――事務所
TV『……ということで、アイドルたちのパジャマパーティでした~♪』
P「……はぁ」ピッ
まゆ「どうしたんですかぁ? 元気がなさそうですけど」
P「ああ、まあ。観てたろ、今の番組」
まゆ「こずえちゃんを『パジャマでおじゃま』にでも出演させるんですか?」
P「それはいいな……って、そうじゃないよ。パジャマパーティのことでな」
まゆ「パジャマパーティですかぁ」
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P「うむ、なんとなく憧れがあってさ。まゆはパジャマパーティとか、したことない?」
まゆ「えーっと……どうでしょう、したことないですねぇ」
P「そっかぁ」
まゆ「要は仲良しのお友達とお泊り会ですよね。Pさんは、そういうのはないんですか?」
P「あるにはあるけど、結局は野郎同士だもの」
まゆ「つまりかわいい女の子とお泊りがしたい……?」
P「そう言われるとなんとも……」
まゆ「でも、そうなんですよね」
P「なんというかこう……邪な気持ちとか一切抜きで和気あいあい、楽しくお泊りがしたいんだよ」
まゆ「かわいい女の子と?」
P「それを言われるとなんとも……」
まゆ「プロデューサーとはいえ、アイドルとお泊りはアウトですよねぇ」
P「というかまぁ、アイドルでなくても年頃の女の子とお泊りはダメだと思うけどね」
まゆ「そういえば、来週、Pさんの誕生日でしたね」
P「なにがそういえばなのか分からないけど、そうだよ」
まゆ「Pさんへのプレゼント、思いつきました」
P「……なにかな?」
まゆ「まゆの部屋へご招待、パジャマパーティです」
P「今までの話の流れ、全部無視してない?」
まゆ「そんなことありません。誕生日プレゼントという体ですから、ぎりぎりセーフです」
P「ぎりぎりセーフなんだ……」
まゆ「というわけで、来週までにパジャマを用意して……あ、パジャマもまゆからプレゼントしましょうか」
P「まゆが選ぶのか」
まゆ「ハッ、ちょっと待ってパジャマの選択権が私にあるってことはPさんにあんな寝間着やこんな寝間着をプレゼントしたら恥じらいながらも『に、似合うかな』って着てくれるってことかしらもしかしてそのまま添い寝ルートワンチャンあるのでは」ブーーー
P「まゆ、鼻血鼻血」
まゆ「す、すみません……つい興奮して」
P「なんてベタなヤツだ」
まゆ「というわけで、洗面用具一式だけ持ってきてください」
P「でもなぁ、やっぱり誕生日とはいえマズいと思うぞ」
まゆ「じゃあ、あらかじめ、Pさんの家を燃やしておくっていうのはどうでしょう」
P「待て待て待て」
まゆ「なんですか」
P「おい、なぜ……なぜ、俺の家を燃やすんだ」
まゆ「順をおって説明しますね」
P「頼むよ」
まゆ「まず、前提として、まゆの部屋にPさんが泊まるのはマズい。そうですよね?」
P「うむ」
まゆ「不可抗力で泊まるなら、問題ないんじゃないですか」
P「不可抗力?」
まゆ「例えば、Pさんの家が燃えちゃったとか」
P「うぅむ……いや、しかし、すぐ違う家を探せよ、って言われる気がする」
まゆ「探している間だけ、まゆの部屋に泊まるのはどうですか?」
P「その間はホテルとか……」
まゆ「火事のとき、貯金通帳なんかも一緒に燃えちゃったら?」
P「……ホテルに泊まるお金がないな」
まゆ「では、まゆの部屋に……」
P「いや、まだ事務所がある」
まゆ「すごい残業してると思われたら?」
P「う……む……、防犯上も問題だしなぁ」
まゆ「仮にも芸能関係者が公園で寝泊まりするのはどうでしょう?」
P「プロダクションの信用に関わってくるかもしれない」
まゆ「そういう状況で、まゆの部屋に泊まるのは仕方ないですよね」
P「仕方ない気がしてきた」
まゆ「というわけで、Pさんの家を燃やしてしまいます」
P「なるほど」
まゆ「これなら、気兼ねなくパジャマパーティができますよ」
P「ふぅーむ……」
まゆ「当然、二人っきりですけど」
P「でもなぁ、さすがにお泊り会で自分の家を灰にするわけには……」
まゆ「そこで、かもしれない運転ですよ」
P「教習所で習ったやつだ」
まゆ「Pさんの家が全焼したかもしれない運転」
P「運転はさておき、それなら実際に家を燃やす必要はないな」
まゆ「言ってみれば、避難訓練みたいなものですよ」
P「いざというときに、備えあれば憂いなしというわけだな」
まゆ「では、来週から、まゆの部屋へ来てくださいね」
P「オッケー、分かった」
まゆ「洗面用具の他には、お仕事で使うようなものも持ってきてください」
P「仕事で使うもの? どうして」
まゆ「あくまで『かもしれない』なので……ないと困るものはちゃんと用意しておいてください」
P「なるほど、下着の替えと、スーツとワイシャツくらいは持っていったほうがいいかな」
まゆ「そうですねぇ。お洗濯とか、お料理は、まゆがするので心配しないでください」
P「うむ、ありがとう。まゆはきっと、いいお嫁さんになるな」
まゆ「うふふっ、そう言ってもらえると嬉しいですぅ」
P「じゃあ、来週だな。パジャマは、まゆが選んでくれるんだっけ」
まゆ「ええ、楽しみにしてますねぇ」
――1ヶ月後、事務所
ちひろ「Pさーん」パタパタ
P「ああ、ちひろさん。お昼休み終わりましたよ?」
ちひろ「まゆちゃんと同棲してるって、本当ですか!」
P「同棲……?」
ちひろ「ええ、まだプロダクション内での噂に留まっていますけど……」
――1ヶ月後、事務所
ちひろ「Pさーん」パタパタ
P「ああ、ちひろさん。お昼休み終わりましたよ?」
ちひろ「まゆちゃんと同棲してるって、本当ですか!」
P「同棲……?」
ちひろ「ええ、まだプロダクション内での噂に留まっていますけど……」
P「いや、俺たちはただ、お泊り会を……」
ちひろ「お泊り会?」
P「ええ、家が燃えたので、まゆの部屋へ泊まらせてもらってるんです」
ちひろ「お家燃えたんですか!!?」
どうもすみません、被ってしまった。
>>9は飛ばして読んでくれて構いませんぬ。
P「あ、かもしれない運転ですよ」
ちひろ「はぁ?」
P「家が燃えたかもしれない運転でまゆとパジャマパーティしてるんですよ」ハハハ
ちひろ「…………すみません、そんなに疲れていると知らずに働かせて」
P「ええっ、いやいや、全然疲れてないですよ」
ちひろ「いい病院紹介します」
P「病院なんて行きませんよ。まゆの部屋に泊まってから体調がいいんです」
ちひろ「えーっと……いつから泊まっているんですか?」
P「俺の誕生日に泊まったんで……一ヶ月くらい前ですかねぇ」
ちひろ「長期出張のビジネスマンかアンタは」
P「まあ、確かにちょっと長い気はしますね」
ガチャ
まゆ「こんにちはぁ」
P「やあ、おはよう」
ちひろ「ま、まゆちゃん。いいところに。単刀直入に訊くけど、Pさんと同棲してるのよね?」
まゆ「やだ……ちひろさんったら」ポッ
P「ただのパジャマパーティだよなぁ」
ちひろ「永遠の序曲かアンタは」
まゆ「あ、Pさん。今日のお夕飯はなにがいいですかぁ?」
P「そうだなぁ……ハンバーグ!!」
まゆ「うふふっ、分かりましたぁ♪」
P「まゆの作るハンバーグはおいしいからな」
まゆ「今日も腕によりをかけて作りますねぇ」
ちひろ「……やっぱり同棲してるんじゃないですか」
まゆ「やだ……ちひろさんったら」ポッ
ちひろ「Pさんは、一ヶ月前からずっといるんですか?」
P「そうですね。たまには、自分の家に戻って、掃除とかしたほうがいいか」
まゆ「あっ、それなら心配ありません。まゆ、時々行ってお掃除とかしてますからぁ」
P「えっ、本当か。なにからなにまで、悪いなぁ」
ちひろ「鍵はどうしたんですかね……」
まゆ「いえいえ。それと、これからもパジャマパーティ続けますよね?」
P「そうだなぁ、楽しいからついつい続けてしまいそうだ……」
ちひろ「二人ともストップストップ!」
P「なんスかぁ」
まゆ「なんですかぁ」
ちひろ「アイドルとプロデューサーの禁断の恋など言語道断!」
P「恋じゃないです、俺たちはただパーティを……」
まゆ「恋じゃないです、愛ですよぉ」
ちひろ「パジャマパーティだって一ヶ月続けば同棲になるんです!」
P「そうなんですか」
まゆ「そうなんでしょうねぇ」
ちひろ「今まですっぱ抜かれなかったのが不思議ですよ」
P「だって、潰れかけの零細プロダクションですし」
ちひろ「これがアニメやドラマでよく見るバカでかいプロダクションだったら、Pさんなんか真っ先にクビが飛んでますよ」
P「うわぁマジすか」
まゆ「そのときは、私が養いますから」
P「なら安心かなぁ」
ちひろ「そういう風にまゆちゃんが甘やかすからこの人はダメなんですよ!」
まゆ「そう言われても……」
ちひろ「とにかく、パーティは金輪際やめてくださいね。今日からPさんは自分の家で過ごしてください」
P「いや、俺の家は燃えて……あ、燃えてないんだっけ」
ちひろ「さっきから燃えた燃えないって、何の話なんですか」
まゆ「実は、これこれこういうことがありまして」
ちひろ「はぁ……なるほど」
まゆ「すみません、さすがにふざけすぎたかもしれません」
ちひろ「あのね、Pさんの脳みそは五歳児並なんだから、そういう風に丸め込まれたらすぐ信じちゃうのはわかってるでしょう」
まゆ「はい、すみませんでした。Pさんがかわいかったので、つい」
ちひろ「それで、本当にただのパジャマパーティだったの? やましいことはしてない?」
P「それは誓って、ありません」
まゆ「Pさんってば見かけによらず激しいんです」
ちひろ「分かりました、信用しましょう」
P「形はどうあれ、パジャマパーティを体験したいという俺の願いをどうにかして叶えてくれたんです」
P「まゆのことは多めに見てやってください」
ちひろ「彼女にはなにか別の思惑も感じられますが、Pさんがそう言うなら」
P「思えば、楽しい一ヶ月だったなぁ」
まゆ「ええ、本当に……」ウットリ
ちひろ「Pさんのあずかり知らぬところで、まゆちゃんにはなにかあったんですかね」
P「ちひろさんの言う通りにしよう。寂しいけど、やっぱり自分の家で過ごすよ」
まゆ「うぅ……このままズルズル同棲生活を続けてゆくゆくはなし崩し的に結婚まで持っていくつもりだったのに……」
ちひろ「すごい嫌な本音が聞こえちゃいましたね」
P「え? なんだって?」
ちひろ「耳遠いなアンタ」
まゆ「うふふっ、なんでもありません♪」キャピ☆
P「こいつぅー☆」
ちひろ「かわいい仕草してるけど、口にした言葉はだいぶエグかったですよ」
P「じゃあ、今日の仕事が済んだらまゆの部屋から荷物を持って行くかなぁ」
ちひろ「荷物ですか。できたら、いっぺんに持って行ってくださいね。分けるとまたズルズル行きそうなんで」
P「大丈夫ですよ、着替えと洗面用具くらいしかないですし」
まゆ「他のものは全部、まゆがお世話してあげていたんですよぉ」
ちひろ「まったくもう……」
P「なにはともあれ、心配かけたようで、すみませんでした」
ちひろ「いえいえ、分かってもらえるならいいんです」
P「さすがはちひろさんだなぁ」
ちひろ「褒めるのは、お仕事をこなしてからにしてもらいましょう?」
P「さすがだなぁ」
まゆ「まゆは、Pさんの仕事が終わるまで、テレビでも観ながら待っていますね」
P「あいあい、なんか目ぼしいニュースがあったら教えてくれよ」
まゆ「はい、わかりましたぁ」ピッ
パッ……
ピンポンパンポーン
TV『ニュース速報です。○○市の住宅街、××アパートで火事が起こったもようです』
まゆ「あら、Pさん……ここ、Pさんのアパートじゃ」
P「えっ、ほ、本当だ……!」
ちひろ「えっ! 火事ですか!」
TV『出火の原因は不明。近隣の家屋に燃え移る前に消し止められました』
TV『奇跡的に三階の二号室が全焼したに留まり、他の部屋は火災の影響を受けませんでした』
まゆ「この部屋、Pさんの部屋じゃ……」
P「なんでよりによって俺の部屋だけ……」
TV『幸い、けが人はいませんでした』
TV『ニュースを終わります』
まゆ「…………」
ちひろ「…………」
P「…………本当に燃えるとは」
ちひろ「……あの、Pさん、気を落とさないで」
P「え、ええ、わかっています。こういうときの為に、俺は訓練をしたんですとも」
まゆ「Pさん。今こそ、私の部屋に泊まるべきじゃないですか」
P「う、うむ……そうかもしれない」
ちひろ「だ、ダメです! プロデューサーがアイドルの家に居候なんて!」
P「じゃあ、俺はどうすればいいんですか!」
まゆ「そうですよ、鬼ですか貴方は!」
ちひろ「違います、私だって鬼じゃないです!」
P「じゃ、じゃあ……!」
ちひろ「わ、私の部屋に泊まったらいいじゃないですか!」ポッ
P「なるほど!!」
まゆ「なるほどじゃないですよぉ!」ヒーン
終わりまゆ。
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