モバP「コアラニナル」 (64)
P「おはようございます」ガチャ
ちひろ「おはようございます」
仁奈「P、おはようごぜーますっ」
P「仁奈もおはよう。――ところでそいつは…今年初の、おにゅーのきぐるみだな?」
仁奈「分かりやがったですか。見ての通り……コアラでごぜーますよ」
P「コアラか、さすがは仁奈だな…似合っているよ。
――だけど、今年の動物さんからして……馬のきぐるみじゃななかったのか?」
仁奈「馬は今度のお仕事で乗りやがりますよ?
馬が馬に乗るのも変でごぜーますから、また別のきぐるみを着るでごぜーます」
P「なるほどな」
仁奈「でも…」
P「ん?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389795261
仁奈「まだコアラの気持ちになり切れてねーのです…」
P「えっ…そうなのか。それは、どうしてなんだ?」
仁奈「実は仁奈は本物のコアラを見たことがねーのでごぜーます」
ちひろ「ああ、そういえば…こないだのイベントで行った動物園には、いませんでしたよね…コアラ」
仁奈「こないだコアラっぽくない所を、保奈美おねーさんや仁美おねーさんに言われたでごぜーます」シュン…
P「そうか…まあ、仁奈のきぐるみにかける情熱は本物だもんな……
――よし、だったら仁奈がコアラをモノにするためにも、一肌脱ごうじゃないか……何でも言ってくれ」
仁奈「本当でごぜーますか!? だったら――」
http://i.imgur.com/RK1t2cd.jpg
http://i.imgur.com/byGNNhV.jpg
西川保奈美(16)
http://i.imgur.com/f8Qv08D.jpg
http://i.imgur.com/ZZBli6f.jpg
丹羽仁美(18)
http://i.imgur.com/B2m9eRF.jpg
P「…」プルプル
ちひろ「~~~~ッッッ!!!」
仁奈「P、似合っているでごぜーますよっ♪ これで仁奈とお揃いでごぜーますな!」キャッキャッ
杉坂海「ふふっ…どうだい、ウチのお裁縫スキルは?
――仁奈ちゃんのソレを元に、コアラのきぐるみをPさん用に作るくらい、御覧の通り朝飯前だよっ」
P「…う、うん…ありがとな、海(まさかこんな歳になって、こんな服を着ることになるとは思わなかった…)」ボソ
ちひろ「…クハッ…プフゥウウ…ッ……ダメ…ダメよちっひー…笑っては…笑っテハイケナイ」ピクピク
P「…」ギロッ
ちひろ「はっ!! …さ、さーて仕事の続き続き」プイ
P「(後で覚えてろよ…)しかし、何も俺まで着る必要はあったのか?」
仁奈「コアラだからでごぜーますよ。だからPにも着てもらいたかったのでごぜーますっ」
P「は、はぁ…」
たしかユーカリは毒あって常に下痢気味とか聞いたな
>>6
お腹空いた、ユーカリの葉食べよ
↓
葉の毒でお腹の調子が悪い、毒を中和して消化するまで1日中寝てよ
↓
今日もよく寝たなあ、お腹空いたしユーカリの葉食べよ
こんな感じ
保奈美「おはようございま――」ガチャ
P「あ、保奈美…おは――」
保奈美「」ブハッ
P「うぐっ…まあ、そうなるよなあ」
保奈美「仁奈ちゃんはともかく……なぜPさんまでコアラの恰好を……?!」
仁奈「仁奈がコアラの気持ちになるために……Pにもコアラの気持ちになってもらいやがります」
保奈美「そ、そうなんだ」
仁美「おはようございま――」ガチャ
仁美「」ブハッ
P「ええ、そらそうでしょうともガッデム!」
仁美「あははは、プロデューサーったら、扉を開けたらそのカッコって闇討ち過ぎるぅ!!」
P「くっ……だが、これも仁奈の為だからな。っていうか、そもそもお前たち二人が指摘するからこうなったんだろうに…」
保奈美「ええ…さすがにそれは言いがかりじゃない?」
仁奈「仁奈はかまわないでごぜーます。きぐるみを究めるためなら、どんな話でも聞きますし、なんでもしますですよ」
P「……仁奈は本当に凄いな。このストイックさは、どこかのにわかさんにも見習ってほしいもんだ…」
仁美「あーっ、酷いなあプロデューサー。アタシは慶次様一筋で十分なんだからっ」
保奈美「それにしても、Pさんがスーツ以外の服を着ているのって、新鮮ね」
仁美「そうだね……それにその横のフサフサ。どことなく無双の前田慶次っぽくない?」
P「そ、そうなのか?
――ま、だけど…ちゃんとこの下に…いつも通りスーツは着ているんだぜ?」ヌギッ
保奈美・仁美「えっ」
仁奈「あーっ、P、ダメでごぜーます! 脱いだら、せっかくなりかけていたコアラの気持ちが逃げやがりますよ?!」
P「おっと、すまない」クイッ
保奈美・仁美「…」
P「それで仁奈……ここから、どうやったらコアラの気持ちが掴めるんだ?」
仁奈「はじめに……Pはコアラと言えば、どんな生き物か知ってるでごぜーますか」
P「そうだな…コアラはオーストラリアに住んでいる生き物で……いつも木にしがみ付いているよな」
仁奈「うんうんそれそれ、仁奈もテレビで見たことがあるでごぜーますっ」
仁奈「だから…」スタスタ
仁奈「えいっ!」
P「!」
保奈美「きゃっ?! に、仁奈ちゃん……?」
仁奈「えへへ……コアラの気持ちになるですよ」ギュッ
仁奈「――と、こんな感じに、木にしがみつくのでごぜーます」
保奈美「えっ、私…木なの?!」
P・仁美「…」
仁奈「…ん? 早くPもしやがるといいのです」
P「俺も?!」
仁美「そしてこの流れだと、Pさんの抱き着く木って……まさかアタシ?!」
P「仁奈、さすがにそういうのはな……」
仁奈「コアラはいっつも何かに抱きついているでごぜーますよ…Pは何でもするって言いやがりましたよ」ジッ
P「うっ」
仁美「――そこまで言うなら、仕方ないね…」
P「えっ、仁美…さん?」
仁美「別にアタシはPさんの事嫌いじゃないし。むしろPさんになら…だって…」
保奈美「だって?」
仁美「今のPさんってぇ、やっぱり慶次様っぽいしっ♪ うん、声はうえだっぽくないけど、脳内再生すれば問題ないし!」
仁美「というわけで、さあさ前田P次様!! 仁美の心の準備は万端だよ、家紋!!」クイックイッ
保奈美「仁美ちゃん…」
P「…全然嬉しくねえ」
P「…それじゃ、抱き着くぞ。嫌だったらはっきりと言ってくれよ」
仁美「まさか? どうぞどうぞ」
P「…」ぎゅっ
仁美「あっ…」
P「どうした?」
仁美「な、なんでもないよ」
仁美「(――考えてみたらこういうの、アタシ初めてなんだった……でも、これは……何か良い……イケる!)」
仁美「うひ……ひ…」破顔(ニィイ)
P「お、おい、仁美…なんだかアブない顔しているぞお前ッ…」
保奈美「(仁美ちゃんたら……でも、ちょっと羨ましいかも)」
仁美「…ぷ、プロデューサー、お願いがあるんだ……あのね…」
凛「おはようございます」ガチャ
仁美「アタシの事、もっと強く抱いて!!」
凛「」
凛「えっ」
仁美・保奈美・P「あっ…」
早苗「何してんのかなあPくんはぁ」ギリギリギリ
P「ぐええええっ」メキメキメキ
仁美「ぷ、プロデューサーっ!!」
――渋谷凛が片桐早苗を呼ぶまでのタイムはわずか0.05秒に過ぎない。では通報プロセスをもう一度見てみよう。
・・・
・・
・
仁美『アタシの事、もっと強く抱いて!!』
凛『』
凛『えっ』
仁美・保奈美・P『あっ…』
凛『』サッ、ピポパ、ツツー
『もしもし、どうしたの? あ、またPくんでしょ? OK!』プツン
凛『…プロデューサーのばか』バタン
P『!! 凛、誤解だ、待ってく――』ガチャ
早苗『ハロー☆』
P『』
・・・
・・
・
P「」ボロッ
早苗「えっ……誤解だったの? ご、ごめんPくん……ついパブロフの犬的に体が…」
仁奈「ひでーことしやがります」
早苗「本当にごめんね……凛ちゃんにも説明してくるからっ」バタン
P「くっ…」ムクリ
仁美「あ、あちゃー」
保奈美「ついてないわね、Pさん」
仁美「ごめんねプロデューサー、アタシが変な事口走ったばっかりに…」
P「いや…たとえ仁美が黙っていようが、このカッコであんな事してたんじゃあ、どっちにしろ誤解されていたよ」
保奈美「そ、そうよね…」
仁奈「それで…どうでごぜーますか? コアラの気持ち、分かったでごぜーますか」
P「うーん、それはまだなぁ…」
保奈美「! そ、それじゃ、Pさん、今度は私なんかどう――」
凜「プロデューサー…」ガチャ
P「!」
仁奈「あ、凛おねーさん! 戻ってきやがりましたか」
凜「そ、その……さっきはごめん。あんまりにも衝撃的だったから、すごくショックで…」
P「凛…お前…? い、いや、俺のほうこそ悪かったよ、変なもの見せて」
仁美「えっ、ひどくない? 結構堪能していたのにっ」
凜「ううん、それでね……お願いがあるんだけど。わ、私のことも……抱きしめてほしいかな……なんて」
保奈美「!」
P「り、凛…? (やけに積極的だな……)まあ、それで許してくれるのなら、別にいいけどさ…」
凜「…いいよ、来て」ドキドキ
仁美「ひひ……渋谷っち、顔真っ赤で可愛いなぁ」
P「こら、茶化すなよ……それじゃ…失礼」ギュッ
凜「あっ」
P「…」
凜「…いい、すごくいいよ、プロデューサー」ギュウウ
保奈美「凛ちゃん……すごく恍惚としているわね」
仁美「うんうん、分かるよ渋谷っち。プロデューサーのハグは天王山って感じだからねっ」
仁奈「? でも、凛おねーさん幸せそうでごぜーますっ」
P「…」
凜「…どうしたの? プロデューサー」
P「――じゃない…」
仁美「?」
P「――お前、『凛』じゃないな? 何者だ!?」バッ
凜「!!」
凛「ぷ、プロデューサー、さっきはごめん!! って…えっ?!」ガチャ
凜「あ、凛ちゃん……」
凜「…ふふ」スチャ
凜「ふふふっ…バレてしまっては、仕方がないですね…」バリバリバリ
仁美「あ、お前は!」
雪菜「『しぶりん顔真っ赤大作戦』があと少しで…成功すると思っていたのに!」バン!
保奈美「メイクの魔術師、井村雪菜っ!!」
雪菜「嫉妬に苦しむ凛ちゃんが可愛いので、ついカッとなってやった…今では、すっきりしているわ、それじゃ」ダッ
凛「あっ…待てぇ!!」ダッ
P「…」
P「だいぶ話が逸れてしまったようだが……仁奈はどうだ? コアラの気持ち、わかったかな」
仁奈「やっぱり、まだ分からねーでごぜーます」
P「そうか…なら本物……あ、見たことがないんだったな。」
仁奈「動物園に連れて行ってもらったことは…あんまりねーのです」
保奈美「仁奈ちゃんは家族揃ってどこかに行くこと自体、少ないのよね」
仁美「そ、そうなんだ…」
仁奈「…」シュン
P「仁奈……よし、分かった。俺に任せろ」
仁奈「P!」
P「今度の週末には休みを取ろう。見せてやるよ、本物のコアラってやつを…な?」
第二部/コアラと仁奈編
コアラ「…」ノソリ
仁奈「おおおーっ」
仁奈「P、み、見やがりましたか!! あれがコアラでごぜーますよっ!!」パアア
P「うん、見てる見てる。はは、葉っぱをもしゃもしゃ食べているな」
仁奈「お食事でごぜーます!」キャッキャ
保奈美「仁奈ちゃん、嬉しそうね」
P「うん、そうだな…」
仁美「でも、アタシたちまで良かったの? 何だか悪いなあって…」
P「いやいや…今回は俺のも含め五人分…何と、ちひろさんの全額持ちなんだ」
仁美「マジで?!」
P「マジで」
P「(…お元気でしょうか、ちひろさん。あなたのご助力もあって今、私たちは仁奈にコアラを見せるために動物園にやってきました)」
P「…」
現地人A「Oh, イズザットジャパニーズコアラ? ハウクレイジー」
現地人B「HAHAHAHA」
P「(…はるばる南オーストラリア州はアデレードの動物園、『クリーランドワイルドライフパーク』まで…)」
ちっひの自腹!?
仁美「しかし、何もわざわざこんなところまで来ることはなかったんじゃない?」
P「だよなぁ。俺も本当なら多摩動物公園のオーストラリア園で良いと思っていたんだよ。
でも、ちひろさんにその事を話したら……まさかモノホンのオーストラリアに来ることになるとは…」
保奈美「ホント、一体どういう風の吹き回しなんでしょうね…」
P「…」
仁奈「P、そろそろ時間でごぜーますよ!」
P「時間?」
梨沙「もう、アンタ忘れたの? 『コアラセッション』に決まってるじゃない」
P「おっと…そうだったな。さすがはコアラにハグされたアイドルだけの事はある」
梨沙「ふふん♪ あとカメラを回すのも忘れないでよね、後でパパに送るんだから!」
P「へいへい」
――簡単に補足しておくと、クリーランドワイルドライフパークは、
アデレード郊外・アデレードヒルズの入口、マウントロフティに位置する開放型の野生森林保護地区である。
ここでは、コアラやカンガルーを初めとする、オーストラリアの野生動物達が放し飼いにされており、
そのいずれもが人間慣れしているので、観光客は餌をやったり、撫でるなど……見るだけでなく、実際に触れ合えるのが特徴でだ。
梨沙「爪が鋭いわよ、なるべく肌は出さないほうがいいわ」
P「それはお前が言えたことなのか……?」
梨沙「う、うるさいわね」バッ
ガイド「重かったら、無理せず言ってくださいね」
コアラ「…」ヒシッ
仁奈「おおおっ?! これが……コアラのハグでごぜーますか!」フラッ
梨沙「あ、危ない」ガシ
仁奈「梨沙おねーちゃん♪」
梨沙「…世話が焼けるわね」プイ
http://i.imgur.com/ieVX1NP.jpg
http://i.imgur.com/O9MpRE0.jpg
杉坂海(18)
http://i.imgur.com/commaJs.jpg
http://i.imgur.com/cdmiBqY.jpg
渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/58Kp2BA.jpg
http://i.imgur.com/5cjqTqx.jpg
片桐早苗(28)
http://i.imgur.com/dEjMe4S.jpg
http://i.imgur.com/1QMCmhv.jpg
的場梨沙(12)
P「コアラを抱く仁奈、それを抱くように支える梨沙。なんか面白い構図だな」カシャ
梨沙「ちょ、ちょっと…そこで撮るわけ? 恥ずかしいわ、それパパに送るのはナシね」
P「えぇ? 的場さんに送るには良い一枚だと思うけど」カシャ
梨沙「えっ…パパが喜ぶの?」
保奈美「そうね。仁奈ちゃんの面倒見ているんだから、お姉さんっぽく…いえ、大人って感じよ」
仁美「うんうん、確かに的場っちが活躍しているっぽく見えるし」
梨沙「そう……なら、もっと撮りなさい。予備のメモリーカードもまだたくさんあるからっ!」
P「そんなには撮らないよ。――ところで、どうだ仁奈、コアラの感触は?」
コアラ「…」ギュー
仁奈「ずっしりしていやがって…それでぎゅっとしてきやがります」ギュッ
梨沙「ふふ、そうでしょ、そうでしょ♪」ギュー
仁奈「それから…ふわふわの、もこもこしているでごぜーます」
梨沙「へえ、ちょっと失礼……本当だ。あたしが触ったときはちょっとゴワゴワしてたけど…厚めの絨毯みたいな手触りだったわ」
保奈美「そう、かつてはその毛皮を売るために、移民によって大量のコアラが殺されたこともあったそうよ」
仁奈・梨沙「!」
保奈美「今は法律や条約で禁止されているけどね……でも乱獲の結果、コアラの数は激減し、
事実ここ南オーストラリアに住んでいたコアラは、1924年の時点で既に絶滅してしまっているのよ」
梨沙「――それじゃ、仁奈が今だっこしてるコアラは…」
仁奈「…」ギュ…
保奈美「きっと別の地域から連れてきたコアラね……それも、コアラは
それぞれの地域で決まった種類のユーカリしか食べないから、移住させるのには苦労したんじゃないかしら」
ガイド「撮影時間は以上で終了です」
コアラ「…」スッ
仁奈「ばいばい、コアラさん…」
梨沙「…」
P「仁奈…」
仁美「ちょっと保奈美っち…」
保奈美「あっ…ご、ごめんなさい二人共…せっかく楽しんでいたのに、水を注すような話をしちゃって…」
仁奈「いいんでごぜーます。仁奈はコアラさんをただ可愛いとしか思ってなくて、コアラさんの本当の気持ちなんかこれっぽっちも分かってなかったんでごぜーます」
梨沙「仁奈…そうね。コアラみたいにあんまり可愛いと、酷い目にあったり、色々苦労したりするのよ、きっと」
仁奈「梨沙おねーちゃん」
梨沙「ほらアタシだって、ファンにはキモいの多いし。プロデューサーは変態だし。これってさ、アイドル動物にシンパシーってやつ?」
P「梨沙……お前……あとで的場さんに国際電話するからな……マジで」カシャ
梨沙「ちょっ、プロデューサー?!」
仁奈「P」
P「どうした仁奈? ――おっと」
仁奈「コアラの気持ちに……少しだけなれた気がするでごぜーます」ギュ…
P「そうか…ここに来られて、本当に良かったな」ナデナデ
仁美「あはっ、二人共……本当の親子みたいね」
梨沙「そうね…だって」プルプル
保奈美「仁奈ちゃんはともかく、Pさんまでコアラスーツなんだし…」プクク…
――コアラに別れを告げた後も園内散策は続いた。
ウォンバット「…」モゴモゴ
P「なんだこの動物はッ?!」
仁美「デカいけどブサ可愛いね」
保奈美「ウォンバットって言うそうよ。コアラやカンガルーと同じく、袋で子供を育てるんだって」
P「コアラの事といい、保奈美は動物に詳しいよなぁ…一緒に来てくれて、助かるよ」
保奈美「そ、それは来る前に勉強したから……でも、ありがと」
梨沙「よし、せっかくだから、アタシはこの子を抱っこするわ。コアラの次はウォンバットよ!」グッ
ウォンバット「…」モソモソ
梨沙「…ってか重たッ?! 何こいつ……見た目より重量あるんじゃないの?」グググッ
ウォンバット「~♪」グイグイッ
梨沙「きゃっ?!」ドサッ
仁美「的場っちがウォンバットに抱き着かれた!?」
仁奈「梨沙おねーちゃん、大丈夫でごぜーますか?!」
ウォンバット「~♪」スリスリ
梨沙「あわわわ…」
仁美「あらら」
P「向こうはめっちゃ抱っこしてほしいようだな」カシャシャシャ
保奈美「元々おとなしい性格に加え、ここでは人間慣れしているから、尚の事ね。ただし、大きい個体なら、体重は20~30kgくらいあるわよ」
梨沙「それを早く言ってちょうだい、あとプロデューサーも写真撮ってないで助けてよ!!」
――こうして的場梨沙のよく分からない自慢の一つに、「ウォンバットに押し倒されたことがある」が加わった。
――その日の夜。
P「ふう、今日は一日中歩き回っていたな…」
仁奈「…コアラの気持ちになるですよ」ムニャ
保奈美「Pさん、お疲れ様。仁奈ちゃんの抱っこ、代わるわよ」
P「ああ、頼む」
仁美「明日はどうするの?」
P「目的は果たしたからな。最終日は、市内を自由行動ってことでどうだ?」
梨沙「やったっ! パパにお土産買っていこうっと……」
P「単独は駄目、必ず二、三人以上で行動。それからあんまり遠くに行くんじゃないぞ?」
保奈美「わかったわ。それじゃ、おやすみなさい」ガチャ
P「ああ、おやすみ」バタン
P「…」
P「さて、いよいよ仕事の時間か…」
…次の日
保奈美「さて、今日はどこを見て回ろうかしら?」
仁美「とりあえず、ちひろさん達へのお土産は当然として……あ、ロビーにいるのは…的場っち?」
梨沙「それって、どういうことよ?!」
フロントマン『も、申し訳ございません…』
仁奈「P…」
保奈美「梨沙ちゃん。何かあったの?」
梨沙「保奈美…それがプロデューサーが……」
仁奈「Pが、何も言わずに出て行きやがったんでごぜーます!」
仁美・保奈美「えっ?!」
保奈美「Pさんはどちらに出かけたんですか?」
フロントマン『そこまでは教えてくれず……もしかしたら、ボーイなら何か聞いているかもしれません』
・・・
ボーイ『ああ、あのコアラの恰好をした日本人だな? タクシーを使ってここを出て行ったぜ。行先は…詳しくは言っていなかったが、街を出てずっと北東の方のエリアだな…』
仁美「な、なんでまたそんなことを……」
ボーイ『うーん、ちょっと焦っていた様子だったぜ。だけど、あいつ大丈夫かな……?』
保奈美「というのは?」
ボーイ『彼が向かった先なんだがな……アボリジナル…つまり原住民の集落があるんだ』
梨沙「えっ?! 大丈夫なの…」
ボーイ『ああ、そんな危険な奴らじゃあないよ。……もっとも、こちらから何もしなければ…な?』
保奈美「――何もしなければ…か」
仁奈「…何かしやがったら、どうなるでごぜーますか?!」
ボーイ『さあな……確かここ一、二年で日本人が一人…その集落へ向かったんだが…帰ってこなかった噂があるんだ』
仁美「嘘っ? や、ヤバいじゃん!」
保奈美「タクシーをお願い! 私たちも、そこへ向かうわよ!!」
・・・
・・
・
とある集落にて
保奈美「政府からの許可証も発行済みだなんて……Pさん、いえ恐らくはちひろさんの根回しによるものね」
仁美「ついでにアタシ達のまで発行してあるんだもんね…おかげで、すんなり入れたけどさ」
梨沙「あ、あれ…Pじゃない? おーい!!」タタッ
P「あ、梨沙……どうしてお前たちがここに?」ギチギチ
仁奈「P、どうして縛られているんでごぜーますか?!」
村人『ゾレザボンゴオボガ ブグリゾザタラギタバラザ』
仁奈「?!」
梨沙「! な、なんて言っているのこの人?」
P「ああ…正確には分からないが、たぶん『この男が禁を破ったからだ』と言っていると思うぞ」
保奈美「えっ…Pさん一体何をやったのよ…?」
仁美「っていうか、プロデューサーはこの人たちの言葉が分かるんだ」
P「ちひろさんから、ある程度教えてもらったからな…」
梨沙「またちひろね……アイツに何を吹き込まれたのよ」
仁美「ま、まさか今回の旅行をちひろさんが許可したのと関係あるんじゃない…?」
P「察しがいいな。実は…BPドリンクの原料となる薬草が、このあたりにしか生えていないらしくてな。
――それでちひろさんに、旅行のついでに採ってくるように言われたんだが……」
村人A「ボングガザ ワレワレン バリガリビガガゲスジャグゾグザ!!」
村人B「アグラヨリ ゴゾソギギ チヒロ ン ズバギザ ッタオザバ!!」
P「採っちゃいけない植物だったらしくて、こうしてお怒りを買ってしまったわけだ……はは」
保奈美「笑い事じゃないわよ! それで、大丈夫なのPさん…許してもらえそう?」
仁奈「許してくれなかったら……どうするでごぜーますか?」
P「さあなぁ…おい、ジャグゾグザバエグ ゴレザユスギデモラエスバ?」
村人B「ゴラエンギョググザ ゾグチョグガ モゾッタラ キレス」
P「村の偉い人が帰ってきたら、決めるらしい。最悪死ぬかもな……」
仁美「そ、そんなっ!?」
村人C「ゴガガ ゴバエリザ リバ アズラレ!!」
P「お、噂をすれば影……どうやら、戻ってきたらしいな」
村人A「ゾグチョグ ジズザ ブグリゾザタラギタ ビホンジン ガ ギラグ」
族長「…ワバッタ グボギラッデグレ」
仁奈「!!」
梨沙「…えっ?! あれが村の長…なの?!」
P「驚いた…日本人だったのか」
保奈美「それじゃ、ボーイさんが言っていた『帰ってこない日本人』って…」
仁美「アイツのことだったのね!」
仁奈「…」
梨沙「…ん? どうしたの仁奈…」
仁奈「…」
族長「…ビバ?」
仁奈「…パパ?」
梨沙・保奈美・仁美・P「「「「えっ!?」」」」
・・・
・・
・
族長「アバタガ ビバン プソデューガーデギタバ!! ワタギガビバン ママデグ」
P「いやあこちらこそ初めましてですよ。
――考えてみたら仁奈のご家族では、奥さんとしか会ってなかったので…あなたと実際にお会いするのは、これが初めてになりますね」
仁奈「パパ! 会いたかったでごぜーますっ」ギュッ
族長「ビバ グッバリ ゴゴキグバッタバ。ギッギュン ザレバ ワバラババッタゾ?」ナデナデ
仁奈「ふふ、何言ってるか分からねーでごぜーます♪」
保奈美「驚いた……海外で働いている…と聞いてはいたけど…」
仁美「ねぇ?」
族長「ギュッチョグデ ゾグチョグゾ ジャッデゴリラグ♪」
P「出張で族長をやっている、らしいぞ」
梨沙「どういう仕事よ?!」
村人A「ゴガ ボギズゾ ゾグガレラグバ?」
族長「ボンゴオボザ チヒロ ト バンベギザ アスガ アグランデガキ デザバギ
ワタギン ムグレン ギョグラギン ムボザ」
村人B「バンオ ゾグチョグン ユグジンデ ゴレーラギタバ!
――ザジャグバワゾ ゴオキグスンザ!!」
村人A「ギズレギギタギラギタ ギバギジャグゾグザ アキラレデグザガギ」シュルル
P「おっ…許してくれたらしい。だけど、薬草はあきらめなきゃいけないようだ…残念」
保奈美「当たり前よ。大体、持ち出したとしても空港の検査で引っかかるに決まっているわ」
仁美「そうそう…命があるだけマシと思わなきゃ…ね?」
梨沙「バーカ…心配したんだから」ギュッ
P「ああ、そうだな。みんな、心配かけてしまって……ごめんな」
族長「ビバザ ギギプソデューガー オ デアエタヨグデグバ」ニコニコ
仁奈「?」
・・・
・・
・
族長「ゾレデザ ビバンボオ ボレバラモヨソギグゴネガギギラグネ」
P「――分かりました。娘さんは、必ず俺がトップアイドルにしてみせますよ」
仁奈「パパ…一緒に帰ってくれねーのでごぜーますか?」シュン
族長「ビバ…」
P「仁奈……パパさんにはまだ、ここでやらなきゃいけないコトが、たくさんあるんだ。許してやってくれ…」ギュッ…
族長「ビバ…ボンバワタギゾ ユスギデグレ。ゴラエザ プソデューガージャ リント オ ギッギョビ ギキスンザ」
P「ほら……パパさんもこう言っているんだし…な?」
仁美「いや、全然分からないってば」
梨沙「うん」
保奈美「でもまあ、一応は決着ね」
仁奈「…」
仁奈「……何言っているかは、やっぱりわかんねーですけど、でも…パパが仁奈と一緒で頑張っていることだけは分かったでごぜーます」グス
族長「…ビバ」
仁奈「――でも、たまには帰ってきやがるといいです……仁奈はそれまでに……アイドルとしてもっと頑張りやがりますから!」ニコッ
P「仁奈…」
――父親と思わぬ再会を果たしたものの、結局のところ共に過ごせる時間がほんの僅かだった仁奈。
帰り際はとても寂しそうな様子であったが、コアラの件も含めて今回の旅は、彼女にとって大きな糧となっただろう。
私もまた…仁奈パパとの約束、そしてプロデューサーとしても仁奈たちを絶対トップアイドルへと導く、改めてそう決意出来た。
こうして我々のオーストラリア旅行は、終わりを迎えたのであった。
グロンギ語に「ワ」や「ユ」、あと「オ」はなかったはず
つまりこれは半グロンギ語だ、間違いない
・・・
・・
・
P「――というわけです。採ってこれなくって、すいませんでした」
ちひろ「まあ、仕方ないですね……ほかの材料で代用は出来ますから、今回は諦めましょう」
凛「そもそもドリンクに何を混ぜているの、ちひろさんは…」
ちひろ「それは秘密です」
雪菜「Pさん! このジュリーク、私へのお土産ですか…? 嬉しいっ♪」
海「それにこっちは地元のクラッカーか。ふふ、結構楽しんできたみたいだね……皆いいなあ、ウチも行きたかったなー」
仁美「まあ、ちひろさんがまた何かよからぬことを考えていたら…ね」
保奈美「そうね…」
ちひろ「も、もう、みんな人聞きの悪いことを…」
ガチャ
仁奈「…P、おはようでごぜーます!」
梨沙「――おはよう」
P「おはよう。――昨日はよく休めたか?」
仁奈「たっぷり寝やがりました」
梨沙「パパに写真見せてあげたわ。すっごい喜んでいたの! ま、さすがはアタシのプロデューサーね」フフン
P「そっか。…あ、それと写真と言えば、お前たちにも渡したいものがあってな」
仁奈・梨沙「?」
P「ほら、こういうのは写真屋さんにちゃんとお願いしたいと思ってさ」スッ
仁奈「わあ!」
梨沙「記念写真かあ。中々粋な事するじゃない♪ これも帰ったらパパに見せてあげよっと」
海「どれどれ……えっ?!」
雪菜「どうしたんですか?」
凛「プロデューサーってば……」
ちひろ「……その恰好でオーストラリアに行ったんですか?!」
P「あれ、問題あったかな?」
仁美「ああ~、アタシ達もすっかり見慣れちゃっていたけど」
保奈美「Pさん、ずっとコアラスーツのままだったわね」
仁奈「問題ねーですよ! だって仁奈のプロデューサーでごぜーますから♪」ギュッ
P「だよな?」ギュッ
ちひろ「…二人そろってコアラ、しかもそうやって抱っこしていると……本当、親子みたいですね」
P「コアラの親子か。俺はママじゃあないんですけどね……あっ」
梨沙「どうしたの?」
P「(もしかして、仁奈が俺にコアラスーツを着せた理由って……)」
仁奈「…P? 仁奈の顔に何かついてやがりますか?」
P「――いや、何でもないよ」
P「(俺の思い過ごしかな? それとも――)」
仁奈「次はウォンバットの気持ちになるですよ!」
お し ま い
P「ところで、早苗さんはどうしました?」
ちひろ「ちょっと遅れる、って言ってましたけど」
P「そうでしたか…早苗さんにもお土産持ってきたんですけどね、リコリスっていうお菓子で…」
「おはようございまーす」ガチャ
P「あ、その声は早苗さ――んなっ?!」
早苗「ふふっ、驚いたPくん? あたしもコアラスーツ着ちゃいました♪」
凛「!?」
P「どうしてまたそんな」
早苗「それは…こうするためだ、えいっ」ギュッ
P「うおっ?! やわらかっ……!」
早苗「こないだのお詫びと言っちゃなんだけど……どう、こんなあたしも?
――いつものシメるのとは違う意味で、クるでしょ?」
P「…否定できない」ドキドキ
仁奈「早苗おねーさんもコアラでごぜーますか! 仁奈たち、新しい家族になれそーでごぜーます!」
早苗「えっマジで?! やだなあ仁奈ちゃんたら、でもあたしもやぶさかではないかも……Pくんがあたしの…ふふっ」ニヤリ
P「あ、あははは…」
凛・海・保奈美「…」
その後、杉坂さんへのキグルミ発注数が大幅にアップしたり、
千川が例の植物の苗を密かに持ち出し&栽培していたことが警察の調べで判明したり、
梨沙の結婚式に向かう途中、Pが通り魔に刺されたりするのだが、それはまた別のお話……
<今度こそおわり>
※>>34以降の展開は完全にフィクションです。部族・言語は実際のソレとは一切関係ありません。
訂正
>>1
×:また別のきぐるみを着るでごぜーます
○:また別のキグルミを着るでごぜーます
>>10
×:どんな話でも聞きますし、なんでもしますですよ
○:どんな話でも聞きやがりますし、なんでもしますですよ
×:どことなく無双の前田慶次っぽくない?
○:どことなく無双の慶次様っぽくない?
>>12
×:仁美「そしてこの流れだと、Pさんの抱き着く木って……まさかアタシ?!」
○:仁美「そしてこの流れだと、プロデューサーの抱き着く木って……まさかアタシ?!」
>>13
×:仁美「別にアタシはPさんの事嫌いじゃないし。むしろPさんになら…だって…」
○:仁美「別にアタシはプロデューサーの事嫌いじゃないし。むしろプロデューサーになら…だって…」
×:今のPさんって
○:今のプロデューサーって
>>17
×:あんまりにも衝撃的だったから、すごくショックで…
○:あんまりにも衝撃的だったから、つい反射的に…
>>23
×:イズザットジャパニーズコアラ?
○:イズザッタジャパニーズコアラ?
>>27
×:実際に触れ合えるのが特徴でだ。
○:実際に触れ合えるのが特徴だ。
>>35
×:……アボリジナル…つまり原住民の集落があるんだ
○:……確か、原住民の集落があるんだ
訂正は以上です。
>>2、4、28で画像下さった方も、ありがとうございました。
ついでに>>28はIDにビックリしました。
>>50
某サイトの変換機能を利用させて頂いたので、完全再現ではないと思います、悪しからず。
HTML化依頼もしておきます。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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