【がっこうぐらし】慈「めぐねえハーレム?」【安価】 (1000)

 めぐねえにもし主人公補正があったら――というお話。
 その他にも色々ついてますけど


 注意
 R-18、ふたなり要素(めぐねえのみ)あり、オリキャラ要素あり、オリジナル展開主体、キャラ崩壊

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438704600

 
 
 あの日私は運命の分岐点に立った。

 ――いや。今でも立っていて、道を選んでいる最中なのかもしれない。

 すべてが混沌に包まれ狂気にさらされたあの日。

 すべてが奪われていったあの時。

 日常が消えていったあの瞬間。

 私達は皮肉にも手に入れたのだ。
 選択する『自由』を。

 これは私、佐倉慈の選択の物語である。



『開始前に主人公であるめぐねえのステータスを決めます』

 1・長けていることは?
  体力、精神、力、速さ、賢さ、技術  いずれか一つ選択

 ↓1


 2・自慢できるところはある? いずれか一つ選択
  A 寝れば疲れがすぐとれる疲れ知らずな肉体
  B やりくり上手。節約家
  C 何事も前向きに。ポジティブな思考

 ↓2

『開始時一番高いステータスは技術。初期スキルは良回復。 となりました』
『それでは本編開始でございま』


 なにかの声がする。
 絶えず響く誰かの声。
 それは甲高い悲鳴だったり、低い唸り声だったり――歓声とは完全に違う声の数々。
 似ているのは騒がしいということだけ。
 無秩序で、絶望に満ちた空間。学校とはかけ離れた空気。

慈「……はぁっ、はぁ」

 遠のいていた意識が戻る。
 離れた場所から自分のところへ、まるで視点でも移動しているかのように今度は自分の呼吸音しか聞こえなくなる。
 背中では園芸部のロッカーが揺れていた。
 がたごとと、何かに強く押され、その『何か』が声を出している。
 人間によく似た声で。けれど人間とは思えないおぞましさで。

 息苦しさと吐き気の中、私は懸命にロッカーを押え、思い出す。
 ――嗚呼、そうだ。
 私たちは今、生と死の境目にいるんだ。

 丈槍さん、若狭さん、恵飛須沢さん、そして私。
 私達が今いる学校の屋上は何とか被害から逃れている状況だった。
 突然起こった異変。人が人を襲い、阿鼻叫喚となっている学校の中で唯一と言ってもいい安全な場所だろう。

悠里「先生、一体なにが……」

 私の隣。一緒に出入口を押さえている若狭さんから声がかかる。
 彼女の視線の先には床にへたりこむ丈槍さん、恵飛須沢さんの二人。その目の前には血だらけで倒れる男子生徒がいた。

慈「……分からないわ」

 私が一言で応じると、若狭さんは苦しげな顔をする。
 先生として、年長者として力になってあげたいとは思う。けど今の状況を説明できる人間などいないだろう。

 理解ができなかった。
 異変をこの目で見ても、目の前で生徒が襲われそうになっても。
 思い浮かぶのは、映画などの創作物。その中で度々出てくる動く死体。

 校庭で、屋上で生徒が生徒を襲っている光景。
 そして背後から聞こえるうめき声。
 正気どころか心すらも失った覚束ない動き。
 ――信じられないけど、そういうことなのかもしれない。

慈「けど今は、こうするのが一番なはず」

 校内にはまだ無事な生徒がいるだろう。
 そのことを思うと心苦しいけど、ドアの先へ進める気がしない。無理して全滅なんてしたらお終いだ。
 今は安全を確保して機会を待つしかない。
 もしかしたら、助けも――。

慈(――いや)

 甘えた考えに寄りかかろうとする頭を振り、私は前を見る。
 この状況下で私達に助けがくる可能性なんてゼロに近い。
 ――私が、みんなを護るのだ。
 生徒たちを元気に学校から送り出すこと。それが先生の役割だから。



【今日は短めですが、ここで終わります】

 
 とは言っても今の状況、私にできることはほぼ皆無。
 誰も屋上に入ってこないようにドアを押さえることで手一杯だ。

慈(このままだと……まずいかもしれない)

 体力にはいつか限界がくるもの。
 こうして二十四時間ドアを押さえるというのは現実味のない話だ。
 ――どうすれば。深呼吸。若干よくなった意識で考えてみる。

慈「恵飛須沢さん、丈槍さん。動けるようなら、私達と交代でドアを押さえてもらえるかしら?」

 思いついたことと言えば、それくらい。
 結局現状を打破する策は見つからず。維持することが精一杯らしい。
 時間が経過して何か起こればいいけど……どうなるだろうか。

 
 
 
 結論。私達は命拾いしたみたいだ。

 あれから数時間が経過し、学校で起きている異変に新たな動きがあったのだ。

胡桃「……ふぅ。まさか帰るなんてな」

 そう。『帰った』のだ。
 のろのろと、なにかに導かれるように多くの人達が学校の敷地外に出て行き――学校には静けさがもどった。
 何故移動したのかは分からない。標的がいなくなったからか、もしくはまだ意識が残っているのか。
 ――いずれにせよ、助かった。
 今はドアを押さえる必要もないし、割れた窓から先を見ても、生徒――の姿をした奴らはいない。
 状況を変えるなら、今しかない。
 ドアの前。私達はようやく一息つく。
 当然のことで、みんな疲弊しているようだった。

悠里「ここじゃあジリ貧だし、やっぱり移動した方がいいですよね」

慈「そうね。――丈槍さん、大丈夫?」

 外にも連絡がつかない。助けはしばらく来そうにもない。
 なにが起こっているのかは――予想がつく。
 私達三人はドアを押さえている間、行動を起こす覚悟をする時間があった。
 内心は不安でいっぱいだけれど作戦を話し合うくらいの余裕はある。
 けれど丈槍さんは違うみたいだ。ドアを押さえる必要がなくなり、私達が話をはじめると彼女は私の近くに。口を固く結んで私の服をちょこんと掴んでいる。

由紀「……大丈夫」

 とても大丈夫そうには見えない。
 心配だけど、彼女のためにも今は先に進まないと。
 せめてゆっくり休める場所くらいは……。

慈(どうしよう……)




【教えて! りーさん! のコーナー】


悠里「はい、ということでこれから選択肢やコンマ判定、その他もろもろのシステムが出てくるからチュートリアルよ」

慈「あ、あれっ? 私、先生で――」

悠里「まず、このSSの目的から。それから簡単なルールを説明するわ」


 このSSの目的は主人公であるめぐねえを操作し、生き残ること。エンディングを見ること。
 できることはこれから増えてきますが――現在はステータスとスキル、戦闘などの判定についての説明のみで充分なので、それだけにしておきます。


【ステータス】

『体力』 生命力。0になると死亡
『耐性』 感染への抵抗力――というよりは死亡フラグの数値化したもの。0になると噛まれる。感染
『精神』 精神力。0になると暴走
『力』  腕力や脚力、その他もろもろの力
『速さ』 その名の通り、速さの数値
『賢さ』 頭の良さ
『技術』 手先の器用さ

【スキル】
 キャラ達が持つ特殊な技能。自分が対象だったり他人が対象だったり、その効果は様々。

 

【ルール】

 選択肢を選択すると状況によりコンマ判定が自動的に行われます。
 【例:敵がいる状況で逃げようとする → 速さパラを基準に判定など】
 基本的に>>1が決めるので、どんな選択をしたらどんなステで判定されるのか、それを考えることも重要かもしれません。
 状況にあった選択肢を選ぶことでプラスの補正がかかることもあります。勿論その逆も然り。

 コンマ判定時、ゾロ目が出ることがあると思います。
 ゾロ目奇数がクリティカル。ゾロ目偶数がファンブル。
 クリティカルはいいことが。ファンブルは悪いことが発生。会話選択肢などでも発生するのでご注意を。

 話の都合上原作キャラ死亡、感染は即ゲームオーバー。直前の選択肢や、やり直しできる場面から再開です
 資源がなくなると体力、精神が減少していきます。
 オリジナルキャラは死亡しても感染しても続行。なので自分が出したキャラが死んでも――ご了承を。



悠里「――と、大体こんな感じ」

慈「なるほど……」

悠里「運ゲー要素が強いから、まぁ何事も気軽にね」

悠里「じゃあ、一回目のチュートリアルはこれで終わり」

 また更新少ないですけど今日はここまで


 それと、オリジナルキャラの設定をそれなりな人数になるまで随時募集します。キャラの性別は女の子限定です。


『年齢』(8~29の範囲で)
『容姿』
『何が得意か苦手か』(これを基にステやスキルを決定します。なければ平均的なキャラに)
『設定』 (感染が発生しどうなったか、家族は誰か、普段はどんな生活を送っていたのか、性格、口調、等など。ステの参考になるかも)

 作品の世界観を飛び出たファンタジーになってなければ大抵は許容できます。元軍人とか
 原作キャラに関連したキャラでも可能です。妹だとか姉とか親だとか友達だとか。
 書けそうにないものは却下したり、展開によっては死亡したり、攻略キャラになったりしますので、そこはご了承を。

須戸部 智夏 (すとべ、ともか) 14歳

『容姿』
身長 155
Cカップ
長めのサイドテール

『得意』
隠密行動

『苦手、短所』
悩み事を自分の中に溜め込む
体調を崩しやすい

『設定』
明るく誰にでも優しい活発的な性格で運動神経がいい
自分のことはあまり人には話さないが、他人を信頼していないわけではない
家に住んでいるのは両親と高2の姉

感染が広まった日は熱を出し家に居た。状況を把握し、未だ帰らない家族を探しに家を出る…

『持ち物』
食糧(少量)
ライト
家にあった薬
ロープ
家族の写真
スマホ

内藤 優歌

『年齢』18

『容姿』少し太め、おかっぱ、眠そう

『何が得意か苦手か』
長所:挨拶、割り切りが良い、変な雑学を覚えている
短所:マイペース、努力が嫌い、普段運動しない

『設定』
同じ高校で違うクラス、車の免許(MTだが普段はAT)を持ってる。

マイペースで努力をしないが、人当たりが良く近くの困っている人を助ける様に行動するので、周囲の人からはそれなりの好感を持たれていた。部活動などは適当になってしまっていたが、授業は静かに受けて先生に質問を積極的にしていた為、前述の行動もあって「真面目」「良く気が効く」と家や先生から評価される事もある。

高所得の家に生まれた為「生活を維持する為に長女の自分がなんとかしなければ」という意識があった。だが、努力をしない自分が嫌い。内心はこの災害に感謝している自分が嫌い。

バラエティー番組や本(薄めの文庫本等)、インターネット小説や科学雑誌が好きで変な雑学を覚えている。

【いつも通り寝てしまい、遅れました】

【色々なキャラありがとうございます。とりあえず生徒キャラについては締め切ろうかと思いますー】
【オリジナルキャラ達は生活部が開始してから登場することになります。全員登場できるかは分かりません】
【とりあえず今のところはキャラ達の設定を見て、どう登場させるか想像します】



慈「――とにかく、三階に。休憩室なら、なにかしらあると思うから」

 これから生き抜くためにも休息は必要だ。
 目指すべきは三階の端。職員室や休憩室、更衣室がある周辺。
 あそこならしばらく生活に困らないはず。
 私は考え、提案してみる。

胡桃「うん、そうした方がいいな。私はめぐねえに賛成だ」

悠里「そうね……ここだと逃げ場もないし」

 みんな反論はないらしい。
 丈槍さんも視線を送ると小さく頷いてくれた。

慈「暗いけど灯りは私が携帯を持ってるから――」

胡桃「――なら、私は切り込み隊長だな。任せとけ」

 そうとは言っていないが、胡桃さんがシャベルを手に真剣な顔をする。

慈「ごめんなさい、恵飛須沢さん」

胡桃「気にしないでいいって。私が一番適任、だろ?」

 ……強い子だ。
 先輩のことがあったのに、今は気丈に振舞っている。
 私も役に立てたらいいんだけど……。何かないだろうか。


 『コンマ判定でめぐねえの武器を捜索します。高いほどいいものを入手』
 ↓1

【64 中程度】
【力にちょっとだけ補正】

慈「……」

 周囲を見回し、武器になりそうな物を探す。
 すると手頃な物を発見した。
 頑丈そうな金属製の丸杭。多分園芸に使うものだろう。
 振るのにはちょうどよさそうなサイズだし、グリップの点は心もとないけど、これなら。

由紀「めぐねえ……?」

 杭を握り、感触を確かめていると隣の丈槍さんが不安そうな声を出す。
 まるで私がそういった手段を選ばないと思っていたかのような、不意をつかれた顔だ。

慈「佐倉先生、でしょ」

 私はいつものように言って、彼女の頭を撫でた。

慈「恵飛須沢さん一人に任せるのはずるいから――先生も頑張らないと」

 奴らは普通の人間と違う。そう分かっていても人間の姿をしているものを殺すのは辛いもの。
 それが元人間となれば、なおのこと。
 それに、そうするしかないと分かっていても人間は悩んでしまうものだ。
 もしまだ意識が、心があったら――なんて悩みはずっと振り払うことができない。
 ならせめて、私も背負おう。生徒を護るために少しでも前に出るのだ。
 ――足手まといになるかもしれないけど。

由紀「……」

 丈槍さんは黙ってしまった。
 視線を下へ、俯いてしまい私の服を握る手に力がかかる。
 気がかりだけど、

慈「――それじゃあ、慎重に行くわよ。恵飛須沢さんが先頭に、私達がその後ろをついていくわ」

 今は先に進まないと。


【今日はここまで。明日は中途半端なときに寝ないようにします】

 
 
胡桃「それじゃ、行くぞ」


 ロッカーをどける。
 恵飛須沢さんを先頭に、私達は簡単な隊列を組んだ。
 恵飛須沢さん、私、その後ろには若狭さんと丈槍さん。
 丈槍さんはまともに動けるかも分からない。なので若狭さんに任せ、武器を持っている二人はすぐ動けるようにしておきたい――という安直な考えなのだけど、大丈夫だろうか。

慈「恵飛須沢さん、慎重にね」

 小声で言うと、恵飛須沢さんは頷く。
 深呼吸。目を閉じ、開くと彼女はドアのノブに手をかけた。
 誰もいない。それは割れた窓から見えているのに、私達は思わず息をのむ。
 私達はこれから、今までよりも危険な場所に向かうことになる。そう思うと自然と手が震えた。

慈(……大丈夫)

 自分に言い聞かせ、私は携帯電話のライトをつけた。
 開いたドアから見えたのは、誰もいない階段。
 何度か見たはずの光景なのに、その時とは違うと明確に感じられた。

胡桃「……よし」

 恵飛須沢さんがドアを出た先、左右を顔だけ出して確認。
 震える声で一言もらすと、ドアの先へと足を進めた。

 
 
 階段を降りる。

 奴らがいないか確かめながら、灯りが照らす中を歩いていく。
 普段ならば1分になるかならないかの僅かな手間だろう。しかし移動に索敵が、命の危機が関わってくるとそれは何倍にもなる。
 長く、時間をかけて私達はようやく階段を全て降りきった。
 三階。やっと、目的地が見えてきた。
 気が緩みそうになるけど――これから。奴らが全員学校から去った、なんて甘い話はないはずだ。

胡桃「職員室方面、だったな」

 階段前。一度立ち止まり、恵飛須沢さんが口を開く。

慈「ええ。気をつけ――」

 後ろの二人を確認。しっかりついてきてくれているようだ。
 私は若狭さんへと笑いかけ、前に視線を戻した。
 ――その時、見つけた。
 視界の左。のろのろと歩いて左の廊下へと進んでいく誰かの横姿を。
 壁にかくれてすぐ見えなくなったけど――気のせいだろうか。

慈「……」


 1・灯りを消す
 2・注意を呼びかける
 3・指示を出す(対象:胡桃)

 ↓1


【3は指示の内容を記載してください。指示の内容は自由です。内容により判定が発生。あまりに変なことは安価下で】

【選択 注意を呼びかける】


慈「恵飛須沢さん、みんな」

 一応言っておいたほうがいいだろう。
 私は小声でみんなへ声をかけ、先程あれが見えた先を見る。

慈「今、あれが見えたから……気をつけてね」

 あれ、で伝わったのだろう。その場が更に緊張で重くなる。
 これから奴らがいる場所を通らないといけない。その恐怖は相当なものだ。

胡桃「そっか……分かった」

 私の前、恵飛須沢さんがシャベルを構える。
 命がけの戦闘がはじまろうとしている。私もまた、手にしている武器を確かめるように握り直し、微妙に上げておく。
 敵がいる。そう思うせいで、中々進めないのだろう。じりじりと足を進める恵飛須沢さん。その後ろを警戒しながら進む私達。
 息が止まりそうな緊張感の中、やがてその時は訪れた。

『ギッ……』
『……』

 灯りの中に姿を出した人影が一つ、二つ。
 一人はさっき人影を見た左から。そしてもう一人は――右から。
 まさか二体も来るとは。

慈(たまたま近くに……?)

 大した物音を立てたりもしていない。
 バレる要因として考えられるのは……光。自分のミスだ。
 つけっぱなしにしても大丈夫だろうと、いや、灯りのことなど頭になかった。
 ただ奴らが近くにいる。それだけに意識がいっていたのだ。

慈「っ……」

 見つかったのは自分のせい。
 けれど今は悔やんでいる時間はないだろう。
 目の前の障害。それから身を守らなくては。

『戦闘がはじまるので各キャラのステータスを』
『すべて>>1の独断です』

 【佐倉 慈】
 体力 100/100
 耐性 100/100
 精神 100/100
 力  30
 速さ 20
 賢さ 40
 技術 50

 『スキル』
 良回復 一日のはじまりに体力を10回復

 【丈槍 由紀】
 体力 80/80
 耐性 50/50
 精神 30/30
 力  10
 速さ 20
 賢さ 10
 技術 20

 『スキル』
 庇う 味方が死亡するダメージを受けそうな時、自分がそのダメージを受ける


 【恵飛須沢 胡桃】
 体力 120/120
 耐性 100/100
 精神 80/80
 力  60
 速さ 60
 賢さ 20
 技術 20

 『スキル』
 シャベル愛好家 シャベルが関わるあらゆる判定にプラス補正


 【若狭 悠里】
 体力 90/90
 耐性 80/80
 精神 70/70
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 60

 『スキル』
 園芸の知識 一日最後の判定のコンマが3、5の時資源に+300

 
 どうする?
 今は三階の階段前。下手に物音を立てたり移動したりすれば、状況が悪化することは目に見えている。
 静かに、かつあまり派手に動かず敵を倒す手段を考えなければ。
 戦うこと自体、経験がろくにない私達がとれる最良の方法……なにがある?


 1・二人で近くの敵を攻撃
 2・携帯を転がす
 3・階段をのぼる
 4・指示を出す (対象:胡桃)

 ↓1

【『賢さ 40』 『コンマ67』 結果:並】
【『戦闘時 通常』の判定で、ステがコンマを超えていればいい結果が出ます。
   超えていない場合、コンマとステの差が開いているほど悪い結果になります。ステが高い状態(80以上)で超えていないと問答無用で悪い結果となります】
【今回は並なので一応は成功。まだゾンビがいるか分からない廊下方向へと放ります】


 もし光に反応するなら、これで少しは隙ができるはず。

慈「恵飛須沢さん、少し待ってて」

 声をかけ、私はすかさず携帯電話を床すれすれの位置から転がすように投げる。
 貴重品だけど出し惜しみしている余裕はない。

『……グギ』

 声とも分からない気味の悪い声を出し、転がる携帯へと目を向ける奴たち。
 ――どうやら、光に反応するのは当たりらしい。
 光を放ちながら床をスライドしていく携帯へ顔を向け、意識を私達から移す。

慈(……よし!)

 チャンスだ。

 1・二人で総攻撃
 2・転ばせてトドメ
 3・その他(詳細を記載)

 ↓1

【『慈 力 30』 『胡桃 力 60』 『コンマ 82』 結果:不可】

 叩くならここしかない。
 私と恵飛須沢さんは目を合わせ、頷き合う。
 静かに駆け出す私達。恵飛須沢さんは左。私は右。それぞれ一人に狙いを絞る。
 肉薄。そして武器を振り上げ――叩く。軽い手応え。
 そして、目が合う。

慈「あ……っ」

 携帯に向けられていた意識が私に戻る。その瞬間、体が竦んだ。
 捕食される側の気持ち、なのだろうか。蛇に睨まれた蛙のような気持ちを、生まれて初めて痛感したような気がする。
 まずい。そう直感的に思うも、身体がうまく動かない。
 私は振りおろした手をそのまま、奴が私に手を出してくるのを傍観していた。
 肩に手が触れる。想像以上の力で掴まれ、乱暴に押される。
 私はなすすべなく床に倒された。

慈「いっ、た……!」

 頭が揺さぶられ、背中を地面に打ち付ける。
 酸素が吐き出され、呻くように私は短く悲鳴を上げた。


 体力 100 → 80
 耐性 100 → 90

丈槍「めぐねえ!」

 丈槍さんの声が聞こえる。
 痛みと生徒の声。私はようやく我に帰り、慌てて立ち上がった。
 あの力だ。倒れているところを襲われたらひとたまりもない。

慈「大丈夫よ、丈槍さん」

 落ち着こう。
 こういう状況だからこそ、しっかりと周りを見るのだ。
 ――敵は残り一体。恵飛須沢さんはなんとか一体仕留めたらしい。
 そして残りの一体は私に意識を向けている。


 1・真っ向勝負
 2・指示を出す(対象:胡桃)

 ↓1

【『慈 力 30』 『コンマ 67』 結果:不可】

 倒す。それしかない。
 私は焦っていた。私の後ろには守るべき生徒がいる。ここで敵を避けたりすれば、彼女たちに危害が及ぶかもしれない。
 ――だから、私が。

慈「っう……」

 弱気になりそうな自分を感じ、無意識に声が出そうになる。
 でも駄目だ。叫んでは新しい敵をおびき出してしまうかもしれない。
 私は歯を噛み締め、目の前の敵へ駆け出す。また丈槍さんの声がしたような気がするけど、止まるわけないはいかない。
 近づく。奴はすでに手をこちらに向けており、私のことを捕まえようとしていた。

慈(倒す、仕留める……!)

 かわそうとする発想はなかった。
 手の中の杭を握りしめ、今度は先端を対象に向ける。
 叩こうとするから駄目なのだ。今度は、刺して――

慈「あっ……」

 手が震える。生徒だったもの、それを仕留めるという事実。
 死の危険にさらされながら思ったのは、そんななんの得にもならなそうなことだった。
 狙いが逸れる。まっすぐ突き出した杭。その先端が奴の首の端に刺さった。
 手に伝わる暴力の感触。追撃をしようと考えたのは、攻撃してから数秒経った後。
 杭を引こうとした直後私は、首を掴まれる。

慈「っ、ぐっ――」

 首が折れると錯覚してしまうほどの強い力。
 呻きながら私は杭を抜こうとする。けれど中々抜けない。
 息が苦しい。奴らのようなうめき声をもらし、私は必死にもがく。
 目の前には首を掴んだ奴が顔を近づけてきている。なにをしようとしているかは、なんとなく分かった。
 そして私に死が間近まで迫っていることも。

胡桃「こんっの――離せ!」

 遠くに聞こえる声。
 ぼやける視界に銅色が閃く。

慈「あ゛っ、うう……げほっ、ごほ」

 いつの間にか私は床に倒れていた。
 咳き込み、私は実感する。生きている。
 ……助けられたみたいね。

【佐倉 慈】
 体力 80 → 60
 耐性 90 → 70

【さっきまで落ちてましたが、一旦ここで落ちま】
【また戻ってくる、と思います】

胡桃「めぐねえ、怪我してないか?」

 呼吸が整い、息苦しさがなくなった頃。
 携帯を拾ったらしい恵飛須沢さんが私達を照らし、おそるおそる声をかけた。
 彼女の手にはシャベル。それをいつでも振り下ろせるように構えている。
 警戒されてるみたいだ。

慈「うん、大丈――」

由紀「めぐねえ!」

 返答し、床に手をつけ立ち上がろうとする。
 笑いかけようとしたその時、私の前に丈槍さんが立った。まるで私を庇うように。

慈「た、丈槍さん。落ち着いて」

由紀「めぐねえを、どうするの?」

 震える声で丈槍さんは問う。
 疑うのは当然のこと。
 だって、どうやって人間があれになるのか、まだはっきりと判明していないから。
 屋上での出来事を考えるに、生死は関係ない。おそらく怪我をしているかしていないか。となると、ああなる怪我の種類が分かっていない今、私は警戒されるべきなのだ。

胡桃「……傷がないか見る」

 丈槍さんの真剣な様子に恵飛須沢さんは目を逸らし、答える。
 その視線の先には、先程私を襲っていた奴が。
 とても人間とは思えない形相で倒れているそれを見て、恵飛須沢さんは悲しげに苦しそうに顔をしかめた。

由紀「――あ」ハッ

由紀「ご、ごめん」

胡桃「いいよ。薄情だとはわかってるんだ」

 由紀さんもまた、悲しそうな顔をする。
 ――恵飛須沢さんだって、好きで私を疑ったり、シャベルを振るったりしていない。それを思い出したのだろう。

悠里「大丈夫。先生に傷はないわよ。痣はあるけど」

 いつの間にか私の近くへやって来ていた若狭さんが静かに伝える。
 確かに、傷はなさそうだ。触れて軽く押すと痛む程度。ダメージはあるけど、問題はなさそう。

胡桃「そっか……よかった」

由紀「めぐねえ」

 ほっと、場の雰囲気が和らぐ。
 床に座る私へ飛びつくように抱きついてくる丈槍さんを受け止め、私は大きく息を吐いた。
 ――ひとまず、脅威は去った、のよね。
 携帯のライトに反応したのは二体。廊下に投げたから、多分近くにあれはいないはず。
 今考えると、あの時廊下に携帯投げたのは危険な行為だったわね……。



 1・近くの教室へ
 2・職員室方面を目指す
 3・その場で休憩(会話相手を選択可)

 ↓1

【職員室方面を目指す】


慈「……それじゃあ、移動を再開するわよ」

悠里「先生、大丈夫ですか? もう少し休んでも……」

慈「先生は平気です。それに今は進んだ方がいいはずだから」

 私の身体に抱きつき、ぎゅっと力を込める丈槍さん。彼女の頭を撫で、私は先を見る。

慈「丈槍さん。先に進むから離れて?」

由紀「ん……」

 ゆっくりと立ち上がり、若狭さんの近くへ立つ丈槍さん。
 私もすぐ立つと、恵飛須沢さんへアイコンタクト。彼女は頷くと曲がり角から顔を出し、職員室方向の様子を見て、それから逆方向も確認。
 ライトはちらっと当てる程度に留めておき、すぐに消す。

胡桃「暗いけど、大丈夫か?」

慈「多分。若狭さん、進めそう?」

悠里「……」コクリ

 もし教室にいて、光に誘われて出てきたりでもしたら事だ。
 物音は勿論小さくするとして、光も極力消すべきだろう。

胡桃「大丈夫そうだけど……どうする?」

慈「……そうね」

 廊下に今のところ奴らは見つからない。
 なら――

 1・素早く移動
 2・慎重に移動

 ↓1

慈「慎重に進んで」

 どこにいるか分からない敵。
 加えて数も分からない。となればあまり対応できなくなるような状況をつくるべきではない。
 急がば回れ。こういう時こそ慎重に、ゆっくり進むべきだろう。

胡桃「りょーかい。あ、めぐねえ。これ返しておく」

慈「……ありがとう。あと、佐倉先生ね」

 携帯と、先端が血で濡れた杭を手渡し、彼女は『はーい』と適当な返事。
 ちょっとだけ楽しげにして――表情を引き締めた。

胡桃「……」

 ゆっくりと歩き出す一行。
 どこからか時折聞こえるうめき声に神経をすり減らしつつ、私達は歩いた。

慈(身体が痛む……)

 思ったよりダメージは大きいらしい。
 じんじんと痛む身体に鞭を打ち、心配をかけないよう体勢はまっすぐ。しんどいけど、そろそろ職員室だ。
 月明かりでうっすらとだが、職員室と書かれたプレートが見えた。

胡桃「……」

 不意に、恵飛須沢さんが立ち止まり片手を広げる。
 止まれ、と言っているみたいだ。

胡桃「――いる」

 目的地。職員休憩室。
 ドアが開いているその先で、立ち尽くす人影があった。
 誰だかは分からない。でも人ではないことは確かだった。

慈(休憩室に何人いるか分からない……あんまり下手な行動はできないわね)

慈(それに、距離がそれなりにあるし、なにかするのにはちょっと大変かもしれない)


 1・再び携帯電話を転がす
 2・警戒しつつ休憩室に接近
 3・指示を出す(対象:胡桃)

 ↓1


【今日はここまで】
【それと、オリジナルキャラの件ですが、生徒以外のキャラはまだ募集してますのでぜひ。私の中に、大人を増やしたい思惑が】

慈「見つからないように、右側に沿って近づいてみましょう」

 ドアが空いているのは左側。右ならある程度進めばドアで見えなくなるはず。
 近づけば危険性は増すけど、こちらも色々やりやすくなる。

胡桃「……だな。行くか」

 目を前に向けたまま恵飛須沢さんが頷く。
 彼女は奴の様子を確認し、広げていた手でくいくいと手招き。ゆっくり歩き出した。
 音も光もない。奴らが人間以上の感覚を持っていなければ、顔の向きを確認するだけで絶対安全に通れる。それほど難しくはないことだ。
 いきなりこっちを向いてくる、なんて心配も勿論頭の中にあるのだけど。

胡桃「……よし、うまくいったな。どうする? 戦うか?」

慈「――ちょっと待って。今考えるから」

 ドアから見えた奴は一体。
 距離感はよく分からない。ただ、入り口近くにいないことは確かだ。
 あの一体だけなら、それなりに楽にことが済むだろう。でも中にもっといたら――大変なことになる。
 さぁ、どうしよう。

 1・ドアを閉める
 2・隙をうかがい中を見る
 3・胡桃に見える敵を始末してもらう
 4・指示を出す (対象:胡桃)

 ↓1

慈「様子見をするわね」

 中にどれだけいるのか、それだけでも確認しておこう。

胡桃「気をつけてな」

慈「ええ」

 さて……できれば数が少ないほうがいいんだけど、どうだろう。
 私はおそるおそる部屋の中を覗いた。

 敵の数
 コンマ00、01~30 1体
 31~60 2体
 61~99 3体

 ↓1

名前・栗宮 天子(くりみや あまこ)
年齢・26
容姿・栗毛色のゆるふわロングヘアー。白衣をまとい、背は長身。おっとりしていて、どこかの令嬢のような雰囲気をもっているが……。巨乳
特技・医学知識。解剖。応急処置
苦手・走ること(胸が邪魔)。車の運転。料理(スプラッタになる)

保健室に勤務する先生。
普段はおっとりしているが、怪我してる生徒を応急処置しながらその表情をみて楽しんでる隠れS。
他からみたら献身的に生徒を治療してるように見える。

感染発生時、保健室はゾンビに噛まれた生徒が来てゾンビ化して地獄絵図とかした。
そんな中で彼女はなんとか保健室を脱出するが外もゾンビ。
ひとまずはトイレに隠れ、いまの状況を整理し、職員室にある緊急災害マニュアル。そして生き残った人を探しに歩き出す。

ゾンビがなんで動いてるか気になり解剖したいのは秘密。

現在の所持品
ケータイ
サイフ
救急箱(消毒液や包帯など入ってる武器にもなる)
モップ(トイレで手に入れた武器になる)

【コンマ 63 ぎりぎり三体】

 休憩室の中を見る。
 まず、一体。ドアから見えていた奴。
 そして――二体、三体。全部で三体もの敵が部屋の中にいた。

慈「……!」

 二体であの苦戦。
 三体いたらどうなるのか……ちょっと、考えたくもない。
 頭を引っ込め、私はみんなへと部屋の様子を伝える。

由紀「三人……」

悠里「危ないですよね。ここは後回しにした方が……」

胡桃「けどここを確保できれば、それなりに快適にはなるよな。拠点にもできるし」

慈「そうよね。できれば、広いスペースと物資は確保したいから……」

 避けては、通れない。
 他に寝泊まりするような場所が、学校内にはないのだ。
 なにかああるなら、間違いなくここ。
 ――それに、三体という数は決して多くはない。朝や昼になればもっと数が増えるかもしれない。
 これくらいの数が対処できないとなると今後が辛くなる。

慈「……」

 だから――

 1・自分が囮になる
 2・杭を投げる(敵を狙うか、部屋内に投げるか)
 3・指示を出す(対象:胡桃)

 ↓1

2 部屋内に投げる

久矢 悠衣 (ひさや、ゆい) 24歳

容姿
身長 170
Aカップ
前下がりボブ

得意
運動全般(剣道有段者)

苦手
計算が苦手で危機管理能力が低い
ストレスで夜眠れない事が悩み

設定
遠足の前の日に眠れなくなるタイプのOL。大学時代は有名な剣道の選手だったが卒業とともに引退している。
クールな性格で頭の良さそうな見た目だが、卒業はギリギリで留年しかけた。真顔でボケる
一人暮らしで兄妹はいない
パンデミックの日は会社の屋上に立て篭り難を逃れた。
上司が娘を迎えに行くと言うので同伴するが、途中で上司は噛まれてしまい一人で娘の通っていた高校を目指す。

持ち物
スマホ
バール
食糧

【杭を投げる  簡単なこと+投げる場所は決まってるのでコンマはとりません】

 敵は三体。囮になるとしても、恵飛須沢さんがすべて倒しきるには時間がかかるだろう。
 それまで逃げ切れるかは分からない。
 一番確実なのが……なにかの音で注意をひくこと。
 その上で攻撃する。駄目そうならすぐ逃げればいい。

慈「これで注意をひくから……」

胡桃「私が特攻だな。分かった」

 私が戦って活躍できないのは分かっている。
 だからここは恵飛須沢さんに任せて、私は支援に徹しよう。

悠里「くるみ、大丈夫? 私も、囮くらいになら――」

胡桃「大丈夫だって。いざとなったら、めぐねえの携帯もあるし」

由紀「……」

慈「ええ。隙はできると思う」

 本当に、恵飛須沢さん一人に任せるのは心苦しい。
 でもそれが最善だと思うなら、それを行わなければ。

胡桃「それじゃ、頼んだ、めぐねえ」

慈「――うん。危なそうだったらすぐに逃げて」

 手だけ出して部屋の中心めがけ、杭を投げる。
 金属製なだけあって、中々音が大きい。これなら、充分役割を果たしてくれる。

胡桃「――よし」

 中を確認し、恵飛須沢さんが部屋へと入っていく。
 彼女ならうまくやってくれるはず。私はいつでもサポートできるように準備しておかねば。


 胡桃さんの活躍具合コンマ判定

 ↓1

【コンマ 99でクリティカル】

 恵飛須沢さんの動きは素早かった。
 まず一体。部屋に入った彼女は走りながらシャベルを振りかぶり、勢いはそのまま、すれ違うように頭部を打ちぬく。
 ドッと鈍い音。綺麗に床へ倒れたそれ。
 恵飛須沢さんは容赦なく追撃。首へ叩き付けるようにシャベルを叩き込む。

胡桃「次……っ!」

 ちらりと見えた彼女の顔。微かに苦しそうなその表情。
 けれど恵飛須沢さんは止まらない。すぐに杭から恵飛須沢さんへ振り向いた、奴らへと向かっていく。
 残りの二体。部屋の奥、棚の前に立った奴らへ近づくと、まず恵飛須沢さんは一体へ刺突を繰り出す。
 走ったまま棚へ押し付け、怯んだところを全体重を乗せ残りの一体を巻き込むように横へ押し倒す。
 彼女へと手を伸ばしていた残りの一体はよろけ、けれどまだ恵飛須沢さんを捕まえようとする。
 が、直後奴の膝にシャベルがぶつかった。
 体重を乗せ、一体を横へ倒す。全体重を乗せた、隙の生じる行動、それを恵飛須沢さんは利用した。
 踏ん張った足を軸に、横へ一回転した彼女。勢いを活かし、しっかり腰を入れ、立っている一体の脚、その横を打ち上げるように痛烈に打撃する。
 倒れた二体へ恵飛須沢さんは素早くとどめを刺す。上から下へ、何度かシャベルを頭部におみまいし、完全に動かないことを確認。
 肩をぐったりと落とした彼女は大きく息を吐き、疲れきった顔で振り向いた。

胡桃「……終わったぞ」

慈(え、えぇー……)

 すごい。すごいし、有り難いんだけど……。
 さっき私、戦わなくてもよかったような……。
 携帯を手に、私は複雑な想いで首を縦に振った。

 亡骸を部屋の外へ。
 ――わりと、楽だった。
 恵飛須沢さんは疲弊していたけど、思っていたよりはかなり順調に目的地に到達したものだ。

慈「……これで、少しは楽になるかしら」

 簡単なバリケードをドア前に作っておき、20分程度立っただろうか。
 休憩室を見回し、私はホッと息を吐く。
 私達は今、静かに部屋を探索していた。今日は多分、ここで休むことになる。
 少しでも快適に過ごすために努力は惜しまないつもりだ。

慈「……」

 時間的に余裕はあるわよね。
 ちょっと、誰かと話してみようかしら。

 1・胡桃
 2・悠里
 3・由紀

 ↓1

【胡桃】

 自然と足はある一人の元へと歩くように動いていた。
 ……彼女のことが心配だ。
 いくら恵飛須沢さんしか戦える人がいないとはいえ、彼女には無理をさせすぎた。

慈「恵飛須沢さん」

 ダンボール箱を漁る恵飛須沢さんへ、声をかける。

胡桃「お、めぐねえ。どうしたの?」

 いつもと変わらない様子の彼女。
 私へ視線を向けると微笑んで、立ち上がる。

慈「ちょっとお話したいなぁと思って。いいかしら?」

胡桃「ん、めぐねえがいいなら」

 何を話そうか……。

 1・戦うこと
 2・屋上でのこと
 3・自由に (詳細を記載)

 ↓1

【戦うこと】

慈「恵飛須沢さんは……戦うことについてどう思ってる?」

 恵飛須沢さんには今日一日で大変なことを色々させてしまった。
 彼女は何事もないみたいに振舞っているけど、実際はどうなのだろう。
 私はあえて、ストレートに問いかけてみた。

胡桃「――仕方ないこと」

 一度意表をつかれたように目を見張り、彼女は答える。

胡桃「生きてくためにはああするしかないから。多分さ、理由なんて考える必要もないと思う」

慈「……」

 一度武器を向けた私は、なんとなく彼女の言っていることが分かる。
 理由を考えて感情的に、なんて、重荷でしかない。
 それなら、仕方ないこと、そうするしかないことだと言い聞かせ過ごした方が楽だ。私達が普段そうしているように。

慈「そうね。確かにそうかもしれない」

 でも、それを人間――かつての学友、あこがれの人に当てはめるのは、あまりにも悲しいことに思えた。


 1・「頼りにしてるわ」
 2・「意味はあるんじゃないかしら」
 3・「――怖いわよね」

 ↓1

3

【「――怖いわよね」】


胡桃「え?」

慈「前まで人間だった人達を仕方ない、って割りきって倒さないと生きていけない。それって怖いことだと思うの」

胡桃「……」

 でも、割りきらないともっと怖い。
 どうしてこんなことになったのだろう。なんで、こんなことにこの子たちが巻き込まれないといけないんだろう。

慈「ねぇ、恵飛須沢さん。私はあんまり役に立たないかもしれないけど、でも、恵飛須沢さんだけに怖い思いはさせたくないの」

慈「だから――二人で、みんなで頑張りましょう。一人で背負うことはないのよ」

胡桃「……うん。分かった」

 恵飛須沢さんの気持ちを私が背負うことはできないだろう。
 でも、少しでも彼女を元気づけたり、気持ちを整理する手伝いができるなら、私は努力を惜しまない。


【恵飛須沢 胡桃の好感度が5上がりました】


【教えて! りーさん! のコーナー】

慈「やっぱり私じゃない……先生なのに、なんで」

悠里「――好感度。本番直前に新しい要素が出てきたわね」

悠里「今回は好感度周りの説明をするわ」


 好感度。
 1~100まであり、高いほど仲良しです。恋愛感情だったりもします。
 キャラによっては特定の条件を満たすことでイベントが開始。
 あんまりイベント条件が満たさえれない場合は、ヒントなども考えておきます。

 好感度が高いとR-18的なシーンが出たり、本編の会話に影響が出たり、強くなったり、メリットは様々。
 ただしキャラによっては悪影響も出るかも――その辺りはまだ決めてません。病んだり、依存したり。


悠里「ふわっふわしてるけど、好感度に関してはこれくらいかしら」

慈「仲良くするのは大切なことだということね」

悠里「はい。分岐にも関わってたり――するかもしれないし、しないかもしれません」



【ここで落ちます】
【今日戻ってくるかは不明】

【好感度一覧】
由紀 40  「いい先生、だよね」
胡桃 35  「まぁ、仲間だよな」
悠里 25  「頼りになるんだけど、ならないような……」



 おそらく仮眠用だろう。
 休憩室からは布団、そして何故か寝袋、缶詰やレトルト食品数種が見つかった。
 学校なのだから、災害時の避難用――という点での備えだろう。もしくは、食事の用意を忘れた先生用だったり。
 用意がいいような気がするけど、今はただただ有り難い。

悠里「はい、どうぞ」

 外が見える窓、ドアの窓。それらを塞いで、灯りをつける。
 部屋はまだ散らかっていたり、あちこちに血がついていたりしていたけど――とりあえず、テーブル周りは綺麗に掃除。
 夕方からの、半日にも満たない壮絶な出来事。ようやく一息つける場所に辿り着いた私達は、ひとまず食事をとることに。
 長いテーブルに人数分の席。目の前には美味しそうなカレー。
 全員分のそれが用意されると、私達は口々に挨拶し、食事をはじめる。

慈「……」

 ――やっぱり、食事というものは大切だ。
 一口食べるたびに自分が癒やされていくことが分かる。たとえ絶望的な状況であっても、美味しい食事は効果的である。
 ……でも、そうして癒やされて、落ち着いてくると色々な余裕ができてしまう。
 静かに咀嚼しつつ、私はみんなの顔を見回す。
 最初は真顔にも近かった面々。でも、食事をしているうちに段々と表情が曇ってきた。
 命をかけた戦いという非日常。
 明るい場所で温かい食事という日常。
 その二つは、あまりにもかけ離れたもので。

 だからこそ、考えてしまう。
 助けはくるのか。自分たちはこれからどうなるのか。なにをするべきなのか。
 考えても答えは出ない。
 だってもう、私達はたどり着いてしまっているのだ。
 自分たちができる限界、安全な場所を確保するという目的に。
 寝床の心配はない。食事の心配もしばらくはない。襲撃の心配だってないかもしれない。
 もうなにも、することはない。したいとも思わない。
 だけど頭は働いてしまう。そして大抵、それはネガティブな思考を繰り返すのだ。
 この状況下でポジティブなことを考えられるはずもないのだけど、難儀なことだ。

慈「……」

 ――なにか、必要なのかもしれない。
 危険な場所に立つことにもなるだろう。
 でも、沈みきっているだけではいつかやってくる物資の終わりを乗りきれるかどうか。
 それに私はみんなの笑顔が好きなのだ。こんな暗い顔、彼女たちにさせたくはない。


 1・「明日から生存者を探してみましょう」
 2・「カレーってなんでこんなに美味しいのかな?」
 3・「明日のことを話しましょう」

 ↓1

【「明日のことを話しましょう」】

由紀「明日の……?」

 みんなが不可解そうな顔をする。何故それを今? なんて思っているのかもしれない。

慈「ええ。こんなことがあっても、ここは学校だから。勉強したり、みんなで助けあったりしないとっ」

 私は明るさを意識して、笑顔で言う。
 場違いなテンションかもしれない。でも、こうしてみんなと話すことも大切だと思うのだ。こんな状況だからこそ。

胡桃「――ははっ、めぐねえは相変わらずだな」

慈「佐倉先生ですよ、恵飛須沢さん」

悠里「……でも、そうですね。落ち込んでばかりだとよくないもの」

 徐々に、みんなの表情が明るくなる。
 私はほっと安堵して、丈槍さんの顔に視線を向けた。

由紀「……」

 丈槍さんは、泣いていた。
 目から涙を流して、スプーンを強く握りしめて。

悠里「あ……」

胡桃「お、おい、大丈夫か?」

慈「……丈槍さん」

 私は立ち上がる。
 恵飛須沢さんと若狭さん、二人に目配せし丈槍さんの肩に手を置いた。

慈「ちょっとあっちでお話しましょう?」

由紀「……」

 彼女はなにも答えない。でも、首をこくりと小さく縦に振ると床に立つ。
 私達はテーブルから離れ、部屋の隅で椅子に座った。

【ちょっと更新したところで、今日は落ちます】

【2日連続で中途半端な時間に寝て更新できず。ごみん】
【ちょこっと書いておきます】


慈「……丈槍さん」

 何を言おうか。私は悩んだ。
 彼女が現在の状況にまいっているならば、慰めたり励ましたりすることしかできない。
 それが彼女のためになるのか。考えても分からない。

慈「どうして泣いているの?」

 どうしてこんなことを訊いたのだろう。
 考えに考えて、私は自然とそんな疑問を口にした。
 泣くのは当たり前なのに。みんな泣かないのが不思議なくらいなのだ。

由紀「……分からない」

 ぐすっと、短いしゃっくり混じりに丈槍さんは答える。

由紀「でも、もう学校がなくて、みんなに会えなくて――っ」

由紀「やり直したり、楽しく過ごしたり、できなくなったんだ、って」

慈「……」

 心が苦しかった。
 泣きじゃくる彼女。その口からもれる感情の数々。
 そのどれにも、他人を責めるようなものはなく、ただただ理不尽を嘆くばかり。
 突然奪われた日常。楽しく過ごす機会すらもなくなった。
 孤立気味だった彼女が、やり直したいと、そう思うことすらも……。
 ああ――本当に、

由紀「――なんで、こうなったの」

 誰のせいなのだろう。
 なんで彼女たちが巻き込まれないといけなかったのだろう。
 誰に向けるでもないひとりごとのような呟きを最後に、丈槍さんはまた黙って涙を流しはじめた。


慈「……」
悠里「……」
胡桃「……」

 辛い。空気が重い。
 ずーんと、雰囲気の暗い部屋の中。
 子供みたいに泣きつかれた丈槍さんになんとか残りのカレーを食べさせ布団に寝かせ、私達三人は食事を再開した。
 ……のだけれど、当然部屋の中で話していたことはみんなに聞かれていた。
 結果が沈黙。丈槍さんが泣き出す前まで、頑張ろう、という感じだったのに。
 スプーンを置く。カレーはいつの間にか食べ終えていた。

慈「……ごめんね。私先生なのに、何も励ます言葉が思いつかなかった」

胡桃「めぐねえは悪くないと思うよ。勿論、ええと――」

慈「丈槍由紀さん」

胡桃「ゆきも、悪くない」

悠里「そうね。誰だって、何も言えないような気がするわ」

 丈槍さんへ三人の視線が向く。
 今はぐっすり眠っているけど、起きればまた、過酷な現実と向き合うことになる。強制的に。

悠里「……先生。私もみんなで助け合うことが大切だと思います」

胡桃「こんな状況だからな……」

慈「――ええ」

悠里「だからまず、お互いの名前を知ることからはじめましょうか」

 若狭さんが手を合わせ、笑顔で言うと恵飛須沢さんが苦笑をもらす。
 そういえば、そこからか。
 若狭さん、恵飛須沢さんは丈槍さんのことを知らなかったみたいだし。

胡桃「だな。ゆきとは面識がなかったし」

悠里「うん。それと、先生」

慈「はい?」

悠里「私達のこと、名前で呼んでくださいね。胡桃ちゃん、みたいに」

慈「名前呼び……。ええと、私先生で――」

胡桃「あ、いいな。私も違和感があったんだ」

慈「ええっ!? そ、そんなことないです」

胡桃「ほら、めぐねえ若く見えるし」

慈「そ、そう? って、めぐねえじゃありません」

胡桃「……ちょろいって言われるぞ」

慈「なっ。ちょろくないですっ」

 私がむきになって言うと、二人は楽しそうに笑う。
 その時には暗くなっていたことなんて頭からすっかり抜けていた。
 ――やっぱり、誰かと助け合うことは大切なことだ。私は改めて感じるのだった。

『一日目終了』



【教えて! りーさん! のコーナー】

悠里「第三回目。いよいよここからが本番よ」

慈「ここまで長かったような気がするけど、一日目なのよね……」

悠里「はい。これからは大体自由に行動することができます。原作をたどったり、まったく違うルートで進んだり――」

悠里「ただ、自由度が上がるとルールが増えるのも常。説明はしっかりしておかないとね」


『追加ルール』

 一日に二回、コマンドを選ぶことができます。
 朝~夕方、夜の時間で二回コマンドを選ぶと次の日に進みます。


 朝~夕方コマンド
 3・授業 【生徒と一名と一緒に過ごす。好感度や生徒のステが変動】
 4・探索 【校内、校外を探索。めぐねえの他にメンバーを二人まで選択可。イベント発生時のみ選択可能】


 夜コマンド
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】


 数字の間が抜けているものは、まだ開放されていないコマンドです。


悠里「うん、自由」

慈「……自由?」


【今日はここまで】

【スキル発動】
 佐倉 慈
 体力 60 → 70


 翌朝。
 休憩室で軽めの朝食を食べ、私達はテーブルの周りで会議をはじめた。

慈「――ということで、これからのことを話しあおうと思います」

悠里「色々やることがありますからね。私の意見は……昨晩言ったように、先生に授業を頼みたいと思います」

胡桃「うえっ、そんなこと言ってたのか……」

悠里「何もしないのも退屈でしょう? 気を紛らわせるための手段としてはいいと思うけど」

 露骨に嫌そうな顔をする恵飛須沢――じゃなくて、胡桃ちゃん。
 そういえば昨日、ご飯を食べた後に提案されたのだった。
 授業……複数人にするのは今の人数だと手薄になるから無理かもしれないけど、個人的にならできるかもしれない。
 憶えておこう。

悠里「あとは――屋上、三階を自由に移動できるように道を確保していきたいわね」

胡桃「それはあるな。ここだけだと狭っ苦しくて」

慈「そうね。私もそれは考えていたわ」

 生活圏内が広がる。それだけでも充分有意義なことだ。
 加えて屋上には菜園がある。栄養面でも、食糧面でも頼れることだろう。

【イベント『生活圏内』が発生しました。
 内容:『三階には未だあれがうろうろしている。安全な生活と自給自足のため三階を捜索、確保しよう』】

悠里「私からはそれくらいね。くるみはある?」

胡桃「私は……食糧だな」

胡桃「こんな時だからこそ、美味しいもの食わないとな。腐る前にちゃっちゃと」

慈「確かにそうね」

 悠里ちゃんにも胡桃ちゃんにも全面的に同意できる。
 幸い、ここは三階の突き当り付近。階段からは近いし、やつらの数次第でどうにでもなるだろう。

【イベント『購買部』が発生しました。
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

慈(あとは……教材かしら)

 【イベント『教材確保』が発生しました。
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】


慈「他に、何かないかしら?」

由紀「……声を聞いた」

 静かに、由紀ちゃんが告げた。
 なんでも夜に、なにかの声を聞いたらしい。
 あれの声――らしきものの後に、女の人の声が聞こえたそうな。
 それだけ聞くと、襲われたのかとも思うけどどうやらそうでもないみたいだ。
 由紀ちゃんが言うには、あれの声がすごく苦しんでいるような長い声だったとのこと。
 ――何か起こっているのかもしれない。

 【イベントのフラグが立ちました。探索時、選択肢によって進展します】

 とりあえず、やるべきことはこれくらいだろう。
 それらを踏まえて私が出した結論は――


 朝~夕方コマンド(とりあえずコマンドだけ選んで、その後メンバーやら詳細を決定します)
 3・授業
 4・探索

 ↓1

慈(やっぱり、授業よりは何かするべきよね)

 会議から解散後。
 私は一人、ノートにペンを走らせつつ考える。

慈(となると、校内を歩くことになるのだから……目的とメンバーよね)

 私は年長者だし、一応戦える――と思いたいし、とりあえず参加はしないと。生徒だけに危ないことはさせたくない。
 そうなると、あと二人、くらいだろうか。三人が一番効率的な気がする。ここで留守番するひとも大切だし。
 あとは探索場所。現在色々目的はあるけど、なにかするならば一つに絞った方がいい。
 ――さて、どうしよう?


 進行するイベント名、探索するめぐねえ以外のメンバーを指定
 ↓2

【全員は無理なので、生活圏内 由紀、胡桃で実行します】

慈「……よし」

 生活の範囲はできるだけ広げておきたい。
 となると胡桃ちゃんは確定。それにくわえて――由紀ちゃんも参加させることにしよう。
 ちょっと荒療治かもしれないけど、戦いの近くにいればそれなりに心構えができるかもしれない。
 ノートを閉じ、私は一人頷く。

慈「みんな、ちょっと集まって」

 そして、みんなへと私の作戦を伝えた。

悠里「三階を確保するのは賛成ですけど……」

 今日の予定を告げて、いざ出発。
 その間際。準備をしてドア前に立つ私達を見て、悠里ちゃんは不安そうな顔をした。

悠里「ゆきちゃんを連れていって、大丈夫かしら……」

 当然の心配である。
 昨日あれだけしぼんでいた由紀ちゃん。彼女を命がけの戦場へと送り出すのは、普通の人ならば躊躇する。

由紀「大丈夫だよ、悠里さん。私も足手まといは嫌だから、めぐねえのために頑張る」

悠里「うん……無理はしないようにね」

 けれど由紀ちゃんの様子に、引き止める気はなくなったらしい。
 その代わり、今度は私に視線を向けてきたけれど。

悠里「先生。ゆきちゃんを連れて行く理由ってなんですか?」

慈「え? ええと――」



 由紀を連れて行く理由は?

 ↓1

【正解判定です。りーさんの好感度アップ】

慈「声を、聞いたって言っていたから」

 朝の作戦会議。
 その際に気になることを言っていた由紀ちゃん。
 私達の中で他に声を聞いた人はいない。ならば由紀ちゃんに同行してもらいたいのは、当然のこと。

悠里「あ……そういえばそうでしたね。すみません」

慈「いいのよ、気にしないで。その理由でも、由紀ちゃんが危ないことに変わりないから」

 いくら件の声が生存者かもしれないと言っても、由紀ちゃんに戦う力はほぼ皆無と言っても過言ではない。
 悠里ちゃんの心配ももっともだ。

悠里「先生。くるみを、ゆきちゃんを頼みます。私は私の仕事をしていますから」

胡桃「大袈裟だって。駄目だったらすぐ戻ってくるぜ。ね、めぐねえ?」

慈「そうね。昼の様子は分からないし、危なそうだったらすぐ帰ります」

 昼。帰った奴らが、また戻っているかもしれない。
 だとすれば、三階を確保するのも大きな手間になる可能性もある。下手したら、命を落とすことだって。
 だから、油断しないようにしないと。

慈「さぁ、行きましょう」

 三階の確保。一日でできるか分からないけど、とにかくやるしかない。
 悠里ちゃんに挨拶をし、私達は静かに廊下へと出た。


【好感度】

悠里 25 → 30

 やっぱりというか、当然廊下にはあれらがいた。
 明るいから簡単に目視できる。人数は――思ったよりも少なめだ。

胡桃「とろいから、ここまで来るのに時間かかんのかな」

慈「かもしれないわね。……まず、安全を確保するかバリケードが作れそうなものを探しましょう」

由紀「教室がいいかな?」

慈「机もあるし、それがいいわね。でも、その途中にもなにかあるかもしれないし――」

 1・敵を掃討
 2・近くの部屋を探索(職員室、生徒会室、放送室、物理実験室のどれか一つ)
 3・敵を避け教室に直行

 ↓1

慈「近いところで、まず生徒会室を探索してみましょう」

胡桃「うん、異論はない」

由紀「私も」

 よし。これで方針は決まった。

胡桃「けどその前に――」

 こっそりと、胡桃ちゃんが声を潜めて言う。

胡桃「廊下のあれをどうにかしないとな」

 目の前。ちょうど生徒会室あたりにいる二体のそれ。
 やつらをどうにかして処理しないと、部屋にはいることはできないだろう。

慈「そうよね……どうしようかしら」

 由紀ちゃんが不安そうに私を見ている。今にも泣き出しそうな彼女のためにも、早く決断しないと。


 1・胡桃に任せる
 2・自分と胡桃でこっそり始末
 3・指示を出す(対象:胡桃、由紀)

 ↓1

【『胡桃 力 60』 『コンマ 50』 結果:良】

 ……ここは、頼むのが無難か。

慈「胡桃ちゃん、お願い」

胡桃「ん、適材適所……っと」

 表情を引き締め、胡桃ちゃんがシャベル片手に歩き出す。
 体勢を若干低くし目の前の奴らへと静かに接近していく。
 ある程度近づき、あれの一体が反応を示すと一気に速度を上げた。
 胡桃ちゃんの方を向く前に、シャベルが振られる。頭に一撃。そして転倒した一体へとどめを刺し仕留める。
 続けて襲ってきた二体目は近づかれる前にシャベルを突き出し、動きを制限させる。

胡桃「――っ!」

 一呼吸。シャベルを持つ手に力を加えて、思い切り壁へと叩き付ける。
 脆くなっているせいか、それだけでシャベルの先端が奴の首へ刺さった。
 血が溢れ、胡桃ちゃんの制服を汚す。
 ほどなくしてその一体も動かなくなった。

胡桃「……はぁ」

 無傷の勝利。生じた被害は最小の音くらいだろう。
 それなのに、やっぱり嬉しくはないものだ。
 人間の形をしたなにかを殺すのは。それを見ているのは。


【無制限行動をなくすため、二日目から精神減少の要素が入ります】
【精神は一日終わりに半分の値回復します】

慈 100 → 95
胡桃 80 → 75
由紀 30 → 25



 生徒会室の中は――(コンマで判定 9、0、クリティカルでいいこと。1、2、ファンブルでわるいこと)
 ↓1

【3 普通です】

 生徒会室。
 至って普通の部屋だ。ドアは鍵がかかっていなかったけど、意外に綺麗。
 おそらく会議用のテーブルと、椅子、書類の入った棚。そして給湯する用だろう、簡単な台所の設備があった。
 ここでも暮らしていくとなってもそれほど不自由がなさそうだ。

慈「……ここは、いい部屋ね」

由紀「うん。すごく綺麗だよ」

胡桃「それに料理もできそうだしな。……改めて、この学校なんなんだろうな」

 一通り探索し、得られたものは部屋の状況を把握したということのみ。けれどこれは大きな収穫だろう。

慈「災害対策、だと思うわよ」

 どこから電気が来ているのかがいまいち分からないけど。

胡桃「さて、と。そろそろ次行く?」

慈「そうね。次は――」

 1・敵を掃討
 2・近くの部屋を探索(職員室、放送室、物理実験室のどれか一つ)
 3・敵を避け教室に直行

 ↓1

【2 職員室へ】


【そういえば――】


 アニメ観ている人、がっこうぐらしをあまり知らない人はネタバレ注意です!
 コミック6巻までのネタバレの危険があるため、気にする方は読まない方がいいですよ。

 
 
 
 
 

慈「あ……」

 ふと、思い出す。
 緊急時に開くよう言われた、緊急避難マニュアル。
 説明をされた時はいまいちぴんとこなかったけど、多分あれは――


【ルート分岐に関わります】

 1・災害時の避難方法でも書いてあるのだろう
 2・重要な情報が書いてあるに違いない

 ↓1

【2 重要な情報が書いてあるに違いない】

慈(……そうよね)

 そうでないならわざわざ説明はしないし、開封の条件など定めたりもしない。
 きっと、重要ななにかが書かれているのだ。
 災害時よりも、もっと特殊で危険な、なにかから避難する際の――

慈(まさか、よね)

 動悸がした。
 もしそんなものがあったとしたら、この異変は……。

慈(生徒には見せないでおこう)

 今の状況でも手一杯なのだ。そんな情報を公開してしまっては、更なる混乱を招くだけだろう。
 とにかく、今はすぐ回収しなくては。

由紀「めぐねえ、どうしたの?」

 声をかけられ、ハッとする。
 ドアの近くで立ったまま長考してしまったようだ。

慈「――あ、なんでもないわ。ぼーっとしてただけ」

胡桃「大丈夫か? これから職員室に向かうんだろ?」

慈「平気です。さぁ、行きましょう」

 生徒会室のドアを開け、左右を確認。
 さっき二体倒したときの音は感知されていないらしい。ホッと息を吐いて、私達はすぐ近くの職員室へと移動した。

【今日はここまでにしておきますー】

 職員室には――なにもいない。
 ドアが開いていたからもしやとも思ったけど、杞憂だったようだ。

胡桃「先生は誰もいないんだな……」

由紀「みんな逃げてるんだよ、きっと」

慈「そうね。私達も無事だから、他の人もきっと」

 ドアを閉める。探索をはじめる二人をちらりと見て、私はマニュアルの入っている棚へと近づいた。
 棚を開き、目当てのマニュアルと、それを大きめのファイルを手に取る。マニュアルはそのファイルに挟んでおき、手早く棚を閉じた。

由紀「めぐねえ?」

慈「っ! ど、どうしたの? 由紀ちゃん」

由紀「? これ、持っていっても大丈夫かな?」

 笛を見せる由紀ちゃん。
 多分体育にでも使うものだろう。銀色の、紐が通してあるあれだ。

慈「え、ええ。こんな状況だし、大丈夫だと思う」

由紀「うん、それじゃ持ってく」

 それを首にさげ、彼女は探索へと戻った。
 ――ふぅ。なにか隠しているのがバレたかと思った。

 マニュアルは今日の夜にでも確認しよう。
 できれば、みんなが寝た後で――生徒会室、とかがいいかもしれない。

胡桃「なにもないなー。ゆきにも武器が見つかればよかったんだけど」

由紀「私はいいよ。戦えないし……」

 少しの探索の後、私達は自然と集まる。
 職員室には特にめぼしいものはなかった。個人的なものが多い部屋だし、異変が起きたのは放課後。
 職員室にいる先生もそれなりにいただろうし、物がないのは納得だ。

慈「次、行きましょうか」

胡桃「だな。――って、めぐねえそのファイルなに?」

慈「えっ? これは……ちょっと調べ物。購買部の情報とかないかなーと」

 ファイルの帯を見て答える。部活動の予算が関係しているらしいし、これで言い逃れできるはず。

胡桃「購買部って部活じゃないよな……」ジトー

慈(私の馬鹿!)

胡桃「まぁいいや。さ、次どこ行く? めぐねえ」

慈「――そ、そうね。次は……」


 1・敵を掃討
 2・近くの部屋を探索(放送室、物理実験室のどれか一つ)
 3・敵を避け教室に直行

 ↓1

【2 物理実験室】

慈「――がいいかしら」

慈「多分、実験に使う物の中にいいものがあるはずだから」

胡桃「バリケード作るためのものとかもありそうだな」

由紀「そうだね。そこなら、なにかあるかも」

 満場一致。
 私達は廊下へと出て、様子を窺う。
 あれらの数は増えていない。でも、物理実験室に行くためには――


 コンマ判定で数を敵の決定します(一日目の判定>>75と同じです)
 ↓1

【コンマ62 三体でございます】

 三体の敵をなんとかしないといけない。

胡桃「まだまだいるな……」

慈「ええ。でもあの三体が倒せれば、廊下にいる奴らは大体処理できたことになるわ」

 三体の奥にはおそらく三体~四体くらいの敵が。
 総数で考えると大変だけど、こうして少数で倒していけばなんとかなるレベルだろう。

慈(どうしようかしら……)

 とはいえ三体は大変だ。
 胡桃ちゃんとはいえ、危険な目にあうかもしれない。どうしようか。


 1・胡桃に任せる
 2・二人で一体ずつ、二体をこっそり始末

 ↓1

【『胡桃 力 60』 『コンマ 79』 結果:可】

胡桃「私だな。――よし、行ってくる」

 さすがに数が多い。
 胡桃ちゃんもそれが分かっているのだろう。いつもより真剣な顔をして敵がいる中へと向かっていく。

由紀「くるみちゃん、大丈夫なの?」

慈「危ないけど……それ以外選択肢がないから」

 由紀ちゃんに笛を吹いてもらうのも考えたけど、ここは廊下。階段から新たな敵が出たり、教室から出てくることだってあるかもしれない。
 そうなれば極力音は立てずに敵を始末するのが一番いい。
 戦闘ならば胡桃ちゃんが一番強いし、この選択をするのが最良だろう。
 もっとも、うまく行けばの話だが。せめて昼じゃなければ、灯りも使えたんだけど。

 いつでも助けられるように武器を用意しておこう。
 杭を取り出し、私達は胡桃ちゃんの後ろ姿を見送る。
 三体。その威圧感は強く、数が多いほど気付かれずに近づくのが難しくなる。
 胡桃ちゃんが一体へ攻撃が届く範囲に入る頃には、その奥の敵がもう既に胡桃ちゃんを発見し、のろのろと動きはじめていた。
 本来始末すべきはその気づいた一体。けれど近い位置にいるやつを無視し、奥を攻撃すれば危険なことになる。
 休憩室のときと同じ人数。けれど状況はもう大きく異なっていた。

胡桃「――っ!」

 すぐに距離をとらなければ危ない。
 胡桃ちゃんもそれは分かっているようで、ぎりぎりシャベルが届く間合いで立ち止まると、手に持っていたそれをフルスイング。
 派手な音が立ち、気づいていなかった残りの一体も胡桃ちゃんへと目を向ける。
 胡桃ちゃんは倒れた一体へと足をのせ、一度前を見る。
 最初に気づいた奴は、胡桃ちゃんのかなり近くに。多分それで焦ったのだろう。
 胡桃ちゃんはシャベルを振り上げ、倒れている一体の首へと先端を振り下ろした。
 一体仕留めることに成功。けれども敵が近くにいる状態でそんなことをすれば、どうなるかは目に見えている。

胡桃「うぁっ……!」

 静かに、ぎこちない動きで挙がる腕。それが恐ろしいほど早い速度で振り下ろされる。
 胡桃ちゃんは反応することもできなかった。まともにそれを受け、バランスを崩す。倒れた敵に足を置いていたのが運悪く作用し、尻もちをつく。
 彼女の腕には多分爪で切ったのだろう、割りと大きな傷ができていた。


【恵飛須沢 胡桃】
 体力 120→ 100
 耐性 100 → 90
 精神 75 → 60


胡桃「はぁっ……はぁ」

 けれどさすがというべきだろうか、胡桃ちゃんはすぐさま立ち上がり、戦闘の体勢をとる。
 まだまだ戦えそうな様子だ。
 ――でも、あの傷であれのようになったりは……しないのだろうか?


 1・胡桃の後ろからこっそり接近し、始末する
 2・由紀に笛を吹いてもらう
 3・指示を出す(対象:胡桃、由紀)

 ↓1

【寝てました。ごみん】

【『慈 技術 50』 『コンマ 27』 結果:良】

 ――胡桃ちゃん一人に任せるのは卑怯よね。
 怖いし、自信はないけど、でも。

慈「由紀ちゃん、周りに気をつけてて」

由紀「えっ? う、うん、めぐねえ――」

慈「先生は胡桃ちゃんを助けてくるから」

 不安そうに私を見る彼女へ笑いかけ、私はこっそりと戦っている一人と二体へと近づいていく。
 視界に入らないようできるだけはじを通り、音を立てないようゆっくり歩く。
 立ち止まり、構える胡桃ちゃん。じりじりと距離をつめる奴ら。
 息が苦しい。緊張で手が震える。――でも、私だって。
 杭を握り直す。タイミングを見計らい、私は走り出した。

胡桃「――えっ!?」

 横からの突然の足音。
 胡桃ちゃんが驚いたような声を上げ、私を見る。
 一瞬シャベルを振られそうになったけど、なんとか踏みとどまってくれた。

慈(これで――)

 敵に気づかれる。でも関係ない。
 私はあれに一歩近づき、杭を振り上げ、頭目掛けて振り下ろす。
 なんとも言えない手応え。やはり脆いのか、思ったよりも簡単に頭を貫き、血が私の顔にかかる。
 やってしまった、が――仕方ないことだ。
 私は仕留めたつもりで、杭を抜こうとする。早く離脱せねば。

慈「胡桃ちゃん、大じょ――」

 ごっ、と鈍い音。
 杭をなんとか抜いて振り向くと、そこには残りの一体を倒した胡桃ちゃんが。
 ――どうにかなったみたいだ。私はほっとして息を吐く。

胡桃「めぐねえ」

 でも、胡桃ちゃんの表情は暗かった。

胡桃「――なんで戦おうとしたんだ?」

 私を責めるみたいに、けれど悲しそうな顔をして胡桃ちゃんが問いかける。
 優しい彼女がなにを思っているかは、大体分かった。

慈「胡桃ちゃんだけに怖い思いさせないって言ったでしょう?」

胡桃「めぐねえ……」

 でも、胡桃ちゃんだけにやらせるつもりはない。
 私だって先生なんだから頑張らないと。

胡桃「――無理はしないようにな。いきなり出てきてマジでびっくりしたんだから」

慈「あはは……そこはごめんなさい」

由紀「……」

 なにはともあれ、これで廊下の掃討も進んだし、物理実験室にも入れる。
 この探索ももう一息、だろう。


慈  精神 95 → 90
胡桃  精神 60 → 55
由紀  精神 25 → 20

【恵飛須沢胡桃 好感度 35 → 40】



 >>146と同じくなにがあるかコンマ判定

 ↓1

【6 で普通です】

 中には誰もいない。
 が、特に珍しいこともない。

慈「……探して見つかったのは、これくらいね」

 見つかったのは、一つ。

胡桃「太めの針金か……」

由紀「これでバリケード作れるかな?」

 ホースのような大きさの針金――というのだろうか。
 金属の糸みたいなものだ。
 果たしてこれをどう物理の実験に使うのかは分からない。
 ひょっとしたら、これもなにかの備えなのかもしれない。大事そうに棚の中、ケースにしまってあったし。

慈「そうね。これで机を組むこともできるかしら」

胡桃「ってことは、次大切になるのは……」

慈「敵の掃討、バリケードの材料確保、ね」

胡桃「だな。さぁて、行くか」


 1・敵を掃討
 2・近くの部屋を探索(放送室)
 3・敵を避け教室に直行

 ↓1

【3 教室へ】

慈「敵は倒したから、とりあえず教室に行きましょう」

 廊下を見る。あと数体のあれらは、結構遠くにいる。
 教室になら何の問題もなく入ることができるだろう。
 私を先頭に、教室へと移動。手近な教室へと入っていく。
 誰もいない教室。血で濡れ、机や椅子などが散乱しているそこは言い様のない不気味さが漂っていた。

胡桃「バリケードの材料はありそうだな。にしても、誰もいないのは意外――」

 胡桃ちゃんの言葉が途中で途切れる。
 何か見つけたのだろうか。驚いたような、息をのむ音も聞こえたけど。

慈「胡桃ちゃん、どうし――」

由紀「……? っ!?」

 胡桃ちゃんの見ている先へ視線を向け、私、由紀ちゃんは彼女と同じように硬直した。
 ドアから入って横。廊下側の壁際。しっかりと周囲を見なければ見落としてしまいそうな場所にそれはあった。
 身体を引き裂かれた、あれの姿が――


慈  精神 90 → 80
胡桃  精神 55 → 45
由紀  精神 20 → 10

 なんで、こんなものがここに。
 深呼吸。臭いがひどい、けどちょっとは落ち着いたような気がする。

由紀「あ……あ、めぐねえ」

慈「由紀ちゃん、あんまり見ないように」

 私が言うやいなや由紀ちゃんが私にギュッと抱きついてくる。
 由紀ちゃんが限界に近いのかもしれない。ここまでの戦闘に、この死体。女の子には堪えるだろう。胡桃ちゃんも今回ばかりは大きなリアクションをしている。

胡桃「なんで、こんなものが?」

慈「分からないわ。でも、これはあれの仕業ではないはず」

胡桃「まぁ……そうだな」

 肯定しづらそうに、しかし頷く胡桃ちゃん。
 奴らの仕業ではない。それはすなわち、こんなことをする人間がいるということ。
 由紀ちゃんが聞いた声は、これがこうなる時に発したのかもしれない。
 あまり想像したくない話だった。

慈「とりあえず机とかは無事だって分かったから、戦い――」

由紀「――声がする」

慈・胡桃『へっ?』

 私の身体に顔を押し付けていた由紀ちゃんが、ぼそりと不吉なことを言う。
 声。まさか、この惨状を生み出した人物さんが……?
 まずいまずい。そんなことになれば、全滅の可能性もある。対人間なんてできるはずもないのだ。

胡桃「ど、どこからだ? 聞こえないけど」

由紀「……」スッ

慈「ええと……そこ?」

 由紀ちゃんが指さしたのは教室の隅にあるロッカー。
 その近くにある廊下へのドアは閉まっているが……あんなところに本当に人がいるのだろうか。

慈「胡桃ちゃん、先生が開けるから、なにかあったら――とりあえず、頭は避けて攻撃で。はい、由紀ちゃん、胡桃ちゃんのところに」

胡桃「攻撃か……分かった」

 由紀ちゃんを胡桃ちゃんに預け、ゆっくりと前に進む。
 二人も私の後ろをついてきてくれているようだ。

慈「……ふぅ」

 落ち着こう。開いたらできるだけ友好的に。
 奴が出てきたら、すぐさま逃げる。それだけだ。人間が不意打ちで攻撃を仕掛けてきたら、なんて思うと怖いけど。
 でも、見逃すわけにはいかない。

慈「行くわよ」

 小声で言い、後ろの二人を肩越しに確認。こっちを見ている胡桃ちゃんは首を縦に振った。

慈(危ない橋よね……)

 ままよ、という気持ちで一気にロッカーを開ける。

慈「え……?」

 そして、フリーズ。
 そこには予想外な人物がいた。
 栗毛色のふわふわとしたロングヘアー。白衣を着た、大人っぽい見た目の彼女は――

???「ふぁ……。あら?」

 起きた。眠そうに息をもらす彼女と目が合う。
 最初はきょとんとしていた彼女だが、状況を理解したのだろう。嬉しそうな笑顔を浮かべると、

???「慈さん!」

 ロッカーから飛び出し私に勢いよく飛びついてきた。

慈「うぇっ、ちょっと待――」

 不意をつかれ私は後ろ向きに転倒。
 ロッカーから飛び出してきた彼女に押し倒されたような体勢に。
 が、私の上にいる彼女はそんなこと気にせず、嬉々とした顔をしてはしゃぐ。

???「良かったです、無事だったんで――ごふ!?」

 で、叩かれた。胡桃ちゃんのシャベルに脇腹を。縦に向けたシャベルの側面でスパンと叩くくらいのレベルだが、痛そうだ。
 こてん、と横に倒れた彼女。私はシャベルを構えている胡桃ちゃんへ、手を挙げ止めるよう示す。

慈「大丈夫、味方です。保健室の先生よ」

胡桃「保健室? ……あ」

 気づいたのだろう。胡桃ちゃんが苦い顔をして目を逸らした。
 保健室の先生、栗宮天子。意外な生存者であった。


【選択肢次第で、と言いましたが今回は弱い由紀ちゃんをあえて連れてきた時点で仲間になることは確定です】
【由紀の精神ポイントが0にならなければ、ですが】
【昼で由紀ちゃんを連れず死体を発見した日の夜、物音で目を覚ました由紀ちゃんに対してどんな対応するかを選択肢が出てくる――なんてことも】
【仲間がキーパーソンになることもあるので、色々試すのも大切かと】



 で、教室。
 離れた位置で正座している栗宮さんを前に、警戒する私達――という構図が自然とできあがり、私達は事情聴取を行うことに。
 いくら知人とはいえ、この部屋のあれをやらかした人物ならば信用することはできない。しっかり話を聞いておかねば。

慈「栗宮さん。なんでここにいたの?」

天子「……いきなりこの扱いですか」

胡桃「当然だ。疑い真っ黒だろ」

天子「うう……世知辛いです」

 がっくりと肩を落として、栗宮さんは語る。

天子「ここにいたのはただの偶然です。ちょっと疲れて寝てただけで」

 ううむ。納得できるようなできないような。実際寝ていたんだし。でもまだまだ信用することはできない。
 疑いを向けているであろう私達の様子。栗宮さんは戸惑った表情をして、慌てて付け足す。

天子「しょ、職員室を目指してまして。マニュアル、分かりますよね?」

胡桃「マニュアル?」

 ――まずい。話を逸そうかしら。

慈「――こ、ここにある、その……死体は?」

天子「死体? ああ、そこにあるそれですか?」

 彼女はちらりとそれを見て、小首をかしげる。
 私と胡桃ちゃんはこくこくと黙って首肯。

天子「ちょっと好奇心が――」

慈・胡桃・由紀『……』

 この時点でおそらく、みんな逃げ出したくなっただろう。

慈「栗宮さん……ちょっと、それは……どうかと思うけれど」

天子「あれ? ドン引きですね」

胡桃「当たり前だろ」

天子「私はただ、医者として、医学の探求者として調査を行っただけです」

 きっぱりと、栗宮さんは言う。
 確かに医学を学んでいる人から見れば、不思議の塊だろうけど――まぁ、引くわよね。

慈「そうだとしても、あれはやりすぎよ」

天子「みなさんは……あれを人間として見ているんですか?」

 ストレートに、悪気なく放たれた言葉。それを聞いた瞬間、私はハッとした。
 ――そうだ。今、私達は倒れているそれを人間として見ている。
 だからひどいとも思うし、栗宮さんへ警戒もする。

胡桃「それ、は……」

天子「今の状況、人間以外に手段を選んでいる余裕なんてないのでは?」

胡桃「……」

 戦うことは仕方ないこと。理由なんて考えない方がいい。
 そう言っていた胡桃ちゃんですら、悩んでいる。
 ――多分、栗宮さんは私達が中途半端に立っている場所を越えて、人間とあれを完全に区別する視点にいるのだろう。

 それなら――いや、それはそれで厄介だ。

由紀「余裕はないけど、心はあるよ」

 ぼそっと、それまで静観していた由紀ちゃんが呟く。
 私と胡桃ちゃんがなにも反論できないでいる中、弱々しいながら、彼女もまたまっすぐと伝える。

天子「そうですね。ですから、強要する気はありません。みんな違ってみんないいと言いますから」ニコー

胡桃「あっけらかんとしてんのな……」

 両手を広げて笑顔を浮かべる栗宮さんに、今度は違う意味で引いている胡桃ちゃんだった。

慈「栗宮さん。私達と一緒に来ない? 今、休憩室に避難していて仲間は大歓迎よ」

天子「いいんですか?」

胡桃「――ちょっ、めぐねえ。大丈夫なのか?」

慈「大丈夫よ。生徒達を襲ったりはしないわよね?」

天子「人間を襲うなんてそんな。医者としてありえないです」

慈「ね? それに彼女がいれば怪我しても安心だし」

胡桃「説得力がなぁ……まぁいいけど。怪しいことしたらすぐ追い出すから」

天子「しませんよ。絶対安全、大丈夫です」

胡桃「胡散臭い……」

 ジト目で言い放った胡桃ちゃんに、由紀ちゃんが頷いて同意した。
 怪我はないようだし……とりあえず、安心かしら。


【栗宮天子と合流しました】

『ステータス』

【栗宮 天子】
 体力 70/70
 耐性 80/80
 精神 130/130
 力  30
 速さ 10
 賢さ 60
 技術 70

 『スキル』
 医術の心得 一日の終り、体力が一番すくないキャラを体力の1/3回復




【今日はここまでで、落ちます】

【モップで背後から――という設定】

天子「さぁ、それでは三階の確保、がんばりましょう」オー

慈(栗宮さんのせいで由紀ちゃんが色々限界だけど……やるしかないわよね)

 事情を説明し、行動を再開。
 まだ何個か教室は残っているけど、とりあえずは廊下の掃討を進めて問題ないだろう。

慈「――廊下のあれをなんとかしましょう」

胡桃「うん。慎重に倒していこう」

 頷き合う私達。教室のドアを開けると、三人とも頭だけ出して左右を確認。
 休憩室方面には一体もいない。そして、その逆。資料室方面は――


 コンマで判定(01~40 3体  41~80 4体  81~99 5体  クリティカルは0 ファンブルは6)

 ↓1

【73 で4体】

慈「……」

胡桃「多いな……」

 目視した限り、4体。
 まだホールの壁に隠れて見えなかったりもするかもしれないし、もっと多い可能性もある。
 とりあえず頭を引っ込めてドアを閉める。

慈「どうしよう……」

胡桃「真正面から行っても勝てそうな気はするけど、ミスすると痛いしな……」

天子「私、戦闘は苦手ですし」

 うーん、と唸る三人。
 ここは……どう戦うべきだろう。せめて一方向からしか攻められない現状を変えられれば、有利に戦えるのだけど。
 音は立てられないし、誘導する手段といえば囮くらい。もしどこかにおびき寄せても、有利になるかは……。
 でも、なにか手があるはず。今この状況をフルに役立てるのだ。


 1・囮になる、なってもらう(対象:慈、胡桃、天子、由紀)
 2・真正面から突撃
 3・指示を出す(対象:胡桃、天子、由紀)

 ↓1

【1・ 囮になる】
【『慈 速さ 20』 『コンマ 26』 結果:可】

慈(これくらいしか……)

 やるしかない。
 私は思い立つと、口を開いた。

慈「私があれをひきつけるから、胡桃ちゃんと……できたら栗宮さん。二人とも背後から攻撃して」

胡桃「背後から?」キョトン

栗宮「――そういうことですか。分かりました、ご武運を」

慈「ええ。胡桃ちゃん、お願いね」

胡桃「え? ――って、先生、引っ張るなって」

栗宮「ささ、胡桃ちゃんも由紀ちゃんもしっかり隠れましょう」

由紀「……うん。めぐめえ、気を付けて」

 私の意図を汲んでくれたのだろう。栗宮さんが二人と一緒に廊下側の壁近くに。
 これなら、ドアから見えることもないだろう。

慈「……」

 さぁ、行こう。
 深呼吸をし、私はドアを開いた。

 廊下へ出る。
 視線の先には、4体のあれ。
 できるだけ静かに、被害を少なく済ませたい。そのためには私が、囮にならないと。
 一人で頷く。そして私は走り出した。
 廊下には4体もの奴らがいる。そのすべてが一箇所に集まっているわけではない。一番前は当然として、その後ろ、もう一体も釣る……くらいがちょうどいいだろう。二体の注意を引くのが理想だ。
 慎重に、気をつけて、ある程度時間をかけても奴らは襲い。時間的余裕はあるはずだ。
 ――そう。

慈「はうっ!?」

 ――こけたりしなければ。

慈「……うう、私のバカ」

 幸い床に怪我するようなものはなかった。
 杭も床にぶつけなかったし、まだまだ挽回できる。
 急ごう。私は即座に顔を上げ、前を確認。

慈(4体とも来てる!)

 そして心の中で絶叫。
 いつ見つかったのかは分からない。転んでいる間に視界に入ったのかもしれないし、転んだ時の音に気づかれたのかもしれない。
 いずれにせよ危険な状態である。

慈「あわわわ……」

 これはもうみんなに頼るしかない。
 すごく不甲斐ない結果に終わったけど……真正面から戦うよりはましよね、うん。



 めぐねえの戦闘判定(力)
 ↓1

 胡桃、天子の戦闘判定(コンマが高いほど良い)
 ↓2

【『慈 力 30』 『コンマ 75』 結果:不可】

【『コンマ61』 結果:並】


 せめて作戦通りに。
 私は後ろへ、できるだけ奴らをひきつけて下がっていく。
 ここは、ここだけは慎重に。タイミングを間違えないように。教室のドア。前後と二つあるそれの、後ろのドアを奴ら全員が通り過ぎたタイミングで私は合図を出した。

慈「今!」

 タイミングはバッチリ。教室からシャベルを持った胡桃ちゃん、モップを持った栗宮さんが出てくる。
 4体全員がおびき寄せられていることに一瞬驚いたような顔をする二人だけれど、彼女らはすぐに行動を開始する。
 胡桃ちゃんが栗宮さんへ目配せ。静かに一歩踏み出て、近くにいる奴の足をシャベルで払った。そしてすぐにまた、近くのもう一体へと走っていく。
 栗宮さんは倒された一体の上に足を乗せ、モップで何度も殴打。その間に胡桃ちゃんは一体を転倒させ、しとめようとしていた。

慈(私も)

 ここで二人に注意が向くのは避けるべき。
 私は杭を手に先頭の一体へと向かっていく。
 既に私へ意識を向けているその一体。私が接近すると手をのばそうとしてくる。
 私の武器では真正面から殴りつけるようなリーチはない。
 私は横へ。奴の手を避けるように移動。難なくかわすことに成功。が、その直後私はもう一体の攻撃を受ける。

慈「あっ……!」

 油断していた。一体の影にいて、二体目のことはすっかり失念していた。
 痛みに顔をしかめ、一度距離をとる。肩を裂かれたみたいだ。


 佐倉 慈
 体力 70 → 40
 耐性 70 → 60


 残り二体。三人の戦闘判定(コンマが高いほどいい結果)
 ↓1

【コンマ 91 結果:優】

 肩が痛む。身体が重い。
 体力の底が見えてきたような気がする。
 けどここが踏ん張りどき。ここを越えれば、あとは部屋をチェックしてバリケードを作るだけ。

慈「――はぁ、っ」

 痛みは気にしない。目の前の敵に集中。やらねば。
 息を吐く。奥歯を食いしばり、私は杭を一体の頭目掛けて突き出した。
 命中。目の前でグロテクスな光景が広がるも、目は逸らさない。
 杭を突き刺した一体が私へ手を伸ばす。避けないと。反射的に思い、私は身体が動かないことに気づいた。

慈(まず――)

 手が迫る。私はそれを呆然と見ていた。

天子「はいドーン、です」

 ――が、その手は横へ逸れ、目の前に立つ奴もまた、横へ倒れた。
 その後ろに立っていたのは栗宮さん。モップで背後から殴打したのだろう。倒れた奴の顔には杭が深く刺さっていた。

胡桃「めぐねえ! 前に出過ぎだ!」

 次いで、胡桃ちゃん。
 後ろから疾走、跳躍し走った勢いを利用して正確に残った一体の首を打ちぬく。
 倒れた一体はそれで動かなくなる。たった一撃で最後の一体を仕留めてしまった。

慈「……ご、ごめんなさい。ちょっと、無茶しすぎたみたいね」

 これで全員。全部倒すことができた。
 怪我のせいか、それとも安堵したせいか。私はその場で座り込むと、壁に背を預けた。

胡桃「――だな」

 フッと笑い、胡桃ちゃんは私の隣に座る。

胡桃「……」

 彼女は無言で私の傷、自分の傷へと視線を落とすと最後に床を見て、不意に口を開いた。
 若干震える声で、言う。

胡桃「私達、あいつらみたいになるのかな」

 切り傷。昨日私が受けた首絞めや打撃とはまた違う負傷。
 あれらのようになる原因が分からない今、彼女がそんな心配をするのも当然のこと。
 戦うことで精一杯だったから忘れていたけど、私もそれは危惧していたのだ。

慈「胡桃ちゃん……」

天子「多分大丈夫ですよ」

 言葉を探していると、明るい声であっさり栗宮さんが告げた。

慈「……そうなの?」

天子「はい。私、一階からこそこそ来ましたけど、死体が色々ありましたから」

天子「そこの教室にある死体。それは『感染』した一体でしたけど、身体には噛み傷のみ」

天子「で、前に見た死体には切り傷しかありませんでした。おそらく失血死ですね」

天子「肩、脇腹、顔、脚――それらに傷があったので、自殺の線はないでしょう。他の人間からの攻撃という可能性もおそらくないかと。そんな余裕ないでしょうし」

 さらさらと、いつものおっとりとした口調で言うけど、そんなものを見るなんて校内は相当ひどい状態になっているみたいだ。

胡桃「あー、っと。つまり――噛まれないと感染しないってこと?」

天子「正解です。胡桃ちゃん、いい子ですね」

胡桃「なんだ……よかった。それじゃ、めぐねえも無事なんだな」

 胡桃ちゃんが心底ホッとした様子で言う。
 良かった。私はともかく、ここで胡桃ちゃんがいなくなったら、みんなが大変なことになっていたはずだ。
 噛まれたら感染。絶対正しいとは言えない説だけど、覚えておこう。
 栗宮さんがいてくれて助かった。

天子「まぁ細かく言えば失血死の人が耐性持ちだったとか、錯乱して自分の体のあちこちを切ったとか、本当に他の生存者から襲われたとか、考えられる可能性はあるんですけど――無事な可能性が極めて高い――あら? どうしました?」

胡桃「……なんでもない」

 これでちょっとデリカシーというか、正直すぎるところがなければなぁ……と思う。


慈  精神 80 → 75
胡桃  精神 45 → 40
天子  精神 130 → 125


【三階の敵掃討に成功しました】

【放送室の中はまだ不明です。これから新しくコマンドを追加したいと思ってるので、それを選んでいただければ】
【一度落ちます。今日の夜、深夜にまた戻ってくるかは不明です】

 部屋の安全確認を念入りに済ませ、悠里ちゃんも呼んで本格的にバリケードの建造をはじめる。
 右、左、中央の階段下。二階と三階の中間、踊り場近くにそれぞれ机を重ね、固定。
 とりあえず、これでやつらは入ってこれないだろう。力技しかできなそうだし、数がいなければどうにかなるはず。

 ――で、すべてのバリケード建設を終え。

慈「みんな、お疲れ様」

 私達は再び休憩室に集まった。ちょっと早めの夕食である。
 今日のメニューはスープにパン。温かなほっとする味だ。

胡桃「ほんとに、お疲れ様だな。特にゆき、疲れただろ?」

由紀「う、うん。けど大丈夫」

悠里「ゆきちゃんもそうだけど、くるみ、先生も少しは休んでくださいね? 怪我したんだから」

天子「そうですよ。そんなに深くないとはいえ、体力の問題は大切ですから」

慈「ええ。分かってるつもりよ」

胡桃「うんうん」

悠里「つもりじゃだめです」キッパリ

慈「あはは……分かりました」

 叱られるように言われ、私は苦笑した。
 生徒に心配をかけるわけにもいかない。しばらくは安静かしら。


【イベント『生活圏内』 のクリア条件を達成しました】
【屋上の菜園が開放されました。資源の要素が追加されます。安全圏内の探索が追加されます】



【教えて! りーさん! のコーナー】


慈「私もう悠里ちゃんが先生しても驚かないです……」

悠里「それじゃ、新しく追加された要素について説明するわね」

慈(スルー……!?)

悠里「まず、資源の要素。>>17に書いてある通り、資源がなくなると体力、精神が減少していくわ。減るのは僅かな数値だけど、精神の一日終了の回復もなくなるので注意ね。スキルは発動するから、そこは安心して」


【共通ステータス】

『資源』 食糧、電気などの総量 
『消費量』 一日毎の資源消費量。一人辺り基本は100。
『生産』 一週間辺りの資源加算値

悠里「今後は一日毎に表示されるから、気をつけるようにね」

悠里「そして二つ目。安全圏内の探索」


『安全圏内の探索』
 イベントなどで安全を確保した場所を探索します。
 戦闘などはなく、資源の回収、物資の回収、イベント、R-18的なイベントなどなど、日常パートメインとなります。有効活用しましょう。
 >>1の判断で時間が経過します。これ重要。

悠里「これも生き残るために大切な要素だから――覚えておきましょう」

慈「大切なことですね。みなさん、覚えておくように!」

【共通ステータス】

『資源』 2000
『消費量』 500 
『生産』 400




慈「……これで、いいかしら」

 ノートを閉じる。
 食事の後に短めの授業。その後は各自のんびりすることに。
 今日の記録は書き終わった。これからの暇ができてしまったのだけど……なにをしようか?


 夜コマンド
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】
 5・マニュアル確認

 ↓1

【3・トレーニング 力】

慈「……そうするべきよね」

 これまでの戦い。ほとんどが足手まといで、時間を稼いだり、傷を負うことで隙を作ったり――成果はそれなりにあがっているけど、このままじゃ身体がもたないだろう。
 自分だけでも戦えるように、鍛えるべきよね。みんなに心配をかけないためにも。
 ――よし、そうと決まれば早速トレーニングだ。
 私は立ち上がり、適当な教室へと向かった。
 トレーニングメニューは……杭の素振りでもしていようか。


 トレーニングの効果(コンマ分伸びます)
 ↓1

【コンマ 5 で力が5上昇です。合計35です】
【それと、>>55のルールに変更。
  力、速さ、賢さ、技術の各ステータスは80限界です。ステ70超えで、コンマ判定に失敗すると問答無用で結果が不可の判定に】

【あと、胡桃のスキルについての説明も忘れていたのでしておきます】
【胡桃のスキルはプラス補正と書いてありますが、基本的には結果を一段階上に上げる効果があります。可なら良に良なら優にといった感じに。不可は不可ですが――時折>>1がミスすることもありますのでご了承を。気づいたらちょこちょこボーナス付けます】
【また、敵人数や心理状況などの要素で補正が弱めにかかったり、判定が厳しかったりすることも。>>1の判断次第なのであれなのですけど、そこも運ゲー要素の一つということで】

【とにかく、胡桃ちゃんは強い。戦闘のコンマ判定は基本的に低いほどいいということです】


【ということで、今日はここまで。落ちます】

【二人共救出可能です。圭はオリキャラ扱いになりますが】

慈「――うん、いい感じ」

 一人で身体を動かす。
 安静にとか思っていた直後にこれはあれだけど、必要なこと。多めにみてもらうとしよう。

慈「さて……汗でも流そうかしら」

 トレーニングも終わり。杭をしまい、呟く。
 今日一日働きっぱなしだったし、身体の汚れが気になる。
 この時間ならば誰もいないだろう。私はのんびりと教室を出て、職員の更衣室へと向かった。


 更衣室に誰がいる? いなくてもOK
 ↓1

【今度から人物指定にも対象をつけようと思いました まる】
【とはいえクリティカル。安全確保の後とはいえ、今回は再安価せず突き進みます】


慈「シャワーが使えるって、贅沢なことよね……」

 しみじみ思いつつ、私は休憩室から更衣室へ。
 さぁ、服を脱いでシャワーを浴び――ん!?
 にこにこと笑いながら更衣室に入った私は、ありえないものを目にし硬直する。
 安全を確保したはずの三階。そこにあれがいたのだ。

慈(なんで!? 見落としてたの!?)

 まだ気づかれてはいない。
 私はすぐさま休憩室に戻る。私が一人で戦うのは危険すぎる。
 それにしても、何故あそこに? 他の子はもうシャワーくらい浴びているだろうし、その時にはいなかったということだろうか。

胡桃「――うん? めぐねえ、どうしたの?」

 焦りながら頭を回転させていると、私に声がかかる。
 胡桃ちゃんだった。入ってすぐ出てきた私を、きょとんとした目で見ている。

慈「えっと、中に――あれが」

胡桃「『あれ』? ゴキでも出――」

 胡桃ちゃんががらっとドアを開け、無言で閉じる。静かながら早かった。

胡桃「なんでいるんだ……」

 なんでだろう。命がかかってる場面なのにギャグチックに見える。

慈「分からないけど……胡桃ちゃんが使ったときって、更衣室は……」

胡桃「あんなのいたら大騒ぎだ」

慈「そうね……」

 間違いなく襲撃されるだろうし。

胡桃「まぁ、いるならどうにかしないとな……拠点から近すぎる」

慈「ええ。私も協力するわ」

 シャベル、杭。それぞれ武器を持ち、更衣室へ。
 倒すのもそうだけど、原因を突き止めなくては。

慈「これで……」

 まず、私が杭を投げる。
 奴がいる近く、奥の壁へぶつかるよう勢いよく投げつけ音を立てる。
 そこへ胡桃ちゃんが肉薄。音の方向を見ていた奴の足をシャベルで払う。転倒したところを足でしっかり身体を押え、とどめ。さすがは胡桃ちゃん。難なく処理することができた。

胡桃「……よし。これでとりあえずは安心だな」

慈「お疲れ様。ありがとう、胡桃ちゃんがいて助かったわ」

胡桃「どういたしまして。っていうか、なんでここにいたんだろう?」

慈「あ……。あれが原因ね、きっと」

 休憩室側の入り口とは反対側、階段のある方角の出入口。
 そこのドアが開いていることに気づく。多分あそこから、倒しもらした奴が入ってきたのだろう。

胡桃「少しでも隙間があると入るのな。警戒しないと」

 ホント、ゴキブリみたいな……げふん。

慈「ここも普段は簡単なバリケードでも作っておこうかしら。休憩室に近いし」

胡桃「だな。りーさんに話しておかないと」

 死体は二人でひきずるようにして、廊下に置いておく。
 ドアはしっかり封鎖。鍵も一応かけておく。これで大丈夫だろう。

胡桃「うーん……ちょっと汚れたな。あたしももう一回浴びてくか」

 自分の身体を見下ろし、胡桃ちゃんが苦い顔をする。
 女の子が返り血をつけたまま眠るのは辛いだろう。電気の節約も考えないとだけど、胡桃ちゃんは頑張ってくれているのだ。一回のシャワーくらいバチもあたなら――

胡桃「めぐねえ、一緒にシャワー浴びてもいい?」

 ――え?


【一回落ちますー】

胡桃「めぐねえ、ちょっと待っててー」

慈「え、ええ」

 どうしてこうなったのだろう。シャワーの個室で返事をし、私は思う。
 これまでのことを思い返しても、私がこんな状況に巻き込まれるなんて誰も予想がつかないだろう。
 ――だって、私はわざわざみんなと時間をずらしてシャワーを浴びようとしていたのだ。誰とも会わないように見られないように。
 理由は、私が生えているから。
 女の子だらけの現在、見られては間違いなく問題になるだろう。というか、引かれたり、気を遣われて微妙な反応をされるに違いない。

慈(生徒と先生。そして女の子同士。大丈夫、大丈夫。意識することないわ……)

 身体に巻いたタオルを手で押え、私は自己暗示のごとく唱える。
 相手は胡桃ちゃん。私のことを先生として、歳上として頼ってくれる可愛らしい教え子だ。
 ――よし! 大丈夫!
 私が気持ちを固める。その瞬間、個室のドアが開いた。

胡桃「おまたせ、めぐねえ」

慈「もう、佐倉先生でしょ――」

 ツインテールをおろしたロングヘア。
 いつもより女の子らしく見える彼女の眩しい笑顔。陸上部らしいスラっとした健康的な身体にかかる髪。
 ――くらっとくる魅力がある。

慈「ど、どうぞいらっしゃいました!」

胡桃「めぐねえ!?」

 果たして、平静を保てるのか。あれほど大丈夫だと確信を持てたのに、今は自信があまりなかった。

胡桃「さて、こういう時は髪と身体を洗ってから――って、めぐねえ」

 生徒とほぼ密室で二人きり。
 どうこの修羅場を乗り越えようかと頭を悩ませていると、胡桃ちゃんが私へと怪訝そうな目を向ける。
 バレるはずがない。そうは思うけど心臓がばくばくと鳴るのが分かった。

慈「な、なに?」

胡桃「なんでタオル巻いてんの?」

 そ、そこか……! っていうか当然よね。
 タオルなんて巻かないでずっと背中を見せていればよかった……!

慈「恥ずかしくて……駄目?」

胡桃「駄目じゃないけど、身体洗えないし……めぐねえ、スタイルいいと思うけど?」

慈「ぐ……っ」

胡桃「なんで唸る」

 逃げられそうにない。
 とても見せたくはないけど……この状況になったらどうしようもないだろう。
 私はため息を吐いて、おそるおそるタオルを外した。


 胡桃ちゃんの反応 (コンマ1~5で恥ずかしがる 6~9,0で積極的に)
 ↓1

胡桃「うん、やっぱりめぐねえは恥ずかしがるような身体じゃ――」

 タオルを外す。
 露わになった身体を胡桃ちゃんは上から下へ視線を動かし、そして問題のものを見た。

胡桃「――へ!?」

 そして、赤面。
 あるはずのない男性のそれを見て、胡桃ちゃんは顔を瞬時に赤くさせた。

胡桃「め、めぐねえ……それって」

慈「ええ、まぁ……特殊な体質で……」

胡桃「ご、ごめんっ。そんなこと知らずに無神経なこと言って」

慈「大丈夫よ。気にしてないから」

 本当はいつもどおりを予想だけでも精神力を消費しかねない苦行中なのだけど――心配をかけるわけにはいくまい。

慈「さぁ、シャワーを浴びて、早く休みましょう?」ニコリ

胡桃「あ、あぁ。そうだな」メソラシ

 胡桃ちゃんと二人でシャワーを浴びる。
 その体験は……まぁ、苦しかった。色々な意味で。
 でも、先生らしく何事もなく終えられてよかったとも思う。
 そして同時に、私って女の子が好きなのでは……なんて気持ちも。これから自制にも気をつけておかないと。


【胡桃の好感度が10上がりました】
【慈の精神の最大値が10上がりました】

レズに目覚めたか(ガタッ

【スキル 良回復により、慈の体力が10回復】
【スキル 医術の心得により慈の体力が30回復】
【一日が終了しました。精神が最大値の半分回復します】
【資源が-100されました】


 【佐倉 慈】
 体力 80/100
 耐性 60/100
 精神 110/110
 力  35
 速さ 20
 賢さ 40
 技術 50

 『スキル』
 良回復 一日のはじまりに体力を10回復

 【丈槍 由紀】
 体力 80/80
 耐性 50/50
 精神 25/30
 力  10
 速さ 20
 賢さ 10
 技術 20

 『スキル』
 庇う 味方が死亡するダメージを受けそうな時、自分がそのダメージを受ける


 【恵飛須沢 胡桃】
 体力 100/120
 耐性 90/100
 精神 80/80
 力  60
 速さ 60
 賢さ 20
 技術 20

 『スキル』
 シャベル愛好家 シャベルが関わるあらゆる判定にプラス補正


 【若狭 悠里】
 体力 90/90
 耐性 80/80
 精神 70/70
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 60

 『スキル』
 園芸の知識 一日最後の判定のコンマが3、5の時資源に+300



 【栗宮 天子】
 体力 70/70
 耐性 80/80
 精神 130/130
 力  30
 速さ 10
 賢さ 60
 技術 70

 『スキル』
 医術の心得 一日の終り、体力が一番すくないキャラを体力の1/3回復


【共通ステータス】
『資源』 1900
『消費量』 500 
『生産』 400


【好感度一覧】
由紀 40  「いい先生、だよね」
胡桃 50  「頼りにしてる」
悠里 30  「頑張ってるわよね」
天子 30  「いい同僚です」

 三日目の朝だ。
 昨日と同じく、私達は起床し身支度をすると休憩室のテーブルの周りに集まる。
 今日の会議である。

慈「それじゃあ、新しい提案とか情報は……」

悠里「はい」

 まず一人。悠里ちゃんが手を挙げる。

悠里「屋上への道が確保できたので、本格的に菜園をはじめようと思います。その手伝いをみんなにしてほしくて……」

 【イベント『菜園』が発生しました。
 内容:『学校で籠城するためにも食糧は重要。自給自足はサバイバルの基本である』】

 屋上の菜園。機能が復活すれば、より大人数での生活でも不自由が少なくなることだろう。

天子「私からも、一つ」

 次いで、栗宮さん。

天子「ここへ来るまでに望遠鏡を見つけました。これ、街の様子見とかに使えませんか?」

 【イベント『街の様子』が発生しました。
 内容:『天子が所持していた望遠鏡。これがあれば、窓や屋上から見える光景もまた変わってくるだろう』】


 今日あらたに挙がった話題はこんなものだろうか。
 さて、今日はどうするべきだろう?


 朝~夕方コマンド(とりあえずコマンドだけ選んで、その後メンバーやら詳細を決定します)
 3・授業
 4・探索

 ↓1

【安全圏内の探索を追加し忘れました。夜のコマンドから追加しますのでご容赦を】


【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『菜園』が発生しました。
 内容:『学校で籠城するためにも食糧は重要。自給自足はサバイバルの基本である』】

 【イベント『街の様子』が発生しました。
 内容:『天子が所持していた望遠鏡。これがあれば、窓や屋上から見える光景もまた変わってくるだろう』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1

【イベント『菜園』 参加メンバー 悠里、胡桃】

慈「……食糧関係は大事よね」

 今日やることは決まった。
 朝の会議の内容をノートにまとめると、私は今日の予定を告げるべく立ち上がった。


【――というわけで、ちょっと中途半端ですが、今日はここで落ちま】

乙 ついでに社会人はまだ募集中みたいなので
名前 山西 棗
『年齢』29
『容姿』
暗めの緑色のサイドテール。
小柄体系。
全体的に動きやすそうな服装をしており、ずぼらに見える。
AAAカップ。

『得意・長所』
これ以上ないというタイミングでカメラに収める事が出来る。
写真を現像出来る技術を持っている。
力仕事が得意な方である。

『苦手・短所』
方向音痴。
資源に余裕があると大食らいになる。


『設定』
写真記者をやっており事件当日の早朝に取材の為、巡ヶ丘駅周辺にあるビジネスホテルでチェックインを取り
深夜の取材に備え、眠っていた時にあの爆発が起きて目を覚ます。
慌てて窓から外を見るとゾンビだらけになっている事を知る。
生存者がいないかどうか探し出す為、そしてこの事件を写真に収める為
ホテルから出て崩壊している巡ヶ丘市を歩き始めた。
大きな防水の荷物入れを持っているがカメラに関する道具を入れている為、他の物を入れる余裕はほとんどない。

今回の事件は不幸ではなく自分の名前を売るチャンスだと考える事で落ち着かせようとしており、
他の人の前では強がってはいるが、実際はものすごく怖いと思っている。

持ち物
カメラ(デジカメではない)
フィルム(枚数的にはかなり余裕がある。)
現像に必要な道具一式
電池×10(カメラ用)
缶詰(ツナ缶とみかん缶を一つずつ)
ナイフ(刃渡り5cm)

【耐性は会話やイベント、あとは後々追加される夜コマンドで回復可能です。あとはキャラのスキルとか】
【仲間が増えても基本的にはめぐねえが中心になって作業が進むので、分担はないです。単に>>1が大変になる、という理由もありますが】

【めぐねえは原作の結末以外に選べた選択肢がいろいろあったと思ったので――このSSを書いたというのもあります】


 早速菜園を復興させるべく、私と胡桃ちゃん、悠里ちゃんの三人で屋上に向かうことに。
 由紀ちゃん、栗宮さんにはしっかり休んでおくように言っておいた。

胡桃「よーし、やるか」

慈「お野菜のために頑張りましょう」

悠里「よろしく、二人共。先生、まずは――」

 悠里ちゃんが視線をめぐらせ、言葉が途切れる。
 どうかしたのかと心配した直後、悠里ちゃんが私達へと振り向いた。

悠里「くるみ、太陽光の電池の様子を見てきてくれる?」

胡桃「え? ああ、いいけど」

 不可解そうな顔をする胡桃ちゃん。
 首をかしげながら彼女はすたすたと歩いていく。
 太陽電池も確かに大切だけど……どうしたのだろう? いきなり私から胡桃ちゃんに指示対象を移したのも気になる。

慈「悠里ちゃん、どうかしたの?」

悠里「……くるみにはあまり見せられないなぁ、と思って」

 ちらり、と悲しげな目をして屋上の柵近くを見る悠里ちゃん。
 そこには一体の亡骸が――

慈「――う。ごめんなさい、考慮が足りなかったわね」

悠里「あ、いえ。先生は悪くないです。ゆきちゃんも栗宮先生も力仕事は大変そうですし」

 そうは言ってもやっぱり申し訳ない。
 あたふたと私を励ますように言葉をかけてくれる悠里ちゃんへ、私は苦笑を返す。
 もっと気を遣える先生にならないと、これから大変よね……。

悠里「……くるみには悪いけど、外へ」

慈「そうね」

 今はまともに葬ることもできない。
 しかしここにこのまま残しておくわけにもいくまい。
 私と悠里ちゃんは亡骸に近づき、持ち上げようとした。


 二人の力の合計値 55でコンマ判定
 ↓1

【酉欄の記憶が消えたので、酉が前のと違うかも】

【『力 55』  『コンマ 85』で失敗】

 なんとか死体を持ち上げようとする。
 けれど重くて中々うまくいかない。多分運ぶだけならできるだろう。
 でも柵を越えて外へ捨てるとなると別問題だ。

胡桃「めぐねえ、りーさん」

 苦戦することしばらく。不意に声がかかる。
 見れば、そこには胡桃ちゃん。
 ――見られてしまった。悪いことをしているわけでもないのだけど、私はつい気まずさを感じてしまう。
 悠里さんもバツが悪そうな顔をしていた。

【ですね。保存しときました】
【なんか表示がおかしくて、酉とかmail欄いちいち書くのとかが面倒なので一旦落ちます】

慈「胡桃ちゃん。あの、これは……」

胡桃「――分かってる。私に気を遣ってくれてるんだろ?」

 うろたえる私達。胡桃ちゃんはそんな私と悠里ちゃんを見て、ニコリと笑う。

悠里「――ごめんなさい。勝手にこんなことして」

胡桃「大丈夫だって。もう……死んでるんだから、さ」

 言って、胡桃ちゃんはしゃがみこみ、中央を支えるように持つ。
 その顔は悲しそうで、苦しそうで……私達はなにも言えなかった。

胡桃「さよならの時間はとっくにすぎてるんだ。だから、大丈夫」

 胡桃ちゃんが協力してくれたお陰でさっきよりは楽に持ち上げることができた。
 死体が落ちていく。少しして下の方で小さな音が立った。

胡桃「――さて、始めるか」

 外を数秒眺め、胡桃ちゃんはなにごともなかったみたいに笑う。
 彼女をここに連れてきたのは私だ。
 また、助けられてしまった。私は自分の不甲斐なさを改めて感じるのだった。

 菜園、というものを私はあまり知らない。
 どういうものなのか、その単語が示す意味程度は知っている。
 けれど手入れは何をするのかだとか、どうやって作物を植えるのだとか、実際仕事を手伝ってみると何一つ知らないことを痛感させられる。

悠里「……」

 その点、悠里ちゃんはすごい。
 20年以上生きてきた私よりも幅広い知識と、早い頭の回転、応用。
 普段も彼女の聡明さには助かっているけど、こと菜園に関してはもう私なんて手が届かないのでは、と思える領域にいる。
 私は国語の先生だし、菜園の知識とかは必要とされないんだけど……この状況になると彼女の知識と、頭の回転が羨ましくなる。
 なんて、雑談がてら私は語る。

悠里「たまたま、私の趣味が高じてこうなっただけです」

 すると彼女は照れくさそうに笑った。
 うーん、返答にも窺えるこの謙虚さ。私がとても小さな人間に思える。

悠里「先生だって、すごいと思います」

 作業をしながら、彼女が言う。

慈「私が?」

悠里「はい。ここまでほぼ無傷で私達を導いてくれましたし……くるみから聞きましたよ。昨日の三階確保もほとんど先生の指示だって」

慈「そ、そう言われるとちょっと恥ずかしいわね……」

 胡桃ちゃんも私のことを褒めてくれてたりしたのだろうか。嬉しい。
 作物の具合を見つつ、私は答える。顔、にやけたりしていないだろうか。

悠里「でも――自分が怪我をしていくのはどうかと思います」

慈「うっ」

 自分の頬に触れていると、痛い言葉が。
 隣を見れば悠里ちゃんが若干怒ったような目をしてこちらを見ていた。

慈「ご、ごめんなさい……」

悠里「私達もいるんですから、もっと頼ってくださいね。助け合い、です」

慈「……」

 助け合い。自分で言ったことだけど、今思うとそれは不平等な気がした。
 彼女らは子供。本来は命の危険なんて考えずに、勉学に遊びに、恋愛に――青春に生きるべき子たちだ。
 そんな彼女らを助け合いと称して弱肉強食の世界にかりだすのは、果たしてどうなのだろう。
 なんてことも思ってしまう。


 1・「身体がつい動いちゃうから……あんまり保証は」
 2・「私が弱いせいだから」
 3・「私は先生だから」

 ↓1

【3 「私は先生だから」】


慈「だから、みんなのこと、できるだけ傷つけたくなくて」

悠里「……だからって、先生が怪我したらみんな心配しますからね」

慈「ええ。それは分かってるわ」

 私は頷く。
 もう、こうして心配させてしまっているし……できるだけ避けるようにはしよう。できるだけ。
 私がきっぱり言うと、悠里ちゃんは表情を柔らかくさせる。そして温かな笑みを浮かべると、静かに言う。

悠里「先生って、珍しいというか……変、ですね」

慈「――え!?」ガーン

 私はびっくりした。まさかロマンチックな表情でそんなことを言われるとは。

悠里「普通の先生はそんなこと思わないと思いますよ」クスクス

慈「そ、そう……?」

 そう言われてもぴんとこない。
 悠里ちゃんの言う、その普通の先生は、どういうことを思うのだろう?

悠里「……あの」

 それから、ちょっと作業をして――不意に悠里ちゃんが口を開いた。

慈「うん? どうしたの? 悠里ちゃん」

 作業の手を止め、私は横にいる彼女を見る。
 悠里ちゃんはなにか思いつめたような顔をして、まっすぐ前を、菜園の野菜を見つめていた。
 何か真面目な話なのだろう。――先生なのだから、しっかり聞いてあげないと。
 私もまた真面目な顔をして、悠里ちゃんの言葉を待つ。
 少し、空気が重くなったような気がした。時間にして数秒。声をかけ、何かを考えるにしては長い時間を空けて、悠里ちゃんは問う。

悠里「めぐねえ、って呼んでもいいですか?」

慈「……?」

 雰囲気と台詞のギャップに、理解が及ばなかった。


【一旦落ちます】

 めぐねえ。
 生徒達から度々――というか、毎回呼ばれてしまうアダ名である。
 私はあくまで先生だし、あんまり距離が近すぎるのは、なんて思っているのだけど……まさか面と面を向かって言われるなんて。
 それも、悠里ちゃんみたいな優等生に。

慈「あの、悠里ちゃん? できれば、佐倉先生とか、いつもみたいに先生、で」

悠里「あ、はい。分かってます」

 私が言うと、彼女はあたふたとしながら何度か頷く。

悠里「その……二人きりの時に――駄目ですか?」

 そう上目遣いがちに言われてはときめいて――じゃなくて。
 どうしたのだろう? 悠里ちゃん。
 ……寂しい、のかしら?
 親や友達、日常から遠く離れた現在、誰かに甘えるなんてこと、中々できやしないだろう。
 ましてや彼女は生徒達の中でも大人びた少女。甘える対象なんて限られているのかもしれない。
 栗宮さんは……微妙に浮世離れしてるし。
 そう考えると、私は彼女のために力になってあげるべきなのかもしれない。

慈「そうね……二人きりの時なら」

悠里「めぐねえって呼んでもいいんですか?」

慈「うん。特別にね」

悠里「あ、ありがとう――めぐね」

胡桃「へー、めぐねえ、りーさんは許すんだ」

 私と悠里ちゃん以外の声に、私達二人はびくっと身体を震わせた。
 声の方向を見ればいつの間にか花壇を挟んで前方に、にやにやと笑う胡桃ちゃんがいた。

胡桃「よ。頼まれてた仕事、終わったぜ」

悠里「え、ええ、ありがとう、くるみ」

胡桃「ぷっくくく……りーさん慌ててる」

悠里「もう、くるみ。からかわないの」ゴゴゴゴゴ

胡桃「ごめんなさい」

 ――大丈夫そう、かしら。
 悠里ちゃんもいつも通りに見える。
 悠里ちゃんが悩んでいるように見えたのはきっと、気のせいだろう。


 さて。作業も一通り終わった。
 三人で集まって休憩をする。
 これで普段どおりの機能を取り戻せるだろうと、悠里ちゃんは言った。

悠里「でも、改良することもできると思うの」

 加えて、興味深いことも。

胡桃「改良か。生活するなら大切なことだな」

悠里「ね。でも色々必要なものがあるから、それが集まり次第、ということかしら」

悠里「先生、菜園と太陽電池の改良――覚えておいてくれると嬉しいです」

慈「ええ、勿論。必ず役に立つだろうし……」

 必要な道具を集めて改良。
 ――うん、覚えておくことにしよう。


【菜園が利用できるようになり、生産量に+200されました】
【朝~夕方コマンドに開発が追加されました】

【教えて! りーさん! のコーナー】

悠里「ということで、新コマンドの説明よ」

慈「わーい! りーさんのコーナーだー」

悠里「先生、どうしたんですか?」

慈「……そっとしたげて」


【開発コマンド】

 畑は肥料、土。
 太陽電池は作業道具など。

 探索などで入手したものを一つ消費して開発を行うことができます。
 開発時もコンマ判定。コンマによって生産量が上昇します。
 01~99、00で判定。00はファンブルなので上昇なし。
 クリティカルで100。

 運要素が強いので、上がらなくても泣かない。



悠里「人が増えてくると、生産量もすごく大切になってくるので、頑張ってね」

慈「先生らしい活躍をしたい……」

 夜。
 昨日のようにレトルト食品を食べ、自由時間となった。

悠里「――先生」

 コト、とノートに記録を書いているとテーブルの上にマグカップが置かれる。
 心が落ち着く甘い香り。中に入っているのはホットココアみたいだ。

慈「ありがとう、悠里ちゃん」

悠里「いえ。あの、ちょっと先生にお願いがあるんですけど――」

慈「お願い?」

悠里「はい。余裕がちょっとは出てきたので」

 私の向かいに座り、悠里ちゃんは語り始めた。


【夜コマンドに夜食作りが追加されました】

【教えて! りーさん! のコーナー】

悠里「ふふ、2連続よ……!」

慈「先生、すごく惨めになってきたんだけど……」

悠里「落ち込まないで、頑張ってください、先生」


【夜食作り】

 余った食材で夜食を作成します。
 コンマ判定で高ければ高いほどいいものができます。
 出来によって体力、耐性、体力が回復。

 作成後、一人で食べるか誰かを呼ぶか選択することができます。
 夜食の効果を分けることは勿論、出来がよければ好感度も上がります。
 ステータスが危険そうだと思った仲間、仲良くなりたい仲間を優先的に選ぶといいでしょう。

悠里「耐性は重要なステータス。他で回復するのも難しいし、まめに回復を図ったほうがいいわね」

慈「私なんて真っ先に減るから……気をつけないと」

【説明忘れてました】
【夜食作りは資源を200消費します。お気をつけて】



慈「夜食作り……」ゴクリ

慈「みんなのために頑張るのもいいかもしれないわね」

 とはいえ、私が手料理をまともに作れるのかは……微妙なところではあるけど。
 ――さて、今夜は何をしようか。



夜コマンド
 1・夜食作り【資源200消費】
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】
 5・マニュアル確認

 ↓1

【1・夜食作り】

慈「……やってみようかしら」

 そういう話を持ってくるんだし、余ってるものがあるのだろう。
 私はココアの入ったマグカップを休憩所の台所へと持っていく。
 ――さぁ、初めての夜食作りだ。張り切ってやろう。


 料理の結果は? (コンマ判定)
 ↓1

【『コンマ 30』 結果:普通……? いや、微妙?】
【おおう、ゾロ目出てましたね。指摘ありがとうございます】
【ファンブルは料理自体できない感じにしようかと思ってましたが――気づかなかったので、料理の出来を下げる――必要もなさそうですしこの料理の出来で進行します。気付かなかったことへのボーナスということで】


慈「……うーん、どうかしら」

 料理を終える。
 料理といってもいたって簡単で、カレーと野菜、ご飯を混ぜて煮込んだだけもの。
 カレー補正は料理の中では強いし、他の食材も無難。ご飯はカレーに合うし、問題ないだろう。

慈「……誰かと食べようかしら」


 誰かと食べる?(仲間の中から一人選択)
 ↓1

【くるみ ファンブルでござい】

慈「胡桃ちゃんと食べようかな」

 今日もまたお世話になってしまったし、胡桃ちゃんにお礼をしないと。
 お礼になるかは分からないけど……主に出来的な面で。

慈「でも、気持ちが大事よね」

 うん、と頷く。
 早速お皿に盛りつけて、みんなに申し訳ないから生徒会室にでも運んで――

慈「あ」

 ――転けた。
 何もないところで、呪われてるんじゃないかってくらい綺麗に。
 つま先がなにかにつまづき、身体が傾いたのを感じた瞬間、手にしていたプラスチックの食器は宙を舞っており――私は訪れるであろう瞬間に自嘲の笑みを浮かべた。
 で、身体に衝撃。直後にちょっと遠くで食器の音。
 なにが起こったのかは言わずとも分かるだろう。こすった鼻の先を撫で、私は顔を上げた。

胡桃「……」

 そう、放られた料理が胡桃ちゃんにぶつかったのだ。
 ……。
 ――って、

慈「あああっ! ご、ごめんね! 胡桃ちゃん!」

胡桃「めぐねえ……ある意味天才だな」

 ため息を吐き、肩を竦める胡桃ちゃん。怒ってはなさそうだけれど、すごく申し訳ない。
 ううう……恩返ししようと思ったのにこの結果。それもピンポイントに胡桃ちゃんへ被害が。今日は厄日――なのかもしれない。



【胡桃の好感度が3下がりました】
【翌日のみ、慈の精神が10減少します】


【ということで、今日は落ちます】

【慈 スキル良回復 が発動しました】
【天子 スキル医術の心得 が発動しました 胡桃の体力が全快です】
【夜食コマンドを選んだため資源が-200されました】


 【佐倉 慈】
 体力 90/100
 耐性 60/100
 精神 100/110
 力  35
 速さ 20
 賢さ 40
 技術 50

 『スキル』
 良回復 一日のはじまりに体力を10回復

 【丈槍 由紀】
 体力 80/80
 耐性 50/50
 精神 30/30
 力  10
 速さ 20
 賢さ 10
 技術 20

 『スキル』
 庇う 味方が死亡するダメージを受けそうな時、自分がそのダメージを受ける


 【恵飛須沢 胡桃】
 体力 120/120
 耐性 90/100
 精神 80/80
 力  60
 速さ 60
 賢さ 20
 技術 20

 『スキル』
 シャベル愛好家 シャベルが関わるあらゆる判定にプラス補正


 【若狭 悠里】
 体力 90/90
 耐性 80/80
 精神 70/70
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 60

 『スキル』
 園芸の知識 一日最後の判定のコンマが3、5の時資源に+300



 【栗宮 天子】
 体力 70/70
 耐性 80/80
 精神 130/130
 力  30
 速さ 10
 賢さ 60
 技術 70

 『スキル』
 医術の心得 一日の終り、体力が一番すくないキャラを体力の1/3回復


【共通ステータス】
『資源』 1800
『消費量』 500 
『生産』 600


【好感度一覧】
由紀 40  「いい先生、だよね」
胡桃 47  「……ドジだよな」
悠里 30  「頑張ってるわよね」
天子 30  「いい同僚です」

【ルール変更のお知らせ】
【共通ステータスの生産欄、一週間辺りの資源加算値と書きましたが、それだとすぐ資源が枯渇するため一日辺りの資源加算値とします】
【それと>>299 回復するステータスは体力、耐性、精神です。訂正】

 4日目。
 それなりに生活できる設備は整ってきた。
 余裕もあるし、なにかしてもいいのかもしれない。

慈「ええと、それで今日は――」

 朝の会議。
 朝食の後みんなで集まって、話し合いをはじめるのだけど――特にこれといって新しい話はなかった。

慈(……なにか、私から考えてみようかしら)

 目的がない生活は精神的に辛いものがある。
 それになにかすべきことに気づいていない可能性もある。現状を把握するためにも、私から何か提案することは決して無駄ではないだろう。


【朝~夕方コマンドに『提案』が追加されました】
【いくつかイベントの目的を挙げ、それが>>1の独断で採用されるかされないかが決定されます】
【このコマンドは実行しても時間を消費しません】
【例:『武器を探そう』と目的を指定安価内で提案。>>1が採用か否か決定。採用ならばイベント発生】

慈「なにか思いついたら提案するようにしておかないと……」

慈「……さて、今日は何をしようかしら」


朝~夕方コマンド(とりあえずコマンドだけ選んで、その後メンバーやら詳細を決定します)
 1・開発【選択不可】
 2・提案
 3・授業
 4・探索

 ↓1

【また安全圏内の探索を忘れたので、これからは探索コマンドのイベント選択で選べるようにしときます】



【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『街の様子』
 内容:『天子が所持していた望遠鏡。これがあれば、窓や屋上から見える光景もまた変わってくるだろう』】

 【イベント『安全圏内の探索』
 内容:『安全を確保した場所の探索を行います』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1

【今日は落ちます】
【安価はここから↓1で】

【遅くなりました】
【安全圏内の探索 メンバーは天子、悠里】

慈「……なにかいいものがあるかもしれないし、行ってみようかしら」

 一度確保しただけでは、まだ見落としたものなどがあるかもしれない。
 私は思う。今は余裕もそれなりにあるし、なんとかなるだろう。

慈「――よし」

 私は椅子から床に立ち、それぞれの時間を過ごしている仲間たちに声をかけた。

 で、ほどなくして集まる。
 今回のメンバーは栗宮さんに悠里ちゃん。そして私。
 今回の目的は安全圏内の探索だ。それならば、このメンバーでも大丈夫だろう。

悠里「いいものを見つけないとね」

天子「そうですねー。できれば、何か道具でも」

慈「ええ。――それじゃあ、お留守番よろしくね」

胡桃「おう、任せといて」

 残ることになる胡桃ちゃん、由紀ちゃんへ挨拶。
 胡桃ちゃんは頼もしく、由紀ちゃんは小さく頷く。

胡桃「――にしても、」

 元気そうな胡桃ちゃん。
 けれど彼女は不意にフッと寂しげな目をする。

慈「……?」ドーン
悠里「……?」ドーン
天子「?」ドーン

胡桃「三人揃うと、あれだな……」

由紀「うん。すごい」

 ……? よく見れば由紀ちゃんもだ。
 どうしたのだろう?
 考えてみてもさっぱり分からない。

 さて。遠い目をする二人に困惑しつつ部屋を出る。
 三階。今は私達のテリトリーで、安心な場所だ。
 今回ばかりは多少油断してもいいだろう。

慈「どこへ行こうかしら」

天子「まず回ってない場所はどうですか?」

悠里「そうですね。あとは――先生に任せます」

天子「先生。頼りにしてます」ニコー

慈「栗宮さんも先生なんだけど……分かったわ」

 まぁいつも指示は出しているし、今日もそのつもりだ。
 ――とはいえ、どうしようか。

 1・未探索場所へ(放送室)
 2・仲間とお話(対象:悠里、天子)

 ↓1

【コンマ9――で、忘れてましたがいいことです】

 放送室。
 様々な器具が置かれているその一室は、学校の中でも異質に思える。
 こうした状況でなければ、入る度緊張してしまうだろう。

慈「……特に、目立つものはなさそうね」

天子「ですねー。放送器具なんて今は自爆装置にしかならなそうですし」

 確かに。下手にいじくれば敵をおびき出す道具になりかねない。
 ここは放置しておいても問題ないだろう。

悠里「――あ。いいものがありました」

 さっさと出よう。
 そう思っていた矢先に、悠里ちゃんが明るい声を出す。
 彼女は重そうになにかを持ち上げ、笑顔を浮かべる。

悠里「緊急ハシゴ」

天子「まぁ」

 これは大きな発見だ。
 何故放送室にあるのかは分からないけど……このハシゴがあれば、活動の幅、救助の選択肢が増えるだろう。

慈「お手柄ね、悠里ちゃん」

悠里「はい、ありがとうございます」

 ……うん、かわいい。
 ほんのりと赤くなって、控え目にお礼を言う悠里ちゃん。大人っぽい彼女がこんな表情をすると、こちらも自然とにやけてしまう。

天子「それでは、私がちゃちゃっと調べますね」

悠里「あ、お願いします、天子先生」

 悠里ちゃんからハシゴを受け取り、よろけつつ地面に置く栗宮さん。
 道具のことだから張り切っているのかもしれない。はしごは医術とまったくの無関係なのに。

慈「お願いね、栗宮さん」

天子「お任せです。長さから準備するまでの時間とかなんでもござれで」カチャカチャ

 ……張り切っている。間違いなく。

悠里「お話してます?」

 物音をバックに、機材をそれとなく見ていると隣から声がかかる。

慈「そうね。待ってるのも退屈だし」

悠里「……めぐねえ。は、国語の先生ですよね」

慈「ええ。――って、悠里ちゃんにも教えてなかったかしら?」

 なんとなくぎこちない会話。
 おそるおそるといった感じでめぐねえと口にした悠里ちゃんへ、首を傾げ問うと、彼女はぱあっと明るい顔になる。

悠里「はい、教えてもらってます」

慈「……?」

 なんとなく、気になった。
 何が気になったのかも分からないけれど。


 1・「めぐねえ、って言い慣れない?」
 2・「今度授業する?」
 3・「最近はどう? 元気?」

 ↓1

【「めぐねえ、って言い慣れない?」】

悠里「そうですね……一回目だから、少し」

慈「ふふ、私もそうね。めぐねえって呼ばれるとくすぐったいっていうか……」

 恥ずかしそうにしている悠里ちゃんへ笑いかける。

慈「いつも訂正してるから、というのもあるのかしら」

悠里「治ってないですけどね」

慈「あはは……そうね」

 言っても言ってもめぐねえだもの。
 最近は胡桃ちゃんなんて連呼してくるし……。

慈「でも、そんなに気にする状況でもないのかも」

悠里「そうですか?」

慈「ええ。悠里ちゃんに呼ばれても、嫌ではないもの」

悠里「めぐねえ……嬉しいです」

 なんだろう。この空気。
 なんで若干ロマンチックに? 眩しい笑顔を向ける悠里ちゃん。戸惑う私。
 どうしたらいいか頭を悩ませていると、

天子「把握しました」

 栗宮さんが立ち上がった。
 どうやら道具のチェックが終わったらしい。

慈「ありがとう。どうだった? 栗宮さん」

 有り難い助け舟だ。
 私はそそくさと栗宮さんのところへと向かった。

悠里「……ちょっと残念」ボソッ

 悠里ちゃん、様子がいつもと違ったけどどうしたのだろう?
 気のせいならばいいけど。


【悠里の好感度が10上がりました】


慈「……さてと。これで探索してない場所はなくなったかしら」

天子「ですねー。まだ時間はそれほど経ってないですし、他のことするなら他のことでも」

慈「うーん……他のこと、ね」


 どうする?

 2・仲間とお話(対象:悠里、天子)
 3・拠点へ

 ↓1

【2 仲間とお話 天子】

慈「……そうね、ちょっと話をしましょう」

 放送室。
 そこに留まることにした私達はテーブル周りの席に。

天子「話ですか?」

悠里「なんでしょう?」

 わくわくとした目を向ける二人。
 お話は嫌いではなさそうだ。

慈「ええと、栗宮さん」

天子「あ、私ですか?」

 栗宮さんが手を合わせて笑顔を浮かべる。
 おっとりとした仕草と言葉。スタイルや見た目からは何の問題もないお嬢様的な雰囲気しか感じとれないんだけど――


 1・「みんなと仲良くしてる?」
 2・「……大きいわよね」
 3・「他に生存者は校内にいそう?」

 ↓1

【3 「他に生存者は校内にいそう?」】

 気になったこと。
 ――いや、気になっていること。
 それは生き残っている人の有無。もし誰か生きている可能性があるなら、無理してでも助けるべきなのかもしれない。
 まぁ、私の実力的に胡桃ちゃんとか、他の子達に頼りざるをえないのだけれど。
 だから、冷静に判断するためにも情報がほしかった。

天子「生存者……ですか。めぐねえ先生は真面目ですね」

慈「あの、慈さんか佐倉先生で――」

天子「結論を言うと、さっぱり分かりません」

 私の訂正を流したのは気になったけど、栗宮さんは正直にきっぱりと答えてくれた。

慈「そう……」

悠里「でも、仕方ないですよ。あんな状況ですから」

 確かに。命がかかった場で他人を気にする余裕はないだろう。
 一階の保健室からとなれば、三階と違ってすさまじい危険地帯だろうし。

天子「あ、気にかけられなかったのは確かですけど、気にかけなかったというのも正しいです」

慈・悠里『……』

 この人……逞しいというか、薄情というか。

慈「あの……栗宮さん、それは先生としてどうかと」

天子「でも、あれですよ? 気にしてたら自分が死ぬ状況で、加えて自分の探究心……これで皆さんを気にかけたらえらいことですよ」

 その探究心を口にしなかったらマイナス面もないのだけど。

天子「でも……そうですね。生存者はそれなりにいると思いますよ」

悠里「本当ですかっ?」

天子「ええ。人が少ない場所もあるでしょうし、確か学校に来ていない人もいたような。自宅なら無事な可能性も高いですし」

慈「自宅……」

 学校外、ということ。
 学校の中でも精一杯なのに外に行くとなると――気が遠くなるような話だ。
 でも、いずれ必要にもなることだろう。
 それで生存者が助けられるなら。

天子「車で移動できれば、それなりに街も進めると思いますよ」

慈「そうね……必要だと思ったら、そうしようかしら」

 ポケットに触れる。
 私の車のキー。もう使う時などないと思ったけど……いつか使う時が来るのかもしれない。


【天子の好感度が3上がりました】

慈「……」

 さて。そろそろいい区切りの時間だ。
 これからどうするのか。それを改めて考えることにしよう。


 どうする?

 2・仲間とお話(対象:悠里、天子)
 3・拠点へ

 ↓1

【2 仲間とお話 悠里】
【ということで、今日は落ちます】


 まだ、話をするのもいいかもしれない。
 悠里ちゃんのことは個人的にも気になるし。

慈「――悠里ちゃん」

悠里「はい? なんですか?」

慈「ええと……」

 でもなにを話したらいいのやら。
 期待しているような顔の悠里ちゃんに、変なことは言えないし……。


 1・「菜園はどう?」
 2・「悠里ちゃんって、手先器用よね」
 3・「最近心細くない?」

 ↓1

【3 「最近心細くない?」】

悠里「――え?」

天子「あら、そうなんですか?」

悠里「別に寂しくは……」

 にこにこと笑う大人二人。
 悠里ちゃんは意表をつかれたようにハッとし、あたふたと手を振り――

悠里「……ちょっと、寂しいです」

 認めた。

慈「やっぱり。そうじゃないかと思ってたのよ」

悠里「うう……そうですよね」

 自分でもすぐ分かることだと思ったのだろう。
 私が言うと、悠里ちゃんは赤面して俯いた。めぐねえと呼んでいいか、なんて寂しがってない人は言わないだろう。

悠里「――ええと、迷惑、でしたか?」

慈「そんなことは。いいのよ、二人きりなら遠慮無しで」

 生徒に甘えられるなら、先生として――どうなのだろう。
 ま、まぁプライベートならいいわよね。うん。

悠里「先生……。先生はやっぱり優しいですね」

天子「悠里ちゃん。私に甘えても大丈夫ですよ」ニコニコ

悠里「栗宮先生は……ちょっと、大人すぎて」

天子「……」ガックリ

 ――私は、ちょっと大人じゃないということ、かしら。
 気になるけど、私のことを頼ってくれているのだ。悪い気はしない。


【悠里の好感度が5上がりました】

【自由探索にも後々追加コマンドを入れますが――会話は一度の探索に三回までとしておきます】
【そして時間も割りと経ったので……夜コマンドに】

 探索は発見こそ少なかったものの、色々と収穫はあっただろう。
 悠里ちゃんとは結構仲良くなれたような気もする。

慈「……ふぅ。これでいいかしら」

 ノートを閉じる。
 これまでの記録はしっかり書けた。なにがあるかは分からないし、この調子で継続させることにしよう。


夜コマンド
 1・夜食作り【資源200消費】
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】
 5・マニュアル確認

 ↓1

【一応朝のやり方に従いますので、続けてイベント選択、メンバー選択】


【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『街の様子』
 内容:『天子が所持していた望遠鏡。これがあれば、窓や屋上から見える光景もまた変わってくるだろう』】

 【イベント『安全圏内の探索』  【現在選択できません!】
 内容:『安全を確保した場所の探索を行います』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1

【このイベントで朝夜の差はないのでご安心を】

【『街の様子』 メンバー:胡桃、由紀】

慈「――ということで、栗宮さんの望遠鏡で街の様子を見てみようと思うの」

 夜。
 夕食を食べた後に私はみんなを集めて予定を告げる。

慈「だめかしら?」

悠里「いいと思いますけど――気をつけてね?」

由紀「うん。りーさん、ありがとう」

胡桃「安全な場所だし、そんなに気にする必要もないとおもうけどな」

天子「油断は駄目ですよ。バリケードがあるとはいえ、すぐ近くが危険地帯なんですから」

慈「そうよ、胡桃ちゃん。頼りにしてるんだから」

胡桃「お、おう……」ポリポリ

 頭の後ろに手をやりつつ、頬をかく胡桃ちゃん。
 微笑ましい気持ちで私はそんな彼女を見る。こんなに言わなくても彼女のことだ。既に分かっているのだろう。

慈「さぁ、行くわよ」

 今回は戦いに行くわけではない。
 私達はいつもよりも暢気な気持ちで休憩室を出た。

 屋上。
 奴らも校内から大多数が去り、社会がまともに機能していない今、外はすごく静かだった。

由紀「星が綺麗……」

 そして、星空がよく見えた。
 明かりが少ないからだろう。見上げれば、本当にここが学校のあった場所なのかと疑ってしまいそうな、美しい空が見える。

胡桃「だなー。よし、早速見るか」

 肩に提げていた望遠鏡の入れ物をおろし、準備をはじめる胡桃ちゃん。
 望遠鏡と聞けば私は星空を見上げるそれを思い出すのだけど、栗宮さんが見つけたというそれはどちらかと言えば展望台にあるようなタイプの望遠鏡だった。
 小さいからそれほど高倍率ではないはずだ。けどレンズは大きいし、広く見えるのかもしれない。
 街の様子を見るのにはぴったりだろう。

由紀「くるみちゃん軍人さんのキャンプみたい」

胡桃「褒められてるのか分からないな……」

胡桃「――よし、できた」

 てきぱきとした迷いない動きで望遠鏡が設置完了。
 こうして見ると結構立派な望遠鏡だ。望遠なだけはある。――専門知識がないので、あまり語れないことはこの抽象性から大体分かるだろう。

慈「じゃ、まず胡桃ちゃんがどうぞ」

由紀「そうだね。どうぞ、くるみちゃん」

胡桃「そうか? じゃあ――」

 作った本人に最初は譲る。
 胡桃ちゃんはわくわくと好奇心に目を輝かせながら望遠鏡を覗き――

胡桃「……なんだあれ」

 ちょっと望遠鏡を動かしたところでやたら冷静な声を出した。

胡桃「めぐねえ、ちょっとこれ見て」

 ほぼ真顔で、胡桃ちゃんが望遠鏡を私へと譲る。
 ……すごく不安になるんだけど。なにがあったらあんな顔を……。

慈「それじゃあ、由紀ちゃんには悪いけど……」

 望遠鏡を覗く。
 映している場所は街の道。
 学校と同じくぼろぼろのそこには、ちらほらと奴らの姿が。
 けれどそんなこと、すぐどうでもよくなった。

???『――』ニコニコ

 人が、いたのだ。
 奴らの中で悠然と進み、楽しげに笑顔を浮かべる少女が。

???『――』ガタガタガタガタガタ

 その後ろに、ものすごく震えている女の子が。

 二人。生存者が二人も。それだけでも驚きなのに、二人は夜の街をすごい勢いで進んでいる。


 ――ママチャリで。

 詳しく言おう。
 夜の街を自転車で猛然と進む二人組がいた。
 一人は自転車を笑顔で漕いでいて、もう一人は彼女の後ろ。こどもを乗せる席に体育座りで無理やり座り、席の左右を手で必死に握り、落ちないようにしていた。
 ……なにこれ。

慈「……タイヤ、パンクとかしないのかしら」

由紀「めぐねえまで真顔に……」

 望遠鏡から顔を離す。
 ありえない光景に、すっかり頭が冷静になってしまった。

胡桃「さぁな。……どうする? あれ」

由紀「なにが見えるの? ――わ、あの二人なに?」

慈「生存者だから……できれば助けてあげたいけど」

胡桃「あれ……助かるのか? というか、あたしたちが行ける場所か?」

慈「分からないけど……でも、なにもしないわけにはいかないし」

 街方面はゆくゆく行かねばならないのだ。
 彼女らを助けられるなら、積極的に行動するべきだろう。

由紀「めぐねえ」

慈「あ、由紀ちゃん。どうしたの?」

 なんとか手段はないか。考えていると、由紀ちゃんが私の服をくいくいと引っ張る。
 彼女は控え目に、まだ弱々しい口調で提案した。

由紀「助けてあげよう? 女の子二人なんて、可哀想だよ」

 彼女らしい優しい言葉。
 真顔だった私らは表情をゆるめ、首を縦に振った。

胡桃「ああ。仲間にしようぜ」

慈「そうね。なんとか、合流できるといいけど――」


【イベント『街の二人組』が発生しました。
 内容:『街に生存者を発見した。外に向かう手段は少ないが……なんとか合流する手段を考えよう』】

【モールには行こうと思えば提案出せば行けます。車もハシゴもありますから】



【悠里 特殊イベント(別名、>>1が突然思いついたイベント)開始 条件:会話で伏線を回収。一定の好感度で夜を迎える】


 休憩室に帰ってきた。
 私達は屋上での一件を留守番組に報告する。

悠里「みんな疲れていたとか、ないかしら?」

天子「ですよねぇ。ありえないです」

 が、やはり信じてもらえず。
 数分かけて本当のことだと説明すると、彼女らはようやく信じてくれた。
 多分私だけだったら、寝るよう勧められていたところだろう。

悠里「ということは、街に出ることになるのよね」

胡桃「そうだな。まぁ、今は各自作戦を考えておく……くらいしかできないし、寝るか」

 あっさり言って、胡桃ちゃんは更衣室に向かった。多分シャワーだろう。
 他のみんなも胡桃ちゃんの意見に異論はない。そのまま流れで解散、ということに。

慈(私も寝る準備をしようかしら)

 私は立ち上がり、別の部屋に向かう。
 一日目から、みんなは掃除した休憩室で寝泊まりしている。
 布団を並べ、仲良く川の字である。
 けれど私は――実は三階を確保してから生徒会室で眠っている。
 体質のこともあるし、それに、その……何日もあれだし。こんな状況だからするのも罪悪感というか。
 ……はぁ。頭が固いだけなのかしら。これだと迷惑かけるだけよね。

慈「シャワーは今日は浴びてるし……寝るだけね」

 ワンピースを脱ぎ寝間着用のワイシャツを着る。
 休憩室にあった新品を拝借した物である。中々これが快適なのだ。下着とワイシャツ一枚はずぼらだけど、寝る時くらい気を抜いてもいいだろう。

慈「ふぁあ……」

 あくびを一つ。しっかり閉じられたカーテンを見て、私はこれから先のことを考える。
 ――が、ネガティブになりそうなのですぐやめた。

慈「よし、寝よう」

 うんと頷き、私は部屋の電気を消しにドアへと近づく。
 するとまるでタイミングを図っていたかのように、私の前でドアが開いた。
 ここは安全な場所。そうは分かっていてもつい警戒してしまう。

悠里「めぐねえ……入っていいですか?」

 けれどすぐ聞き慣れた声に、私は安堵する。

慈「大丈夫よ。どうしたの?」

悠里「えと……甘えに」ボソッ

 控え目な小さな声を出し、悠里ちゃんは部屋に入ってくる。
 そしてドアを閉じると、もじもじしながら言った。

悠里「一緒に寝てもいいですか?」

 二人きりなら遠慮無しで。自分の言ったことの重みを、私は理解した。
 私は……どう答えるべきだろう。


 1・「いいわよ」
 2・「今日は、ちょっと……」

 ↓1~3で多数決。ちょっとした分岐点でもあります


【そして落ちます】

【1 「いいわよ」】

 断る理由はないだろう。
 頼られて嬉しいし、簡単に言えば私が我慢すればいい話。
 私は考えるとあっさり頷いた。

悠里「本当ですか? ありがとうございます、先生」

慈「ええ。もう寝るところだったから……お布団に」

悠里「はいっ」

 ぱあぁっと明るい顔をして部屋の中を進む悠里ちゃん。
 シャツにジャージ姿の彼女は髪を一つにまとめていて――なんだかいつもと印象が違う。
 シャワーからあがったばかりなのか、いいにおいもする。

悠里「それじゃあ、失礼しますね……」

 どぎまぎする私を前に、悠里ちゃんは敷いてあった布団の中へ。
 ……さて。明日も色々あるだろうし、寝ないと。

慈「電気消すわね」

 スイッチへ手をかけ、オフ。
 カチッと小さな音が立ち、部屋が暗闇に包まれた。

慈「あ、思ったより暗い……」

悠里「カーテン開けます?」

慈「ありがとう。悠里ちゃんがいて助かったわ」

悠里「大袈裟です」

 楽しげに笑う彼女。少しして、カーテンが開かれた。
 月明かり。窓から入るそれに照らされた悠里ちゃんは綺麗で、一瞬思わず見とれてしまうくらいだった。

悠里「めぐねえ?」

慈「――あ。なんでもないわ。今行くから」

 声をかけられ、私は我に帰る。
 いけないいけない。なんだか最近、自分が自分じゃないみたいだ。
 自嘲しつつ、私は悠里ちゃんの後に布団の中へ。
 なんてことはない。女の子と寝るだけなのだ。

悠里「めぐねえ、おやすみなさい」

 なんて、あれこれ考えていたことも、布団の中に入った瞬間吹き飛んだ。
 間近にある悠里ちゃんの整った顔。そして香り。横向きに寝ていることで強調されている胸。
 体温すら感じそうな距離に、見えるそれらに私の胸は高鳴る。

慈「……うん、おやすみ」

 触れたら、どうなるのだろう。
 頭に浮かぶ邪な思考を追いやるように、私は返事をし、目を閉じた。
 これ以上見ていたらどうなるのか。自分がよく分かる。どう分かるのかは察しがつくだろう。そういうことなの。
 とにかく、寝なくては。

悠里「めぐねえ、ちょっと……甘えてもいいですか?」

 頑なに寝ようとする私。
 不意に悠里ちゃんの声が聞こえ、目を開こうとした瞬間私は硬直させた。

慈「ゆ、悠里ちゃん……!?」

 目を開けば、悠里ちゃんが更に近くに。
 私の腕の間に入り込むようにして抱きつき、身体を密着させていた。
 私の身体、胸に押し付けられる悠里ちゃんの豊かなそれ。
 頭が真っ白になる。恥ずかしさもそうだけど、それ以上に――

悠里「ふふ、めぐねえ温かい――あら? なにか固く――」

 ――劣情が抑えられなかった。
 身体が動く。そうしようなんて思いもせずに、無意識に彼女の上へ。押し倒すような体勢に。

悠里「めぐねえ……?」

慈「――う゛っ」

 このまま暴走――というタイミングで、悠里ちゃんの戸惑ったような視線を目にして私はようやく踏みとどまった。
 遅いかもしれないけど、未遂……だろう。

【いつの間にか寝ていて、落ちてました】
【安価がしばらくないですし、これからりーさんとのシーンを全部書いてから更新しようかと思ってます】

慈「ご、ごめんね? ちょっと、疲れてたみたいで――」

悠里「……」

 無言でこくりと頷き、悠里ちゃんが視線を下に。
 じーっと見て、それからまた私の顔へと目を戻すと彼女は恥ずかしそうに口にした。

悠里「もしかして……めぐねえ、あるんですか? その……」

 もごもごと言い難そうにしているけど、何を言いたいかは分かってしまった。
 彼女がどうしてその結論を導いたのかは――私がよく分かっているからだ。
 だって思い切り反応してるし。

慈「な、なななんのこと?」

 でも必死に逃げようとする私。

悠里「さっき当たりましたし……くるみが言っていたから」

 そこへ思わぬ追撃が。
 胡桃ちゃん……内緒にしてほしかったのに。

悠里「『女の子にその――男のあれがあったら、男なのか……?』って真面目な顔で」 

 あ、ぼかしてたのね。バレた決定的な原因は私なのね。
 これは認めるしかない。この後悠里ちゃんが胡桃ちゃんに問いかければ、多分一発で発覚するだろうし。

慈「うぅ……そうなの。実は生まれつきで……ごめんなさい」

悠里「まさか本当に……知りませんでした」

 確信はあるとはいえ、信じ難いのだろう。
 悠里ちゃんが目を丸くさせる。

悠里「だから今、こうなっているんですね」

慈「うっ。すぐどくから、これはみんなには内緒に――」

悠里「――いい、ですよ」

 なんとか穏便に済ませようと移動をはじめた私の耳に聞こえた、意外すぎる言葉。
 体の体重を横にちょっと移したところで、私はぴたっと止まる。

慈「え……?」

悠里「めぐねえ、辛いですよね? それに、頑張ってますし――」

 悠里ちゃんが私の頭に手をのばす。
 いい、と言うわりにはその表情は恥ずかしげで、顔が真っ赤だ。大人びた言葉も今は説得力がない。

悠里「他の子に手を出したら大変だから、ね?」

 少し震えている手で、彼女は私を自分へと寄せる。
 そして、口づけをした。

慈「んっ……」

 びっくりしたのはちょっとの間。
 すぐに冷静な思考はできなくなり、唇に感じる感触に理性が揺らぐ。
 女の子の唇。それは本当に同じ性別なのかと、信じられないくらいに柔らかく心地よかった。
 唇が離れる。上げていた頭を布団の上に。目の前の悠里ちゃんはそっと囁く。

悠里「……だから、いいですよ」

慈「――うん」

 考える余裕はなかった。断る気もなかった。
 悠里ちゃんに触れたい。それは紛れもない本心で、本人がそれを許すならば――

慈「ごめんね、悠里ちゃん」

 再び、口づけ。今度は私から。
 唇を重ね悠里ちゃんの感触を楽しむように、何度も重ねては離す。
 胸が重なり、こすれるようなもどかしい感覚が私に伝わる。
 ――もっと欲しい。
 手を彼女の膨らみに。服の上からでも大きさが分かるそれを揉み、彼女へと体重を預けるように密着し、口内へ舌を入れる。
 体に、手に、舌に。まるで彼女と溶け合っているような、そんな幸せな感覚。

悠里「んっ、ぁ……ちゅ、はぁ」

 悠里ちゃんの反応が大きくなる。
 手が胸に触れたときも身体が反応していたけれど、キスでも感じてくれているらしい。
 舌で彼女の舌を絡め、吸ったりしていると彼女の身体がぞくぞくと震えているのが分かった。
 敏感なのか、それとも演技なのか。頭の端にちらりと思い浮かんだけど、どうでもいい。
 一心不乱に、私は悠里ちゃんを貪るように舌で彼女の口内を蹂躙する。
 悠里ちゃんの吐息、繋いだ口からもれる声。唾液の音。どれも普段聞いたことのないもの。彼女は教え子だというのに、興奮してしまっている私がいた。

悠里「あっ、う――めぐねえ、ぁんっ」

慈「ん、ちゅ――はぁ……悠里ちゃん。痛かったり、苦しかったりしない?」

 唇を離し、彼女の口から舌を出すと唾液が糸を引いた。
 普段は汚いと意識してしまうけれど、綺麗にすら見えてしまう。

悠里「……は、はい」コクッ

慈「そう、良かった」

 自分で聞いたのだけど、なんて言えばいいか分からず私は苦笑する。
 大丈夫だと言っているし――次。

慈「脱がすわね、悠里ちゃん」

悠里「あ……はい」

 悠里ちゃんの羽織っていたジャージを脱がせ、シャツも丁寧にとる。ジャージの下も同様。
 すると露わになる彼女の身体。……やっぱり、すごい。歳下なのに圧倒的というか、負けた、という気になる。肌も綺麗で、すべすべだし……。

慈「……」ジーッ

悠里「あの、じっと見られると恥ずかしいというか……」

慈「えっ? あ、そうね。ごめんなさい」

 言われ、自分が凝視していたことに気づく。
 自分の身体を抱くようにして恥ずかしがる悠里ちゃんが、とてもかわいらしく見えた。

慈「綺麗だったから、つい」ニコ

悠里「……」

 ……あれ? 怒った、のかしら?

慈「つ、続きするわね?」オドオド

悠里「めぐねえも服、脱いでください。私だけ恥ずかしいのは不平等です」

慈「――そういえばそうね」

 すっかり頭から飛んでいた。確かにそうだ。
 私は自分のシャツに手をかけるとボタンを外していく。シャツ一枚だけなのでそれほど労力はいらない。時間も全然かからずに私は下着だけの姿に。
 下着姿の生徒の前で服を脱ぐ……考えもしなかった展開である。

悠里「わ……本当にあるんですね」

 じっと私の下半身のそれを見、悠里ちゃんが感嘆をもらす。
 下着の下からも形が分かる――というか、はみ出てるわよね。触ってもいないのにもう完全に固くなってしまっている。
 いつもは全然目立たないくらいの大きさなのに。

悠里「大きい……のかしら」

慈「どうだろう……他の人のは見たことないから分からないわ」

 強いて言うなら本とかで見たことはあるけど、それも漫画だし……。

悠里「……先生も綺麗ですよ」

慈「――ありがとう」

 悠里ちゃんの言葉に私は笑顔で返した。
 お世辞かもしれない。でも、すごく嬉しい。私のこれはコンプレックスでしかないから。

慈「それじゃあ……」

 自分の下着を脱ぎ、悠里ちゃんのそれも外す。
 大きな胸に、綺麗な秘所……何の飾りもない、けれど美しく扇情的な姿。私は無意識に唾液をごくりとのみ、手を伸ばした。

悠里「あっ」

 まずは胸に。
 服越しでも充分柔らかったけれど、直接触るとすごい。
 すべすべとした手触りで、指が沈み込むような柔らかさ、けれど弾力もあり、自分のものを何度も触ってはいるが、新鮮な感覚だった。
 今は私が独り占めしているけど、この大きな膨らみに触れたいと思った人が、何人いるのだろうか。

慈「……」

 感触を充分楽しんだところで、私は悠里ちゃんの――胸の突起に口をつける。
 吸い、舌で舐め、甘噛み。思うままに刺激を与えていると、悠里ちゃんの身体がぴくっと跳ねる。

悠里「はぁっ、んぅ……っ」

 声を出さないように耐えている感じだけど、悪くはないみたい。
 ――なら。

悠里「ふあっ! めぐねえ、それっ――ぁ」

 もう片方の乳首も指の間で擦るように愛撫。
 すると悠里ちゃんの反応が目に見えて強くなった。
 胸が感じ易いのかしら……。感触に彼女の反応。いつまでもしていられそうな気がするけど――そろそろ、次に進むべきだろう。

慈「今度はここ、触るわね」

 彼女の脚の間。すっかり濡れている割れ目に指をやり、軽く擦る。

悠里「ひぁっ! そこは――っ」

 それまで声を耐えていた悠里ちゃんが悲鳴みたいな声を上げる。
 感じてくれているのだろうか。指に伝わる湿り気が増し、徐々に水音が聞こえてくるようになる。

悠里「あぁっ、ん、あっ……」

 身体の反応を抑えきれない。
 そんな、羞恥と快感に染まった悠里ちゃんの目。私の指が動く度に彼女は甘い声を出し、身体を震わせる。
 戸惑っているようにも見えるけど、指を止める気にはならなかった。
 彼女の身体を抱きしめ、私はキスをする。最初から深く、空いている片手で彼女の頭を押え唾液がもれるのも気にせず夢中に絡める。
 段々と大きくなる彼女の反応。あそこから蜜が止まることなく溢れてくる。
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てるそこ。私はタイミングを見計らい、陰核へと指をやり刺激した。

悠里「んあっ!?  あ、っ――ぁ、んううっ!」

 悠里ちゃんの身体が震える。
 電流でも流れたみたいに大きく、身体を弓なりに反らして甲高い声を出した。
 イッた――のかしら。ぐったりとした悠里ちゃんのあそこから愛液があふれるのを見て、私は思う。

慈「悠里ちゃん、大丈夫?」

悠里「は――はい、大丈夫、です」

 ――すごく、いやらしい。
 息を切らせて吐息をもらしながら、悠里ちゃんが頷く。
 彼女は私の身体に手を回し、何度か深呼吸をすると恥ずかしそうな顔をしながら脚をちょっとだけ開いた。

悠里「めぐねえ、いいですよ……」

 何を言っているのか、すぐに分かった。
 本当にいいのだろうか。今更思うのだけれど――ここまで来てやめるわけにはいかない。
 据え膳云々と言うし……治まりがつかない。私の。

慈「……ええ」

 大きくなっているそれ。先走りで濡れる先端をあてがう。
 ぬるぬるとした、柔らかい感触に思わず声がもれそうになるけど、まだ本番前。大人の維持で耐える。

慈「いくわよ」

 悠里ちゃんが頷く。それを確認すると同時に、私は中へと男性器を挿れた。

慈「ふぁ……っ」

 先端が悠里ちゃんに包まれる。愛液が押し出され、小さな音を立てた。
 思わず声が出てしまった。未知の感覚だ。
 女の子の中に、私のものを挿れる。それがこんな快感をもたらすとは。

悠里「――っ」

 ――でも、それだけじゃない。
 悠里ちゃんを。綺麗なみんなのお姉さん、学校の生徒を私が――。
 恥じるべきこと。普通なら法律で罰せられそうなこと。
 それをしているという背徳感。女の子一人を私のものにしようとしているのだという実感。味わったことのない快楽。
 今すぐ滅茶苦茶にしたくなる衝動を制し、私はゆっくりと奥に。
 膜だろうか。一度何かに当たり、そして奥へ。すべて入りきるちょっと前で進まなくなる。

悠里「ぁ……んっ、う」

慈「奥に……入った、わね」

 まずい。余裕が全然ない。
 挿れて何もしない状態でも出てしまいそうなんだけど……。声が震えてるのバレてないかしら。

悠里「あぁ……これで、めぐねえ、のものね」

慈「――そうね」

 否定はしない。
 流れとはいえ、私が選んだこと。きちんと向き合わないと。

悠里「嬉しいわ……。めぐねえ、動いて?」

慈「ええ。はじめはゆっくり……ね」

 私が余裕ないから。
 悠里ちゃんの腰を持ち、私はゆっくりと腰を引く。
 私のものを締め付ける、やわらかな膣内。包み込むようにそれがまんべんなく私のものを刺激する。
 たった一回の動作なのに頭が真っ白になりそうだ。

慈「ぁう――っ、ふぁ」

悠里「ぁ……っ、めぐねえ、気持ちよさそう」

 ――悠里ちゃんにも分かるみたい。先生としての威厳――なんてさっき木っ端微塵になったわね。うん。
 でも、攻めてる側としてすぐにはだらしないわよね。

慈「ま、まだまだ余裕よ……んぁっ。ええ」ビクビク

悠里(かわいい……)

 何故か微笑ましいものを見るような目で見られた。

慈(ここは……もっと早く)

 もっと早くしたら、余裕が出るかもしれない。
 私は悠里ちゃんの腰から身体へと手を回す。身体を密着させるようにして、そのまま腰を動かした。 

悠里「あぁっ、めぐねえ――気持ち、いい、です――っ、んぁっ!」

慈「はぁっ、んーーく、ぁ」

 上から押し付けるように出し入れ。粘着質な音と悠里ちゃんの声。腰を動かす度に私と悠里ちゃんの胸が擦り合わさり、突起がこすれる。
 そういうことをしているんだけど、ひどくいやらしく思えた。
 そして動きが早まることによって、予想外に私への快感も強まる。けれどそれは悠里ちゃんも同じ。
 もう、余裕がどうとか考えられもしない。ただ頭にあるのは――

悠里「ひぅっ、はあ――んっ、あ」

 悠里ちゃんが欲しい。愛おしい。それだけ。

慈「――っ、悠里ちゃん」

悠里「めぐ、ぁ、ねえ――あぅっ」

 お互いを求めるように名前を呼び合い、快楽を貪る。
 初めてだというのに悠里ちゃん自身も腰を動かしていた。演技ではないであろう彼女に、私の気分も更に高まる。

慈「あぁっ、悠里――ちゃんっ! もう、私――」

悠里「私も、です、はぁっ――んああぁっ!」

慈「出る、っ――あ、ああぁっ!」

 奥をうちつけるように激しく動き、最後に一番奥を突く。
 限界などとうに越えていた私。高まり、悠里ちゃんとともに絶頂を迎えた瞬間、これまでないほどの快感とともに白濁を中に放つ。
 私をしっかりと固定していた悠里ちゃんの脚の先がピンと立ち、痙攣するように震える。中もそれに連動するみたいに、精液を出す私の男性器を締め付けてきた。

慈「あ……あぁ……」

 搾り取られるような感覚。
 悠里ちゃんの蕩けきった目、表情。
 自分でするときよりも長く、大量に私は悠里ちゃんの中へと注ぎ続ける。
 びくんと身体を震わせ、射精をする。あふれるほど出して、ようやく止まった――のだけれど、悠里ちゃんの中にある私のそれはちっとも衰えていなかった。

悠里「はぁ……ぁ、めぐねえ」

 ――当然だ。悠里ちゃんのような女の子を前に、一回で満足できるはずがない。

慈「もう一回……」

 私はうわ言のように呟いて再度、精液があふれる中に出し入れをはじめ、

悠里「あんっ……もう一回、ですか?」

 悠里ちゃんもまた、それを快く受け入れた。



 ――その後、何回したのかはまったく憶えていない。
 二回だったかもしれないし、へたしたら二桁もありえるのかもしれない。
 ただ一つ言えるのは、私が悠里ちゃんを滅茶苦茶にして――二人の関係は変化した、ということだ。


【悠里の好感度が10上がりました】



【今回の更新はここまで】

【慈 スキル良回復 が発動しました】


【佐倉 慈】
 体力 100/100
 耐性 60/100
 精神 100/110
 力  35
 速さ 20
 賢さ 40
 技術 50

 『スキル』
 良回復 一日のはじまりに体力を10回復

 【丈槍 由紀】
 体力 80/80
 耐性 50/50
 精神 30/30
 力  10
 速さ 20
 賢さ 10
 技術 20

 『スキル』
 庇う 味方が死亡するダメージを受けそうな時、自分がそのダメージを受ける


 【恵飛須沢 胡桃】
 体力 120/120
 耐性 90/100
 精神 80/80
 力  60
 速さ 60
 賢さ 20
 技術 20

 『スキル』
 シャベル愛好家 シャベルが関わるあらゆる判定にプラス補正


 【若狭 悠里】
 体力 90/90
 耐性 80/80
 精神 70/70
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 60

 『スキル』
 園芸の知識 一日最後の判定のコンマが3、5の時資源に+300



 【栗宮 天子】
 体力 70/70
 耐性 80/80
 精神 130/130
 力  30
 速さ 10
 賢さ 60
 技術 70

 『スキル』
 医術の心得 一日の終り、体力が一番すくないキャラを体力の1/3回復


【共通ステータス】
『資源』 1900
『消費量』 500 
『生産』 600



【好感度一覧】
由紀 40  「いい先生、だよね」
胡桃 47  「……ドジだよな」
悠里 55  「頼れるお姉さんよね」
天子 33  「いい同僚です」

 5日目。
 朝、目が覚めた私は目覚めた悠里ちゃんに連れられて、シャワーへ。
 布団が汚れてしまったのはそうだけど、私達もかなり汚れていた。
 悠里ちゃんは特に。いいにおいの中に、精液らしきにおいがして、なんだか本当に汚してしまったのだと実感する。
 で、シャワーと一緒に悠里ちゃんに布団のシーツを洗ってもらい、あれこれ身支度をし――私達は朝の日常に戻る。

胡桃「缶詰も中々美味しいな」モグモグ

天子「食べ物と飲み物、シャワーもあるなんて快適ですよね」モグモグ

由紀「……」モグモグ

 いつものように朝食を食べる三人。
 そして――

悠里「美味しいわね、めぐねえ」

慈「口の横についてるわよ。綺麗に食べなさい、ほら」フキフキ

悠里「あ。ありがとう、めぐねえ」

 明らかにいつも通りじゃない私達。
 悠里ちゃんは昨晩からちょっと変わった。
 私に対して躊躇なくめぐねえと言うようになり、口調も敬語から変化。みんなの世話を見てくれたりするのは変わりないのだけど――ちょっと抜けているというか、無防備なところが目立つようになってきた。
 それも、私に対して。気のせいかもしれないけど。

由紀「……」ジーッ

胡桃「ん? ゆき? どうした――って訊くまでもないか」

天子「お二人とも仲良しですね」

 変化は三人もそれとなく分かるようで、由紀ちゃん以外の二人は微笑ましそうに私達を見ている。
 由紀ちゃんは……寂しいのかもしれない。こんな状況だから。

悠里「――めぐねえ。今日はどうするの?」

慈「えっ? あ、そうね。決めないと」

 まぁでも、大した問題ではないだろう。
 声をかけられた私は、食事の手を止めて今日のすべきことを考えた。


 朝~夕方コマンド(とりあえずコマンドだけ選んで、その後メンバーやら詳細を決定します)
 1・開発【選択不可】
 2・提案
 3・授業
 4・探索

 ↓1

【エロはメインの一つでござい。そのためにめぐねえをふたなりにしたのもありますし】

【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『安全圏内の探索』
 内容:『安全を確保した場所の探索を行います』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1

【二人組のことを忘れてましたね。次から追加します】

【安全圏内の探索 メンバー:由紀、天子】

慈「……さて、と」

 まだ、なにか見落としたものとかがあるかもしれない。
 私は立ち上がると、今回の探索メンバーへと声をかけた。


 で、集まった。

由紀「めぐねえ、久しぶり……なのかな?」

天子「今日はどこにいきます?」

 今回の探索メンバー、由紀ちゃんと栗宮さん。
 由紀ちゃんは暗い表情ながら、それなりに嬉しそうだ。気分転換になるといいけれど……。

慈「今日は――」

 安全圏内は三階。全部の部屋は見たし……どうしよう。

【自由探索が追加されました】
【時間消費をして、コンマ判定でアイテムなどを発見します】

1~20  資源
21~40 同行者の好感度アップ
41~44 誰かの武器、弾薬
45~66 資源
67~69 改良の材料
70~90 消費アイテム
91~98 R-18イベントのキーアイテム
99、00 これらの中から自由に選択




 どうする?

 2・仲間とお話(対象:由紀、天子)
 3・自由探索

 ↓1

 ちょっとはコミュニケーションもとるべきよね。
 あんまり悠里ちゃんだけを気遣うわけにもいかないし。

慈「由紀ちゃん」

 廊下を歩きがてら、私は由紀ちゃんへと声をかけた。

由紀「……どうしたの? めぐねえ」

 すっかり弱っている。いつもの元気がないし、常にしょんぼりしているような様子だ。

慈「ちょっと、話をね……」

 なにを言えばいいのか。悩むけど――どうしよう?


 1・「体調はどう?」
 2・「なにか不安はない?」
 3・「行きたいところはある?」

 ↓1

【2 「なにか不安はない?」】

由紀「……不安しかないよ」

慈「……」

 そ、そうよね……。
 ええと、こういうときはなんて言えば――

由紀「――でも、私ね……特にみんなが心配なんだ」

 頭をフル回転させると、由紀ちゃんが不意に言葉を続ける。

由紀「くるみちゃんとめぐねえが戦って――他の人もどこかで生きていて」

由紀「――みんなも、不安しかないんだよね」

 当然のこと。
 彼女が言ったのは、こんな状況ならば当たり前のことだ。
 けれど、それを考えるかまでは違う。
 普通ならばそんなこと、考えないだろう。救えもしないし、なにもできないし、見ず知らずの人のために自分が苦しくなるだけ。
 でも由紀ちゃんは思っている。自分がしぼんでしまっていても。

慈「そうね。……由紀ちゃんはやっぱり優しいわね」

由紀「めぐねえにそう言われると、嬉しいよ。めぐねえも優しいから」

 弱々しく笑う彼女。
 前に学校で見ていた彼女の笑顔。それとはやっぱり決定的に違っていて――私は胸が苦しくなった。


【由紀の好感度が3上がりました】


 まだ時間はそれほど経過していない。
 ――どうする?

 2・仲間とお話(対象:由紀、天子)
 3・自由探索
 4・拠点に戻る (朝コマンド選び直し)

 ↓1

【2 天子】

慈「栗宮さん」

天子「あ、次は私ですか?」

 会話、の流れはなんとなく分かっているらしい。
 栗宮さんの言葉に苦笑し、私は彼女との会話の話題を考えた。
 由紀ちゃんとかよりかは話しやすいかしら。

 1・「……大きいわよね」
 2・「好きなものとかはある?」
 3・「他に道具とか持ってない?」

 ↓1

【3 「他に道具とか持ってない?」】

天子「道具ですか?」

慈「ええ。望遠鏡とか持ってたから、外にないかと思って」

天子「ありませんね」

 きっぱりと答えられた。

天子「あるといえば、これくらいです」

 彼女は手にしている救急箱らしきものを見せる。

天子「救急用の道具一式。あとはモップ。それだけです」

慈「うーん、まぁそうよね……」

 そんなに都合よく道具をもってるはずもないわよね。
 ちょっとがっかりだけど――仕方ないことだ。


【天子の好感度が2上がりました】


 まだ時間はそれほど経過していない。
 ――どうする?

 2・仲間とお話(対象:由紀、天子)
 3・自由探索
 4・拠点に戻る (朝コマンド選び直し)

 ↓1

【4 拠点に戻る】

 ……うん。
 コミュニケーションはとれたし――部屋は全部見た。やることはやっただろう。

慈「そろそろ戻りましょう」

由紀「――え?」

慈「あはは……みんなと話したかっただけだから、他のことをやろうと思って」

天子「短めのお散歩ということですねー」

由紀(私を気にして……なのかな)

慈「さ、戻りましょう」

 来た道を引き返し、廊下を進む。
 まだ時間はそれほど経ってないから……なにかするべきだろう。


 朝~夕方コマンド(とりあえずコマンドだけ選んで、その後メンバーやら詳細を決定します)
 1・開発【選択不可】
 2・提案
 3・授業
 4・探索

 ↓1


【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『街の二人組』
 内容:『街に生存者を発見した。外に向かう手段は少ないが……なんとか合流する手段を考えよう』】

 【イベント『安全圏内の探索』  【現在選択不可】
 内容:『安全を確保した場所の探索を行います』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1


【今日は落ちます】

【エロとそれ以外の割合は安価によります。何回も続く場合も】

【ここ数日はご飯食べて寝るのが連続してましたので遅れましたー】
【今日はこれからやっていこうかと】



【イベント『購買部』 メンバー:悠里、胡桃】


 危険はある。
 けれどそれ以上のメリットもあるだろう。

慈「怖がってるだけじゃ、なにもならないわよね……」

 購買部。
 そこへ行くことができれば、中の様子を把握できれば生活の質も継続できる期間も増す。
 ――それに、二階にも生存者がいるかもしれない。救助のためにも向かわねば。

慈「――よしっと」

 決まった。
 お茶を飲みつつ休憩をしていた私は最後のぐいっとコップの中のものを飲み干し、立ち上がった。
 そうと決まれば、みんなを集めて早速行動開始だ。

 そして作戦会議後。
 距離的には同じだけれど、安全をとり休憩室側の階段からのルートを選択。

胡桃「さて……と。初めての二階だな」

悠里「色々取ってこれるといいけど……」

 メンバーはこの二人。
 現メンバーでも頼れる仲間達である。
 更衣室から階段近くの廊下へ。人の気配のないそこは、ちょっと不気味な雰囲気があった。

慈「安全第一で行きましょう」

 杭を確認。二人へ笑いかけ、私は伸びを一つ。

悠里「めぐねえも無理はしないようにね」

慈「ええ。大丈夫」ニコリ

胡桃「……」ジーッ

 お互いに笑い合う私と悠里ちゃん。
 さぁ行こう、と思ったその時、胡桃ちゃんの視線に気づく。なにやら怪しいものを見るような目だけど――

胡桃「りーさん、なんか変なにおいがするな」

悠里「えっ?」ビク
慈「ふええ!?」ビビクッ

胡桃(わかりやす……)

 ――何故か、胡桃ちゃんの表情が呆れ顔になった。

胡桃「冗談冗談。なんでもないから、早く行こうぜ」

悠里「そう? じゃあ、気を抜かないように行きましょう」

慈「――え、ええ。胡桃ちゃん、先生が前に立つから」ニコー

胡桃(めぐねえが反応したらすぐわかるのに……今はあっさりのほほんとしてるし)

 杭を手に持ち戦闘体勢に。胡桃ちゃんもまた、シャベルを手にする。
 私を先頭に、一行は二階へと降りていった。



 ベリケードを越え、二階に。
 安全を確保されていない、命の危機がすぐそこにある場所。
 久しぶりに味わう緊張感に、身体が重く感じられた。

慈「……」

 ここまで来ると、さすがにふざけたり笑ったりする余裕はない。
 全員がバリケードを越えたことを確認。すぐ横に購買部のバックヤードがあったりもするのだけど――今回は購買部を目指すのが目的。
 廊下を直進すればいいだけの話だ。三階の確保や休憩室を目指すときよりは、まだ単純な話なはず。

慈(危険度は単純じゃないんだけど……)

 時刻は昼。数が少ない――とは思えない。戦うだけでなく、退くことも頭に置いておこう。


 バリケード向こうから購買部前までの敵の数を判定(00又は1~30で10体 31~70で15体 71~99で20体 クリティカル、ファンブルはまた別判定)
 ↓1

【74で20体です】

慈「……」

 多い。
 二階の様子を窺ってまず思ったのはそれ。
 三階にいた時は全然気づかなかったけれど、大勢の声が聞こえる。
 二階で廊下を覗きこんでみるとその数に恐怖すら感じた。まだ廊下全部が見えているわけではない、という点も恐ろしさしかない。

胡桃「……どうする? さすがにこの数を全部相手にするわけには……」

悠里「通り抜けるのも難しそうよね」

慈「そうね……」

 どうするか。
 私はあごに手を当て、思考をはじめた。


 1・近くの敵からこっそり始末を試みる
 2・策を考える
 3・指示を出す(対象:胡桃、悠里)

 ↓1

【『慈 賢さ 40』 『コンマ 63』 結果:不可】

慈(……) 

 策を考える。
 大勢の奴らを相手にして、どう戦うか。

慈「……何も思いつかないわね」

 思考の結果、私は呟く。
 あの数をどう始末していいのやら。私の発想力ではまったく思いつかない。

胡桃「――なら、私に任せろ」

 どうしようか困っていると、胡桃ちゃんが自信満々に言う。
 胡桃ちゃんが作戦を? ちょっと意外だけれど――今は猫の手も借りたいところ。私と悠里ちゃんはとりあえず彼女の作戦を聞くことにした。


 胡桃ちゃんの作戦は単純だった。
 まず、三階から机を数個持ってくる。それからそれを倒し床に横に並べ、脚部分を廊下の先、奴らがいる方向へと向ける。
 これで、準備完了。

胡桃「あとはおびき寄せて、転けたり、進まなくなったところを叩く――だけだな」

 シンプルながら中々いい方法だと思う。
 でも、これでうまくいく絵を想像することもできない。なんとなく、破綻する気がしなくはないけど――何故だろう?

悠里「大丈夫かしら……」

慈「分からない。けど――安全は一応後方に確保してあるから……」

 やるしかない。
 ちょっとずつなら胡桃ちゃんだけで倒せるのだ。うまくやればできるはず。


【策によりコンマ判定+0】


 敵の撃退判定(失敗するまで続きます)【1~30 1体 31~50 2体 51~60、00 3体 61~99 失敗  クリティカル、ファンブルは別】
 ↓1

【コンマ 43 二体】

慈「私が誘導するから、胡桃ちゃん、よろしくね」

胡桃「ん、任せといて」

 頷く胡桃ちゃん、心配そうに見る悠里ちゃんへ軽く手を振り、私は前に。
 ――やっぱり、多い。
 昼だし、奥の奴らに見つからないようにしないと。
 杭を手に持ち、壁に――叩きつけようとして、私は思い直す。
 ここは小さな音で様子見をしておこう。一度足踏み。ぱしっとちょっと大きめの音を立てる。

『ギ……』

 不気味な呻き声を上げ、近くにいたやつらがこちらを見る。
 成果は上々。奥にいる敵には多分、まだ気づかれていない。

慈「――よし」

 何体かこちらにむかってくるのを確認。私は壁に身を隠し、罠のある場所へと戻る。

 戻ってくる私を見て、胡桃ちゃんがシャベルを持ち直す。
 誘導に成功したことは分かっているようだ。

胡桃「……」

 キリッと顔を引き締め、待つ胡桃ちゃん。
 そこへのろのろと歩く奴らがやって来た。それらは胡桃ちゃんの作戦通り、倒れている机に近づくと――倒れる。
 割りと大きめな音がしたけど、気にしている時間はない。
 即座に胡桃ちゃんは倒れた奴へとシャベルを叩き下ろす。目を背けたくなるような重苦しい音が響く。
 転倒した二体は胡桃ちゃんの手によって素早く始末された。
 これで、二体。あとこれを何回繰り返せばいいのやら……。数が少なくなったら、通り抜けるのも手かもしれない。


 1・作戦続行(>>459の撃退判定より少し厳しくなった判定を行います)
 2・拠点に戻る

 ↓1

1~30が1体だから問題ないかと

>>465 でコンマをとります コンマ 15 で一体】
【失敗が5ずつ増えていきますので、ご注意を。 現在失敗の範囲は56~99です】

胡桃「次が来たな……」

 三体目。多分さっき私が見つかっていたのだろう。もう一体が曲がり角から姿を現す。
 その一体も、落ち着いて転倒したところを撃退。
 廊下には3体の奴らの死骸が。姿が人間なだけに……ちょっと、辛い光景だ。


【佐倉 慈】 精神 105/110
【恵飛須沢 胡桃】  精神 75/80
【若狭 悠里】  精神 65/70


 1・続行
 2・拠点に戻る

 ↓1

【コンマ 83 失敗】

慈「次は……」

 廊下に出て先ほどと同じように誘導。
 3体ほどこちらに向かって来たのを確認し、私は罠の前まで戻る。

胡桃「よし、行くぞ――」

 ゆっくりと構える胡桃ちゃん。
 奴らはのろのろと、それまでと同じように罠の前までやって来て――越えた。
 下に倒れている奴らの死体を踏んで。

慈「――っ!」

 まずい。全身の毛が逆立つほどの悪寒。
 胡桃ちゃんも危険は承知しているようだが、ここで始末してしまおうと考えているらしい。
 ……どうする?


 1・胡桃に任せる
 2・机を蹴る
 3・指示を出す (対象:胡桃、悠里)

 ↓1

【今日はここで落ちます】
【判定と続きはまた明日】

【正解判定 ステ+10 『慈 35 + 10』  『コンマ 41』 結果:良】

 倒すには隙をつくらないと。
 ――なら。
 頭にふっと浮かんだ閃き。私はそれに従い、素早く動くと奴らが越えようとしている机を蹴り飛ばした。
 重心の問題か、火事場の力というやつだろうか。死体も入れて奴が数体いるというのに蹴った机は奴らのすねを殴打、バランスを崩し転倒する。
 成功だ。

慈「胡桃ちゃん」

胡桃「――ああ」

 声をかけるとすぐ返事が。私は胡桃ちゃんの姿は確認せず、目の前で倒れている奴へと杭を上から振り下ろした。
 思っていたよりも軽い手応えとともに、杭が刺さりこむ。ここで私は追撃。刺さった杭を蹴り、傷を広げる。
 血が飛び散り、奴が動かなくなった。
 その直後、私の横から鈍い音。多分、胡桃ちゃんだろう。
 これで残り一体。
 私は――

 1・胡桃に倒すよう指示
 2・杭を拾い、攻撃
 3・指示を出す(対象:胡桃、悠里)

 ↓1

【『慈 力 35』 『コンマ 26』 結果:良】

 ここは私が。
 いつもの如く冷静さを失う私。
 しゃがみこむと杭を回収。血に濡れたそれを手に、私は倒れている残りの一体へ。

胡桃「――なっ!?」

悠里「めぐねえっ」

 仲間の声もこの時の私には届かなかった。
 近づいて、杭で一撃。頭を突き刺し、再度引き抜いて刺す。
 手に伝わる生々しい感触に、かつて生徒だったものを、殺すという罪悪感。
 色々な感情がせめぎあい、最後に感じたのは僅かな高揚。
 アドレナリンのせいか、それとも。

慈「――はぁ」

 杭を自分の手に収めると、私はみんなへと振り向いた。

慈「ひとまず、安心かしら?」

 これで、ちょっとは安心できるだろう。
 二人の視線がちょっと気になったけど。


【佐倉 慈】 精神 95/110
【恵飛須沢 胡桃】  精神 70/80
【若狭 悠里】  精神 60/70


【残り15体】

胡桃「――そうだな」

悠里「めぐねえ……」

胡桃「りーさん。後にしよう」

悠里「……」コクン

 血を払う。
 これまで誰かの血で濡れることなんてなかったけど、これは中々堪える。
 自分がやったのだと実感させられるようで。

胡桃「めぐねえ、どうする?」

慈「そうね、次は――」

 敵はまだまだ数がいる。
 誘導しようにも道具もそれほどないし……数を減らすか、夜に来るか。
 みんなの命がかかっているのだ。冷静に、判断しなくては。

 1・引き続き廊下でおびき出し撃退(失敗範囲が更に+5で判定)
 2・近くの敵から真っ向勝負
 3・拠点に戻る

 ↓1

 ……この敵の数は無理だ。
 半日使って五体減らすことができたなら、上出来だろう。

慈「退きましょう」

胡桃「了解。じゃあ、処理してから帰るか」

 なにやら安堵した様子で彼女は頷き、ちらりと床に視線をやる。
 五体の死体。廊下に寝かせたままではなにか問題が起きるかもしれないし、放置するわけにはいかないだろう。
 私は頷くと、胡桃ちゃんと一緒に死体の処理を始めた。


【二階の廊下、購買部までの敵の数が5体減りました】
【図書館までの道の敵も5体減りました】
【拠点に戻ります】

【イベント】

 拠点に戻り、早めのシャワー。
 血を洗い流すと、私は生徒会室へと戻った。

慈「……」

 まだ夕食前。
 この後、みんなと会わないといけない。
 それを思うと気が重かった。
 ――どんな顔で会えばいいのだろうか。

慈「……?」

 ため息。
 あれこれ考えて時間を浪費していると、突然ノックの音が聞こえる。
 誰か来たみたいだ。

慈「入って大丈夫よ」

 このノックの音は多分――


 1・胡桃ちゃん
 2・悠里ちゃん

 ↓1

【連取は一応駄目にしておきましょうか】
【では 1 で 胡桃 です】



 胡桃ちゃんだ。
 どうしたのだろう? 彼女が自ら私のいるところへ来るなんて珍しい。

胡桃「入るね、めぐねえ」

 返事をすると、胡桃ちゃんが入ってくる。
 いつものようにシャベルを背負い、明るい声を出して。

慈「もう、めぐねえじゃなくて、佐倉先生でしょ」

 だから私も、自然といつもの言葉を口にする。

慈「……」

 笑顔を浮かべ、彼女がテーブルの席につくのを眺めながら、私はふと思った。
 なんでこんなに繕っているのだ、と。

胡桃「……めぐねえ、ひどい顔してる」

 そうなのだろう。自分でも、そう思った。
 私の隣の席に座った彼女は私の顔をじっと見つめる。
 そう言う彼女もまた、悲しそうな顔をしていた。


【今日は落ちます】

 私がひどい顔をしている理由は分かっている。
 でも、それは甘えだ。
 胡桃ちゃんだって、それを顔に出さないでいるのに。

慈「あのね、胡桃ちゃん――」

胡桃「あたし、気付かされたんだ」

慈「え?」

 突拍子もなく語りだす胡桃ちゃん。
 彼女は私に向けていた視線を前にやり、シャベルを手に持つと背もたれに寄り掛かる。

胡桃「戦う人を見ている人の気持ち。――いや、身を削ってる人を前になにもできない人の気持ちか」

胡桃「あたしはさ、そんなこと全然気にしなかったし、分からなかった。自分のことに精一杯で」

 背もたれに寄りかかり、まるで遠い、昔話でもするかのように胡桃ちゃんはぽつりぽつりともらす。

胡桃「ゆきに言われたときだってそうだった。戦うことをやめることなんてできやしないし、心配されても、と思った」

胡桃「でも、今日分かった。めぐねえが一人で敵に向かっていったのを見て」

 シャベルをテーブルの上に置き、彼女は一言。

胡桃「遠くに、行くような気がしたんだ」

 そうはっきりと口にする彼女の横顔は、今まででは考えられないほどか弱く見えた。

慈「胡桃ちゃん……」

胡桃「めぐねえ。めぐねえはみんなで頑張ろうって言ってくれたよな。だったら、もっとあたしとか、りーさんとか、みんなを頼っていいと思う」

胡桃「あたしだって、めぐねえに怖い思いをさせたくないし、みんなにだってそうだ。めぐねえはみんなの支えだし、あたしも個人的に――笑っててほしいから」

胡桃「めぐねえがあたしのこと心配して言葉をかけてくれたこと、本当に嬉しかったし感謝してる。だからあたしもめぐねえの力に――」

慈「――先生、だから」

胡桃「?」

 胡桃ちゃんが、きょとんとした顔で私を見る。
 気づけば私は俯き、ぼそぼそと何かをつぶやいていた。

慈「先生だから、胡桃ちゃんを気遣ったし、みんなを助けようと戦って――」

 何かの言い訳のような言葉。逃避しか感じられない弱い台詞。
 それは心にもないことだけれど、私は口が止められない。

胡桃「……」

 ひとしきり言い訳を口にする。
 胡桃ちゃんの顔は見えないけど、ひどいことを言ってしまったような気もする。
 私は――どうしたというのだろうか。


 コンマ偶数、奇数でイベント分岐(偶数は修羅場な感じ。クリティカル、ファンブルは関係なし)
 ↓1

【コンマ 8 で偶数】
【ということで、次回はR-18的なイベントがはじまりますので、ご注意を】

【今日は遅いですし落ちます】

【時間が遅いのは私が中途半端な時間に寝て起きてるからでございます】

胡桃「……りーさん」

 自分自身に戸惑う私の耳へ、胡桃ちゃんの小さな声が聞こえる。

慈「悠里ちゃん?」

 顔を上げてみれば、胡桃ちゃんが私を見つめていた。
 いきなり悠里ちゃんの名前が出てきたような気がしたけど――

胡桃「りーさんとはしたのに、あたしのことは頼らないんだな」

慈「――ぶっ!?」

 完全に不意を突かれた。
 えっ? いつバレたの? 私なにか言っちゃった?
 狼狽し思わず席を立つ私。自然と胡桃ちゃんから離れるように後退りする。

胡桃「ほら、今も逃げようとする」

 が、胡桃ちゃんに肩を掴まれて止められてしまった。

慈「逃げようなんて、そんな――」

胡桃「『先生』」

 肩を捕まれ、真正面からまっすぐ見つめられる。
 胡桃ちゃんは私を責めるように目を鋭くさせ、真剣な表情。
 私は逃げることができず、その場にただ立っていた。

胡桃「りーさんとのことがあったんだから、先生だからなんて言い訳、通じないって分かってるだろ?」

慈「――っ、私は」

 また、何かの言い訳を口にしようとする。
 自分でも言い訳だってことは分かっている。けどそれを胡桃ちゃんに指摘されるとは思ってもみなかった。
 カッと苛立ちにも近い気持ちを抱いた瞬間、私は目の前の胡桃ちゃんの顔が怒りに歪むのを見た。
 瞬間、私は背中に微かな痛みを感じる。

胡桃「そんなにあたしは頼りないか?」

胡桃「……魅力がないか?」

 壁に背を押し付けられ、胡桃ちゃんが壁についた手が私の逃げ場をなくす。
 顔が近い。胡桃ちゃんのいいにおいが香ってくる。けれどドキドキの方向は悠里ちゃんの時とは違って、私の秘密が暴かれてしまうかのような心臓に悪いそれ。正直、いますぐ逃げたい。

慈「そんなことは……ないわよ」

胡桃「――嘘だ。この前のシャワーの時は……なにもなかったし」

慈「……なにかあったほうがよかったの?」

胡桃「えっ!? そ、そういうわけじゃないけどさ……」アタフタ

 ……かわいい。
 赤面しながら目を逸らす彼女を見て、私は暢気に思った。

胡桃「――とにかく!」

胡桃「あたしもめぐねえの力になりたいから。だから、先生とかそんなの関係ない」

慈「胡桃ちゃん……。ごめんなさい」

 彼女は私のことを心配してくれていた。
 それなのに私は自分が先生だからって逃げて、言い訳を口にして。
 そんなの、先生失格以下だ。

慈「そうね。私、胡桃ちゃんにもみんなにも……もう少し頼ってみてもいいかもしれない」

胡桃「だな。……りーさんには悪いけど」

慈「え? なにが?」

胡桃「――あたしも、めぐねえの役に立つってこと」

慈「どういうこと?」キョトン

胡桃「こういうことだ」

 胡桃ちゃんの手がすっと動く。
 私を壁に押さえるような体勢で、彼女が触れたのは私の下半身。あれがある場所であった。

慈「はうっ――あ、胡桃ちゃん」

胡桃「あたしだって、めぐねえに……」

 胡桃ちゃんの手が私のそれを上から下へ撫でるように動く。
 優しい手の動き。けれど私にくる快感は強く、私は自分の身体の前で自分の手を握り、なんとか平静を装うとするので精一杯だ。

胡桃「……めぐねえ、可愛い」

慈「胡桃ちゃん、私は別に――あんっ、こんなこと、望んで――」

胡桃「また言い訳言ってる。こんな大きくして、説得力ないぞ?」

 いつの間にか胡桃ちゃんのもう片方の手が私の胸に。
 服の上から膨らみを揉まれ、下は優しく愛撫されて――もう横にも逃げられるのに、私の頭はまともに働かなかった。

慈「あぁっ、は――あぁ」

胡桃「めぐねえ、気持ちいい?」

 私の耳を甘噛みし、囁くように言う胡桃ちゃん。
 私はもう答える余裕もなく、ただただ声をもらし、身体を震わせる。もう私の男性器は限界まで大きくなっているのが自分でも分かった。

胡桃「いい……のかな」

 答えられないでいると、胡桃ちゃんがちょっと不安げに呟く。
 私のことを襲っているような彼女だけど、ところどころ見せる女の子らしい一面がとてもかわいらしい。

慈「……?」

 絶えず与えられる刺激。それに喘いでいると、胡桃ちゃんが私のそれを擦る手を止め、不意にスカートを捲った。
 なにをするつもりなのだろうか。ごそごそと胡桃ちゃんは彼女のスカートに手を入れて、

胡桃「確か……こうだよな」

 直後、私に身体を寄せる。
 私の肩に手を置いて、密着。なにをするのか、この時になっても分からなかったけど、男性器への感覚に彼女の意図を理解した。

胡桃「んっ……恥ずかしい、な」

 アレに伝わる、ちょっと湿った柔らかい感触。包まれるようなそれは、挿入した時に似ているけど、違う。
 多分脚で挟まれているのだろう。胡桃ちゃんの秘部に当てるような感じで。

胡桃「はぁっ、ぁ……」

 胡桃ちゃんがぎこちない動きで腰を動かしはじめる。
 めくられたワンピースから出ている、男性器。ぴんと立ったそれに彼女の秘部が擦り付けられ、腰が抜けてしまいそうな快感が走る。
 自分が動くのとはまた違う。休むこともできず、胡桃ちゃんの思うままに快楽を与えられ、私は自分から行動を起こす気にすらなれなかった。

胡桃「めぐねえ……っ」

 間近で、蕩けた目を向ける胡桃ちゃん。
 彼女が感じている表情は愛らしく、いつもの印象とはすごく違って見えた。
 彼女も気持ちよくなっているのだろうか。段々と腰の動きが早くなり、私へと顔を寄せ――くちづけをした。

慈「んぁ、あ――っ!」

胡桃「ちゅ、はっ……ぷぁ」

 ちょっと乱暴に、舌を私の口に入れ私のと絡めてくる。
 手は私の身体に。身体をぎゅっとくっつけ、まるで私のことを強く求めているかのような行動に、私はつい嬉しくなってしまう。
 先生ならこんな状況、拒むべきなのに。
 胡桃ちゃんにリードされ、されるがままに快感を与えられる。キスもそうだけど、下へと与えられる刺激も強い。
 愛液が流れ、段々と滑りがよくなってくる秘部に、胡桃ちゃんの太もも。それらに包まれ、擦られる。私はあっという間に限界へと近づく。

慈「っ――あ、ぷは……胡桃ちゃん、私、もう――っ!」

胡桃「いいよ。いつでも――っ、はぁ。出して」

慈「ふぁっ、んぅ――!」

 我慢することはできなかった。
 私は限界がくると同時に胡桃ちゃんへと抱きつく。そして、射精。
 見えないので分からないけど、多分胡桃ちゃんの秘部やお尻にかかったと思う。悠里ちゃんの時と同じように、自分でも信じられないくらい多く精液が出た。

>>1の趣味です。理由はそれだけ。原作は勿論違いますよ】


胡桃「……はぁ。めぐねえどうだった?」

慈「――そ、その……良かった、けど」

 息を切らせ、絶頂の余韻に浸りながら答える。
 結局抵抗することはできずにしてしまった。まだ本番までいってないし、オーケーだと言う自分もいるけど……さすがにそれは苦しい。

慈(……私先生なのに)

 ぐったりとしながら思う。
 今度は言い訳なんかじゃない。先生ならばもっと、健全に生徒の力になるべきなのに。
 生徒に気を遣わせて――るのかしら? あれ? 冷静に考えたら、悠里ちゃんとも胡桃ちゃんともなんでこんなことしてるのかわからなくなってきた。
 恋愛感情……なのかしら?

胡桃「そっか。よかった……」

 ほっと安心した様子で胡桃ちゃんが私に抱きつく。
 私も自然と彼女を抱きしめ返し――油断した瞬間だった。

悠里「めぐねえ、入っていいかしら?」

 悠里ちゃんが入ってきたのは。

 笑顔で、少し弾んだ声を出して部屋へと入ってきた悠里ちゃん。

悠里「……」

 彼女は私と胡桃ちゃんを見るとすぐに真顔になった。
 で、三人とも沈黙。私は多分動揺しきった顔をしているだろう。
 前にいる胡桃ちゃんをちらっと見れば、彼女もまた動揺しているみたいだった。
 目が泳いでおり、汗が漫画みたいにだらだらと流れている。
 ――なんだろう、この、浮気現場を見られたような、そんな焦りは。
 実際その通り……なのかもしれない。

慈「あ、あの、悠里ちゃん、これは――ね」

悠里「くるみ、めぐねえから離れて」

 静かな短い台詞。でも威圧感は凄まじく。
 私は背筋をぴんと立たせ、胡桃ちゃんはシュバッと私から離れて気をつけ。
 真っ白になりかけていた思考はすぐ冷静になった。身体の反応もまた、すぐ治まる。
 いそいそと私と胡桃ちゃんは下着を直し――悠里ちゃんをちらりと見る。

悠里「――二人とも、どういうことかしら?」

 悠里ちゃんは笑顔だった。ただしゴゴゴゴゴなんて効果音が出てきそうな凄みを出して。

 ど、どうしよう……。
 悠里ちゃんがなんで怒ってるのかはっきり分からないし……私に恋愛感情? なんて自意識過剰なような気もするし……。

慈「ど、どういうことなんだろう――」

胡桃「り、りーさんが抜け駆けするからだろ」

慈「へえっ!?」

 抜け駆け!? やっぱりそういう話なの!?
 子供が親に反論するように、恐る恐る主張する胡桃ちゃん。彼女の顔は真面目そのもので、冗談などを言っている様子ではない。

悠里「っ――わ、私は……めぐねえが他の子に手を出さないように――」

胡桃「だったらあたしでも問題ないな」

悠里「そ、それだけじゃないわ。私は、めぐねえに甘えてるから……その」

胡桃「代わりに? それだって、あたしがいれば必要なくなるかもしれないじゃんか」

悠里「でも、私はめぐねえに襲われかけたから……もしかしてくるみも?」

胡桃「くっ……分かってるくせに……」

 睨み合う二人。奴らがいる場とはまた違う重苦しい雰囲気の中、その視線が私に向けられた。
 ――なんか嫌な予感。

慈「ど、どうしたの? 二人とも」

悠里「めぐねえは……」

胡桃「どっちがいいんだ?」

慈「ええ!? えっと……」

 どうしよう。これ、どっちを選んでもまずいことになる気がする。
 というか現状でもう、まずくなってるわよね。
 なんとかこの場を治めようと私は考える。できるだけ平和的に、二人の仲をこれ以上壊さないように……。
 ――苦しいけど、これしかないわよね。

慈「私は……二人とも、大好きよ。けど私はみんなと仲良くなりたいし、誰か一人決めるなんてことも今はしたくないの」

慈「だから、二人には悪いけど……」

 言ってて最低だと自分で思う。
 手を出してからこれだから、タチが悪いというか。

胡桃「……」

 若干呆れたような顔をする胡桃ちゃん。
 そうよね……やっぱりそういう反応をするのが普通よね。
 どうしたものかと私は再度頭を回転させつつ悠里ちゃんを見る。

悠里「……な、なら、二人でめぐねえは共有ね」

胡桃「え?」
慈「えっ?」

 すると、彼女は突然そんなことを言った。焦ったような顔をして。

悠里「くるみもそっちのほうがいいでしょ?」

胡桃「ま、まぁ……りーさんと喧嘩したいとは思わないし」

 図らずも問題は解決したらしい。
 空気が軽くなり、私はほっと一安心。
 ――でも、色々気になったこともある。
 ナチュラルにもの扱いされてるところとか、悠里ちゃんの変わり様だとか、焦ってる様子だとか。
 ……悠里ちゃん、どうしたのかしら? 他の人なら彼女の気持ちが分かったりするのだろうか。
 それは分からないけど、もっとしっかりしないと駄目よね。


【今日はここで落ちま】

【胡桃の好感度が4上がりました】

悠里「それで……めぐねえ。夜はどうする? 昼はほとんどなにもできなかったけど……」

 話も一区切り。二人とも落ち着いてくると、悠里ちゃんが口を開いた。
 なるほど、悠里ちゃんがここへ来た理由はそれか。
 昼は確かになにもできなかった。でも、敵を減らすことはできただろう。
 もしかしたら夜ならばもっと突破しやすくなっているかもしれない。
 それに購買部までの道にある図書館なら、楽に入ることもできるだろう。
 ――さて。どうしようか。



 夜コマンド
 1・夜食作り【資源200消費】
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】
 5・マニュアル確認

 ↓1

【3 トレーニング】

慈「そうね……特に今夜はなにもしなくていいかしら」

 今日は充分頑張った方だろう。
 あんまりやりすぎるのもよくない。

悠里「分かったわ。それじゃ、くるみ、ご飯の用意手伝って」

胡桃「え? あたしちょっと身体汚れて――」

悠里「なら先にシャワー使っていいから。ほら」

 きょとんとした顔の胡桃ちゃんの手を引き、悠里ちゃんが部屋から出て行く。
 その時ちらりと胡桃ちゃんの脚に愛液らしきものが見えて――私は赤面。

慈「……私、大変なことをしてるような」

 間違いなく御用よね。
 ――まぁ、今は気にせずどんなトレーニングをするか考えるとしよう。


 トレーニングするステータスを選択。同時にコンマ判定
 ↓1

【力 コンマ:4】

【力  35 + 4 で 合計39です】


慈「……うん」

 夕食後、私はトレーニングをはじめた。
 今日も力の向上を目指すメニューで、素振りから腕立て、腹筋――あれこれと、力がつきそうなものをやってみた。
 結構効果はあった、と思う。
 いまいち効果が実感できないのだけれど、こうした積み重ねが大事なのだろう。


【五日目終了です】
【精神が最大値の半分回復しました】

六日目 ステータス

【佐倉 慈】
 体力 100/100
 耐性 60/100
 精神 110/110
 力  39
 速さ 20
 賢さ 40
 技術 50

 『スキル』
 良回復 一日のはじまりに体力を10回復

 【丈槍 由紀】
 体力 80/80
 耐性 50/50
 精神 30/30
 力  10
 速さ 20
 賢さ 10
 技術 20

 『スキル』
 庇う 味方が死亡するダメージを受けそうな時、自分がそのダメージを受ける


 【恵飛須沢 胡桃】
 体力 120/120
 耐性 90/100
 精神 80/80
 力  60
 速さ 60
 賢さ 20
 技術 20

 『スキル』
 シャベル愛好家 シャベルが関わるあらゆる判定にプラス補正


 【若狭 悠里】
 体力 90/90
 耐性 80/80
 精神 70/70
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 60

 『スキル』
 園芸の知識 一日最後の判定のコンマが3、5の時資源に+300



 【栗宮 天子】
 体力 70/70
 耐性 80/80
 精神 130/130
 力  30
 速さ 10
 賢さ 60
 技術 70

 『スキル』
 医術の心得 一日の終り、体力が一番すくないキャラを体力の1/3回復


【共通ステータス】
『資源』 2000
『消費量』 500 
『生産』 600



【好感度一覧】
由紀 43  「いい先生、だよね」
胡桃 51  「最近どきっとすることが多い……」
悠里 55  「色々見てて不安……」
天子 35  「いい同僚です」

 六日目。
 異変が起こってからそろそろ一週間が経過しようとしている。
 現状、なにも問題はないが……外、この三階以外の世界がどうなっているかは分からない。
 人間として、先生として、できるだけ人は助けたいけど――あまり無茶ができないのもまた現実。
 ……さて。今日はどうしようか。


 朝~夕方コマンド(とりあえずコマンドだけ選んで、その後メンバーやら詳細を決定します)
 1・開発【選択不可】
 2・提案
 3・授業
 4・探索

 ↓1

【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『街の二人組』
 内容:『街に生存者を発見した。外に向かう手段は少ないが……なんとか合流する手段を考えよう』】

 【イベント『安全圏内の探索』
 内容:『安全を確保した場所の探索を行います』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1

【街の二人組  メンバー:胡桃、天子】

【と、決定したところで今日は落ちます】
【明日は寝なかったら、今日みたいな時間に更新にはならない……と思います】

社会人の方はまだ募集しているっぽいよ

名前 石長 優(いしなが ゆう)
『年齢』めぐねえと同じ
『容姿』
ナース服
Dカップ
190cm やや細め

『得意・長所』
何度も出産に立ち会っている為、対処法には詳しい
慈に何があったのか些細なことでもなんとなくでわかる
コミュニケーション能力がかなり長けている(特に小さい子相手)
酒に関してはかなり詳しい方で直感で高級酒を見分ける
近くにあるものをすぐに武器として使う事が出来る

『苦手・短所』
子供達がいない前では完全に駄目な大人になる
医療関連以外の機械がまるで扱えない
普通の人の3倍は食べる


『設定』
子供が大好きで慈の家から学校の間にある産婦人科・小児科のある病院で看護師をやっている
慈とは幼馴染で高校までは同じ所を通っており
別の道を歩き始めた後も時々二人で飲みに行く事がある
慈に男性器があるのを知っておりその事で「天使様」と呼びからかう事もあるが
彼女の事を大切に想っておりには幸せな人生をおくってほしいと願っている

本来は男っぽい話し方をするが仕事中はちょっと無理をして女らしい話し方をしている

慈の子供が誕生する瞬間に立ち会う事は彼女が持っている夢の一つである

喧嘩は強い方であり小さなころは慈に意地悪な事をしてきた子供達をフルボッコにしていた
休み時間の時は子供たちと遊んでいる事が多く子供達からは「ゆーねー」と呼ばれ親しまれている
由紀からも慈程ではないが懐かれている


パンデミックの時は病院地下一階にある休憩室で遅めの昼食でカップ麺にお湯を入れ3分待っているときに扉の方から
何か倒れる音が聞こえ何だろうと思い部屋を出ようとするが何か重い物が扉をふさいでしまい出られなくなってしまったのである
助けを求めるが人々の叫び声や明らかに人の物ではない声等で遮られてしまう

そうこうしている内に院内は静かになり人の気配がしなくなり代わりに先程の人の物ではない声が多くなる

出られなくなってしまった彼女は落ちついて現在の状態を調べる事にした
・ラジオは何も流れない
・電話はあるが内線しかつながらず唯一繋がった箇所が余り人が来ない所
・食料は大豆バー・カップ麺の自動販売機が一つずつ 飲み物の自動販売機もある(お金は全部買える分は持っている)
・今いる部屋は凄く重い物に扉がふさがれておりかつその周りには人類の敵になると思われるものが結構いる

時間はそこそこあるが楽観視は出来ない状況であると判断した彼女は持っていたメモ帳に遺書を書く準備を始めるのであった

持ち物
メモ帳
ボールペン
飴玉沢山(子供達にあげる用)

>>556
ありがとナス

まだ募集してるなら

名前 鷲島加代子(わししま かよこ)
年齢 秘密(29)
容姿 長身で、胸は控え目、髪は黒髪ショートヘアー。スーツを着用してて、男装の麗人のような見た目
得意 交渉・車の運転・外国語
不得意 運動・家事

舞台女優と自称してる謎の女性。
話上手で、この地獄のような場所でも冷静に行動している。
本人いわく、街の喫茶店でコーヒーを飲んでた時、感染が発生したようで、街はゾンビで溢れ、隠れながら過ごしたようだ。
色々と謎が多く、あまり自分の事を喋りたがらないが、逆に言葉巧みに相手の事を聞き出してくる。本人いわく癖だそうだ。
外国語も数カ国は喋り、交渉は得意だそうだが、ゾンビは言葉が通じないから対処はできないとため息をはくこともしばしば。
一応ヘリや船舶の免許も持ってるらしい


持ち物
バック
化粧道具
カツラ数種類
携帯食品数種
サイフ
スマホとガラケー
拳銃(警察の死体から手に入れたと本人談)

ちょっと謎の美女系キャラを考えてみた

桐芽 卯奈(きりめ、うな) 24歳

【容姿】
148cm Bカップ 色白
焦げ茶色の肩甲骨辺りまでの長さのポニーテール
前髪にヘアピン(青)をしている
噛まれないようにコートを着て手袋をしている


【得意、長所】
逃げ足が速い、夜目がきく、耳が良い

【苦手、短所】
非力、不器用、ヘタレ、男性

【設定】
セクハラ上司にビンタをして仕事を辞めた後半年ほどニートをしていた。
性格は人に優しくやや無口で物静かな性格。人の話をよく聞く為、よく相談を受ける。

両親は離婚し、同居していた父は20歳を待たず他界した。高3の妹がいる

パンデミック発生の時はモール内の服屋で就活の為面接をしていた。騒ぎが起きた時、その場で待つよう指示され取り残される。
外の様子を見てしばらくは部屋の中で震えていたが、食料と水を求めてショッピングモールの探索を始める。

名前 藤田綾華(ふじたあやか)
21歳
容姿 170cm Bカップ ストレートヘア(黒髪)
長所 体力がある、ゾンビについての知識が少しある、WHOに就職するのを目指しているので医療について詳しい。英語で話せる。
短所 事故で左手を失った。(今は義手をつけている。)
設定
バイトが休みだったから家で勉強していた時に近所の人がゾンビに噛まれてしまいそこから近所の人達がゾンビ化していくなか綾華は家のカーテンを全て閉め、家と窓の鍵も全て閉めて家の地下室に隠れていたが食料が足りなくなってしまい家の近くにあるみーくんと圭がいるショッピングモールに食料を調達しに行こうとしている。
持ち物
スマホ
包丁
携帯食料
水(500ml)
懐中電灯

↑のオリキャラを考えた者です。
ちゃんと改行してなかったので見ずらくなってしまいました。ごめんなさい。

【大人組も一応募集中止しておきますー】
【設定盛り全然オーケーです。楽しいですから】
【あとsageは大事】

慈「……そうね」

 街の二人組。
 由紀ちゃんも言っていたけど、女の子二人であの過酷な場所は辛いだろう。
 どうなるかも分からないし、早めに助けてあげたい。
 ノートを閉じ、私は席を立つ。
 メンバーは決めたけど……とりあえず、どう助けるか会議しないといけないわよね。

慈「みんなを呼んでこようかしら」

 なにかいい考えが出るといいけど。
 今のところ私は一つ二つしか思いつかないし……みんなの知恵を借りるとしよう。

 休憩室。
 夕食のようにみんなで集まって席に座る。

慈「じゃあ早速だけど――なにか思いついた人はいるかしら?」

 時間を消費してしまうのは惜しい。
 私はすぐにみんなへ意見を尋ねる。

天子「はい」

 まず手を挙げたのは栗宮さん。
 おっとりとした笑顔で、彼女は自分の案を話し始めた。

天子「私はハシゴを使う案を提案します」

胡桃「ハシゴって言うと……」

悠里「あの緊急ハシゴよね」

 一階から三階まで伸びるハシゴ。
 学校から三階を行き来するならばあれが必須になってくるだろう。
 なので彼女の提案はそれほど珍しくないのだが――

天子「それを使って、件の自転車ペアに学校に来てもらおうかと」

慈「なるほど……」

 確かに、それはいい考えだ。
 彼女達ならば私達よりも確実に接近できるだろうし。
 でも、それだと問題になるのが、

由紀「どうやって来てもらうの?」

 そう。いかにしてここへ来てもらうのかということ。

天子「そうですねぇ……狼煙とか、旗でも振ります?」

胡桃「ふわっふわしてるなぁ……」

 肝心の手段が曖昧ね……。
 ううん……どうしようかしら。
 具体性に欠けるけど、運が良ければ来てくれそうだ。来てくれればあとは夜に来てだとか頼めばスムーズに進むだろうし……。

慈「う゛う゛ーん……」

悠里「め、めぐねえ? 他の人の案も聞いてみる?」

慈「え? あ、そうね。誰かあるかしら?」

 そういえばそうだ。
 他の人の考えを聞いてからでも遅くないわよね。

胡桃「はいっ」

 胡桃ちゃんが手を挙げる。
 彼女は元気よく、はきはきと告げた。

胡桃「あたしはまず街を探索してみるのがいいと思うな」

慈「街?」

胡桃「うん。目ぼしいところをあちこち。そうすれば、いずれ会えるんじゃないか?」

全員『……』

 ふわっふわと言っていた彼女が栗宮さん以上にふわっふわしてるとは……これいかに。
 とはいえ、これも案の一つ。しっかり頭に留めておこう。街の人達を助けるには、いずれ街を歩くことも大切だろうし、移動手段がないというわけでもないのだ。

【そうですね。由紀ちゃんは現在参ってるだけですから、気にしなくて大丈夫です】


悠里「じゃあ、次は私が」

 胡桃ちゃんの次は悠里ちゃん。
 丁寧に手を挙げて、彼女は上品に語る。

悠里「夜にライトでアピール。校舎には垂れ幕。ハシゴは垂らしっぱなしで、ここはそれなりに安全だって分かれば、こっちに来てくれるんじゃないかしら」

慈「……」

 確かに、それは良い手段だ。
 気づいてもらう可能性が高く、こちらへと来てくれる確率も高い。
 でも、問題もある。

由紀「でもそれって……他の人も来ないかな?」

 他の人も招いてしまうということだ。
 それはメリットにもデメリットにもなる。
 誰かを助けることもできるだろうし、悪意を持った人が来ることもある。最悪――ここにいる誰かが襲われる可能性も否定できない。
 まぁ、その可能性は栗宮さんの案にもある可能性なのだが……。この辺りが難しいわよね。
 ハシゴを降ろすか否かで審査する、ということもできる。でもそれはいわゆる第一印象でしかない。
 それに悪い人が、学校へ居座ることも否定できないし……。

胡桃「でも、デメリットを恐れてたら、なにもできないよな」

天子「そうですね。どの案にもメリットデメリットはあります。取捨選択するのは……私達の決断次第ですね」

慈「結局はそうよね……」

 人を助けたいのは事実。でも、悪い人が来て襲われて――人を殺すようなことになるのは絶対に避けたい。
 化け物と人間とは……違いすぎるだろう。

慈「……じゃあ、最後に私ね」

 他に案がある人はいなそうだ。
 さて。私が街にいる二人を助けるために考えた案は――


 めぐねえの案(仲間から出た案と後で組み合わせることもできるので、今まで出ていないものを。二つ出なくとも十分くらいで先に進みます)
 ↓1~2

【車で迎えに行く】
【待機メンバーは屋上から望遠鏡を見てママチャリズの状態や位置を確認し次第、めぐねえの車に乗っている人たちにサインを送る】


慈「……こんな、感じかしら」

 私の案をみんなに伝える。
 車。私は免許を持っているし、鍵も持っている。駐車場に行くことができれば車を運転するこもできるだろう。

胡桃「車か……めぐねえの車があるなら、確かに街に迎えに行くこともできるな」

悠里「後者の案も、助ける人を選ぶことができるし……サインはできないけど――伝令役が屋上から車に向かえば問題ないように思えるわね」

 私の案はそれなりに受け入れられているみたいだ。
 反論はないけれど――この案もデメリットがあることは否めない。

天子「ではこんなところで、実際に実行する案を考えてみましょうか」

慈「……ええ」

 街の二人組。
 彼女らと確実に合流するには……どうするべきだろうか。
 まず、見つける手段だ。


 1・街を適当に探索する
 2・屋上で望遠鏡を用い二人を探す
 3・狼煙や垂れ幕、旗でアピール


 ↓2

【2 屋上で望遠鏡を用い二人を探す】

慈(これで……)

 で、それからだ。
 二人を見つけてから――


 1・その位置へと車で急行
 2・その位置へと狼煙や垂れ幕、旗でアピール

 ↓1

【2 その位置へと狼煙や垂れ幕、旗でアピール】

慈(……うん)

慈(それで最後は――)


 1・常に監視するのも難しい。ハシゴはかけっぱなし
 2・二人組の合図を待ち、車で迎える
 3・屋上で交代で誰か来ないか見張り

 ↓1

【2 二人組の合図を待ち、車で迎える】

 二人組がなにかしらの合図をとる。
 そのタイミングで、車を走らせて迎えに行くとしよう。
 ひょっとしたら二人も自転車で向かってくる可能性もあるけど、それはデメリットのうちの一つ。
 ……これが、二人組を助ける手段の上でいい方法なのでは。

慈「……ちょっと、考えてみたけど」

 頭の中の案をあれこれ整理し、一つの結論を出す。
 まず二人を望遠鏡で探し、それから二人へなにかしらの手段でアピール。二人がこちらに気づいた様子を見せれば、助けにむかう。
 これがベストだろう。
 私はみんなへと自分のまとめた考えを発表した。


天子「では皆さんが賛成したところで――」

 私の案が採用され、話はまとまった。
 これから早速作戦が実行されるのだけれど……。

天子「実行する時刻はどうします?」

 時刻を決めないと。
 今ならまだ時間もそれほど経っていないし、改めて朝の予定を決定することも可能だろう。
 さぁ、どうしよう。



 1・このまま実行
 2・夜に実行(夜コマンドに予約。朝コマンド選択しなおし)

 ↓1

【1・このまま実行】

慈「このまま、これからやってみましょう」

 早い方がいいだろう。
 結論を出し、私はすぐに答えた。

悠里「分かったわ。それじゃあ、さっきめぐねえが言ったメンバーで屋上を探して――」

胡桃「見つけて合図、それから迎えに――だな」

 まず見つけるところで運が大きく関わってくるのだが、仕方ないことか。
 連絡も、確実な手段もないのだから。
 それでも助けたいと思ったのだから、多少の無茶は承知の上だ。

慈「さぁ、行きましょうか」

 みんながいるから、きっと大丈夫。


【今日はここまでで】

 
 
 さて。早速作戦を実行することになり私と胡桃ちゃん、栗宮さん――だけではなく、今回は全員で屋上へ。

 この作戦は屋上で二人を見つけ、二人にこちらを見つけてもらってから……向かう必要がある。
 車で向かうのをいつもの三人ルール適用でするならば、何組かに分けた方がいいだろう。

胡桃「よし、できた」

 ということで望遠鏡を再び建設。
 胡桃ちゃんのてきぱきとした動きで、望遠鏡はすぐにセッティングされた。
 さぁ、これで二人を見つける過程に進めるわけで。

悠里「それじゃあ、誰が見る?」

 問題は誰が二人を探すか、ということ。
 昼だから多少は探しやすいかもしれない。ここから悟った決まりに則っているなら生徒は学校にいるだろうし、働いている人は職場にいるだろうし――街にはあまり奴らもいないだろう。
 でも、二人組が朝に動いているのかは分からない。
 それに見つけてからのアピールは夜に比べると難しくなるだろう。
 由紀ちゃんとか、栗宮さんが色々作ってくれているけど、果たしてうまくいくかどうか……。
 メリットデメリット。朝と夜の二つを比較して――どうにかプラスマイナスゼロくらいだろうか。
 やる価値は、充分にある。

慈「そうね……」

 適任は誰か。
 双眼鏡で二人を見つけるのに、腕力は要らないだろう。
 ただ効率的に、見つかりそうなところを探す手腕が必要になる。
 ――どうしようか。


 誰に捜索役を頼む?
 ↓1

【『悠里 技術 60』 『コンマ 80』 結果:不可】

慈「悠里ちゃん、お願い」

 考えた結果、良さそうだと思ったのは悠里ちゃん。
 手先が器用な彼女ならば、きっと二人を見つけてくれるはず。

悠里「ええ。見てみるわね……」

 悠里ちゃんが髪をかきあげ、望遠鏡を覗く。
 ……色っぽいと思ったのは秘密だ。

悠里「うーん……」

胡桃「――で、特徴がそんな感じだな。多分見ればすぐ分かるぞ」

 実際見つけた私達が二人の特徴を語りつつ悠里ちゃんが望遠鏡を動かす。
 彼女の動きは正確で、かつ素早い。お手本みたいな使用法である。いやまぁ、お手本はまったく知らないんだけど。

悠里「……駄目ね。まったく見つからないわ」

 数十分経過。
 悠里ちゃんが望遠鏡から顔を離し、首を横に振った。
 悠里ちゃんでも見つからないとは……あんなプロみたいな手さばきだったのに。いやまぁ、プロはまったく以下略。
 ――なんて、脳内で遊んでる場合ではない。

慈「――まだ時間はありそうね」

 まだ、探す時間はあるだろう。
 望遠鏡で二人組を探す人……誰にしよう?



 誰にする? 悠里以外の仲間で一人選択
 ↓1

【『由紀 技術 20』 『コンマ 66』  ファンブルです】

慈「由紀ちゃん、お願いできる?」

由紀「私? いいけど、自信はないよ?」

 由紀ちゃんに頼むと、彼女は自信なさげに渋々といった様子で頷いた。
 みんなの注目の中、由紀ちゃんがゆっくりと望遠鏡へと歩いて行く。
 彼女はそのまま慎重に望遠鏡に顔を近づけると――

由紀「あいたっ」

 転んだ。誰かさんを彷彿とさせる無駄に綺麗な姿勢で。
 由紀ちゃんが転ぶ。その光景がスローモーションで私の前でゆっくりと流れる。
 ゆっくり見えるはずなのに私は身動き一つできず、僅かな時間の後にがちゃんと音がした。

全員『あ、ああぁーっ!?』

 望遠鏡が見事に壊れた。
 絶叫する私達。由紀ちゃんは……

由紀「あ……あ、ごめん、なさい……」

 泣きそうだった。というかもう泣いている。
 彼女に怪我はなさそうなのが幸いか。

胡桃「望遠鏡……は、なんとか直せそうだな」

 すぐさま望遠鏡担当となった胡桃ちゃんが駆けつけ、破損したそれの具合を確かめる。

悠里「ゆきちゃん大丈夫? 望遠鏡はどう?」

胡桃「台が壊れただけだ。本体に問題はないから……まだ探すことはできそうだけど」

天子「それでも、精度が下がりますよね……」

由紀「うう……」

慈「大丈夫よ、由紀ちゃん。誰にでもミスはあるんだから」

胡桃「ん。だから気にすんなって。次だ次」

由紀「胡桃ちゃん……イケメン」

胡桃「反省してんのかお前」

 ――とりあえずはそれほど影響がないみたいでよかった。
 由紀ちゃんを責める人もいないし……時間を無駄にしないようにすぐ捜索を再開するべきだろう。


 由紀、悠里以外で望遠鏡を覗く人物は? (ファンブル補正でコンマに+10の状態で判定。今日の朝~夕コマンドで最後のチャンスです)
 ↓1

【『天子 技術 70』 『コンマ 73 + 10 = 83』 結果:不可】



【いつもの如く中途半端な時間に寝てしまいました。ごみん】
【ということで、今日はここまで】
【技術値がコンマを上回れば、二人組捜索第一段階はクリアでございます】

慈「次は……栗宮さん、お願いできる?」

 台の修理は胡桃ちゃんと由紀ちゃん、悠里ちゃんに任せておき、無事だった望遠鏡本体を手渡す。
 単体でも結構重い。栗宮さんはそれを受け取り、若干よろけつつ構えた。

天子「了解です。では見てみますね」

 なんとかバランスを保ち、望遠鏡で街を見る栗宮さん。
 時折身体の向きを変え、彼女はあちこちを探していく。
 ――が、やはり見つからないらしい。大きなリアクションもなくただただ時間が過ぎていく。

天子「駄目ですね」

 粘り強く続けていたけれど、ついにギブアップ。
 望遠鏡を下ろし、彼女は肩を竦めた。

悠里「これだけ見つからないとなると、時間や日を変える必要があるかもしれませんね」

天子「ですねー。そうします?」

慈「……そうね。仕方ないかしら」

 あんまり長く続けることもまた時間の無駄になってしまうだろう。
 時間を空けることも大切なことだ。それに、台が壊れている今、無理に作戦を実行するのも大変だ。

慈「一旦、中止ね」

 午前はこれから休息ということにしておこう。


【時間経過。夜コマンドへと移行します】

【そしてまた落ちてしまった】

 それから昼食、夕食を食べて夜。
 そろそろ、午後の予定を決めるべき時間だ。
 まだまだやることは沢山あるし、何を選んでも損ということにはならないだろう。
 ただ、優先順位は考えた方がいいかもしれない。

慈「……どうしようかしら」

 私はいつものように考えはじめた。


 夜コマンド
 1・夜食作り【資源200消費】
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】
 5・マニュアル確認

 ↓1

【5 マニュアル確認】

慈「……」

 考えないようにしていた。
 忘れようとすらしていた。
 でも、いずれ見なくてはならないような気もしていた。

 『緊急避難マニュアル』。
 私達の身近にある物とは明らかに違う色のそれ。異変の前から、異変の前兆を感じさせる……でも。

慈(逃げるわけにはいかないわよね)

 これからのためにも、見ないわけにはいかない。
 確かあれは生徒会室に置いていたわよね。今からすぐに読みにいけるけど……。
 ちらり、と私は部屋の様子を見る。
 休憩室には生徒たちの他に、一人、先生がいる。栗宮天子さん。保健室の先生だ。
 私は生徒たちに見せないと決意した。でも彼女、大人で先生である彼女には……見せるべきなんじゃないだろうか。


 天子先生も呼ぶ? 呼ばない?
 ↓2

【呼ぶ ファンブルです】


 呼ぼう、かしら。
 彼女も大人だ。私が危惧しているような展開にはならないだろう。

慈「……栗宮さん、ちょっとお話いいかしら?」

天子「はい? 私ですか?」

 声をかけると、栗宮さんがこちらへと顔を向ける。
 私が栗宮さん一人に声をかけることは珍しい。ちょっと不思議がられているみたいだ。

慈「ええ。個人的にお話が」

 詳しく説明して、誤解されないようにしておきたいけど……。

胡桃・悠里『……!』ガターン!

由紀「あ、あれっ? 二人ともどうしたの?」

 今はやめておいたほうがいいかもしれない。二人が過剰反応してるし。

天子「あらあら。個人的に……なんでしょう?」クスクス

慈「うっ。大切な話なの。だから――ね?」クビカシゲ

悠里「……」
胡桃「……」

由紀「二人とも、今度は赤くなってるけど……」

天子「――分かりました。では、一肌脱ぎましょう」

慈「話をするだけで大袈裟な……」

 マニュアルの内容次第では大袈裟ではなくなるんだけども。

悠里「め、めぐねえ」

 二人で生徒会室へ行く流れに決まり。
 早速私は休憩室から出ていこうとするのだけど、そこへ声をかけてくる人が一人。

慈「悠里ちゃん? どうしたの?」

 おずおずとした様子の彼女はテーブルの席から立ち上がっていて、何故か泣きそうな顔。
 その隣では胡桃ちゃんがバツが悪そうに指先で頬を掻いていた。彼女もなんでか立っていた。

悠里「その……なにを話すつもりなの? 栗宮先生と」

慈「な、なにって……大切な話を」

悠里「大切な……もしかして二人は既に」

胡桃「りーさん、流石に落ち着け」

 ……うん。なんとなく、二人が過剰な反応している理由がわかったような気がする。
 でも何を言ったらいいのやら……。

天子「大丈夫ですよ。お二人が心配するようなことは絶対ありません」

慈「ひうっ!?」

 悩んでいると、栗宮さんが口を開く。
 なんでだろう。私の腕をしっかりと抱いて。
 驚きと、柔らかさに思わず声が出てしまった。

悠里・胡桃『……』ジトーッ

慈「だ、大丈夫。本当になにもないから心配しないで」

胡桃「顔がにやけてるぞ、めぐねえ」

 自分でもそれは分かっているから、説得力皆無というか。

慈「と、とにかく! 二人に心配されるようなことはないから大丈夫です! さ、栗宮さん」

 良い言い訳が思いつかない。
 私はそのまま逃げるようにして休憩室を足早に去る。
 二人の疑いを晴らすことはできなかったけど……今の私にはこれくらいしか対応策が思いつかなかった。


【胡桃、悠里の好感度が5下がりました】

【ここで追加注意】
>>1でも書きましたがこのSS、オリジナル展開が主となります。なのでマニュアルの内容やら、感染のあれこれだとか、ほとんど原作と異なるかと】
【そこはご注意を】



 多大なる被害を受け、私は栗宮さんと生徒会室へやって来た。
 暗い室内に明かりをつけ、私は自分の布団、その下からファイルを取り出す。
 中を確認すれば……あった。ちょうど書類の中の中間くらい。緊急避難マニュアルが。

天子「お話ってなんですか?」

慈「これについて、よ」

 長机の席に座り、対面にいる彼女と私の中間にマニュアルを置く。
 再会した時にマニュアルだとか言っていたのもあり、彼女の反応は良かった。

天子「緊急避難マニュアル……! 慈さんが持っていたんですね」

慈「ええ。栗宮さんと会うちょっと前に」

天子「なるほど……それで話を逸らしたんですね」

 ――そこは分かっていたのね。
 鋭いんだか、そうじゃないんだか……。
 ふんふんと頷く彼女に私は苦笑。そして、マニュアルを包むビニールに手を伸ばした。

慈「非常事態……よね?」

天子「はい。ものすごく」

 多分、開けたら――引き返せない。
 私はもしもの恐怖心で頭がいっぱいだというのに、目の前にいる彼女は揺らがない。

慈「……」

 目を閉じ、ゆっくり考える。
 ――そうだ。もう私は引き返せないところにいる。
 引き返せば私が、みんなが危険な目に遭う。
 恐怖は当たり前。でも、進むか引き返すかで悩む理由はない。
 進むしか、ないのだ。

慈「――大丈夫」

 怖い。でももう、迷いはなかった。
 私はマニュアルの封を解き、栗宮さんとともに中を読みはじめた。




 中には想像を絶する内容の文面が並んでいた。
 覚悟をした後でも、揺らいでしまいそうな、これまでのすべてが覆ってしまいそうな、絶望的な事実。
 ひどかった。
 私達の心を支えるすべてが、崩れさってしまいそうな残酷な真実がそこにあった。

慈「これって……」

天子「本当のこと、ですね」

 一通り読み終え、私たちは自然と口を開く。
 本当のこと。マニュアルに書いてあったことがすべて。
 ――生徒たちに黙っておいてよかった。私は改めて思う。

慈「でも……とても信じられないわ」

天子「そうですか? 現在の状況を考えるに、自然とも言えます」

慈「そんなことは――っ」

 反論しようとして、私は閉口。
 突然広がった異変。生存者の影がちらとしか見えない状況。そして、助けがこない現実。
 すべてを考慮すると、確かに自然とも言えた。
 この学校だってそうだ。不自然なほど設備が充実していたのは、この状況を考えていたから。
 これを偶然と言うのは無理がある。
 でも、それは……あまりにも絶望的な話で。

天子「これまで不自然だった点も……すべては被害を抑えるため。そう考えると……」

 合点がいく。
 栗宮さんは、珍しく苦い顔をして、口調に真剣さをにじませる。
 彼女もまた動揺している。私だけではないのだ。

慈「……そうね。確かに、そう思わざるを得ないわね」

天子「……ですね。でも、そう考えると私達は幸運だったのかもしれません」

慈「幸運? 学校にいられたことが?」

天子「それも勿論ありますが――学校のシステムに触れていたことが、ですね」

 学校のシステム?
 ええと、特にこれといって気になるところはなかったような……。
 首を捻る私の前、栗宮さんは静かに語る。

天子「屋上の菜園。グラウンドの菜園。校外の菜園。そして地下水」

天子「もし、感染の原因がこの地にあるなら……」

慈「夢みたいな話ね……」

 でも、有り得るのかもしれない。
 思えば学校に感染の波がくるのは遅かったような気がする。
 それがもし、学校の教育方針が関係しているのなら――充分可能性のある話だ。
 ここまでの設備を用意していた学校なのだから。

慈「……はぁ」

 大体の真実が分かってしまった。
 開く前は恐怖心があったけど、今はただ脱力感が強い。
 私達がしていたことに意味があるのか。それすらも今は危うい。

天子「大丈夫ですか?」

慈「ええ。これからどうしようと思って……」

天子「いつも通りでいいと思いますよ」

 あっさりと、彼女は言った。

天子「いつも通り。それでいつか助けが来る、状況が好転する時を待ちましょう」

慈「……栗宮さん。それは、いつになるか……」

天子「――それ以外の選択肢なんてないですよね」

慈「……」

 反論はできなかった。
 真実を知ってもなお、私達には今を続けることしかできない。
 助けがいつ来るか分からない。だからといって無茶な行動をすればどうなるかも分からない。
 安全に、確実に助かろうとするなら、私達は現状を維持するしかないのだ。

天子「黙ったということは……分かっていたみたいですね」

慈「……言い訳できないわね。ごめんなさい。確かに考えるまでもないことだったわ」

 むしろ現状維持以外になにがあるのだという状況。
 私はなにを考えているのだろう。

天子「慈さん。一人で抱えようとしてないですか?」

慈「え? そう、かしら?」

天子「なんとなくそう思いました。慈さん、責任感が強いですから」

 のほんと、いつもの口調で彼女は言う。
 一度口を閉じ、私と目を合わせた彼女はにっこりと笑った。

天子「話してみないですか?」

 ――隠せそうもない。
 私は苦笑を浮かべ、まだ整理もついていない自分の感情を吐露しはじめた。



【一度落ちます】


慈「今回のこと……きっと、大人が子供を、みんなを巻き込んだ事件よね」

 マニュアルの情報が正しいならば、これはそういうことになるのだろう。
 大人の仕事や私情、それらが私達を巻き込んだ。

慈「丈槍さんはね、一日目、泣いていたの」

慈「ああなったことを嘆いて、でも誰も責めていなくて……」

慈「私は正直、誰かを責めていて、それについて何も考えていなかったからハッとさせられたわ」

慈「こんな無害な子も容赦なく日常を奪われて、誰を恨むかなんて考えないで、ただ悲しい目に遭っているんだ、って」

慈「だから……もっと憎くなった。今回の異変が誰かの行動によるものなら、その犯人はきっちり罪を償うべきだって」

慈「でも――今回のこと、私達大人が原因なのよね」

慈「私は……それが分かって、逃げたいと思った」

 言っていて、段々と自分の気持ちを理解してきた。
 憎いと思っていた人物が自分と同じ大人。責任を背負うべき人物が他でもない私。
 卑怯だと分かっていても、逃げたいと思ってしまう。
 私は……自分勝手なのだろう。

天子「うんうんなるほど……」

 呆れるほど子供じみた言葉。
 私が全てを言い終わるまで黙っていた栗宮さんは、大袈裟に頷く。
 そして笑顔で言った。

天子「慈さん今回の事件と全然関係ないですよね? 考え過ぎです」

慈「はい……?」

 私はあっけにとられた。
 一日目からの悩みを、マニュアルを読んだ時の動揺を、全てをさも当たり前のように否定された。
 理解が追いつかない私へ、彼女はさらに追撃を加えた。

天子「むしろ自意識過剰です。こんな大きな事件の責任をかぶろうだなんて、器じゃないです。断言します」

慈「え、ええー……」

 散々な言われ様である。

慈「でも、原因は大人で――」

天子「その悪い大人は慈さんじゃありません。もっと他の誰かです」

慈「けどっ、私は」

天子「分かりました。そこまで言うなら、責任をかぶってもらいましょう」

慈「罪を背負う人――ええ!?」

 ころころ変わる意見。
 私はすっかり彼女のペースの中に巻き込まれている。

天子「生きて、悪い人に全ての責任を背負わせましょう」

慈「それって、結局……逃げてないかしら?」

天子「逃げていいんですよ」

 目を閉じ、彼女はゆっくりと首肯。

天子「慈さんはこんな理不尽の責任をとる必要なんてありません。慈さんのせいだなんてみんなが聞いたら、馬鹿だって笑いますよ」

天子「慈さん。自分がするべきことを、背負うべき責任をしっかり考えてください。あなたがいなくなったら、私達はどうなるか……」

天子「大人が私だけになったらどうなるか……ああ、恐ろしいです」

 自分で言うのね。
 真面目なのかふざけているのか……未だ、よく分からない人だ。

慈「分かったわ。みんなに笑われるわけにはいかないものね」

慈「みんなと生きて生きて……この事件を引き起こした大人達に責任を被らせるわ」

 でも、元気づけられたのは確か。
 責任を背負うことはいい。でも、命を無駄にすることとそれは、まったくの別物なのだ。

天子「そうです。目指せめぐねえハーレム、ということで」

慈「めぐねえハーレム?」

 だから、今までと変わらない。私は先生としてみんなを護り、みんなと生きる。ただそれだけの話だ。




 栗宮さんが休憩室に戻った後、私は改めてマニュアルに目を通した。

慈「……生きる、か」

 マニュアルに書かれていた、奴らを作り出してしまっているであろう感染症の説明欄。
 色々と難しく書いてあるけど、大体は私達が知っている情報だ。
 けれど、これまでの希望を打ち壊す絶望的なものが一つ。

 『空気感染』。
 耐性を持たない者はただそこにいるだけで、感染してしまう。

 つまり――救助は難しいだろうということ。
 それだけではない。今こうして生活している私達ですら、感染していないかは保証できないのだ。

慈「……」

 きっと、これからなのだろう。
 これから私達は佳境に立たされる。人の命がかかった選択だって……。
 けれど、覚悟はできている。

慈「――そうね」

 分かっている。
 私は自分自身に頷いた。
 そんな簡単に生きるだなんて言っていない。
 絶望的でもなにがあろうとも、最後まで全力で、みんなと生き抜く。
 それがきっと、私の責任――いや、違う。私がしたいこと。希望なのだ。
 みんなといつか元気に、笑顔で、命の危険なんてない安全な場所に。それが私の希望。私はそのために生きている。
 そのためなら、どんな困難だって越えてみせる。

慈「頑張らないと」

 私は佐倉慈。私立桜ヶ丘学院高校の国語教師――先生、だから。


慈「……さて」

 マニュアルの内容は確認した。
 これはちょっと生徒には見せられない……だろう。
 ファイルに戻して厳重に隠しておく。……と言っても棚の中ファイルが並ぶところに紛れ込ませただけである。
 金庫だとか、そういうものをいつか見つけなければ。

慈「時間はまだあるわよね」

 伸び。あくびを一つもらして私は呟く。
 マニュアルを確認して話をしただけ。まだまだ時間はあるだろう。


 夜コマンド
 1・夜食作り【資源200消費】
 2・会話 【生徒らと会話。好感度が変動】
 3・トレーニング 【自分を鍛える。各種パラを選択し、コンマ判定】
 4・探索 【朝~夕方コマンドと同じ。敵は少なめ】

 ↓1

【4 探索】

 現在発生中のイベント


 【イベント『購買部』
 内容:『休憩室にある食糧だけでは心もとない。危険だが2階の購買部に行く必要性も出てくるだろう』】

 【イベント『教材確保』
 内容:『授業をはじめることにした。今のままでもいいけど、やっぱりするなら効率的な方がいい。2階の図書館で教材を探そう』】

 【イベント『街の二人組』
 内容:『街に生存者を発見した。外に向かう手段は少ないが……なんとか合流する手段を考えよう』】

 【イベント『安全圏内の探索』
 内容:『安全を確保した場所の探索を行います』】


 進行するイベント、及び参加メンバー
 ↓1

【街の二人組  メンバー:悠里、天子】

【と決まったところで、今日は落ちます】
【予想外なタイミングでマニュアル確認が来てびっくり】

【空気感染というのはあくまで原作から予測したもので、基本的に原作にそって進みます。
 ということで、ゾンビは原作に出てくるタイプのみ。数の暴力で、哺乳類云々はあくまでも生活部の予測ですけど、それに則ります】
【なのでクリーチャーだとか、そういうのは出てこないかと】
【あと学校の地下室、ワクチンなどは存在します。翌朝の作戦会議でイベントが登場する予定なので】
【それとオリキャラが時間経過で……ということは、極力なくすつもりです。まぁ、まだまだ余裕なので大丈夫だと思いますが】



 夜。
 午前と同じように私達は屋上へと集まった。

慈「ということで、午前と同じく捜索をしたいと思うのだけど……」

 集結した全員。私はみんなへと声をかける。
 前に発見したのは午後。もし彼女たちが夜に行動するならば、この時間の方が発見する確率が高いのかもしれない。

由紀「……誰が探す?」

 とはいえそれはもしかしての話。
 午前と同じく、全力で探さなくては。


 誰が探す?
 ↓1

【まぁ、今回は突然寝落ちた落ち目がありますので、クリティカル採用で進めます】
【時間制限が危なくなったら、なにかしらの予兆を書きます】
【それと、一回選択があった後に、同じ選択で正解判定やプラス判定が出たりすることはおそらくないので……そこを考慮していただければ】


【『由紀 技術 20』 『コンマ 77』 結果:クリティカル】

慈「由紀ちゃん、お願いできる?」

 考えた後に、私は由紀ちゃんを見た。
 午前は頑張って真面目に探したのだ。そうなると直感的な要素に頼ってもいいかしれない。

由紀「わ、私? いいけど……」

 由紀ちゃんが自信なさげに望遠鏡の方へと視線を向ける。
 そこにはガムテープで簡単に直された台に乗った望遠鏡が。いくら道具に詳しい栗宮さんがいようともちゃっちさがちっとも隠れていない。

由紀「壊れないかな?」

悠里「大丈夫よ、ゆきちゃん。本体じゃないなら直せるから」ニッコリ

胡桃「本体壊したら晩御飯抜きな」ニッコリ

由紀「……」

 本人たちはプレッシャーを和らげようとしているんだろうけど、逆効果な気がする。
 ぎくしゃくした動きで望遠鏡へと近づく由紀ちゃん。
 彼女はゆっくり望遠鏡をのぞき込むと……。

由紀「あっ!」

 小さく声を上げた。

胡桃「見つけたか?」

由紀「う、うん。それで……」

 望遠鏡から顔を離す由紀ちゃん。
 彼女は若干焦った様子で私達へと言う。

由紀「多分こっちに気づくから、光を」

 ――見つけたことに加えて、どうやらこっち方向を見ているらしい。
 由紀ちゃんに任せてよかった。私達は目を合わせ、そして準備してあったそれを点灯。
 放送室に置いてあった小さめの電灯。多分なにかのイベント毎に使う予定だったのだろう。小さいけれど、灯り一つない街で目立つには充分だ。

悠里「これで気づいてくれるといいけど……」

天子「大丈夫ですよ。由紀ちゃん頑張ってくれてますし」

胡桃「けど、気づいてからも問題だぞ。色々あるし」

 確かに。まだ二人が気づいたとしても難関はいくつもある。
 まず車まで行って運転するのもそうだし、二人がいる位置を覚えて行くのも大変だし、二人を連れて帰る後も大変だ。
 果たしてうまくいくのか……。

慈「由紀ちゃん、どう?」

由紀「えっと……二人とも気づいてくれた……みたい。どうする?」

天子「信号でも送ってみます?」

胡桃「……。とりあえずやっておくから、めぐねえたちは迎えに向かってくれ」

悠里「そうね。じゃあ、めぐねえ」

慈「ええ。行きましょう」

 私と悠里ちゃん、栗宮さん。
 少し戦力的に不安だけれど、今回は戦うわけではない。
 私達三人は屋上から三階、そして避難はしごのある生徒会室へと向かった。

みーくん「………初めまして。学園生活部に入部させていただいた、直樹美紀です」

めぐねえ「初めまして。学園生活部の顧問、佐倉めぐみです」

みーくん「あの…………佐倉先生はどうしてここに…………確か放送室の前でやられたって……………」

めぐねえ「…………あの時はもうダメかと思ったわ………空腹のことしか考えられなくなって来て…………でもゆきちゃんの声を聞いてここにいてはいけないって気付けた」

めぐねえ「その後、皆に迷惑かけないようになんとか地下を目指したの……。なんとか地下2階まで辿り着いて、朦朧とした意識で棚を出したら注射器があったわ。ダメ元で刺してみたら………」

みーくん「………治ったと」

めぐねえ「えぇ」

みーくん(ご都合主義臭がする…………)


 三階からはしごを使って下へ。
 時刻が時刻なのもあって、すごく降り難かった。

慈「久しぶりの外……ね」

 真っ暗な校庭。
 そこにはうごめく人影らしきものがちらほらと。
 昼と比べてやっぱり人数は少ないけれど、まだまだ危険だ。襲い掛かられたらひとたまりもない。

天子「それほど感慨もないですけどね、見えるのがこれだと」

悠里「やることもありますし……早く進みましょう」

慈「そうね。今は……進まないと」

 何度も通った場所。
 夜に通ったことも何度かある。
 一応明かりをつけずとも進むことはできるだろう。
 さて……慎重に進むとしよう。


 コンマが60以上で敵と遭遇
 ↓1

【コンマ 94 遭遇です】

慈「……」

 ゆっくりと、駐車場へと歩いて行く。
 音を立てずにこっそりとできるだけ見つからないように進み、ようやく中間辺りに辿り着いたその時。

悠里「めぐねえ」

 悠里ちゃんが不意に声を出した。
 どうしたのだろう? 彼女が何故私を止めたのか、一瞬理解できなかったけれどすぐにその理由を把握する。
 闇の中、ふらっと前で揺れる人影。
 溶け込んでいて見つからなかった……不覚だ。

天子「敵……ですね」

 しっかりとこちらを目視して近づいてくるそれ。
 私と栗宮さんは武器を構えた。ここは外。陽動したり、派手に音を立てたりすればどうなるかは分からない。
 一体だし……逃げることもできるだろうけど、私達は足が速いわけでもないし……。どうしよう。


 1・真っ向から勝負
 2・行動する、指示を出す(対象:慈、悠里、天子  【『行動する』は自分に対して。内容により判定ステが変わります】)

 ↓2

【『慈 力 35』 『コンマ 78』 結果:不可】



【――と、決まったところで今日は終わりにしますー】

【最新話、めぐねえの笑顔が……かわいい。あと微妙にエロ(以下略】


【ステ間違えてましたね。あんまり影響はないので続行します】


 ――倒す。被害が大きくなる前に。
 敵を目の前にして、武器を手にしてまず頭に浮かんだのはそんな考え。

慈「……っ」

 私は何かに急かされるようにして、駆け出した。
 一体。たった一体だ。今まで何回か倒してきた数。問題はない。
 私を見据えるそれへ、肉薄。距離を詰めて武器を振るう。
 ひるませるための攻撃。杭を思い切り側頭部へと叩き込む。
 奴がよろける。――が、それだけ。
 奴の目は私を捉えたまま、無造作に手を伸ばしてくる。

慈「ぁ……ぐっ!」

 腕を掴まれた。
 信じられない腕力で、骨が軋むような音が聞こえてきそうなほどの握力。爪が食い込み、鋭い痛みが走った。
 私は反射的に再び杭を振るい、奴の首へ振るう。そして握った手のちからが弱まったタイミングを見て抜けだした。
 ――危なかった。あのまま拘束されて噛まれたら……。


【佐倉 慈】
 体力 100 → 70
 耐性 60 → 40
 精神 110 → 100


 1・真っ向から勝負
 2・行動する、指示を出す(対象:慈、悠里、天子  【『行動する』は自分に対して。内容により判定ステが変わります】)

 ↓1

【2 2人に囮になるよう指示した後、背後に回りこんで攻撃
 囮二人に大して困難はないため、慈の背後からの攻撃判定発生】

【『慈 技術 50』 『コンマ 84』 結果:不可】

 やはり真正面から攻撃するのは駄目らしい。
 一回落ち着いて、仲間と協力しなくては。

慈「二人共、ちょっと囮に……」

 腕の傷を押え、私は二人へと振り返る。
 二人は不意を突かれたような顔をしていたけれど、状況が状況なだけに頷いてくれた。

悠里「めぐねえ、無茶はやめてね」

 悠里ちゃんは私に一言かけて私の前に出る。
 栗宮さんも彼女の隣へ。モップを軽く地面に叩きつけて注意をひきつける。
 ――これで上手くいくだろう。
 注意をひく二人の後ろを通り、私は横へ。できるだけこっそりと奴の背後をとった。

慈(これで……!)

 今度はしっかり背後。
 これで、ばっちり決まるだろう。
 私は杭を握りしめ、奴の背後にゆっくり近づく。
 そして攻撃をしかけようと――地面を踏み込んだ。

『ギ……』

 それが、いけなかった。
 地面を蹴る音。砂利と靴が立てる音は思ったよりも大きく、奴が背後へとすぐ振り向く。
 杭を振り下ろそうとしていた私。あまりにも瞬間的なことに対応できずに、そのまま杭を下ろす。
 それは奴の頭へ綺麗に刺さる。けれど、敵はそれで止まらず――私の首へ手を伸ばしてきた。
 そしてもう片方の手、それを私の肩へやり、両手に力を込めた。

慈「あ、ぇ――がぁ、あ」

 口から悲鳴にもならない微かなうめき声がもれる。
 痛みと意識が遠のく浮遊感。苦とも楽ともとれない妙な感覚に、私は抵抗できずにいた。
 視界がぼやけ、まともに敵を見ることもできない。
 思考すらまともに働かなかった。

天子「――護りませんと」

悠里「ですね――っ」

 そこへ、衝撃。
 悠里ちゃんの肘が奴の側頭部を打ち抜いたのを見て――私の視界は星空を映した。

慈「ぁ……っ」

 横向きの視界に映るそれ。
 私と同じ向きに倒れた奴の頭部へ注がれる容赦無いモップの攻撃。
 決して少なくはないダメージを受けた私は、二人の活躍にホッと息を吐いた。


【佐倉 慈】
 体力 70 → 40
 耐性 40 → 20
 精神 100 → 90


 危険は去った。
 私はホッと息を吐いて、立ち上がる。

慈「……ありがとう。助かったわ」

天子「はい。仲間ですからね。助けあうのは当然です。ですが――」

悠里「無理しすぎよ、めぐねえ」

慈「……ええ」

 それは、私も分かっていた。
 でも敵を目の前にすると突っ走ってしまう自分がいることも確かで。

慈「ごめんなさい。……先を、急ぎましょう」

 私は、どうしたらいいのだろうか。
 答えに困り、私は目的地へと足を動かした。

 それから、敵と遭遇することはなく駐車場へとたどり着いた。
 駐車場には、よく目をこらして見れば――何体かのやつらがいた。
 ばれないように、近づかれないように早く車に乗らないと……。

慈「……こっちに」

 自分の車を見つけ、私はすぐに走っていく。
 ポケットから鍵を出し、車の横に着くと鍵を差す。

慈「……っ、ふぅ」

 中々ささらず、焦りながら何度かチャレンジするとようやく鍵が入った。
 何日かぶりというだけなのに、焦りが加わるとこうも勝手が違うものなのか。

慈「さ、入って」

天子「なんとか、何事もなかったですね……」

悠里「襲われてから車に入るまでは、ということですけどね」

 乗り慣れた運転席に。
 周りに奴らはいない。とりあえずは安心できるだろう。
 一息つき、落ち着いたところでキーを差し込み、エンジンをかける。
 何日かぶりだけれど、しっかりエンジンはかかってくれた。
 ガソリンの量も満タンに近い。これなら、二人を迎えに行くだけじゃなくて、他の場所にも……。

慈「……待っててね」

 今、助けに行くから。
 慣れた手つきで、私は車を走らせた。
 街で孤立する、二人を助けるべく。



 視点の移動先(コンマ偶数で自転車運転者に。奇数で後ろに座っていた少女に。8、9で???に)
 ↓1

【コンマ 66 ファンブル……ですが、そんなに影響ないです】
【偶数なので次からは自転車の運転手に視点が移動します】

【もう視点移動の機会はなくなって、イベントで救出しかなくなったので言いますが???は新藤メイヤさんです。強めのキャラが初期加入ということで】


【あ、今日はもう落ちようとおもっていたのですが……】
【最後に一つ。オリキャラの死亡、感染についてですが、最初はそのまま続行と言っていましたが……最近悩んできたので】
【1・死亡、感染後の後日談を描いてやり直し
 2・最初に決めていた通りそのまま続行

 ↓1~4で多い方を採用しようかと思います】

【では1~4までは同点でしたが、↓5で1に多く入ったので、5で。その分後日談には力を入れようかと】
【資源関係で難易度は上がりますが……まぁ、なんとかなるでしょう。多分】

【では今日はここまでで】
【次回は自転車の運転者の視点から開始で】


【視点:自転車の少女】

 
 
 
 私には嫌いなことがある。

 それは食べ物だったり、とある授業の科目だったり、スポーツであったり――とにかく言ったらキリはない。
 けれど、強いて一つ挙げるのならば、私はありがた迷惑というのが一番嫌いだった。
 理由は言わなくても大体分かるでしょ?

 行った人物の行動理由が善意であろうと悪意であろうと、係わった誰もが損しかしないからだ。
 特に自分が善意から行動を起こした時は悲惨だ。その人のことを想ったのに、嫌われてしまう。

 だから私は、他人を助けなくなった。
 他人が明確に助けを求める。その時まで。 


???『うちは須戸部智夏。あんたは?』

???『……』

 なのでイリスと会った時はすっごく困った。
 あれこれとなにか言おうとするのだけど、結局は無言。
 『あ』、だとか『うう』とか、言葉にもならない声を発して――

イリス『私は、安全!』

 ……うん、本当に困ったなぁ。



 彼女と会ったのは私が目覚めた日のことだ。
 目覚めた日――と言っても、多分異変が起きた当日。夕方辺りだろう。
 部屋の窓から大体の状況を予想した私は、荷物をまとめてすぐ家から出た。
 学校に仕事に、日常を送っていたであろう私の家族を探すために。
 怯えながら、不安と戦いながら、なんとか生き残って――細い路地に入った時だった。
 金髪の私バリバリの外国人、といった感じの少女と出会い、意味の分からない言葉を投げつけられたのは。


智夏「……」

 安全。それはよく分かっている。彼女はやつらとは違うのだ。一目で分かる。
 片言気味だったし……日本語分からないのかな。

智夏「……はぁ」

 小さく息を吐いて考える。
 私のモットー。
 助けを求められるまで助けはしない。
 ――それを彼女に適用するのはなんだか酷な気がした。

イリシスシア「……ア、アノ」

智夏「――」

 でも、助けようとは思えなかった。
 私はポケットを漁り、携帯食糧を取り出す。
 それを彼女の手に握らせると、私は道を進んだ。
 私にはやるべきことがある。自分を曲げてまで、他者を助ける理由はない。
 一歩、二歩。早足で歩き、そそくさとその場から去る。

智夏「ひとでなし……」

 女の子を見捨てて、なにもしないで。
 本当は助けたいくせに――

イリシスシア「ひとで、なし?」

智夏「うええっ!?」

 すぐ後ろから聞こえてきた声に、私は飛び跳ねた。

イリシスシア「……?」

 驚く私に対して、きょとんとした顔を向ける少女。
 何故そんな反応をするのかと言わんばかりの様子。けれどそれは私も同じだ。
 なんで私についてくる。助けようともせずに去った私に。

智夏「なに? なにか文句?」

イリシスシア「……」ブンブン

 笑顔で問いかけると、彼女は首を横に振る。
 そして食糧を握っている手の反対側、右手で私の手をぎゅっと握った。

イリシスシア「あ、あ――」

 何を言おうとしているのか。
 私はなんとなく分かったけれど……聞かなかった。
 彼女の頭に手を置いて、撫でる。
 ふわふわとした髪の感触。照れくさそうに少女は笑い、私の隣に立った。

智夏「……」

 互いになにも言わず、歩く。
 誰もいない街。いつ、どこでも命を失ってもおかしくはない場所。
 この時私は、まだ気づいていなかったのだ。

イリシスシア「……イリシスシア」

智夏「え?」

イリシスシア「私の、名前」

 自分のことは何も言わず私の傍にいた少女。
 彼女の笑顔が、どれだけ私の助けになっていたのかを。

【泥酔と勢いの影響ですね。大事なシーンでこっ恥ずかしい。ちょっと訂正です】

>>647  桜ヶ丘 → 巡ヶ丘】



智夏「……夢、か」

 ぱっちりと目を開く。
 目に入ってきたのは、積み木。小さなプラスチックの滑り台、絵本の入った雑誌ホルダー。
 何年も見たことがなかった、幼稚な景色。
 壁にかけられた画用紙には『巡ヶ丘保育所』の文字と、汚い字で書かれた寄せ書きのようなものが。

智夏「……ふぁ」

 あくびをもらし身体を起こす。
 途中、何かに引っかかったような気もするけど、構わない。
 伸びを一つ。身体の骨が何本か音を立て、私は小さく呻いた。無茶な体勢で寝ていたらしい。
 その原因であろうそれに、私は目を向けた。

イリシスシア「……くぅ」

 ぐっすり眠っている金髪の少女。イリス。
 多分、彼女が私に抱きついて寝ていたから、こんなにも寝覚めが悪いのだろう。

 何日目かは分からない。
 バケモノがあふれるこの街で、いつまで生き残れるのかも分からない。
 ――持ってきた食糧、見つけた食糧もいつ尽きるのか。
 不安は尽きない。でも、悩んでいても仕方ない。

智夏「――よっし」

 私は勢い良く起き上がる。
 それからまっすぐ自分のリュックへと向かい、食糧を手に。
 一つをイリスの枕元に置いておき、もう一つは袋を切り、私の口に放り込む。

智夏「ん、おいしい! うーっし、今日もやるぞー!」

 大声を出し、リュックを背負う。
 するとすぐ傍で、物音が聞こえた。

イリス「アッ、出発?」

 目を覚ましたらしい彼女。
 慌てた様子で起き上がると、跳ねていた髪をなでつけて簡単に直す。
 あたふたと、見ていて心配になりそうな焦り様で身支度をし――最後に、枕元の食糧を取る。
 棒状のビスケットのようなそれを一口食べ、しっかり噛んでから笑顔で一言。

イリス「おいしい!」ペカー

 ……すっかりマネされちゃってるなぁ。

 行動を共にして何日か。
 出会ってから私とイリスの間にまともな会話はない。
 あくまでも私は、彼女のことを助けてはいないつもりなのだ。
 でも、彼女は私にずっとついてくる。
 そうしないと生きていけないからかもしれない。不安なのかもしれない。

智夏「……」

 口を開き、閉じる。
 何を誰に言おうとしたのだろうか。自分の頭に浮かぶ疑問。
 その答え――私は、多分……。

智夏「今日はどこに行こうかな」

 首を横に振ると、私は歩き出した。
 その後ろをとことこと、小さな足音が続く。


 駄目だ。駄目だ。
 余計なことをして、誰が得をする。
 誰が生きるのだ。
 苦しいだけだ、悲しいだけだ。

智夏「待っててね、みんな!」

 武器を掲げ、私は元気よく叫ぶ。

 みんな。それは誰なのだろう。

 ――私の頭に、自分の声が響いた。

智夏「うちが助けるから!」

 答える声はない。

イリス「頑張ろうっ」

 ただ隣から、励ます声だけが聞こえた。


【今日はここで落ちます】

【ステだけ貼って一旦落ち】
【持ち物の要素が追加されました。選択肢の仲間への指示安価などの際、使用することができます】
【物によっては投げつけたり、使用できないものもありますけど】



 【須戸部 智夏】
 体力 50/50
 耐性 120/120
 精神 100/100
 力  50
 速さ 50
 賢さ 20
 技術 60

 『スキル』
 隠密行動 隠密行動をとるコンマ判定の際、プラス補正
 病気がち 精神が半分以下になると各ステがマイナス10(体力、耐性、精神をのぞく)

 『持ち物』
 鉄パイプ(力に補正+10)
 食糧、ライト、常備薬、ロープ、家族の写真、スマホ


 【エバンス・イリシスシア】
 体力 60/60
 耐性 70/70
 精神 90/90
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 50

 『スキル』
 料理上手 夜食コマンドの際、追加で資源300を消費することで、判定にプラス20の追加効果
      使用するとめぐねえ、選んだ一人、そしてエバンスにも夜食効果が適用される

 占い コンマ判定の安価の際、その数が奇数だった時、次の選択肢にヒントが表示される

 『持ち物』
 タロットカード、食糧、高級そうなハンカチ

【某メインキャラの姉妹は……登場させますかー。小学生くらいの年齢はいませんし。これで原作で生きてたらえらいこっちゃですが】
【提案もしくは、子供好きのキャラがいればイベント発生で】



 中もそうだったけど、外も勿論暗い。
 荒れ、生き物ひとついない寂れた光景。
 一週間近く……かな。見てきたけど、やっぱり慣れる気はしない。
 保育所の門から出て、様子を窺う。
 外にはやつらが多数。夜は暗くて進みやすいといえば進みやすい。でもこうして数が多いのがちょっとネックだ。
 自転車は一応近くに停めてあるけど、果たして今日はすんなり進めるか……。

智夏「……ん?」

 視線を巡らせつつ考えていると、私の服がくいくいと引っ張られた。
 ――イリスだ。
 珍しい。いつもは何も言わないでついてくるのに。

イリシスシア「……ん」

 なにかを見つけたのだろう。
 私が見ると彼女はある一点を指差した。
 その先へ顔を向け見えるのは、巡ヶ丘が誇る巡ヶ丘学院高校。
 今までまともに見てもいなかったけど、こうして遠くから眺めても立派な学校だ。
 あそこがどうかしたのだろうか。――って、

智夏「光ってる……?」

 チカチカと、何か光っている。
 学校の屋上だろう。そこで微かにだけど、光が生じている。
 まさかあそこに人が? 誰かに合図を?

智夏「生きてる人もいるんだ……」

 希望が、見えた気がした。
 ――よし。私の目的は果たせないけど、とりあえず生存者と合流しないと。
 食糧も心もとないし……。

智夏「……」チラッ

イリス「?」

 とにかく、目指さないと。


 ここから学校へは結構距離がある。
 自転車……なら、それほど時間がかからないかもしれないけど、どうしたものか……。


 1・歩いて移動
 2・自転車で移動
 3・高校側にコミュニケーションを試みる

 ↓1

【3 高校側にコミュニケーションを試みる】

 やってみよう。
 距離は遠いし、私たちに向けた合図とは限らない。
 でも何事もまずは行動しなくては始まらない。

智夏「……さて、と」

 パーカーのポケットから私はライトを出す。そしてスイッチオン。
 可能性は凄まじく低いけど、まぁ無駄ではないだろう。
 灯りをつけたライトを高校に向け、左右にフリフリ。
 ライブに来たファンのようにゆっくりと丁寧に振る。

智夏「さぁーさー」コゴエ

イリシスシア「ばか……っぽい」

 このやろう。

智夏「おっ」

 ライトを振った直後、意外なことにも学校から見える光に動きがあった。
 私がそうしたように、光が左右に揺れる。

智夏「マジかマジか。これはうちにも運がめぐってきたね」

 偶然見つけてくれたのかもしれない。
 これは有り難いね。かといって見つけてもらったからなんだという話なのだが。

智夏「――さて、行こう」

 でもこれで、向こうはこっちを見てくれていることが分かったのだ。
 あっちが見失わないように学校に向かえば、きっといいことがあるはず。
 ――で、肝心の移動手段だが。



 1・歩いて移動
 2・自転車で移動

 ↓1

【2 自転車で移動】

 距離があるならこれだろう。

智夏「自転車乗ってこうかなー」

イリシスシア「!?」

 門のすぐ近く。
 横に倒して置いてある自転車を起こす。
 どこで拾ったんだっけ。覚えてないけど、私の頼れる移動手段である。
 私の隣でイリスが驚いているけど、我慢してもらうしかない。

智夏「よっこらせ」

イリシスシア「……あ」

 自転車を起こし、サドルに座る。
 するとそれまでオドオドしていたイリスが、驚いたように目を開いた。

イリシスシア「すわれる……」

 前は子供用のシートが付けられていたそれ。
 でも今はシートが取り外され、金属のリアキャリアがあるのみ。

イリシスシア「ともか……」

智夏「そろそろ出発するかなぁ」

 ため息を一つ。私が一人つぶやくと、イリスが後ろの席にちょこんと座った。
 手を私の腰にやり、準備完了。
 さぁて、何事もなく高校に着くといいけれど。


 コンマ判定で、50以上は戦闘開始
 ↓1

【あ、ヒント表示忘れてました】
【ここからやります】

【コンマ 65 戦闘開始】


 自転車で街を進む。
 方向はまっすぐ高校に。できるだけ止まらないように素早く。

智夏「風が気持ち良い……」

イリシスシア「……」ガタガタ

 バランスが改善されてもやはり怖いらしい。
 頑張ってシート外したんだけど――げふん。

智夏「にしても……」

 やっぱり、数が多い。
 街を自転車で進んでいると、常に奴らが視界に入ってくる。
 幸い動きが遅いし、近くを通らなければ反応する前に通り過ぎられるから安全だけど――こうも多いと気分が落ち込む。
 奴らと化した人間はどれだけいるのだろうか。
 私の家族は……。

智夏「ま、なんとかなるよね」

 気にしないほうがいい。
 生きているなら、いつか会えるはずなのだ。
 黄昏れた気分を払うように、私は首を振り、前に視線を向ける。

智夏「あ、まず――っ」

 その前方には詰まるようにして止まっている二台の車が。
 とても自転車が通れるスペースはない。方向転換をしなくてはならないのだが――すぐ近くに奴が。
 一人ならともかく、今は後ろに女の子がいる。自転車で進むためには奴をどうにかしないと、方向転換する時間はない。

智夏「くっそう……」


 1・自転車タックル  
 2・鉄パイプで殴る 
 3・クイックターン  

 ヒント「速さ、力、技術。自転車関連は、リスク……高い」

 ↓1

【あ、それと持ち物の補正は既にステへとかかっている状態ですので、あしからず】

【『智夏 技術 60』 『コンマ 88』 結果:不可 ファンブルです】

 逃げる。今の状況なら、その選択も悪く無いはず。
 イリスには悪いけど、一か八か。

智夏「――てぇい!」

 ハンドルを握りしめ、急転換。
 転倒しない程度に調整して――

智夏「ひええ!?」

 駄目だった。
 そりゃずぶの素人ができる芸当じゃないよね……。
 思い切りバランスを崩す。派手に音を立てて、奴の前で転倒。
 まともに何も見えないのに、自分が転がっているのがよく分かった。

智夏「あてて……」

 ガン、と頭の横で音。身体全体に衝撃が走り、意識が一瞬遠ざかる。
 それでも、まだまだ。身体は無事だ。
 地面に手をついて、リュックに入れてあるパイプを……。

イリシスシア「あっ」

 短い悲鳴。誰のだかはすぐ分かった。
 小さいはずのそれに、私はハッと顔を上げる。
 見れば、倒れたイリスに奴が一人、近づいていた。

智夏「くっ……」

 そして、問題がもう一つ。
 私達が来た方向から新手がもう一人やって来た。
 多分、自転車の音につられたのだろう。

 迂闊な行動が最悪の結果となってしまった。
 パイプを握り、私は立ち上がる。
 ここは……。


 1・近くの敵を殴る
 2・パイプを近くの奴へ投げつける
 3・行動する (対象:智夏)

 ↓1

【『智夏 力 50』 『コンマ 64』 結果:可】
【占い次回発動】

 殴る。倒す。それだけだ。

智夏「大人しく――しとけ!」

 決断。パイプを振り上げて、イリスへ近づくそいつへ接近。
 届く間合いに入ると同時に振るう。
 手へ伝わる固い手応え。けれど奴は怯みすらもしなかった。
 焦ったせいで浅く当たったか、それとも力が足りなかったのか。

智夏「っ!」

 もう一度。そう思った瞬間、奴が私へと手を振るう。
 乱暴に何かをつかもうとする動き。なんとか必死に後ろに下がって捕まることは回避。
 が、腕に痛みが走る。ちらりと見れば破れたパーカーの下に傷ができていた。
 最初は真っ直ぐ深く。それからガリガリとジグザグに、逃れた時についたであろう皮膚を削ったような傷。
 痛み以上に、寒気がした。

イリシスシア「……」

 なんとか、イリスは私の後ろに来たけど……状況はまだまだ最悪だ。
 近くの一体、それとゆっくりとこちらに来ているもう一体。
 この二体を倒さないと、自転車で走ることはできない。……どうするべきか。


【須戸部 智夏】
 体力 50 → 30
 耐性 120 → 110
 精神 100 → 95


 1・自転車を車の上に乗せる
 2・近くの一体を攻撃
 3・行動する・指示する(対象:智夏、イリシスシア)

 ヒント「二体だけ、なら……絶対に奴の攻撃が届かない場所が近くに」

 ↓2


【今日はここで落ちま】

【正解判定 『智夏 力 50』 『コンマ 32』 結果:優】
【占い、次回発動】

 ――これしかない。
 私はちらりと、横にある車を見る。
 ボンネットからなら簡単に上へ乗れるだろう。

智夏「車の上に。安全だったら、その向こうに」

イリシスシア「ん、わかった」

 頷くイリス。車へと近づくと彼女は器用にタイヤに足をかけて上がっていく。ゆっくりとだけど。

智夏「っと」

 彼女が車の向こうへ行ったのを確認。
 跳躍し車上へ乗り――フロントガラスを若干滑りつつてっぺんへ。

智夏「さぁ、こい……」

 落ち着いて、奴らが来るのを待つ。
 のろのろと、よろけながらこちらへと向かってくる奴ら。
 殺意はないけれど、まるでこちらを狩ろうとしている動物のような、本能的にゾクッとくる恐ろしさがある。
 鉄パイプを構える私は、いつの間にか自分の息が上がっていることに気がついた。

智夏「――ふぅ」

 笑って、おかないと。こんな状況だからこそ。

智夏「ていっ!」

 奴が一体、近づいてきたところで上から頭部へとパイプを振り下ろす。
 さっきよりも重い、何かを砕いたと確信できるような手応え。
 殴打された一体は、スイッチが切れたみたいにぐったりと地面に倒れた。

智夏「……」

 殺した。
 その感覚を手から飛ばすように、私は軽く振る。
 残りは一体。
 今度はパイプを構えず、背負っているリュックを置いて車へ敵が近づいてくるのを待つ。
 タイミングを見計らい、跳躍。奴の頭上を通りぬけ、地面に着地する。
 一体だけで、この状況。ここ数日間の経験があれば充分対応できる範疇だ。
 奴の振り向く直前の動きを見る。と同時に体勢を低くして肉薄。足音を極力小さくし、振り向く奴へ合わせ背後に回りこむ。
 ちょうどいい間合い。背後。
 倒せる要素はそろった。静かにパイプを構え、無防備な後頭部へ叩き込む。
 そして転倒したそれへ、追撃。頭部を何度か叩き、確実にトドメ。

智夏「……よし」

 近づいてくる敵影はない。
 これで、ひとまず安心か。
 顔についた血を拭い、私は自分の表情に気づく。

智夏「――勝った!」

 私はそれをごまかすように笑顔を浮かべ、元気よく言った。


【今日はここまで】

智夏「……さてと」

 鉄パイプをリュックに。
 辺りを確認してから、転がっている自転車を立てずにそのまま持ち上げる。
 けどちょっと軽めにだ。地面すれすれがぎりぎりで、流石に自転車を抱えるのは重い。

智夏「うーん……」

 車を乗り越えて行こうかと思ったけど、これじゃ駄目だ。
 行き止まりを迂回して、先を進もう――

智夏「――っと?」

イリス「……」ニッコリ

 重く感じていた自転車が、ちょっと軽くなる。
 違和感に横を見てみればそこにはイリスが。笑顔でこっちを見ている。

智夏「……」

 ――お人好し、なのだろう。
 私はため息を吐き、車の先を見た。これならどうにか。

智夏「――よし」

 協力して自転車を持ち車へ。ボンネットへと自転車を乗り上げて、若干乱暴に押し出す。
 自転車が音を立てて向こう側の地面に落っこちた。

イリス「これで、先に」

智夏「……」

 何も答えず、私は車のボンネットに乗った。そして地面に。
 イリスもそれに続いて車の上、地面。

智夏「――あっつ……ぁ」

 着地の衝撃で、腕が傷む。
 ジンジンと思わず声が出てしまうほどの痛み。
 これまで経験したことのない、おおきな切り傷だった。
 小さな傷を洗うだけでも涙ぐんでいたのに、これだけ大きな傷となると……。

イリス「だいじょう、ぶ?」

智夏「……」

 私は無言で彼女の頭に手を置――こうとして、自分の手が血で濡れていることを思い出し、止めておく。

智夏「まだまだ先は長いし、これくらいじゃへこたれないよ!」

 ――さて、と。
 言ったようにまだまだ先は長い。
 自転車で進むとしても……さっきまでの道を二回分ほどだろうか。
 高校まで果たして生きていけるのか。……はっきり言って自信はない。


 1・移動続行
 2・休息 (精神消費、体力回復)

 ↓1

【2 休息】

 休む、べきだろう。
 私の身体に大きな傷があるし――せめて血が止まるくらいまでは休んでおきたい。

智夏「休もうかな。疲れたから」

イリス「……」パアァ

 私が言うと、何故か嬉しそうな顔をするイリス。
 彼女はお得意のカードを一枚引くと、とある一軒の家を指差して歩き出した。

智夏「トランプの占いか……」

イリシスシア「タロット」

 力強く否定される。
 対して差はないだろうけど、こだわりなのだろう。
 ――まぁ、こちらに休む場所の目星はない。案内は彼女に任せて、安全確保は私がするとしよう。
 私は鉄パイプを手に持ち、彼女の後ろをのんびりとついて歩いた。

 彼女の占い。
 それは全ての信頼を向けてもいいほどの正確さを持っている。
 ここ数日でそう思えるだけの成果を彼女は挙げてきた。

智夏「誰もいないね……入っても大丈夫そう」

 イリスが張り切って入っていった民家の一つ。
 一応私が安全確保のために入っていくと、そこはもぬけの殻。
 敵はおろか人が争った形跡や襲われた形跡すらない。
 逆に心配になりそうなくらいだけど……ここは彼女の占いを信用するとしよう。

智夏「疲れた……」

 怪我もそうだけど、敵の中を進んでいくのも中々精神的につらいものがある。
 怪我を抑えつつ、私は適当な部屋へ。おそらく子供部屋だろう。二段ベッドのある部屋に入り、イリスが入ったのも確認するとドア前に棚や荷物を置き封鎖。
 これで、ゆっくりできるだろう。

イリシスシア「……」フトンヒロゲー

 二段ベッドの下の段で、期待したような目で、布団を広げて待つイリスがいなければ。

【ファンブル見落としてましたね】
【精神マイナスに10プラスをするということで、妥協案を】

智夏「上で寝よう……」

イリシスシア「わたし、の?」

智夏「やめい」

 ナチュラルにそういうネタを口にするとは……。
 恐ろしさを感じつつ、私は二段ベッドの上の段に。腕が痛むけれど我慢我慢。

智夏「……」

 深く、ため息。
 だらだらと腕から血が流れているのが分かる。気休めだけど、腕をベッドの毛布で縛っておく。

智夏「奴らみたいになるのかなぁ……」

 まったく、憂鬱だ。
 結局私は何をしようとしても、何もできない。
 そのくせ人を見捨てて、無視をして……。

智夏「――」

 頭の中でもやもやと様々な思考がめぐる。
 私がこうした悩みを抱えるようになったのは、いつからだっただろうか。
 確か、あれは……そうだ。
 ゆっくりと、眠りに落ちていく。
 腕の痛みもあったけど、それ以上に疲れが強かった。
 目を閉じて間もなく、私は意識を手放した。

 
 あれは私がまだ、小学生だった頃だ。
 あの頃の私は、私が思うままに行動していた。
 困っていると思った人には積極的に声をかけていたし、そうすることでその人が喜んでくれるとも思っていた。
 多分それは、あの人の影響なのだと思う。
 きっかけは小学生の頃の行事。高校生のお姉さんお兄さんと一緒に私と数人の生徒はとあるイベントへと参加した。
 巡ヶ丘の高校で作られた野菜や手芸品、その他色々。高校生の人達がその手で作ったものを販売したり、吹奏楽部の人達がライブをしたり――まるでお祭りみたいな光景にわくわくしていたことを今でも覚えている。
 その行事で、私は出会ったのだ。
 見ず知らずの他人のことを心から心配し、誰かのために頑張る、あの人に。
 黒髪が綺麗な、優しそうな人だった。

 どこにでもあるような話だ。
 ただ子供だった私が転んで、あの人に応急処置してもらって、憧れた。

 私もあの人みたいになりたい。
 ただその一心で、私は度々高校が主催するイベントに足を運んだ。

 そんなある日のこと。
 イベントの最中に、事故が起こった。

 どこにでもあるような話だ。
 何もしらない子供がはしゃいで、大人に庇ってもらって、迷惑をかける。

 都合のいいことで、私はその事故の発生後をあまりよく憶えていない。
 憶えているのは私が積まれた荷物に近づいて、それを崩したこと。あの人が私を護るためにそれの下敷きになったこと。
 そして――あの人を助けようと手を伸ばした時、どこからともなくかかった言葉。

 『余計なことをしないで』

 悲鳴のような声で、殺意すら込められていそうなどす黒い声で、言われた言葉。
 その直後に、あの人へと駆け寄る多くの生徒達。
 彼らの誰もが悲しげな顔をし、不安そうで――私を責める鋭い目を向けてきた。

 それは当然のこと。
 人を命の危機に晒したのだから、当たり前だ。
 なのに私は傷ついた。今もこうして苦悩している。
 これをワガママと言わず、なんて言うのだろう。

 それから私はせめて、余計なことはしないようにしようと思ったのだ。
 もう誰かが傷つくのは見たくないから。



智夏「……っ」

 目が覚める。
 ――嫌な夢だった。久しぶりに見たような気がする。
 荒くなった呼吸を我慢はせず、何度か繰り返す。
 腕の傷はちょっとだけ具合がよくなって――いるのだろうか。痛みはそれほどない。
 冷静に考え、私はハッとする。

智夏「生きてる……よかった」

 てっきり奴らみたいになっているのかと思ったけど、命拾いしたみたいだ。
 安堵し横を見る。

イリシスシア「おはよ。もう、はん……あー、一日の半分、過ぎた」

 そこにはお約束な顔があった。
 ハシゴに足をかけて手で二段目に掴まってるのだろう。結構辛い体勢のはずなのだが、彼女はにっこりと笑う。

智夏「そろそろ出発、かー……えぐっ」

 伸び。あくびをしようと口を開いたところで、痛みが走る。
 まぁ完治してないよね、まず。しばらく無茶はよしとこう。

智夏「――さぁ、張り切るよ!」

 まだまだ安心はできない。
 私は気合いを入れるべく大きな声で言い、身体を起こす。
 こんな状況なのに、不思議と元気が出たような気がした。


【須戸部 智夏】
 体力 30 → 50
 精神 95 → 75


 外は朝――なのだろうか。
 外に出ると目が眩むのではなんて思ってしまう光が差してきた。
 お邪魔した家を出て玄関の門から外の様子を窺う。
 やはり夜の時より数は少ないような気がする。
 ……これはチャンスだ。今ならそれなりに進みやすくなるだろう。
 反面、高校の屋上からの光とかは見難くなるのだが。

智夏「このチャンス、ものにしないとね」

 頷く。
 さぁて、今のうちに進めるだけ進めとかないと。


 コンマ判定で、70以上は戦闘開始
 ↓1

【戦闘回避】
【占いは温存で、進行します】
【――で、今日は更新終わりです。落ちま】

【耐性 = 死亡フラグをものともしない主人公力】
【多分、イリシスシア視点だと彼女が主人公っぽく思える――くらいには、オリキャラの話をあれこれ考えてます】
【メインの一つ、キャラ個別イベントはまだ一件も起こってないですし、このSSはこれからです】



智夏「うんうん。やっぱりこうあるべきだよね、自転車って」

 行き止まりに引っかかることもなく、奴らに捕まることもなくすらすらと進んでいく。
 風を切り、自転車を漕ぐ爽快感。
 これで奴らがいない、平和な世界ならば言うことないのだが。

智夏「さてさて、このまま進めればいいけど」

 目覚めから中々いいスタートだ。
 学校にかなり近づいてきた。あと少し。あと少しで、学校まで……。


 コンマ判定で、60以上は戦闘開始
 ↓1

【75で戦闘開始】

 ――やっぱりそうも甘くはいかないらしい。

智夏「……っ」

 道を曲がり、私は自転車を止める。
 すぐ前には段差。歩けば簡単に乗り越えられるけど、自転車で走ったままでは厳しい。
 それに……奴がいる。
 一体だけど、段差を越えるためには奴をどうにかしないと。

智夏「降りて」

 イリシスシアを見ず、指示。
 腰に触れていた手が離れたちょっと後に、私も自転車から降りてゆっくりとそれを地面に倒しておく。
 まだ、見つかっていない。この状況なら、力任せに出なくても……。

 
 
 
 技術60、スキル補正でプラス10 合計70を下回る数値で暗殺成功

 ↓1

【『コンマ 28』 成功です】
【引き続き占い温存】

智夏(さて……)

 リュックから鉄パイプを取り出す。
 それからゆっくりと、前に。足元を確認してまっすぐ近づいていく。
 奴はまだ私とは別方向を見ている。
 気配を殺し、武器が届く範囲まで歩く。
 私の特技がこんなところで役立つとは思ってなかった。

智夏(寝てて……!)

 パイプを振り上げ斜め横に振り下ろす。
 腰のひねりとパイプの重さを加えた会心の一撃。
 無防備な後頭部へと綺麗に叩きこまれたそれは、奴の頭部をへこませ、血を撒き散らす。

智夏「ふっ……決まった」

 完璧。体力的にも精神的にも、いつもこうあってほしいものだ。
 蹴りを入れ動かないことを確認すると、自転車の近くに戻る。

イリシスシア「……」

 相変わらず、戦いの後は心配そうな顔をしている。
 ……いや、悲しそうな顔、だろうか。
 私は目を逸らし、自転車を起こす。いつものように自転車を押して、ハンドルを持ち上げ段差を越えた。

智夏「さぁ、仕上げかな」

 学校はすぐ近く。
 さて、油断しないで頑張ろう。

 
智夏「……」
イリシスシア「……」

 二人で静かに自転車で進む。
 いつもは震えているイリスだけど、今日は震えが大人しめだ。
 ちらっと、不自然にならない程度に顔を向けて横目で見てみる。
 イリスは横、街並みと奴らへと目を向けて、口を固く結んでいた。

智夏(イリスを送り届けたら……)

 また行き止まりに向かってはただの馬鹿だ。
 すぐ顔を前に向け、私は考える。
 イリスを学校の人達のところに送ったら、私は家族を探しに行かないと。
 お母さんにお父さん、お姉ちゃん……みんなを諦めることなんてできない。

智夏「……っと」

 高校が近くなってきた。
 あと少し――なんだけど、前方を見た私は自転車を停車。

智夏「こりゃすごいなぁ……」

 何故だろう。学校に近いから……だろうか。
 制服を身につけた奴らが目に見えて増えてきた。
 街と比較して数が多い。体格は街の時よりも貧相めだけど、こう数が多いと突破も難しくなる。

智夏「ま、頑張るしかないよね」

 こっちには自転車がある。
 間をぬっていけばなんとかなるだろう。
 ハンドルを握り直し、私は再びペダルを漕ぎ始めた。


 奴らの間を通り抜け、学校へと向かう。
 イリスがぎゅっと私の腰に回した手に力を込めてくる。
 きっと怖いのだろう。少しでも掴まれればバランスを崩して、襲われかねない。

智夏「……」

 私も、流石にこの状況は怖い。
 でももう来てしまったのだ。退くという選択肢はないだろう。
 生きるか死ぬか。二通りの結果があることは、今までと変わりない。

智夏「……あ」

 順調に高校へと近づいていく。
 その校舎の様子もしっかり見えてくるようになると、三階に誰かいるのがかろうじてだけど分かった。
 三人くらい、だろうか。彼女達は私達へと手を振り、三階の窓から何かを下ろした。
 どうやら準備はしていたようだ。――助かる。

智夏「腕の見せ所だね……!」

 希望はすぐそこまで。やる気も出るというもの。
 右に左。辛うじて敵を回避し、校門を抜ける。校庭には街とは比較にならない沢山のやつらがいた。
 でも、反対に逃げられる場所も広い。校舎まで近づくのはそれほど難しくなかった。
 垂らされているハシゴのすぐ近くまで到着。ブレーキを踏むと、まずはイリスが降りるのを待つ。
 その間、周りを確認。
 大丈夫。まだ奴らが近づいてくるのには時間がかかる。
 これなら、私が離脱する時間も……。

智夏(とりあえず、登るフリをしておこう)

 イリスが降りてから自転車から降り、私はイリスへと視線を向けた。

智夏「イリス、先に登っ――」

イリス「……!」

 先に登るよう促――そうとした瞬間にイリスが今まで見せたことのない反応を見せた。
 目をキッと鋭くさせて、彼女は私の服の袖を握る。

智夏「イリス? なにしてんの? 早く登らないと――」

イリス「ともかも、いっしょに行く」

 出会ってから初めてとも言える、イリスの強い主張。
 まるで私の考えを読んだような……。

智夏(って、考えてる場合じゃない)

 周囲には奴らがいる。
 立ち止まっている時間はないのだ。

智夏(でも、どうする……?)

 考える。
 イリスを置いて、ここを去る? いや、でもそれだと追いかけてくる可能性も否定できない。
 私も一緒に? でもそれは、家族を見捨てることと同義だ。

智夏(選ばないと、選ばないとなにも……)

 視線を戻すと、イリスの真っ直ぐな目がそこに。
 息が詰まるのを感じた。まともに思考が働かない。
 頭に浮かぶのは、あの事故。私を庇ったあの人が血溜まりに倒れ、その人の腕は――

智夏「うちは……っ」

 『余計なことをしないで』

 走馬灯のように浮かぶ光景。響く声。
 
 私は……どうしたらいいのだろう。


【今日はここまでで落ちます】

【遅いですがちょこっと更新】
【安価のないところまでなので、安価の心配不要】


智夏「……っ」

 怖い。
 私を見る目が、決断しなくてはならない状況が。
 気づくと私は、彼女の手を払っていた。

智夏「もう……もう、ここでお別れ」

 戸惑った様子のイリスに一方的に告げ、私は自転車を起こす。

智夏「じゃあね、イリス」

 大丈夫だと笑顔を浮かべ、逃げるように私は自転車に乗った。
 イリスの声が後ろからしたけれど、気にしない。
 気にしないように前に進む。
 敵の間を通り、門のすぐ近くまで。
 あと少し。あと少しで、私は――私は――

 どうなる?

???「おいっ! 危ないぞ!」

 ハッとする。
 突然聞こえてきた声。イリスでも私でもない、誰かのもの。
 その誰かの姿は見えないから、誰に向けて言ったのかは分からない。
 けど、聞こえてきたタイミングで大体予想がついてしまう。
 私に向けてだったら、私が自転車に乗って走りだした時点で言われていただろう。
 でも、そうじゃない。
 だから、多分……。

イリシスシア「ともか!」

 あいつしか、いない。
 奴らのうめき声の中に響く悲鳴のような声。

智夏「馬鹿……」

 自転車を止め、私は後ろを振り向いた。
 私が通りすぎた何人もの奴ら。それの向かう先に、イリスがいた。


 戦う力も、手段もないくせして彼女はハシゴの位置からかなり進んでいた。
 近くまで来ている奴らに怯え、でも後ろに下がらず私のことを見て。

イリス「ともか!」

智夏「なんで……」

 見捨てたのに。今まで無視当然のこともしてきたのに。
 なんで、イリスはそんなに私のために……。

智夏「……」

 目の前で、命の危機に晒されている人がいる。
 それなのに私は動くことができない。さっきと同じだ。
 身体が竦んで、怖くて、目を逸らしたくなる。
 自分が差し出した手が、誰かを傷つけたら。手を取り、自分の進む先が間違っていたら。
 私は……ただ、怖いのだ。
 行先が見えないのが。結末が分からないのが。
 だから、この時も私は彼女が助けを求めるのを待っていた。

イリス「――っ」

 けれど、彼女は何も言わない。
 まだ前に進もうとして、立ち止まる。

 思えば、そうだった。
 彼女はどんな危機に陥っても私に助けを求めはしない。
 口を閉じ、怯えて動けずにいても、前を見ていた。
 私が無視をしても、笑顔で明るく、見守ってくれていた。


 ……なんで?

 混乱する私の前、イリスが口を開く。

イリシスシア「ともか、私がたすける……から」

 ――なんだそれは。

 助けているのは私で、イリスではない。
 今だって危険な場所に立っているのはイリスで、決して助ける立場などではない。
 なのに、イリスは……何も答えもしない私のことを助けようとしている。

 それが、果たして迷惑なことなのか。
 答えは知っている。

智夏「ほんっとに馬鹿!」

 気づくと私は自転車をこいでいた。
 奴らの方、イリスの方へと。ハンドルを操作し、片手でパイプを手に取る。
 数体の間を抜け、イリスの間近で手をのばしている一体へパイプを叩き込む。と同時に体勢を崩して転倒。
 地面を転がり、止まると素早く立ち上がる。腕にまた痛みが走るが、無視。多分傷が開いただけだ。
 駆け寄ってきたイリスを手で軽く押し私の後ろへ。
 前方には奴ら。数は正確に分からないけど、とても鉄パイプで戦える人数ではない。
 加えて、はしごを登って逃げる時間もないだろう。

智夏「くそ……っ」

 がむしゃらに突っ込んだ結果がこれ。
 あのまま自転車で校外に出れば、私だけなら、確実に助かっただろう。
 だけどこれで、二人ともやられる確率が高まったわけだ。
 ――でも、後悔はない。
 最後まで抵抗してみせるつもりだ。

イリシスシア「ともか……」

 不安げな声。
 私は深呼吸。目を閉じ――パッと開いた。

智夏「大丈夫! 絶対諦めないから」

 明るい声に笑顔。
 私が振り向いて言うと、イリスは頷いた。


 大丈夫。
 戦って、生き残って、それで……。

智夏「いっ……!」

 パイプを構えようと手を上げる。
 が、激痛に顔をしかめる。反射的に怪我のある腕へ手をやれば、生温かい感触が。

智夏(大丈夫、平気、戦える)

 自分に暗示をかけるように何度も頭の中で唱える。
 けれどうまく腕が動かない。

智夏「くそっ」

智夏(落ち着け。護るんだ、イリスを……)

 すぐ近くで奴のうめき声。
 悪態をつきつつ私は周囲を見回し――気づく。
 数も分からない奴らの群れ。その中を突き進む車が校門からまっすぐ、こっちへと向かっていた。

???「運転、頼んだわよ!」

???「いや、でも私すごく運転苦手ですよ?」

???「ハンドルを横にいっぱい回せば大丈夫だから。はい、今!」

 奴らを撥ねる車から、女性の声が聞こえてくる。
 絶望的な状況の中、突如やってきた乱入者。猛然と進む車は砂利を巻き上げながらきつ目の左折。
 押し寄せる奴らを車体の横で撥ね、また校庭を走っていく。

???「いたた……速度出しすぎね」

 その車内から、急転換と共に勢いよく飛び出してきた人物が一人。
 ごろごろと地面を勢い良く転がり、私達のすぐ近くで止まる。

???「まさか学校にいるなんて……帰ってきて良かったわ」

 苦笑交じりに言い、立ち上がる。
 紺色のワンピース、チョーカー……シスターのような服装の彼女は服の汚れを簡単に払い、ポケットから杭のような物を取り出した。
 そして、私達の前に出るとこちらへ振り向く。

???「――迎えに来たわ、二人とも。場所的にちょっと、情けないけど」

 人が好さそうな、柔らかい笑顔。
 あの人を思い出させる笑みを浮かべた彼女に、私は半ば呆然としながら頷いた。


【落ちます。今日また更新するかは不明】

【待機の選択肢がないのは、>>1がそういう話を――】
【というのは半分ウソで、二人は光に気づいた時点でこちらに誰かが来るなんて思ってもみません】
【活発な須戸部さんに待つ選択肢はないため……こうなりました。イリシスシア視点だと待機の選択肢があったかも】


【視点:佐倉慈】

 なんとか、間に合った。
 迎えに行くのはかなわなかったけれど、状況は決して悪くない。
 お互いに街をさまよう危険性がなくなったのだ。

慈「……さて」

 これで、この場をやり過ごすだけとなった。
 それもおそらく難しくはない。
 ――今、全員が揃っているこの場面。それを全てフルに活用できるのならば、きっと。


 1・二人を先にハシゴに登らせる
 2・胡桃を呼ぶ
 3・行動する、指示を出す(対象:慈、由紀、胡桃、悠里、天子、智夏、イリス)

 ヒント「怪我に、運転席じゃない車内の席……行動できない人もいる。でも、活用できる物もそこらにいっぱい……」

 ↓2

【3 めぐねえが持っていると思われる明かりとなる物を何も無い方向かつゾンビの視界に入る方向へ投げる  コンマ:クリティカルで無条件成功】

【ということで、クリティカルなので都合よく持ってきた発煙筒をぶん投げます】
【クリティカルじゃなかったら、スマホぶん投げでございます】

【本当に短いですが、今日はここまでで】

【ゆきちゃん覚醒イベントはあります】
【条件がいくつもありますが】


慈「そうだ、これなら」

 頭にふっとおりてくる閃き。
 私はポケットに手を入れると、とある物を取り出した。

慈「目立つはず……」

 棒状のそれは、発煙筒。
 私の車から持ってきた品だ。
 発煙筒の説明をすぐに読み、使用。鮮やかな炎が勢い良く発煙筒の先端から放たれる。
 私はそれを投げ、奴らの多い場所へと落とした。
 勢いよく燃える発煙筒に奴らの注意が集まる。私たちに近寄る奴らはもれなく全員が発煙筒へと近づいていった。

慈「よし! さぁ、二人とも。それと……あ、来たわね」

 これで離脱できる。
 私は二人に声をかけ――ちょっと遅れてこちらへとやって来た栗宮さんと悠里ちゃんを出迎える。

栗宮「車、奴らがいないところで降りて鍵閉めてきました」

慈「ありがとう。ええと、まず栗宮さんと悠里ちゃん、ハシゴを上がって」

 二人の女の子には悪いけれど、怪我をしていては登るのにどれだけ時間がかかるか分からない。
 指示を出すと二人は頷いて、ハシゴを登っていく。ペースは遅め。でも間に合いはするだろう。

慈「――で、大丈夫そう? 怪我してるみたいだけど」

 あまりゆうゆうと話をしている時間はないだろう。
 二人がハシゴを登りはじめるのを確認し、私は自転車の二人へ声をかけた。

???「――はい。大丈夫! うちはするする登れるから」

 すぅ、と息を吸う少女。
 彼女は笑顔を浮かべると、元気よく言った。

???「ともか」

???「大丈夫だって。――心配ならうちが先に行くから、ほら」

 怪我をしているというのに、明るい子だ。
 外国人らしき少女の手を引いて、明るい少女はハシゴへ。
 言っていたように彼女はそのままハシゴをするするといいペースで登っていく。
 ――でも、微妙に痛そうにしているような。うめき声も聞こえるし。

慈(無理……する子なのかしら)

 もう一人の子はあの女の子のことを心配していたし、そうなのかもしれない。
 なにはともあれ、これで無事合流することができた。
 私はふぅと息を吐いて、ハシゴに手をかけた。




 ハシゴから三階へ。
 問題もなく、無事全員が到着する。

胡桃「めぐねえ、おかえり」

由紀「おかえり」

 今回、学校で待っていた二人が出迎えてくれる。
 ハシゴを登った先、教室では栗宮さんと悠里ちゃんが、新入りの二人と話していた。

慈「ただいま。一日出歩いて、心配かけちゃったかしら?」

由紀「うん。すごく心配したんだよ?」

胡桃「まったくだ。無茶するくせは治らないな」

慈「あはは……。ごめんなさい」

 手厳しい意見である。正論だけど。

悠里「めぐねえ。二人をシャワーに連れて行くわね」

慈「ええ。あと、栗宮さん」

天子「分かってますよ。綺麗にしてから解剖――あ、冗談です。怪我の治療ですよね」

 外国人らしき少女が震えたのを見て、笑顔でおっとりと否定。
 新入りの女の子からしたら笑えない冗談である。

慈「――ということで、歓迎するわ、二人とも」

 色々あったけど、これで一段落。
 私はにっこりと笑い、二人へ言葉をかけた。



 初対面なので初期好感度判定。01~99まででクリティカルファンブル要素なし。00は100

 ↓1 智夏
 ↓2 イリシスシア

【智夏 33】
【イリシスシア 34】

???「うん。じゃあお言葉に甘えようかな」

???「ありが、とう」

 ――うん。ちょっと警戒している感じだけど、嫌われてはない……わよね?
 ぺこっと会釈して、栗宮さん悠里ちゃんと歩いて行く二人を見送る。

胡桃「中学生……なのかな。この高校の生徒ではなさそうだな」

由紀「ということは、後輩……?」

慈「かもしれないわね。とにかく、色々話を聞いておかないと」

 街の感染の様子も気になる。
 私達みたいに難を逃れた人がいるといいけど。

慈「とりあえず、私はちょっと休もうかしら……」

胡桃「だな。それがいい」

 時刻はお昼前くらい。
 二人がシャワーと治療を終えるまで、時間はあるだろう。
 さて、どうしようかしら。



 1・ゆっくり休む(各種ステ回復)
 2・女の子と過ごす(対象:胡桃、悠里 一人選択)

 ↓1

【1 ゆっくり休む】

慈(休んでおかないと……よね)

 これ以上心配をかけては迷惑どころの話ではない。
 しっかり休んでおかないと。

慈「それじゃあ、生徒会室に行ってくるから」

由紀「うん」

 二人に見送られ、生徒会室へ。
 布団を敷いてその上で仰向けに、目をとじる。

慈「……ふぅ」

 昨日の夜は車の中ですごく狭い思いをしたからか、布団が特別心地いい。
 私はまったく時間をかけずに、眠りへと落ちていった。


 これで、街へ向かうことも可能だとはっきり分かった。
 まだまだ助けられる人はいるだろう。
 この理不尽な事件から一人でも多く誰かを助けられるなら……私は。


【体力、耐性、精神が30回復しました】

七日目 夜

【佐倉 慈】
 体力 80/100
 耐性 50/100
 精神 110/110
 力  39
 速さ 20
 賢さ 40
 技術 50

 『スキル』
 良回復 一日のはじまりに体力を10回復

 『持ち物』
 鉄杭(力に補正+5)
 スマホ、車のキー


 【丈槍 由紀】
 体力 80/80
 耐性 50/50
 精神 30/30
 力  10
 速さ 20
 賢さ 10
 技術 20

 『スキル』
 庇う 味方が死亡するダメージを受けそうな時、自分がそのダメージを受ける

 『持ち物』
 ホイッスル



 【恵飛須沢 胡桃】
 体力 120/120
 耐性 90/100
 精神 80/80
 力  60
 速さ 60
 賢さ 20
 技術 20

 『スキル』
 シャベル愛好家 シャベルが関わるあらゆる判定にプラス補正

 『持ち物』
 シャベル(力に補正+10)

 【若狭 悠里】
 体力 90/90
 耐性 80/80
 精神 70/70
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 60

 『スキル』
 園芸の知識 一日最後の判定のコンマが3、5の時資源に+300

 『持ち物』
 なし 


 【栗宮 天子】
 体力 70/70
 耐性 80/80
 精神 130/130
 力  30
 速さ 10
 賢さ 60
 技術 70

 『スキル』
 医術の心得 一日の終り、体力が一番すくないキャラを体力の1/3回復

 『持ち物』
 モップ(力に補正+5)
 救急箱 

【須戸部 智夏】
 体力 50/50
 耐性 110/120
 精神 75/100
 力  50
 速さ 50
 賢さ 20
 技術 60

 『スキル』
 隠密行動 隠密行動をとるコンマ判定の際、プラス補正
 病気がち 精神が半分以下になると各ステがマイナス10(体力、耐性、精神をのぞく)

 『持ち物』
 鉄パイプ(力に補正+10)
 食糧、ライト、常備薬、ロープ、家族の写真、スマホ


 【エバンス・イリシスシア】
 体力 60/60
 耐性 70/70
 精神 90/90
 力  20
 速さ 20
 賢さ 60
 技術 50

 『スキル』
 料理上手 夜食コマンドの際、追加で資源300を消費することで、判定にプラス20の追加効果
      使用するとめぐねえ、選んだ一人、そしてエバンスにも夜食効果が適用される。

 占い コンマ判定の安価の際、その数が奇数だった時、次の選択肢にヒントが表示される。

 『持ち物』
 タロットカード、食糧




【共通ステータス】
『資源』 2100
『消費量』 700 (プラス200) 
『生産』 600



【好感度一覧】
由紀 43  「いい先生、だよね」
胡桃 51  「笑顔がかわいいな」
悠里 55  「色々見てて不安……」
天子 35  「いい同僚です」
智夏 33  「んー、まだよく分かんない」
イリス 34 「悪い人、じゃない」

【ということで、今日はここまで】
【次回は二人の自己紹介、夜コマンドから開始です】

【遅れました。もうスレが残り少ないので、新しく建てて】

 2スレ目です
 【がっこうぐらし!】慈「めぐねえハーレム?」【安価】 二つ目 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443972153/)

【1000まで適当にヒントコーナーでも。個別のイベントとか全然起きなかったですし、こっちの不手際も多いですから】


慈「というわけで、ヒントコーナー担当……!」

慈「まず、第一のヒントだけれど――」


1・メインストーリーについて
2・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラ)
3・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラ)

 ↓1



【同じようなスレが建つのを期待してましたが、全然建たない】

【1 メインストーリーについて】


慈「メインストーリーはスレタイのように私を主にして進んでいくわ」

慈「とは言っても、それらしいイベントはまだまだ先だけれど」

【このスレのメインストーリーは仲間が増えると発生。
  オリキャラや原作キャラの個別イベントがメインで、最後まで一人のキャラを進めるとED。
  後日談を経て、本編へリターン。仲間のエンディング全てを見てから、メインストーリーの最終章が開放】
【まだまだ先であります】

慈「変更になる可能性もあるけど……大体こんな感じね」

慈「さてと、それじゃあ二つ目のヒントにいきます」


1・判定の小ネタ
2・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラ)
3・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラ)

 ↓1

【1 判定の小ネタ】

慈「小ネタというよりテクニック……かしら」

慈「スキルに判定にプラス補正するキャラがいるわよね? そのスキルの効果について、ちょっと補足よ」


【判定がプラス補正されるスキル。
 現在は胡桃と智夏が所持しているスキルの活用方は様々です】

【例えば、胡桃。武器をとして効果が発動する条件のシャベルを持っているため、戦闘で攻撃する際には自動発動します】
【でも、それ以外に発動するタイミングも】
【指示を出す選択肢を選択し、行動内容を指定――その時にシャベルを使う旨を書き込むとスキルの発動条件が満たされます】
【戦闘だけではなく、何かを壊す内容だったり、回避だったり、防御だったり……無理がないと思わない限りはスキルが適用】
【智夏の場合も然りで、敵にバレていない場合はこっそりしたり、ばれないように行動することでスキルが適用されます】

【そのため、プラス補正スキルは万能――特に胡桃はあらゆる場面でプラス補正をかけられるオールマイティーなキャラです】


1・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラ)
2・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラ)

 ↓1

【1 個別イベント】

 ↓1 対象のキャラの名前を

【栗宮天子】

慈「栗宮さんね。栗宮さんの個別イベントはそれほど難しくはないわ」

【栗宮天子
  マッド的な女性ですが、イベント発生条件は至って普通】
【好感度を上げて授業。これでイベントをこなしていくとクリア――だけれど、仲間の加入数や進行具合からロックがかかる場面も】
【難易度は初期加入メンバーなため簡単な方です】

慈「普通な感じよね。内容が普通とは言わないけれど」

 
1・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラから一人)
2・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラから一人)

 ↓1

【1 個別イベント】

 ↓1 ヒントを聞く対象キャラ

【須戸部智夏】

慈「須戸部さんね。彼女はちょっと特殊なイベント発生条件があったりするわ」

【智夏のイベント発生条件は序盤は一般的な流れと変わりありません】
【けれど中盤終盤から、他キャラが関係してくるため、進まない場面も】
【焦らず他キャラの話を進めることも重要】
【イベント発生時、低体力がネックになるため難易度は高め】

慈「内容は王道的主人公な話らしいわよ」

慈「……主人公?」


1・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラから一人選択)
2・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラから一人選択)

 ↓1

【1 個別イベント】

 ↓1 ヒントをきくキャラ

【イリス】

慈「イリスちゃんね。彼女のイベントは――」

【発生条件は普通】
【ただし智夏と同じく中盤終盤でキーとなるキャラの話を進めていないとイベントが発生しません】
【難易度は通常。ただ舞台が街になるため、その点では高め】

慈「内容は……悲しい感じとのリークが」

慈「彼女の助けるとの言葉の真意が分かるらしいわ」


1・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラから一人選択)
2・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラから一人選択)

 ↓1

【眠くなってきたので落ちま】
【安価はここから↓1で】

【次は気を付けないとですね。すみません】


【2 キャラの育成方針】

 ↓1 ヒントを聞く対象キャラ

【ゆき】

慈「由紀ちゃんね。由紀ちゃんはイベントの経過でステータスが変化するわ」

慈「勿論、他のキャラのようにスキルを習得したり……」

慈「他のキャラと違うのは、起伏が激しいということかしら」


【由紀は個別イベント進行によって数値が大きく変化します】
【どの変化でも力の値は低いので、それを補うように育てるか、伸びてきた数値を育てるか】
【選択によって得手不得手が大きく左右します】

【スキルの庇うを活用するために体力を伸ばしたり……も面白いかも】

慈「由紀ちゃんの育成は結構ギャンブル要素が大きいかも」

慈「一番特徴的なスキルは――あるステを用いる判定を、数値に関係なく成功か否か決めるスキルね」

慈「由紀ちゃんらしいスキルというか、なんというか」


1・個別イベント(対象:現在加入している味方キャラから一人選択)
2・キャラの育成方針(対象:現在加入している味方キャラから一人選択)

 ↓1

【そろそろスレ終わりですし、ヒントはやめにして本番いきましょうか】
【ヒントは本編でイリスさんができるようにしておきます】
【建てたら様子見てこのスレは埋めときます】

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