【艦これ】清掃依頼報告書 (41)

多分閲覧注意

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場所:○○泊地、第4司令部




依頼主:上記鎮守府指揮官(○○大将)




依頼内容:入渠ドックの清掃

入渠ドックには見慣れた破片が散らばっていた


何の破片だったかは依頼主が答えなかったため不明


まぁなんだろうと片付けてしまうだけだが


指定された時刻は草木も眠る丑三ツ時


タイムリミットは午前五時まで


もたもたはしていられない


まずは飛び散った欠片を集めた

大抵はただの赤い塊だが脂身や眼球、歯等の白いものも混じる


一体どんなことをしたらこんなに派手にバラバラになるのか不思議で仕方がない


まぁ艦娘という存在自体が不思議ではあるのだが


しかしここまでになれば兵器だとか人間だとかほとんど気にする必要もない


ただただゴミ拾いをしているだけなのだから


途中、ついうっかり脳漿のようなものをぐちゃりと踏みつけてしまった


床にこびりつくと面倒なため激しく後悔した

それと、湯船の水が抜けていなかった


この状態のままだと腐るのが早くなる為抜いておいてくれと先に言ったはずなのだが……


つまらせるほど湯船自体には汚れが無かったので尚更そう思う


さて、破片を拾い終えたら血を拭きとらねばならない


血そのものは簡単に落ちるのだが脂はそうもいかない


非常によく滑るのだ


おまけに中々取れない


滑って転んで気絶しましたでは洒落にならない


細心の注意を払った

清掃を終えたのが大体4時過ぎ


危ないところであった


帰り際に茶菓子を振る舞ってもらったのだが、あの依頼主と常にべったりな青い女性の視線が恐ろしかった


自分と依頼主が男同士で話しているだけでも歯をギリギリと鳴らし、今にも射ち殺そうという殺意が肌で感じられた


今回の原因は痴話喧嘩らしいが、そんなことを聞かなくてもあの様子を見ればわかる


艦娘には多いのだ、こういう恋慕による争いが


戦場という異常な場所でのストレスからか、なまじっか力を持っているため独占欲が強いのか


全く女というのは恐ろしい

いや、真に恐ろしいのは自分を使って真実を隠そうとする依頼主かもしれない


形さえ残らなければ轟沈したと報告すればいいのだから


部下への説明もどうとでもなるだろう


艦娘同士ならともかく、艦娘が人間を、ましてやあんなに歪んでいるとはいえ愛し合っている者たちが秘密を漏らすとも考えにくい


兎角、居心地は最悪だったためそそくさと退散した

場所:××港




依頼主:××鎮守府指揮官(××新米少佐)




依頼内容:水死体の除去

鎮守府の港に水死体が上がった為除去して欲しいと依頼が入った


とりわけ珍しくもない


どうせ進入禁止海域にでも入って魚でも取ろうと思ったのだろう


沖ですら危ないこのご時世には遠洋で取れる魚は需要がとても大きい


しかしそれで取れたのが自分の命だというなら本末転倒である

曇天の午後、現場に着くとそこにはぷかぷかと海沿いに引っ掛かる死体が


すっかり水分を含んで体積が増えた姿は見るに堪えない


おまけに四肢がもげ、所謂『達磨』という状態であった


最初からなかったのかを尋ねるとそうだと言われた


よく現場までに行く間に流されなかったなと思う反面、探す手間が省けるため何気に助かる

一先ず引き上げることにしたのだが、流石に堤防のこの高さを一人で運ぶのは難しい


誰か手伝ってくれる者を探したが、出来たばかりの部隊らしく人数も少ない


おまけに艦娘は嫌がるのだ


普段これより醜い化物と戦ってるくせに人間の死体の一つも処理できないのは少し驚きだ


まぁ出来たのならばそもそも自分を呼びなどしないか


結局、依頼主の指揮官と共に小舟をだし無理やり引き上げることに

特殊服を着込み、さてやろうかと思うが、四肢がない分掴む場所に困った


頭を持とうにもぶよぶよの身体ではいつ千切れるかわかったものではない


体表にはガスと腐敗液の水泡がプツプツゴボゴボと浮かび、深緑色に染まった皮はズルズルに剥け落ちている


正直見るに堪えない上見なくても異常な臭さはどうしようもない


夏場の死体は非常に腐りやすく、副次的な被害も多くなる


上手くロープを自分に繋げたりして海中へ落ちないように気を付け、抱えて持ち上げることで陸地へ運んだ


服に染み込む腐敗液や空虚な目の孔を間近に見てしまったため、暫く夢にも出そうだ

手伝わせてしまった依頼主には代金の減額を提案したが、それどころではないらくらいに憔悴していた


あんなものを見せられては無理もないが


話にもならなかったため代行の秘書艦と折半し、気にせず全額支払うということで話が付いた


あの指揮官はこれから先さらに辛いものを見るかもしれないのに、あれくらいでノックダウンしてしまっては少し心配になる


まぁこちらもあの死体をどうここから持ち運ぼうか悩んだのでお互い様か

場所:△△鎮守府




依頼主:戦艦・比叡及び駆逐艦・磯風




依頼内容:キッチンの掃除

こんな職に付いてはいるが、毎日遺体と格闘しているわけではなく普通の清掃員としての仕事もある


……のだが、現場に到着した時、思わずこれは人生で最も過酷な仕事になると本能が言った


床には爆発痕やドロドロに溶けた床や地面が


壁には脳が理解を拒否する色合いのナニカが


周辺には調理器具のような変形した金属やプラスチック片があった


まるで核実験でもしたかのようだ


防護服を貫く意味不明な臭いも合わさり、五感全てが目の前の状況を否定していた

今すぐ逃げ出したいが、仕事を放るわけにもいくまい


まずは調理器具


地面と同化して引っ張っても取れないような物以外は回収


次に瓦礫を撤去した


何とかなるかもしれない


……と思ったが、壁の汚れを拭こうと触れた瞬間謎の煙が発生した


この煙、だんだんと部屋を溶かしているではないか

たまらず逃げ出した


死んでは報酬も信用もクソもない


依頼を断り、前払い金等金銭関連を全て返金・送金して退散する


あの汚れは自分以外の誰かが何とかしてくれるだろう


後日その辺りが更地になったらしいが関連性は分からない

場所:□□研究所




依頼主:研究所主任




内容:死体運搬

自分の会社から配布された地図で案内されたのは、山奥にある謎の研究施設だった


薄暗く気味が悪かった為早速依頼内容を確認すると、職員に小部屋へ連れてかれた


部屋の中には白い布が被せてある大きな箱があった


どうやらそれを持って行ってほしいそうだ


死体の状況によって運び方や処理が変わるため、布を取って状態を見せてくれと説明した


構わないということで剥がすと、おぞましいものが入っていた

口からは砲塔を突きだし、長すぎる肋骨が胸から露出しており、ほぼ体が裂けている


顔面は半分潰れ、眼球は取り除かれ空洞だ


足は足首から先が存在せず、腕も切断されていた


とりわけ印象に残ったのは、白すぎる肌


それと尻尾


その死体は臀部から1メートル以上ある尻尾を生やしていたのだ


来る途中にあった、液体に入った人体パーツを思い出す


一体ここで何を解剖、いや、作っていたのか

報酬なのだが、提示された金額は信じられない大金だった


その分運び先等は必ず守る様に、この仕事は会社以外誰にも漏らさないようにときつく言われた


普段利用している取引先との契約が切れたらしく、臨時で自分を使ったとか


深くは考えないようにした


最も恐ろしかったのは、無事依頼を達成した瞬間に依頼主から電話があったことだ


まさかずっと監視されていたのかもしれない

また、自分の手際に感心したらしく、これからも引き受けてくれないかと言われたが丁重に断った


あんな死体までも改修して弄ぶ連中などとは一緒にいたくない


こちらまで気が狂ってしまうだろう


あの死体を思い出す


一瞬壊れたような笑みを浮かべた気がするのだが、気のせいだと信じたい





NO DATE



毎日が仕事というわけではない


たまの休みくらいは普通にある


だが忙しい方がいいのかもいしれない


目を閉じれば無機質な遺体の表情や、ぐちゃりとした破片が浮かんできてしまうからだ


これでも最初の頃毎日帰っては吐いていた頃よりはマシだ


今でも肉料理を見ると少しためらってしまったり、そもそも料理ができなくなったりと弊害もあるが


この職を辞めたいかと言われれば別にそうでも無い


そこそこの収入と、どうせ誰かがやるのなら自分がやるという無駄な正義感があるからだ

深海棲艦との戦いで海で死ぬのは大いに結構なのだが、陸で死んでしまっては自分たちが行くしかなくなるため何かと面倒だ


おまけに艦娘の陸での死骸は増える一方だ


まぁそのおかげでこちらも仕事には困らないのだが


……考えすぎても仕方がない


こう言う日は酒に溺れるのがいい


次の仕事まで、束の間の夢の中に落ちるとしよう

終わり
ホラーを書こうとしたはずだった

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