんら特異性を孕んでいない。

 しかしながら、先ほどからずっと、ぞわぞわするような震えがずっと身体の中を反響している。

 何が原因なのか、まるで誰かに見られているような?

 否、まるで誰かにじんわりと侵入されているような―――――。



 「っと、危ないです!」

 背後からの声。振り向く間もなく、後ろからやってきた何かに突き飛ばされ、ぼくは道路に転がった。

 「……!」

 慌てて立ち上がり、誰がぼくを突き飛ばしたのかと瞥見する。
 そこには大きな荷物を抱えた、緋色の目の少女の姿。

 「ご、ごめんなさい」

 彼女は熊のエンブレムが刺繍された、黄色のバンダナで頭を結んでいた。
 手に抱えているのは、大量のキャッサバが詰まった段ボール。
 近くを見れば、同じ模様がプリントされた、ココナッツミルクの屋台があった。

 「えっと……」


【行動】
1、無視する
2、何か話しかける(内容併記)
3、その他

↓2


 「こ、怖い。助けて」

 ぼくはそう言って、彼女の元へと近づいた。
 気味の悪い感触に苛まれ続け、少し気が緩んでいたのかもしれない。

 ともかく今は、何でもいいからより所が欲しかった。

 「……」

 取り乱したぼくを、彼女は怪訝そうな目で見つめていたが、ふと、くすくすと笑い出した。

 「ふふ、どうしたんですか。落ち着いてください」

 「私は、そこで屋台を出している者なんですけど」

 「どうですか? ぶつかって、驚かせちゃったみたいですし」

 「もし良ければ、一杯、こちらの奢りということで、いかがです?」


【選択】
1、断る
2、いただく
3、その他

↓1


 「……それじゃ、御言葉に甘えて」

 「うん」

 この中に潜むサーヴァントを見つけるのには、まだしばらく時間がかかるだろう。
 ならば休息を兼ねて、ゆっくりしていくのも悪くはない。

 なにより、この気持ちのさざ波を鎮めてからでないと、何を間違えるか分からないし。


 ―――

 ―――――

 ――――――――

 ――――――――

 ―――――

 ―――


 しばらく歩いて屋台に着くと、その近くの席で彼女を待つ。
 程なくして彼女は、プラスチックのカップになみなみと注がれたタピオカ・ミルクを運んできた。

 「私なりに拘って作った、自慢の逸品だよ」

 彼女はトレーからミルクをおろし、席に座って自分の前にそれを置いた。


 「……えっと?」

 自分の前に置いた。これはいったいどういうことだ。
 彼女は一つしかミルクを持ってきていない。
 いったい何をやっているのだろうと彼女の動作を見ていると、ミルクに突き刺さったストローの先っぽが彼女の唇に触れる。

 「……んちゅう」

 そして彼女は、ぼくのために持ってきたと思っていたタピオカミルクを、1人でつるつると飲み始めてしまった。

 「……えっと」
 「ん……ぷはぁ」

 ぼくがあっけにとられているうちに、彼女はその1/4ほどを飲んでしまうと、それからそれをテーブルに戻した。

 「はい、どうぞ」

 そしてその飲みかけのタピオカミルクを、彼女はそっとぼくに渡す。

 「毒味はしっかり。うん、おいしさの確認はばっちりだよ」

 ……どうやら彼女はぼくに、彼女の飲みかけのタピオカ・ミルクを飲むよう促しているらしい。

【行動】
1、飲む
2、飲まない
3、その他

↓2

【一端休憩】

【再開するかは未定ですが、一応先に】
【タピオカミルクに対する感情判定】
↓1、↓2
1無感動
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


【参考にしている感情の輪はこのようになっています】
【中身を見ると一応警戒も+感情】

← 程度が高い         程度が低い →

恍惚    喜び      安らぎ     愛
敬愛    信頼     容認      服従
恐怖    心配     不安      畏れ
驚愕    驚き      動揺      失望
悲嘆    悲しみ    感傷的    自責の念

憎悪    嫌悪感    倦怠     侮辱・軽蔑

激怒    怒り      苛立ち     好戦的・攻撃性
警戒    予測     関心      楽観


【一応参考までに】

【でも確かにマイナス感情(恐怖、驚愕、悲嘆、憎悪、激怒)に対し+感情(恍惚、敬愛、警戒)はバランスが悪いですね】
【以後は無感動を改め、+固定で再判定とします】

もしかして魔人学園とかの感情入力システムがモデル?

>>150 何それ知らない】


 ……ああ、何故ぼくはこんなことをしているのだろう。
 何故態々、人が飲んでいるものを飲み直さなければならないのか。

 「……どうしたの?」

 しかし目の前の彼女は、純真な目でぼくを見ている。
 きっと彼女には悪意などなくて、純粋なやさしさからそういう手段を選んだのだと分かる。
 その……唾が混じるような選択を。


 落ち着け、彼女にやましい気持ちは一切無い。怒るのはお門違いというものだ。
 ただ、飲むだけ。それだけのことに躊躇していて何になる。

 ぼくはカップを手に取ると、ぐいっと一気に飲み干した。

 「わあー!」

 彼女は楽しそうにぱちぱちと手を鳴らす。
 ぼくは空っぽになったカップをテーブルにそっとおいて、手で口元をぬぐう。

 「素敵だね、とっても素敵」

 にこにこと笑う彼女の表情が、あまりにも無垢に透き通っていたせいか、ぼくはつい、その理由を聞いてしまう。

 「素敵って、何が?」

 聞いておきながら、大方飲みっぷりのことだろうと予測していた。
 文脈を考えれば、それ以外にありえないことは分かる。

 しかし、彼女から帰ってきた答はまったく予想外のものだった。

 「うーん、そうだねえ」

 「私が飲んだものと、君が飲んだものが、同じ。
  これって、私の一部が君の中に入ったようなものだよね。
  そう考えると、とっても素敵な気持ちになれるんだ」

【判定】
↓1、↓2
1↓3、↓4で +感情再判定
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


※追記
再判定時
12 敬愛
34 警戒
56 恍惚
78 再判定
90 複合型


 「へ、へえ……」

 こんな詰まらないことで人を喜ばせることになるなんて。
 なんだかやるせないような悲しいような、良く分からない気持ちになった。

 ぼくのそんな表情の変化に気づいたのか、彼女は心底楽しそうにぼくを小突いた。

 「おっ? どうしたの? もしかして照れてる? このこのー」

 だが、ぼくの本当の気持ちは理解していないようだ。

 このやるせなさは、照れとは全く違う感情。
 そうとも知らずに笑顔を振りまく彼女の姿が、どことなく滑稽にも感じられた。


【行動】
1、会話を続ける(内容併記)
2、要塞内を探索する
3、要塞から出る

↓2


 「すみません」

 ここにずっと居ても不毛だ。時間は限られている。
 過去の記憶から生み出された幻想でしかない彼女に対して問を投げても、意味ある答えが返ってくるとは思えない。

 だが、聞いてみるだけなら損もしない。
 ぼくはダメ元で、彼女にこう、問いかけた。

 「この要塞の――――ここを受け持つサーヴァントが誰か、知りませんか?」

 「……」

 すると、くすくすと、彼女は笑う。
 まるで答えを知っているかのように。

 「サーヴァント?」

 「はい、サーヴァント」

 「サーヴァントかあ……そうだね。きっとその人は、あそこにいると思うよ」

 そう言って彼女が指さした先、街路を通り抜けて200mほど先の突き当たりには、屈強な門番が見張りをする重厚な石造りの二階建て――――
 表札でそこが何なのか分かった――――警察署が聳えていた。

 「君が臨む相手は、あの中にきっと隠れている」

 彼女は言う。声色を少し落としながら。

 「だから、行ってご覧。君が出会いを望むなら――――それはきっと、答えてくれるはずだから」

 そして立ち上がり、空っぽのカップとトレイを持って席を立った。

 「それじゃ私はそろそろ仕事に戻るね。お粗末様でした」


 歩いて行く彼女の姿をぼんやりと目で追いながら、ぼくはこの先のことを考える。
 さて、どうしようか。


【行動】
1、警察署に向かう
2、もう少し話を聞く(内容併記)
3、行かずに別の場所を探す
4、要塞を出る
5、その他

↓2

【今日はここまで、お疲れ様でした】


 警察署の前にきて、ふと考える。
 ここにいるとは言われたものの、さて、それがどんな英霊なのかは分からない。

 見ただけで判別出来るとも限らない。
 そもそも、警察署の中にいるのだとしたら、果たして出会うことができるのだろうか。


 「おい、なんだお前は」

 玄関前までやってきて佇んでいると、門番? 守衛? らしき2人の男性が、仁王立ちのままぼくをにらみつけてきた。

 「ここはガキの遊び場じゃねえぞ」

 「しっ、しっ、いった、いった」

 どうやら冷やかしか何かかと思われているらしい。


【判定】
↓1、↓2
1+感情確変
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


 まこと心外だ。
 ぼくの戦いは遊びじゃない。

 幻想の仕事に従事する幻の自我よりも、それは遥かに尊いものだ。
 ぼくが何のために戦っているか聞かせてやりたいところだが、生憎、奴らには言っても理解出来ないだろう。

 「……」

 「おい、何見てんだ小僧」

 肉体的には互角。
 魔術適正はぼくの方が上だが、素質として持っている魔術の能力を外に発露する手段は持ち合わせていない。

 できることならば、正面衝突は避けたいというのが本音だ、が……


【行動】
1、話しかける(内容併記)
2、その場を離れる
3、攻撃をしかける
4、その他

↓1


 ……まずは話だけでもしてみよう。
 それで駄目なら、そのとき考える。

 「ぼくは聖杯踏査のマスターだ。ここの主と会わせろ」

 さっきのタピオカ売りにも『サーヴァント』という言葉は通じた。
 ならこの警官たちにも、その言葉はちゃんと通じるはずだ。

 断られるか、承れるか。そう予想していたぼくは、しかし彼らから発せられた二の句に耳を疑った。

 「あ? マスター? 聖杯踏査? 何を言ってやがる?」

 「今、俺たちは忙しいんだ。ガキに付き合ってばかりいられるか」

 ぼくの言葉を聞いた警官は、がなり立てるだけでまったく相手にしようとしない。
 否、理解もしていないようだ。


【行動】
1、帰る
2、攻撃を加える
3、その他

↓1


 「……ぼくはただ中に入りたいだけだ」

 そう言ってぼくは歩みを進める。
 警察署は公共の施設なのだから、ぼくが入っても問題なかろう。

【判定】
警察官が怪しがるかどうか
5以上で成功


 「おい、待て」

 しかし、ひとかどの法律も守るつもりがないのか、その警官は中に入ろうとしたぼくを外へと突き飛ばした。

 「おまえ、なんだか怪しいな。ちょっとこっちに来い」


 まったく理不尽な話としかいいようがない。
 ぼくがいったい、何を怪しいことをしたと言うのだろう。


 「もしかしたら、あの事件に関して何か知ってるかもしれんからな」


 ……あの事件?

 もしかしてそれは、この要塞に住むサーヴァントに関係する事柄だろうか。



 尤も、それがなんだったとしても関係は無い。

 いっぱしの権利さえ守られないのなら、後は抵抗するしかないと決めている。

 ぼくは、掴まれた手をぐるりと回すと、そのまま警官に一撃を叩き込んだ。


【判定】
警官VS貴方 補正無し
1ほど警官有利
9ほど貴方有利


 相手は二人。それも訓練を受けた警官。

 だがぼくとて、それなりに強化を受けたホムンクルス。相手取るのに不足はない。

 ぼくの一撃を顔面に受けた警官は、怯まずぼくの腹に蹴りを打ち込んできた。

 「うぐっ……!」

 腹にめり込む鈍い衝撃。嗚咽が漏れる。近くの電柱に叩きつけられる。

 「てめええっ!」

 続いてもう一人の警官も参加してくる。ぼくはすぐに立ち上がり臨戦態勢。
 ホムンクルスの回復力は通常より優れている。持ち直したところで、近づいてきていた警官の、足を目がけてローキック。

 上手く刺さったようで、警官はよろめいてうつぶせに倒れた。
 間髪入れず一撃を食らわせようとすると、しかしもう一人に手を掴まれる。

 「このっ……」

 咄嗟に振り払い、二人から距離を取る。

 ……こいつら、できる。


【行動】
1、続行
2、撤退
3、その他

↓1


 ……だが、まだだ。

 ここで勝負を投げ捨てては、この痛みは無為になってしまう。

 この戦いを意味あるものに変えようと思うのなら、最後まで戦い抜かなければ。


 1度取った距離を少しずつ詰めて、再び戦いへと身を投げ出す。

 どうせ、ここから先も戦いだらけ。
 それが少し早まっただけだ。


【判定】
警官VS貴方 補正無し
1ほど警官有利
9ほど貴方有利

【↓2】
123 警官増量
456 状況に変化無し
789 ???


 ――

 ――――――

 ―――――――――――



 「おらっ!」

 「ぐふっ!」

 ――――戦いが長く続くにつれて、すこしずつ地力の差、否、経験の差が現れ出てきた。
 ましてや相手は二人。スタミナではこちらが有利と踏んでいたが、なんのことはない、あちらが一歩上手だった。

 「おいっ、どうした?」

 しかも騒ぎを聞きつけて、中から追加の警官までやってきた。

 はてさて、いったいこれはどうしたものやら……



【行動】
1、逃げる
2、戦闘続行
3、その他

↓1


 ……流石に、こうも不利な状況になってしまっては、ここの突破は不可能だろう。

 怪我の治りもだんだん遅くなっている。早く退かねばことになる。

 ぼくは苦渋の思いで、元来た道を駆け戻ろうとした。


【判定】
逃走判定
5以上で成功


 ―――

 ―――――

 ――――――――



 ぼくはほうほうのていでその場を離れ、そしてなんとか、要塞の入り口まで戻ってきた。

 今まで出会った二つのようさとは違い、今回の要塞は、サーヴァントがどこにいるか分からないという点において
 非常に過酷な環境だった。現に今でも見つけられていない。


 それに、随分時間を消耗した。
 なんと無駄な時間を過ごしてしまったのだろう。


【判定】
↓1、↓2
1+感情確変
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


 ……まあ、いい。ときにはそういうこともある。

 切り替えも大事、次に活かせばそれでいい。


 さて、それではこことはもうお別れか?


【行動】
1、探索再開
2、要塞を出る
3、その他

↓1



 現状、道筋はまったく立っていない。
 ここを歩き回っていても、碌な戦果は得られそうにない。

 ならば割り切って、次をあたる態度も必要だ。


 ぼくは要塞の割れ目から、その外側へと脱出した。

 時間をどれだけ、消費してしまったろう。


【判定】
時間消費
直後コンマと同数時間

【一日目 PM5:00】

 ……嘘だろう。
 要塞を出て異界に戻り、空に浮かぶ太陽が沈みかけているのを見て、ぼくは思わず嘆息した。

 もう一日目が終わろうとしている……とまでは言えないが、随分と長い時間が過ぎていることは疑いようもない。

 異界の日が落ちてしまえば、そこから先は危険地帯。
 敵意あるサーヴァントにいつ殺されても文句を言えない、魔境へと転がり込むことになる。


 急がないと。
 本当の意味で間に合わなくなるまで、あと、幾ばくの時もない。

【移動】
↓1で選択


 結局、何ら戦果を得られないまま、ぼくはエリアB6を後にした。

 行き先はエリアB5―――――今のまま、夜を迎えるわけにはいかないからだ。

 何はともかく、ぼくには果たさねばならない使命がある。

 そのためには、まずサーヴァントとの契約を結ばないと。


 ―――――

 ――――――――

 ―――――――――――

 ―――――――――――

 ――――――――

 ―――――

【エリアB5:要塞】


 薄暗さを増す異界とは打って変わって、エリアB5に聳える砂漠の要塞、その内部は、以前訪れた時と変わらず燦々と太陽が降り注いでいた。

 太陽の熱で焼け焦げた砂の臭いも漂ってむせる。

 目を覚ましたぼくはまた、自分が宮殿の回廊にいるのに気がついて、そこから顔をあげると、直ぐに彼女の姿が目にとまった。

 「あら、こんばんは。どうなさいましたか?」

 優しい微笑みを湛える彼女――――ランサーは、以前会ったときと変わらず、奥の玉座に腰掛けていた。


 しかしよく見ると、玉座の形は変貌している。

 以前は同じ大きさの玉座が二つ並べられていて、彼女は左側に座っていた。

 今、彼女が腰掛けるのは右側の席。そして左側の玉座に至っては、右側の半分ほどの大きさにまで縮んでいた。


 これが、心象風景の変化ということなのだろうか?


【行動】
1、話しかける(内容併記)
2、その他

↓2


 ぼくがやってきたのに気づいたランサーは玉座から降りると、淑やかな歩調でゆっくりとこちらにやってきた。

 「えっと、サーヴァント契約のお願いに……」

 「あらあら、他の方々は、駄目だったのですか?」

 無言で頷く。すると彼女の眉がひょろんと下がり、心から悲しそうな表情になった。

 「それはお気の毒様でした。どれほどの力になれるかは分かりませんが、私で良ければお手伝い致しましょう」

 さっとぼくの手を取り、上目遣いで彼女は言う。

 「貴方の旅路に、祝福がありますように」

 「……お願いします」

 他二回が、あんまりな結果に終わってしまったせいもあるだろうけど……
 こうも下手に出られると、なんだか申し訳ない気分になる。


 それにしても、穏やかで美しい女性だ。

 一挙一動に機敏さはない。むしろ少し遅いくらいだが、それが彼女の気品を引き立てている。

 彼女はゆったりとした衣装を身に纏っている。それは先ほど会ったときと変わらない。
 彼女が歩くと、それがひらひらと空を舞う雲のように揺れ動くのだ。



 「ああ、ただし……一つだけ、契約の前にご忠告を」

 「私では、貴方を聖杯のところまで連れていってあげることができません。それはきっと、間違いなく」

 「それは私の力量不足、のみならず、私の心の変えられないものがそうさせるのですが」

 「ですから、あなたはいずれ、私をどこかで切り捨てることになるかと思います。
  そのことを、一つご理解お願いします」


 ……そう言われても、どう答えればいいものか。


【返答】
↓1 11:40より


 「……それは困る」

 意図が分からない。
 切り捨て前提で契約を結ぶ? 彼女にも願いがあってここにいるだろうに、最初から聖杯(それ)を諦めるようなことを言うなんて……。

 「……」

 「貴女は、それでいいんですか? 切り捨てられるのは、悲しくないんですか?」

 そう聞くと、淡く微笑むランサー。僅かに傾げた首元が少し悲しそうだった。

 「私にも願いはあります。けれども、暴力という手段に訴えかけて、誰かを押しのけてまで――――

 私の私情を叶えようとは思いません。だって、私がこれから相対する方々にも、それぞれの願いがあるはずですから」


 「ああ、でも勿論、悪いことを企んでいる人は駄目ですよ? そういう人を相手にするときは、

  非暴力貫徹、とはできません。ですけど、最後まで悪巧みをしている人に出会い続けるとは思えませんし」

 「だから、もし戦っていく中で、信頼出来る英霊の方を見つけたならば、私はあなたのサーヴァントを辞して、

 その方に此度の聖杯の成就を任せたいと思っているのです。私の役目は、そこまでの橋渡しで、十分……」


 「だってそうすれば、皆、幸せですから……ね?」


【返答】
↓2

(´・ω・`)
【12:20まで何もなければ、無言で流したとして処理します】

【以後は30分0レスの場合、無言処理ということで】

「ぼくは貴女の願いを叶えたい。貴女はこんなぼくにも手を差しのばした。
 ぼくの願いを否定する事は貴女にできますか」

「あなたの願いを、私は知りません。それが、誰かを傷つける願いでないのなら……どんな願いでも、否定するつもりなんてありませんよ」


「……誰しも他人を否定する覚悟をもって戦いに臨んでいる。
 貴女は本当に自分の願いなど叶わなくて良いと思っているのか?」

 「願いが叶わなくてもいい、と思っているとは言っていませんよ。でも」

 「できるだけ多くの人が幸せになれる道を探したとき、まず諦めなくてはならないのは自分の願い……」

 「私は、平和が好きです。誰もが仲良くしている世界が好きです」

 「争いごとは、好きじゃありません」

 「だから、ただ願いを懸ける者同士、その奪い合いになるのなら。私は自ずから身を退きたい」

 「……ただ、それだけです」


 「そうですか」

 彼女はきっと、聖杯戦争に呼ばれるべき存在ではなかったのだろう。

 心から争いを嫌い、平穏を愛し、調和を重んじる。
 誰かの願いを叶えるためなら、自分の願いを犠牲にすることも厭わない。

 はたまた、自己犠牲、というか、なんというか……。


【判定】
↓1、↓2
1+感情確変
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)

【こいついつも恐れてるな】


 その精神性には恐ろしいものを感じずには居られない。
 命を賭けて戦うというのに、どうして無償の奉仕など、それも初めてあったばかりのような相手に。

 とても真似出来ない……からこそ、不安になる。
 彼女と本当に、寄り添っていくことができるのだろうか。

 「……どうしますか? もし、その処遇がご不満でしたら……」

 「ああ、いえ」

 しかし、四の五のは言っていられない。

 「ぼくは、力を借りる身。あまり強いことは言えませんが」

 ただ一つ、釘を刺してから。

 「切り捨てるかどうかはぼくが選びます」

 「それでよければ、契約をお願いします」

 その契約を遂行する。

 ぼくの答えを聞いてから、彼女はまた柔らかに笑む。
 春の暖風のような、柔和で暖かな笑顔だった。

 「はい、ふつつか者ですがよろしくお願いしますね。では、私の真名を」

 「……え?」

 「ご存じありませんでしたか? 聖杯踏査においては、サーヴァントの真名を唱えることで、正式な契約の代わりとするのです」

 知らなかった。
 サーバーはぼくに損な情報を与えていない……迂闊な。

 とにかく、真名が分からないと契約ができないらしい。

 ええと、ランサーの真名は……。


【真名】

↓2でランサーの真名

【一旦ここまで】


 エジプト。女帝。
 平和主義。

 これらのピースをつなぎ合わせて導かれる英霊は、恐らく一人しか存在しない。

 「エジプト王朝の女性ファラオ、ハトシェプスト」

 ぼくが真名を告げると、忽ちに周囲一帯に緋色の輝きが周回し、そしてぼくたちの間に収束した。

 「――――はい、その通りです」

 「これで契約は完了……ではしばしの間、おつきあい致しますね、マスター」

 ぎゅっ、と握りしめられる手。
 ランサーの手の暖かみが伝わってくる。

 柔らかいその手は、少なくとも戦士のそれではない。
 戦いを好まないというのも理解出来る。


 「……お願いします」

 「はい。世界の平和を、取り戻すために……そして、貴方の願いが叶いますように」

 「?」

 大切なもの、と言われても、何のことだか分からなかった。


 「あら、そういえば聞くのを忘れていましたね」

 「マスター、貴方は聖杯に、どんな願いを懸けているのですか?」

【解答】
1、まだ分からない
2、答える(内容併記)(ここまでの流れに合致していない場合、無視することあり)

↓1

【間違えたのん】


 エジプト。女帝。
 平和主義。

 これらのピースをつなぎ合わせて導かれる英霊は、恐らく一人しか存在しない。

 「エジプト王朝の女性ファラオ、ハトシェプスト」

 ぼくが真名を告げると、忽ちに周囲一帯に緋色の輝きが周回し、そしてぼくたちの間に収束した。

 「――――はい、その通りです」

 「これで契約は完了……ではしばしの間、おつきあい致しますね、マスター」

 ぎゅっ、と握りしめられる手。
 ランサーの手の暖かみが伝わってくる。

 柔らかいその手は、少なくとも戦士のそれではない。
 戦いを好まないというのも理解出来る。


 「……お願いします」

 「はい。世界の平和を、取り戻すために……そして、貴方が大切なものを、失わないように」

 「?」

 大切なもの、と言われても、何のことだか分からなかった。


 「あら、そういえば聞くのを忘れていましたね」

 「マスター、貴方は聖杯に、どんな願いを懸けているのですか?」

【解答】
1、まだ分からない
2、答える(内容併記)(ここまでの流れに合致していない場合、無視することあり)
↓1


 ぼくは、ほんの一日前に生まれたに過ぎない。
 勿論、ホムンクルスであるからにして、必要な知識は全部持っていたし、最初から物心もついていた。
 だけど、まだぼくは、『ホムンクルス』であることから抜け出していない。

 ぼくが『ホムンクルス』であることから抜け出して、ぼくという個人として成り立つには未だ時間が足りていない。

 「……まだ、決まっていません」

 「そうですか。聞いていた話が本当ならば、それも然りなのかもしれませんね」

 「なら、一緒に探しに行きましょう。幸い、この異界には色々な世界があるみたいですし、色々回ってみて、
 貴方が欲しいものを、見つけましょう?」

 「そのお手伝いができたら、私、とっても嬉しいです」

 そう、心底楽しそうに言うランサー。

 ……この人は、いったい……。

【判定】
↓1、↓2
1+感情確変
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)

激怒:0 無感情

 ……まあ、どうでもいいか。

 「それで、今から向かう当てなどありますか?」

 「ああ、いえ、それは……」

 特に考えてはいなかった。何しろ、まだ二つくらいしか回れていないのだから。
 ぼくのそんな心中を察したのか、

 「でしたら、もう暫く、そこかしこを回ってみましょう。まだ見ていないエリアにも、発見があるかもしれません。

 大丈夫です、サーヴァントを倒すことはできませんが、あなたをサーヴァントの魔手から守ることにつけては……

 こう見えても私、自信がありますよ!」


 「……」

 ランサーの言うとおりかもしれない。

 まだ、聖杯踏査を終わらせるのに必要な七騎分ですら把握していない。
 いざとなれば、七騎以上の候補を把握しておいても、損はないわけだし……。


【行動】
どうする?
1、ランサーとコミュ
2、移動
3、その他

↓2

【移動先】
エリアを指定

↓1


 ランサーの提案に従い、ぼくたちは新しいエリアを開拓することに決めた。
 行き先はエリアC6。密な深緑の森をかき分けた先に、そのエリアの要塞はある。

 「そういえば、ランサー。他のエリアのこと、何か知っていたりする?」

 ランサーは頭を振る。

 「いえ、私は知らないです。サーヴァントは原則として、自分が住むエリアの要塞から出られないようになっているので……」

 「そうなんだ」

 「すみません、何か助言出来れば良かったのですが」

 「いや、いいよ」

 女帝だと言うのに、彼女の腰の低さはいったい何なのだろう。
 特にそんな逸話も聞いたことがないから、彼女の生来の性格なのだろうか。


 「と、とにかく行きましょうか! まあ、いきなり攻撃を仕掛けられることもないとは思いますし……

 も、もし戦闘になったら……運動はあまり得意じゃ無いけど、頑張っちゃいますよ!」

 運動、あまり得意じゃ無いのか……。




【今日はここまで】
【お疲れ様でした】

時間経過
↓1 コンマ+1/2(切り上げ)

【性格がやんわりと固まりつつあるので、次の感情判定を最後とします】

【一日目・PM20:00】

 エリアC6。

 地平線の先まで遮るもののない草原には、冷えた勁風が吹いている。

 紅輪が落ち、文明もないこの異界では、僅かな星明かりのみが闇夜の頼り。
 それだけに、視界遮るもののないこのエリアは、夜初めて訪れる場所としては悪くない。

 もしこれが、エリアB4のような崖地だったらと考えると、ぞっとする。


 「あら、見えてきましたよ、マスター」


 手に持つ杖? 棒? を、ゆっくりと正面に擡げて、ランサーが指し示すその先。
 暗闇に目を凝らすと、ぼんやりと姿が浮かんでくるドーム型の鉄の塊。

 もはや見慣れたその建造物は、間違いなくこのエリアの要塞(ギャリソン)だった。

 「それでは、いざ、参りましょうか」

 ランサーの表情も殆ど見えない。今後は何か用意が必要かもしれないな。

 「ああ」

 立ち位置だけがかろうじて分かるランサーの影に返事をして、ぼくは要塞への一歩を踏み出した。
 ランサーも一歩後ろから、ぼくのあとをついてくる。


 ――――早ければ、これが一戦目になるのかもしれない。


 【要塞:エリアC6内】

 要塞の中に広がっていたのは、先の見えない広大な森林。
 外の景色とは一変して燦々と輝く太陽と、瑞々しく輝く草木の艶が、ぼくらを苛むように照らし出す。

 耳を澄ませば川のせせらぎも聞こえてくる。
 僅かに勾配も感じられて、そこが山から平野(もしくは盆地)へと下る丘陵であると理解出来た。

 「私が暮らしていた地域とは違う形ですね」

 ランサーが呟いた。

 「素敵です。調和の中に息づく命が、キラキラと輝いて見える」

 「でも、これではどこに行けばいいのか分かりませんね」


 確かにその通りだ。
 四方を見渡しても、あるのは代わり映えのしない森ばかり。

 この森の中に英霊がいるならば、森の中でも際だって特徴的な場所にいるに違いないが、この有様では行き着きようもない。
 何しろどこも同じにしか見えないのだから。広さも分からないし、森の外がどうなっているのかも分からない。
 或いは、全て森なのかも知れない。

 「近くに川もあるようですし、其方の方を目指してもう少し歩きましょうか?」

 せせらぎの音を辿れば、川がどこにあるのかは容易に分かる。
 それも一つの案だろう。

 「或いは、しばらくここで待って現れるのを待つ……というのも、いいかもしれませんけど」



【行動】
1、川を目指して歩く
2、待つ
3、その他

↓1


 ぼくらは川を目指して歩き始めた。
 勾配を沿って並ぶ森の足場は不安定だけれど、歩けないほどではない。

 自然の要害と言うほどではなく、かといって管理された林でもない。
 かつて人が自然と調和していた頃の森は、さしずめこんな姿だったのだろうな、と思う。

 「……あっ、やだっ」

 「もう、どうしましょう」

 気の抜けた声に背後を振り向くと、ランサーが木の枝に服を引っかけて藻掻いていた。

 「あっ、マスター、ちょっと待ってください」

 目が合うと、ばつが悪そうにはにかむランサー。

 「何やっているの……ランサー……貴女、サーヴァントだよね?」

 しゃがみ込み、もちゃもちゃと服から枝を取り外しているランサーを見て、ぼくは思わず嘆息する。
 生まれが王族なら、生前戦い慣れしていないのは仕方ないが、それにしても、もう少しなんとかならなかったのだろうか。

 「えっと、すみません。面目ないです」

 やっと枝先から衣装を外し、姿勢を正したランサーは、照れくさそうに笑っていた。

 「わざわざ外さなくても、ちぎってしまえばいいのに」

 「そう、ですね。そうなんですが……なんだか、勿体なくて」

 「勿体ない?」

 「ああいえ、大したことじゃありません。お気になさらないでください。さ、先に進みましょう」

 「ああ、うん……?」

 何が勿体ないのか。良く分からなかった。


 ――――

 ―――――――

 ――――――――――

 しばらくすると、岩木の間を流れている、小さな清流に辿り着いた。

 「あら、素敵」

 水面は熟れた陽光を浴びて宝石のように輝いている。川の周りは少し開けていて、時たま僅かに風が吹く。
 そのたびにさざ波がそわそわと動く様子は、どこか安らかで穏やかだ。

 ランサーが素敵だと思ったのも理解出来る。

 「でも、ランサー。ランサーがいた時代にも、こんな川はあったんじゃないの」

 「私の生きていた時代では、川と言えばナイルの大河でした。あの雄大な江流も、確かに美しくはありました。
 ですがそれは暴力的な美しさ。全てを破壊し飲み込むときに最も輝き、去った後に恵みを与える嵐の激流。
 ナイルなくしては、エジプト王朝は存続できないとはいえ……
 私は、あの川をあまり好きにはなれませんでした」

 「素晴らしい恵みは、闘争と衝突、破壊と暴力の先にしかないと黙示されているような気分になって……」

 「そういう意味で、この渓流は本当に素敵です。誰を邪魔するわけでもなく、自然に恵みを与えている」

 ランサーが返した手を上流に向けた。その方角を見つめると、一対の鳥が川水を啄んでいた。

 「この川は穏やかに流れています。もし今私が、この川に石を突き立てても、この川はそれを拒まない。
  流れは石を押し流すことなく、新たな住人としてその石を胎内に受け入れるでしょう」

 「聖杯踏査……そこに戦いが避けられないのは残念ながら必定ですが、しかし折角『戦争』の看板を外したのですから……

 戦わずに開ける道があるならば、私はこの川のようにそちらへ流れていきたい」

 「マスター、貴方はどのようにお考えですか?」

【返答】
1、聖杯踏査は戦いが不可欠だ
2、聖杯踏査には、戦わない道もありうる
3、その他

↓1


 「ランサーがそれを望むなら、当然、戦わない道もあると思う。
 だけどその道は過酷で険しい。軽い気持ちで目指したなら、きっと苦難にあえぐことになる」

 「それでも、それが誰かの幸せに繋がるのなら、私は喜んで苦難に身を投じましょう」

 「……そう」

 「ええ。……あっ、でも、私が難儀な目に遭うということは、必然、マスターもそんな目に……それはいけませんね。
 ……どうしたらいいのでしょう」

 「いや、知らないよ……」

 それらも全て折り込んでの答えではなかったのか。

 「仮初めとはいえマスターとサーヴァントの契約を行ったのですから、マスターの力になって差し上げたいのですが……
  しかし、だからといって、信ずべき道は……難しいですね。
  マスター、もし私がいることでマスターに迷惑がかかるなら、そのときはいつでも私を切り捨てて……」

 「それは前に聞いた。答えも前に言った」

 「……そうでした。ああ、どうしましょう……」

 ランサーは頭を抱え始めた。
 目の前に何も問題が無いのに、未来への展望に悩んでいる。
 ハトシェプストは病で死んだというが、気からの部分も少なからずあったのだろうな、と思った。


【返答】
1、無言
2、もっと苦しめ! 悩め!
3、今はそんなことを考えなくてもいいんじゃない?
4、いいから次に行くぞ
5、その他

↓1


 「……今はそんなこと考えなくていいんじゃない?」

 ランサーが考えていること、その意味は分かる。
 伝承によれば、穏健を愛した彼女は闘争を好む息子と対立し、彼女が最も嫌った闘争の中、
 彼女自身が命を失っているのだ。

 いわば、彼女は生前と死後の両方に闘争を嫌う理由があり、そしてその心に従えば、
 戦うことを極端に割けようとするのもまったくおかしな話ではない。

 だが、だからこそ、それに囚われて全てを見失ってしまっては意味がない。
 目の前に広がっているこの景色こそ、彼女が愛した平和と調和そのものなのだから。

 「周りにはまだ、戦いなんて一つも存在しないんだから」

 「……そうですね、ごめんなさい。ちょっと、センチになっちゃってたかもしれません」

 「穏やかな気候、豊かな自然の恵み、こんな素敵な世界の中にいるのに、それに目を向けないなんて勿体ないですからね」

 「ああ、今が踏査中でなくて、ここが実在する地域なら、この地の名産をいただくのに。
 それを許さない踏査という環境が悲しいです」

 「名産?」

 「人間、最大欲求に包まれているときは、少なくとも幸せでいられるものですよ。柔らかいベッドで横になっているときも、
 そして美味しいご飯を食べているときも」

 「……ああ」

 「あなたの事情はよく存じませんが、もしその楽しみを知らないのなら――――外の世界が、人間の世界が蘇ったときは、
 そういうことを楽しんでみるのも、素敵だと思いますよ」

 食事、か。そういえばこの世界には、そんなものは存在しなかった。
 疑似心象世界のギミックの一つとしては存在するが、食事という行為には何の意味もない。

 ……ん? そういえばハトシェプストと言えば、確か肥満で亡くなったとか……。

 「どうしました?」

 きょとんとして首をかしげるランサー。
 目の前の彼女は美しい容貌をしている。
 しかし、この姿は全盛期の姿だ。ということは、或いは、いや、しかし――――。


 「ああ、もしかして……」

 何かを思い立ったように、ずいっとぼくの目の前に迫るランサー。

 「うわっ」

 「早くしろ、との催促でしょうか。ごめんなさい、私としたことがもたもたとしてしまって」

 「……!」

 近い。
 顔が、近い。


【ファイナル感情判定】
↓1、↓2
1自由選択
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


 迫ってきた彼女の顔面をまじまじと眺める。

 艶々とした肌は美しく、桃色の髪も太陽の光を浴びて生き生きと揺れている。
 翡翠色をした瞳、長い睫、すっと通った鼻筋。

 絶世の美女、とまではいかないものの、彼女の容貌が一般より優れているであろうことは間違いない。

 しかし後世の資料によると、彼女は太り気味で、
 腰骨まで侵食した悪性腫瘍、歯周炎、関節炎、骨粗鬆症、糖尿病等を患っていたという。

 多くを他人に配慮しようとする彼女にとって、唯一気兼ねなく楽しめたことが、食べることだったのではないだろうか。
 もしそうだとしたら、きっと上手くいかない政治の中で、彼女が食で苦しみを紛らわす量も増えていって……資料の有様になった、という仮説も立てられる。
 しかも信憑性はかなり高い。

 そう考えたとき、ぼくはどうじてか、耐えようもない寒気に襲われていた。

 「……どうしました?」

 その表情の変化を感じ取ったのか、ランサーが優しい声で尋ねてくる。

 彼女の今の容貌は世界の財産だ。あの奇っ怪なライダーほどではないが、彼女の美しさもやはり守られるべきもの。
 それが失われるなんて、そんな恐ろしいこと、あっていいはずがない。
 そう思ったとき、ぼくの口からは自然とその言葉が飛び出していたのだ。


 「……駄目だ」

 「はい?」

 「食事でストレスを解消するのは、絶対に駄目だ」

 「……え?」




【『面食い』属性を獲得しました】

【今日はここまで】
【お疲れ様でした】

恍惚

失礼
検索バーと書き込み欄を間違えました

感情判定整理

エリアB4の異様な風景に:敬愛1(無感動)
ライダーにあしらわれて:激怒7
ライダーの肉体美に魅せられて:恍惚、恐怖、恐怖
ランサーとの別れの際、暖かい言葉を貰って:無感動
エリアB6の景色を見て:恐怖6
エリアB6で出会った女性との間接キスで:悲嘆7
エリアB6で出会った女性の発言に対し:悲嘆5
エリアB6で守衛に追い払われて:憎悪4
エリアB6で何の成果も得られなくて:恐怖1(無感動)
ランサーの自己犠牲的な提案を聞いて:恐怖5
献身的なランサーの態度に対して:激怒0(無感動)
ランサーに顔を近づけられた時:悲嘆6


内訳
無感動:4回
敬愛:0回
恐怖:5回
驚愕:0回
悲嘆:3回
憎悪:1回
激怒:1回
警戒:0回
恍惚:1回


主人公は、
あまり人に気を許しておらず、
常に不安に苛まれているが、
動揺して行動を変えるようなことはなく、
多く悲しみに暮れていて、
時には怒りや憎しみに心を奪われることもある。


碌な人間じゃない(確信)

追記:『面食い(男女問わず)』です

【むしろ感情判定は最後まで続けた方がいい気もしてきた】
【どうせまとまらないし……】
【なので暫定でもう少し続行】



 とにかく。

 事実、この場に留まり続けても仕方が無い。

 「先を急ごう、上に行くなり、下るなり……」

 延々と続く森の中、一筋だけ流れる川があるとしたら、それはこの空間を支配するサーヴァントへの手がかりに違いない。
 何か異端があったならば、それには必ず意味がある。疑似心象世界の鉄則だ。

 「ええ、そうですね。何時までもここにいたとして、何か進歩があるでもありませんし。
 それで、どちらへ……」

 と、言いかけたランサーだったが、そこで言葉が止められる。
 その視線は水面へ、上流へと川をなぞるように移動していく。

 「どうしたの、ランサ……」

 その表情が妙にぎこちなく固まっているのに驚いたので、何事かと確かめようとしたぼくだったが、
 問いかけの必要が無いことは直ぐに分かった。

 視線の先を辿っていくと、秩序と平穏で満たされていた景色が刺激的な赤で一挙乱されるのが分かる。

 赤い赤い血が川縁に沿ってゆっくりと、しかし大量に流れているのが分かった。

 「……!」

 当然、血の出所は上流だ。
 何かが上にあるのは間違いない……。


【行動】
1、上流へ向かう
2、下流へ向かう
3、血を調べる
4、その他

↓1


 ぼくはまず川に駆け寄り、上流から流れてくる鮮やかな血を確かめる。

 「……」

 特に分かることはないようだ。
 強いて言うなら、紛れもなく血であるということくらいだろうか。
 専門家なら血の成分からどんな血なのか判別出来るのかもしれないが、生憎そんな技術は無い。

【行動】
1、上流へ向かう
2、下流へ向かう
3、その他

↓1


 「ランサー……」

 ぼくがちらりと見ると、彼女は僅かに頷いた。

 「行きましょう。何かは分からないが、何かがこの上に待っているのは間違いない」

 「ああ、でも、血なんて不吉な予感がします。忌み嫌う闘争の気配が……ああ、いやだ」


 川に沿って続く道は、木々に阻まれる周囲と違い、多少は進みやすくなっているようだった。
 何、特に恐れる必要はないはず。
 今までと違い、今度はサーヴァントとしてランサーがいる。

 何が待っていたとしても、前のように、安易に殺されたりはしないだろう。



───────────────────────────────────────────

                            ●

                            ●

                            ●

───────────────────────────────────────────


 十分ほど歩いたところで、血の出所に辿り着いた。

 「えーと、これは……」


 川縁に横たわる小動物の死骸。
 傷口からだらだらと血が流れ続けている。

 死んでから間もないのかどうかは良く分からないが、それにしても血が流れすぎだ。
 とても、全長70cmほどの身体から流れ出る血の量とは思えない。

 それにしても、このイタチのようなラッコのような……

 「カワウソですね」

 背後からランサーが言う。

 「カワウソ?」

 「可哀想に、こんなになって」

 ランサーはそっと優しく持ち上げて、カワウソの身体を川縁から草の上へと移動させた。
 カワウソはのど笛を細長い何かで貫かれて絶命していた。

 「これもきっと、疑似心象世界の一部でしょうね。これだけ血が絶え間なく流れているということは、
  この世界に作られた擬似的な自然の一部ではなく、この世界を定義づけるギミックの一つ、なのでしょうから」

 「きっとこの近くに何かあるに違いありませ……ほら」

 ランサーがゆっくりと指を指す。太陽とは逆の方角、雲の無い空に向かって。
 しかしその空には雲が無いのに、青空の殆どが目視出来ない。それは何故か。森の中からもくもくと沸き立つ煙が広がって、
 空を遮蔽していたからだ。

 そして煙の発端に目を向けると、木々の隙間から煙突らしき構造物が垣間見える。

 「どうやら、あそこに何かあるようですね。行ってみましょう」


 煙があがる小屋には直ぐに辿り着いた。

 木々をかき分けた向こう側、古びた小さな石造り。


 人の気配はあまり感じない。
 正確には、喧噪と言えるようなものは感じなかった。

 「何の気配もしませんね……」

 ランサーも何も感じていないようだ。
 どうやらここには何もないらしい。
 サーヴァントがいないとしたら、何のためにある小屋なのだろう。それについては分からないが。

 「……どうしようかな」

【行動】
1、中を調べる
2、他の場所へ行く
3、(要塞の外へ)帰る

↓1


 「……まあ、でも。何かあるかもしれないし、一応見てみようか」

 「ですね」

 この場所以外に、何か手がかりがあるわけでもない。
 ならば、ここを探して少しでもヒントを手に入れないと。

 ぼくはさび付いたドアの取っ手に手を掛け、後ろへと引いた。


 ――――瞬間。

 『何か』がぼく目がけて飛び出してきた。


【判定】
主人公の負傷判定
大きいほど軽微
7以上ならば無傷

【特殊判定】
123 即死
456 攻撃されるかと思ったらそんなことは無かった
789 ランサーのカウンターパンチ


 「――――ん」

 現れた、ぶっきらぼうな顔の大男は、ぼくを見て、それから背後のランサーを見て……

 「……チッ」

 露骨に嫌そうなな顔をした。
 なんだ、この人……?

 「マスター、下がってください」

 後ろに引かれる感覚。ランサーがぼくの服を掴み、大男から引き離したのだ。

 「私としたことが、迂闊でした。気配遮断を持つサーヴァント……アサシンの存在を忘れているとは」

 ……え?

 つまり、目の前に居る大男はサーヴァントで……。

 「……」

 アサシン。暗殺者のサーヴァント。
 至極不機嫌そうな表情をしたその男は、仁王立ちの体勢で扉の前に立っていた。


 「なんじゃい、ついてない」

 吐き捨てるようにそう行って、アサシンは小屋にもたれかかった。

 「まさか既にサーヴァント契約を終わらせていたとはのう、儂の入り込む隙がないではないか」

 ランサーは黙って彼を見つめている。

 ものぐさげにぽりぽりと頭をかくその男からは、英霊然としたものをあまり感じない。
 だがその男が英霊なのは、今の発言を聞く限り間違いないだろう。

 しかし暗殺者とは、外の景色に見合わないクラスに属しているものだ。
 権謀術数飛び交う都市の中でもないのに、暗殺者とは一体どういうことだろう。
 狩人か何か、なのだろうか。

 「……んで、何をしにきた」

 気怠げに問うアサシンの目は虚ろで、彼の感情が立ち所に伝わってくるようだ。
 落胆は分かる。しかしあまり発揮されて嬉しいものではない。

 しかしランサーは微笑んだまま、ずいっとぼくの前に出てアサシンと向かい合う。

 「宜しければ、少しお話をしませんか?」

 「言葉を交わせば、分かるものもあるかと思いますので」

 どうやら、ランサーは対話を望んでいるらしい。

【行動】
ランサーの行動を
1、止める
2、止めない

↓1


 ―――

 ―――――

 ――――――――

 そのままの流れで。
 ぼくとランサーは、アサシンの小屋に招かれて。

 彼と対面で、話をすることになった。

 「それで……」

 ランサーの勢いに押されて、つい上げてしまった……アサシンの表情は、そんなやるせなさとふてくされを感じさせる歪み方だった。

 「……それで? 話すこととはなんじゃ?」

 投げ槍に語尾を強めながら、まるで話す気がないように、アサシンが吐き捨てた。

 「暗殺者がよりによって槍兵と、真っ向勝負で勝てるわけがなかろうて。
 もう儂の聖杯踏査は終わっているも同然なんじゃ。まさかサーヴァント権を譲るというわけでも……」

 「お譲りしましょうか?」

 「は?」

 ―――――はい?

 アサシン、はもちろんのこと、ぼくの方もランサーの、唐突の発言に驚いた。

 「勿論、貴方のことをよく知ってからですが……」

 「もし私より、彼のマスターとしてふさわしい戦いができるようならば、私は貴方に、託すのも吝かではないと思っています」


【感情判定】
↓1、↓2
1自由選択
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


【どうした主人公】

 彼女は、理解しているのだろうか。いや、当然理解しているのだろう。

 ぼくに対して、ただ冗談めいて言うだけの言葉より、この場での言葉はずっと重いということを。

 安易に嘘を話してよい場ではないことを。

 英霊同士の、ましてや女王の言葉ともなれば、そこに嘘偽りは許されない。
 ましてや彼女のように清廉潔白で通る王ならば、ここで偽りを語ることは自らの価値を貶めることにも繋がりうる。

 故にその重みは絶対であり、彼女は『譲ることもありえる』と、本心から言っているのだ。


 半ば軽口だと思っていたばかりに、彼女のその言葉は、ぼくの胸に突き刺さった。

 アサシンの方も驚きを隠せていないようで、目をまん丸にしてぽかんと口を開けている。

 「ほ、本当か……?」

 「ええ、勿論条件次第ですが……」

 テーブルの下で、アサシンの足が浮き足立っているのが見えた。
 間違いなくテンションが上がっている。
 いくら何でも感情が表に出すぎじゃなかろうか。


【感情判定】
↓1、↓2
1自由選択
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


 仮にも英霊なら、もう少し感情を隠すことができないのか、と。
 呆れというか軽蔑というか……。

 何故態々ランサーを手放してまで、こんなアサシンと共に戦わねばならないのか。
 ぼくとしては、ランサーの提案は受け入れられない。

 まあしかし、ランサーの真意がどこにあるかは今だ定かじゃない。

 ひとまずは話を聞いてみないことには……。



 「それで、何が条件かと言うことですが、まず幾つか質問をさせていただきますね」

 「一つ目。どうして貴方は聖杯を求めるのですか?」


 ぼくが色々と思惑を巡らせている横では、ランサーとアサシンによる面接じみた交渉が開始していた。

 「そっ、それは……」

 目が泳ぎ、ぐるぐると回転するアサシン。
 明らかに、適切な答えを練っている。どう見ても嘘をつく気にしか見えない。


 しばらく経って、はっと思いついたように手を打ったあと、アサシンは不自然な笑顔でこう言った。

 「世界平和じゃ!」

 ……絶対に嘘だ。


 「なるほど、世界平和ですか」

 ランサーはと言えば、そんなアサシンの言葉を信じているのかいないのか……。

 「素敵です! 平和……誰もが争うことのない世界。
 歪みを抱えているかもしれませんが、私は、とっても素敵な世界だと思います」

 いやこれ絶対に信じてる。
 ちょっと待ってランサー。嘘を嘘と見抜ける人でないと(面接をやるのは)難しいぞ!?

 「そ、そうか! そうじゃろ! 平和、いいよな、平和!」

 アサシン自身、少し白々しいと思っていたのだろうか、飛びついてきたランサーに驚きつつも、これ幸いと乗っかっていった。

 「はい。この聖杯踏査も争いを介したものですが、争うということは、誰かの願いが誰かの願いを犠牲としてなり立つということ。
 当然、リソースというものには限りがありますから、万民の願いを叶えることなどできません。ですが……」

 目の前に流れている薄ら寒い光景に、水を差したくて仕方が無い。
 嘘をつけないアサシンと、嘘を見破れないランサー。

 「その中でも一人一人が譲り合うことで、本当に大切なものを失わないまま、誰もが願いを叶える、というような……
  そんな素敵な世界も、きっと作れると思います」

 「そうじゃな! 譲り合い、大事じゃな!」

 「誰かを傷つけて得るものより、誰かと分け合って生まれるものの方が、ずっと素晴らしいと思いますよね?」

 「そうじゃな!」

 ……なんだこれは。いつまで見ていればいいのだ。


 ……。

 「そういえば、外にカワウソが死んでいたのですが、あれは何かご存じです?」

 「カワウソ? は、はー? さて? さっぱり分からんなあ。この辺は獣が多いから、良く何でも死んでおるし」

 「そうですか……ありがとうございます。可哀想なこともあるものですね」

 「ああ……だが、それが自然の厳しさじゃからのう」

 「……そう、ですね……自然の厳しさは、私達にはどうすることもできないことですから……」

 「そうじゃのう……」

 「だからこそ、人と人までもが争い合っていては、悲しみはいつまでも絶えません」

 「そうじゃなあ。だからこそ、儂ら一人一人が意識を変えていく必要があるということじゃな!」

 「そうですね! 私たち一人一人が行動するだけでは何も変えられないかもしれませんが……
 でも、意識を変えることで、その心が誰かに波及して、少しずつでも世界中の人々の意識が変わっていったら……
 誰も争うことのない世界も、夢ではないと思います!」

 「じゃな!」


 ……お花畑が入った主張に、薄っぺらい相づち。

 場末のシンポジウム見てる気分だ。


【行動】
1、会話に割って入る
2、放置
3、その他

↓1

選択:1 会話に割って入る

と、いうところで今日はここまでにします。

お疲れ様でした。


 「……ちょっと待って」

 ぼくが口を開くと、盛り上がっているのかいないのか良く分からない二人はてんでのタイミングでこちらを振り向いた。

 「どうしましたか? マスター」

 ランサーが髪をかき上げながら問う。

 「どうした、というか……」

【会話】
1、そいつは嘘をついている
2、そいつは好きになれない
3、自由(内容併記)
4、それ以上言わない

↓1


 「……ぼくは、そいつのことを好きになれない」
 「そいつが新しいサーヴァントになるよりも、ぼくは、ランサーと共に戦っていたい」

 本心を述べたつもりだ。
 この男の落ち着きの無い態度は、どうにも癪に障る、というか信用出来ない何かを感じさせる。
 憐憫でもこれと共に戦うのは御免だ。

 「……まあ」

 ランサーはぼくの言葉に驚いたのか、口をぽっかりと開けて固まっている。
 心なしか、顔が赤いような。気のせいか。

 「……」

 対して。
 その背後、というかテーブルを挟んで逆側には、鬼神の如き怒りを露わにしたアサシン――――――





 ではなく。
 不自然なほどの苦笑いを浮かべたアサシンが、ばつが悪そうに頭をかいていた。

 「ん~……む。まさかそこまで拒絶されるとは、思うておらんかったのう」
 「そうか、それは残念じゃ」

 そして大げさに肩を落とす。
 しかし、気落ちしているのは本当のようだ。


【【感情判定】
↓1、↓2
1自由選択
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)】


1:驚愕 →興味なし

 まあ、どうでもいいや。

 しかし、ぼくにとってはどうでもいいアサシンの様子も、ランサーの目には憐れむべき存在にでも映ったのだろうか。

 「……そんなに気落ちしないでください。マスター、その、こういう言い方をするのはなんですが」

 恐らく滅多に向かないであろうランサーの矛先が、ぼくに向いてきた。

 「私達とこの人とは、まだ出会ったばかりで、お互いのことも良く分かっていないはずです。
  こんな早くに、気に入らない、などと、評価を固めてしまっては、
  視野が狭くなってしまいますよ?」

 凄くマイルド。
 誰も傷つけないように言葉を選んで、そうやって磨かれたランサーの言葉。

 誰とも争うことを好まないからこそ、誰をも傷つけないよう、丹念に考えて喋っているのだろう。



【感情判定】
↓1、↓2
1自由選択
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)

2:驚愕 → 興味なし

 まあ、好きにすればいいさ。

 とはいえ、人と人との好き嫌いというのは直感で片付くもので、
 第一印象から生理的に無理、ということは往々にして起こりうる。

 今回の場合だってそうかもしれない。
 このアサシンの先ほどからの行動に、ぼくが慣れるとは(少なくとも現段階では)思えない。
 そもそもどうして、現時点で好まないアサシンと態々親交を深めなければならない?


 「……ともかく、ぼくは敢えて貴女との契約を取り消して、そいつと契約する気なんてありませんからね」

 「ああ、あの、そんな……」

 ランサーが悲しそうな顔になったので、少し、罪悪感を覚えたが、知ったことじゃない。

 「ま、まあそんなこと言わずにのう」

 そして、アサシンはと言うとまだ卑屈に笑んでいる。

 「そ、そうじゃ。それならこうしたらいかがか。儂は鍛冶、何かお前たちに手伝いができるかもしれん。

 お前たちの戦いに、儂の打った武器を授けてやろう。ランサーと戦う助けにするといい」

 「……」

 譲歩、というところなのだろうか。
 このままではただ倒されるだけとみて、妥協点を探りに来た?
 或いは純粋な厚意か。

 「それで順当に勝ち残れたら、最後に儂を倒しに来る分には別に構わん。

  だが、もしランサーのみを破られて、その後、お前が生き残り逃げ延びたならば……

 その時は儂と契約を結ぼう。どうじゃ? お互いに悪くない提案だとは思わんか?」


【返答】
1、そうだな
2、いいや
3、だが断る
4、自由(内容併記)
5、無言

↓1


 「そうだな、その武器何日ぐらい持っていれば手になじむ様になるかな」

 ぼくが尋ねると、アサシンの表情が少し歪んだ。

 「持っているだけで武器が答えてくれるものか。当然、使ってこそ輝くものよ。
 使い続ければ、という意味ならば……そうじゃな、三日も振っていればいっぱしの使い手になれるだろうのう」

 アサシンはそう言い、壁を指さす。見ると、大小様々な剣がそこには立てかけられていた。

 「好きなのを持っていって構わん。先ほどの話を請け負ってくれるならな」


 「マスター、悪い話ではありませんよ。たとえ、私が最後までお供できなかったとしても、
 新たなる活路が開けるということなのですから」

 ランサーはと言えばまたにこにこ笑っている。
 きっと彼女の目には、アサシンの行為が純然な善意で成り立っているように映っているのだろうな。

【行動】
1、承る
2、だが断る
3、自由(併記)
4、無言

↓1


 「……分かった、お願い」
 「おう、そうか!」
 「良かったです。仲良くするのが一番ですからね」
 「……」

 とりあえず話は合わせておこう。そうでないと嫌な顔をされる。
 実際、こう答えてしまえば先ほどまでの空気はどこへやら、アサシンは露骨に安堵しているし、
 ランサーもほんのり楽しげだ。

 「それじゃあ、適当に見繕って持っていってくれ」

 アサシンが示す壁掛けには、槍、斧、剣、鉈がかかっている。
 どうせ使うつもりはないのだが、まさか持っていかないというわけにもいかない。


 さて、どれにしよう。

【選択】
1、槍
2、斧
3、剣
4、鉈
5、その他


↓1


 どうせ使わないならば軽い方が良さそうだ。
 小刀はあるだろうか、と探してみた。

【判定】
123 発見出来ず
456 類似品を発見
789 小刀を発見

【なに、やらかしたのさ……】

【特殊判定】
123 うかつ――――
456 小刀が ないのを理由に 持たず去る
789 宝具発見


 壁掛けの下には木箱が並んでいて、隙間から武器がはみ出しているのが分かった。
 それを開けようとしゃがみ込んだが、これはどうしたことだ、鍵がかかっている。

 「開けてやろうか?」

 アサシンが背後から近づいてきていたので、無言で木箱を渡す。

 ランサーは奥のテーブルに座ったままだ。

 「何を探してるんじゃ?」

 「小刀を」

 「ああ、小刀」

 アサシンは木箱の鍵を外すと、中をごそごそと漁り、そして手のひら大の小さなナイフを取り出した。

 「この位なら、手頃でちょうどいいだろう」

 ……手頃?
 確かにぼくは小さい方が都合が良いが、然しそれは武器として使うには小さすぎるだろう。
 何しろ中指と大して変わらない長さだ。
 サーヴァント相手は勿論、道中の用途にも耐えそうにない。

 まあ、いいか、と思って手を差し伸べる。
 しかしナイフは手のひらの上でなく、ぼくの首筋に突き立てられていた。

 「―――――お前を殺すのにな」



【判定】
123 死亡
456 重傷
789  回避


 「―――――――っ!」

 避けた。間一髪。だが一歩遅い。
 ナイフはぼくの首を掠め、致命傷は免れた、しかし即座にアサシンの蹴りがぼくを撃ち抜く。

 「おあああああっっ!」

 「がふっ!」

 重厚な衝撃が、腹部からぼくの全身に広がる。
 波紋が体中にぶわんと広がって、ぼくの身体を粉々にする。
 そしてそのまま、ぼくは天井に叩きつけられた。

 「マスター!?」

 ランサーも、この事態をようやく察知したらしく、即座に立ち上がり、ぼくとアサシンの間に立つ。
 もう少し、はやく、気づいてくれ……。

 「……不覚を取りました。まさか貴方がそのようなことをする方だったなんて」

 きっ、と唇を噛み締めるランサー。それに対してアサシンは、どこか飄々としてあごひげを撫でている。


 「不覚を取ったわい。今の一撃で仕留めるつもりが、まだ、生きておるようだ」

 ……だが、下半身をよく見ると、足が僅かに揺れていた。
 ビビっている。
 恐らくは今の一撃で仕留める予定だったのだろう。

 「こうなったら仕方が無い。聖杯を手にするためには、そのホムンクルスを殺しても良いということだったからのう。
 それしかない故、そうさせてもらう」

 意識がもうろうとする。
 確かに死んでこそいないが、この怪我はかなり長く響く。
 回復するのにどれだけかかるか分からない。


 「……私は貴方のことを信じていましたが、こうされたのでは、抗うより他に仕方ありません。
 アサシン、貴方を討伐させていただきます」


 ランサーは、ようやく戦う気になったようだ。
 それは幸い、怪我の功名という奴だろうか。


 しかし、このまま真名を明らかにしていない状態で戦っても、アサシンを完全に倒しきることはできない。

 あれを滅ぼすには、ぼくが真名を告げる必要がある。

 奴の真名は―――――

【真名看破】

アサシンの真名は?

↓1

選択:まだ、分からない


【では分からないまま、次回、アサシン戦へ突入ということで】
【お疲れ様でした】

【もう一度設定変更】

 第一段階
 宝具の使用が不可能。
 一部スキルが秘匿。
 契約は行えない。

 ↓解放条件:一回以上接触する。または戦闘を開始する。

 第二段階
 宝具の真名解放が不可能。
 一部の宝具については使用不可能。
 契約は行えない。

 ↓解放条件:ホムンクルスまたはそれが従えるサーヴァントが、真名を看破するか、それを撃破。
         心象世界が再生すると共に、サーヴァント自身も復活する。

 第三段階
 宝具の真名解放が可能に。ただし、性能には制限がかかる。
 全てのスキルが使用可能になる。
 サーヴァント契約が可能となる。

 ↓契約を行うことにより、一切の制限を解除することが可能。

 契約サーヴァント



【概要をまとめると、
 サーヴァントと接触した後、それの真名を当てた上で倒せば一度で撃退。
 真名を当てないまま倒すと、後でもう一度倒す必要が出てくる。
 真名を当てていないor一回倒す前は、若干劣化した状態】



戦闘については、雑に各キャラ毎のコンマ比較でいきます。
地力の差は補正ではなく描写で出す感じで。

1  致命的な失敗
23 押され気味
45 均衡
67 スキル発動
89 クリティカルヒット
0  宝具解放

くらいで。まあ大きければ大きいほど強い位に考えていただければ。

【そして再開】


 ……考えたが、分からない。
 何しろまだヒントが少なすぎる。

 負傷も深刻で、身動きも取れそうにないし、この戦い、ぼくができることは何もなさそうだ。
 今はただ、ランサーの戦闘を眺めていることだけ……。


 「……」

 ランサーの得物は、道中も携えていた杖らしい。
 武芸家よろしく手前に構えて姿勢を取るランサーだが、どうも動きがぎこちない。

 対してアサシン。

 木箱から取り出したるは巨大な金槌、それをぶんぶんと振り回しながらランサーを威嚇している。

 「あまりべらべらと喋る気は無いが、儂はとある竜殺しとして名を馳せた英雄を育てた男じゃ」

 「……そうですか」

 「ふはは、怖いか?」

 自分の武勇を誇れない時点で、お察しだろうに。


 「ふむ。貴様の様子を見るに、どうも武術家ではなかったようじゃが、そんなので儂に勝てるとでも?」


 「貴方がいくら、卓越した戦士だったとしても。その力を笠に横暴を働き、人を裏切り、
  自らの願望を欲しいままにする……そんな脆い信念には負けません。
  最後に勝利するのは、真に正義なるものです。いえ、そうでなくてはなりません」

 「抜かせ。きれい事で実利が得られるか」


【アサシンのステータス】

┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━┓
  ≪クラス≫:アサシン            【真名】:?             【属性】:混沌・悪      反英霊
┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
   【筋】:D(20)    【耐】:E(10)     【敏】:D(20)     【魔】:C(30)   【幸運】:E(10)    【宝】:A-(50)
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫

【クラススキル】

 ◆気配遮断:B
  サーヴァントとしての気配を断つ。
  完全に気配を断てば発見する事は難しいが、攻撃体制に移るとランクが低下する。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


 ランサーも戦闘型とは言えないが、アサシンに比べればまだステータス的に勝っている。

 ※参考 ランサー

┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
  【筋】:E(10)      【耐】:D(20)      【敏】:D(20)     【魔】:B(40)    【運】:E(10)     【宝】:B(40)
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫


 ……いや、そこまでじゃない……か?
 だ、だけどアサシンの気配遮断が機能していない以上、ランサーの方に分があるはず。
 分があるはずだよね?



【戦闘】
↓1 ランサー
↓2 アサシン

【00の役割決めてないところにいきなりとか勘弁してくださいよぉ】

【00をどうするか? 判定】
12345 極大クリティカル(スキル発動&宝具真名解放ぐらい)
67890 強制勝利


 こと、実戦において、戦闘経験というものは重要なファクターである。
 敵対者より発せられる殺意の一つ一つがいかなる意味を持っているのか。
 どれを守り、どれを受け、どれを薙ぎ、どれを躱し、どれに相対さねばならぬかは、武芸書を読むだけでは身につけること能わず。
 ましてや、戦を避け続けた人間が、どうしてその感性を磨き上げることができるだろうか。

 ランサーが携えていた杖、それも相応の神秘を蓄えた宝具であり、適切に用いれば十二分に脅威となったに違いなかった。
 しかし、相手を間違えたならば、それは何の役にも立たない棒きれでしかない。


 「……!」


 アサシンが金槌を振り下ろして、それを咄嗟に杖で受けようとしたランサー。
 しかしアサシンは直前で手を止め、ひらりと杖を躱してランサーの手を打った。

 「!」

 走る衝撃。ランサーは思わず杖から手を放してしまう。
 それに続いて、アサシンの拳がランサーに直撃する。

 「……ひひ」

 アサシンは戦士と言うには少し俗である。
 しかし彼は、盗人やごろつき相手のような、下層の戦いにおいては場馴れしていた。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

 【保有スキル】

 ◆権謀術数:C
  自らの目的を達成する為の策略を練り上げる手腕。
  Cランクならば高い確率で成功が保証されるが、その後に手痛いしっぺ返しがくる場合がある。
  同ランクの話術・変装も兼ね備える特殊スキル。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


 だから、ランサーの持つ杖と直接打ち合っては分が悪いと、
 彼の第六感が察知したのだ。しかしその感は経験によるもの、スキルにまで昇華するほどに卓越してはいない。
 故に、打ち合う直前という……通常ならほぼ意味の無いタイミングで機能した。

 しかし逆に、それが対ランサーにおいては功を奏したのだ。


 ランサーは戦い慣れしていない。
 戦うということがどういうことで、どう戦えば良いかまでは理解していても、
 常に戦いを意識して、その感性を鋭敏にしていることはできない。

 要は、たとえ武人のような技術を発揮出来たとしても、対応まで武人のように、とはいかないということ。
 形だけなぞった戦闘法では、急場の事態で襤褸が出る。

 「……」

 ランサーは体勢を崩し、そのまま床へと仰向けに叩きつけられる。
 その上に馬乗りになったアサシンは、金槌をぽいと投げ捨てて、一本の大剣を精製した。

 「その剣、まさか、貴方は……」

 「決着だ、ランサー」

 勝利を確信し、ほころんだ笑みを零すアサシン。
 ランサーは咄嗟に呪詛を唱えようとしたが、遅い。
 間髪入れる間すらなく、大剣の一撃がランサーの脳天に叩き落とされ、直ぐに、パスが切れたのが確認出来た。


【ランサー、消滅】

 「ひひ、はは、ははははは!」

 アサシンは直ぐに剣を投げ捨て、ぼくの方へと近づいてくる。
 手元には新たに、大剣の半分ほどの鉈が構えられていた。

 「まさかここまで上手くいくとはのう……。儂の願いが、これで、ようやく叶えられるわけじゃ!」


 続いてすぐ、激痛、目の前に広がる赤。

 薄れかけていたぼくの意識は、そこでぶっつりと消失する。


【DEAD END】

【アイヤー。突然の死すぎてびっくりよー】

【一応、目の前でランサーが撃破されたので『英霊の残滓(ハトシェプスト)』獲得。これは以後のキャラメイクで使える感じの】

【それではリトライorリセット】
1、最初からやり直す
2、アサシン戦からやり直す

先に二票

【訂正】
1、キャラメイクからやり直す
2、アサシン戦からやり直す
3、エリア外からやり直す

先に二票

【他の多くのスレのそれを踏襲し、コンティニューは3回にします】

残りコンティニュー回数:3回→2回

ではリトライ。

―――――――――――――――――

―――――――――――――――――

 ……考えたが、分からない。
 何しろまだヒントが少なすぎる。

 負傷も深刻で、身動きも取れそうにないし、この戦い、ぼくができることは何もなさそうだ。
 今はただ、ランサーの戦闘を眺めていることだけ……。


 「……」

 ランサーの得物は、道中も携えていた杖らしい。
 武芸家よろしく手前に構えて姿勢を取るランサーだが、どうも動きがぎこちない。

 対してアサシン。

 木箱から取り出したるは巨大な金槌、それをぶんぶんと振り回しながらランサーを威嚇している。

 「あまりべらべらと喋る気は無いが、儂はとある竜殺しとして名を馳せた英雄を育てた男じゃ」

 「……そうですか」

 「ふはは、怖いか?」

 自分の武勇を誇れない時点で、お察しだろうに。


 「ふむ。貴様の様子を見るに、どうも武術家ではなかったようじゃが、そんなので儂に勝てるとでも?」


 「貴方がいくら、卓越した戦士だったとしても。その力を笠に横暴を働き、人を裏切り、
  自らの願望を欲しいままにする……そんな脆い信念には負けません。
  最後に勝利するのは、真に正義なるものです。いえ、そうでなくてはなりません」

 「抜かせ。きれい事で実利が得られるか」


【アサシンのステータス】

┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━┓
  ≪クラス≫:アサシン            【真名】:?             【属性】:混沌・悪      反英霊
┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
   【筋】:D(20)    【耐】:E(10)     【敏】:D(20)     【魔】:C(30)   【幸運】:E(10)    【宝】:A-(50)
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫

【クラススキル】

 ◆気配遮断:B
  サーヴァントとしての気配を断つ。
  完全に気配を断てば発見する事は難しいが、攻撃体制に移るとランクが低下する。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


 ランサーも戦闘型とは言えないが、アサシンに比べればまだステータス的に勝っている。

 ※参考 ランサー

┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
  【筋】:E(10)      【耐】:D(20)      【敏】:D(20)     【魔】:B(40)    【運】:E(10)     【宝】:B(40)
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫


 ……いや、そこまでじゃない……か?
 だ、だけどアサシンの気配遮断が機能していない以上、ランサーの方に分があるはず。
 分があるはずだよね?



【戦闘】
↓1 ランサー
↓2 アサシン


 アサシンの繰り出してくる金槌を軽く杖で捌きながら、ランサーは少しずつぼくと距離を取っていく。
 狭い空間の中、長柄は金槌より格段に扱いにくいはずなのに、上手くやっているようだ。

 「……ちっ」

 業を煮やしたアサシンが、力任せに金槌を打ち込む。
 勢いは十分。並みの武具相手なら、あれで粉砕してしまえるのだろう。

 「『ケベフ・ゲレフ』」

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

  【保有スキル】

  ◆魔術:A
  神々を祀る祭礼を司る。また、神聖文字ヒエログリフの刻み手。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

 ランサーが対応して呪詛を唱えると、彼女の靴に刻まれていた神聖文字が輝き出す。
 そのの周囲を冷気が覆い、足下から浮き上がった氷の壁がアサシンの攻撃を阻む。

 「そこです!」

 そしてその氷壁が砕け散ったのと同時に、杖の突きがアサシンの額に激突。
 アサシンは壁際まで突き飛ばされた。

 「っ!」

 しかしアサシンは直ぐに立ち上がり、怒気を顔面に浮き上がらせた状態で再びランサーへと向かっていく。
 頭に血が上りやすいのか、その動きは先ほどに比べてさらに大ぶりになっていた。

 「……まだ、必要ですか」

 ランサーは気怠げにため息を漏らした。
 杖を振るうのが哀しくて仕方が無い、と言っているかのように。

【戦闘】
↓1ランサー
↓2アサシン


 「できることならば、話し合いで決着をつけたいと思っていたのですが……」

 「ふんっ!」

 ランサーの杖とアサシンの鎚。その二つが交錯する度に、互いから発せられる別種の魔力が迸る。
 アサシンの鎚からは、歪み。ランサーの杖からは、癒やしを、それぞれ感じる。

 どちらがより武器として正常かと言うと、明らかにアサシンの方である。
 なぜ攻撃するための武器から癒やし要素が振りまかれているのか。


 「其方に聞く意思がない上、私のマスターを意図して傷つけようとするのならば」

 「らっ!」


 アサシンの動きはどんどんと大味になっていて、最初は僅かに不安定さが見え隠れしたランサーも、今では完璧に捌き切れている。

 「この杖は、人を傷つけるための道具ではありませんので、このままでは決着はつきませんが」

 「っ!」

 一読。また神聖文字が刻まれる。
 ランサーの魔力が杖の鋒に集中し、それがアサシンのみぞおちに直撃した。

 「この杖の能力は『治癒』、打ったものを、打っただけ癒やすこと。その魔力は、其方持ちですが」

 「失礼ながら、貴方が戦意を失うまで―――――数に限りなく、打たせていただきます」


【戦闘】
※もう一度有利を取れば、ランサーの勝利です
↓1ランサー
↓2アサシン


 形勢はランサーの有利、だが。
 今一つ、最後を押し切れていない感がある。

 「ここまでです!」

 「ぐっ……まだ、じゃあっ!」

 「……やっ!」

 これはアサシンの耐久力が優れていると言うよりは、単にランサーの攻撃力が低すぎることが原因だろう。

 ランサーの戦法は、実質的には魔力そのものに対する消耗戦。
 しかしそれは、普通にダメージを加えるのよりもずっと効率が悪く、時間もかかる。当然死ぬまでの道のりは長い。

 アサシン側も、それを理解しているからこそ、多少の無茶も致命傷に至らないと理解出来る訳で……。


【戦闘】
※同上
↓1ランサー
↓2アサシン


 戦いの決着は、あっけない予定調和で片が付いた。
 思えば必然、何時か迎えるべき結末であったのかもしれない。

 ランサーの攻撃はアサシンに届くが、アサシンの攻撃はランサーに届かない。
 それを続けていれば、いずれアサシンの魔力が底を付くのは当然のこと。

 ふとした時に迂闊にも背中を見せたアサシンを、ランサーの杖が薙ぎ払い、そこでアサシンの魔力が尽きた。


 アサシンの肉体がほどけていき、周囲の世界も歪みを含んで変貌していく。
 大地は裂け、空気は割れるように響き、武具はぐにゃりと曲がっていく。そらは七色に変貌し、太陽は点滅する。

 そして、全身をつまんで引っ張られるような引力を、全身に絶え間なく感じさせられる。
 要塞(ギャリソン)の作用が、ぼくたちを追い出そうと反応しているのだ。

 そう。
 その世界を統べるサーヴァントを倒したとき、要塞はぼくらを追い出した後、一度崩壊する。

 次にぼくらがここを訪れた時は、この世界は再構築されていて、
 サーヴァントは縛りから解放された完全な状態でぼくらを待つ。

 そのときが、本当の決着ということになるだろう。



 消えたアサシンがいた場所を、ランサーは哀しげに眺めている。
 間接的にとは言え、殺めてしまったことを悔いているのだろうか?

 手を差し伸べたいところだが、ぼくの怪我はまだ殆ど癒えていない。従って、二人とも身動きができないでいる。


 やがて。
 背後からこの世界の歪み、もしくは修正力? なんだかは正確には分からない黒々としたものが現れて、
 ぼくらをぱっくりと包み込み――――そして一瞬意識が途切れた。


 目を覚ましたら、きっと、要塞の外にいることになるだろう。



【本日はここまで】
【お疲れ様でした。多分またしばらく間が空きます。ご容赦を】

言わなくてもオーケーです。

当スレのルールとしては、サーヴァントは2回倒す必要がある。
ただし一回目の状態で真名を看破すれば、2回目が必要なくなる、という具合です。

【お久しぶりです】

【現在明らかになっている情報】

                                                  ┌─────┐
                                                  │  X1     .│
                                                  ├─────┤
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                                                  ├────┬┘
                                                  │ Y1   .└┐
                                                  ├──┬──┤
                                                  │.Z1....│.Z2....│
                                ┌──┐          ├──┼──┼┐
                                │ A1...|          │ A2...│..A3 .│└┐
              ┌──┬──┬──┬┐        ├──┼──┬──┬──┬──┤  └┐
              ..|. B1..|..B2 .| B3...|└┐      │..B4 .| B5...|..B6 .| B7...│..B8 .| B9.....│
  ┌──┬──┼┐  ├──┼──┤  └┬──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
  │C11 │ C0 .│└┐│ C1 .│ C2 .│ C3 .│ C4 .│ C5 .│ C6 .│ C7 .│ C8 .│ C9 .│C10 │
  ├──┼──┤  └┼──┼──┤  ┌┴─┬┴─┬┴─┬┴─┬┴──┼──┼──┤
  │..F1...│..F2...│.F3....│..F4...│...F5..├─┤ D1...|..D2 .| D3...|..D4 .|   D5   | D6...| D7...|
  └─┬┴──┼──┼┐  ├──┤  └┬─┴─┬┴─┬┴──┴───┴──┴──┘
      │ G1  . │ G2. │└─┤ .G3 │ G4 .│  E1   | E2  |
┌──┼───┴──┘    └──┴──┴───┴──┘
│ H1...│

└──┘


C6 ―― 森に住む大柄の男(アサシン)
B4 ―― 高慢な美青年(ライダー)
B5 ―― おっとりとした平和主義の女王(ランサー)
B6 ―― ???

現在地:C6

【時間経過】
直後コンマ*1時間

【二日目:AM4:00】

 外の世界へ戻ってくると、目の前には空一面。しっとりと湿った芝生の上に寝転がった状態で目が覚めた。
 もう空はやんわりと白んでいて、日の出が遠くないことが分かる。
 もう二日目になってしまっていたらしい。

 「がはっ」

 そのまま無意識に起き上がろうとして、身体に激痛が走る。
 そういえば、身体が粉々になったばかりだったのを忘れていた。

 少しずつ回復してはいるものの、まだ全身に刻まれた怪我は治っていない。
 身動きを取るのにも慎重にしなければ、そう思っていると。

 「おはようございます、マスター」

 不意に、上からのぞき込むランサーの顔。
 彼女はぼくの肩にそっと優しく手を当てた。
 立つな、と言っているのだろうか。とりあえずそれに従っておこう。

 「酷い怪我です。あまり無理はしないで。直ぐに治してさしあげますからね」

 そう言って彼女が取り出したるは、アサシン戦でも使用していた例の杖。
 彼女はそれをぼくの心臓付近に添えて、ぶつぶつと詠唱を始めた。

 するとぼくの身体から魔力がずるずると引き出され――――それが方々に散って傷口を塞いでいく。
 取れかけた腹の肉もみるみるうちに繋がって、数秒も経たないうちに、身体に傷はなくなった。

 それと同時に、どっと疲れが押し寄せてくる。
 魔力を失ったのもあるだろうが、張り詰めていた気が緩んだ面も少なからずあるだろう。

 「……」

 そして意識が途切れ――――ぼくはゆっくりと眠りにつく。

【睡眠。6時間消費】

【二日目:AM10:00】

 まぶたを貫く太陽の光で目が覚めた。
 起きて直ぐに手足を確認。今度は無傷。しっかり繋がった健常な身体で立ち上がる。

 「二度目になりますが、おはようございます、マスター」

 すっと、ランサーが現れて、杖に寄りかかりながら、ぼくに優しく微笑んだ。

 「さて、今日はどうしましょうか」


1、ランサーと会話
2、移動 (移動先は上記隣接地点から選択)

現在地:C6

↓1


 「……全く、どちらがマスターなのか……」

 ふと、零したぼくの言葉に、ランサーは不思議そうに首をかしげた。

 「私に何か、至らぬところがありましたか?」


【会話】
1、至らないのは自分だ
2、そういう意味で言ったのではない
3、ああ、あった
4、その他

↓1


 「……そうじゃない」

 違う。ランサーは良くやってくれている。
 戦いたくないと言いながらも。
 争いは嫌いだ、と言いながらも。
 ぼくのために杖を取って、望まない戦いに身を投じてくれた。

 ましてや、自分を見捨てて良いとまで言ってくれた。

 そんなランサーに、ぼくがどんな文句を言えるだろうか。
 寧ろ、ぼくの方が……。

 「至らないのは、ぼくの方だ」

 ランサーが導いてくれると言ってくれたのに。
 ぼくが聖杯を取るためだけに、実質、力を貸してくれていると言うのに。
 ぼくはそれに応えられていない。そんなぼくがどうして、彼女のマスターを名乗れるだろうか。


 「大丈夫ですよ、マスター。できることをしていただければ、それでいいんです。
 無理にマスターという枠に囚われて、できないことまでする必要はありません。

 ほら、私だって……できないことはやっていませんから。私は、私にできることをやる。貴方は、貴方にできることをやる。
 それ以上多くを、私は望んだりしませんよ」

 「……ランサー」

 本当に、そうなのだろうか。
 ランサーが言っていることは、本当に真実なのだろうか。

 できることだけをやっているのなら。
 自分のできること、に妥協してしまうのなら。
 ランサーは、戦うことを選ばなかったんじゃないだろうか。

 殺し続けなければいけない世界に、果たして彼女のできることは存在するのだろうか?


 そっと、ぼくのほおに手が添えられる。
 ランサーの、丸みを帯びた暖かな手だ。

 「いきなりあんな目に遭えば、恐怖するのも分かります。ですが、私が生きている限り、
 貴方が死ぬようなことだけは絶対にさせません。だから安心して、どっしりと構えていてください」

 「……もっとも、昨日、あんな失敗をした後では、信用ならないかもしれませんけどね」


【返答】
1、ああ、信用ならない
2、そんなことないよ
3、特に返答しない
4、その他

↓1


 「そんなことないよ、ランサー」

 彼女のスタンスは前もって聞いていた。
 ぼくはそれを踏まえた上で、彼女と契約を結んだのだ。
 彼女は、それに従って行動し――――結果、多少後れを取っただけ。
 少なくともぼくに、彼女を責める理由はない。責められるだけの資格もない。

 単にぼくが、彼女の精神性を過小評価していた――――彼女がそこまで、彼女が言ったとおりの自分を貫き通すと想定出来なかった。
 それだけが問題だったんだ。

 彼女は英霊。史上に名を馳せた、崇高な精神の持ち主だ。
 それを常人の尺度で計ってしまっては、食い違うのは必定。

 ランサーに落ち度はない。変わるべきはぼくの方だ。

 「ランサーが生きていけるように……ぼくも、できること以上を頑張っていきたい」

 ぼくがそう言うと、ランサーは照れくさそうに手を振った。

 「いえいえ、ご心配なく。私に気を遣って、無理に合わせる必要はありませんよ」

 無理に合わせる必要は無い、と彼女は言う。
 しかしそれは意味の無い言葉だ。

 合わせようが合わせまいが、どちらにせよ彼女は彼女の道を行く。
 だったら、ぼくはそれについていかなければならない。

 彼女のためにも、ぼくのためにも、ぼくは、ぼくにできること以上をやらなくてはならないのだ。


【行動】
1、会話続行
2、移動 (移動先は上記隣接地点から選択)

↓1


【エリアC5】

 ……正直なところ、要塞外がどんな背景であるかなどということは全くどうでもいい情報だ。
 それにキャパシティを取られて、無用に時間がかかるのも避けたい。
 だから以後、それについては省くことにする。


 ―――

 ――――――

 ―――――――――


 そんなわけでエリアC5の要塞の中に辿り着いた……


 ぼくとランサーが意識を確かにしたとき、ぼくらは神殿の入り口に立っていた。
 それは切り立つ崖に立てられた、大きな石造りの神殿で、遠くにはほの白い山脈が並ぶ。

 この世界、今は暁のようで、山の狭間からまばゆい日の出が差し込んでいる。

 きびすを返して神殿の奥をのぞき込むと、最奥に人影が見えた。

 同時に感じる強い魔力の迸り。十中八九、サーヴァントだ。
 随分と距離が離れているので、得物すら良く見えないが……。

【行動】
1、ランサーと会話
2、進む
3、帰る
4、その他

↓1


 立ち止まっていても仕方が無い。

 「行こう、ランサー」

 ぼくたちは一歩踏み出して、神殿の中へと入っていく。



 ――――

 ――――――

 ―――――――――


 神殿に座っていたのは、鎧を身につけた背の高い大男だった。
 中央の台座に腰掛けて、段差の上から僕らを見落としている。

 「貴方が、この場所のサーヴァントですか?」

 ランサーが問うと、男は無言で頷いた。

 「では、少しお話ししたいことがあります。お時間よろしいでしょうか?」

 男はまたしても無言で頷き、立ち上がってこちらに歩いてくる。


 ……あれ? そういえば……おいおい、ランサー。
 まさかとは思うが、また……

 「貴方が聖杯にかける望みを教えてください。もし、その願い次第では……」

 ……言うまでもないことのようだった。
 ランサーにとって、毎度毎度、この確認は――――つまり、自分より優れたサーヴァントを探す試みは、欠かせないらしい。


 「……私の願い?」

 男は、怪訝そうな顔をした。

 「それを貴方に話す必要があるのですか?」

 「いえ、もし貴方の願いが、誰かを傷つけるようなものでないのなら……」

 そこで、ランサーは僅かに言いよどんで。

 「誰かを傷つけるようなものでないのなら、私は、彼との契約を貴方にお譲りする意志があります」

 僕の方を指さした。
 また、勝手にそんなことを言って。
 だけど、それについていくと決めたんだ。文句を挟むのもなんだか違う。

 「たっ、ただし」

 と、気が抜けていると、まだランサーの言葉が終わっていなかったのに気づく。

 「……彼にも、話を聞いてみて、ということになりますが」

 「彼がマスター、ということで宜しいですか?」

 男の質問に、彼女は小さく頭を下げる。

 「そうですか。分かりました」

 全て聞き終えて、男は腕を組み、暫し考え込む。そして。

 「……貴女は生前、ご結婚されていましたか?」

 そう、ランサーに問うた。

 ランサーは怪訝な顔をしながらも頷く。すると彼は破顔して、すっと一礼した。

 「でしたら、結構です。私に戦意はありません。少なくとも貴女に対しての」


 「……はい? それは、どういう……」

 「いえね、世の奥方と呼ばれる人間を殺してまで、私の願いというのは叶えるものではないのです」

 ランサーが聞くと、男は気まずそうに頭を掻いた。

 「そもそも、そこで殺めてまで願いを叶えたとして、果たして彼女は喜んでくれるか、という……」

 そして小声でぼそりと呟く。ランサーは聞き取れなかったらしく、眉をひそめて首をかしげた。

 「? ええと、すみません。もう一度仰っていただいても……?」

 「……いえ、お気になさらず。単に独り言ですので」

 男はずかずかと元の位置に戻り、そして大げさにため息をつく。

 「今回の聖杯踏査、貴女がそのホムンクルス君のサーヴァントである限りは……私は諦めましょう。次の機会に期待することとします。
 直ぐに戦闘ということでしたら、そのときは仕方ありません。甘んじて天罰を受けるとしますが……
 もし其方がたに幾ばくかの温情があるのなら、できれば私のことは放っておいていただきたい」

 「……はあ、しかしますます身につまされました。仮に相手がご婦人でなかったとしても、私が血を以て彼女への道を切り開くという真実に
 まったく代わりはないというのに……」

 「……えっと?」

 「ああ、お気になさらず。『放っておいていただきたい』以降はただの独り言です」

【感情判定】
↓1、↓2
1自由選択
2敬愛
3恐怖
4驚愕
5悲嘆
6憎悪
7激怒
8警戒
9恍惚
0複合型(再判定)


 随分と独り言が多い男だな、と思った。
 しかしランサーが抱いた感想は、それとは違うものだったらしい。

 彼女はランサーの元に歩み寄ると、そっと彼の手を握った。

 「私には、貴方に何があったのかは分かりません。ですが何か、おつらいことがあったというのは分かります」

 「何があったのか、教えていただけませんか? そうしたら、力になれることがあるかもしれませんし」

 「……」

 男は暫し黙っていたが、あるときふうと息を吐いて。

 「いえ、お気遣いなく」

 「これは、私が自分の力で解決しなければならない問題ですので」


 そう言って手をふりほどいた。

 「……」

 ランサーは少し肩を落としながら、ぼくのところに帰ってくる。
 純粋な好意が純粋な謙虚で拒絶されたのがそんなにショックだったのだろうか?

 いや、まあ、あのサーヴァントが何を考えているかはまだぼくにも分からないのだけれど。

 「……どうしましょう、マスター」

 いや、どうしましょう、ったって……。


【行動】
1、ぼくも説得に加わる
2、ここは退こう
3、今がチャンスだ、あいつを倒せ!
4、その他

↓1


 「ここは退こう」

 あのサーヴァントの意思は強固だ。
 彼が生前何をやらかしたのかはぼくも知らない。だけど彼が自分の罪と願いの間で苦しんでいるのは分かる。
 そんな相手に慈悲を見せるのは、必ずしも優しさたり得ない。

 ランサーは納得出来ていないらしく、眉をひそめて僕に対し抗議するような素振りを見せた。

 「でも、マスター、あの人は苦しんでいます」

 「貴女が手を差し伸べることで、もっと苦しむことになるかもしれないんですよ」

 事実。
 あの男が、自身に既婚女性を殺さない縛りを課していたとするならば、
 ランサーがどんな手段を講じたとしても、彼に救いの手は差し伸べられない。
 なぜならば、彼が聖杯を手にするためにはランサー自身が敗北を選ぶ必要があるが、それは彼の望むことではないからだ。

 まごう事なき袋小路。
 彼を取り巻く問題は、少なくとも彼女にはどうすることもできない。


 「……行こう」

 ランサーはまだ何か言いたげだった。
 が、ぼくが意思を変える気がないのに気づいたのか、やがて唇を噛み締めて、口惜しそうに小さく漏らした。


 「……分かりました」


 彼を思いやるのならば、直ぐにでもこの場を離れた方が良い。

 ぼくらは間もなく、要塞を後にした。



【今日はここまでです】
【お疲れ様でした】

【サーヴァントの一部ステータス開示】

┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━┓
  ≪クラス≫:アーチャー      【真名】:?                  【属性】:秩序・中庸      英霊
┣━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┫
   【筋】:B(40)    【耐】:C(30)     【敏】:B(40)     【魔】:C(30)     【幸運】:D(20)    【宝】:A
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫

  【クラススキル】
  ◆対魔力:B
  魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
  大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
 
  ◆単独行動:A
  マスター不在でも行動できる。
  ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

すみません。このスレは停止させていただきます。現状、既に停止同然の状態でしたが。

・私の更新がたびたび滞り、読む上で多くの障害を生じさせてしまった。
・想定よりも、この設定が話を動かす上で素晴らしいものではなかった。(私には扱いきれなかった)
・主人公のキャラクターを立たせることが非常に困難だった。

もし待っていてくれている方がいたならば、続けられないことを深くお詫び申し上げます。
ここで紹介したサーヴァントのデータの中で、特に多くの情報を出してしまったものについては、いずれもっとちゃんとした形で再利用するつもりです。

それでは短い間でしたがありがとうございました。

了解。とりあえず依頼出したらいいと思う

■ HTML化依頼スレッド Part34
■ HTML化依頼スレッド Part34 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440982252/)

>>409
そうですね、ありがとうございます

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