勇者「プレイヤー通りに行動するとは限らない」 (10)

第1章ー序章ー

勇者「私は勇者である。名前はまだない。」

勇者「私は常に私自身を操作するプレイヤーの言うことに従っている。」

プレイヤー「お、オープニングが始まったぞ!面白そうだな。」

勇者「画面越しのこの人が私のプレイヤーだ。」

パーパーパーパラー

プレイヤー「うおおおおお!すげぇっ!!ー

勇者「ゲームを買ったプレイヤーはいつもオープニングの時がテンションのピークである。」

勇者「こっからどんな冒険が始まるんだろう?どんな仲間に会えるんだろう?………それを考える時間が一番楽しいんだと思われる。」

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?「あなたの名前を教えてくれますか?」

▼プレイヤーの名前を教えてください。

勇者「大体のゲームは誰!?と思いたくなる人が名前を尋ねてくる。ポ○モンの博士はまだ自分の名前を名乗っているから良い。問題はド○クエ3だ。滝を眺めながら名前を聞かれ、質問をされ、挙げ句の果てには石を運ばされる。私は奴隷ではないのだ。なぜそこまでしないといけない。」

プレイヤー「名前か………よし!」

▼「おっ○い」で本当によろしいのですか?

勇者「バカなプレイヤーは一回ふざける。」

▼はい いいえ

ポチッ

▼一般的に見ると恥ずかしい名前ですが本当によろしいのですか?

勇者「恥ずかしい名前を入れると二度聞きしてくることがある。これは私のためを思って製作者がこのためだけに作った質問だ。大抵のプレイヤーは…」

プレイヤー「やっぱやめとこ……」

勇者「ここで自分の愚かさに気づく。製作者の方に感謝をしておこう。だが、一つだけ不満がある。」

勇者「恥ずかしい名前を入れると二度聞きするシステムを作るぐらいならもう少し違うところにも力を入れて欲しい。肝心の所でバグが起きたりするとそれを思ってしまう。」

▼「ユーキリス」でよろしいのですか?

勇者「他にも有名人の名前を主人公の名前にしたりもする。だが、ほとんどの人は…」

プレイヤー「違うな………」

勇者「途中でやめる。なぜなら主人公の気持ちになってプレイができないからだ。そんなプレイヤーが決まって入力する名前が…」

▼「ユウキ」でよろしいのですか?

プレイヤー「これが無難かな?」

勇者「無難である。」

勇者「そう。感情移入ができる自分の本名を入れるパターンが大抵なのだ。だが、私自身はオリジナルの名前をつけてもらいたい。なぜおま…プレイヤーの本名と同じ名前で生きなければならないのだ。「あ、あの人プレイヤーと同じ名前だ!」こんな事を聞かれたら私は画面を壊してしまうかもしれない。」

?「ユウキですね。素晴らしい名前です。」

勇者「この謎の人物はどんな名前でもこの発言をしてくる。」

?「おっ○いですね。素晴らしい名前です。」

勇者「どうだろうか?こいつバカじゃねえの?と思ってしまうでしょ?」

?「あなたはこれからとても過酷な旅に出ます。ですが、いろんな場所で出会う仲間と協力すれば必ず良い旅となるでしょう。それでは頑張ってください。」

勇者「この謎の人物は何様なのだろうか。」

「………………」

「……なさい。」

「……きなさい。」

「ユウキ!起きなさい!」

ガバッ

母「やっと起きた。早く支度をしなさい!マルクス博士が呼んでるわよ!」

勇者「名前を決められた後、75パーセントの確率で母親に起こされ急かされる。頼むから普通の状態で始めさせて欲しい。」

ザッザッ

勇者「家を出るとまず村、または街を探索するのがプレイヤー心理だ。目的の場所は置いといて配置を理解するのだ。だが、ここで気づくことがある。」

プレイヤー「勇者の家村の端っこすぎて不便だな…」

勇者「言われなくて分かっている。大抵の主人公の家は村の左下、または右下に配置されている。これは製作者があえて村を探索させるために配置したものであろう。」

勇者「だが、これはまだマシだ。最悪のパターンは村から離れた所に配置された家だ。「村に行きなさい。」と言われて村に行く………それだったれ最初から村に家を配置しろよ!現実世界なら不便すぎて引っ越しを考えるレベルだ。」

女「おいユウキ!」

勇者「ある程度動くと、男と女が近づいてくる。」

女「またブラブラしてたのか?ユウキらしいな。」

男「バカがやりそうな事だ。」

勇者「1人はショートカットのボーイッシュな女性、もう一人はメガネをかけたクールな男性。話し方からどういったポジションか分かるだろう。」

勇者「そう。《幼馴染》ポジションである。全てのゲームにおいてこのポジションはなくてはならないポジションだ。このポジションがこの先の展開で大きな役割を持っている。」

女「なに?マルクス博士のとこに行くのか?あの博士に何の用だ?」

男「どうせ『あの話』だろう。」

勇者「早速だ。男の方がキーワードを口にした。」

女「あの話?何のことだ?」

男「村を出て冒険に出たいって話だ。こいつが前から話してただろ。」

勇者「勝手に話が進んでいくが、その間私は立ちっぱなしだ。」

………

勇者「しかも、どうやらプレイヤーがトイレに行ったようだ。この間話は止まっている。しかも立ちっぱなしでだ。」

勇者「キリのいい所でトイレに行けよ!!と思ってはいけない。あくまでも私は操作される側なのだから。」

………

勇者「プレイヤーが帰ってきた。オープニングの時と比べるとテンションが落ち着いている。まぁそうなるだろう。話ばっかりが続いているのだから。」

男「おいカーリィ。早く行かないと間に合わないぞ。」

カーリィ「あ、本当だ。また後でな!急ごうザット。」

勇者「去り際に自己紹介。最初から教えてくれ。」

勇者「そして私はマルクス博士の家にたどり着いた。ついにここから物語は進んでいくのだ。」

プレイヤー「ここでセーブして寝るか。」

勇者「………私もここで野宿するか。」

つづく

次の更新は8月中には…

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