幼馴染「燃え上がるこの思い!」
男「とどけ、キミへ!」
幼馴染・男「あい・らぶ・ゆううううううう!!!!!」
男「おい」
幼馴染「はい」
男「何コレ?」
幼馴染「私たちの魂の叫び」
男「そうじゃなくてだな」
幼馴染「たぅまぁしぃぃぃのさぅぁけびぃぃ~~~」
男「問題は発音じゃねーから」
幼馴染「この前ね、映画見たんですよ」
男「うん」
幼馴染「で、若いカップルが愛を叫ぶの。痺れましたねー。痺れましたよ!」
男「出来ればその良く分からん行動も痺れたらよかったのに」
幼馴染「だから私も叫びたくなったのです!」クワッ
男「それって、オレじゃなきゃダメだったの?」
幼馴染「なに言ってんですかー。決まってるじゃありませんか奥さん」
男「オレはお前の奥さんじゃねーよ」
幼馴染「私たち幼馴染ですよ?付き合ってるんですよ?あなたが私の相手
しなくて誰がしてくれるんですか!」
男「確かにお前がどうしてもって言うから付き合ってやったけどさ」
男「ってちょっと待て。オレはお前の幼馴染だけどお前と付き合ってるなんて
初耳なんだが」
幼馴染「えぇっ!?」
男「や、そんな驚かれても…」
幼馴染「さ、さっき付き合ってるって言ったじゃないですか!」
男「お前の奇行には付き合ったが、お前と付き合ってる覚えはねーぞ!」
幼馴染「なななっ!?」
男「だいたい、いつから付き合ってんだよ、オレ達」
幼馴染「5年前から」
男「そんなにっ!?」
幼馴染「そんな……覚えてないんですか!?」
男「ごめん、ちっとも」
幼馴染「ひどい。私、初めてだったのに…」
紳士「ほっほ。ひどい男じゃのう、キミは」
男「お前の純潔奪った覚えはねーぞ。つーか誰だよ、さっきの爺さん」
幼馴染「近所に住んでると見せかけて、毎日電車で片道2時間かけて散歩
しに来てる人の事?」
男「どうでもいい情報をありがとう。そんなことよりオレの質問に答えやがれ」
紳士「そんな…」
幼馴染「ふふふ。我の純潔は何も一つではない。お主が散らした純潔は我ら
四天王の中でも最悪」
男「なんだか話が明後日の方向に…」
男「しかも最悪じゃなくて最弱なんじゃねーか、ふつう」
幼馴染「うるさい!かみまみた!」
男「ああ、そう…」
幼馴染「そんなに冷たい目で私を見ないで…興奮するじゃない」
男「おまわりさん、こいつです」
警察「ぬぅあにぃぃ!御用だ御用だ!」
幼馴染「きゃあああああ!!!たすけてーーー!!!」
男「どうなってるんだ、この世界は…」
幼馴染「キミの世界」
男「お帰り」
幼馴染「外で言うただいまってなんか新鮮!」
男「本当に早く帰って来てくれないと困るんだけど。つーか、オレの世界?」
幼馴染「そう、キミの世界。ここはキミが望めばなんだって自由に出来ちゃう
不思議空間」
男「そんなバカな…」
幼馴染「試しに私に裸になれって命令してみてよ」
男「……それ、お前が裸になりたいだけじゃねーか」
幼馴染「ちっ。勘の良いガキは嫌いだよ」
男「オレがガキならお前もガキだろ、すっとこどっこい」
幼馴染「ああ、もう!せっかくあんたが好きに出来る世界なんだよ!もっと
こう、なんかあるでしょ」
男「いや、そりゃ嬉しいけど、出来たらオレは普通の世界で十分幸せ…」
幼馴染「なんでっ!」
男「だって、夢は自分で叶えてなんぼだからな。それにお前がオカシイこんな
世界じゃあんまり有難みが」
幼馴染「それって、いつもどーりの地味な私でいろってこと?」
男「地味って……。オレは、いつも通りのお前が一番だと思ってるよ」
ずきゅん!
男「なんだ、今の音」
幼馴染「私の心臓が打ちぬかれた音です」
男「大丈夫かよ」
幼馴染「あんまり長くは持ちそうにありません…」
幼馴染「救急車ぁぁ!救急車ぁぁ!!!早く私を甲子園に連れてって!」
男「……もう、どこから突っ込んだらいいのやら」
幼馴染「ううん。ごめんね。ありがと。いろいろ付き合わせちゃって」
男「やっと、いつものお前に戻ったか」
幼馴染「えへへ。ごめんごめん。明日手術だと思うと、無性に不安で、心配で。
夢の世界って分かったら、いっぱいいろいろ言いたくなって。って、夢の世界の
あなたに言っても現実のあなたには伝わらないけど」
男「大丈夫。現実のオレも信じてるよ。きっと良くなるから」
幼馴染「うん。もし手術が成功して、退院出来たらまた一緒に映画見に行こうね!」
男「もちろん」
彼の笑顔が私に向けられたと同時に目が覚めた。
起きると、家族と彼が心配そうな顔で私を見ている。
「……大丈夫。心配しないで」
「心配なんかしてねえよ。お前はきっと良くなる。信じてるから」
「うん」
私がそう言うと同時に看護師たちが病室に入ってきた。
大丈夫、きっと上手くいく。
夢の世界でも、あなたに勇気を貰ったのだから。
地味でも病弱でも、私は私らしくいよう。
幼馴染として、彼女として。
あなたの笑顔と共にいたい。
終わり
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