北大西洋 某所 デ・ダナン 発令所
マデューカス「そろそろです、艦長」
テッサ「ええ。良い頃合いですね」
マオ『こちらウルズ2。目標に到達』
クルツ『こちらウルズ6。所定の位置についたぜ』
宗介『こちらウルズ7。いつでも行ける。合図をくれ、ウルズ2』
マオ『了解。っていうわけだけど?』
テッサ「よろしい。作戦を開始します」
マオ『作戦開始だ。派手にいくよ!』
クルツ『ヤッホー!! まずはズドンといくぜぇ!!』
宗介『ウルズ7、突入する』
カリーニン「情報通りなら、あの施設には……」
テッサ「ええ。捕えられてるウィスパードがいるはず。必ず、助け出さなくてはいけません」
カリーニン「勿論です。それに彼らなら失敗はないでしょう」
テッサ「そこは全くもって心配していませんよ、カリーニンさん」
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マデューカス「んんっ」
テッサ「失礼。――そこは何も心配していません、少佐。貴方が目をかけた人たちですもの」
カリーニン「恐縮です」
マデューカス「とはいえ、今回も同じかもしれませんな」
テッサ「無論、流された情報を鵜呑みにするわけにはいきません。かといって、看過するわけにもいきません」
カリーニン「時として虎穴に入らなければ得られないものもあります」
テッサ「その通り。事実、彼らを保護するためには多少の危険を冒さなければいけません」
マデューカス「それは承知しております」
テッサ「マデューカスさんの懸念も理解しているつもりです。嘘の情報に振り回されていては、本物にはたどり着けないかもしれない」
マデューカス「はい」
テッサ「でも、そこは情報を命がけで集めてくれる私たちの仲間を信じましょう。一つ一つ潰していけば、いつか必ず辿りつけるはずです」
カリーニン「大佐殿の言う通りです」
テッサ「甘い考えですか?」
マデューカス「いえ。私はそうした考えに惹かれ、ここにいるのです」
テッサ「ありがとうございます」
マオ『こちらウルズ2。対象の制圧は完了しました』
テッサ「最終目標は?」
マオ『確認できません』
クルツ『こちらウルズ6。逃げだす奴らもいない。またガセだったんじゃねえか?』
マオ『これで5回目めか。テッサぁ、いくらなんでもこうも続くとミスリルの能力が疑われるんじゃない?』
テッサ「うーん……そうよね……」
マデューカス「聞こえているぞ」
マオ『し、失礼しました!』
テッサ「相良軍曹は?」
マオ『あいつのことだから、そろそろ……』
宗介『こちらウルズ7。目標地点に到達、制圧も完了しました』
マオ『ほら、きた』
テッサ「最終目標はいましたか?」
宗介『いえ。確認できません』
テッサ「はぁ……。そうですか。わかりました。作戦を終了します。速やかに撤収を開始してください」
マデューカス「そもそも、この日本人が存在しないという可能性はありませんか」
テッサ「ここまでくるとそれも視野に入れざるを得なくなりますね」
カリーニン「しかし、全世界に散らばる者たちがこうして同一の人物をこちらに渡してくるということは、完全な虚構の人物とは言えないでしょう」
テッサ「ええ。皆が同じ人間のことを調べているのだから、存在はするはずです」
マデューカス「やはり、どこぞの組織が我々をかく乱しているわけですか」
テッサ「そうした組織は一つだけにしてほしいのだけれど」
カリーニン「黒幕は一つだけでしょう」
宗介『大佐殿。施設の人間はどうしますか?』
テッサ「一応、話を聞きます。そのまま拘束しておいてください」
宗介『了解』
マオ『ソースケ、あんたはそろそろ帰らないとまずいんじゃないの?』
宗介『む……』
テッサ「なにかあるのですか?」
宗介『はっ。その……千鳥かなめとの約束が……ありまして……」
テッサ「そうですか。では、相良軍曹はそのまま日本へ向かってもらってもいいですよ。アーバレストならここからでも行けるでしょうし」
宗介『いえ。この機体の稼働時間を鑑みれば、ここから移動を始めればおそらくメキシコあたりで活動不能になります』
テッサ「……」
カリーニン「大佐殿、何卒、ご慈愛を」
テッサ「わかりました。急いで撤収してください。施設にいた人たちをダナンへ」
クルツ『地図にない島で研究してたような連中だぜ? いいのか?』
テッサ「構いません。彼らに何かを知る機会なんて一秒たりとも与えませんから」
マオ『おー、こわ。それじゃあ、護送を開始しますか。途中で自決しないようにしっかり見張ってな、野郎ども』
クルツ『ウルズ6、了解だ』
宗介『ウルズ7、了解』
テッサ「少佐」
カリーニン「はっ。行ってまいります」
テッサ「申し訳ありません。嫌な役を押し付けて」
カリーニン「いえ。尋問は慣れています。的確な配役かと」
テッサ「お願いします」
マデューカス「少しでもこの日本人のことが分かればいいのですが……」
格納庫
マオ「結局、何もでなかったわね」
クルツ「聞いたかい、姐さん。あいつらがやってた研究の内容」
マオ「全く新しい技術で空を飛ぶ研究でしょ」
クルツ「ああ。生身でどれだけ音速に近づけて、しかもそれで自由に空を飛びたかったんだと。[たぬき]かっつーの」
マオ「バカな研究、とはいえないわね。こっちだってデ・ダナンにのってるんだし」
クルツ「それはそうだけどよ。いくらなんでも生身で音速なんて無理だろ。一瞬で赤身の肉片になっちまうぜ」
マオ「少佐が聞いた話では理論自体は完成していたみたいね」
クルツ「マジか?」
マオ「ただ、それに必要なものがこれ」ペラッ
クルツ「これは?」
マオ「研究員の一人が出してきた資料の一部よ」
クルツ「なになに……。魔道エンジンを始動させるには、魔法力が必要になる……?」
マオ「そう。魔法の乗り物を動かすには魔法が必要なわけよ」
宗介「ナンセンスな研究だな」
>>8
ミス
格納庫
マオ「結局、何もでなかったわね」
クルツ「聞いたかい、姐さん。あいつらがやってた研究の内容」
マオ「全く新しい技術で空を飛ぶ研究でしょ」
クルツ「ああ。生身でどれだけ音速に近づけて、しかもそれで自由に空を飛びたかったんだと。ドラえもんかっつーの」
マオ「バカな研究、とはいえないわね。こっちだってデ・ダナンにのってるんだし」
クルツ「それはそうだけどよ。いくらなんでも生身で音速なんて無理だろ。一瞬で赤身の肉片になっちまうぜ」
マオ「少佐が聞いた話では理論自体は完成していたみたいね」
クルツ「マジか?」
マオ「ただ、それに必要なものがこれ」ペラッ
クルツ「これは?」
マオ「研究員の一人が出してきた資料の一部よ」
クルツ「なになに……。魔道エンジンを始動させるには、魔法力が必要になる……?」
マオ「そう。魔法の乗り物を動かすには魔法が必要なわけよ」
宗介「ナンセンスな研究だな」
クルツ「お前、まだ居たのか。早く行かないと、またかなめちゃんに怒られるぜ?」
宗介「それは分かっているが、すぐに日本には戻れない。大佐殿もこれが最大船速だと言っている」
マオ「そうなの? テッサも健気ねぇ」
宗介「ああ。大佐殿にはいつも迷惑をかけてしまっている」
クルツ「こいつは……」
宗介「それにしても、この乗り物が実現する可能性はあったのか」
マオ「あったからこうして大金叩いてやってたんでしょ」
宗介「よくわからん連中だ」
クルツ「まぁ、世の中にはアーバレストみたいな魔法じみたASもあるぐらいだからなぁ。魔法も現実にあるかもしれねえ」
宗介「あれも確かにまだ分からないことが多い。だが、あれは兵器として十分に運用できている。しかし、魔法など非科学的すぎる」
マオ「はいはい。あんたは吹っ切れたのよね、色々と」
宗介「ああ。問題ない」
クルツ「愛の力ってかぁ? 言ってくれるぜ」
宗介「いや。アーバレストの力だ」
マオ「バカ」
テッサの部屋
テッサ「どう思います?」
カリーニン「この魔法力という単語がなければ間違いなくウィスパードの知識です。疑いようもなく」
テッサ「ですね。この理論自体に矛盾点や疑問点はありません。魔法がなければ」
カリーニン「では……」
テッサ「この一件からは手を引きましょう。これ以上、この日本人を探しても疲弊するだけだわ」
カリーニン「了解です。各員にはそのように伝えておきましょう」
テッサ「お願いしますね」
カリーニン「はい」
テッサ「……」
カリーニン「大佐殿。何か気になることがあるのなら、言ってください」
テッサ「いえ。ここまでの小型航空機があと一歩で完成するというのに、どうして魔法などという非現実な力に頼っているのかがどうしてもわからない」
カリーニン「同感です。魔法力というものに全てを依存した研究であるのも首を傾げるところです」
テッサ「まるで魔法が実在するような書き方……」
テッサ(私だけでは分からないのかもしれない。彼女にも意見を聞いたほうがいいかしら……?)
欧州 501基地
バルクホルン「予算の削減だと? 誰がそんなことを言い出したんだ」
ミーナ「ブリタニア軍空軍のマロニー大将が根回ししているみたいね。まぁ、501だけに活躍されて困るのはマロニー大将だけではないでしょうけど」
バルクホルン「馬鹿げている。ネウロイの脅威に対して己の面子が大事だというのか」
ミーナ「ふふ……」
バルクホルン「何がおかしいんだ、ミーナ」
ミーナ「ごめんなさい。坂本少佐も同じことを言っていたから、ついね」
バルクホルン「誰でも同様の発言をするに決まっている。人間同士で足を引っ張り合ってネウロイに立ち向かえるものか」
ミーナ「そうね」
エーリカ「削減されるとユニットとかおいそれと壊せなくなるなぁ」
バルクホルン「ハルトマン。お前はこの事態を許容する気か?」
エーリカ「決まったものはしょーがないじゃん。なるようになるって」
バルクホルン「おまえなぁ……」
エーリカ「それにお金がないからって理由で戦えなくなるほど、弱いウィッチなんてここにはいないだろ?」
バルクホルン「……無論だ」
ミーナ「ハルトマンを見習わないとね。確かに軍上層部のやり方には憤りを感じるけれど、決まったことに愚痴を言っても仕方ないわ」
バルクホルン「そうだな……。一介の軍人に口を挟む余地はないか」
エーリカ「はい。それじゃ、この話はおしまい。そろそろ食堂にいこーっと」
ミーナ「昼食の時間はとっくに終わっているでしょう?」
エーリカ「宮藤がおやつを用意してくれてるんだってー」
バルクホルン「まて、ハルトマン!! お前はそれが目的でこの話し合いを切り上げようとしたのか!!」
エーリカ「おやつだーおかしだー」テテテッ
バルクホルン「またんかぁ!!! ハルトマン!!!」
ミーナ「まぁまぁ」
バルクホルン「しかし!!」
ミーナ「本心も混じっていると思うわよ」
バルクホルン「それは……分かっているが……」
ミーナ「彼女は誰よりも私たちを信頼してくれている。だからこその言い方だと思うわ」
バルクホルン「……ミーナはどうする?」
ミーナ「勿論、食堂に行きましょう。宮藤さんが用意したなら扶桑のものでしょうし、食べないのは損よ」
廊下
バルクホルン「とはいったものの、やはりこのタイミングでの予算削減は501にとっても痛手ではないのか」
ミーナ「ええ」
バルクホルン「先日からネウロイの襲撃が頻発し、出撃回数も増えている。ミーナが隊長として椅子に座り、指示を出すだけでは間に合わないぐらいにな」
ミーナ「私は気にしないわ。撃墜数にもそれほど執着があるわけでもないもの」
バルクホルン「そういうことじゃない」
ミーナ「分かっているわ。501が戦えば戦うほど、予算は削減され、部隊としての機能が低下していく。由々しきことね」
バルクホルン「それが分かっているなら、抗議はすべきだ。ハルトマンのように仲間を信じることも大事だが、それだけでは守れないものもある」
ミーナ「そうなのよね」
ドォン……ドォン……
バルクホルン「この音は……」
ミーナ「リーネさんね。最近、よく射撃訓練をしているみたいよ」
バルクホルン「熱心なのはいいことだ。ハルトマンにもリーネぐらいの気概があればな……」
ミーナ「でも、おかしいわね。宮藤さんがおやつを用意したのなら、リーネさんも食堂へ向かっていてもおかしくないけれど……」
バルクホルン「そのことを知らないのかもしれない。私が伝えてこよう」
訓練場
リーネ「ふっ……!」バァン!!
ルッキーニ「はっずれぇ」
リーネ「はぁ……」
ルッキーニ「そろそろ芳佳のおやつが出来上がった頃じゃない?」
リーネ「私はもう少しだけ訓練していくから、ルッキーニちゃんは先に行ってて」
ルッキーニ「いいの?」
リーネ「うん。付き合ってくれてありがとう」
ルッキーニ「にゃは。わかったー。じゃ、またあとでねー」
リーネ「うんっ」
リーネ「結局、命中率は8割ぐらい……。もっとがんばらなきゃ……私は……」
バルクホルン「リーネ」
リーネ「バルクホルンさん。お疲れ様です」
バルクホルン「宮藤が菓子を振る舞ってくれるらしいが、お前は行かないのか」
リーネ「わ、私はあとで行きます。先に召し上がっていてください」
バルクホルン「長時間訓練していたようだな。薬莢の数がそれを示している」
リーネ「ごめんなさい。すぐに片付けます」
バルクホルン「いや、訓練が終わってからで構わない。それにしても随分と真剣にしていたな」
リーネ「そ、そんなことないですよ」
バルクホルン「あの訓練嫌いのルッキーニが傍にいたほどだ。奴は余程のことがない限り、あんなことはしない」
リーネ「私が無理を言っただけです」
バルクホルン「そうか。……自主的な訓練なのだからどうこう言うつもりはないが、無理はするな。ネウロイの出現件数が上がっているのは理解しているだろう」
リーネ「実戦で支障を出すことはないように気を付けています」
バルクホルン「なら、いいんだ。訓練、頑張ってくれ」
リーネ「ありがとうございます、バルクホルンさん」
バルクホルン「ではな」
リーネ「はい!」
リーネ「……」
リーネ(ネウロイの出現数が上がっているからこそ、もっと私はがんばらないと……)
リーネ(このままだと……)
食堂
芳佳「あれ? リーネちゃんは?」
ルッキーニ「まだとっくんちゅー。はむっ。おいしー」
芳佳「えぇ? まだしてるんだ……」
美緒「かれこれ2時間か。射撃訓練に対して時間を割きすぎだな」
シャーリー「宮藤。リーネに差し入れでもしてきたらどうだ?」
エイラ「疲れたときは甘いものっていうしな」
芳佳「そうですね。ちょっと行ってきます」
美緒「ふむ……」
シャーリー「戦闘が続いてるし、リーネは休ませるべきかもしれませんね、少佐」
美緒「リーネはそこまで愚かではない。自身の体力、魔力の限界は知っているはずだ」
シャーリー「周りが見えなくなってたりしたら、危ないんじゃないですか」
エイラ「リーネって結構、溜め込むタイプっぽいもんなぁ」
シャーリー「ルッキーニぐらい能天気なら、こっちも楽なんだけどね」
ルッキーニ「ふいー。おかわりもらおーっと」
>>20
美緒「リーネはそこまで愚かではない。自身の体力、魔力の限界は知っているはずだ」
↓
美緒「リーネはそこまで愚かではない。自身の体力、魔法力の限界は知っているはずだ」
訓練場
リーネ「はぁ……はぁ……。もう一度だけ……」
芳佳「リーネちゃーん!!」
リーネ「芳佳ちゃん……」
芳佳「まだ訓練してたの?」
リーネ「うん。満足できる結果が出なくて」
芳佳「そろそろ休憩にしない?」
リーネ「そうだね。休憩にする」
芳佳「はい。これ。扶桑のお菓子で、おはぎっていうの。食べてみて」
リーネ「ありがとう。いただきます」
芳佳「どう? リーネちゃんの口に合えばいいんだけど」
リーネ「おいしい。もう一つ、もらってもいい?」
芳佳「もちろん! どんどん食べて!」
リーネ「わーいっ」
芳佳「ふふっ。リーネちゃんが笑顔だと私もうれしいな」
リーネ「ごちそうさま。美味しかったよ、芳佳ちゃん」
芳佳「お粗末さまでした。リーネちゃん、これから時間があるなら……」
リーネ「ごめんね。もう少しだけ訓練続けたいの」
芳佳「でも……」
リーネ「私なら大丈夫だよ。芳佳ちゃんの作ってくれたお菓子で元気もでたから」
芳佳「リーネちゃん……」
リーネ「お願い」
芳佳「……無理だけはしないでね」
リーネ「うんっ。ありがとう、芳佳ちゃん」
芳佳「あとで一緒にお風呂はいろうね」
リーネ「はーい」
リーネ「……」
リーネ「やらなきゃ」
リーネ「もっと、がんばらないと……」
リーネ「ふっ!」バァン!!
芳佳「うーん……リーネちゃん……大丈夫かな……」
ペリーヌ「宮藤さん。ミーナ中佐とバルクホルン大尉が探していましたわよ」
芳佳「え? そうなの?」
ペリーヌ「貴方の作ったあの真っ黒なお菓子が気になっているようでしたわ」
芳佳「そうなんですか。ペリーヌさんは食べましたか?」
ペリーヌ「どうしてわたくしがあのような気品の欠片もないものを口にしなければなりませんの」
芳佳「ひどーい!! あれは扶桑のお菓子なんですよ!!」
ペリーヌ「ともかく、わたくしは遠慮しますわ」
芳佳「むぅ……。坂本さんだって美味しいって言ってくれたのに……」
ペリーヌ「いい加減、少佐のことを馴れ馴れしく呼ぶのはやめなさい」
芳佳「坂本さんがそう呼べっていったんです」
ペリーヌ「ですから――」
芳佳「それより、ペリーヌさんもリーネちゃんのこと気にかけてくれませんか?」
ペリーヌ「はぁ? どうしてわたくしがそんなことをしなければなりませんの」
芳佳「最近のリーネちゃん、様子がおかしいんですよ?」
ペリーヌ「みたいですわね」
芳佳「みたいって……」
ペリーヌ「以前の戦闘でネウロイを撃墜できたことで舞い上がっているだけでしょう。放っておけばそのうち、ぬか喜びだったと気が付くはずですわ」
芳佳「なっ……」
ペリーヌ「新人のウィッチにはよくあることですわ。一度の成功で己の能力を過信してしまうのはね」
芳佳「どうしてそんなこというの!?」
ペリーヌ「事実です。貴方も注意なさい」
芳佳「酷い!! 私のことはともかく頑張っているリーネちゃんにそんなこと言い方……!!」
ペリーヌ「努力のやりかたを誤れば、それはただの徒労ですわ」
芳佳「ペリーヌさん!!」
美緒「何を揉めている」
ペリーヌ「坂本少佐……!」
芳佳「坂本さん……」
美緒「どうかしたのか?」
ペリーヌ「い、いえ、なんでもありませんわ。おほほほ。わたくしは任務があるので失礼します」
>>25
芳佳「酷い!! 私のことはともかく頑張っているリーネちゃんにそんなこと言い方……!!」
↓
芳佳「酷い!! 私のことはともかく頑張っているリーネちゃんにそんな言い方……!!」
美緒「宮藤。本当になんでもないのか」
芳佳「……」
美緒「リーネのことか」
芳佳「はい……」
美緒「ペリーヌが厳しいことをいうのはそれだけ心配しているということだ。気にするな」
芳佳「だからって……あんなこと言わなくても……」
美緒「だが、リーネが根を詰めているのは少々気がかりだな」
芳佳「やっぱり、止めたほうがいいですか?」
美緒「うむ。あまり酷いようなら我々で抑制してやらねばならないか」
芳佳「はい!」
美緒「今は様子を見ておけ。無理に止めて意固地になられたほうが厄介だからな」
芳佳「分かりました」
美緒「では、食堂のほうへ戻ろう。ハルトマンが待ちくたびれているぞ」
芳佳「ハルトマンさんもですか!? 急いで戻りましょう!!」テテテッ
美緒(リーネ……私と同じようになるなよ……)
サーニャの部屋
サーニャ「すぅ……すぅ……」
エイラ「サーニャ?」ガチャ
サーニャ「うぅん……」
エイラ「まだ寝てたか。じゃ、これ、おいとくかんな」
サーニャ「ん……」ピクッ
エイラ「起きたら、食べてくれ。宮藤のお手製だから、きっとサーニャも満足するはずだ」
サーニャ「……」ピコンッ
エイラ「ん? サーニャ……?」
サーニャ「……!」バッ
エイラ「どうした?」
サーニャ「何か、いる。この方角に……」
エイラ「ネウロイか?」
サーニャ「そうかも」
エイラ「わかった。中佐に伝えてくる」
食堂
芳佳「あんな言い方しなくてもいいのに……ペリーヌさん……」
シャーリー「ペリーヌは、なぁ?」
エーリカ「気にしない、気にしない。はむっ」モグモグ
芳佳「でも……」
エイラ「中佐! まだいるか!」
ミーナ「どうかしたの?」
エイラ「サーニャがネウロイらしきものを感知したんだ」
ミーナ「なんですって」
ルッキーニ「でも、まだ警報なってないよ?」
バルクホルン「こちらの網を掻い潜ってきたというのか」
エーリカ「ま、どちらにせよサーニャんが感知したんなら、何かが入ってきたんだろ。さぁて、いくかー」
美緒「そうだな。宮藤、リーネをハンガーまで連れてこい」
芳佳「了解!」
美緒「出撃だ!! 総員、急げ!!!」
陣代高校
かなめ「はぁ……」
恭子「今日も休みかな?」
かなめ「え? 何が?」
恭子「なにがって、相良くんだよ。今のため息も、そういうことでしょ?」
かなめ「な、なんであいつが一週間ほど休みだからってため息をもらさないといけないのよ!! そんなことあるわけないじゃない!!」
恭子「そーなの? でも、カナちゃん、相良くんが欠席し始めたときから、元気ないよね」
かなめ「そんなわけないっていってるじゃない!! うは、うはははは!!」
恭子「はいはい。もう言わないよ」
かなめ「あはははは……はぁ……」
かなめ(別にソースケの心配をしているわけじゃないけど、あいつのことを四六時中考えちゃうのよね……)
かなめ「って!! そういうこともなぁぁぁい!!!」
恭子「お! カナちゃん、ちょっと元気になったぁ?」
かなめ「あたしはずっと元気よ!!! あいつがいなくてもね!!」
宗介「そうか。それはよかった」
かなめ「ソースケ……!」
恭子「あ、相良くん。ひさしぶりー」
宗介「常盤も元気そうだな」
恭子「うんっ」
かなめ「あんた、今まで何してたのよ」
宗介「ここでは言えん。その理由は、千鳥なら分かるはずだ」
かなめ「そりゃ……まぁ……」
恭子「え? なになに? 二人だけの秘密なの?」
宗介「ああ。常盤にだけでなく、外部には洩らせない情報を含んでいる。たとえユダの揺りかごや鉛のスプリンクラーを使われようが、俺が口を割ることはない」
恭子「とにかく絶対に話せないことなんだ」
宗介「そういうことだ。すまないが諦めてくれ」
恭子「わかった!」
かなめ「まぁ、あんたが無事なら、それでいいけど」
宗介「ところで千鳥。今週末に何か予定はあるか?」
かなめ「え? 別に、な、ないけど?」
宗介「そうか。ならば、付き合ってほしい」
かなめ「な、何によ」
宗介「そうだな。ここでは言えない」
恭子「おぉ! こ、ここでは言えないことなんだ!!」
かなめ「な!? ど、どういうことよ!! 何をするつもりなのよ!!」
宗介「とにかく言えん。千鳥、付き合えるのかどうか、答えてくれ」
かなめ「内容によるわよ。危ないことなら、絶対に付き合わない」
宗介「いや。危険は一切ない。なぜなら、俺の部屋に来るだけで済むからだ」
かなめ「あ、あんたの……」
恭子「なるほど。それは言えないよね」
かなめ「ちょっと! なんか変な勘違いしてない!?」
宗介「どうなんだ、千鳥」
かなめ「ど、どうなんだって……あの……その……急にいわれても……困るんだけど……」
宗介「そうだな。では、今日一日考えてくれ。明日、最終確認をする」
かなめ「う、うん……明日までには心の準備を……する……」
夜 千鳥宅
かなめ「うーん……うーん……」
かなめ「週末にソースケの部屋……これは……あれなのかな……」
かなめ「いやいや。今までのことを考えれば、そんなことは絶対にない。きっと部屋に言ってみたら、またテッサとかがいるはずよ」
かなめ「そうよ。そうに決まってる。あいつが私を呼びつけるってことは絶対にミスリルが絡んでるんだから。うん、絶対にそう」
かなめ「あー、危ない、危ない。おかしな勘違いをして、まーた赤っ恥をかくところだった!!」
かなめ「まったく!! あいつもイチイチ勿体ぶるからいけないのよ!! 確かにおいそれと話せることじゃないんだろうけど!! それでも言い方ってものがあるじゃない!!」
かなめ「はぁーあ、緊張して損した。早く、ねよっと」
かなめ「……」
かなめ「でも、万が一って……ことも……」
かなめ「ううん!! ないない!! ぜぇーったいにない!!」
かなめ「あの朴念仁に限ってそんなことあるわけ……」
かなめ「でも、兵士って戦争から帰ってきたら……色々溜まってるとかいうし……」
かなめ「だぁー!!! なんであたしがこんなことを考えなきゃいけないの!!!」
かなめ「相手はソースケよ!! ソースケ!!! あの戦争バカのソースケ!!! ないない!! 地球が逆回転したってありえない!!」
週末 セーフハウス
宗介「よく来てくれた。礼を言う」
かなめ「別に……暇だったし……」
宗介「中に入ってくれ」
かなめ「……テッサは? いるんでしょ?」
宗介「いないぞ」
かなめ「なら、クルツくんとか」
宗介「いや、俺だけだ」
かなめ「なら……」
宗介「マオもカリーニン少佐もいない」
かなめ「……二人きりなの?」
宗介「そうだ」
かなめ「週末に二人きり?」
宗介「そういうことになる」
かなめ「マ、マジ……?」
宗介「まずはこれを渡しておきたい」
かなめ「これは? 開けてもいいの?」
宗介「それは千鳥のために用意したものだ。そのような確認は必要ない」
かなめ「あたしのため……。って、前にも似たようなことがあった気がする」パカッ
宗介「肯定だ。以前と同様の使い方で十分に身を守れるはずだ」
かなめ「まーた、イヤリング型の閃光弾か……」
宗介「デザインは変更させた。星型のものでは似合わないと言っていたからな」
かなめ「これってもしかして、猫?」
宗介「ああ。月にしようかと思ったが、天体の形ではまた君が拒絶する可能性があったので却下しておいた」
かなめ「デザインの問題じゃないんだけど……。でも、ソースケなりに考えてはくれてるんだ」
宗介「実用性だけを重視しては不快にさせるだけだと学んでいる。同じ轍は踏まん」
かなめ「……」
宗介「どうした。やはり、月のほうがよかったか」
かなめ「ううん。ありがとう。これ、大事にするね」
宗介「そうか。それは嬉しい限りだ」
かなめ「今日はこれを渡したかっただけ?」
宗介「いや。用件がこれだけならば学校で済ませている。実はいうと、本題は別にある」
かなめ「う、うん」
宗介「千鳥」
かなめ「は、はい!」
宗介「これを読んでほしい」ペラッ
かなめ「なによ……ソースケの口から言えばいいじゃない……」
宗介「そうしたいのは山々だが、俺の口からはとても……」
かなめ「ソースケって意外とシャイなところあるよね」
宗介「そうか?」
かなめ「じゃ、じゃあ、読みます」
宗介「時間をかけてくれても構わない。俺は何時間でも待つ」
かなめ「も、もう……すぐに読むわよ……」
宗介「いや。真剣にじっくり読んでほしい」
かなめ「わ、わかった! 読む! 読めばいいんでしょ!!」
宗介「頼む」
かなめ「え、えーと……」ドキドキ
かなめ「魔導エンジン……瑞星……栄12型に換装……出力向上を図った上……一一型として制式に採用……」
宗介「どうだ?」
かなめ「……」
宗介「千鳥? 何か気になる点でもあったか?」
かなめ「魔導エンジンの問題。高高度性能不足。しかしマーリン系エンジンにより解決。高速および長い航続距離。高高度性能。マーリンエンジンの量産」
宗介「千鳥、どうした」
かなめ「P-51B型・C型が完成。後に機体形状の変更、D型。D型は、魔力配分効率化並びにマッピング変更を容易にする改良。使用目的に合わせたセットアップが可能に――」
宗介「千鳥!!」
かなめ「え……あ……な、なに……?」
宗介「大丈夫か」
かなめ「うん……」
かなめ(やっぱり、これって……ウィスパードの……)
宗介「少し待て。今、飲み物を用意する」
かなめ「で、これはなんなの?」
宗介「こちらに来る前、大佐殿が俺に渡してきた機密書類だ。といっても、俺も何が書かれているのかは知っている」
かなめ「どういうこと?」
宗介「未だ詳細は判明していないが、とある研究機関が極秘で開発していたとされる『飛行脚』なるものの設計図らしい」
かなめ「ストライカーユニットのことね」
宗介「ストライカーユニット? 飛行脚のことを言っているのか」
かなめ「原型を作りだしたのは合衆国のライト姉妹。小型強力な内燃機関を応用したものが発明されて航空用ユニットとしての第一号が完成したのよ」
宗介「何を言っているんだ?」
かなめ「なにって、あたしは知っているから」
宗介「千鳥……」
かなめ「そんなことより、これが本題だったわけ?」
宗介「肯定だ。大佐殿からこれを千鳥に見せてほしいと言われたのだ。そして意見を聞いてきてほしいとも言われた」
かなめ「あぁ、そうなの……そうなんだ……」
宗介「どうした、千鳥? 顔色が悪いぞ」
かなめ「やかましい!!!」
日本海 デ・ダナン 艦長室
テッサ「相良さんから連絡がありましたか?」
カリーニン「はい。千鳥かなめは飛行脚のことを知っていたようです」
テッサ「そうですか」
テッサ(私の知識にはないことを知っていた。やっぱり、かなめさんはウィスパードとして一線を画す存在なのかもしれないわね)
カリーニン「また千鳥かなめは飛行脚のことを『ストライカーユニット』と呼称したそうです」
テッサ「その名称、研究書に記述がありましたか」
カリーニン「いえ。全くありません」
テッサ「……」
カリーニン「どうされますか」
テッサ「ウィスパードが関係しているのなら、調査しなくてはなりませんね」
カリーニン「では、手を引くという件は撤回しますか」
テッサ「ええ。まずはこの飛行脚がどこまで出来上がっているのか、確認しておきたいですね。机上の空論だけで終わっているのか、それとも形になってしまっているのか」
カリーニン「このようなものが完成し、実用化されているとなれば現代戦を一変させる個人兵装となるでしょう」
テッサ「ますます争いが激化する。危険な代物だわ」
マデューカス「失礼いたします、艦長。たった今、情報部より報告がありました」
テッサ「どうやら、急ぎのようですね」
マデューカス「本来なら文書にて提出するところなのですが、事情が事情だけに口頭になってしまいますがご了承ください」
テッサ「構いません。報告してください」
マデューカス「はっ。対象者の現在地に関することが上がってきました」
テッサ「どこですか」
マデューカス「日本の神奈川県横須賀市です」
テッサ「横須賀?」
マデューカス「厳密には横須賀市に属する孤島になりますが」
テッサ「孤島ですか」
マデューカス「ええ。地理的には東京都青ヶ島村よりも更に南へ50キロ先にあります」
テッサ「また地図にない島ですか」
マデューカス「日本政府も存在を公にはしておりません」
テッサ「行きましょう。ただ途中で東京湾に寄ってください。大事なお客さんをお迎えしなければならないので」
マデューカス「アイ、マム」
セーフハウス
かなめ「あーあ、こういうオチなのよね、やっぱり……。まぁ、今回はあたしが悪いか」
宗介「千鳥」
かなめ「なにぃ?」
宗介「今から東京湾に向かうぞ」
かなめ「なんで? 釣りでもする気?」
宗介「そうではない。大佐殿からの要請だ。俺は君をデ・ダナンまで護送することになった」
かなめ「行かない」
宗介「そういうわけにはいかない。それが俺の任務だ」
かなめ「危険なことはないって言ったじゃない」
宗介「危険はない。君に相談したいことがあるだけだと大佐殿も言っている」
かなめ「テッサがあたしに相談って……」
宗介「恐らくは飛行脚に関することだろう。頼む。大佐殿のために一緒に来てくれ」
かなめ「むぅ……」
宗介「頼む、千鳥」
東京湾 港
かなめ「ったく、いつまで待たせる気なのよ」
クルツ「ヘイ、そこの彼女。これから大西洋までクルージングなんてどうだい?」
かなめ「生憎、間に合ってます」
クルツ「そりゃないぜ」
かなめ「久しぶりね、クルツくん。マオさんも」
マオ「元気そうでなによりよ」グイッ
クルツ「いででで!! 姐さん!! いてぇって!!」
マオ「護衛対象をナンパするなっていつもいってんでしょうが、このバカ!」
クルツ「ジョークだろ。大体、今更かなめを口説き落せるわけないじゃねえか」
マオ「そういう問題じゃないんだよ」
かなめ「あはは。相変わらずですね」
マオ「恥ずかしい限りよ。で、もう一人のバカ野郎は?」
かなめ「なんか忘れ物があるから待っていてって言われたんだけど」
マオ「そう。何を忘れたんだか。約束の時間までには間に合うだろうけど」
クルツ「で、かなめ。今回のことはソースケから聞いてるか?」
かなめ「詳しいことは何も。テッサが相談したいことがあるとかないとかってぐらいだけど」
マオ「飛行脚のことは聞いてるね。実際問題、あれが実用化されていれば大変なことになる」
クルツ「しかも使ってる動力機関って第二次世界大戦時のもんだろ? 前時代のもんで人一人が飛べて、音速にも近づけるなんておかしいぜ」
マオ「だからこそ、飛行脚がつまんない組織で使われないようにしないといけないって話よ」
かなめ「でも、この世界では無理なのよね。そもそも魔法力を動力にする魔導エンジンは作れない。そしてそれを起動させるだけの魔女も存在していない」
クルツ「かなめ?」
マオ「だいじょうぶ?」
かなめ「え? ああ、うん。ヘーキ、ヘーキ」
かなめ(相談したいのはあたしのほうよ……はぁ……)
宗介「待たせたな」
クルツ「おらぁ、ソースケ。どこで油を売ってたんだよ。しかも、かなめを一人にして。何かあったらどうするつもりだぁ?」
宗介「問題ない。暴漢が千鳥に危害を加えようとすれば、手痛い教訓を学ぶことになったはずだ」
マオ「なんか自衛のための装備でも持たされたわけぇ?」
かなめ「ま、まぁ……色々と……」
クルツ「女の子に物騒なものをもたせるんじゃねえよ」
宗介「必要最低限に留めている」
クルツ「あのなぁ」
マオ「はいはい。そこまで。それじゃ、これからダナンに乗艦してもらうから」
かなめ「ここから?」
マオ「そう。ここから」
宗介「了解だ。必要な荷物は既にコンテナに積んである」
クルツ「おいおい。コンテナってこれかぁ? 一泊二日の着替えにしては多すぎねえか?」
宗介「千鳥の荷物は手で持つことができる程度のものだ」
クルツ「ってことは、これ全部お前ので詰まってんのかよ」
宗介「そういうことになる」
クルツ「何があんだよ」
宗介「必ずしも重要というわけではないが、念のために用意した。気にしないでくれ」
かなめ「あのぉ……ここからどうやって潜水艦に……?」
マオ「ふっふーん。わかってるくせにぃ。はい、酸素ボンベ」
デ・ダナン 格納庫
かなめ「うぅ……なんで東京湾なんかでスキューバダイビングを……」
マオ「よかったでしょ?」
かなめ「よくないっ! 視界も悪いし、すんごい怖いし!!」
マデューカス「お久しぶりです」
かなめ「あ、こんにちはー」
宗介「中佐殿!! 千鳥かなめ、乗艦完了いたしました!!!」
マデューカス「相良軍曹がいつもご迷惑をおかけしています」
かなめ「い、いやぁ、まぁ、もう慣れましたし」
マデューカス「君は相変わらずのようだな。いつまで彼女を困らせるつもりだ」
宗介「も、申し訳ありません!!」
マデューカス「そもそもだな――」
テッサ「そこまでにしてください」
マデューカス「大佐殿、しかしですな」
テッサ「もういいから。マデューカスさんは黙っていてくださいっ」
マデューカス「申し訳ありません……」
テッサ「かなめさん、元気でしたか?」
かなめ「うん。テッサも元気そうでよかったわ」
テッサ「急に呼びつけてごめんなさい。でも、至急確認したいことがあったんです」
かなめ「別にいいわよ。気にしてないし。それにあのストライカーユニット、じゃなくて飛行脚のことは広めちゃいけないとあたしだって思うもん」
テッサ「ええ。その通りです。どうやら私だけの知識ではどうにもならなくて」
かなめ「それであたしを呼んだわけでしょ。さぁ、パパっと片付けちゃいましょうよ」
テッサ「そうですね。かなめさんは私の部屋に来てください。あとのことはお願いしますね」
マデューカス「お任せください」
宗介「次の任務はなんでしょうか」
マデューカス「この地図をみたまえ」
クルツ「この赤い印のところにいくんスか」
マオ「でも、ここには何も存在していないはずですが」
マデューカス「例によって地図には描かれていない島へ潜入する。そこには飛行脚の生みの親がいるとの情報だ。我々はその人物を保護する」
宗介「はっ! ただちに作戦準備に取り掛かります!!」
艦長室
テッサ「紅茶を淹れました。どうぞ」
かなめ「ありがとう。んで、あたしにできることってなに?」
テッサ「この研究レポートは見ていただけましたか?」
かなめ「斜め読み程度だけどね」
テッサ「やはり、かなめさんは知っていましたか?」
かなめ「うん。それがストライカーユニットって呼ばれるほうが多いことは、知ってる」
テッサ「魔法力を行使して空を飛べることも?」
かなめ「けど、この世界にウィッチはいない。ストライカーユニットが実用化される可能性は皆無よ」
テッサ「それなら安心っ。と言いたいところですけど、それなら尚のこと何故このようなものを研究し、開発しようとしていたのかが気になりますね」
かなめ「この世界にはウィッチはいない。言い換えれば、別の世界には存在することになる」
カリーニン『――大佐殿、よろしいですか』
テッサ「はい。なんでしょうか」
カリーニン『準備が整いました。いつでも開始できます』
テッサ「分かりました。すぐに作戦を開始します。各員にもそう伝えておいてください」
発令所
テッサ「ごめんなさい。遅くなりました。指揮は私が執ります」
マデューカス「アイ、マム。これより艦長が指揮を執る!!」
テッサ「ダーナ、目標地点の座標は?」
ダーナ『北緯31°44′13″東経139°45′50″です』
マデューカス「あらゆる地図に描かれてはいませんが、衛星写真ではこの地点に島が確認できます。間違いないでしょう」
テッサ「結構。これよりダナンは無名の孤島へ向かいます」
マデューカス「アイアイ、マム! 発進準備!!」
テッサ「研究施設へは誰が突入することになりましたか」
カリーニン「メンバーに変更はありません」
テッサ「分かりました。それでいいでしょう」
カリーニン「そろそろ奴らも罠を仕掛けてくるかもしれません」
テッサ「そう思うからこそ、いつも相良軍曹を選出していたのでしょう?」
カリーニン「恐縮です」
テッサ「不用意に侵入してラムダ・ドライバを搭載しているASがいたら大変ですもの」
格納庫
マオ「そろそろ島に着くよ。装備の最終確認をしておきな」
クルツ「こっちはパーフェクトだぜ、姐さん」
マオ「ソースケはぁ? オッケー?」
宗介「肯定だ。異常はない」
クルツ「あのコンテナは未開封だけどいいのかよ」
宗介「ASを使用するならば、アレの出番はない」
クルツ「あくまで保険ってわけか」
宗介「そういうことだ。使わないに越したことはない」
クルツ「なにをもってきてんだよ」
マオ「無駄口をたたくな、野郎ども!! 発艦準備だ!!!」
クルツ「はいよぉ!」
宗介「了解。――ハッチ閉鎖。バイラテラル角3.5」
アル『ラジャ』
宗介「行くぞ、アル。任務開始だ」
孤島 アーバレスト内
宗介「こちらウルズ7。目標地点に到着した」
クルツ『こちらウルズ6。所定の位置についたぜぇ』
宗介「妙だな……」
アル『熱源反応、0』
マオ『見張りはおろか、研究施設内に人の気配がないわね。クルツ、どう?』
クルツ『ああ。人影は見当たらねえ。ただの廃墟っぽいぞ』
宗介「油断するな。セーフハウスに新築も廃墟もない」
マオ『こーんないかにもな場所でわざわざボロボロの建物を使うってどうなの』
クルツ『まぁ、確かに地下に研究施設があるのかもしれねえけどよ』
マオ『そうなるとASのままじゃ調査できないわね。――大佐、どうします?』
テッサ『はい。ウルズ6は同位置で待機。ウルズ2、ウルズ7は施設内の調査を行ってください』
マオ『ウルズ2、了解』
宗介「ウルズ7、了解」
テッサ「十分に注意してください。何があるかわかりませんから」
研究施設
マオ「こりゃ、完全にハズレたね。人が入った形跡がぜーんぜんない」
宗介「しまった」
マオ「どうした?」
宗介「こんなときのためにアレを持ってきたのに……」
マオ「コンテナに入ってるおもちゃのこと?」
宗介「あれは玩具ではない。上手く運用すれば現代戦の様相を一変させるだけのポテンシャルが――」
マオ「ちょっとまった。ここ、何かあるわ。これは床に扉……。キッチンやクローゼットは近くにないし、収納スペースってわけじゃなさそうね」
宗介「やはり地下に続いているのか」
マオ「そうみたいね。開けるよ」
宗介「了解」
マオ「……」ガチャ
宗介「……」
マオ「こちら、ウルズ2。施設内にて地下への通路を確認。これより地下へ向かいます」
カリーニン『了解。気を付けてくれ』
宗介「地下は割と新しいな」
マオ「こっちがメインだったってわけだ」
宗介「上階のフロアは荒れ放題だ。少なくとも十数年は人の出入りはなさそうだったが」
マオ「海底にトンネルでもつくってんじゃないの?」
宗介「孤島という地形を上手く利用したわけか」
マオ「問題はそこまで金をかける研究だったのかってことね」
宗介「俺個人の見解では魔法など存在しない力に頼るなど、問題外だ」
マオ「魔法の研究でもしてたのかもね」
宗介「バカな。仮にも科学者がそのような非現実で非科学的なものを追い求めるのか」
マオ「世の中の研究者ってのは大抵はバカでロマンチストの集まりよ」
宗介「よくわからん」
マオ「扉があるわね」
宗介「次は俺が開けよう」
マオ「カウント開始」
宗介「了解。3……2……1……!」ガチャ
マオ「誰かいる?」
宗介「……」
マオ「ソースケ?」
宗介「いかん、マオ。すぐにここから撤退するぞ」
マオ「何を見つけたの」
宗介「よく分からんが時限爆弾のようなものが部屋の中央に設置してある。カウントも既に5分を切っている」
マオ「ちっ。罠だったわけか」
宗介「逃げるぞ」
マオ「そうね。テッサ! 緊急事態が発生した!! ウルズ2、ウルズ7はこれより帰還する! 拒否されるとこっちが死ぬ!!」
テッサ『詳細は後ほど聞きます。すぐに戻ってきて』
マオ「感謝感謝!」
宗介「む……」
マオ「ソースケ! 足を止めるな!」
宗介「10秒くれ。人が倒れている」
マオ「なにぃ? こんなときに、もう!!」
宗介「生きているか?」
「う……うぅ……」
宗介「大丈夫そうだな。これよりここから離脱する。いいな?」
「はやく……逃げろ……。私のことは……」
宗介「そうはいかない。お前には聞きたいことが山ほどある」
「アマルガムが……私にさせた研究は……とんでもないものだったんだ……」
マオ「そういうことはあとできいてやる!! 今はここから出るのが先だよ!!」
「ダメだ……あの装置を……停止させなくては……」
宗介「無理だ。いくら専門家といえど4分弱であの爆弾は解体できない」
マオ「結構な大きさだしね。10分は欲しいか」
「あれは……爆弾じゃない……タイム・ハザードと同様の、いや、それ以上の、ことを……無理矢理……引き起こす……」
宗介「タイム・ハザード?」
「逃げてくれ! アマルガムはあの世界からウィッチを……連れてこようとしているんだ……!!」
宗介「お前はどうするつもりだ。その傷で何ができる?」
「私はここで死ななければならない。でなければ、この世界はもっと歪んでしまう」
デ・ダナン 発令所
テッサ「どうかしましたか」
マオ『地下施設にて研究員らしき人間を発見。重傷、いや、重体です』
マデューカス「保護し、連れてこい」
マオ『それが自分はここに残って装置を停止させないといけないとか、なんとか。あとアマルガムがどっかからウィッチを連れてこようとしていると言っていて動こうとしません』
テッサ「なんですって!?」
マオ『どういう意味かわかるの?』
テッサ「……」
カリーニン「大佐殿」
テッサ「その装置が停止できなければウィッチをこちらへ連れてくることができるようになる。そういうことですか」
マオ『相当錯乱しているようだけど、信じるわけ』
テッサ「信じないわけにはいきません」
宗介『お言葉ですが、大佐殿。逃亡目的の口上ということも考えられます』
テッサ「その人物に任せましょう。二人はただちに戻りなさい。これは命令です」
マオ『了解。あとで説明してよね』
地下施設
マオ「そういうことだから、ソースケ。ここから出るよ」
宗介「了解した」
「君たちは……ミスリルの……? あの男の言った通り……来たのか……」
宗介「そうだ」
マオ「ん? ちょっと、あんた……もしかして……」
宗介「この男、保護対象者か」
マオ「ってことは、あんたが飛行脚の生みの親ってわけ?」
「そうだ……。私は知っている。違う世界に魔女と魔法があることを……」
マオ「思春期にありがちな妄想ってわけじゃないのよね」
「その世界へいくために……アマルガムはあのような装置を……」
マオ「テッサ、保護対象の少年だったわ。どうする?」
テッサ『なっ……。いえ、命令に変更はありません。二人は戻ってきてください』
マオ「よほどのことなのね。わかった。ソースケ、行くよ」
宗介「ああ。急ごう」
デ・ダナン 発令所
マデューカス「よかったのですか、艦長。あの人物は……」
テッサ「分かっているわ。だけど、ここで彼を保護してしまえば、飛行脚が完成してしまうことになる」
カリーニン(大佐殿はあの飛行脚が実用化されるものと考えているのか)
テッサ「それだけは避けないと……」
カリーニン(全員を救うためには保護対象者が装置を止めなければならない、か)
クルツ『マオ、ソースケ! 急げよ!! 時間がないぞ!!』
宗介『クルツ、お前は先に戻っていてもかまわんぞ』
クルツ『うるせぇ! んなこという暇がありゃあ戻ってこい!! あと50秒で俺は戻るぞ!!』
マオ『いい根性してるわね!!』
テッサ「我々もいつでも動けるようにしておきましょう」
マデューカス「アイ、マム」
テッサ「各員の乗艦が完了次第、最大船速でこの海域を離れます。方角はどこでもいい。とにかく遠くへ行きましょう」
マデューカス「はっ!」
テッサ(急いでください。相良さん、マオ。万が一、違う世界と繋がってしまうことになってしまったら、どうなるか……)
>>61
テッサ(急いでください。相良さん、マオ。万が一、違う世界と繋がってしまうことになってしまったら、どうなるか……)
↓
テッサ(急いでください。相良さん、メリッサ。万が一、違う世界と繋がってしまうことになってしまったら、どうなるか……)
艦長室
かなめ「……遅い」
かなめ「気が付くのが遅い」
かなめ「知っているということは、既に得ているということ」
かなめ「ストライカーユニット、ウィッチ、そしてネウロイ。それらをあたしが知っているということは、一度経験しているということになる」
かなめ「避けることはできない。必ずそれは起こる」
かなめ「時空が割ける」
ゴゴゴゴ……
かなめ「きゃぁ!?」
かなめ「いたたた……。なに!? なにがあったのよ!?」
≪かなめさん、大丈夫ですか?≫
かなめ「テッサ……!?」
≪無事でよかった≫
かなめ「これ、滅多なことではしないって言ってなかったっけ?」
≪緊急事態なんです。かなめさんはそのまま待機しておいてくださいね≫
発令所
テッサ「被害報告を」
マデューカス「各部動力機関に問題はありません」
テッサ「あれだけの衝撃が海中で起こったのにですか」
マデューカス「そういうことになります」
カリーニン「今の衝撃は施設が爆発したことによる影響でしょう」
テッサ「爆発の衝撃ならいいけど。突入部隊の三名は?」
カリーニン「無事に乗艦が完了したと衝撃が到達する直前、報告がありました」
テッサ「結構。ダーナ、現在位置を」
ダーナ『不明』
テッサ「え? 現在の座標は?」
ダーナ『不明』
テッサ「どうして?」
ダーナ『位置情報を更新できません。現在地を起点にすることは可能です。実行しますか?』
テッサ「まさか……」
上空
ミーナ「サーニャさんが感知した地点はこのあたりなのね」
エイラ「そうだ」
ルッキーニ「でも、なーんにもいないよ?」
バルクホルン「リベリアン、音は拾えるか」
シャーリー「ちょっとまて……」
芳佳「坂本さん、どうなんですか?」
美緒「私の魔眼でも視認はできないな」
ルッキーニ「ホントにサーニャは感じたのぉ? 寝ぼけてたとかない?」
エイラ「あるわけないだろ。サーニャの能力はお前だって知ってるだろ」
シャーリー「海の中から音がする。聞いたことがない音だ」
ミーナ「海中から?」
芳佳「もしかしてネウロイ!!」
美緒「それはありえん。奴らは海水を嫌う」
シャーリー「けど、サーニャが探知したっていう範囲からは他に音は聞こえないんだ」
バルクホルン「潜水艦か?」
シャーリー「にしては静かすぎるけどな」
ルッキーニ「たしかめりゅの?」
美緒「潜水艦にしても何故、この海域にいるのかは確認せねばならんな」
エイラ「このご時世に潜水艦なんて意味ないのになー」
美緒「ネウロイの殲滅目的としては使い道がないからな」
ミーナ「侵攻目的なら別だけれど」
バルクホルン「それこそ意味がない。この時代に人間同士で争うなど」
芳佳「人と人が戦争なんて、嫌です……」
美緒「ともかく言ってみるか。シャーリー、バルクホルン、私のあとについてこい。他の者はここで待機だ」
ミーナ「大丈夫なの、美緒」
美緒「心配するな。ネウロイじゃなければ戦いにはならん」
ミーナ「貴方を信じるわ」
美緒「行くぞ」
バルクホルン「了解!」
>>66
美緒「ともかく言ってみるか。シャーリー、バルクホルン、私のあとについてこい。他の者はここで待機だ」
↓
美緒「ともかく行ってみるか。シャーリー、バルクホルン、私のあとについてこい。他の者はここで待機だ」
デ・ダナン 発令所
テッサ「座標が特定できない原因は?」
マデューカス「衛星との通信が一切不能になっているのが主な原因かと」
テッサ「なるほど……」
マデューカス「それと海域にも変化が生じています」
テッサ「島がないのでしょう?」
マデューカス「ええ。爆発で吹き飛んだとは思えないほど、綺麗さっぱり」
テッサ「ダーナ、現在地を起点として登録して、そのあとメインタンク・ブロー」
ダーナ『アイ、マム』
カリーニン「測量せねばなりませんな」
テッサ「ええ。かなめさんのいっていたことが起こってしまったのなら……」
ダーナ『熱源体を確認しました。熱源反応は3』
マデューカス「上空からか。空軍の機体でしょうか」
テッサ「映像を」
マデューカス「アイ、マム。上空を映せ」
上空
美緒「あれは……なんだ……」
シャーリー「戦艦としてはあまりに洗練されたフォルムだな」
バルクホルン「あのような巨躯で海に潜れるものか。あれはネウロイではないのか、少佐」
美緒「コアは確認できん。あれは人工の乗り物だ」
バルクホルン「なに……」
美緒「そしてあの艦、我々を見ているようだ」
シャーリー「潜望鏡かなにかで?」
美緒「そのようなモノではないだろう。それに潜望鏡ではこの高高度を視認できんはずだ」
シャーリー「それもそうか」
バルクホルン「どうする、少佐? もし、どこかの国が極秘裏に作りだした戦艦ならば……」
美緒「……私が行こう。お前たちはミーナのところに戻っていろ」
バルクホルン「何を言っているんだ!」
シャーリー「そんな命令、聞けると思っているんですか?」
美緒「聞いてもらわなければ困るな。私の使命は部下を五体満足で帰投させることだ」
デ・ダナン 格納庫
クルツ「結局、あのあとどうなったんだ?」
マオ「艦長とも連絡つかないしね。まぁ、しばらく待機してろってカリーニン少佐はいってたけど」
宗介「……」
マオ「どうしたの、ソースケ」
宗介「先ほどの衝撃が気になる。あの島、いや、施設が爆発したのだろうか」
マオ「そう考えるのが妥当じゃない?」
宗介「となると、あの男は……」
マオ「死んだわね。間違いなく」
宗介「だろうな」
マオ「珍しいじゃない。状況次第で見捨てなきゃいけない命なんて掃いて捨てるほどあることは身に染みてるでしょ」
宗介「それは分かっている。俺が気になっているのは奴が命を賭してまでやろうとしていたことだ」
クルツ「なんだっけ。ウィッチがどうのこうのだっけか? アマルガムの連中が薬漬けにしちまった結果じゃねえのか」
宗介「その可能性もあるだろうが、奴の目は死んでいなかった」
クルツ「あー、そりゃホンモノだ。だったら、理由があってやったことにちがいねえ。気にはなるな」
カリーニン「揃っているな」
マオ「少佐。現況の説明をお願いいたします」
クルツ「さっきのアレはやっぱり施設が爆発した所為っスか?」
カリーニン「事実確認の最中だ。それについては後ほど報告する」
マオ(こっちが混乱しちゃうようなことが起こったわけね)
カリーニン「それとは別に、これよりここに一人の女性がやってくる」
宗介「女性? どこかの兵士ですか」
カリーニン「いや。それは言えん。ともかく、粗相のないようにな」
マオ「銃器の携帯は?」
カリーニン「……許可する」
クルツ(敵かもしれねえってことかぁ? 一体、外では何が起こってんだよ)
カリーニン「私が艦長のところまでその女性を案内する。相良軍曹、私とともにこい」
宗介「はっ」
カリーニン「お前たちも余計な詮索だけはするな」
マオ「了解」
甲板
美緒「ほう? ここから戦闘機を発艦させることができるようだな。本当に潜水艦なのか」
カリーニン「紛れもなく、潜水艦だ」
美緒「招待してくれたことに感謝する。私たちに戦う意思はない」
カリーニン「そのようだな」
宗介(この女、何者だ……? 銃器は持っていないようだが、背中にあるのはソードか。白兵戦に絶対の自信があると見える)
美緒「私が聞きたいのはこの艦がどこで造られ、どこに所属し、何の目的でここの海域にいるのかだ」
カリーニン「それを説明するにはもう少し互いのことを知らなければならない」
美緒「一理あるな。名前も知らぬ相手に聞いていいことではなかったか」
カリーニン「貴方さえよければ艦長のところへ案内するが」
美緒「いいのか? はっはっはっは。では、好意に甘えよう」
宗介「拘束するかもしれんぞ」
美緒「そうした忠告をしてくれる者が拘束するとは思わん」
宗介「……」
美緒「では、案内してくれ」
格納庫
宗介「念のためだ。この刀剣は預からせてもらう」
美緒「ああ。扱いには気を付けてくれ」
宗介「了解した」
カリーニン「ついてきてくれ」
美緒「うむ。あれはなんだ?」
カリーニン「見てわからないか?」
美緒「うーむ……。全く、わからん」
カリーニン「そうか」
宗介(この女、ASを知らないのか?)
クルツ「あれが少佐のいってた女かよ」
マオ「軍服の下は水着みたいだね」
クルツ「この辺で海水浴でもしてたのかねぇ」
マオ「こんな何もない場所で? 遭難の間違いじゃないの?」
クルツ「それにしても、美人だなぁ。ありゃあ、間違いなくいい女だぜぇ」
艦長室
カリーニン「大佐殿、お連れしました」
テッサ「はい、ありがとうございます。どうぞ、入ってください」
美緒「失礼する」
かなめ「ね、ねえ、テッサ。あたしがいていいの?」
テッサ「むしろ、いてもらわないと困ります」
かなめ「えぇ……」
美緒「ふむ。ここの艦長はそちらか?」
かなめ「え!? いえいえ!! あたしはちんけな小娘ですから!!」
美緒「では……」
テッサ「私がこの艦の長です」
美緒「名乗ってくれないのか」
テッサ「部外者をここまで案内したのだって結構なサービスなんですよ? 名前を答えるのは、貴女の名前を聞いてからにします」
美緒「なるほど」
かなめ「ちょ、ちょっとテッサ……」
美緒「気にするな。彼女の言っていることは尤もだ。私が逆の立場でも同様の応対をしていただろう」
かなめ「え……」
テッサ「それはどうも」
美緒「それに、ここで怒りを露わにし艦長を殴りかかれば、両脇の男がどういった行動をとるのかぐらいは予測がつく」
カリーニン・宗介「「……」」
美緒「鍛え抜かれた兵士のようだな」
テッサ「ええ。私の自慢の部下であり仲間です」
美緒「ふっ。そうか」
かなめ(なんかいい人っぽい)
美緒「私は第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』に所属している、坂本美緒だ。階級は少佐。原隊は扶桑皇国海軍遣欧艦隊第24航空戦隊288航空隊」
テッサ「聞いたこともない団ですけど、主にどこで活動を?」
美緒「聞いたことがないのか。501の知名度もまだまだなのだな」
かなめ「501が活動しているのは基本的に欧州でしょ? 今はガリア解放を目指してるんだっけ」
美緒「うむ。その通りだ」
宗介「千鳥、どこでそんな情報を手に入れたんだ? 俺は知らないぞ」
かなめ「え? あぁ……その……」
テッサ「坂本少佐。貴方はウィッチなのですか」
美緒「そうだが」
テッサ「貴方が両脚に装着していたものはストライカーユニット、飛行脚ですね」
美緒「私のことはともかく、ストライカーユニットのことを知らないのか」
テッサ「いえ。知ってはいます。ただの確認ですから」
美緒「よくわからんな」
テッサ「困ったことになったわ……」
かなめ「ねえ、もしかしてなんだけどさ……」
テッサ「かなめさんの不安は的中していると思います」
かなめ「えぇぇ!?」
宗介「大佐殿、これは一体どういう……」
カリーニン「軍曹、詮索はするなといったはずだ」
宗介「……了解」
カリーニン「必ず説明はする。それまでは何も聞かないでくれ」
美緒「そろそろ聞かせてもらえるか?」
テッサ「そうですね。では、自己紹介をいたしましょう。私はミスリル作戦部西太平洋戦隊総司令官・TDD-1『トゥアハー・デ・ダナン』艦長、テレサ・テスタロッタです」
美緒「聞いたことがない隊だな。名称からして海軍なのか」
テッサ「まぁ、そう思ってもらっても構いません」
美緒「厳密には違うのか」
テッサ「ええ。そうですね。詳しいことを話すことはまだできませんので、ご了承ください」
美緒「隣にいるのが副艦長か?」
かなめ「違います。あたしは一般市民なんです」
美緒「一般人にも解放している戦艦か」
テッサ「うふふ。割と開放的なんですよ、この艦は」
美緒「いいことだな。私にはその開放的な部分を見せてくれないのを除けばだが」
テッサ「501の基地を見せてほしいと言えば、簡単に見せてくれますか?」
美緒「……」
テッサ「無理でしょう? そういうことです」
美緒「いや、いいぞ? 今から来るか?」
テッサ「え……」
美緒「隠すことはなにもない。テスタロッタ艦長さえ良ければ歓迎しよう」
テッサ「どういうつもりですか」
美緒「私の腹の色を探ろうとしても無駄だ。裏はないからな」
テッサ「……」
美緒「ただし、条件がある。男を連れてはいけない」
宗介「失言だな。それは大佐殿を拘束すると宣言しているようなものだ」
美緒「そうではない。私たちの隊長は男に厳しくてな。ウィッチと男性職員の接触を極端に嫌い、禁止にしている」
テッサ「ということは、501には女性しか所属していないと」
美緒「そもそもウィッチに男は存在しない。過去には魔法力を有していた男も存在していたらしいが」
宗介「信頼するに足りん説明だ」
美緒「お前はウィッチのことも知らないのか?」
宗介「知らんな。そのように呼称される女兵士部隊など噂ですら耳にしたことがない」
美緒「お前たち、どこから来た?」
カリーニン「説明したところで信じてはもらえんだろう」
テッサ「……」
かなめ「どうするのよ、テッサ」
テッサ「分かりました。501の基地に案内してもらえますか?」
宗介「大佐殿!! 正気ですか!! このような正体のわからない連中についていくなどと……!!」
カリーニン「軍曹、控えろ」
宗介「しかし、もしも大佐殿の身になにかあれば……」
カリーニン「女性の護衛をつければ問題ないはずだ」
宗介「マオですか」
カリーニン「信頼できないとは言わせんぞ」
宗介「……了解です。差し出がましい真似をして失礼しました」
美緒「話はまとまったか」
テッサ「ええ。ところで、この艦ごと近くまで連れて行ってもらえるんですか?」
美緒「基地に総攻撃をかけるつもりはあるか?」
テッサ「そんなことをする理由が私たちにあるとでも?」
美緒「ないな。では、我々で誘導する。艦ごとついてきてくれ」
上空
ミーナ「まだかしら……」
バルクホルン「まだ1時間は経過していない。焦るな」
ミーナ「けど……」
芳佳「あの、坂本さんが1時間以内に戻らなかったら……」
シャーリー「あの戦艦に総攻撃を仕掛ける」
芳佳「そんな、ネウロイじゃないのに……」
バルクホルン「リベリアン、宮藤を脅すな。そのような命令は受けていないだろう」
シャーリー「似たようなもんだろ。全員であの戦艦にこい、なんてさ」
バルクホルン「……」
ルッキーニ「おーい!! みんながきたよー!!」
エイラ「サーニャたちか。これで戦力は揃ったな」
シャーリー「501の総力をあげれば、どんな奴からだって少佐を救い出せるさ。確実にな」
バルクホルン「そうだな。無益な戦闘にならないことを祈る」
ミーナ「美緒……」
美緒「はっはっはっはっは」ブゥゥゥン
芳佳「坂本さん!!」
ミーナ「美緒!! 無事だったのね!?」
美緒「すまんな。心配をかけたか」
ミーナ「当たり前でしょう!?」
ペリーヌ「聞きましたわ、坂本少佐! そのような危険なことはおやめになってください!」
美緒「だが、こうしなければ不安は取り除けなかっただろう」
ミーナ「だからって、単独で向かうなんて軽率すぎるわ」
美緒「相手はネウロイではなく、人間だ。殺し合いになるわけがない」
ミーナ「それでもよ!」
エーリカ「で、少佐。あの船、ついてきてるみたいだけど、お茶会にでも誘ったの?」
美緒「察しがいいな。流石はハルトマンだ。はっはっはっは」
リーネ「そ、それじゃあ……もしかして……」
美緒「あの艦を501基地に寄港させる約束をした。はっはっはっは」
ミーナ「な……!?」
デ・ダナン 発令所
テッサ「あれが501のウィッチたちですね」
マデューカス「ううむ……年頃の娘がなんとハレンチな恰好を……」
テッサ「マデューカスさんは下を向いていてください」
マデューカス「ア、アイアイ、マム」
カリーニン「飛行脚が実用化されている世界に来てしまいましたか」
テッサ「そのようですね。理由は分かりませんが、現実に彼女たちが目の前で飛んでいる」
カリーニン「はい」
テッサ「まずは情報を収集しましょう。この世界のことを知らなくてはならない」
カリーニン「501は主に欧州で活動していると言っていました。この海域は欧州なのでしょうか」
テッサ「少なくとも近くに八丈島がある海域ではないでしょうね」
カリーニン「今はまだ状況を把握しているものが殆どおりませんが、徐々に判明すれば混乱は必至です」
テッサ「そのあたりの対策も練っておかくてはなりません。そのためには艦長である私が事態を把握しないと」
カリーニン「お気をつけて」
テッサ「では、行ってきます」
上空
シャーリー「あれ、本当に戦艦か? すげえ速度でてるぞ」
エイラ「なんか怖いな」
サーニャ「あれだけの潜水艦が造れる国なんて……」
ルッキーニ「シャーリーと似たような魔法使えるウィッチが乗ってるんじゃないの?」
シャーリー「へぇ。それは興味あるな」
美緒「残念ながらシャーリーの期待に添える人物は乗艦していなかった」
シャーリー「そうなんですか?」
ペリーヌ「ですが、海上であれほどの速度を出せる艦など、ウィッチがいなければ説明がつきませんが」
美緒「だが、ウィッチはいなかった」
エーリカ「乗組員全員を紹介してもらったのか?」
美緒「いや、そんな確認は必要なかった」
芳佳「え……?」
美緒「奴らはウィッチを知らなかったからな」
リーネ「ウィッチを知らないって……そんなこと……」
ミーナ「どこの所属なのかも答えてはくれなかったのね」
美緒「そうだな。海軍なのかも定かではない」
バルクホルン「あれだけの戦艦を所有し運用しているんだ。海軍以外に何がある」
美緒「潜水艦なのに、戦闘機が発艦できる。これはどういうことだと思う?」
バルクホルン「な、なに? 現行の潜水艦でそこまでの規模のものはないし、技術的にも製造不可能だろうに」
ミーナ「ネウロイとの戦闘を考慮した設計ということなの」
美緒「現実的に考えればそうなる。しかし、ウィッチの存在そのものを知らない連中というのがわからん」
エーリカ「ウィッチを知らないならネウロイだって知らないよね」
美緒「私はそう考えている」
エイラ「ネウロイを知らないってどこの世界からきたんだよぉ」
サーニャ「ネウロイの侵攻もなく、ウィッチもいない地域で造られた潜水艦なの?」
エイラ「そんな地域があるか?」
サーニャ「ないかしら?」
芳佳「そんなのあるの!?」
美緒「奴らのことは基地で聞く。それまでは余計な予想はするな。先入観はなくせ。いいな」
デ・ダナン 格納庫
マデューカス「陸地と建物が肉眼で確認できました。そろそろ着くころでしょう」
テッサ「そうですか。メリッサ、護衛をお願いね」
マオ「まっかせといて」
かなめ「あたしもいかなきゃダメぇ?」
テッサ「ごめんなさい。けど、身の安全は約束します」
マオ「あたしが守ってあげるってぇ。ソースケじゃなくて悪いけどねぇ」
かなめ「別に、あたしは……そういうのは……」
宗介「……」
クルツ「護衛を外されて残念だったなぁ。でも、女だらけの部隊は見てみたいぜぇ」
宗介「ああ。そうだな」
クルツ「お! お前もわかるようになってきたかぁ」
宗介「マオを信頼していないわけではないが、多勢に無勢だ。マオだけで本陣に乗り込み、不測の事態が起こった場合、対応できるとは思えん。守るためにはそれなりの数がいる」
クルツ「でもよ、相手の条件は男はダメで女のみ、なんだろ?」
宗介「ならば、問題ない。アレを使えば性別など関係ないからな」
501基地 港
テッサ「ここが501……」
マオ「歴史的な建造物っぽいわねぇ。こんなの日本にあったんだぁ」
かなめ「……」
ミーナ「ようこそ、501へ。私が隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」
マオ「どうも。メリッサ・マオ」
テッサ「テレサ・テスタロッタです」
かなめ「ええと、千鳥かなめです」
ミーナ「どうぞ、こちらへ」
かなめ「……」
ミーナ「私の顔に何かついているかしら?」
かなめ「ああ、すみません。私の知り合いに雰囲気が似てたので」
ミーナ「それは光栄ね。では、友人のように接してくれても構いませんよ、千鳥さん」
かなめ「は、はぁ」
テッサ「ヴィルケ中佐……。一筋縄ではいかなそうですね」
廊下
テッサ「ここの役割とはなんですか?」
マオ「……」
ミーナ「ここは欧州の砦となる場所です。ここが陥落すればネウロイはブリタニアまで侵攻してしまうことになるわ」
マオ(ぜーんぜんわかんないけど、自分の置かれている状況はなんとなくわかってきたわね。そりゃ少佐も口を閉ざすわ。動揺を顔に出さないようにしないと)
テッサ「なるほど。そのネウロイとはなんですか?」
ミーナ「本当に何もしらないのね」
テッサ「申し訳ありません。田舎者でして」
ミーナ「何を知らないのかしら?」
テッサ「この世界の全て、といって信じてくれますか?」
ミーナ「歴史の授業でもしたほうがいいの?」
テッサ「できるならお願いしたいですけど、流石にそこまで時間を割けません。私にも大事な友人と部下がいますから」
ミーナ「それはよかったわ。どうやら、からかっているわけではなさそうね」
テッサ「貴方をからかうなんて恐れ多いです」
かなめ(501……全部知ってる……これもあたしがウィスパードだからなの……。でも、テッサは知らないみたいだし……)
格納庫
バルクホルン「ミーナと少佐だけで大丈夫なのか」
シャーリー「相手はウィッチじゃないんだから、どうしたって二人には勝てないだろ」
エーリカ「それに少佐も言ってたことだけどさ、私たちに危害を加えようとか、そういう気はないでしょ」
バルクホルン「そうとも限らない」
エイラ「なんでだ?」
バルクホルン「予算削減の件は聞いているか?」
リーネ「いえ、知りません」
バルクホルン「軍上層部の決定でな。501の予算が減らされた」
ペリーヌ「何故? わたくしたちは日夜ネウロイの脅威から空を守り、結果を出していますわ」
バルクホルン「だからだ」
芳佳「意味が分からないんですけど……」
バルクホルン「501は活躍し過ぎなんだろう。それを目障りに思う輩が軍にいる。宮藤が赤城を守った件も大きく絡んでいるそうだ」
芳佳「そんな!! 納得できません!!」
バルクホルン「私とて同じだ。だが、それが軍のやり方なんだ」
芳佳「どうして守りたいものを守って、怒られなきゃいけないの……!」
リーネ「芳佳ちゃん……」
ペリーヌ「活躍のし過ぎですか。獲物を他の部隊にも分けろ、というわけですわね」
シャーリー「つまんないことするよな。こっちが戦闘狂の集まりとでも思ってるのかよ。それはカールスラントの軍人だけだろ」
バルクホルン「誰のことを言っている?」
シャーリー「お? 自覚あるのか」
バルクホルン「きさまぁ!!」
エイラ「やめろ、こらぁ!」
サーニャ「……」ピクッ
ルッキーニ「サーニャ、どったの?」
サーニャ「何か、いるわ」
ルッキーニ「なにかって?」
サーニャ「こっち」タタタッ
ルッキーニ「にゃににゃにー? むしー?」テテテッ
エーリカ「なんだ? サーにゃん、私もまぜてよー」
滑走路
ボン太くん「ふもふもー」
クルツ『おい、ソースケ。そりゃあ、大丈夫なのかよ』
ボン太くん『問題ない。この強化服は婦女子を油断させることができるからな』
クルツ『でも、目立つだろうが』
ボン太くん『俺はそんなヘマはしない。それにこれならば不測の事態にも対応できるだけの装備が整っている』
クルツ『まぁ、生きて戻って来いよ』
ボン太くん『ウルズ7、了解』
ボン太くん「ふも、ふもふも」キョロキョロ
サーニャ「あれ」
ルッキーニ「にゃにあれー!?」
エーリカ「おぉー。なんだあれー?」
ボン太くん「ふもっ!?」
ルッキーニ「にゃっはー!!!」テテテッ
ボン太くん(ちぃ、もう見つかるとは。だが、捕まるわけにはいかん)
ルッキーニ「つっかまえたー!!!」
ボン太くん「ふもも!!」ババッ
ルッキーニ「ふぎゅ!?」ビターン
エーリカ「ルッキーニのタックルをよけた……!? 只者じゃないみたいだな」
サーニャ「ルッキーニちゃん、大丈夫?」
ルッキーニ「いたいぃ……顔、うったぁ……」
ボン太くん「ふも、ふもも、ふもっふ」
エーリカ「えらそーに。そっちがその気なら、こっちも本気でいくぞ」
サーニャ「ハルトマンさん、あの生物の言っていることがわかるんですか?」
エーリカ「わかんなーい」
ボン太(こいつらの相手をしている暇はない。まずは屋内に潜入し、身を隠す)
ボン太くん「ふもー」テテテテッ
サーニャ「逃げる……」
エーリカ「おいかけろー!!」
ルッキーニ「うにゃー!!! まてまてー!!!」
「わー!!」
芳佳「なんだろう?」
バルクホルン「何を騒いでいる――」
ボン太くん「ふももももー!!!!」ダダダッ
バルクホルン「な、なに……!?」
エイラ「なんだ、こいつ!?」
ボン太くん「ふもぉ……!」
ボン太くん(くっ。しまった。敵に囲まれてしまったか。それにしても本当に女しかいないのか)
エーリカ「ひっひっひ。ついに追いつめたぞ」
芳佳「な、なんだろう、あれ……」
リーネ「可愛い……」
ボン太くん(これ以上、騒ぎになれば千鳥たちがどうなるかわからん。仕方ない、少しの間だけ眠っていてもらうぞ)
ボン太くん「ふもっ!!」ジャキン!!!
シャーリー「こいつ! 銃を……!!」
バルクホルン「可愛い外見をしてテロでも起こすつもりか!!」
ボン太くん「ふもっふ!!」バァン!!!
バルクホルン「おのれ……!!」ギィィンン!!!
ボン太くん「ふもも!?」
ボン太くん(なんだ、あの障壁は!? 訓練弾とはいえ、銃弾が止められただと!? まさか、ラムダ・ドライバか!?)
シャーリー「着ぐるみか何かか、これ?」
サーニャ「え……。こういう生き物じゃないんですか……」
エイラ「とにかく捕獲すればわかるだろ」
芳佳「熊なら私に任せてください!! 扶桑では野生の熊と友達になったぐらいですから!!」
リーネ「そ、そうなんだ!」
ボン太くん「ふも……」
芳佳「大丈夫だよ。ほら、怖くないよ。こっちにきて」
ボン太くん「……」
芳佳「もう少し、もう少し……」
ボン太くん「ふもっ」バァン!!!
芳佳「痛っ!?」
バルクホルン「宮藤!!!」
リーネ「芳佳ちゃん、大丈夫!?」
芳佳「おでこ……いたい……」
ボン太くん「ふもぉ?」
ボン太くん(どうやら全員がラムダ・ドライバを使えるわけではないようだな)
バルクホルン「貴様、宮藤に手を出したな……」
ボン太くん「ふも?」
バルクホルン「ふも?ではない!! 貴様だけは許さんぞ!!! 怪生物め!!!」
シャーリー「だから、あれ着ぐるみだろ?」
ボン太くん(状況は不利か。退路を確保しなければなるまい)
ボン太くん「ふもっ!!」ダダッ
エイラ「こっちは通行止めだ」
ボン太くん「ふもぉ!? ふもも!!」ダダッ
エーリカ「こっちも通れないよ」
ボン太くん(なんだ、こいつら……! まるで俺の行動を先読みしているように……!!)
エイラ「私の魔法に逃げ道はないんだな」
ボン太くん(魔法だと? 何を言っているんだ)
バルクホルン「くらえぇぇ!!!」ブゥン!!!
ボン太くん「ふもっ!」ババッ
ボン太くん(動きが直線的すぎるぞ! このアマチュアめ――)
ドォォォン!!!!
ボン太くん「ふももも!?」
バルクホルン「外したか」
ボン太くん(素手で外壁が木端微塵だと……!? グレネード以上の威力か……!? なにがどうなっている!)
バルクホルン「だが、次は外さん」
ボン太くん(あの拳が当たればこの強化服もただでは済まんか。奴はやはりラムダ・ドライバを……)
シャーリー「つかまえたぁ!!!」
ボン太くん「ふもっふ!」
ボン太くん(甘いぞ!! そんな速度では――)
シャーリー「加速!!」ピコンッ
ボン太くん(なに!?)
シャーリー「ふっふーん。あたしにスピードで勝てるわけないだろ」ギュゥゥ
ボン太くん「ふもー!?」
ルッキーニ「わーい!! シャーリーがつかまえたー!!」ギュゥゥ
ボン太くん(何なんだ、こいつらの常軌を逸した能力は。全てラムダ・ドライバの力なのか……?)
バルクホルン「全員で怪生物を捕えるんだ!!」
サーニャ「はいっ」ギュゥゥ
リーネ「結構、柔らかいね」ギュゥゥゥ
芳佳「そうだね!」
ボン太くん(くそ……!! 何故だ!! 微動だにできん!! 女の力とはとても思えん!!)
エーリカ「いえーい。やっとだきつけるー」ギュゥゥ
エイラ「お前、どっからきたんだよ。飼い主とかいるのか?」
ボン太くん「ふもぉふもぉ」
バルクホルン「よし、覚悟はいいな?」ポキポキ
ボン太くん「ふ、ふもぉ……!!!」
執務室
美緒「これがこの世界の成り立ちだ。大まかな説明になってしまったが理解できたか?」
テッサ「はい。納得した、とは言えませんけど」
マオ(魔女が古来からいて当たりまえの世界。んで、ネウロイとかいう変な生物が人間の住処を荒らしまくってる、ね)
かなめ(どれもこれも知ってる……どうしてあたしだけ……)
ミーナ「千鳥さん、顔色が悪いけれど、大丈夫?」
かなめ「え? あ、ああ、大丈夫です。ちょっと船酔いしただけで、うははは」
ミーナ「そう。無理はしないでね」
美緒「私があの潜水艦、ダナンといったか、あの中で見た機械兵器は艦長らの世界では当たり前のように軍事運用されているのか?」
テッサ「はい。まぁ、私たちが所有しているAS、アーム・スレイブはちょっとだけズルいんです」
美緒「最新のものが揃っているということか」
テッサ「ええ」
美緒「テスタロッタ大佐は、有能な指揮官なのだな。新型を優先的に運用できるのはそれだけ隊として優秀である証だ」
テッサ「ありがとうございます。その点でいえば501も同じでしょう? 各国のエースが集まっている。そしてそれをまとめあげ指揮を執るなんて並の指揮官にはできませんから」
ミーナ「うふふ。素直に喜んでおくわね」
かなめ「ところでさぁ、テッサ。ウィッチだとかネウロイだとかはいいとしてさ」
マオ(いいんだ)
かなめ「坂本さんたちがあたしたちのことを信じてくれたかどうかはわからないんじゃない?」
テッサ「そうですね……」
美緒「信じていると言っても、その言葉を信用はできんということか」
かなめ「だってそうじゃないですか。あたしたちがこことは全然違う時代で文明にも差がある世界から来ましたなんて、普通は信じられないと思いますけど」
ミーナ「坂本少佐が見たという人型の機械兵器、規格外の潜水艦を見せられては信じる他ないと思うけれど」
テッサ「それはどうでしょう」
美緒「なに?」
テッサ「我々はとある事情から坂本少佐たちの世界を素直に受け入れることができます。ですが、貴方たちの立場は我々とは違う」
マオ(すんなり受け入れているのはテッサとかなめだけじゃないの? まぁ、この辺りは突っ込んだところでまともな答えは返ってこないだろうけど)
テッサ「ストライカーユニットと呼ばれる兵器に関して、何か疑問を持ったことがないですか?」
ミーナ「ユニットに?」
美緒「……」
テッサ「たとえば、このストライカーユニットの技術だけが異様に発達している、とか」
ミーナ「いいえ。先ほど説明したように、ストライカーユニットの原型となったものはライト姉妹が開発しているわ。そして更に古来より、ウィッチは空を飛んでいた」
テッサ「宮藤理論でしたか。その理論により、ストライカーユニットは劇的に進化したのではないですか?」
ミーナ「それは……」
テッサ「確かに正当な段階を経て、技術が向上したとみることもできます。この世界に存在する魔法も科学の一部ならば、私たちの常識では考えられない手順もあるのでしょう」
マオ「ちょっといい? このストライカーユニットは魔法力によって駆動するってことみたいだけど、使っている動力部ってのは他の戦闘機でも使えたりする?」
ミーナ「ユニットに合わせて開発されたものよ。魔導エンジンを他の兵器に転用、流用はできない」
マオ「長いこと研究されたからこそ、ユニット自体は徐々に性能をあげてきたというわけね」
ミーナ「ええ。そうよ」
テッサ「艇体に跨り、尚且つ別のエンジンユニットを必要とした形から、宮藤理論を元に脚に「履く」ことで訓練を積まずとも飛行し身体能力を強化できるようになったことについては?」
ミーナ「だから、それは長い歴史からみても順当に――」
美緒「テスタロッタ大佐」
テッサ「はい、なんでしょうか?」
美緒「お前はユニットの性能が時代に合っていないと言いたいのか?」
テッサ「端的に言えばそうですね」
美緒「それを確認できたとして、お前になんの益がある?」
テッサ「そうですね。少なくとも宮藤理論の生みの親である宮藤一郎氏には会わなくてはいけないでしょう」
美緒「何故だ」
テッサ「私たちが元の世界へ戻る術を知っている可能性があるからです」
美緒「……」
かなめ(その人がウィスパードかもしれないから。でも、ウィスパードがこの世界にいるとすれば……)
テッサ「宮藤一郎さんは今、どこにいますか?」
ミーナ「宮藤博士は……」
美緒「ついてこい。会わせてやろう」
テッサ「いいのですか? ありがとうございます」
ミーナ「美緒!」
美緒「構わんだろう。どうせすぐにわかることだ」
ミーナ「だからって……」
テッサ「何か問題でも?」
美緒「いや、ない。行くぞ」
テッサ「よろしくお願いします。坂本少佐」
美緒「ん?」ガチャ
ペリーヌ「あ、あら、坂本少佐。これからどちらに?」
美緒「盗み聞きか、ペリーヌ」
ペリーヌ「い、いえ! とんでもありませんわ!! わたくしはただ、少佐のことが心配で……」
美緒「やれやれ……」
マオ「少佐は好かれているようね」
美緒「優秀な者に好かれるのは指揮官としては幸せなことだな」
ペリーヌ「わ、わわ、わたくしが優秀だなんて……そんなぁ……」モジモジ
テッサ「貴方は坂本少佐のことが大好きなんですね」
ペリーヌ「勿論ですわ。あなた方が何者かは知りませんが、もし狼藉を働くというのなら容赦はしません」
マオ「へぇ、面白いじゃない」
ペリーヌ「わたくしに勝てるとでも?」
美緒「やめんか」
テッサ「そうですよ。私たちはあなた方に迷惑なんて一切かけませんから」
かなめ(あのバカが既にかけてそうなんですけど)
基地周辺
バルクホルン「どこに逃げた!!」
シャーリー「こっちに来たと思うんだけどなぁ」
エーリカ「でも、あいつ中々やるよね。トゥルーデに殴られる瞬間、体を転回させて私たちを振りほどくと同時に逃げ出すなんて」
エイラ「魔法つかっとけばよかったな。油断した」
芳佳「サーニャちゃん、どこにいったかわからない?」
サーニャ「……こっち」
ルッキーニ「こっちだー!! いそげー!!」
エイラ「こっちだな!」
バルクホルン「いいか!! 必ず生け捕りにするんだ!!」
エーリカ「りょーかいっ」
リーネ「あの、いじめるのはよくないような……」
バルクホルン「何をいう。奴は銃器を巧みに扱っていたんだぞ。危険生物と言わずしてどうする」
シャーリー「だから、着ぐるみだって」
芳佳「あの子を探しましょう! きっと怯えているだけです!! 優しくすればきっと友達になれます!!」
ボン太くん「ふも……ふも……ふもる……」
ボン太くん(はぁ……はぁ……。なんとかここまで逃げることはできたが……)
「こっちだー!! いそげー!!」
「こっちだな!」
ボン太くん「ふもっ!?」
ボン太くん(奴らめ、どうして的確に俺の位置を割り出しているんだ。発信機をつけられたか? いや、それなら簡単に気が付けるはずだ)
「いいか!! 必ず生け捕りにするんだ!!」
ボン太くん(捕まれば待っているのは想像を遥かに超える拷問か。奴らの能力を鑑みれば、恐らく致命傷になるようなものだろう)
ボン太くん(ここにいてはいずれ捕まる。とにかく、移動し、ダナンへ帰還するしかない)
ボン太くん(千鳥たちのことはマオに任せるか。支援できないのは戦略的には痛手だが、マオならば多少のイレギュラーでも十分に処理できるからな)
ボン太くん「ふもっ」プシュー
ボン太くん「ふも? ふもも? ふも?」
ボン太くん(なんだ、何が起きた?)
『損傷過多。システムダウン』
ボン太くん(くっ。この強化服を完全に沈黙させるとは、あいつら、どれほどの腕力なんだ。あの細腕からは想像もできんぞ)
宗介「ここで破棄するしかないか。だが、ここに捨て置くのも……」
宗介「うっ……つっ……」
宗介(やはりあの離脱時に足の筋を痛めたか。これでは行動範囲も制限されてしまう)
宗介「まいった」
芳佳「こっちもみてみまーす」ガサガサ
リーネ「芳佳ちゃん、一人だと危ないよぉ」
宗介「む……」
芳佳「え……」
宗介「見つかったか。仕方ない」チャカ
芳佳「わぁ!?」
リーネ(即座に拳銃を向けるなんて……。軍の人かな?」
宗介(この二人は先ほど見かけたな)
芳佳「えっと、ここでなにを……。あー!! リーネちゃん、あの人の後ろにあの子がいる!!」
リーネ「ホントだ。でも、なんだか萎んじゃってるけど……」
宗介「貴様たちは何者だ。ここで何をしている」
芳佳「私たちは後ろの子を探していただけなんですけど……」
宗介「ボン太くんのことか」
芳佳「ぼんたくん? その子の名前ですか?」
宗介「コードネームだがな」
リーネ「シャーリーさんの言う通り、着ぐるみみたい……」
芳佳「えー!?」
宗介「近づくな!」チャカ
芳佳「ごめんなさい!」
リーネ「や、やめてください。私たちは貴方に危害を加えるつもりはありません」
宗介「それを易々と信用するほど、俺は素人ではない」
芳佳「あれ? あの、足を痛めますか?」
宗介「そんなことはない」
芳佳「でも、右足を庇っているように見えるんですけど」
宗介「……」
宗介(隠していたというのに。こいつ、洞察力に優れているようだな)
リーネ「(そうなの? 私には分からなかったけど)」
芳佳「(足を痛めてる人が実家の診療所によく来てたから、自然とわかるようになったの)」
リーネ「(芳佳ちゃんって、やっぱりすごいね)」
芳佳「(すごくなんてないよ。患者さんを見てると誰でも慣れちゃうだけだから)」
宗介(坂本という女も訓練された兵士のようだったが、この少女も決してアマチュアではないということか)
芳佳「あの、怪我をしているなら私が治療しますけど」
宗介「何が狙いだ。強化服に使われている技術の提供か?」
芳佳「強化服ってなんですか?」
宗介「俺の背後にある着ぐるみのことだ」
芳佳「やっぱり、着ぐるみなんですね……」
リーネ「強化服ってどういうことですか?」
宗介「お前たちも目の当たりにしただろう。強化服の能力をな。簡単に言えば小型のAS並と思ってくれてもいい」
芳佳「えーえす……?」
リーネ「えーと、ASってなんですか?」
宗介「アーム・スレイブのことだ。分からないのか?」
>>117
宗介「お前たちも目の当たりにしただろう。強化服の能力をな。簡単に言えば小型のAS並と思ってくれてもいい」
↓
宗介「お前たちも目の当たりにしただろう。強化服の能力をな。小型のAS並と思ってくれてもいい」
芳佳「リーネちゃん、知ってる?」
リーネ「知らない」
宗介「そういえば坂本も知らないと言っていたな」
芳佳「坂本って、坂本さんのことですか?」
宗介「坂本美緒と名乗っていたが」
芳佳「坂本さんは私たちの上官です」
リーネ「……」
芳佳「どこで坂本さんにあーむすれいぶっていうぼんたくんを見せたんですか?」
宗介「違う。ボン太くんはAS並の能力を持つ強化服だ」
芳佳「よくわかりません……」
リーネ(もしかして、この人……)
芳佳「そんなことより、足を見せてください」
宗介「見返りはなんだ? 技術提供に応じる気はないぞ。金銭の要求なら多少は――」
芳佳「そんなのいりません。とにかく足を診せてください」
宗介「近づくなと言っている」チャカ
芳佳「……」
宗介「この程度の怪我など何度も負ってきた。お前に治療されずとも自力でなんとでもなる」
芳佳「そうはいきません」
宗介「なんだと?」
芳佳「銃をつきつけたって、私は貴方を治療します」
宗介「必要ないと言っている」
芳佳「必要あります」
宗介「意味がわからん」
芳佳「怪我をしている人を放ってなんておけません」
宗介「これが目に入っていないのか。俺はお前に敵意を向けているんだぞ。そんな相手に対して治療を行うというのか」
芳佳「怪我をした人に善人も悪人もありません」
宗介「……」
芳佳「私はそうお母さんに教えてもらいました。だから、貴方を治療します」
リーネ「芳佳ちゃん……」
宗介「MSFに似たような奴がいたな。銃を突きつけられても怯むことなく医療に従事していた。だが、そういう奴ほど早死にする」
芳佳「どうしてですか?」
宗介「全員がその真摯な姿に心を打たれ、改心することなどないからだ。中にはそれを嫌う者もいる」
芳佳「貴方は嫌なんですか?」
宗介「見知らぬ相手に恩を売られるのは好きではない。後に何を請求されるかわからんからな」
芳佳「違います! 私に治療されるのが嫌なのかどうなのかを聞いているんです!」
宗介「だから、よくわからん奴に貸しなど作りたくないと言っている」
芳佳「だから!! その足を治療したくないのかどうかを聞いているんです!!」
宗介「何度言えばわかる! お前の治療などいらん!!」
芳佳「もー!! その右足、痛くないんですか!?」
宗介「痛みはある!!」
芳佳「その痛みは早く引いたほうがいいと思いませんか!?」
宗介「怪我は早期治療が肝要だ。それぐらい常識だろう」
芳佳「よし!! 治療します!!」
宗介「なぜ、そうなるんだ!!」
芳佳「じっとしてて!!」ピコンッ
宗介「お前、なんだその耳は?」
芳佳「使い魔の耳ですけど」
宗介「使い魔……?」
芳佳「ふっ……」パァァ
宗介「痛みが引いていく……」
芳佳「どうですか?」
宗介「信じられんが、治ったようだ」
芳佳「よかったぁ」
宗介「この力はなんだ? ラムダ・ドライバにはこういった使い方もあるのか?」
芳佳「え? らむだどらいば?」
宗介「それも知らないのか?」
芳佳「知りません。リーネちゃんは?」
リーネ「さぁ……。シャーリーさんなら知ってるかもしれないけど」
芳佳「そうだね。シャーリーさん、よく機械とかいじってるし、工具には詳しそうだよね」
宗介「そのシャーリーという人物は機械工学に詳しい人物なのか」
芳佳「ストライカーユニットとか特に詳しいです!」
宗介「ストライカーユニット……」
宗介(千鳥が言ってたものだな。確か飛行脚のことだったはず。この女、例の研究にもかかわっているのか。ならばラムダ・ドライバのことも知っていておかしくないが……)
芳佳「プラス・ドライバーの親戚かな?」
リーネ「そもそも工具なのかな?」
宗介「ラムダ・ドライバのことは忘れてくれ」
芳佳「でも、気になります!」
宗介「知らんのならいい。それで今の力はなんだ? 説明できるか?」
芳佳「説明って、今のは私の魔法なんですけど……」
宗介「魔法だと?」
芳佳「はい」
宗介「俺をバカにしているのか。この世に魔法など存在しない」
芳佳「え……」
宗介「なんだ、その顔は?」
芳佳「いえ、魔法はありますけど……」
宗介「いい加減にしてくれ。魔法などありえん」
芳佳「ウィッチならみんな魔法を使っているんですけど……」
宗介「おかしな漫画の読みすぎではないのか」
芳佳「えぇ……」
リーネ「あの」
宗介「なんだ?」
リーネ「ネウロイのことは知っていますか?」
宗介「ねうろい? なんだ、それは?」
芳佳「ネウロイを知らないんですか!?」
宗介「知らん。何かの兵器か?」
リーネ「貴方はあの潜水艦の乗員ですね」
芳佳「え……!?」
宗介「……」
リーネ「どうなのですか?」
宗介「どうやら今の質問で確信したようだな。確かに俺はあの潜水艦、ダナンの乗員でありテスタロッタ大佐の部下だ」
芳佳「だったら、あのぼんたくんで攻撃してきたのって……」
宗介「君たちと交戦する気はなかった。だが、褐色肌の少女が拘束しようとしてきたため、自衛行動をとった」
リーネ「ルッキーニちゃんのことみたいだね」
宗介「俺は大佐殿の身を案じただけだ」
芳佳「それならそう言ってくれたらよかったのに」
宗介「男では施設内に入れないと言われたのだ」
芳佳「そうなの?」
リーネ「ミーナ中佐はウィッチである私たちが男性職員と個人的に接触することを禁止してるからかな?」
芳佳「そうだったんだ」
宗介「坂本も似たようなことを言っていたな」
リーネ「潜水艦の乗員なら、大変なことになりますね」
宗介「そうだな。君たちに見つかったのは明らかな失策だ」
リーネ「もしバルクホルンさんに見つかったら、どうなるか……」
芳佳「それにサーニャちゃんとエイラさんはがっかりするよね。ぼんたくんが着ぐるみだったって知ったら」
リーネ「それはきっとシャーリーさん以外そうだと思う……」
宗介「覚悟はある。好きにしろ」
芳佳「そんなこと言われても」
宗介「こうなってしまった以上、俺がここで抵抗すれば千鳥と大佐殿がどうなるかわからないからな」
「宮藤! リーネ! どこにいるんだ!!」
芳佳「あ、バルクホルンさんの声……」
宗介「あの一際怪力の女か。ここまでのようだな」
リーネ「あの、ここは誤魔化しておくので、早く潜水艦へ戻ってください。ぼんたくんと一緒に」
宗介「敵兵を見逃すというのか」
芳佳「別に貴方は敵じゃないですよぉ」
宗介「交戦し、君には銃口すら向けた」
芳佳「だからって貴方が敵ってわけじゃないです」
リーネ「とにかく逃げてください。ぼんたくんの中に人がいたことは私たちの秘密にします」
宗介「何故、そうまでする?」
芳佳「ぼんたくんの秘密を広めても誰も幸せになりませんから」
宗介「……礼を言う」
バルクホルン「宮藤!!」
芳佳「バ、バルクホルンさん」
バルクホルン「怪生物は発見できたか?」
リーネ「い、いえ。ここにはいませんでした」
バルクホルン「おかしいな。サーニャも反応がなくなったと言っている」
シャーリー「おーい、そろそろ戻らないか? あんまり離れるとまずいだろ」
バルクホルン「分かっている。捜索は打ち切る。全員、基地まで戻るぞ」
ルッキーニ「えー!? さがしたーい!!」
エーリカ「さがしたいよねー」
サーニャ「はい……」
エイラ「この辺にいるはずなのになぁ」
芳佳「あはは……」
リーネ「も、戻りましょう! この間にネウロイの襲撃があれば一大事ですから!!」
バルクホルン「リーネの言う通りだ。怪生物の捜索は後日行う」
シャーリー「諦めたわけじゃないのか」
滑走路
サーニャ「でも、どうして反応が突然消えたんだろう」
エイラ「サーニャの索敵範囲から逃れるなんてありえないはずなんだけどなぁ」
バルクホルン「いつか必ず捕縛し、剥製にしてくれる」
ルッキーニ「もう一回、ぎゅってしたーい」
シャーリー「着ぐるみだとおもうんだけどなぁ」
美緒「お前たち、何をしているんだ」
ミーナ「各人、任務はどうしたの?」
バルクホルン「それどころではなかったんだ!」
美緒「何かあったのか?」
ルッキーニ「こーんなにおっきなネズミがでたんだよー」
エーリカ「あれは熊だろー」
バルクホルン「熊でもネズミでもない。あれは怪生物だ。巧みに銃器を操り、剰え宮藤を負傷させた」
かなめ「それって……」
バルクホルン「何か知っているのか?」
かなめ「い、いやいや!! 全然知りません!!」
マオ(ソースケかな)
テッサ(もー、相良さんったら)
バルクホルン「そうか……」
美緒「ん? 宮藤も一緒だったか」
芳佳「はい! でも、私は何も知りません!」
リーネ「よ、芳佳ちゃん!」
美緒「何を言っている?」
テッサ「宮藤……?」
ミーナ「彼女は宮藤芳佳軍曹。お察しの通り、宮藤博士のご息女よ」
テッサ「まさか会わせてやるって……」
美緒「はっはっはっは。そこまで意地は悪くないつもりだ。……宮藤、少し付き合ってくれ」
芳佳「え? は、はい」
美緒「すまんな」
かなめ(こっちの軍曹はすごく可愛い。いいなぁ)
デ・ダナン 格納庫
宗介「結論から言えば、失敗だ」
クルツ「だろうな。あんなもんで潜入するやつなんて天才か大馬鹿野郎のどっちかだぜ」
宗介「勝算はあった」
クルツ「どこのスパコンがそんな結果を弾きだしたんだよ!!」
宗介「計算外だったのは奴らがおかしな力を使うことだ」
クルツ「おかしな力だと?」
宗介「見たときはラムダ・ドライバかとも思ったが、どうやらそれは違うようだった」
アル『そもそもラムダ・ドライバはASでしか能力を発揮できません』
宗介「なに? 本当か?」
アル『肯定。ASにのみ搭載できるシステムです』
クルツ「だとさ」
宗介「ふむ……。では、あいつらの言っていたことは本当なのかもしれん」
クルツ「何を言っていたんだ?」
宗介「魔法だと言っていた」
クルツ「魔法だとぉ? ソースケ、お前自身が否定してたものじゃねえか」
宗介「足の負傷を瞬時に治したという現実がなければ、俺も信じはしなかった」
クルツ「向こうに助けられたのか」
宗介「肯定だ。不審人物の傷を診ただけでなく、退却の手助けまでした。愚かな連中だ。軍人らしいが、とてもそうは思えん」
クルツ「普通は捕まえるよなぁ」
宗介「ああ。俺ならば目的を吐かせるためにあらゆる苦痛を与えるところだ」
クルツ「なのにその子は慈愛に満ちていたと。くぅ~、モーレツに興味がわいてきたぜ。女しかいないとか俺にとっては楽園でしかねえ!」
宗介「楽園か。クルツ、お前が考えているほど、現実は甘くないぞ」
クルツ「どういうこった?」
宗介「奴らの力ははっきり言って異常だ。理解の範疇を大幅に超えている」
クルツ「んなの関係ねえよ。女は綺麗かどうかだ」
宗介「あと、揃いも揃って服装がおかしい。狂的と言っても過言ではない」
クルツ「確かにあの眼帯の女もそれなに変だったが、周りが海ってことを考えればある意味水着は自然だったろ」
宗介「水兵の服に水着はまだいい。しかしそれ以外の者は制服らしきものを着用していたが、その下は下着のみだったんだぞ。相手は痴女だ。それでもいいのか?」
クルツ「マジか……マジかよ……ここは天国だったのか……」
岬
芳佳「坂本さん、どうしてここに?」
美緒「色々あってな」
芳佳「そうですか。でも、ちょうどよかったです。今日のあったこと、お父さんに報告したかったので」
テッサ「ここにいらっしゃるのですか?」
ミーナ「ええ。あそこよ」
マオ「あそこって……」
かなめ「お墓じゃない……」
テッサ「まさか……!」
美緒「宮藤一郎は、既にこの世にいない」
テッサ「そう……だったのですか……」
美緒「会わせてやりたい。いや、できることなら私とてもう一度、会いたい」
テッサ「……」
美緒(一番会いたがっているのは……)
芳佳「お父さん、今日ね、とっても不思議なことがあったんだー」
マオ「悪人ね、坂本少佐。わざわざ宮藤軍曹の健気で不憫な姿をあたしたちに見せて、これ以上の追及をさせないようにするなんてさ」
美緒「……」
テッサ「効果的ではありますね。人道的かどうかはさておき」
かなめ「ちょっと待って。坂本さんがここまでするのは、きっとこの話はデリケートなことだからみだりにするなっていうことでしょ」
美緒「千鳥だったか」
かなめ「はい」
美緒「助け舟を出してくれたことには感謝するが、テスタロッタ大佐が言ったことに間違いはない。宮藤を利用し、逃れようとしたのも事実だ」
ミーナ「美緒……」
美緒「501、いや、ウィッチたちにとって宮藤博士は大きな存在だ。お前たちが宮藤博士のことを嗅ぎまわれば、いつかは宮藤芳佳に行きついたことだろう」
テッサ「そのとき、宮藤芳佳軍曹が傷ついてしまうかもしれない。だから、もう何も調べるな、というわけですか」
美緒「これは警告でもある。あまり好き勝手にはしてくれるな」
テッサ「見られて困るもの、あったんですね」
美緒「困りはしない。釘を打つだけで済むからな」
テッサ(どうやら釘だけでなく先手も打たれてしまいましたね。坂本少佐は私たちの人間性を見ている。ここでもし宮藤芳佳軍曹を傷つけてしまえば、最悪戦闘になり兼ねませんね)
美緒(そんなこと望んではいないだろう。お互いな。信じているぞ、テスタロッタ大佐)
マオ「宮藤一郎はこの世にいない。故に、この話はおしまいってわけね」
美緒「そういうことになる」
芳佳「すみませーん。おまたせしましたー」
ミーナ「もういいの?」
芳佳「はい! ありがとうございます!」
テッサ「……」
芳佳「あの、私になにか……?」
テッサ「いえ。なんでもないわ。ごめんなさい」
芳佳「は、はぁ……」
美緒「では、戻るか」
ミーナ「そうね。貴方たちはどうするの?」
テッサ「一度、ダナンへ戻ります。知り得た情報の整理もしたいですから」
美緒「そのあとは?」
テッサ「どうしましょう? うふふふ」
かなめ(嫌な予感しかしない……。今後、どうなるんだろう……)
501基地 ブリーフィングルーム
ミーナ「みなさん、揃っているかしら?」
エイラ「サーニャとルッキーニはいないぞ」
美緒「サーニャは夜間哨戒の時間だからいいとして、ルッキーニはどうした? 全員に招集をかけたはずだが」
シャーリー「どこかの木の上で寝てるんじゃないですか?」
美緒「まったく……。毎回のこととは言え……」
バルクホルン「しっかり監督しろ」
シャーリー「そんなのあいつが一番嫌うことだろ」
ミーナ「はいはい。静粛に。それではブリーフィングを始めます」
美緒「議題は無論、あの潜水艦のことだ」
バルクホルン「何者なのかわかったのか」
美緒「お前たちが納得できるかどうかはさておき、奴らがどういった者たちなのか説明する」
エーリカ「どういう意味?」
美緒「奴らは我々の知らない世界からやってきた」
シャーリー「は……?」
>>136
美緒「議題は無論、あの潜水艦のことだ」
↓
美緒「話すことは無論、あの潜水艦のことだ」
エイラ「意味がわからない」
美緒「分からなくてもいい。奴らの言っていることが真実かどうかもはっきりしないからな」
ペリーヌ「あの方々がネウロイのことを知らないという点だけは荒唐無稽な説明を信じろなんて無理な話ですわ」
ミーナ「実はいうとそれ以外にもあります」
エーリカ「あのはっやーい潜水艦のこと?」
美緒「その中で見た人型の機械兵器もだ。テスタロッタ大佐はその兵器をアーム・スレイブと呼んでいた」
シャーリー「なんだそれ。すっげーみてぇ!」
エイラ「少佐が見たっていうその兵器は、現代のどっかの国で造られたものには見えたのか?」
美緒「あれほどの科学力が現代にあるとは思えんのも確かだ」
バルクホルン「人型と言ったな。それは対ネウロイ用に開発されたものなのか」
美緒「対陸戦型ネウロイに特化させているのならば可能性はある」
シャーリー「でも、それを搭載してるのは潜水艦だ。ネウロイがまず出てこない海中でそんなもの持ってても意味ないんじゃないか?」
バルクホルン「そうだな……」
リーネ「(あの人、魔法も知らなかったよね?)」
芳佳「(うん。多分だけど、別の世界からきたっていうのは本当じゃないかな)」
デ・ダナン 艦長室
テッサ「――以上が私が知り得た全てです。今のところは、ですけど」
カリーニン「大佐殿の予想通りでしたな」
テッサ「予想外のこともありましたけど」
マデューカス「この件についてはまだ口外するな」
マオ「中佐。中には感づいている者も出始めています。情報の開示は早急にしたほうがいいと思いますが」
マデューカス「それでは艦内が混乱する。分からんわけではないだろう」
マオ「ですが……」
テッサ「メリッサが信頼のおける人だけに留めるなら問題ありません」
マデューカス「艦長。無闇に広言しては秩序が乱れてしまいかねませんぞ」
テッサ「現状でも既に混乱の波紋は広がっています。時間の問題です」
カリーニン「魔法やストライカーユニットの存在はすぐには理解できないでしょうが、今が1944年であることは周囲の環境を見れば理解もできるでしょう」
テッサ「文明に差がありますからね」
マデューカス「我々の世界では丁度、第二次大戦中ですな」
テッサ「いいえ、この世界でも第二次大戦中ですよ。世界大戦にはなっていないようですけどね」
宗介の部屋
クルツ「そのネウロイってやつと、あの坂本率いる美少女軍団は戦ってるってわけか」
かなめ「簡単に言えばそういうことになるんだと思う」
宗介「ネウロイという侵略者との戦いをこの世界では第二次大戦と言っているのか」
かなめ「1904年に扶桑海で大規模な怪異が発生するまで歴史に相違はなかった」
宗介「1904年といえば日露戦争だな」
かなめ「ネウロイの出現で歴史は変わった。いいえ、時間災害が起こったのよ」
クルツ「かなめ、そりゃあどういう意味だ?」
かなめ「世界大戦に発展しなかったのは、ネウロイの出現により人間同士で争っているわけにはいかなくなったってことよ」
クルツ「い、いや、俺が聞きたいのは時間災害ってことのほうなんだけどよ」
宗介「理由はわからんが、歴史が変わった瞬間という意味ではないのか」
クルツ「そういうことなのか? だったら、そのとき歴史は動いたって言ってくれ」
かなめ「あ、ごめんごめん。急にその単語が浮かんじゃって」
宗介「しかし、千鳥。この話は俺たちにしていいのか? 機密事項に匹敵する情報ではないのか?」
かなめ「テッサの許可は出てるわよ。それにソースケ、あんたはもう501の人たちとトラブルを起こしてるわよねぇ?」
宗介「な、なんのことだ」
かなめ「ボン太くんで暴れたことはわかってるんだから、しらばっくれないで!」
宗介「う、うむ。すまない」
クルツ「まーた、おこられてんやの」
かなめ「クルツくんもソースケの暴走を止めてよね!!」
クルツ「お、おう」
かなめ「ホントに、うちの軍曹共は可愛げがないんだから」
宗介「誰と比べている」
かなめ「あんたも見たでしょ? セーラー服きて、中に水着を着てる女の子よ。宮藤芳佳ちゃん。階級はあんたと同じ軍曹」
宗介「あの少女が軍曹だと? どれほど優秀なんだ」
かなめ「ウィッチって時点であんたよりは優秀でしょ」
宗介「魔法というアドバンテージは大きいかもしれないが、それでも強化服を着用すれば勝てない相手ではない」
かなめ「勝とうとするな」
クルツ「んじゃ、俺はそろそろ部屋に戻るぜ。色々ありがとよ、かなめ」
かなめ「うん。また明日ね」
艦長室
カリーニン「それと宮藤一郎氏のことですが」
テッサ「分かっています。名前は違いますが私たちが血眼で探していた保護対象者でしょうね」
カリーニン「我々が追っていたのは16歳の少年です。年齢に大きな差異がありますが」
テッサ「ある程度の予想はつきます。だけど、どれも仮説の域をでることはできませんね」
カリーニン「仕方のないことかと」
テッサ「この閉塞感から抜け出すためには宮藤一郎さんに話を聞くしかないのだけど、現状ではそれはできない」
カリーニン「残された手段としては彼の娘である宮藤芳佳から聞き出すしかないかと」
テッサ「それをすれば手詰まりになるかもしれません。この状況で501の皆さんに嫌われたくはないもの」
カリーニン「難儀なことですな」
テッサ「ええ。どうしたらいいでしょう」
カリーニン「皆目見当もつきません」
テッサ「私もです」
カデューカス「これからの指針はいかほどに」
テッサ「そうですね……。やれることは全てしておきましょうか」
501基地 宮藤の部屋
芳佳「あの潜水艦、いつまでいるんだろう」
リーネ「ブリーフィングでは――」
美緒『ともかく、奴らのことで話せるのはここまでだ。潜水艦はしばらく停泊することになるかもしれんが、お前たちから奴らと接触することは禁じる。いいな』
芳佳「怪しい人たちだから、坂本さんはあんなこと言ったのかな?」
リーネ「そうだと思うよ」
芳佳「でも、ぼんたくんに入っていた人はそこまで悪い人には見えなかったけど……」
リーネ「銃を向けてきたのも、訓練を受けた軍人ならあり得ないわけじゃないもんね」
芳佳「ううん、そういうことじゃなくて、銃を向けただけで撃つ気がなかったというか」
エイラ『宮藤、いるか?』
芳佳「はい、なんですか?」
エイラ『非常招集。急げよ』
芳佳「ネウロイですか」
エイラ『それ以外に何があるんだ。いや、今は別のものもあるな。でも、今回はネウロイだ』
格納庫
ミーナ「たった今、サーニャさんから通信がありました。三体のネウロイを確認。それも高速でこちらに向かってきているわ」
シャーリー「この前の奴か?」
バルクホルン「だとすれば厄介だ。あの速度に追いつけるのは現状でシャーリーのみ。振り切られたら終わりだ」
エーリカ「待ち伏せしかないね」
美緒「間もなくサーニャが一体と交戦する。エイラ、この地図に書かれているポイントCへ先行し、サーニャと合流。ただちにネウロイを落とせ」
エイラ「了解。待ってろ、サーニャ。今いくぞ」
ミーナ「坂本少佐、イェーガー大尉、クロステルマン中尉、宮藤軍曹はポイントAへ。バルクホルン大尉、ハルトマン中尉、ビショップ軍曹は私とポイントBへ向かいます」
バルクホルン「了解」
シャーリー「ルッキーニはどうしたんですか?」
ミーナ「ルッキーニ少尉は既に動いています」
シャーリー「え……?」
美緒「ミーナ、どういうことだ?」
ミーナ「あとで話すわ。今はネウロイの殲滅を優先しましょう」
芳佳「了解!! 発進します!!」
上空 ポイントC
サーニャ「来る……」
ネウロイ「……」ゴォォォ
サーニャ「ここで止めなきゃ」
ネウロイ「……」ピカッ!!!
サーニャ「くっ……!」
エイラ「サーニャー!!!」
サーニャ「エイラ!」
エイラ「右旋回!! 回り込む!!」
サーニャ「了解!」
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!
サーニャ「速い……! 追いつけなくなる……」
エイラ「サーニャ、この方角にフリーガーハマー発射だ」
サーニャ「どうして?」
エイラ「この方向に撃てば、6秒後にネウロイに直撃するんだな」
上空 ポイントA
エイラ『ネウロイ、撃墜完了』
美緒「よくやった、エイラ。ではエイラはこちらに、サーニャはミーナ中佐の位置を魔法で確認し、援護に入れ」
サーニャ『了解』
芳佳「流石、エイラさん!!」
エイラ『もっと言ってくれ』
ペリーヌ「ふざけている場合ですの!?」
シャーリー「お出ましだ。ペリーヌ、大口開けてると、舌噛むぞ」
ペリーヌ「ふん。そんな素人臭いことわたくしがするとでも?」
ネウロイ「……」ゴォォォ
美緒「シャーリー!! 頭を押さえろ!!!」
シャーリー「了解!! ペリーヌ!! 援護してくれ!!」
ペリーヌ「わたくしは少佐とロッテが組みたかったのに!」
美緒「宮藤! 私についてこい!!」
芳佳「はい!!」
ネウロイ「……」ピカッ!!
芳佳「でやぁぁ!!」ギィィィン
美緒「宮藤が防いだ!! 今だ!!」
シャーリー「くらえ!!」ズガガガ
ペリーヌ「ふっ!!」ズガガガ
ネウロイ「……」ゴォォォ
シャーリー「動きが鈍ったぞ!」
ペリーヌ「少佐!」
美緒「はぁぁぁぁ!!!」ザンッ!!!
パリィィィン……!!
美緒「ふぅ……」
ペリーヌ「しょうさー! すてきで――」
芳佳「わーい、坂本さん、かっこいいー」ギュゥゥ
美緒「はっはっはっは」
ペリーヌ「ぐぬぬ……!! おのれ、豆狸……!! 坂本少佐に気安く抱きつくなんて……!!」
シャーリー「あとはミーナ中佐のところだけか」
美緒「カールスラントの三英雄とブリタニアが誇る期待の新人がいるのだ。何も心配はいらんだろう」
シャーリー「サーニャも向かってますしね」
美緒「エイラ、応答しろ」
エイラ『なんだー?』
美緒「お前も中佐のところへ向かえ」
エイラ『もう向かってる』
美緒「重畳。我々も移動するぞ」
ペリーヌ「はい!」
芳佳「リーネちゃんの援護しなきゃ」
美緒「とはいえ、ミーナたちのことだ。既に終わらせていることだろう」
シャーリー(最近、ホントにネウロイが多いな。変なことの前触れじゃなきゃいいけど)
美緒「ミーナ、今からそちらに行く。援護は必要か?」
美緒「……ミーナ? 応答しろ。ミーナ、聞こえないのか?」
芳佳「どうしたんだろう……」
上空 ポイントB
ネウロイ「……」ゴォォォ
ミーナ「坂本少佐、応答を!!」
バルクホルン「ハルトマン!! ネウロイが旋回する!!」
エーリカ「みりゃ、わかるって!」
ミーナ「くっ。無線が通じないなんて」
リーネ「坂本少佐たちに何かあったんでしょうか」
ミーナ「いえ、サーニャさんとも連絡をとることができないわ。異常が起こっているのは私たちのほうかもしれない」
リーネ「異常って……」
バルクホルン「ミーナ!! このままではネウロイに振り切られる!!」
エーリカ「ダメだ!! 追いつけない!! シャーリーは!?」
ミーナ「交信ができないのよ!! 私たちでなんとかするしかないわ!!」
バルクホルン「ならば二手に分かれるぞ!! 私とハルトマンでネウロイを追いかけ進路を誘導する!!」
ミーナ「私とリーネさんで進路の先へ行けばいいのね。わかったわ」
バルクホルン「頼むぞ、ミーナ」
ミーナ「急いで、リーネさん。大尉たちが誘導してくれても私たちが間に合わなければ意味がないわ」
リーネ「は、はい」
ミーナ「大丈夫。貴女ならできるわ。以前も似たような状況で成功させたのだから」
リーネ「あれは……」
リーネ(確かにできたけど、それ以降、私はまともな成果を出せていない……。きっとあれは……偶然……)
ミーナ「もうすぐ、来るわね」
リーネ(だから、ここで成功させなきゃ。たくさん訓練した意味をここで……!!)
ミーナ「――リーネさん!」
リーネ「はい」
ネウロイ「……」ゴォォォ
リーネ(できる……私なら……できる……)
リーネ「当たって!」ドォン!!
ネウロイ「……」ピカッ!!!
リーネ「あ――」
ドォォン!
バルクホルン「あの爆発は……!」
エーリカ「しまった!! 先行くよ!!」
バルクホルン「待て!! ハルトマン!!」
ミーナ「リーネさん!! リーネさん!!」
リーネ「あ……」
リーネ(落ちる……やっぱり……わたしじゃ……)
ネウロイ「……」
リーネ(狙われてる……? 私……芳佳ちゃん……)
ネウロイ「……」ピカッ!!
ドォォォン!!
リーネ「え……?」
バルクホルン「今のはなんだ!?」
エーリカ「変な方向から援護射撃がきたなぁ、っと!!」ガシッ
リーネ「あ……ハルトマンさん……」
エーリカ「私の目の前で墜ちるなんて絶対に許さないぞ」
ネウロイ「……」ゴォォォ
ミーナ「トゥルーデ!!」
バルクホルン「今が好機だ!! やるぞ、ミーナ!!!」
ミーナ「任せて!!」
バルクホルン「砕けろ!!」
パリィィィン……
リーネ「ネウロイが……」
エーリカ「さっすが、ミーナとトゥルーデだ」
リーネ「そうですね」
エーリカ「で、リーネ、何か私にいうことがあるんじゃない?」
リーネ「え? あ、ご、ごめんなさい……ご迷惑を……」
エーリカ「違うね。それじゃあ、許さない」
リーネ「え、あ……えと……あ、ありがとうございました……?」
エーリカ「せいかいっ。怪我はない?」
リーネ「はい、大丈夫です。ユニットの損傷が激しいですけど……」
バルクホルン「リーネ、無事か?」
リーネ「はい。なんとか」
エーリカ「まだまだだね、リーネ。世話が焼けるよ」
リーネ「……」
ミーナ「リーネさん……」
美緒『ミーナ!! 応答してくれ!!』
ミーナ「こちら、ミーナ。ネウロイは殲滅したわ。ただ、リーネさんが……」
芳佳『リーネちゃんがどうかしたんですか!?』
バルクホルン「落ち着け、宮藤。リーネは無事だ。ただネウロイの光線によってユニットが損傷した」
芳佳『はぁ……よかったぁ……』
リーネ「ごめんね、芳佳ちゃん」
芳佳『ううん!! リーネちゃんが無事ならそれでいいから!!』
リーネ「ごめんね……」
バルクホルン「先ほどの援護射撃、基地の方角からだったな」
ミーナ「……応答して、ルッキーニさん」
501基地 滑走路
ルッキーニ「あい」
ミーナ『何かあったかしら?』
ルッキーニ「なんかねー、潜水艦にね、おっきな鉄の人形がいきなりでてきて、そこからバーンって空に向かって撃ったよ」
ミーナ『彼女たちの人型兵器ね』
シャーリー『ルッキーニ、どこにいたんだ』
ルッキーニ「基地をまもってたんだよー。中佐がみんな出払ったら危ないっていって」
美緒『そういうことか。ミーナ、ルッキーニに監視をやらせていたな』
ミーナ『彼女たちを信じることはできないもの。せめてもの保険は必要でしょう』
バルクホルン『だからって、ルッキーニ少尉を残すか』
エーリカ『いいんじゃない? ルッキーニなら一人で三人分ぐらいの働きするし』
ルッキーニ「にゃはっ」
美緒『それはそうとテスタロッタ大佐が我々の助太刀をしてくれたことになるな』
ミーナ『だからって、まだ味方とは断定できないわよ』
美緒『承知している。しかし、礼はしたほうがいい』
デ・ダナン 宗介の部屋
かなめ「……」
宗介「どうした、千鳥?」
かなめ「え? べ、別になんでもないわよ。うは、うははは」
宗介「そうか」
かなめ(なんでちょっと緊張しているのかしら。ソースケと二人きりになったって、何が起こるわけでもないことは分かってるのに)
宗介「千鳥、すまないな」
かなめ「な、なによ、急に」
宗介「また君を危険な目に遭わせてしまっている」
かなめ「そのこと。いいわよ。なんとなくこうなる気もしてたし」
宗介「だが、千鳥のことは俺が守る。安心してくれ」
かなめ「ソースケ……」
宗介「千鳥……」
ドォォォン!!
かなめ「きゃぁ!? なんの音!?」
M9内
クルツ「やっべぇ。思わず手が出ちまったぜ」
マデューカス『そこで何をしている、ウィーバー軍曹!!』
クルツ「いやぁ、バードウォッチングをしてたんスよ」
マデューカス『この真夜中に鳥など見えるのかね』
クルツ「俺の目は梟ばりッスからね」
マデューカス『ふざけるなぁ!!!』
クルツ「おっと! 通信装置に不具合が発生した模様!! 中佐! また後ほど!!」
マデューカス『待ちたまえ! ウェーバーぐんそ――』
クルツ「ふぃー。桃源郷を拝んでたら、まさか魔女たちの戦闘をこの目で見ちまうことになるとはな」
クルツ(かなめから話は聞いていたとはいえ、実際に目にすると結構ショックだな)
クルツ(ここは俺の知ってる世界じゃねえなぁ)
マオ『こーら、クルツぅ。ASを勝手に動かしてなにしてるの』
クルツ「姐さん、俺はこの世界を好きになれるかもしれねえ」
マオ『はいはい。何をウォッチングしてたかは想像できるね。はやく戻ってこい!! この軽薄ナンパ野郎!!!』
クルツ「へいへい。戻りますよっと」
コンコン
クルツ「なんだぁ?」
『おー。にゃんだ、これー』
クルツ「この子は……?」
ルッキーニ『シャーリーが見たらよろこびそー』
クルツ「パンツ丸出しってことはこの子もウィッチか」
ルッキーニ『とー!!』
クルツ「な……!? ASに飛びつきやがった……!?」
ルッキーニ『誰かはいってるのー?』コンコン
クルツ「5年後なら相手してやったけど、こりゃ流石に犯罪だな」
ルッキーニ『おーい』
クルツ「どうする。振り落すのは簡単だが」
ルッキーニ『ルッキーニパンチ!!!』ガンッ!!!
ルッキーニ『あにゃー!! いたいぃ……』
デ・ダナン 格納庫
M9『ただいま戻りましたぁ』
マオ「クルツ!! おりて――」
ルッキーニ「すごいすごい!! うごいてるー!! にゃはははは!!」
マオ「えぇ!? こらぁ!! クルツ!! ASの肩になにのせてんだい!!」
M9『レディーを振り落とすなんてマネ、俺にできるわけねえだろ?』
マオ「どこで取りつかれた?」
M9『甲板で。どうやら、ずっとうちらのことを監視してたみたいだ』
マオ「なるほどね」
マオ(まぁ、当然の対応よね)
ルッキーニ「たかーい!」
マオ「ええと、ルッキーニ少尉だったね?」
ルッキーニ「そうだけどー?」
マオ「降りてきな。そこは危ないよ」
ルッキーニ「だいじょーぶ。へーき、へーき」
M9『そういうわけにもいかねえんだ。勝手に降ろさせてもらうぜ』グイッ
ルッキーニ「おぉぉ」
マオ「オーライ、オーライ。そのままゆっくりおろしてー」
ルッキーニ「うにゃ」
マオ「どう? 巨大兵器に首根っこをを掴まれた気分は? 生きた心地がしなかったでしょ」
ルッキーニ「もういっかいやって! もういっかい!!」ピョンピョン
マオ「いや、なんでそうなる」
クルツ「ヘイ、そこの彼女。あまり悪戯が過ぎるとそこのこわーいお姉さんがこわーい罰をあたえちゃうぞぉ」
ルッキーニ「えー……やだぁ……」
マオ「だったら、もう帰って寝な。ミーナ中佐にだって何を言われるか分からないだろ」
ルッキーニ「中佐には何も言われないと思うけど」
マオ「そう……」
クルツ「まぁまぁ、折角来たんだ。ちょっとぐらいゆっくりしていってもいいんじゃねえか?」
マオ「……ロリコン」
クルツ「そうじゃねえよ!! これは善意だよ!!」
マオ「何が善意だ。あんたの魂胆は見え見えなんだよ。どーせ、この子を利用して501に取り入ろうとかしているでしょ?」
クルツ「なんだそりゃ。名案じゃねえか」
マオ「しまった……支援してしまったか……」
ルッキーニ「なんの話?」
クルツ「なんでもないよ。ええと、名前はルッキーニちゃんでいいのかな?」
ルッキーニ「うんっ」
クルツ「俺の部屋にくるかい? おやつやジュースをご馳走してあげるからさ」
ルッキーニ「おかし!? ジュース!? いいの!?」
クルツ「好きなだけ食べて飲んでいってくれ」
ルッキーニ「やたー! いくいくー!!」
クルツ「こっちだよー」
ルッキーニ「たのしみー」
マオ「……」
クルツ「どうした、マオ?」
マオ「あたしが警官なら絶対に逮捕するわ」
501基地 滑走路
美緒「リーネ、念のためだ、医務室に行って来い」
リーネ「はい。分かりました」
芳佳「私が付き添います」
美緒「頼んだぞ」
シャーリー「あっれぇ? ルッキーニが見当たらないなぁ」
エーリカ「あの潜水艦の中にいるんじゃない? ルッキーニの言ってた人型兵器も片付いちゃってるみたいだし」
エイラ「もしかしてその兵器にくっついていったんじゃないだろうな、あいつ」
バルクホルン「ルッキーニ少尉ならあり得る」
サーニャ「危険だわ。助けにいかないと」
美緒「ミーナ、ルッキーニ少尉にどのような命令をしたんだ」
ミーナ「潜水艦の監視だけよ。潜入しろなんて言っていないわ」
美緒「また奴の悪い癖が出たか」
ミーナ「行きましょうか」
美緒「先ほどのこともあるからな」
>>156
マデューカス『そこで何をしている、ウィーバー軍曹!!』
↓
マデューカス『そこで何をしている、ウェーバー軍曹!!』
デ・ダナン 艦長室
マデューカス「先ほどの一件については以上です」
テッサ「そうですか。ウェーバーさんがバードウォッチングをしていたのですか」
マデューカス「ウィッチを見ていたと思いますが」
テッサ「でしょうねぇ。それに加えてルッキーニ少尉まで艦内に連れ込んでしまうなんて」
マデューカス「彼にはミスリルの一員である自覚が欠落しているのです。私が矯正しておきましょうか」
テッサ「けれど、ウェーバーさんが理由もそうした行動をとるとは思えないけど……」
マデューカス「買いかぶりすぎです」
テッサ「うーん……」
カリーニン「大佐殿、よろしいですか」
テッサ「どうぞ」
カリーニン「失礼します。これより数名を連れてここを離れます」
テッサ「分かりました。カリーニンさん、よろしくお願いします」
カリーニン「了解です」
テッサ「さて、と。私は艦長としてお客様に挨拶をしないといけませんね」
>>163
テッサ「けれど、ウェーバーさんが理由もそうした行動をとるとは思えないけど……」
↓
テッサ「けれど、ウェーバーさんが理由もなしにそうした行動をとるとは思えないけど……」
マオの部屋
テッサ「失礼します」
マオ「あら、テッサ。いらっしゃい」
テッサ「ここにルッキーニ少尉がいると――」
ルッキーニ「はむっ……。おぉー、おいしー!! これ食べたことないけど!!」
かなめ「でっしょ。こっちではまだ試作品すらないお菓子だからね」
ルッキーニ「ありがと、かなめー」
かなめ「どういたしまして」
テッサ「ずいぶんと仲良くなってるみたいですね」
かなめ「うん。無邪気でいい子よー」
テッサ「メリッサがここに連れてきたの?」
マオ「クルツの毒牙にかかる前に保護したのよ」
テッサ「それなら納得です」
クルツ「くそぉ……俺はまだ何もしてないだろうが……」
宗介「未然に防ぐのは最大にして最高の効果がある対処法だ」
ルッキーニ「こっちも食べていい?」
かなめ「どうぞ、どうぞ」
ルッキーニ「にゃはっ! はむっ……はむはむ……」
マオ「ルッキーニって何歳なの?」
ルッキーニ「ふーふぃふぁいふぁふぉ」
かなめ「食べながら喋らないの」
ルッキーニ「ん……。12歳だよ?」
マオ「ふぅーん。随分と若いね」
かなめ「うん。なんていうか……大変ね……」
ルッキーニ「にゃにが?」
宗介「特に珍しくはない。これぐらいの少年兵は紛争地域にいけばいくらでもいる」
クルツ「それを言いだしたらキリがなくなるぜ」
テッサ「501に所属するウィッチは皆さん、若いですよ。平均年齢も15、16歳ぐらいですし」
宗介「豊富な経験を積んでいる司令官もその年齢なのですか」
テッサ「ウィッチの寿命は大体20歳までらしいですので、戦場に立てる人はどうしてもそれぐらいの年齢になってしまうみたいです」
宗介「一流の兵士になるころには退役になるということか」
マオ「勿体ない話ね」
かなめ「仕方ないもんね。魔法力は衰退していくんだから」
ルッキーニ「そだね」
宗介「経験こそ戦場から帰還するために必要なものなのだが」
マオ「魔法ってのがあるんだから、あたしらの世界の兵士よりかは生存率高そうだけど」
クルツ「そうでもないみたいだぜぇ。さっきの戦闘を見る限りな」
テッサ「それを聞きたかったんです。ウェーバーさん、見たことを報告してくれますか?」
クルツ「おかしな戦闘機っつーか、金属の塊っつーか、そういうのが飛んでたんだ」
宗介「報告は明瞭にしてくれなくては困る」
クルツ「どういえばいいのかわかんねーんだよ。そうだな、ありゃ、例えるなら地対空ミサイルみたいな形だった」
宗介「ならば、ミサイルなのだろう」
クルツ「ミサイルがドッグファイトしてくる世界ってか? 旅客機にのって旅行は絶対にしたくねえな」
宗介「何者かが遠隔操作していたかもしれん」
ルッキーニ「ネウロイはネウロイ。ミサイルじゃないよ」
クルツ「あれがかなめの言ってたネウロイか。想像以上に気味がわりぃな」
テッサ「正体不明の侵略者、ネウロイですか」
宗介「人間ではないものと戦うのか」
ルッキーニ「うんっ」
かなめ「怖くないの?」
ルッキーニ「なんで? 人と戦うほうが怖いじゃん」
宗介「……」
マオ「その子の言う通りだね。こっちの言葉が通じない生物と戦うほうが気も楽ってもんさ」
クルツ「んで、そのネウロイは二体以上いたはずだ。ウィッチたちが三部隊に分かれてたからな」
マオ「ネウロイって複数で襲ってくるの?」
ルッキーニ「そういうこともあるかなぁ」
テッサ「ウェーバーさんがM9でボフォースを使用した理由については?」
クルツ「可愛い女の子たちを助けるのに理由がいるかい?」
テッサ「真面目に答えてください」
クルツ「名前はわかんねえけど、対戦車ライフルを持ってる子だった。その子がネウロイに撃たれておちそうになったんだよ」
宗介「対戦車ライフルだと? そのようなものを持って前線に出ていたというのか」
クルツ「おうよ。こう自動小銃を構えるみてえにな。それを担いで飛んでいるだけでも目が飛び出そうになったぜ」
宗介「どういう理屈だ。意味がわからん」
かなめ「それも魔法によるものよ。魔法力を使えば身体能力も上がるの」
宗介(あのとき強化服の機能を停止させた理由は魔法にあったのか。では、銃弾を防いだあの障壁も……)
ルッキーニ「それって、リーネだ! リーネが墜ちたの!?」
クルツ「いや、墜ちそうになったところを黒い軍服をきた子が救い上げてた」
ルッキーニ「戻らなきゃ!!」
マオ「もう帰っちゃうの?」
ルッキーニ「リーネが心配だもん!!」
宗介「待て。重度の負傷、もしくは戦死したというのならばお前にも連絡が入るはずだ。そういった連絡がないということは、そのリーネという者は無事なのだろう」
ルッキーニ「そんなのわかんないじゃん!」
宗介「落ち着け」
マオ「まぁまぁ、ルッキーニが心配になるのもわかるよ。ダナンの外まで送っていきましょう」
宗介(精神的にもまだ未熟な少女が少尉。人員が不足しているのか、それともルッキーニ少尉も戦場では一流なのか)
格納庫
ルッキーニ「急がなきゃ!!」タタタッ
かなめ「ちょっと! 走ると危ないわよ!!」
テッサ「あら、あれは……?」
マデューカス「艦長、いいところに」
テッサ「何かありましたか?」
ルッキーニ「どいてー!! どいてー!!」
マデューカス「待ちたまえ。君の仲間が迎えにきている」
ルッキーニ「え? そなの?」
テッサ「501の皆さんが?」
マデューカス「はい。ルッキーニ少尉がここにいるはずだと、言っています」
宗介「なるほど。俺たちがルッキーニ少尉を誘拐したと誤解しているのか。万が一ということがある。千鳥、君は隠れているんだ」
かなめ「なんでそうなる。あんたじゃないんだから、そんな勘違いするわけないでしょうが」
宗介「希望的観測は危険だ。それに戦争とはそういった小さな行き違いで起こるものも多い」
ルッキーニ「どうでもいいから早く外にだしてー!!」
シャーリー「おーい、ルッキーニー」
ルッキーニ「シャーリー!!!」
シャーリー「何してたんだ?」
ルッキーニ「かなめとメリッサからお菓子もらったー」
バルクホルン「餌付けされていたのか……」
エーリカ「おかし!? 私にもちょーだいっ」
かなめ「え? い、いや、いいけど、それ後ろの人が許してくれるの?」
エーリカ「ヘーキ、ヘーキ。はやく、おかしぃ」
バルクホルン「ハルトマン!!! 恥ずかしいとは思わんのかぁ!!!」
エーリカ「思わないね」
バルクホルン「くぅぅ……!!」
かなめ「良い性格してるわね……」
エーリカ「褒め言葉なんていらないから、お菓子ちょーだい」
かなめ「褒めてないし」
ルッキーニ「ねえねえ!! リーネは!? リーネはどうしたの!?」
シャーリー「リーネは医務室だよ。今は宮藤がついてる」
ルッキーニ「わかった!!」ダダダッ
シャーリー「あ、おい」
テッサ「随分と心配されていますね。ルッキーニさんとリーネさんは仲が良いんですね」
美緒「家族を心配しないものなど、いないだろう」
テッサ「家族?」
美緒「私たちは仲間を家族だと考えている。家族は命を預けあうのではなく、命を共有する」
テッサ「共感できます」
美緒「それは嬉しいな」
宗介「……」
クルツ「その銃は必要なさそうだな。ケツを冷やさないように、そのまま納めとけ」
宗介「不思議だ。彼女らは相手を敵として認識している様子がない」
クルツ「いつも未知の生物と戦ってるんだ。人間のことぐらいは信じたいんじゃねえか?」
ミーナ「そうでもないわ。ウェーバー軍曹」
クルツ「お、美しいウィッチから声をかけてもらえるなんて、光栄だ。名前ぐらいは聞いてもいいよな? 俺の名前を知ってるんだからさ」
ミーナ「テスタロッサ大佐から聞いていないのね。まぁ、いいでしょう。私はミーナ。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」
クルツ「ミーナか。いい名だ。これから、俺の部屋にこないかい?」
ミーナ「遠慮しておきます。私はお菓子にはつられませんから」
クルツ「ありゃ、手厳しい。でも、落とし難い的ほど燃えるタイプなんだよねぇ、俺って」
ミーナ「私を落とせるなら大したものだわ」
クルツ「ふふん。いつか嫌っていうくらい、俺の背中をひっかかせてやるぜぇ」
マオ「どこかで聞いたセリフだね」
宗介「同じ文句を言っているのだな」
クルツ「うるせぇ。で、ミーナ中佐殿。そうでもないってどういうことです?」
ミーナ「ルッキーニ少尉や宮藤軍曹は貴方の言う通り、人間を敵として見ることはあまりないでしょうね。ただ、隊長を任されている身としては色々と疑わなくてはならないのよ」
マオ「あたしたちが賊国からの使者かもしれないから」
ミーナ「ええ。その考えはまだ持っているわ。私たちには人間の敵も多いのよ」
クルツ「なんでまた。ああ、いや。美人は敵を作りやすいっていうからなぁ」
マオ「バカ」
宗介「一つ聞かせてほしい。ルッキーニ少尉も宮藤軍曹も兵士、いや、ウィッチとしては優秀なのか?」
ミーナ「何故?」
宗介「どちらも軍人としての心構えがなっていないと思うからだ」
ミーナ「なるほど。私から言えることは501には優秀なウィッチしかいないということよ」
クルツ「国籍とかも違うんだよな。名前からしても色々なところから引っ張ってきてる感じがするし」
ミーナ「ええ。その通りよ」
宗介「つまり、エース級が集まっているということか」
マオ「501はドリームチームってわけだ。それはさぞかし、戦果も素晴らしいんでしょうね」
ミーナ「おかげさまでね」
マオ「人間の敵が多いっていうのは、妬んでるやつら多いってことでしょ」
ミーナ「そういうことです」
宗介「俺たちも似たようなものだな」
ミーナ「え?」
マオ「うちらも新型をそろえて、各地では大活躍してるわけ。それが面白くないっていう連中は腐るほどいるわ」
ミーナ「貴方たちの部隊とも似ているところがあるようね」
マオ「あんたがどれだけ苦労しているのかは、わかるって話ね。それで敵じゃないよ、とは言わないけど」
美緒「先ほどの戦闘で援護射撃を行った者は誰だ」
クルツ「はぁーい、おれでぇーす。みおみおー」
ミーナ「はぁ!?」
美緒「お前か。もう少し精悍な者を想像していたが」
クルツ「想像以上のかっこよさにほれちまったかい? なんらな、俺の部屋でゆっくりと話してもいいんだぜ?」
美緒「いいのか? そうだな。そうするか。お前とは時間をかけて話したいと思っていたところだ」
マオ「なんですって!?」
クルツ「おぉ! 一目見た時から感じてたんだ。俺と美緒は運命の赤い糸で結ばれているってな」
美緒「はっはっはっは。そうか。よくわからんが褒め言葉として受け取っておこう」
ミーナ「美緒!! 何を言っているの!?」
美緒「どうした、ミーナ。何を怒っている?」
ミーナ「男性と二人だけで何をするつもりなの!?」
美緒「あの位置からネウロイを狙撃した男だぞ。話を聞かなくてどうする」
クルツ「俺のスナイプは百発百中だ。獲物を絶対に落とす方法をベッドの上で語ってあげましょう」
美緒「よし、部屋に案内してくれ」
ミーナ「やめなさい!!」グイッ
美緒「待て! 奴と話すのは……!」
ミーナ「どんな事情があっても許しません」
美緒「うぅむ……」
クルツ「そうはいかねえ。もう美緒は俺が落としちまったんだ。獲物はうばわせねえ」
マオ「こっちにきな」グイッ
クルツ「いでででで!!! 耳をひっぱるんじゃねえよ!!」
マオ「耳を鍛えないから痛いんだよ」
クルツ「どうやって耳をきたえるんだ!!」
美緒「すまんな。お前はええと……」
クルツ「クルツ・ウェーバー。覚えておいてそんはないぜ」
美緒「また機会があれば話をきかせてくれ」
クルツ「美緒の頼みならいつでも時間をあけておくぜ」
美緒「助かる」
ミーナ「もう戻ります!! 今回の件はあらためてお礼に伺います。それでは」
かなめ「あはは……。クルツくんってこういう状況でも変わんないわね……たくましいというか……」
テッサ「すみません……」
マデューカス「ミスリルの名に泥を塗るつもりか……!!」
シャーリー「うちらの仲間を助けてくれたことには感謝してるんだ。まぁ、いつまでいるのか知らないけど、仲良くしような」
宗介「いいのか?」
シャーリー「なにが?」
宗介「ミーナ中佐はまだ俺たちを疑っている。お前はいいのか?」
シャーリー「面白いこというなぁ。確かにお前たちのことは殆ど知らないけど、敵ではないだろ?」
宗介「リーネというウィッチを救ったからか? それこそ油断させるための手段かもしれんぞ」
シャーリー「あははは。だったら、襲ってきてもいいよ。そのときは戦うからさ」
宗介「何を言っても無駄のようだな」
シャーリー「ああ、そうさ。中佐や少佐は知らないけど、あたしはもうお前たちを敵としては見ないよ。たとえ銃口を向けられてもね。それはルッキーニや宮藤も同じだと思う」
宗介「何故、そう言い切れる?」
シャーリー「リーネを救ってくれたから。それ以外にないよ」
宗介「愚かだ。だが、この世界で最初に出会えたのがお前たちでよかった」
501基地 医務室
芳佳「なんともなくてよかったね」
リーネ「ごめんね……芳佳ちゃん……」
芳佳「どうして謝るの?」
リーネ「だって……私……また……」
芳佳「リーネちゃん?」
リーネ「ごめんね……なんでもないの……」
芳佳「大丈夫?」
リーネ「うん……。少し疲れちゃっただけだから」
芳佳「う、うん」
ルッキーニ「リーネぇ!!」
芳佳「ルッキーニちゃん!?」
ルッキーニ「大丈夫ぅ!?」
リーネ「平気だよ。少し左足を火傷しただけだから」
ルッキーニ「よかったぁ……うにゃぁ……」
リーネ「心配してくれてありがとう」
ルッキーニ「訓練通りにできなかった?」
リーネ「うん……」
ルッキーニ「そっかぁ」
芳佳「リーネちゃんは前にすっごく難しい狙撃を成功させてるんだし、今度はきっと上手くいくよ」
リーネ「そうだと……いいな……」
ルッキーニ「また練習に付き合ってあげりゅから」
リーネ「ごめんね……」
ルッキーニ「気にしない、気にしない」
リーネ「うん……」
芳佳「……」
ルッキーニ「どったの?」
芳佳「ううん。リーネちゃん、それじゃあ私たちは坂本さんに報告してくれるね。リーネちゃんはゆっくり休んでて」
リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん」
芳佳「いいの。おやすみ、リーネちゃん」
廊下
ルッキーニ「リーネが無事でよかったね!」
芳佳「……」
ルッキーニ「芳佳ぁ? 元気ないぞー」
芳佳「え? あはは! そんなことないよー」
ルッキーニ「ならいいけどー」
芳佳「あはは……」
ミーナ「だから! 二人きりで話す必要はないと言っているでしょう!?」
美緒「しかしだな。お前と私が一緒になってしまってはここの指揮系統が……」
ミーナ「他の人と一緒でもいいでしょう!?」
美緒「ここ最近はネウロイの襲撃が増加傾向にある。戦力はなるべく待機させておいたほうがいい。話を聞くだけならだけなら私一人で十分だからな」
ミーナ「そうだけど、そういうことじゃなくて!」
美緒「よくわからんな」
ルッキーニ「しょうさー、ちゅうさー」
芳佳「坂本さーん。リーネちゃんは大丈夫でしたー」
美緒「そうか。安心した」
ミーナ「けれど、リーネさんはしばらく出撃できないわね」
芳佳「どうしてですか? 一回の失敗ぐらいでそんな……」
美緒「それは関係がない。ユニットの損傷が激しい所為だ」
ルッキーニ「にゃんで? 2日もあればなんとかなるじゃん」
美緒「今まで通りならば修理用の部品もすぐに届いていたし、整備班の人員も揃っているために時間はかからなかった。だが、状況は変わっている」
芳佳「それって……」
ミーナ「宮藤さんも知っているかもしれないけれど、上層部の決定で501の予算は大幅に削減されているの」
美緒「故に修理も今まで以上に時間がかかる」
芳佳「そんなぁ!! どうにかならないんですか!? このままだとリーネちゃんは……!!」
美緒「なんとかしてやりたいのは山々だが、ユニットが直らないことにはどうにもできん」
ミーナ「宮藤さんの怒りは尤もです。けど、今は我慢して」
芳佳「私は……いいですけど……」
ルッキーニ「いつごろ直りそうなの?」
美緒「シャーリーにも頼んでみるが、早くても10日以上は要するだろうな」
芳佳「その間にネウロイが来たら……」
美緒「無論、リーネは戦力としては考えない」
芳佳「そんな……そんなことになったら……」
美緒「宮藤? どうかしたのか」
芳佳「そんなことになったら!! リーネちゃんがどうなるかわかりません!!」
美緒「なに?」
ミーナ「どういうこと?」
芳佳「私、探します。リーネちゃんのユニットを直す方法を」
ミーナ「宮藤さん、聞き分けのないことを言わないで」
芳佳「探します」
美緒「勝手にしろ。しかし、任務に支障がでるようであれば鎖で繋いでも営倉に入ってもらうぞ」
芳佳「はい。構いません」
美緒「分かった。では、好きにしろ」
芳佳「行ってきます」
ルッキーニ「あぁ! よしかぁー!! まってよー!!」
格納庫
芳佳「はぁ……はぁ……」
ルッキーニ「よしかぁ」
芳佳「ルッキーニちゃん……。追ってきたの?」
ルッキーニ「だって、急に走り出すから」
芳佳「ごめんね」
ルッキーニ「でも、どうしてあんなこといったのぉ? リーネが出撃できないのはユニットが壊れてる所為なんだよぉ」
芳佳「訓練でできたことが、実戦ではできないんだよね」
ルッキーニ「え……」
芳佳「だから、リーネちゃんは困ってる。苦しんでる」
ルッキーニ「うん、そうだと思う」
芳佳「だったら、実戦をもっと経験したいってリーネちゃんは考えていると思う。なのに、ここで出撃できないってことになったら……」
ルッキーニ「ユニットが壊れてるんだから、リーネだって納得すると思うけど」
芳佳「私はリーネちゃんを助けたい。苦しんでいるリーネちゃんを見たくなんてない」
ルッキーニ「わかった! あたしも手伝う!! やるぞー!!」
芳佳「ありがとう! ルッキーニちゃん!!」
ルッキーニ「あたしもリーネを助けたいもん!」
芳佳「だよね!」
ルッキーニ「じゃあ、まずはシャーリーにたのもー!!」
芳佳「うん!!」
ルッキーニ「シャーリー!!!」テテテッ
芳佳「シャーリーさーん!!!」テテテッ
ミーナ「よかったの?」
美緒「かけてみるさ。宮藤の強さにな」
ミーナ「けれど、修理する術がないんじゃ……」
美緒「ウィッチに不可能はない。それにだ、ここでリーネが早期に出撃できることになれば私たちも助かる」
ミーナ「美緒はリーネさんがより多くの実戦を望んでいると思う?」
美緒「どうだろうな。だが、リーネが焦っているのは確かだ」
ミーナ「貴女と同じように?」
美緒「……なんのことか、わからんな」
翌日 デ・ダナン 格納庫
宗介「ふむ……。どうするか」
かなめ「ふわぁぁ……ソースケ……おはよぉ……」
宗介「眠そうだな。低血圧は治っていないのか」
かなめ「寝不足もあるのよ。枕が変わると眠れないって本当だったわ」
宗介「寝苦しかったか? 大佐殿の部屋で寝たのだろう」
かなめ「そうだけどねー。ふわぁぁ……。で、なにしてんの?」
宗介「強化服の修理を試みようと思うのだが」
かなめ「したらいいじゃない」
宗介「こうなることは予想していなかったからな。手持ちの修理キットだけでは心もとない」
かなめ「ここにあるの拝借しちゃえば?」
宗介「それも考えた。だが、いつ元の世界に戻れるか分からない以上、艦のモノを俺の私物に使うわけにはいかない」
かなめ「そっか。補充もままならないもんね」
宗介「ああ。それゆえに困っている」
かなめ「うーん……。だったら、あの人に頼んでみたら? もしかしたら手を貸してくれるかもよ?」
501基地 格納庫
シャーリー「どう思う?」
エイラ「どう思うって、こんなにメチャクチャじゃ、どうしようもないだろ」
シャーリー「だよなぁ……」
エイラ「修理用の部品が届くまでは手を付けられないな」
シャーリー「それはなぁ……」
エイラ「なんかあるのか?」
シャーリー「昨日の夜、ルッキーニと宮藤に懇願されたんだよ。だから、なんとかしてやりたいんだ」
エイラ「無理なもんは無理だろ」
シャーリー「なんとか手に入らないか? 交換用の部品とかさ」
エイラ「自腹でなんとかするしかないな」
シャーリー「流石にユニットを直そうと思ったら、あたしだけの給料じゃあ……」
かなめ「おはよーございまーす」
エイラ「ん? たしか、千鳥だったか」
宗介「シャーリーはいるか?」
シャーリー「どうした、相良軍曹」
宗介「お前は確か機械工学の専門家だったな」
シャーリー「専門家っていってもあたしは……」
宗介「頼みたいことがある」
シャーリー「お前もかよ」
宗介「修理用の部品を分けてくれるだけで構わない」
シャーリー「それが一番難しいんだけどなぁ」
エイラ「おいおい。シャーリー。男と話してると中佐に怒られるぞ」
かなめ「だから、あたしがついてきたんだけどね」
エイラ「それでもあの中佐は納得しなさそうだけどな」
シャーリー「そっちの兵器には興味あるし、バラシてもみたいけど、今はこっちに手いっぱいなんだ」
宗介「それはなんだ?」
エイラ「ストライカーユニットだ。見た通り完全に壊れてるけど」
宗介「これが……」
かなめ「ウルトラマリンスピットファイア。癖は少なく基本性能が高い、ブリタニアの主力ユニットよね」
エイラ「あ、ああ。そうだけど、よく知ってるな」
かなめ「え? ああ、うん。その、ミーナさんに教えてもらって」
宗介「スピットファイヤといえば第二次大戦で活躍した戦闘機だ。何故、同じ名前がストライカーユニットにつけられている?」
かなめ「それは……」
かなめ(歴史が大きく変わった所為……でも、世界は同じだから……変わらないこともある……)
宗介「千鳥?」
かなめ「あ、ああ。大丈夫。なんでもないの」
かなめ(世界が同じ……? 何言ってんの? ここには魔法があるじゃない。あたしの世界には魔法なんてない。だから、この考えはおかしい)
かなめ(それは違う。1904年にネウロイが出現し、大きな時間災害が発生したの。そのとき、過去と未来が全て塗り替えられ――)
シャーリー「おい、千鳥。顔色悪いぞ」
かなめ「え……? そんなこと……」
エイラ「宮藤に診せてみるか。こっちにこい」
かなめ「あ、あたしは平気だから……」
エイラ「ダメダナ。病人にしか見えない」
宗介「待て。俺も行く」
>>195
宗介「スピットファイヤといえば第二次大戦で活躍した戦闘機だ。何故、同じ名前がストライカーユニットにつけられている?」
↓
宗介「スピットファイアといえば第二次大戦で活躍した戦闘機だ。何故、同じ名前がストライカーユニットにつけられている?」
食堂
リーネ「野菜、切れたよ」
芳佳「ありがとー。あとは私がやるからリーネちゃんは休憩してて」
リーネ「うん。お願い」
芳佳「さーて、味付けを――」
エイラ「宮藤!」
芳佳「エイラさん?」
エイラ「病人を連れてきた」
芳佳「病人!?」
かなめ「だ、大丈夫だっていってるんだけど」
芳佳「千鳥さん! どうかしたんですか!?」
エイラ「気分が悪くなったらしいんだ」
芳佳「わかりました!!」ピコンッ
かなめ「本当にいいのに。ありがと、芳佳ちゃん」
芳佳「そんな。私も好きでやってますから」
宗介「頼むぞ、宮藤」
芳佳「任せてください!!」
リーネ「……」
宗介「どうした、ビショップ」
リーネ「え!?」
宗介「お前も体調不良か?」
リーネ「いえ、そんなことありません」
宗介「そうか。怪我は大したことがなかったと聞いている」
リーネ「はい。脹脛に軽い火傷を負っただけですから」
宗介「兵士は任務をこなすことよりも生きて帰還することが重要だ。死んでしまっては意味がないからな」
リーネ「あ、はい」
宗介「それだけだ」
リーネ「……」
宗介「なんだ?」
リーネ「私の名前、知ってるんですね……少しびっくりして……」
宗介「お前たちのことは少し調べたらわかった。世界的にも有名な者たちが集う航空団のようだな」
リーネ「そこに私を入れられると、困るんですけど……。あの、あなたの名前は……?」
宗介「自己紹介をしていなかったか。俺は相良宗介。階級は軍曹だ」
芳佳「相良さんっていうんですか!」
リーネ「え、えっと、リネット・ビショップです!」
宗介「知っている」
リーネ「あ、すみません……」
エイラ「私のことも知ってるってことか」
宗介「お前はエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉だな。戦歴も素晴らしいものだ」
エイラ「まぁな」
宗介「宮藤もリーネも大きな戦果を挙げているようだな。精神的な部分に問題はあるにしろ、どうやら一流の兵士であることには間違いないようだ」
リーネ「い、一流だなんて!!」
芳佳「そんな風になっちゃってるんですか!?」
かなめ「まぁまぁ、周囲の評価なんて気にしちゃダメよ。いつの時代もマスコミっていうのは大げさにいうんだから」
宗介「それはあるかもしれないな。特にウィッチはこの世界の希望だ。周りの期待は嫌でも大きくなる」
リーネ「そう……ですね……」
宗介「正規軍にいればプロパガンダはついて回る。それに潰されないようにしろ」
リーネ「はい」
芳佳「わかりました!! エイラさん、ぷろぱがんだーってなんですか?」
エイラ「あとで教えてやる」
宗介「だが、ミーナ中佐も言っていた。501には優秀なウィッチしかいないと。上官や指揮官にそうした評価をもらっていることを誇りに思え」
リーネ「……」
かなめ「リネットちゃん?」
リーネ「あ、私のことはリーネで構いませんよ。みなさんもそう呼んでますから」
かなめ「そう。それじゃあ、そう呼ぶわね、リーネちゃん。あたしのことはかなめでいいから」
リーネ「はい、かなめさん」
宗介「千鳥、気分はどうだ?」
かなめ「うん。もう平気。元気いっぱいよ!」
宗介「そうか……」
芳佳「あの、朝ごはんがまだなら一緒にどうですか? 今から朝食の時間なんですけど」
デ・ダナン 艦長室
テッサ「カリーニンさんからはまだ何も届いてはいないようですね」
マデューカス「まだ10時間ほどしか経っていませんからな。勝手の違う土地では苦戦するでしょう」
テッサ「そうですね」
テッサ(私は慌てている。気を静めないと的確な指示を出せなくなるわ。気を付けないと)
マデューカス「ところで艦長。相良軍曹と千鳥かなめが501基地のほうへ向かったようですが、よろしかったのですか」
テッサ「はい。昨夜の一件で501のみなさんは警戒心をある程度緩和してくれたようですし、健全なお付き合いをさせてもらいましょう」
マデューカス「こちらの世界で生きていく上では、今のところ501を頼るほかありませんからな」
テッサ「そういうことです」
マデューカス「とはいえ、我々と501が友好的な関係を結ぶと新たな懸念を抱くことになります」
テッサ「ええ。確かに」
マデューカス「そのとき艦長はどうするおつもりですか」
テッサ「……」
テッサ(問題点はまだあるわ。そうした事態に陥った時、私かかなめさんが……)
テッサ(いいえ。何が起こってもかなめさんの身の安全は絶対に守らないと。世界が違うために予測できなかったなんて言い訳はできないもの)
501基地 食堂
シャーリー「駄目だー。どうしても足りない部品が出てくる」
ルッキーニ「シャーリー! おっはよ!」
シャーリー「おはよう、ルッキーニ」
ルッキーニ「どうどう?」
シャーリー「すぐには出来ないんだ。もう少し待ってくれないか」
ルッキーニ「うじゅっ! シャーリー、がんばってね!」
シャーリー「おう。任せとけ」
バルクホルン「安請け合いをするから自分の首を絞めることになるんだぞ、リベリアン」
シャーリー「うるせえよ」
ペリーヌ「おはようございます」
エーリカ「ごっはんだー、ごはんー。あれ?」
かなめ「あ、お先に頂いてます」
芳佳「どうですか?」
宗介「美味い。コンバット・レーションではまず味わえないな。素晴らしい」
ペリーヌ「何故、ここに男性がいるのかしら、宮藤さん?」
芳佳「かなめさんが気分を悪くしたっていうんで、相良さんはその付き添いで来ただけですけど」
ペリーヌ「千鳥さんは元気に朝食を食べているようですが?」
かなめ「芳佳ちゃんが治してくれたのよ」
ペリーヌ「では、もう体調不良ではないと。それならここにいる理由はありませんわよね」
宗介「肯定だ」
かなめ「ソースケ!」
ペリーヌ「ただちに退席してくださいな」
芳佳「ペリーヌさん!! そんなこと言わなくてもいいじゃないですか!!」
ペリーヌ「男性との私的な接触は禁ずる。ミーナ中佐が決めたことですわ。文句があるのなら中佐にどうぞ」
リーネ「で、でも……あの……」
宗介「俺がここを出ればいいのだろう? 千鳥はまだ朝食を摂っている。見逃してくれ」
ペリーヌ「千鳥さんのみなら、問題はありませんわ」
宗介「よかった。ならば、俺はここを離れよう。感謝する、宮藤。実に美味かった」
芳佳「あ、相良さん……」
ルッキーニ「バイバーイ、ソースケぇ」
宗介「ああ」
ペリーヌ「さてと、朝食にいたしましょう」
芳佳「ペリーヌさん、酷いです」
ペリーヌ「規律は守るためにある。そんなことも知らないの?」
芳佳「……」
かなめ「性格、きっついわね」
ペリーヌ「軍人としての心構えの話ですわ」
かなめ「ソースケはあたしのためにここまでついてきてくれたの。それにここに行こうって誘ったのもあたし。ソースケは何も悪くないわ」
ペリーヌ「誰が悪いだとかどうでもいいことですわ。ここに男性がいて、ウィッチと会話している。それが問題なのですから」
かなめ「だからって……!!」
エーリカ「イェーイ、今日の朝ごはんも扶桑食だー」
かなめ「な……」
エーリカ「いただきぃ!」
バルクホルン「ハルトマン……お前、場の雰囲気をだな……」
シャーリー「あいつらはリーネのことを救ってくれたんぞ。あんな言い方はないんじゃないか」
ペリーヌ「それとこれとは別ですわ」
エイラ「まぁ、男と話してたら怒られるけどなー」
かなめ「……ごちそうさま。芳佳ちゃん、ありがとう」
芳佳「は、はい」
かなめ「それじゃ」
リーネ「はい、また機会があれば食べにきてください」
かなめ「うんっ」
エーリカ「おいひぃ」
バルクホルン「強引すぎたのではないか。問題を先送りにしただけだ」
エーリカ「トゥルーデならどうしたのさ」
バルクホルン「それは……」
エーリカ「それにトゥルーデだって、ペリーヌの意見には賛成なんだろ」
バルクホルン「まぁ、な。ペリーヌが私と同じ考えなのかは分からないが」
ペリーヌ「ふんっ」
廊下
かなめ「ソースケ、どこにいるんだろう。格納庫のほうまで行っちゃったのかな」
かなめ「ん?」
サーニャ「うぅ……」
かなめ「誰か倒れてる!? ちょっと!! 大丈夫!?」
サーニャ「すぅ……すぅ……」
かなめ「なんだ……寝てるだけ……。あのー、ここで寝てたら風邪ひくわよー。ただでさえ、寒そうな恰好してるのに」ペチペチ
サーニャ「ん……え……?」
かなめ「起きた?」
サーニャ「すぅ……すぅ……」
かなめ「寝るんじゃない!!」
サーニャ「あ、すみません……ちゃんと自分のベッドでねま……すぅ……すぅ……」
かなめ「こりゃ、ダメそうね。ええと、どうしたらいいのかしら」
かなめ(この子の部屋ってどこかしら。食堂に戻れば早いんだろうけど、今戻りたくないしなぁ)
サーニャ「エイ……ラ……どうして……わたしの……ズボン……もって……る……の……すぅ……すぅ……」
サーニャ(あれ……? 私……どうして……)
「ここかしら……? いや、違うっぽい」
サーニャ(誰……? 私、誰かの背中に……)
「んー? ここかなぁ」
サーニャ「あ……猫……」
かなめ「おはよ。おきた?」
サーニャ「あな、たは……?」
かなめ「千鳥かなめ。あの潜水艦からやってきました」
サーニャ「あ、はい。ミーナ隊長から話は伺っています」
かなめ「そう。貴女のことはなんて呼べばいい?」
サーニャ「サ、サーニャで」
かなめ「よし。んじゃ、サーニャちゃんの部屋ってどこにあるの?」
サーニャ「え? もしかして、千鳥さんは私を部屋まで運ぼうとしてくれたんですか」
かなめ「うん。廊下でサーニャちゃんが寝てるんだもん。びっくりしちゃったわよ」
サーニャ「ごめんなさい。いつも部屋を間違えたり変なところで寝ていたりして……」
かなめ「あはは。寝相が悪いっていえばいいのかなぁ」
サーニャ「いえ、寝ぼけているだけです」
かなめ「この部屋?」
サーニャ「違います。もう少し、向こう」
かなめ「こっちね」
サーニャ「……あ、降ろしてください。一人で歩けますから」
かなめ「いいのよ。サーニャちゃん、軽いし」
サーニャ「でも……」
かなめ「廊下で寝てるぐらいだし、疲れてるんでしょ。このまま背負って部屋までいくから」
サーニャ「すみません」
かなめ「こっちだって色々と迷惑かけちゃってるからお互い様よ」
サーニャ「……」
かなめ「あの、息が首筋にかかるんだけど。何みてるの?」
サーニャ「千鳥さんの猫のイヤリング、可愛いなって」
かなめ「ああ、これ? いいでしょ。プレゼントしてもらったの」
サーニャ「こんなデザインのものがあるんですね」
かなめ「非売品よ。あたしのために作ってくれたんだ」
サーニャ「そうなんですか。こんなに可愛いものを作ってくれるなんて、その人は千鳥さんのことが大好きなんですね」
かなめ「え!? い、いやいやいや!! これはデザインで本来の用途を隠すためだーとか言ってるぐらいで、別にそういうことはないって!!」
サーニャ「そうですか? 私の大事な友達はいつも私のために色々と贈り物をしてくれるんですけど、いつも一生懸命選んでくれたことがすぐにわかるんです」
かなめ「へぇ。いいお友達ね」
サーニャ「私の好きなもの、気に入りそうなものを時間をかけて選んでくれる……。だから、なんとなくわかります。このイヤリングも、貴女のためを思って贈ったものだって」
かなめ「うーん……それはそうなんだけど……。あいつの場合は、少しズレてるっていうか、的を絶妙に外しているというか……」
サーニャ「こうして身に着けているってことは、千鳥さんは気に入っているんですよね?」
かなめ「いや、気に入ってるわけじゃないんだけど。うは、うははは」
サーニャ「ふふっ。大事にしてあげてください」
かなめ「ああ、うん。するする」
サーニャ「あ、ここです」
かなめ「ここがサーニャちゃんの部屋? はい、到着」
サーニャ「ありがとうございます、千鳥さん。このお礼は必ずします」
執務室
ミーナ「どういうことですか?」
美緒「……」
ミーナ「私たちは軍務に従事し、ネウロイから空を守っています。これ以上、戦果を出すなと仰るのですか」
『何もそうは言っていない。君たちにも休養が必要だろうと我々は判断したまでだ』
ミーナ「体調には常に気を遣い、皆には適度に休暇を与えています。必要はありません」
『これは決定だ。従いたまえ』
ミーナ「いくら軍上層部の決定でも、従えないものもあります」
『君たちが保護している潜水艦。知らないとでも思っているのかね』
ミーナ「何のことかわかりかねます」
ミーナ(どこでそれを。まだ24時間も経過していないのに……)
『こちらの命令に従えないというのならば、然るべき処置をとらなくてはな』
ミーナ「何を……」
『異物を抱えている君たちを解散に追い込むことなど、造作もないということだ』
美緒(何を言われているのか、ミーナの顔を見るだけでわかるな。トレヴァー・マロニー、余計なことをしてくれる)
ミーナ「分かりました。従います。ええ、それでは」
美緒「出撃するなと言われたか」
ミーナ「いいえ。501は7日間の休暇をとるように言われただけよ。その間は一切任務につくことは禁止するって」
美緒「ほう。上層部も粋なことをしてくれるな。はっはっはっはっは」
ミーナ「一部の人は喜びのあまり怒り狂うでしょうね」
美緒「他には何か言っていたか」
ミーナ「デ・ダナンのことを既に掴んでいるようね」
美緒「ふむ。それを交渉のカードに使うとなると、ミスリルが敵対組織という線は完全に消えたな」
ミーナ「けれど、あの潜水艦がいる限り、私たちは世界中を敵に回すことになるかもしれない」
美緒「タカ派は私たちをテロリストにでも仕立て上げる気か? もはや暴走だな」
ミーナ「ダウディング大将から代わってからはブレーキ役が不在だもの」
美緒「どうする? テスタロッタ大佐には出て行ってもらうか」
ミーナ「指揮官としてはそうしたいわね。坂本少佐はどう考えるの?」
美緒「ここで奴らを大海へ追い出せば、それこそ奴らの思うつぼだ。ダナンのことを掴んでいるということは、昨夜の戦闘のことも既に知っていると思ったほうがいい」
ミーナ「デ・ダナンと人型兵器であるASを対ネウロイ兵器として運用するつもりでしょうね。確かにウィッチに頼らずともネウロイは殲滅できる。でも、その先にあるのは……」
>>215
美緒「ここで奴らを大海へ追い出せば、それこそ奴らの思うつぼだ。ダナンのことを掴んでいるということは、昨夜の戦闘のことも既に知っていると思ったほうがいい」
↓
美緒「ここでミスリルを大海へ追い出せば、それこそ奴らの思うつぼだ。ダナンのことを掴んでいるということは、昨夜の戦闘のことも既に知っていると思ったほうがいい」
格納庫
宗介「うーむ。見れば見るほど、不思議な兵器だ。これを履いて空を飛ぶなどと……」
芳佳「さがらさーん」
宗介「どうした、宮藤」
芳佳「えっと、さっきはごめんなさい。ペリーヌさんって厳しいことを言うことが多いんですけど、でも、それは意地悪ってわけじゃなくて……」
宗介「わざわざそんなことを言いに来たのか。クロステルマン少尉の言い分は至極当然のものだ。何も問題ない」
芳佳「そ、そうですか? 私は、あんな言い方ないと思うんですけど」
宗介「上官の決めた規律を遵守する。兵士としては当たり前の行動だ」
芳佳「あんな規律、おかしいです。男の人と喋っちゃっいけないなんて」
宗介「疑問に思うのならば、変えるしかない。ただし、武力での反抗や、ただ規律を犯すだけでは三流以下だ」
芳佳「だったら、どうしたら変わるんですか」
宗介「お前が上官をも黙らすほどの実績と結果を叩き出せばいい」
芳佳「そんなの……まだ無理ですよぉ……」
宗介「そう思うのならば、どうしても譲れないもの、ということではないのだろう」
芳佳「確かに、今のところ男の人と自由に話せなくて困ったこととかはないですけど」
>>217
宗介「わざわざそんなことを言いに来たのか。クロステルマン少尉の言い分は至極当然のものだ。何も問題ない」
↓
宗介「わざわざそんなことを言いに来たのか。クロステルマン中尉の言い分は至極当然のものだ。何も問題ない」
宗介「俺から言えることは以上だ。クロステルマン中尉の発言に対して気分を害してもいない。気にするな」
芳佳「わかりました。相良さんって、優しいんですね」
宗介「そうか? 思ったことを口にしているだけなのだが。それはそうと、宮藤。このストライカーユニットのことなのだが」
芳佳「私のユニットに何かあるんですか?」
宗介「これは宮藤のものか。丁度いい。お前はこれを履いているわけだな?」
芳佳「そうですよ?」
宗介「うーむ……」
芳佳「あの、私の足になにか……」
宗介「宮藤はシャーリーやバルクホルン大尉に比べれば足が短い」
芳佳「えぇぇぇ!? いきなりなんですか!? 確かに短いですけど!!」
宗介「だが、足がいくら短いと言えど、ユニットの底が浅すぎて物理的に履くことなど不可能だ。どうやって履いているんだ?」
芳佳「えっと、そのあたりのことはよくわからないんですけど、足は別の空間にいっちゃうみたいなんです」
宗介「別の空間だと? それも魔法の力か」
芳佳「はいっ。多分」
宗介「魔法とは便利なものだな」
かなめ「おーい、ソースケ」
宗介「千鳥、遅かったな」
かなめ「色々あってさ。友達が増えたわ」
宗介「それは良いことだな」
芳佳「かなめさん。食堂ではごめんなさい」
かなめ「いーの、いーの。ペリーヌちゃんは真面目なだけなんでしょ。あたしもあんな返し方して悪かったなって。あとでまた謝りにいかないと」
芳佳「かなめさん……」
かなめ「ソースケはどうするの?」
宗介「シャーリーも部品を分けることは難しいと言ってたしな。ここにいる意味がない。千鳥さえよければダナンへ戻ろうと思う」
かなめ「オッケー、それでいいわよ。戻りましょ」
宗介「了解した。宮藤、世話になったな」
芳佳「いえ、こちらこそ」
かなめ「またね」
芳佳「はい!」
芳佳(二人とも良い人だなぁ……。あ、ぼんたくんのこと聞けばよかった……今はどこにあるんだろう……)
デ・ダナン 格納庫
マオ「どうよ、クルツ。外の様子は」
クルツ『不思議なもんだな。慣れっていうのは』
マオ「もうこっちに順応できたの? それぐらいじゃないとミスリルではやってけないけどねぇ」
クルツ『可愛い女の子たちがみんなしてパンツを丸出しにしてるのに、もうそれだけじゃ満足できなくなってる自分がいる。やっぱり、恥じらいってのが大事なんだな』
マオ「なんの話をしてるのよ」
クルツ『わぁーってるよぉ。朝方はルッキーニちゃんとエイラちゃんがこっちを監視していたようだが、今はもういねえ。エーリカちゃんが外にいるけど、ありゃ寝てるだけだ』
マオ「訓練をよくサボるらしいからねえ、黒い悪魔さんは」
クルツ『俺たちのこと、信頼してくれたみたいだな。501の魔女たちはよ』
マオ「501は、か。その言い方だとまだ信頼してくれない奴らがいるみたいだね」
クルツ『ああ。昨日からだが、結構な人数に見られてるな。俺たちだけをってわけじゃないが』
マオ「覗き魔はクルツだけじゃなかったわけだ」
クルツ『501には敵が多い、ねぇ。人間が一丸となれる世界ってのは異星人を相手にしてても無理なんだろうな』
マオ「そういうのは映画の世界だけさ。異星人を相手にする映画も某国贔屓のが多いけど」
クルツ『エンターテイメントならたとえクリシェでも面白い。でも、現実にやられちゃ、たまったもんじゃないぜ」
501基地 滑走路
エーリカ「すかー……すかー……」
バルクホルン「起きろ、ハルトマン」
エーリカ「ん? なにぃ? もう交代の時間?」
バルクホルン「お前は2時間の監視任務だったな」
エーリカ「そーだけど?」
バルクホルン「何時間、寝ていた?」
エーリカ「えっと、多分、2時間ぐらいじゃない?」
バルクホルン「……」
エーリカ「さーてと、そろそろおやつの時間だー」
バルクホルン「待たんかぁぁぁ!!!」
エーリカ「今からバルクホルン大尉が監視につくはず。そこを動いてもいいのですか?」キリッ
バルクホルン「うぐっ……」
エーリカ「と、いうわけで、あとはよろしくぅ、トゥルーデ」テテテッ
バルクホルン「あとで覚えていろぉぉぉ!!! ハルトマァァァン!!!」
エーリカ「ふんふふーん、お菓子が私を待っているー」
美緒「ご苦労だったな、ハルトマン。ゆっくり休め」
エーリカ「どうもどうも」
美緒「何か見えたか?」
エーリカ「潜水艦の上に人型兵器がずっといるっぽいね。よくわかんないけど、透明になれるみたいだ」
美緒「どうやってそれを認識した」
エーリカ「風の流れが変わる。透明になっても実体はあるからね」
美緒「それはこちらの様子を伺っているようだったか?」
エーリカ「そうじゃない? ルッキーニやエイラに視られていたなら気分もよくないし、向こうだってそれぐらいはするよ」
美緒「そうだな。他には?」
エーリカ「いろんな奴らに見られてるよ。デ・ダナンのこともそいつらが上層部に教えたんじゃない?」
美緒「普段から我々は覗かれていたわけか」
エーリカ「他にも基地内に間諜とはいるだろうけど」
美緒「体制が変わってからやりにくいな、全く」
エーリカ「で、7日間の休暇は何しててもいいだよね?」
美緒「それは構わん。休暇だからな」
エーリカ「やったね! 寝放題だ!」
美緒「明日から一切軍務に就くことを禁じず。しっかり休めよ」
エーリカ「りょーかーい! わーい! おやすみだー」
美緒「ふむ……」
美緒(ネウロイばかりに注視していた所為で気づくのが遅れたな。マロニーめ、いつから我々を見張っていた……)
美緒「やれやれ。問題が山積しているな」
リーネ「うんしょ……」
美緒「リーネ、銃器をどうするつもりだ」
リーネ「あ、その。今日の任務が終わったので、自主訓練をしようかなって……」
美緒「明日もか?」
リーネ「だ、ダメですか? 一応、ミーナ中佐からは許可を頂いたんですけど……」
美緒「いや、何も咎める気はない。満足いくまでやればいい。無理はするなよ」
リーネ「大丈夫です。それに今はユニットがないですし、明日からはお休みですから」
美緒「……何事もほどほどにな」
>>225
美緒「明日から一切軍務に就くことを禁じず。しっかり休めよ」
↓
美緒「明日から一切軍務に就くことを禁ずる。しっかり休めよ」
訓練場
リーネ「……」ジャキン
リーネ(ユニットが壊れたのも私が未熟だから。あのとき、ネウロイに当たっていれば、あんなことにはならなかった)
リーネ(もっと、もっと強くならなきゃ……)
リーネ「ふっ!」バァァン
ルッキーニ「リーネー」
リーネ「あ、来てくれたんだ」
ルッキーニ「中佐からきいたんだー。またおしえてあげりゅ」
リーネ「うん。お願いします、先生」
ルッキーニ「よぉーし、ルッキーニ先生にまっかせなさーい」
リーネ「ふふっ」
ルッキーニ「にゃはは」
リーネ(心配してくれてるルッキーニちゃんのためにも……)
リーネ(私は……)
ルッキーニ「それじゃあ、昨日の復習からー」
廊下
芳佳「……」
エーリカ「心配してるのかい?」
芳佳「え……。ハルトマンさん。びっくりするじゃないですかぁ」
エーリカ「どーなの?」
芳佳「心配です。リーネちゃんが体を壊しちゃうんじゃないかって」
エーリカ「追い込まれてるよね、リーネ。結果は出ないし、成果もない。新人にはよくあることだ」
芳佳「でも、リーネちゃんは……!」
エーリカ「一回だけの成功じゃ、本人は満足しないって」
芳佳「まだ新人なんだし、それが普通じゃないんですか?」
エーリカ「新人だからできなくて当たり前。新人だからやれなくても仕方ない。そういうこと?」
芳佳「そうです」
エーリカ「宮藤。リーネのこと、もう少しちゃんと見てあげたほうがいいよ」
芳佳「どういうことですか……」
エーリカ「リーネが焦ってるのは戦果がないことじゃない。宮藤には自力で気づいてほしいな」
芳佳「そんなこと言われても」
エーリカ「あとは自分で考えること。これは宿題だ」
芳佳「あ、待ってください!!」
エーリカ「またないよー。エーリカちゃんはこれからお菓子をたべるからー」
芳佳「……」
芳佳「リーネちゃん……」
芳佳「なんだろう……私は間違ってるのかな……」
芳佳「リーネちゃんをどう応援してあげれば……」
サーニャ「芳佳ちゃん」
芳佳「おはよう、サーニャちゃん」
サーニャ「おはよう。どうかしたの?」
芳佳「ここからリーネちゃんを見てたんだ」
サーニャ「また訓練してる。リーネさんはえらいわ」
芳佳「うん……」
サーニャ「芳佳ちゃん、手が空いているなら手伝ってほしいことがあるの。いい、かな?」
デ・ダナン 艦長室
テッサ「飲み物でもどうです?」
かなめ「もらおうかな」
テッサ「では、少し待っていてくださいね」
かなめ「あたしに話ってなんなの?」
テッサ「かなめさん、こんなことに巻き込んでしまって、申し訳なく思っています」
かなめ「ソースケにも言われたけど、気にしてないから。もう異常に巻き込まれるのも慣れたもんよ」
テッサ「今から話すことは、今後についてです」
かなめ「今後って?」
テッサ「最悪の場合、この世界で骨を埋めることになるかもしれません」
かなめ「そんなことわかってるわよ。けど、テッサは元の世界に戻る術を探しているんでしょう。今日一度もカリーニンさんを見てないのも、そういうことなんでしょ」
テッサ「流石です、かなめさん。カリーニンさんには無理を言って、とあるものを探してもらっています。見つかるかどうかは分かりませんが、何もしないわけにはいきませんので」
かなめ「見つからなかったら?」
テッサ「見つけてみせます。どんな手段を講じても」
かなめ「なら、最悪の事態なんて万が一にも起こんないでしょ。テッサがそれだけ本気ならね」
テッサ「いいえ。万が一どころか、高い確率で起こると私は考えています」
かなめ「どうして?」
テッサ「ウェーバーさんの報告によれば、ダナンの存在は既にこの世界の軍に知られているとのことです」
かなめ「どこまで知られちゃってるの?」
テッサ「昨夜のM9によるネウロイへの射撃も見られているはずです」
かなめ「あちゃ……」
テッサ「ウェーバーさんを責めることはできません。あの行動がなければ、いつか501には見捨てられていたことでしょうから」
かなめ「リーネちゃんを守ったことが、結果的に艦も守ったってことね」
テッサ「ええ。この世界、この時代の戦艦ではこの子に到底敵いませんが、交戦をすれば私たちはテロリストとして認識されてしまう。補給もできないし、いつかは捕まってしまうでしょう」
かなめ「今はミーナさんや坂本さんが庇ってくれてるわけ?」
テッサ「あれから何も言ってこないということが何よりの証明です。私たちの監視もなくしたようですし」
かなめ「大迷惑をかけちゃってるわね」
テッサ「とはいえ、私たちがここから離れるわけにはいきませんし」
かなめ「あ、もしかして、最悪の事態が起こる可能性が高いのって」
テッサ「501が軍上層部から圧力を加えられる可能性は高い。私たちはここから動けないですから、圧力をかけられた時点で起こるのは、ダナンの接収及び乗組員の拘束、でしょうね。最悪です」
かなめ「そのときはどうするのよ」
テッサ「だからこそ、早急に元の世界へ戻る術を見つけなければいけません。けれど、近いうちに最悪の事態は起こってしまう」
かなめ「……」
テッサ「そのときは、相良さんと共に逃げてください」
かなめ「な……」
テッサ「貴方はミスリルの隊員でもなけば、軍人でもありません。ただの民間人です。艦を離れ、501へ逃げ込めば拘束はされないでしょう」
かなめ「で、でも……」
テッサ「そのあとのことは相良さんと考えてください。私にできるのは逃がすまでですから」
かなめ「テッサたちはどうなっちゃうのよ」
テッサ「分かりません。ただ、宮藤一郎さんと同じ道を歩むことになるでしょうね」
かなめ「どうして?」
テッサ「まだ確証はありませんが、私たちが追っていた保護対象者は宮藤一郎さんだと考えています。ユニットの生みの親、飛行脚の研究資料等から照らし合わせてもほぼ同一人物かと」
かなめ「つまり、テッサはネウロイと戦うための兵器を作るってこと?」
テッサ「ウィッチ以外にでも使える兵器を作らされるでしょうね。そうなれば人間はネウロイを脅威とは感じなくなるでしょう。そしていずれはネウロイが世界から消える。そのあとは……」
かなめ「戦争が起こる。ラムダ・ドライバを搭載したASやストライカーユニットを装備したウィッチ同士での戦争が……」
テッサ「これ以上にない最悪の結末です。私は自決すら考えるかもしれません」
かなめ「そんなことしちゃだめよ!! 何か方法があるはずよ!!」
テッサ「ええ。自殺など責任放棄もいいところだわ。考えはしても私は絶対にそんな手段は選びません」
かなめ(けど、テッサならきっとそんな道も選んでしまう。本当にどうにもならなくなったら……)
テッサ「そうならないためにかなめさんと相良さんには逃げてほしいのです。一縷の望みとして」
かなめ「……」
テッサ「無論、簡単に捕まる気もないですし、ダナンにもみなさんにも指一本触れさせる気はありません」
かなめ「自分には触れさせても?」
テッサ「それが艦長としての役目です」
かなめ「そうかな……」
テッサ「決して諦めではありません。これが最善です」
かなめ「ねえ、テッサ。友人としてのお願いがあるの」
テッサ「はい。なんでしょうか」
かなめ「あたしに何ができるってわけじゃないけど、一緒に戦うから。テッサが捕まったら、助け出すから。だから……」
テッサ「はいっ。信じています。いえ、かなめさんを疑うこと自体あり得ませんから」
501基地 デ・ダナン 停泊地
サーニャ「どこから入れるのかしら……?」
芳佳「すみませーん!!! 相良さんかかなめさんはいますかー!!」
サーニャ「あのー……」
芳佳「聞こえないのかな? 呼び鈴とかあればいいのに」
サーニャ「そうね」
芳佳「折角作ったのに、冷めちゃうよね、サーニャちゃんのボルシチ」
サーニャ「……」
『誰かと思ったら、芳佳ちゃんとサーニャちゃんか。何か用か?』
芳佳「だ、誰!?」
サーニャ「……」ピコン
『俺の声を忘れちまったか? かなしいねぇ』
芳佳「も、もしかして、オバケ……!?」
サーニャ「ここに何かいるわ」コンコン
『あんまり叩かないでくれ。――ECS不可視モード解除』
芳佳「わぁ!?」
M9『よう、こんばんは。かなめはちょっと野暮用ですぐには出てこれないが、ソースケなら今すぐ出してやれるぜ』
サーニャ「こんばんは」
芳佳「あのー、サーニャちゃんが今朝のお礼にってボルシチを作ったんですけどー!!」
M9『何かしったけか』
サーニャ「千鳥さんに、色々と……その……」
M9『まぁ、いいや。少し待ってな』
サーニャ「芳佳ちゃんの知ってる人?」
芳佳「この声はきっとクルツさんじゃないかな。リーネちゃんを助けてくれたっていう」
サーニャ「リーネちゃんを……。ボルシチ、もう一つ作ればよかった……」
宗介「待たせたな」
芳佳「あ、相良さん」
サーニャ「あ、あの……これ……たべて……ください……」
芳佳「今日、かなめさんがサーニャちゃんと助けてくれたみたいなんです。それでお礼にって」
宗介「千鳥が言っていた新しい友人とは君のことか」
>>235
M9『何かしったけか』
↓
M9『何かしたっけか』
サーニャ「友人……? 私が、千鳥さんの……?」
宗介「千鳥はそう言っていたが……。そうか、君はそう思っていなかったのか。分かった。このことは俺と君だけの秘密にする。事実を知れば千鳥が悲しむからな」
サーニャ「え……」
宗介「残念だが、そういうこともあるだろう」
サーニャ「あ……あの……あの……」オロオロ
芳佳「違います!! サーニャちゃんは驚いているだけです!!」
宗介「どういうことだ?」
芳佳「急に友達ができてびっくりしているんです! ね、サーニャちゃん!!」
サーニャ「……」コクコクッ
宗介「何故、驚くのか理解はできんが、君も千鳥のことを友人と認定したわけだな」
サーニャ「は、はい。千鳥さんがいいというなら、友人になりますっ」
宗介「分かった。千鳥にはそう伝えよう。用件はそれか?」
芳佳「いえいえ、サーニャちゃんが差し出したものが一番重要なんです!」
宗介「これは?」
サーニャ「私が作ったボルシチです……その……よかったら……」モジモジ
艦長室
宗介「――という経緯で入手した」
かなめ「そうなんだ……。あんなことでここまで……」
宗介「千鳥、不安なら毒味をするが」
かなめ「余計な気遣いは結構よ。サーニャちゃんが毒を盛るなんてありえないでしょ」
宗介「君は甘いな。年端もいかぬ少女が人殺しの道具にされるケースは頻繁にある」
テッサ「でも、相良さんはまだ毒味をしていないんですよね」
宗介「肯定です」
テッサ「それはどうして?」
宗介「千鳥を狙うのなら、今朝の時点で事を済ませているからです」
テッサ「なるほど。相良さんも彼女たちに対しては警戒心などないということですね」
宗介「彼女たちは信頼に足る者たちだと判断しています」
テッサ「はい。相良さん、よくできました」
宗介「お褒めに預かり光栄です」
かなめ「とりあえず、食べましょうか。いただきまーす」
501基地 格納庫
芳佳「渡せてよかったね」
サーニャ「ありがとう、芳佳ちゃん。芳佳ちゃんがいなかったらボルシチが冷めてたかも」
芳佳「あはは。そんなことないよ。サーニャちゃんだけでも渡せてたと思う」
サーニャ「そろそろ時間。夜間哨戒にいかなきゃ」
芳佳「え? そうなの?」
サーニャ「え? どうして?」
芳佳「あれ?」
サーニャ「ん?」
バルクホルン「サーニャ、探したぞ」
サーニャ「すみません。潜水艦のほうに行っていました。すぐに夜間哨戒を開始します」
バルクホルン「いや。それは中止だ」
サーニャ「中止?」
芳佳「あ、そっか。サーニャちゃんはまだ知らないんだ」
バルクホルン「第501統合戦闘航空団は7日間の休暇に入る。その間は一切任務を遂行するなとの命令だ」
廊下
サーニャ「ミ、ミーナ隊長」
ミーナ「サーニャさん、どうかしたの?」
サーニャ「あの、聞きました。7日間も休暇を命じられたって……」
ミーナ「ええ。そうよ。1週間、夜間哨戒もしなくていいわ」
サーニャ「この間にネウロイが出現したら?」
ミーナ「他の航空団、並びに飛行隊が殲滅を行うことになるわね」
サーニャ「でも、ここを突破されたらブリタニアが……」
ミーナ「そうね」
サーニャ「もう、あんな悲しいことになるのは嫌です」
ミーナ「これは上層部の決定なの」
サーニャ「そんな……」
ミーナ「ごめんなさい。この機会にゆっくり休んで」
サーニャ「そんな……そんなの……」
ミーナ「以上です。おやすみなさい」
デ・ダナン 格納庫
クルツ「おっかしいなぁ」
宗介「どうかしたのか」
クルツ「サーニャちゃんだよ、サーニャちゃん。情報では毎晩夜間哨戒をするはずなのに、今晩はまだ飛んでねえ」
マオ「お休みなんじゃないのー?」
クルツ「だとしたらエイラちゃんが飛ぶはずなんだよ。このワールド・ウィッチーズっていう本を読む限りじゃな」
マオ「それなによ」
宗介「俺が手に入れた情報誌だ。ウィッチのことが事細かに書いてある」
マオ「さっすが、勤勉ね」
宗介「この世界にもこの手の雑誌が存在していて助かる」
クルツ「んなことはどーでもいいんだよ。問題はサーニャちゃんが飛んでねえってことだ」
宗介「ふむ。確かにナイト・ウィッチと呼ばれる魔女は世界でも希少であり、夜間哨戒任務は必ず行うものと書いてあったな」
クルツ「なんか、いやーな予感がするぜ」
宗介「実はいうと俺も気になることがある。トップエースを集め結成されたのが501のはずだな」
マオ「あたしもそう聞いてるけど。それがどうかしたの?」
宗介「ストライカーユニットを修理すらできないようだった」
クルツ「そりゃ、修理できるだけの材料がなかったからだろ」
宗介「シャーリーはそう言っていた。だが、そもそもそれがおかしい」
マオ「前線基地にして最後の砦と言われるんだったら、装備は常に揃えておかないとね」
宗介「そうだ。装備品の修理に即日手を付けられないなど、前線基地としては失格だ。野営地ならまだしもここには人員も揃っているというのに」
クルツ「ユニットはウィッチにとって命みたいなもんだろ。真っ先に修理できなきゃおかしいか」
マオ「ソースケ、もし明日になってもリネットのユニットが直らなかったら、どうしてだと思う?」
宗介「補給が間に合っていないということになるだろう」
クルツ「前線基地にはあるまじきことだぞ」
宗介「そうだな」
マオ「僻地の貧乏部隊ならいざ知らず、こんな立派な建物を基地にしてるのにねぇ」
宗介「ミーナ中佐が言っていたな。人間の敵も多いと」
マオ「嫌がらせね。あたしたちの世界にもあるある」
宗介「下らんことをする」
マオ「501を動けなくすると、謎の潜水艦がどう動くのか。自由研究の課題にはもってこいよね」
クルツ「どこの糞野郎だよ」
マオ「ウィッチのことが大嫌いなんじゃないの? 過去にフラれたとみた」
クルツ「それ当たってるぜ、絶対」
マオ「でしょ?」
宗介「……」
マデューカス「お前たち、何をしている」
マオ「どーも、中佐。ちょっとした雑談ですよ」
マデューカス「今、外に客人が来ている」
宗介「客人ですか」
マデューカス「坂本美緒少佐だ。ウェーバー軍曹、君に用があると言っている」
クルツ「マジで!? ちょっと部屋の掃除をしてくるか。あとベッドのシーツも換えておかないとなぁ!」
マデューカス「バカモノ!! 彼女たちに手を出すなど言語道断だ!!」
マオ「中佐、あたしたちもついていますから、ご安心を」
マデューカス「ともかく、間違いはないようにな」
クルツ「ぐっふっふっふ。でも、隙さえあれば……」
美緒「すまんな。こんな時間に」
クルツ「いいんだぜぇ、美緒のためならいつでも時間をあけてるって言っただろ?」
美緒「だから、こうして来たのだ」
マオ「いいの? ミーナ中佐が黙っていないと思うけど」
美緒「ミーナの目は盗んできた。問題はない」
宗介「クルツに用があるとのことだが」
美緒「ああ、その通りだ」
クルツ「なんでも言ってくれ、美緒」
美緒「クルツ、お前を見込んで頼みたいことがある」
クルツ「美緒。俺はこの世界で死ぬ決意をした。心配ねえ」
美緒「お前……」
クルツ「俺は本気だぜ、美緒」
美緒「お前のように男気ある者は久しぶりだ」
クルツ「惚れ直したかい?」
美緒「うむ。そうだな。遠慮なく依頼ができるというものだ」
翌日 明朝 訓練場
リーネ「うんしょ……」
リーネ(がんばろう……がんばらなきゃ……もっと……)
ドォン!!
リーネ「え?」
クルツ「ひゅー、命中だ。やっぱり、俺って天才だな」
ルッキーニ「おぉー、クルツ、やるじゃん」
クルツ「だろ? 惚れるよな?」
ルッキーニ「にゃんで?」
リーネ「あ、あの……」
クルツ「おはよう、リーネちゃん」
リーネ「クルツ、さん、でしたね。えっと……」
クルツ「そうです。俺がリーネちゃんの臨時講師となったクルツ・ウェーバーです。親しみを込めて、クルツくんって呼んでくれてもいいぜ」
ルッキーニ「クルツくんっ」
クルツ「あと5年なんだよ、ルッキーニちゃんは。ホントーに残念だ」
リーネ「どういうことですか?」
クルツ「今までルッキーニちゃんと一緒に射撃訓練をしてたんだろ? それ、俺も昨日から見てたんだ」
リーネ「は、はい」
クルツ「んで、まぁ、俺もスナイパーではあるんで、何か教えられることがあるだろうってんで、ここに馳せ参じた次第だ」
ルッキーニ「あたしはいいって言ったんだけど」
クルツ「ルッキーニちゃんの場合、腕は超一流だと言ってもいいが、誰かを指導するのは苦手だろ?」
ルッキーニ「うじゅ……」
リーネ「そ、そんなこと……それに私は坂本少佐にも……」
クルツ「まぁまぁ、いいから。俺に身を預けてくれ。君を1週間で一流のスナイパーにしてやるからよ」
リーネ「でも……あの……」
クルツ「さぁ、さぁ。でへへ」
リーネ「うぅ……」
ルッキーニ「ルッキーニキック!!!!」ドガァ!!!
クルツ「いでぇ!? なにすんだ!!」
ルッキーニ「リーネをいじめたら、あたしが怒るから!」
クルツ「苛めてなんていねえだろ!!」
ルッキーニ「リーネが困ってるじゃん!」
リーネ「あ、あの……」
美緒「ふむ。あれなら大丈夫そうだな」
宗介「あの男で本当によかったのか」
美緒「私の目に狂いはない。はっはっはっは」
マオ「あのスケベの権化を貸すのはいいけどさ、ミーナ中佐に見つかったらヤバいんじゃないの」
美緒「休暇中は何をしてもいいとなっている。リーネが男と会おうがミーナに口出しはできんさ」
マオ「そういう屁理屈ね」
美緒「あの様子だと何が起こるということもあるまい。それに……」
マオ「それに?」
美緒「ウェーバー軍曹は一見、軽薄に見えるが、その実芯はしっかりしている」
宗介「坂本少佐、それは貴女の目がふしあ――」
マオ「はいはいはい!! ソースケ!! そんなこというもんじゃない!!」
美緒「クルツなら必ずリーネの力になってくれるはずだ」
滑走路
サーニャ「……」
エイラ「サーニャ、おはよう。こんな時間からサーニャがここにいるのって珍しいな」
サーニャ「エイラ……」
エイラ「どうした?」
サーニャ「不安なの」
エイラ「夜間哨戒に行けないからか?」
サーニャ「うん……」
エイラ「でも、ネウロイもこの前倒したばっかりだかんな。1週間ぐらいは大丈夫じゃないか」
サーニャ「最近、出撃数が多くなっているのに」
エイラ「そうだけどさ」
かなめ「サーニャちゃん、エイラちゃん。おっはよ」
サーニャ「千鳥さん……!」
エイラ「よう。相良なら少佐と一緒に訓練場に行ったのを見たけど」
かなめ「ああ、うん。それは知ってる。用があるのはミーナさんのほうなの」
サーニャ「わ、私が案内します」
かなめ「え? いいの?」
サーニャ「はいっ」
かなめ「それじゃあおねがいし――」
エイラ「ガルルルル……!!」
かなめ「ああ、えっと、エイラちゃんが大分唸ってるんだけど……」
サーニャ「エイラ、どうしたの?」
エイラ「な、なんでもない」
サーニャ「だそうです」
かなめ「(なんかごめんなさい)」
エイラ「(別にいいけどな!)」
サーニャ「ミーナ隊長にどんな用事があるんですか」
かなめ「テッサが呼んできてほしいって」
エイラ「なんで千鳥が? 相良でもよかったんじゃないか?」
かなめ「あたしが行くって言ったの。丁度、私用もあったしね」
執務室
ミーナ「デ・ダナンのほうへ来てほしいと?」
かなめ「はい。大事な話があると言っていました」
ミーナ「そう。分かったわ」
かなめ「すみません。艦長がこちらへ来るのが筋だとは思うんですけど」
ミーナ「いいえ。大佐は潜水艦から離れられないのでしょう?」
かなめ「みたいですね。今、カリーニンさんとお話しているところです」
ミーナ「サーニャさん、エイラさん」
エイラ・サーニャ「「はい」」
ミーナ「しばらくここを離れます。何かあればデ・ダナンのほうへ来てください」
エイラ・サーニャ「「了解」」
ミーナ「では、行ってきます」
かなめ「さーてと、次はあたしの用事を終わらせようかな。サーニャちゃん、また頼める?」
サーニャ「はいっ。勿論です」
エイラ「宮藤に会うんだったな。今、どこにいるんだろうなー」
デ・ダナン 艦長室
カリーニン「見つけられたのはこれだけです」
テッサ「……」
カリーニン「ご要望とあれば、もう一度行きますが」
テッサ「頼めますか?」
カリーニン「お任せください。私としてもこの世界のことを知れて楽しいぐらいですから」
テッサ「お願いしますね」
カリーニン「いえ。それでは行ってまいります」
テッサ「ええ。お願いします」
テッサ(ストライカーユニット……宮藤理論……謎の衝撃……私たちがここにいる理由……)
テッサ「こんなことって……」
マデューカス「艦長、ヴェルケ中佐が到着されました」
ミーナ「招待してもらえて光栄だわ」
テッサ「中佐、申し訳ありません。ここまで足を運ばせてしまって」
ミーナ「私のことはミーナでいいわよ。それより、何を私に話したいのかしら」
>>254
マデューカス「艦長、ヴェルケ中佐が到着されました」
↓
マデューカス「艦長、ヴィルケ中佐が到着されました」
テッサ「カリーニン少佐に頼み、出来うる限りの情報を集めてもらいました」
ミーナ「情報?」
テッサ「ストライカーユニットと宮藤一郎さんに関してです」
ミーナ「……」
テッサ「貴女は知っていのではありませんか? ユニットが如何にブラック・テクノロジーの塊であることを」
ミーナ「それは貴女たちの世界に魔法がないからでしょう」
テッサ「いいえ。魔法の存在を考慮しても、このユニットの科学力は飛び抜けすぎています」
ミーナ「私は、そう思わないのだけれど」
テッサ「ストライカーユニットには足を入れるスペースなどないそうですね」
ミーナ「ええ」
テッサ「異次元空間を作り出し、足をどこかに移動させる。その分、多くの動力機関を内蔵できる」
ミーナ「それは魔法によるものよ。不思議なことではないわ」
テッサ「最近の研究では、ネウロイは別の次元からやってきているという仮説があるそうですね」
ミーナ「さぁ……。それは聞いたことがないわ」
テッサ「扶桑海に現れた怪異も突如として現れた。それこそ、次元を割くように」
ミーナ「歴史の復習かしら」
テッサ「ネウロイとストライカーユニット、そして私たちを繋ぐ一本の線があります」
ミーナ「……」
テッサ「異次元。このワードはまさに鍵となるものでしょう。宮藤理論にはこの単語がいくつか出てきます」
ミーナ「そのようね」
テッサ「私はこう考えます。宮藤理論は魔女の魔法力を効率的に稼働させるためのものだけではなく、異次元の扉を開く理論ではないかと」
ミーナ「それを私に聞かせて何を確かめたいのかしら?」
テッサ「わかりませんか? これこそ私たちが元の世界へと帰還するためのヒントになるのです」
ミーナ「……」
テッサ「しかし、まだ宮藤理論には謎が多い。恐らく公表されているものはほんの一部なのでしょう」
ミーナ「……」
テッサ「何故なら、こんなものが世に出てしまえば世界のバランスが崩れてしまうから。あるいはネウロイの出現すらも操れるようになるかもしれない」
ミーナ「よくそこまでの妄想を語れるわね、大佐」
テッサ「私が貴女をお呼びしたのは、お願いがあるからです。――ストライカーユニットの開発に携わった坂本美緒少佐、宮藤一郎のご息女の宮藤芳佳軍曹両名から話を聞きたいのです」
ミーナ「私を通さなくても直接頼んでみればいいでしょう」
テッサ「まさか。私は貴方たちと敵対したいわけではありません。隊長であるあなたの許可を得てから、改めて二人にはお願いするつもりです」
ミーナ「では、私の回答はノーよ。二人にとって宮藤博士は特別な存在です。それをおかしな妄想で掘り返すような真似はしないで」
テッサ「でしょうね。分かりました。諦めます」
ミーナ「諦めたようには見えないけれど」
テッサ「カリーニンさんが戻ってきたときに再度ミーナさんをお呼びすることもあるでしょうけど、いいですか?」
ミーナ「そのときは貴女のほうから来てほしいわね」
テッサ「あら、失礼しました。そうですね」
ミーナ「話は終わりかしら?」
テッサ「はい。あ、紅茶でもどうですか?」
ミーナ「遠慮するわ」
テッサ「そうですか。残念です」
ミーナ「では、失礼」
テッサ「ありがとうございます」
ミーナ(テスタロッタ大佐……貴方は敵になるの……)
テッサ(ヴィルケ中佐……どうして何も語ってくれないの……)
滑走路
ミーナ「ふぅ……」
美緒「どうした、ミーナ」
ミーナ「美緒……」
美緒「デ・ダナンへ行ってたらしいな。エイラから聞いた」
ミーナ「呼ばれてね」
美緒「何を言われた」
ミーナ「ネウロイと宮藤理論の関係についてよ」
美緒「……」
ミーナ「美緒……」
美緒「そうか。やはり只者ではなさそうだな」
ミーナ「貴女がユニットの開発に携わり、そのときに何を知ったのかはあえて聞かなかった。怖かったから」
美緒「……私も幼いながらにユニットの性能には驚いたものだ。あのときはただ素晴らしいものができたとしか思わなかった」
ミーナ「……」
美緒「だが、最近になって思う。ストライカーユニットなるものが現代にあっていいはずがないとな」
食堂
芳佳「できましたー!!」
かなめ「よーし!! こっちの盛り付けは終わったわ!! ブラボーチーム、進捗状況!!」
バルクホルン「あと5分くれ。完璧に焼きあがる」
サーニャ「こちら、チーム・キャット。仕上げにかかります」
エイラ「これをかけるだけでいいのか?」
サーニャ「うんっ」
エイラ「了解。任せてくれ」ブチュ!!!
サーニャ「エ、エイラ……か、かけすぎ……」
エーリカ「こちら、ウルズチーム。味見をします」
バルクホルン「お前のそれはつまみ食いだ!!!」
シャーリー「おぉ、なんか楽しそうだな。どうしたんだ?」
ペリーヌ「千鳥さんが提案したらしいですわ。リーネさんに美味しいものを食べさせてあげたいとかなんとか。こんなの食糧の無駄遣いですわ。下らない」
シャーリー「下らないことにも参加してくれるペリーヌって、いい奴だな」
ペリーヌ「べ、別にわたくしは参加なんてしていません!! ただ暇だったからここにいるだけです!! 勘違いしないでくださいな!! 全く!!」
訓練場
リーネ「はぁ……はぁ……はぁ……」
クルツ「休憩にしたらどうだ? 疲弊した状態じゃあ銃弾は的にあたらねえぞ」
リーネ「でも……クルツさんに言われたこと……まだ……できて……」
ルッキーニ「リーネぇ……」
クルツ「そうかい。なら、できるまでやれ。俺は疲れたから休ませてもらうぜ」
リーネ「は、い……ありがとう……ございました……」
ルッキーニ「あたしは最後までいるからね!」
リーネ「うん……ありがとう……ルッキーニ、ちゃん……はぁ……はぁ……」
クルツ「ちっ」
宗介「随分と熱心だな」
クルツ「ありゃ、病気だ。美人のウィッチだからここまで付き合ったが、あんなもん普通は匙なげるぞ」
宗介「才能がないのか」
クルツ「いや、逆だ。才能の塊だよ、ありゃあ。ただ、肩に力が入りすぎていて自分を見失ってる」
宗介「原因はわかったのか?」
リーネ「ふっ!!」バァァン
ルッキーニ「あにゃ……」
リーネ「くっ……もう一度……!!」ジャキン
クルツ「上を見すぎてるんだろうな」
宗介「それはルッキーニ少尉やハルトマン中尉のことか?」
クルツ「んな天才を目指してるなら、あんなに病的にはなんねーだろ」
宗介「そうか。宮藤か」
クルツ「ルッキーニに話を聞いた。ほぼ同期ではあるが二人はポジションからして違う。簡単にいっちまえば、芳佳は前衛、リーネは後衛だ」
宗介「競う相手として意識するにはあまり相応しくない。役割が違うのだからな」
クルツ「ああ。だったら、どこをどう意識すればあんな焦り方をすると思う?」
宗介「肩を並べたいという気持ちの表れか」
クルツ「そういうこったな。技能で抜かしたいんじゃなく、ただ一緒に戦いたい、一緒に飛びたい。そうリーネは考えてる」
宗介「どうやらリーネは三流のようだな。自身の能力すら把握できないのでは、戦況に応じて適切な行動をとることもできない。そのような兵士は戦場に出ても役に立たん」
クルツ「全くだ。ユニットがぶっつぶれてリーネは幸運だったんじゃねえか。あのままじゃ死んじまうぜ」
宗介「……」
リーネ「はぁ……はぁ……はぁ……」
ルッキーニ「リーネ、もう終わろう。空も曇ってきちゃったし」
リーネ「ごめん……もう少しだけ……やらせて……もうすこしで……つかめそうなの……」
ルッキーニ「でも……」
リーネ「やらせて……おねがい……」ジャキン
ルッキーニ「……」
クルツ「ルッキーニ、こっちこい」
ルッキーニ「あたしは最後までリーネに……」
クルツ「今のリーネには何を言っても無駄だ」
ルッキーニ「うじゅ……」
クルツ「放っておけばいい」
ルッキーニ「クルツ、酷い」
クルツ「一雨来るな。中に入ろう」
ルッキーニ「やっぱり、あたしはここにいる!!」
クルツ「いいから、こい」グイッ
リーネ「はぁ……はぁ……ふっ……」カチッ
リーネ「あ……れ……?」
リーネ「弾が入ってなかった……」
宗介「お前は三流以下だ」
リーネ「え……」
宗介「自分の手にある銃に実弾が入っているかどうか分からないなど、ありえん。兵士として失格だ」
リーネ「……」
宗介「もう諦めろ。今のお前が自分を追い込んだところで成果など出ない。無駄な努力だ」
リーネ「……っ」
宗介「言いたいことがあるのなら、言ってみろ。所詮は三流、いや、兵士にすらなれん奴の戯言だ。鼻で笑ってやる」
リーネ「あなたに……なにがわかるの……わ、たしは……わたし、は……」
宗介「聞こえんぞ!!」
リーネ「……ごめんなさい。今日は終わります」
ザァァァ……
宗介「雨か……」
廊下
リーネ「……」
芳佳「あ!! リーネちゃん!!」
リーネ「よしか……ちゃん……」
芳佳「こんなにぬれちゃって、早く拭かなきゃ風邪ひいちゃうよ。それよりもお風呂に入っちゃおうか」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん? ほら、一緒に――」
リーネ「一緒……になんて……」
芳佳「え?」
リーネ「ごめんね……」
芳佳「ど、どうしたの……」
リーネ「私……一緒には……」
芳佳「待って!」
リーネ「一人で……お風呂はいるね……」
芳佳「リーネちゃん……」
食堂
かなめ「リーネちゃん、こないね」
エイラ「料理、冷めちゃったな」
芳佳「……」
バルクホルン「ルッキーニ、リーネの傍にいたんだろう。どんな様子だったんだ」
ルッキーニ「怖かった……。リーネ、銃を全然はなそうとしないし……」
かなめ「そう……」
ペリーヌ「ここにいても時間の無駄みたいですわね。わたくしは失礼しますわ」
エーリカ「わたしもー。冷めちゃったごはんはおいしくないしーたべたくないしー」
かなめ「待ってよ!! もしかしたら来てくれるかもしれないじゃない!!」
ペリーヌ「ここまで待ってこないなら、来ませんわよ」
かなめ「だったら、みんなでリーネちゃんのところにいくとか」
エーリカ「本気で言ってるのか?」
かなめ「……!」
かなめ(な、なに……こんなに怖い人だったの……?)
バルクホルン「やめろ、ハルトマン」
エーリカ「ごめん、千鳥。言い過ぎた」
かなめ「う、うん……あたしこそ、軽率だった……」
サーニャ「どうしよう……」
シャーリー「ま、何を言っても効果はないだろうし、今日は解散にしとくか。料理は皿に分けて、各自部屋で食うってことで」
バルクホルン「そうだな。これだけの料理を無駄にするわけにはいかない」
シャーリー「少佐と中佐にも持って行ってやらないと」
エーリカ「千鳥」
かなめ「は、はい!」
エーリカ「これ、デ・ダナンの人たちに持って行ってよ」
かなめ「ああ、うん」
エーリカ「ちゃーんというんだよ。これは黒い天使のエーリカ・ハルトマンからですってね。にひぃ」
かなめ「うん」
バルクホルン「お前が天使なら、カラスは神か」
エーリカ「どーいう意味だー!!!」
デ・ダナン マオの部屋
マオ「あのリネットにそんなことを言ったの?」
宗介「肯定だ。ああ言わなければ指が使い物にならなくなるまで引き金を引き続けていた」
マオ「そう……」
クルツ「ありゃ自信をつけさせるっていっても骨が折れるぜ」
マオ「とはいえ、精神的なことなら自分で乗り越えなきゃいけないしねぇ」
クルツ「いつかのソースケに近いといえば近いけどな」
宗介「そうかもしれないな。だからこそ、俺はリーネを救いたいと思っているのかもしれん」
マオ「へぇ。ソースケも成長してるじゃないの」
クルツ「つっても昨日今日あったばかりの男の言葉がリーネに届くかぁ?」
宗介「無理だろうな」
クルツ「じゃあ、どうするんだよ」
宗介「全くわからん」
マオ「でも、救いたい、と。そう思えるだけでも十分だよ」
宗介「しかしな、言うだけならだれでもできる。口から出した以上、結果を出さなくてはいけない」
501基地 執務室
ミーナ「リーネさんのことは聞いた?」
美緒「うむ」
ミーナ「美緒、やってくれたわね」
美緒「クルツの所為だと言いたいのか」
ミーナ「そうは言わないわ。けれど、このままリーネさんが潰れてしまったら……」
美緒「それはリーネ自身の問題だ。ウェーバー軍曹にもルッキーニ少尉にも責任はない。無論、その場にいた相良軍曹もだ」
ミーナ「けれど……!!」
美緒「……」
ミーナ「……もういいわ。やめましょう」
美緒「そうだな。休暇は有意義に使わなくてはならん」
ミーナ「テスタロッサ大佐に貴女の見たことを伝えるの?」
美緒「話したところでテスタロッタ大佐が元の世界へ戻れる保障はどこにもないがな」
ミーナ「けれど、話したほうがいい。貴女はそう考えている」
美緒「ああ。宮藤博士のことは一人で抱え、墓までもっていこうと思ったが、これも運命かもしれん」
>>269
美緒「話したところでテスタロッタ大佐が元の世界へ戻れる保障はどこにもないがな」
↓
美緒「話したところでテスタロッサ大佐が元の世界へ戻れる保障はどこにもないがな」
デ・ダナン 艦長室
テッサ「そんなことがあったのですか」
かなめ「うん……」
テッサ「かなめさん、余程ショックだったみたいですね」
かなめ「え……?」
テッサ「エーリカ・ハルトマン中尉に睨まれたのでしょう」
かなめ「そう……。怖かった。でも、それ以上に、ああ、またやっちゃったなって」
テッサ「なにをですか?」
かなめ「時々やっちゃうのよね、あたし。少し仲良くなったからって調子にのってさ、他人の心に土足で上がりこもうとしちゃうの。帰国子女だからかな? あははは」
テッサ「それで救われた人もいるはずです。良し悪しですよ」
かなめ「どうなんだろう……」
マデューカス『艦長、よろしいですか』
テッサ「はい。どうぞ」
マデューカス「レーダーに反応がありました。どうやら上空に謎の飛行物体があるようです」
テッサ「ネウロイ……。来ましたか」
発令所
テッサ「状況を」
マデューカス「上空200メートル付近にて反応あり。人工のものにしては速すぎます」
テッサ「この時代としては、ですね」
マデューカス「ええ。我々の時代でしたら高速航空機かとも考えますが」
テッサ「ウィッチである可能性は?」
マデューカス「あれだけの質量をもった魔女など想像したくもありませんな」
テッサ「結構。それではみなさんは待機していてください」
マデューカス「アイ、マム。各員、スタンバイ」
テッサ「基地からウィッチは出ましたか?」
マデューカス「いいえ。静かなものです。まるで気づいていないかのように」
テッサ「……メリッサ、聞こえる?」
マオ『はいよ』
テッサ「501の皆さんの様子を見てきて。大至急」
マオ『りょーかい』
501基地 格納庫
宗介「む……」
美緒「相良か。どうした」
宗介「お前たち、ネウロイが来ていることに気が付いていたのか」
エイラ「当たり前だろ。こっちにはサーニャがいるんだぞ」
サーニャ「随分前から気が付いていました」
宗介「ならば何故、出撃しない」
美緒「出撃するなとの命令だ」
宗介「7日間の休暇とはそういう意味だったのか」
美緒「ああ……」
芳佳「やっぱり行きましょう!! このままじゃどうなるかわかりません!!」
ペリーヌ「おやめなさい」
芳佳「だけど!! ブリタニアまできちゃいますよ!!!」
バルクホルン「ミーナ、他の航空団は何をしている?」
ミーナ「分からないわ。既に出撃しているのか、まだネウロイを感知していないのか……」
クルツ「ルッキーニ、リーネはどうした?」
ルッキーニ「部屋から出てこなくて」
クルツ「なんだと」
シャーリー「まぁ、リーネのユニットは直ってないから、結局は飛べないけどな」
クルツ「いや、そういう問題じゃ……」
宗介「やめろ、クルツ。この場にいないものなど放っておけ」
芳佳「相良さんもそんなこというんですね」
宗介「戦力にならん者のことを気にしても仕方ない」
芳佳「リーネちゃんは今、とっても苦しんでいるんですよ!?」
宗介「それがなんだ。弱い兵士など必要ない。これはどこでも同じのはずだ」
芳佳「……!」
バルクホルン「抑えろ、宮藤」ガシッ
芳佳「はなして!!」
バルクホルン「相良、お前のいうことは正論だ。だが、その正論で納得できないこともある」
宗介「分かっている」
美緒「全員、黙れ!!! 見苦しい!!!」
芳佳「ひゃっ……」ビクッ
宗介(この気迫。流石だな)
美緒「リーネのことは考えるな。今はこの状況をどうするかだ」
芳佳「は、はい」
エーリカ「どうすんの? 出るなら出るけど」
ミーナ「……」
マオ「中佐。よく考えてから決断してください。貴方たちが置かれている状況は大体理解しているつもりです」
ミーナ「……」
マオ「7日間もの休暇、修理できないユニット、敵が多いという発言、それから基地周辺の監視の多さ。ミスリルがここにいる所為であるのは分かっています」
ミーナ「……」
マオ「ですが、ここで501が動けば我々の身がどうなるか、想像できますね」
ミーナ「……」
マオ「中佐!」
ミーナ「……私たちが守るものは、潜水艦ではなく、世界の空よ。総員、出撃」
マオ「やっぱりそうなるか……」
シャーリー「よっしゃぁ!! いくぞ!!」
バルクホルン「発進だ!!」
エーリカ「悪いね」
宗介「……」
ミーナ「私を恨むかしら?」
宗介「いや。俺たちの艦長も同じ判断をしたはずだ」
ミーナ「そう。ありがとう」
宗介「中佐殿。ご武運を」
ミーナ「行ってくるわ」ブゥゥゥン
クルツ「あーあ、行っちまった」
マオ「命令違反で強制捜索させちゃう口実ができあがったわけだ。あーあ、もうしーらない」
宗介「……大佐殿、応答してください」
テッサ『なんでしょうか?』
宗介「俺たちへの命令は、待機のままですか?」
上空
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!
美緒「ネウロイを確認した!! 散開!!!」
バルクホルン「一気に終わらせるぞ!!!」
エーリカ「うりゃぁぁぁ!!!」
ペリーヌ「全員で命令違反。いっそのこと清々しいですわね」
ルッキーニ「にゃは、みんなで営倉はいろー」
エイラ「そんなの嫌なんだけどなぁ!!!」ズガガガ
サーニャ「それはそれで楽しそうだけど」
芳佳「リーネちゃんの分まで……私が……!!」
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!!
サーニャ「……! 中佐、4時の方角、もう一体のネウロイを確認しました」
ミーナ「全くの逆方向ですって!?」
美緒「目の前のこいつは陽動か! いや、しかし、こいつにもコアがある……」
バルクホルン「となれば、どちらも本命か。面白い」
ミーナ「シャーリーさん!!」
シャーリー「最大速度で行ってやりますよ!!! ルッキーニ、ついてこい!!!」
ルッキーニ「あい!!」
美緒「残りの者でこいつを叩くぞ!!!」
芳佳「了解!!」
ネウロイ「……」ピカッ!!!
エーリカ「はい、あたらなーい」
サーニャ「発射っ」バシュッ
ドォォォン!!!
ネウロイ「……」ゴォッ!!!
バルクホルン「致命傷にならなかったか!」
美緒「宮藤!! 撃て!!」
芳佳「でやぁぁぁ!!!」ズガガガガ
パリィィィン……
芳佳「はぁ……はぁ……やった……」
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!
シャーリー「くっそ……!! 追いつけるか微妙だ……!!」
ルッキーニ「うにゃー!! まてー!!!」
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!!
シャーリー「少佐!! そっちはどうですか!? できればエイラとサーニャを応援に……あれ? 少佐!? 中佐!! 応答してください!!」
ルッキーニ「しょうさー! ちゅうさー!!」
シャーリー「ダメだ! 無線がいかれてる!!」
ルッキーニ「にゃんでー!?」
シャーリー「あたしたちだけであいつを止めないと……!! このままじゃ基地のほうがめちゃくちゃになる!!」
ルッキーニ「シャーリー!! 前、前!!」
シャーリー「前って……。基地の上になんか……立ってるぞ……」
アーバレスト『……』
シャーリー「あれがルッキーニが見た機械人形か!?」
ルッキーニ「なんか、ちょっと形が違うけど……」
アーバレスト内
宗介「……」
アル『熱源反応。前方、1000メートル』
宗介「射撃準備。照準補正は任せる」
アル『ラジャ』
ネウロイ『……』ゴォォォ
宗介「あれがネウロイか。確かに気味が悪いな。とても人工のものとは思えない」
アル『目標接近、距離、700……500……300……』
宗介「……使うぞ、アル」
アル『何をでしょうか』
宗介「決まっている。ラムダ・ドライバだ」
アル『ラジャ』
ネウロイ『……』ゴォォォ
アル『ラムダ・ドライバ、起動』
宗介「――ぶちぬけぇぇぇ!!!」
上空
パリィィン……!!
シャーリー「すげぇ……」
ルッキーニ「かっこいー!!」
シャーリー(あんなものを持ってたのか……。ネウロイを一撃で倒せる兵器があるなんて……)
『応答せよ』
シャーリー「誰だ?」
『俺だ。相良だ』
シャーリー「お前が目の前の人型兵器に乗ってるんだな」
『肯定だ』
シャーリー「感謝する。また助けられたな」
『礼はいい。むしろ、俺たちは謝罪しなくてはならない』
シャーリー「なに?」
『お前たちの敵が動き出すからな』
シャーリー「あたしたちの敵……?」
>>80 テッサ「そうですね。では、自己紹介をいたしましょう。私はミスリル作戦部西太平洋戦隊総司令官・TDD-1『トゥアハー・デ・ダナン』艦長、テレサ・テスタロッタです」
>>82 美緒「隠すことはなにもない。テスタロッタ艦長さえ良ければ歓迎しよう」
>>90 テッサ「テレサ・テスタロッタです」
>>102 美緒「テスタロッタ大佐は、有能な指揮官なのだな。新型を優先的に運用できるのはそれだけ隊として優秀である証だ」
>>109 美緒「テスタロッタ大佐」
>>124 宗介「どうやら今の質問で確信したようだな。確かに俺はあの潜水艦、ダナンの乗員でありテスタロッタ大佐の部下だ」
>>134 美緒「助け舟を出してくれたことには感謝するが、テスタロッタ大佐が言ったことに間違いはない。宮藤を利用し、逃れようとしたのも事実だ」
美緒(そんなこと望んではいないだろう。お互いな。信じているぞ、テスタロッタ大佐)
>>138 美緒「その中で見た人型の機械兵器もだ。テスタロッタ大佐はその兵器をアーム・スレイブと呼んでいた」
>>215 美緒「どうする? テスタロッタ大佐には出て行ってもらうか」
>>258 ミーナ(テスタロッタ大佐……貴方は敵になるの……)
『テスタロッサ』なのに殆どテスタロッタになってたことに今更気が付いた
俺にわか乙首つってくる
デ・ダナン 発令所
マデューカス「どうやらネウロイは無事、殲滅できたようです」
テッサ「マデューカスさん。これを渡しておきます」
マデューカス「このチップは?」
テッサ「本当に困ったときそれを再生してください」
マデューカス「音声が入っているのですね」
テッサ「はい」
マデューカス「分かりました。大切に預かっておきます」
テッサ「……これより、私は501へ出向きます」
マデューカス「艦長」
テッサ「なんですか」
マデューカス「指揮はまだ艦長が執るということでよろしいですか」
テッサ「当たり前です。デ・ダナンの舵取りは私の役目です。誰にも譲りません」
マデューカス「アイ、マム。お気をつけて」
テッサ「行ってきますね」
通路
テッサ「あら、かなめさん」
かなめ「そろそろかなって」
テッサ「一緒に行きます?」
かなめ「うん。あのこと、ソースケには?」
テッサ「まだ言っていません。でも、相良さんならきっと自分の役目がどういうものなのか自然と感じ取ってくれています」
かなめ「そうね。アイツならそうよね」
テッサ「貴女は、貴女だけは逃げてください。でなければ、この世界が崩壊する」
かなめ「……実感はないけど、理解はできてる。でもね、テッサ」
テッサ「言わないでください。私だって死ぬつもりなどありません。まだこの世に未練だってあります」
かなめ「ならいいの。必ず帰ってきてよ」
テッサ「――その力を、多くの人を守るために」
かなめ「え……?」
テッサ「色々な意味が込められていそうですよね。彼と同じ道を歩むことになっても、この言葉だけは忘れないようにしないと」
かなめ「それ、確かあのお墓にあった言葉だっけ」
501基地 リーネの部屋
リーネ「……」
リーネ(芳佳ちゃん……やっぱりすごいな……。またネウロイを……)
リーネ(相良さんもあんな力を持っている……)
リーネ(それに比べて……私は……)
『三流以下だ』
リーネ「うぅ……」
リーネ「私に……才能なんて……芳佳ちゃんと一緒に飛ぶ資格なんて……」
ドンドン!!
リーネ「え……?」
『出てきたまえ、リネット・ビショップ軍曹』
リーネ「だ、誰ですか」
『ストライクウィッチーズの面々に話したいことがある。これは命令だ』
リーネ「りょ、了解……」
格納庫
リーネ「遅くなりました……」
芳佳(リーネちゃん……)
マロニー「全員かね?」
ミーナ「はい」
テッサ「……」
マロニー「あの巨大潜水艦を君のような小娘一人で動かしているのかね」
テッサ「ネガティブ。ですが、私は艦長です。代表として十分だと判断しました」
マロニー「ふん。いいだろう。どうせこれから船員には挨拶をさせるつもりだ」
バルクホルン「(空軍大将のくせに随分と腰が軽いな。先ほどの戦闘から殆ど間を置かずに到着するとは)」
エーリカ「(戦闘が始まった瞬間にこっちに向かってたな。ある意味、私たち信頼されてるね)」
マロニー「私語は慎みたまえ」
シャーリー「さっさと用件を言ってもらえないか。さっきの戦闘で疲れてるんだ」
マロニー「口には気を付けろ。一兵士め」
シャーリー「……申し訳ありません」
マロニー「私が直接ここへ来たのは他でもない。501の重大な命令違反を咎めるためだ」
ミーナ「お言葉ですが、我々はブリタニアを、世界を守るために結成されました。ネウロイと戦うなという命令は非常時を前にすれば破らざるを得ません」
マロニー「関係はない。命令を無視し勝手な判断で出撃した。そうだな」
美緒「よく言う。他の航空団も出撃させていなかっただろう」
マロニー「なんのことかね。そのようなことをするわけがない」
美緒「貴様……」
ミーナ「やめて、美緒」
美緒「くっ……」
マロニー「上層部は君たちの問題行動を重く見ている。しばらくの間、謹慎でもしていてもらおうかという話も出ている」
ペリーヌ「出ているということは、まだ決定ではないのですね」
マロニー「ああ。君たちが命令を無視してまで出撃したのは、この雄大な大空を守りたい一心だったから。それは分かっているのだ」
エイラ「だったら、褒めてほしいな」
マロニー「このまま全員が営倉行きなど、誰も望んでいないことだ。そこである条件を出したい」
ミーナ「それは何でしょうか」
マロニー「あの潜水艦をこちらに引き渡してもらおう。それだけでストライクウィッチーズはまた自由に空を飛ぶことができる」
ミーナ「あの潜水艦は未だ不明瞭な点が多いです。軍事利用には適していません。また、それを潜水艦のクルーが望んでいるわけでもありません」
マロニー「断るか。では、501を空で見かけることはできなくなるな」
サーニャ「あんまりだわ……」
エイラ「このやろう……」
テッサ「ヴィルケ中佐、私たちは貴女の決定に従います」
ミーナ「テスタロッサ大佐……。でも、何が待っているのかわかるでしょう」
テッサ「私たちは501に保護され、一時的にではありますが行動を共にしました。全ての決定権は中佐に委ねます」
ミーナ「……」
マロニー「どうするのかね?」
芳佳「そんなことできるわけないじゃないですか!!」
マロニー「なに?」
バルクホルン「待て、宮藤」
芳佳「あの人たちは大切な友達です!! リーネちゃんを救ってくれたんです!! サーニャちゃんに優しくしてくれたんです!! 連れてなんていかせません!!」
マロニー「宮藤芳佳軍曹だな。赤城を守ったことで随分と気が大きくなっているようだな。だが、君は一兵士であり新兵だ。我々の決定を覆すだけの権力も実績もない」
芳佳「確かに私にはなんの力もないけど……。でも、守りたいものを守るだけの力は持っているつもりです」
リーネ「……」
マロニー「口だけは大きいな」
芳佳「あの人たちに酷いことをするのなら、私は……」
テッサ「やめなさい、宮藤軍曹」
芳佳「でも!!」
テッサ「貴方に庇ってもらうほど、落ちぶれてはいません。図に乗らないで」
芳佳「な……」
テッサ「中佐。ご判断を」
ミーナ「……マロニー大将の決定に従います」
マロニー「ふん。だろうな」
芳佳「待ってください!! そんな簡単に決めていいことじゃないです!!」
美緒「やめろ、宮藤」
芳佳「止めないでください!!」
マロニー「テスタロッサ大佐と言ったか。では、潜水艦と共に来てもらおうか」
テッサ「はい」
501基地 周辺
かなめ「テッサが連れていかれる……」
宗介「こちらウルズ7、応答せよ、ウルズ2」
『こちらウルズ2、どうぞ』
宗介「千鳥かなめを連れて501基地に身を隠す。あとは独自の判断で行動する」
『了解。ソースケ、無茶だけはしないでよ』
宗介「了解だ」
『こちらウルズ6、これより待機に入る』
宗介「了解」
かなめ「ちょっと、もしかしてクルツくんも外にいるの?」
宗介「肯定だ。こういった作戦のとき、必要なのは支援だ。俺一人ではできないこともある」
かなめ「テッサはソースケ一人だけって言ってたけど」
宗介「大佐殿からは具体的な命令は下されていない。この程度の配置変更は許容範囲だ」
かなめ「そういうもんなの?」
宗介「そういうものだ」
デ・ダナン 停泊所
テッサ「これからどちらへ?」
マロニー「なに、そう離れてはいない。ブリタニア空軍本部だからな」
テッサ「きっと素敵な話がきけるのでしょうね」
マロニー「ウィスパードか」
テッサ「……!」
マロニー「何を驚いている」
テッサ「どこでその言葉を……」
マロニー「宮藤一郎がそう言った」
テッサ「なんですって」
マロニー「君たちがここに現れることも彼は予見していた。軍の一部では宮藤一郎はいなくなったとされるウィザードではないかと言われていたぐらいだ」
テッサ「魔法力を有する男性のことですか」
マロニー「もう確認をすることもできんがね。惜しい人物を失くしたものだ」
テッサ(この男、宮藤氏からどこまで聞き出しているの……)
マロニー「潜水艦及び人型兵器を対ネウロイに運用することはもちろんだが、それとは別に君たちの知識を借りたいのだよ。アレを完成させるためにな」
501基地 格納庫
芳佳「本当にこれでよかったんですか?」
ミーナ「あの命令に従わなければ、私たちは解散させられていたわ。そうなるとブリタニアがどうなると思うの」
芳佳「だからって……」
ミーナ「昨日今日会ったばかりの人たちか、この世界の空か。天秤にかけるまでもないはず」
芳佳「そんなの間違ってます!!」
ミーナ「戦闘前にそう言いなさい」
芳佳「うっ……」
ミーナ「それでも私は、貴女の言葉で考えは変えなかっただろうけど」
バルクホルン「ミーナ、そこまでにしておけ」
ミーナ「……少し、休むわ」
エーリカ「かなり疲れてるね、ミーナ」
シャーリー「仕方ないんじゃないか。戦闘も続いてるし、問題ばっかりだしさ」
ルッキーニ「だよねー」
芳佳「どうして……なんで……」
リーネ「……」
美緒「宮藤が羨ましいか」
リーネ「……はい」
美緒「自分にはできないことを平然とやってしまう。それも同期のウィッチが。焦りは致し方ないことだな」
リーネ「……」
美緒「ウェーバー軍曹と相良軍曹に何を言われたかは知らんが、間違ったことは言っていないはずだ」
リーネ「……」
美緒「二人ともお前のことを気にかけてくれていた」
リーネ「わかって……います……だからこそ……わたしは……」
美緒「悩めばいい。苦しめばいい。しかし、必ず立ち上がり、そして空を駆けろ。それがウィッチだ」
リーネ「私……そんなに強く……ないんです……そんなこと言われても……困るんです……」
かなめ「あ、あのー」
美緒「千鳥!?」
サーニャ「どうしてここに?」
宗介「俺が説明する。聞いてくれ」
バルクホルン「――つまり、テスタロッサ大佐はこうなることを予め予測していたのか」
宗介「肯定だ。そして俺と千鳥は最後の砦でもある」
美緒「救出するのか」
宗介「無論だ」
シャーリー「けど、どのタイミングで助けるんだ? 今から現地に人型兵器で殴り込みにでもいくのか」
宗介「そのような特攻はナンセンスだ。大佐殿は捕えられはしたが、命の危険はないと考えている」
美緒「根拠は?」
宗介「大佐殿がいなければ、デ・ダナンを動かすことができないからだ。マロニーという男が軍事利用しようとするなら、大佐殿の命を奪うことはしないだろう」
かなめ(ただ、絶対じゃない。やろうと思えばダナンを奪うことができる……)
エーリカ「つまり、準備するだけの時間はたっぷりあるってわけだ」
ペリーヌ「で、相良さんがこうしてわたくしたちの前に姿を見せたのは、保護してほしいからですの?」
宗介「いや、協力してほしいからだ。俺だけでは大佐殿、いや、ダナンを取り戻すのは難しい」
ルッキーニ「えー? あのおっきなやつでバッキバキのボッコボコのギッタンギッタンにしちゃえばいいじゃん」
宗介「……?」
エイラ「ルッキーニはこう言っているんだ。お前のもってる人型兵器で相手を壊滅させることもできるんじゃないか?って」
>>297
バルクホルン「――つまり、テスタロッサ大佐はこうなることを予め予測していたのか」
↓
バルクホルン「――つまり、テスタロッサ大佐はこうなることを予測していたのか」
宗介「なるほど。では、ルッキーニにこう伝えてくれ。それでは意味がない。武力による制圧では今後の行動に大きな制限が生じる。そうなれば状況は著しく悪化するだろう」
エイラ「ルッキーニ、相良はこう言ってる。こっちからボッコボコにしたら向こうもギッタンギッタンにしてくるからダメだって」
ルッキーニ「そっかー」
宗介「素晴らしい語学力だな、エイラ。会長閣下を彷彿とさせる」
エイラ「これぐらいはな。ルッキーニと話してたら慣れる」
バルクホルン「相良、作戦内容は決まっているのか」
宗介「いや。できれば戦闘指揮官である坂本少佐と隊長であるミーナ中佐から知恵を借りたいと思っている」
美緒「ふむ……。ネウロイとばかり戦ってきた我々に人間と戦えというのか」
宗介「違う。そのような愚かなことをさせるつもりはない」
シャーリー「でも、協力ってことはそうなるだろ」
宗介「この世界の希望であるお前たちをテロリストなどにはさせん」
美緒「欲張りだな。仲間は全員守ると言いたいのか」
宗介「人間と戦うのは傭兵だけで十分だ」
エーリカ「あくまでも、知恵を借りるだけってこと?」
宗介「お前たちの手を血で汚すことだけはない。俺が保障する」
リーネ「……」
かなめ「リーネちゃんっ」
リーネ「はい、なんですか?」
かなめ「えっと……その……。みんなの話し合いに参加しないの?」
リーネ「今の私は戦力になりませんから」
かなめ「どうして?」
リーネ「ユニットが直らないんです。だから、飛べません。少佐には必ず空を駆けろと言われましたけど、ユニットがないんじゃ……」
かなめ「……」
芳佳「リーネちゃん、あの、今から会議が……あるって……」
リーネ「私は……気分がよくないから、部屋に戻るね……」
芳佳「リーネ……ちゃん……」
かなめ「ストライカーユニット……」
芳佳「結局……何もできないの……大切な友達が苦しんでるのに……」
かなめ「芳佳ちゃん、ちょっといい?」
芳佳「え?」
デ・ダナン 発令所
マロニー「素晴らしい設備だな。驚嘆する」
テッサ「お褒めに預かり光栄です」
マデューカス「……」
マロニー「私に余計なことはしないほうがいい。この艦とて燃料切れはするだろう」
テッサ「まぁ、貴方たちが思う以上に稼働し続けますけどね」
マロニー「世界中に手配書が回れば、食事すらできんようになる。それでは艦は無事でも部下はどうなるかね」
テッサ「……」
マデューカス「貴殿の狙いはなんだ」
マロニー「向こうに着いてから詳しい説明はするつもりだが、知識を借りたいのだよ。ウォーロックを完成させるためにな」
テッサ「ウォーロック……?」
マロニー「ウィッチを必要としない兵器のことだ。この艦とAS、そしてウォーロックが揃えば、この世にウィッチはいらなくなる」
テッサ「そのような兵器を開発したい、と?」
マロニー「いや、完成間近だ。ただ、宮藤博士が亡くなってしまい、最後の仕上げができなくてね、困っていたところだ」
テッサ「宮藤博士は貴方に協力していたというのですか」
マロニー「彼は常々言ってた。ネウロイはなんのために人類を襲うのかわからない、とな」
テッサ「……」
マロニー「そこで一度、ネウロイを捕獲する作戦が行われた。極秘裏ではあるがな」
テッサ(宮藤氏はネウロイ生体研究の第一人者でもあったのね。ということはやはり……)
マロニー「その過程で宮藤博士はとある発見をした。ネウロイは人の手で利用できると」
テッサ「あのような無機物が?」
マロニー「彼は歓喜していた。ネウロイを軍事利用できれば世界の少女たちが戦場に立つこともない、と」
マデューカス「確かに。ウィッチが必要なくなれば、必然的に少女たちが銃器を持つこともなくなる」
マロニー「自分の娘が戦うこともない。未来を変えられるとも言っていたな」
テッサ「未来を……」
マロニー「だが、彼は戦火に焼かれてしまった。そして我々は彼の意思を継ぎ、ウォーロックを完成させようと日々研究と実験を繰り返してきた」
テッサ「でも、それは無理だった。あまりにも高度な科学力が使われていて」
マロニー「そうだ。何故、このような理論を思いつけるのかきいたこともある。そのときに聞いたのだよ。ウィスパードという言葉をな」
テッサ「そういうことですか」
テッサ(ウォーロック。どう考えてもブラックテクノロジーの産物ですね。完成させるわけにはいきません)
マデューカス(力が全てだと考える輩が持つには相応しくない兵器だな)
マロニー「そこで君たちが来ることも語っていた。あのときは信じなかったが、まさかこうなるとはな」
テッサ(未来を知っていたのか、未来からのささやきを聞いたのか。それは分かりませんが、これで宮藤氏がウィスパードであったことは確定的ですね)
マロニー「自分と同じ者たちがやってくる。そのときは彼らに協力してほしい。私が聞いたのはそれが最後だった」
テッサ「協力してほしいと言われたのなら、私たちが元の世界へ戻る手助けをしてほしいですね」
マロニー「ここに潜水艦とASの技術を置いていくのなら協力しよう」
テッサ「どれだけの戦果がほしいのですか?」
マロニー「古来よりウィッチが怪異と戦い、世界を平和を守ってきたとされている」
マデューカス「良い話ですな。現代のウィッチにもその意志は受け継がれている」
マロニー「面白くないのだよ」
テッサ「どういう意味です」
マロニー「魔法と特別な兵器で身を固めれば誰でもネウロイと戦える。魔法があるというだけでウィッチたちは英雄と呼ばれ、幅を利かせる」
マデューカス(これほどの愚者が大将とは。この世界は人員に困窮していると見える)
マロニー「魔法さえあれば、戦えるのだよ。あの怪物ともな」
テッサ「(メリッサ、聞こえる? 応答して)」
格納庫
マオ「感度良好だよ、テッサ」
テッサ『これから私たちはブリタニア空軍本部へ移送されるみたい』
マオ「そのこと、ソースケに伝えたほうがいい?」
テッサ『伝えて。ただし』
マオ「分かってる。ウィッチたちは連れてくるなって言っておくよ」
テッサ『お願いね』
マオ「了解。任せて」
テッサ『はい』
マオ「はぁー、やれやれだわ。うちの艦長は気が強くて。ま、楽しいけどね」
マオ「こちらウルズ2」
『こちらウルズ7。状況は?』
マオ「芳しくないはないけど、逼迫もしてないって感じかな」
『今はどこへ向かっている』
マオ「ブルタニア空軍の本部だってさ。迎えにきてくれる?」
501基地 ブリーフィングルーム
美緒「リーネと宮藤はどうした?」
バルクホルン「リーネは自室に戻った。宮藤は千鳥が連れて行ってしまったようだ」
美緒「千鳥が? どういうことだ」
バルクホルン「理由までは」
宗介「状況の整理からしたい。いいだろうか」
ミーナ「お願いするわ」
宗介「中佐殿。もし体調がすぐれないのであれば退席してください。これは貴方たちの任務とは何も関係がないことです」
ミーナ「……続けて」
宗介「はっ。デ・ダナンは今現在、ブリタニア空軍本部へ向かっていることは分かっている。これは先ほど艦内にいる仲間との交信で得た情報だ」
エイラ「その仲間との交信はいつまでできそうなんだ」
宗介「それはわからん。マオが自由に行動できるまでだ」
サーニャ「なるべく早く動かないといけないってことですか」
宗介「いや。存分に時間をかけてやるつもりだ。坂本少佐、最近はネウロイの襲撃が頻発しているとのことだが、次の襲撃はいつごろになる?」
美緒「予測では三日後だ。だが、最近は全くあてにならん。一時間後に襲来しても不思議はない」
シャーリー「ネウロイの襲撃に合わせて動くつもりかよ」
宗介「撹乱させるにはもっとも効果的だ」
シャーリー「撹乱か……」
バルクホルン「ネウロイを空軍本部直上まで誘導させようとしているか」
宗介「それでは被害が甚大になる。ただできるだけ近づけてほしい」
美緒「その空域で戦闘をし、その間にお前がデ・ダナンを奪取すると」
ミーナ「ダナンの奪い返したあとのことは何か考えているの? どちらにせよ、ブリタニアを敵に回すことになるわ」
宗介「問題ありません。近くでネウロイとの交戦が発生していれば、こちらにも戦う理由が生まれます」
美緒「なんらかの兵器が動き出しても言い訳はいくらでもできるか」
宗介「そこで奴らが文句をいうようであれば、こちらも反論するだけだ。そのときはブリタニアの人民に聞こえるぐらいの大音量でな」
エーリカ「民衆を味方にしちゃうわけだ」
宗介「ウィッチの人気は絶大だ。それに味方する者たちを批難することなどありない」
バルクホルン「成功すると思うか」
美緒「ネウロイの出方次第という点を除けば、悪くない」
ミーナ「運任せな面があるのは否めないわね」
>>304
マオ「ブルタニア空軍の本部だってさ。迎えにきてくれる?」
↓
マオ「ブリタニア空軍の本部だってさ。迎えにきてくれる?」
宗介「確かにネウロイは人ではありません。行動を読むのは至難の業です。だからこそ、501には全員で参加してほしい」
ミーナ「全員とは?」
宗介「リネット・ビショップを含む11人です」
エーリカ「リーネを戦力として数えるわけか」
宗介「当然だ。リーネは大事な戦力であり、戦友だ。このまま腐らせるわけにはいかん」
ルッキーニ「にゃは! だよねー!!」
宗介「しかし、俺ではリーネを立ち直らせることはできない。だから……」
ミーナ「リーネさんのことは宮藤さんに任せるしかないわね」
宗介「同感です、中佐殿。自分もリーネを立ち上がらせるのは宮藤以外にいないと考えています」
美緒「それは何故だ?」
宗介「リーネは心から宮藤と共に飛びたいと願っている。それ以外に理由はない」
エイラ「いいな。その理由。私は支持するぞ」
サーニャ「私も……」
エーリカ「んじゃ、リーネは復活する前提で話を進めようか。それぞれの配置とかはどうするの?」
宗介「俺なりに考えた配置がある。最終的な決定は中佐殿に任せたい」
格納庫
芳佳「これがリーネちゃんのユニットです」
かなめ「本当にボロボロね」
芳佳「全損っていってもいいぐらいで……」
かなめ「修理の目処も立ってないんでしょ」
芳佳「はい……」
かなめ「芳佳ちゃん。ユニットはあたしがなんとかする」
芳佳「えぇぇ!? かなめさんってそんなことできるんですか!?」
かなめ「よくわかんないけど、できるみたい。一目みただけで構造とか色々把握できちゃってるし」
芳佳「な、なんで……かなめさんは技術者って感じがしないのに……」
かなめ「あたしのことはいいの。それより芳佳ちゃんはリーネちゃんをなんとか元気づけてあげて」
芳佳「それは……」
かなめ「自信がない?」
芳佳「……」
かなめ「そうよね。怖いよね。でも、リーネちゃんが何を望んでいるのか、それさえ分かれば大丈夫。でね、これは芳佳ちゃんにしかできないことなの」
芳佳「私にしかできないこと……」
かなめ「そう。みんなじゃない。芳佳ちゃんだからこそ、リーネちゃんを元気づけることができるの」
芳佳「……」
かなめ「ハルトマンさんやペリーヌちゃんが何のフォローもしなかったのは、きっとそれにいち早く気が付いていたからだと思う」
芳佳「ペリーヌさんも……ハルトマンさんも……」
かなめ「他のみんなだってそう。貴女とリーネちゃんを信じているから、何もしなかった」
芳佳「……」
かなめ「食堂でハルトマンさんがあたしを睨んだでしょ。あれって、余計なことをするってことだったはずなの」
芳佳「みんなが私を……」
かなめ「お願い。芳佳ちゃん」
芳佳「……はい。リーネちゃんは世界で一番、大事で大切で、大好きな友達ですから」
かなめ「こっちは任せて。いつでも飛べるようにしておくから」
芳佳「はい!! お願いします!!」
かなめ「了解!!」
芳佳(リーネちゃん……私に何ができるのか分からないけど、リーネちゃんの笑顔だけは、守りたい……)
ブリタニア空軍本部基地 研究施設
マロニー「紹介しよう。これが開発途中でのウォーロックだ」
テッサ「これが……」
マロニー「どうしても操作系に難があってね。テスト段階で暴走してしまうことが多々ある」
テッサ「禍々しいですね。まるで悪魔を見ているようだわ。これを本当に宮藤博士が開発したのですか」
マロニー「その通りだ」
テッサ(資料を読む限り、こんなものを作る人物ではないような気がするけど。この男の思想が途中で混入してそう)
マロニー「早速で申し訳ないが、知識を分けてもらえるかな」
テッサ「……」
マロニー「拒否するか」
テッサ「まずは色々と見せてもらわないと。ウィスパードは万能ではありませんので」
マロニー「なるほど。いいだろう。好きなだけみたまえ。人類の英知を」
テッサ「英知ね……」
テッサ(さて、どうしましょうか。壊してしまうのは簡単だけど、露骨にそんなことはできないし)
マロニー(これで軍事バランスのイニシアチブを握ることができる……ついに達成できる……)
デ・ダナン 格納庫
マデューカス「……」
マデューカス(艦長は私に何を託したのだ。考えたくはないが……)
マデューカス「このチップに何が入っている……」
マオ「中佐。こんなところで油をうってたんですか」
マデューカス「何の用だね。君たちには待機を命じておいたはずだが」
マオ「待機ってのは要するにいつでも作戦行動を開始できるようにしておけってことですよね。だったら、あたしはここにいたほうがいいと思いません?」
マデューカス「よく舌が回るものだな」
マオ「どうなると思います?」
マデューカス「そんなつまらん質問をするために話しかけてきたのかね」
マオ「つまらない質問とはずいぶんですね。この状況に恐怖を感じない奴がいるとでも」
マデューカス「上官から心配するなという安上がりな言葉を聞きたいか」
マオ「それだけで部下っていうのは安心できたりするんです」
マデューカス「なっとらんな」
マオ「そーかもねー」
501基地 ブリーフィングルーム
美緒「大まかな作戦は相良の案でも構わん。が、修正はさせてもらう」
宗介「それはむしろ願いたいところだった」
ミーナ「基地にはサーニャさん、ペリーヌさん、それから宮藤さんとリーネさんを残します」
サーニャ「はい」
ペリーヌ「了解」
美緒「他の者は状況により配置を変える」
エーリカ「ネウロイ次第ってことだな」
美緒「いつでも飛べるようにしておけ。準備は怠るな」
バルクホルン「了解」
ルッキーニ「ねえねえ、ソースケ。クルツはどうしたの? どっかにいるんでしょ?」
宗介「クルツも基地を守るために残す。でなければ、対処できないこともあるだろうからな」
ペリーヌ「まぁ、リーネさんがどうにかならないと、お話になりませんけど」
エイラ「サーニャ、あとで調整に付き合う」
サーニャ「ありがとう、エイラ」
格納庫
かなめ「ここを……こうして……」
シャーリー「千鳥!? なにしてんだ!?」
かなめ「あぁ、シャーリーさん。どうも」
シャーリー「お前、ユニットを……?」
かなめ「うん。ソースケが持ってた修理キットでギリギリなんとかなりそうだから」
シャーリー「すげえな。こんな部品でここまで直したのか」
かなめ「うん。リーネちゃんには飛んでもらわなきゃ、困るでしょ?」
シャーリー「まぁな」
かなめ「だから、あたしだってこれぐらいはぁぁ……」ググッ
シャーリー「手つきが危なっかしいな」
かなめ「だって、慣れてないんだもん」
シャーリー「あたしにもやらせてくれ。ここまで直ってるなら手伝えることも多いからね」
かなめ「いいの?」
シャーリー「聞くなよ、そんなこと」
基地周辺
クルツ「ふぃー。夕暮れが綺麗だなぁ」
宗介「詩人にでも転向するつもりか」
クルツ「こんなもんで詩人になれるなら、楽なもんだぜ」
宗介「酒だ。飲め」
クルツ「お前にしては、気が利くじゃねえか」
宗介「俺たちは待つだけになったからな」
クルツ「そりゃ退屈だな」
宗介「ああ」
クルツ「信じていいんだよな」
宗介「心配なら様子を見てくればいい」
クルツ「見に行っても俺にできることはリーネちゃんのパンツとおっきな胸を眺めることしかできねえよ」
宗介「この世界ではズボンというらしいぞ」
クルツ「ズボンなのか? そりゃ恥じらいもねえわけだ」
宗介「しかし、あのズボンは中々すぐれている。あのズボンだからこそ、ストライカーユニットを履いても衣服を傷つけることがないからな」
>>316
クルツ「見に行っても俺にできることはリーネちゃんのパンツとおっきな胸を眺めることしかできねえよ」
↓
クルツ「見に行っても俺にできるのはリーネちゃんのパンツと大きな胸を眺めることだけだ」
リーネの部屋
リーネ「わたし……なにしてるんだろう……」
リーネ「どうして……ここにいるんだろう……」
リーネ「お姉ちゃんやお母さんみたいなウィッチになんてなれないのに……」
リーネ「501はみんなすごい人で……芳佳ちゃんだって……すごい……」
リーネ「わたしだけが……足手まといで……」
リーネ「……」
『リーネちゃん!!!』
リーネ「きゃっ」
『えーと……えー……』
リーネ「芳佳……ちゃん……」
『ご飯、一緒に食べよう!!! じゃない……そういうことじゃないよね……』
リーネ「……」
『お風呂とか一緒に入ろう!!! それで……でへへ……いや!! そういうことでもなくて!!』
リーネ(また、私が迷惑をかけてる……。もう……いや……大好きな友達にまで……私は……)
廊下
芳佳「なんていえばいいのか、よくわからないけど……その……」
芳佳「私は、リーネちゃんが大好きだから!!」
芳佳「ご飯だって一緒に食べたい!! お風呂だって一緒に入りたい!! 一緒のベッドで寝たい!!」
芳佳「空だって一緒に飛びたい!! なんだってリーネちゃんと一緒がいいの!!」
芳佳「だから、一緒に辛い訓練もする!! 苦しいことだってする!! リーネちゃんと二人なら、怖いものなんてないし、できないこともない!!」
芳佳「私はリーネちゃんを守りたい!! リーネちゃんにはずっと笑顔でいてほしい!! リーネちゃんが大切だと思うものは私にとっても大切なものだから!!」
芳佳「リーネちゃんが守りたいものは私だって守りたい!!」
芳佳「はぁ……はぁ……」
芳佳「だから……私が大切にしたいものも、守りたいものも……リーネちゃんに守ってほしいな……」
芳佳「……」
芳佳「それだけ!! リーネちゃん!! 会議で決まったことを紙に書いておいたから!! ドアの隙間からいれるね!!」
芳佳「はい、これ」スッ
芳佳「また来るね」
芳佳「……おやすみ、リーネちゃん」
滑走路
ペリーヌ「試したことはありませんでしたが、わたくしとサーニャさんでそれだけのことができますの?」
サーニャ「理論上はできるはずです」
ペリーヌ「まぁ、やってみないことにはわかりませんわね」
サーニャ「やりましょう」
エイラ「こっちは準備できたぞ」
ペリーヌ「了解。いきますわよ」ピコンッ
サーニャ「はい、お願いします、ペリーヌさん」ギュッ
エイラ「くそ……手を握らなきゃできないのかよぉ……」
エーリカ「いいじゃん、こういうときぐらいはさ」
バルクホルン「……」
エーリカ「何か心配ごとか?」プニッ
バルクホルン「ふぉふふふぉ」
エーリカ「なんだって?」
バルクホルン「だぁー!! 突くなと言ったんだ!!!」
エーリカ「リーネのこと?」
バルクホルン「信じていないわけではない。だが、ああいうことで潰れた者も私は少なからず見てきた」
エーリカ「そーだね」
バルクホルン「この作戦には一人でも欠けては成功しない」
エーリカ「信じるしかないね。リーネは501の一員だってことをさ」
バルクホルン「お前はいつもそうだな。仲間のことを誰よりも気にかけ、それ以上に信頼している」
エーリカ「それができなきゃ、仲間じゃないよ」
バルクホルン「エーリカ……」
エーリカ「私がリーネと話しても良かった。ペリーヌがリーネの部屋で前でウロウロしてるの何回か見たけど、結局は何もしなかった」
バルクホルン「自力で這い上がることを信じているからか」
エーリカ「ま、私たちの言葉じゃリーネはどうにもできないだろうしねー」
バルクホルン「あとは宮藤に賭けるしかないな」
エーリカ「ぶっぶー、はずれー」
バルクホルン「なに?」
エーリカ「賭けるんじゃない。宮藤を信じるんだ」
数日後 執務室
美緒「マロニーから何か連絡でもあったか」
ミーナ「いいえ。向こうの状況は相良軍曹がこまめに確認をとっているみたいだけれど、変わりなしだそうよ」
美緒「テスタロッサ大佐はどうなっている?」
ミーナ「それも不明ね。潜水艦には戻ってこないようだけれど」
美緒「艦長が囚われているということか」
ミーナ「何かを作らされている可能性もあるわね」
美緒「ミスリルの技術を使えば、ネウロイの撃破も容易になるかもしれんからな」
『ヴィルケ中佐はここにいるか』
ミーナ「誰ですか?」
『アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニンだ』
美緒「ミスリルの少佐か。数日、姿を見ていなかったが」
『情報を集めていた』
ミーナ「何か?」
『貴女たちの知識が欲しい。話を聞いてもらえないだろうか』
カリーニン「知り得た情報は以上だ」
美緒「よくここまでの機密情報を収集したな」
カリーニン「それが私の任務だったからな」
ミーナ「宮藤理論による異次元空間の解放……?」
カリーニン「宮藤博士が目指していたものはネウロイを倒す兵器を作ることではなく、ネウロイの出現を抑える方法だったのかもしれない」
美緒「……」
カリーニン「事実、ユニットにも使われている異次元に足を収納するという方法は、その実験の一つであったことが読み取れる」
ミーナ「倒すのではなく、抑える……」
カリーニン「また、宮藤博士のネウロイ調査資料にはこういうことも書いてあった。ネウロイと人類は共存できる可能性が残されている、と」
美緒「ありえん」
カリーニン「これは一科学者の意見でしかない。故にこの文言は黒塗りされていることが多かった」
ミーナ「それで、カリーニン少佐は何を私たちに訊ねたいのでしょうか」
カリーニン「大規模な異次元空間の入り口を発生させる手段だ」
ミーナ「そんなの聞いたことが……」
カリーニン「できるはずだ。現にユニットは魔法力に反応し、その扉をあけている」
ミーナ「だから、それだけのものを作り出すことはできません」
カリーニン「坂本少佐の意見は?」
美緒「……はっきり言えば、できるかもしれん」
ミーナ「え……」
美緒「ただし、とてつもないエネルギーが必要になるだろう」
ミーナ「どうしてそんなことがいえるの?」
美緒「ユニットの開発中、一度だけだが目にしたことがある。そのことは墓まで持っていくつもりだった」
カリーニン「何を見た」
美緒「ユニットが熱暴走を起こしてな。その際、小さな爆発が起こった」
ミーナ「それで?」
美緒「その場にあったユニットの試作機が消えうせた」
カリーニン「その事故は何故公表されなかった」
美緒「宮藤博士に言われた。口外はするなと。その理由は……今思えばネウロイと少なからずつながるものだったからだろうな……」
ミーナ「それを今、破ったのね」
美緒「しかし、それで扉があいたとして、どこに消えるかは分からんぞ」
カリーニン「承知している。あとの判断は大佐殿に委ねるつもりだ」
美緒「その大佐も今や囚われの身だがな」
カリーニン「相良軍曹から聞いている。作戦開始はネウロイの出現を確認した瞬間とも」
ミーナ「ええ。貴方はどうするつもりですか」
カリーニン「私の任務はこの資料と情報を大佐殿に届けるまで続く」
美緒「では作戦には参加するか」
カリーニン「できることがあればな」
美緒「人手は慢性的に不足している。特にお前のような歴戦の兵士は喉から手が出るほど欲しい」
カリーニン「そこまで評価してくれるか」
美緒「少佐、お前の役目は――」
『応答せよ』
ミーナ「こちら、ミーナ。どうしたの?」
『リトヴャク中尉がネウロイの反応を感知した』
美緒「来たか……」
『しかし、問題がある。ネウロイの数が50はあるとのことだ』
滑走路
エーリカ「多いね」
バルクホルン「全て小型だろう」
サーニャ「いえ……戦闘機ぐらいの質量が……」
かなめ「それが50もいるわけ……?」
ペリーヌ「想定外すぎますわよ。どうしますの」
宗介「作戦に変更はない」
エイラ「お前が仕切るなよ」
美緒「相良の言う通りだ。作戦に変更はない。総員、出撃準備だ」
エーリカ「さーて、いくかぁー」
シャーリー「幸い、ネウロイの群れは一直線にこっちへ向かってきている」
ミーナ「シャーリーさん、ルッキーニさん。貴方たちは一体でもいいからネウロイを誘導し、目標空域にて撃破して」
シャーリー「了解」
ルッキーニ「あい!」
宗介(50か。都合がいいのか悪いのか……。だが、俺のやることは変わらん)
美緒「ここが最終防衛ラインだ。恐らく複数体のネウロイはこちらに流れてきてしまうだろう。そのときは……」
クルツ「クルツくんの出番だろ。任せとけって」
美緒「あと、リーネもつける」
ペリーヌ「そのリーネさんはまだ部屋から顔すら出していないようですけど」
かなめ(間に合うよね……)
サーニャ「芳佳ちゃんが毎日、リーネちゃんの部屋の前で叫んでたみたいだけど……」
ペリーヌ「相良さんの作戦、失敗かもしれませんわね」
宗介「……」
ペリーヌ「何か?」
宗介「クロステルマン中尉。憎まれ役を買って出るのはいいが、もっと感情を隠せ。中尉の顔から本心が丸見えだぞ」
ペリーヌ「な、ななな!! なにがですの!?」
サーニャ「リーネさんの心配をしているのがよくわかるってことですよね」
宗介「肯定だ」
ペリーヌ「おかしなことをいわないでくださいな!!!」
美緒「はっはっはっは。この状況でいつも通りなら、問題はないな。行くぞ!! 出撃だ!!」
ブリタニア空軍本部基地 デ・ダナン内
マオ「ネウロイの群れが501の基地へ向かっているそうですが、あたしたちは待機でいいんですか」
マデューカス「……」
マオ「艦長はまだ戻ってきません。指揮権は中佐にあるはずです」
マデューカス「そのような命令は受けていない」
マオ「では、そのチップに入っているものを確認しますか」
マデューカス「……そうだな。このときのために艦長はこれを用意したのだろう」
マオ(テッサ……あとで必ず、迎えにくるからね……)
マデューカス(艦長……)ピッ
『この音声を聞いているということは、その場に私はいないのでしょう。そしてすぐには戻れないことになっている』
マデューカス「その通りです」
『ネウロイが出現したのか、それとも戦艦と対峙しているのかわかりませんが、一言だけ言っておきます』
マオ「テッサ、もしかして……」
『艦長命令です!! 遠慮はせず全力で戦ってください!!! マデューカスさん!! 全弾撃ち尽くす勢いで構いません!!!』
マデューカス「――アイアイ、アム!! 戦闘準備!!」
施設内
ドォォォン!!!
マロニー「なんだ、今の音は!?」
「潜水艦が出航した模様です!! 扉を破壊し、海へ出ました!!」
マロニー「バカな。こちらには艦長がいるというのにか」
テッサ「ふふふ」
マロニー「何がおかしい」
テッサ「既に命令はしてあります。全力で暴れるようにと」
マロニー「何故、そのようなことを……」
テッサ「世界を守るために余力を残す意味なんてあるんですか?」
マロニー「小娘め……」
テッサ「ミスリルの兵器は世界を牛耳るためにはありません。世界平和のためにあります」
マロニー「ぐっ……」
テッサ「マロニー大将、一つだけ言っておきます。貴方はウィッチに負け、そしてここにいる小娘にも負けるのよ。悔しいでしょう?」
マロニー「おのれ……!!」
上空 目標空域
シャーリー「ルッキーニ、この辺りだ!!」
ルッキーニ「おっけー!! 一匹、ついてきたー!!」
ネウロイ「……」ゴォォォォ!!!!
シャーリー「いくぞ!!」
ルッキーニ「あい!!」
ネウロイ「……」ピカッ!!!
ルッキーニ「うにゃ!!」バァン!!!
パリィィン……!!
シャーリー「なんだ、拍子抜けだな」
ネウロイ「……」ゴォッ!!!
シャーリー「おぉっと!?」
ルッキーニ「もう一匹きたー!!」
シャーリー「おいおいおい。ルッキーニ、何匹もつれてくるなよ」
ルッキーニ「ごめんなさーい。にゃはは」
上空
シャーリー『こっちに10体ついてきた。残りはそっちで頼むぞ』
バルクホルン「大丈夫なのか!?」
ルッキーニ『だいじょーぶじゃなーい!!』
美緒「ちっ……まずいな……」
エーリカ「私がいこうか?」
ミーナ「でも、40体はこのルートを通るのよ?」
エイラ「一人でも人数ほしいよなぁ」
美緒「……いや、向こうが二人だけというほうがまずい。ハルトマン、至急――」
『問題はない』
美緒「誰だ?」
『我々に任せてもらおうか』
美緒「お前は……」
『空が安全圏ではないことを、教えてやる』
ミーナ「マデューカス中佐……何を……」
目標空域
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!
シャーリー「ルッキーニ!! 下からなんかくるぞ!!」
ルッキーニ「え!?」
ゴォォォ!!!
シャーリー「ミサイル!?」
ルッキーニ「あにゃー!?」
ドォォォン!!!
シャーリー「び、びびった……」
ルッキーニ「すごーい……」
マデューカス『驚かせてしまったようですな』
シャーリー「撃つなら、撃つっていってくれ」
マデューカス『イェーガー大尉。こちらに流れてくるネウロイは全て撃ち落とす』
シャーリー「了解。撃ち漏らさないでくれよ」
マデューカス『舐められたものだ。最強の艦ということを証明してみせよう』
上空
美緒「どうやら、向こうは強力な助っ人が登場したようだ」
バルクホルン「ならば、こちらはこちらの仕事をするだけだな」
エーリカ「すご。なんかいやーな大群だね。気が滅入りそう」
エイラ「楽しそうにみえるぞ」
ミーナ「みんな。無理はしないで。そして、生きて戻りましょう」
バルクホルン「了解だ」
エーリカ「トゥルーデ、目標撃墜数は?」
バルクホルン「40だったな。ならば、15にしておくか」
エーリカ「じゃ、私は20で」
美緒「来るぞ!!」
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!
エイラ「まずは私からだぁ!!!」ズガガガガ!!!
パリィィィン……!!
エーリカ「やるなぁ、エイラぁ。こっちもがんばろーっと」
501基地 リーネの部屋
リーネ「みんなが……戦ってる……」
リーネ「でも……私は……飛べもしない……」
芳佳『リーネちゃん!!』
リーネ「もうやめて……私はもう……」
かなめ『リーネちゃん、直ったわよ!! あなたのストライカーユニット!! 完璧に!!』
リーネ「え……」
かなめ『出てきて!! 貴方はもう飛べるの!!』
芳佳『リーネちゃん、一緒に飛ぼうよ!!』
かなめ『貴方がいないと、大変なことになるかもしれないの!! だから……!!』
リーネ「うぅ……」
芳佳『リーネちゃん……。私、行ってくるね』
かなめ『芳佳ちゃん、待って」
芳佳『リーネちゃんの故郷をネウロイになんて奪わせない。絶対に』
リーネ「やめて……やめて……」
M9内
美緒『クルツ!! そちらへ一体向かった!!』
クルツ「任せときなぁ。一発で仕留めてやるぜぇ」カチッ
パリィィン……!!
クルツ「俺ってやっぱり天才だなぁ」
エーリカ『クルツくん! もう一体いったよー!!』
クルツ「おっけー、おっけー。まかせとけー」
バルクホルン『もう一体、抜けた!!』
クルツ「おうよ!! まだまだ余裕だこらぁ!!」
ミーナ『二体抜けたわ!!』
クルツ「ちょっと抜かれすぎじゃねえか!?」
バルクホルン『無理をいうな!!』
エーリカ『こっちだってがんばってるんだから!!』
クルツ「わかってるけどよ。これじゃあ――」
ネウロイ『……』ゴォォォ!!!
滑走路
M9『やべぇ……!!』
ネウロイ「……」ピカッ!!!
芳佳「でやぁぁぁ!!!」ギィィィン
M9『芳佳ちゃん! 助かった!!』ドォォン!!!
パリィィィン……
芳佳「クルツさんは私が守ります!」
M9『了解だ。俺が鳥を撃ち落とせばいいんだな』
芳佳「よろしくお願いします!!」
M9『で、リーネはどうなんだ』
芳佳「……リーネちゃんは、私が守ります」
M9『そう決めちまったか』
芳佳「はい」
M9『言ったからには守れよ。俺はなにもしねえぞ。芳佳が守るんだ。いいな』
芳佳「分かってます!!」
格納庫
ペリーヌ「本当にこのまま待機でいいんですの」
サーニャ「命令ですから」
ペリーヌ「だからって、目の前で宮藤さんとウェーバーさんが戦っているのに……」
サーニャ「私も同じです」ギュッ
ペリーヌ「サーニャさん……あなた……」
サーニャ「今すぐにでも飛び出していきたい。芳佳ちゃんを助けたい。エイラの援護をしたい。でも、ここで私が動けば作戦が台無しになるから」
ペリーヌ「そうですわね。我慢しましょう。ここで飛び出すのは素人ですわ」
サーニャ「そういえば、こうしてペリーヌさんと二人で何かをするって初めてですね」
ペリーヌ「そうですわね」
サーニャ「……」
ペリーヌ「み、見つめないでくださいな」
サーニャ「がんばりましょう」
ペリーヌ「勿論ですわ」
サーニャ「がんばって……」
ブリタニア空軍本部基地
テッサ「ぐっ……!!」
マロニー「すぐに攻撃を中止させろ」グイッ
テッサ「貴方は自分の座る立派な椅子を守りたいだけなのですね」
マロニー「……」
テッサ「お笑いだわ。貴方の下につく彼女たちが不憫ね」
マロニー「ふんっ」グイッ
テッサ「つっ……」
マロニー「女のくせによく吠える」
テッサ「言ったはずよ。貴方の負けだと。もう諦めなさい」
マロニー「――501に告ぐ、ただちに帰投したまえ」
テッサ(この男、本当にサイテーね……)
ミーナ『正気ですか!? この状況で私たちが銃を下せばどうなると思うのです!?』
美緒『マロニー大将!! 暴走も大概にしておけ!!』
マロニー「これは命令だ。それとも聞けないというのかね」
バルクホルン『ふざけるな!!! そのような命令が聞けるものか!!!』
エーリカ『いい加減にしないと、シュトゥルムぶっぱなすぞ』
エイラ『それはやめといたほうがいいな』
マロニー「そうか……。私の命令が聞けないか」
テッサ(どうしてそこまで501を妨害しようとするの……? ウォーロックの情報が漏えいすることを恐れて……? それとも……)
マロニー「こちらも断固たる対応をしなくてはならんな」
シャーリー『勝手にしろ!!』
ルッキーニ『あたしたちはやりたいようにする!!』
マロニー「残念だが501は……」
宗介「そこまでだ」
マロニー「な……!?」
テッサ「相良さん!!」
宗介「マロニー大将殿。貴方のそれは明らかな越権行為です」
マロニー「越権だと? 私の立場を知らないのか」
宗介「知っている。ストライクウィッチーズの上官です。貴方には501に対する最終決定権が与えられている」
マロニー「そうだ。私にはウィッチたちに命令する権利がある」
宗介「そのようです」
マロニー「どこが越権行為なのかね」
宗介「……」
マロニー「そもそもお前はどこの所属だ」
宗介「所属か。そうだな。ここではこう名乗っておくか。ミスリル作戦部西太平洋戦隊、相良宗介軍曹だ」
マロニー「小娘の仲間だったか。潜水艦から逃げ出してきたのだな」
宗介「そんなことはどうでもいい。大佐殿は返してもらう」
マロニー「どういう結果をもたらすか、分かっているのか?」
宗介「なに?」
マロニー「これは立派なテロ行為だ。そしてそれを手引きしたのは501のウィッチたちとなる」
宗介「……」
マロニー「それでも君はテスタロッサ大佐を連れていくというのだな」
宗介「501をテロリスト集団にするというのか」
マロニー「お前たちの行動はそれと同義だろうに」
宗介「そうか……。それはたまらんな」
テッサ「相良さん……」
マロニー「理解できたか。さぁ、その娘を――」
宗介「ふざけるなよ、この糞野郎ぉぉ!!!」
マロニー「な……に……」
テッサ「……」
宗介「彼女たちがテロリストだと!? 貴様は自分の部下が何をしているのかもわからないのか!!!」
マロニー「口を慎め、異世界の人間め。捉えようによってはネウロイと同じ存在であるのだぞ」
宗介「彼女たちがこの空を守るためにどれだけ悩み、苦しんでいるのかもお前は知らないというか」
マロニー「ふん。兵士の悩みなど一々気にしていては、大将は務まらんよ」
宗介「なるほどな。お前は豪華な椅子に座るだけの無能な男なのだな」
マロニー「き……!」
宗介「椅子を宮藤かリーネに明け渡せ。まだ新兵を座らせたほうが世界は平和になる」
マロニー「それ以上、言葉を並べるのならば……」チャカ
宗介「そのような脅しで退くのは素人だけだ。そしてそのような脅しをするのも素人だ」
501基地 リーネの部屋
リーネ「私は……飛ぶ資格なんて……」
バンッ!!
リーネ「え……!?」
かなめ「……」
リーネ「な、なんですか……?」
かなめ「これつけて!」
リーネ「や、やめて」
かなめ「いいから、つける!! ほら!!」
リーネ「私は……もう……」
『ふざけるなよ、この糞野郎ぉぉ!!!』
リーネ「きゃぁ!?」
かなめ「どう? びっくりした?」
リーネ「これ……相良さん……?」
滑走路
芳佳「相良さん……」
マロニー『素人だと?』
宗介『そうだ。それも最低最悪のな。いいか、よく聞け、無能三流指揮官。お前が予算を削減してくれたおかげで助かった命がある』
宗介『そいつは一人の戦友に置いて行かれる恐怖から指の皮膚が裂けるまでトリガーを引き続けていた。何時間も無駄な努力をしたあげく、自分の殻に閉じこもり、戦友に迷惑をかけている』
宗介『マロニー大将。俺は感謝している。そんな兵士が戦場に出ればまず死ぬからだ。ユニットが修理できなくてよかったと心から思う』
芳佳「……」
宗介『だがな、銃に弾が込められているかもわからん三流兵士でも、お前よりは立派な志を持っている』
宗介『彼女が何故、そこまで焦っていたのか、お前には絶対にわからん!!!』
マロニー『黙れ!!』
宗介『いいか!! リネット・ビショップ軍曹は志だけならば一流だ!!! 彼女は戦友と共にこの空を守りたい一心だったんだ!! だからこそ、無駄なことを繰り返した!!!』
宗介『分かるか!! 彼女の悔しさが!! 彼女の苦痛が!!! 世界の空を守るなどという大役を押し付けられて尚、努力するリネットの気持ちが!!!』
芳佳「……っ」
宗介『リネットだけではないぞ!!! ウィッチたちは常に世界を想い、銃とユニットを磨いている!!! そんな者たちに対して貴様はテロリストだと罵るのか!!!』
芳佳「……行かなきゃ」
上空
美緒「ふっ……」
宗介『ここで貴様を射殺するのは簡単だ!! だがな、それでは501に泥をかける結果になる!!』
バルクホルン「少佐!!」
ネウロイ「……」ゴォッ
美緒「はぁぁぁぁ!!!」ザンッ!!!
パリィィィン……!!
エーリカ「シュトゥルム!!!」
宗介『この世界は平和だ。理想郷だといってもいい。文化も思想も違うものたちが背中を預合い、一つの脅威に立ち向かっている』
ミーナ「こっちは片付けたわ!!」
バルクホルン「あと10だ!!」
美緒「最後まで気を抜くな!!」
宗介『俺はそんな世界を羨ましく思う。この世界で生きてみてもいいと思えるほどだ』
エイラ「うらぁぁぁ!!」
ミーナ「あと9よ!!」
目標空域
ネウロイ「……」ゴォォ!!
シャーリー「マデューカス中佐!! 頼む!!」
マデューカス『了解。トマホーク、発射』
ドォォォン!!
マロニー『この世界はおかしいと私は思うがね』
宗介『なんだと』
マロニー『魔法という力があるだけで英雄になれる。女だけが容易く称賛され、男は硝煙を体に染み込ませようが、泥をつけようが、評価にはつながらん』
宗介『だから、お前は501の活動を妨害するのか。稚拙な嫌がらせで』
マロニー『世間は結果しか見ない。ウィッチというだけで持ち上げ、地べたを這いつくばる兵士には見向きもしない。そんな世界が正しいと思うのか』
ルッキーニ「……」
シャーリー「ルッキーニ、止まるな!!!」
マロニー『戦果をあげるのは常に空を駆けるウィッチなのだよ。貴様はウィッチがどれだけ苦労しているのかを語ったが、そんなもの兵士ならば当然の努力だ』
マロニー『甘い目で見られるウィッチが活躍する。そして周囲はウィッチにだけ目を向ける。この悪循環を断つには、501には止まってもらうしかないだろう』
宗介『そういう考えがあったのか。なるほどな。お前の言い分もわからんでもない』
格納庫
ペリーヌ「まだですの……」
サーニャ「……」
宗介『だが、やはりお前は三流だ。権力や武力で反抗する。それこそテロリストと何ら変わらん!!」
マロニー『きさまぁ……』
宗介『名声が欲しいのならば戦果をあげろ!! お前の実力でな!!!』
宗介『ウィッチたちも傷つきながら成果を出している!! 予算を削られようが、監視されようが、出撃禁止令を出されようが、腐ることなく、命令をも無視してまで戦っている!!!』
宗介『並の兵士にそこまでのことができるとは俺は思わん!! ウィッチたちは魔法を抜きにしても、貴様よりも優秀だ!!!』
マロニー『黙れ、異世界の人間が!!』
『バァン!!!』
ペリーヌ「相良さん!? 無事ですの!?」
宗介『問題ない』
サーニャ「よ、よかった……」
ペリーヌ「今のやり取りを拾ったほうがよろしかったのでは?」
宗介『いや、俺の存在をこの世界に広めても意味がない。ウィッチでなければ、ならないんだ』
リーネの部屋
かなめ「リーネちゃん。今のを聞いてもダメかな」
リーネ「……」
かなめ「そっか……」
リーネ「私……私は……」
芳佳「リーネちゃん」
かなめ「あ……」
芳佳「……」
リーネ「芳佳ちゃ――」
芳佳「……」
リーネ「な、なに……」
芳佳「ごめんね」
リーネ「え……」
芳佳「リーネちゃんの気持ちに気が付けてなかった……大事な大好きな友達なのに……」
リーネ「やめて……私が悪いの……私が……」
芳佳「私はリーネちゃんの傍にいる。ここにいるから」
リーネ「……」
芳佳「失敗なんて私もする。私は何もすごくない。ただ、みんなに助けられてるだけ。リーネちゃんも含めて、みんなに」
リーネ「私は……なにも……」
芳佳「もしリーネちゃんがここにいるっていうなら、私もここにいる。私はリーネちゃんと一緒に戦いたい。私だって、リーネちゃんに守られたい」
リーネ「芳佳……ちゃん……」
芳佳「私を守って、これからもずっと。私の隣で」
リーネ「……」
クルツ『芳佳ぁ!! 戻ってきてくれ!! おかしなネウロイが……い……』
芳佳「クルツさん、どうしたんですか!? クルツさん!?」
かなめ「ジャミングをかけてくるネウロイがきたんだわ」
芳佳「それって、私が夜間哨戒のときに遭遇したネウロイ……」
かなめ「どうするの?」
リーネ「……私のユニットは、直っているんですよね?」
かなめ「ええ。いつでも、どこにでも、いけるわ」
格納庫
ペリーヌ「無線が完全に使えませんわね」
サーニャ「1体のネウロイが真っ直ぐこっちに向かってきてます」
ペリーヌ「口頭でウェーバーさんに伝えないと」
リーネ「その必要はありません」
ペリーヌ「リーネ……さ……ん……」
サーニャ「大丈夫ですか?」
リーネ「うん」
芳佳「行こう、リーネちゃん!!」
リーネ「リネット・ビショップ!! 発進します!!」ブゥゥゥン!!!!
ペリーヌ「大遅刻ですわね。新人はこれだから嫌ですわ」
サーニャ「ペリーヌさん、嬉しいんですね。私もうれしくて、つい顔が綻んで……」
ペリーヌ「わ、わわ、笑ってなんていませんわ!!!」
かなめ「でも、あのネウロイを倒すのは難しいんじゃない? フリーガーハマーでも仕留められないほど、装甲が厚かったはず」
ペリーヌ「は、はい?」
M9内
クルツ「誰か応答してくれ!! おい!!」
クルツ「ちぃ、どうなってやがる!!」
コンコン
クルツ「ん?」
かなめ『クルツくん!! 聞こえる!?』
クルツ「ああ、聞こえるぜ」
かなめ『いい? よく聞いて!! こちらに向かってきているネウロイはクルツくんの攻撃だけじゃ抜けないの!! リーネちゃんだけでもダメ!!』
クルツ「どういうことだ?」
かなめ『とにかく!! 同時に攻撃を当てないとダメなの!! いい!? 同時に左右から着弾させるの!!』
クルツ「同時にって言われても、どうやってタイミング合わせるんだよ。無線が通じねえんだぞ」
かなめ『これを使うわ』
クルツ「それって……」
かなめ『リーネちゃんにはもう伝えてある。合図したら撃って。いいわね』
クルツ「りょ、了解だ!!」
滑走路
かなめ「リーネちゃん、そろそろ所定の位置についたかしら」
サーニャ「千鳥さん……それを使うって……」
かなめ「これ可愛いイヤリングではあるけど、閃光弾なのよ。遠くに居てもわかるし、合図代わりにはもってこいでしょ」
サーニャ「代用のものを探します。だから、待ってください」
かなめ「もう遅いわ。時間がないもの」
サーニャ「でも……それは大切なものなんでしょう……」
かなめ「あいつなら、褒めてくれるわ。良い判断だ、千鳥。ってね」
サーニャ「その言い方……相良さん……」
かなめ「あ……。な、内緒よ。恥ずかしいから」
サーニャ「いいんですか?」
かなめ「いいの。また作ってもらうわ」
サーニャ「分かりました」
かなめ「サーニャちゃん。ネウロイが二人の射線軸に入る一秒前に声をかけて、その瞬間あたしが閃光弾を炸裂させるから」
サーニャ「了解!」
サーニャ「……今です!」
かなめ「おりゃぁぁぁ!!!」カチッ
ボォン!!!
M9『いけ、おらぁ!!』
リーネ「発射!!!」
パリィィン……!!
かなめ「よっしゃぁ!! 大成功!!!」
サーニャ「……まだ、いる」
かなめ「え?」
美緒『――応答しろ!!!』
芳佳『さ、坂本さん!! 今、倒したネウロイが小さく分裂しました!!』
美緒『魔眼で確認した!! 宮藤!! リーネ!! 出来うる限り叩き落とせ!!!』
芳佳・リーネ『『了解!!』』
ブリタニア空軍本部基地
マロニー「どうやら、苦戦を強いられているようだな」
宗介「そのようだ」
マロニー「ここまで大見得をきって、作戦に失敗してみろ。501の失墜は免れんな」
宗介「それはどうだろうな」
マロニー「なんだ、お前の余裕は……」
カリーニン「大佐殿、ご無事ですか」
テッサ「カリーニンさん。はい、私は傷一つありません」
マオ「ようやくここまでこれたわ。ソースケ、こっちは任せて、あんたは支援に向かいな」
宗介「その必要はない」
マオ「え……」
宗介「俺の戦友に弱卒はいない」
マオ「あ、そ」
マロニー「小型とはいえ、あれだけの数をたった二人で殲滅できるわけがない」
宗介「地獄から舞い戻った兵士は恐ろしいぞ。地獄を見ている分、恐怖がないからな」
501基地 格納庫
宗介『そろそろ始めるか。クロステルマン中尉、リトヴャク中尉。用意はいいか』
ペリーヌ「待ちくたびれましたわ」
サーニャ「いつでも、いけます」
宗介『了解。では、やるぞ』
マロニー『何をするというのだ』
宗介『世界の空を守っているのはどういう人物なのか、世界中に流してやる。それを民衆が知れば、世間のプロパガンダは意味を成さなくなる』
マロニー『お前……』
宗介『そしてウィッチと共に戦った潜水艦をテロリストとして広めることも不可能になる』
マロニー『そんなことができるわけ……』
ペリーヌ「わたくしの魔法で貴女の魔導波を大幅に広げます」ピコンッ
サーニャ「私の魔導波を世界に向けて発信します」ピコンッ
美緒『やれ!!!』
ペリーヌ「トネール!!!」
サーニャ「んっ……」ピクッ
上空
ネウロイ「……」ゴォォッ!!!
芳佳「でやぁぁぁ!!!」
リーネ「芳佳ちゃん!! あのね!! 私も芳佳ちゃんと一緒がいい!! ずっと!! ずっと一緒がいいの!!」
芳佳「リーネちゃん! うれしい!!」
リーネ「私も芳佳ちゃんとずっと一緒にいたい!! 一緒にご飯を食べたい!! 一緒にお風呂入りたい!! 一緒のベッドで寝たい!!」
ネウロイ「……」ゴォォ
リーネ「芳佳ちゃんともっと、もっと、一緒にいろんなことがしたい!!!」ドォォン!!!
パリィィィン……!!
芳佳「私も!! リーネちゃんが傍にいてくれるだけで幸せだから!! リーネちゃんと出会えて幸せだから!!!」ズガガガガ!!!!
パリィィィン……!!
リーネ「芳佳ちゃん!! 大好きだよ!! ありがとう!!!」
芳佳「私も、リーネちゃんのことだーいすき!!」
ネウロイ「……」ゴォォォッ!!!
芳佳・リーネ「「やぁぁぁ!!!」」ドォォン!!!
ブリタニア空軍本部基地
『リーネちゃーん!!!』
『芳佳ちゃーん!!!』
宗介「……」
カリーニン「青春だな」
マオ「これ、すごいプロパガンダになりそうね」
テッサ「お二人ってそういう関係だったんでしょうか……」モジモジ
マロニー「これが世界に向けて伝えたかったことかね」
宗介「……そうだ」
マロニー「民衆を落胆させるだけではないか」
宗介「少なくとも、彼女たちが悪党ではないことははっきりした」
マオ「とってもピュアよね」
マロニー「これから、どうするつもりだね」
宗介「ここでできることは全て終わった。大将殿、俺たちを追ってくるというのなら、それ相応の覚悟でこい。俺たちは逃げも隠れもしない」
マロニー「ふん……」
カリーニン「さぁ、ここを離れましょう」
テッサ「はい」
マオ「ソースケ、いくよ」
宗介「了解」
マロニー「……」
テッサ「何か?」
マロニー「……あまり、調子に乗らないほうがいい」
カリーニン「悪足掻きが過ぎるぞ」
マロニー「ネウロイめ……」
テッサ「ネウロイ? 私たちが?」
マロニー「そうだ……お前たちは……ネウロイだ……」
テッサ「……」
宗介「行きましょう、大佐殿」
テッサ「ええ」
マオ「見張りの兵士が目を覚ます前にここを抜ける。ソースケはテッサと一緒にアーバレストでドライブしな。カリーニン少佐はあたしと来てください」
501基地 滑走路
芳佳『リーネちゃーん!! だーいすき!!』
リーネ『私も芳佳ちゃんのこと大好きだよー!!』
かなめ「あはは……」
M9『俺は今、新しい扉を開けた気がした』
かなめ「開かんでいい!!」
ペリーヌ「これが全世界に流れたのですか」
サーニャ「二人とも戦闘中なのに楽しそう……」
ペリーヌ「もう。――宮藤さん!! リーネさん!! 真面目にやりなさい!!! 戦闘中ですのよ!?」
シャーリー『まぁまぁ、戦闘も楽しめれば一流だろ。あたしも参加するぞー』
バルクホルン『何を言っているんだ!! リベリアン!!!』
エーリカ『やっほーい、わたしもまぜてー』
バルクホルン『お前たち!! これが全世界に流れていることを忘れるなぁぁぁ!!!』
美緒『はっはっはっは。これを聞いている全ての者に告げよう。第501統合戦闘航空団にいるのは、こうした者たちだ』
美緒『決して万能ではない。失敗を恐れもする。友人を、家族を愛する。そうした普通の人間だ。特別な者など一人もいない。そんな人間が空を守っている。それを私たちは知ってほしかった』
ペリーヌ「少佐ぁ……素敵な演説ですわぁ……」
エイラ『サーニャー、私のことも見ててくれー』
サーニャ「ちゃんと見ていたわ。エイラ、とってもかっこよかったもの」
エイラ『デヘヘヘ……』
美緒『ウィッチのことを勘違いしている者もいるだろう。英雄と呼ばれる者に対して抱く幻想は際限なく広がっていく』
美緒『ウィッチであろうと躓くことはある。人並みに悩み、苦しみ、弱音も吐く。戦う前は恐怖に潰されそうにもなる』
かなめ「坂本さん……」
美緒『諦めようと考えることもある。無理だと悟ることもある。できるわけがないと決めつけてしまうこともある』
ペリーヌ「少佐……」
かなめ(自分のことを言っているみたい。坂本さんも年齢には勝てないから……諦めるしかないから……)
美緒『英雄と呼ばれる者でもそんなことで飛べなくなることがある。ウィッチとしての重責に潰されてしまいそうになる者がいる』
美緒『そうした者に気合が足りない、根性がない、才能がない。……そんなことは言わないでくれ。それでは何も成せなくなる』
サーニャ「……」
美緒『そうした者が近くにいれば、私はこう告げる。――ウィッチに不可能はない!!』
ペリーヌ「はい!! ありませんわ!!」
デ・ダナン 発令所
マデューカス「青いな。実に青臭い。若者が言いそうなことだ」
美緒『飛べなくなっても、また飛べる!! 駆けることができなくなっても、絶また空を駆けることができる!!』
美緒『ウィッチとはそれだけの強さがある!!』
マデューカス「……」
美緒『だが、こう言ってしまうと、ウィッチだけにしかない強さなのだと思われるかもしれないな。言い直そう』
美緒『人類に不可能はない!!』
マデューカス「ふっ……」
テッサ「お待たせしました。あら? マデューカスさん、もしかして笑ってます?」
マデューカス「いえ。そんなことはありません」
テッサ「そうですか。では、行きましょうか」
マデューカス「どちらへ?」
テッサ「大切な仲間のところへ」
マデューカス「アイ、マム」
美緒『ウィッチだけがネウロイと戦えるわけではない。強力な兵器を持っているからネウロイと戦えるわけでもない。心が強い者がネウロイに立ち向かえるだけだ!!』
>>365
美緒『飛べなくなっても、また飛べる!! 駆けることができなくなっても、絶また空を駆けることができる!!』
↓
美緒『飛べなくなっても、また飛べる!! 駆けることができなくなっても、また空を駆けることができる!!』
上空
美緒「そして人間の心に優劣はない!! 想いの強さは皆平等だ!!!」
ネウロイ「……」ゴォォォ!!!
バルクホルン「砕けろぉ!!」
エーリカ「シュトゥルム!!!」
美緒「自分の心に隙を見せるな!! 気迫を見せろ!! 弱音は吐いても足は止めるな!! 進み続ければ活路はある!!」
エイラ「くらえぇ!!」
ミーナ「いくわよ!!」
美緒「想いが折れても下を見ずに前を見ろ!! そしてそのまま空を見上げろ!! そこには必ず手を差し伸べる者がいる!! 共に歩めば折れた想いはより強くなる!!!」
シャーリー「やってやる!!」
芳佳「守る!! みんなの笑顔も夢も!! この空だって!!」
リーネ「私だって!! 空を守りたい!!」
ルッキーニ「……そうだ!! 何を言われたっていい!! シャーリーたちがいればそれだけで!!」
美緒「その強さがあれば!! 不可能なことなどない!!!」
501基地 滑走路
宗介「千鳥」
かなめ「ソースケ、おかえり」
宗介「無事でよかった」
かなめ「あたしはヘーキよ」
宗介「ん? 千鳥、イヤリングはどうしたんだ? 今朝も装備していたはずだが」
かなめ「あ、ああ、使っちゃった。クルツくんとリーネちゃんに同時射撃してほしかったから、その合図代わりにね」
宗介「そうか」
サーニャ(やっぱり、少し残念そう……)
宗介「良い判断だ、千鳥」
かなめ「ぶふっ」
サーニャ「ふふっ……」
宗介「どうした?」
かなめ「い、いや……べつに……。ね、サーニャちゃん」
サーニャ「はい、千鳥さん。何もありません」
宗介「よくわからんが、二人は良好な関係になれているようだな」
かなめ「うん。だって、友達だもんね」
サーニャ「はいっ」
宗介「それは結構なことだ」
かなめ「それより、また新しいイヤリング、作ってよね」
宗介「了解した。また同じデザインでいいのか」
かなめ「今度は犬がいいかなぁー」
宗介「犬か。よし、わかった」
クルツ「それ、元の世界に戻れたらの話だろ」
宗介「うっ……」
サーニャ「心配しないでください。オリジナルのアクセサリーを作ってくれるお店なら知っていますから」
宗介「いや。普通の装飾品を作っても意味がない。千鳥に持たせることを考慮すれば実用性が優先される」
サーニャ「は、はぁ……」
ペリーヌ「みなさん、坂本少佐たちが戻ってきましたわよ」
宗介「そうか。では、こちらも大佐殿を呼んで来よう」
デ・ダナン 艦長室
テッサ「それにしても相良さんもカリーニンさんもよくあの場所へ辿りつけましたね」
カリーニン「相良軍曹も言っていたことですが、この世界は平和です。人間に対する警戒心は我々の世界よりも希薄といっていいでしょう」
テッサ「警備が薄かったと?」
カリーニン「ええ。とても軍事施設とは思えないほどでした。ただ、あの研究施設だけは異様に厳重でしたが」
テッサ「あとは力押しでの侵入ですね」
カリーニン「ネウロイも間近に迫っていましたし、混乱に乗じただけではありますが」
テッサ「流石です」
カリーニン「恐縮です」
テッサ「では、カリーニンさんが集めた資料、読ませていただきますね」
カリーニン「坂本少佐、ヴィルケ中佐にも話したことなのですが、この資料から元の世界に戻る手段が見つかりそうではあります」
テッサ「本当ですか?」
カリーニン「はい。ただし、成功する保障はどこにもありません」
テッサ(そもそも私たちがここへ来てしまった理由もまだはっきりしない。やはり宮藤理論を紐解かなければ……)
宗介『お話し中、失礼いたします。大佐殿、501の隊員が帰投しました』
501基地 格納庫
美緒「皆の者、よくやってくれた。今後も頼むぞ」
エーリカ「任せといてよ、しょーさ」
バルクホルン「調子に乗るな」
美緒「それから、リーネ」
リーネ「はい」
美緒「あとで話がある。私の部屋にこい」
リーネ「了解」
芳佳「坂本さん、リーネちゃんはもう大丈夫ですよ」
美緒「お前には関係のないことだ」
芳佳「でも!!」
テッサ「お待たせしまた」
ミーナ「いらっしゃい、テスタロッサ大佐」
テッサ「皆さんが無事に帰還されてよかったです」
ミーナ「貴女も無事でよかったわ。心配していたのよ」
テッサ「うふふ。ありがとうございます」
ミーナ「……話したいことがあるのでしょう」
テッサ「ええ。カリーニンさんが手に入れた資料には様々なことが記載されていましたし」
ミーナ「私も全てを知っているわけではないの。それでもいいなら、知っている範囲で答えるわ」
テッサ「いいんですか?」
ミーナ「家族に隠し事はできないもの」
テッサ「あら、家族として迎え入れてくれるのですか。うれしいです」
シャーリー「だったら、歓迎パーティーをしないとな」
マオ「お。いいねえ。ビールなんかもあればサイコーだけど」
エーリカ「ワインならあるよ」
マオ「うーん。あたしはビール以外、飲みたくないんだ。悪いけど」
バルクホルン「こだわりか?」
マオ「ま、そんなとこ」
シャーリー「それじゃ、食うだけにしとくか。パーティーならやっぱりバーベキューだよな。すぐに用意だ!!」
バルクホルン「お前がやりたいだけだろうに」
シャーリー「やっほー!! 久しぶりのバーベキューだ!!」
エーリカ「いえーい、いっぱいたべれるぅ」
ペリーヌ「こういうときだけ行動が早いですわね、ハルトマン中尉は」
かなめ「バーベキューだって。ソースケも参加するでしょ」
宗介「そうだな。歓迎してくれるというのなら」
美緒「相良軍曹」
宗介「はっ」
美緒「かしこまるな。今まで通りで構わない」
宗介「……そうか」
美緒「お前の言葉、素直にうれしかった。感謝する」
宗介「俺はただこの数日で知ったことをあの場で語ったにすぎない」
美緒「リーネを励ますためだけに用意した言葉のようでもあったがな」
宗介「それは誤解だ。新兵を叩き直すためだけにあれだけの危険を冒すほど、俺は愚かではない」
美緒「はっはっはっは。ゆっくりしていけ、相良」
宗介「了解した」
エイラ「……」
サーニャ「エイラ、どうかしたの? シャーリーさんのお手伝いはしないの?」
エイラ「いや、あれを見てくれ」
サーニャ「あれって?」
ルッキーニ「……」
サーニャ「ルッキーニちゃん……」
エイラ「あいつが一人でぼーっとしてるのって珍しいなって、思って」
サーニャ「考え事でもしてるのかしら」
エイラ「あの万年能天気なルッキーニがか。ありえるか、それ」
サーニャ「ルッキーニちゃんだって、悩むことぐらいあると思うけど」
エイラ「そうだけどさ」
クルツ「よっ。彼女たち。暇なら一緒に夜の海辺を散歩しないかい?」
エイラ「どっかいけ」
サーニャ「失礼よ、エイラ。でも、ごめんなさい、クルツさん。これからバーベキューがあるのでできません」
クルツ「あぁ……そうですか……。やっぱり俺には美緒しかいねえのかもなぁ」
ルッキーニ「はぁ……」
エイラ「やっぱり、元気ないなぁ。ルッキーニのやつ」
クルツ「マロニーの言葉を気にしてるんじゃねえか」
エイラ「ウィッチだけが特別だって話か」
クルツ「戦闘後に表情が180度変わっちまう奴はごまんといる。一度の戦闘で価値観が入れ替わることだってあるしな」
サーニャ「でも、作戦行動中はいつもと変わりないように思えたけど」
エイラ「動きが変だったってこともないしな」
クルツ「二人がそういうなら、俺の思い過ごしかもな」
エイラ「……」
ルッキーニ「はぁー……」
クルツ「ユーティライネン少尉のご感想は?」
エイラ「おい、ルッキーニ」
ルッキーニ「にゃに?」
エイラ「バーベキューだぞ。参加するだろ?」
ルッキーニ「するっ! おにくだー!」テテテッ
滑走路
シャーリー「よーし!! 焼いてくぞー!!」
エーリカ「どんどんやいちゃえー!!」
ルッキーニ「バーベキュー、サイコー!!!」
かなめ「ちょっと、ちょっと、ルッキーニちゃんはこっちきて。火の近くは危ないから」
ルッキーニ「かなめ、あたしのこと子ども扱いしてるぅ」
かなめ「子供じゃないの。役のはあたしとシャーリーさんでやるから」
エーリカ「それじゃ、私は食べる係だ」
バルクホルン「いつもと立場が変わらんぞ」
ペリーヌ「シャーリーさん、まずは野菜からですわ。いいですか。野菜から摂取することで――」
エイラ「まずは肉だろ」ジューッ
ペリーヌ「なー!!! ちょっと!! エイラさん!!! 何をしていますの!? おやめなさい!!」
芳佳「ペリーヌさん、こっちでお野菜も焼きますから落ち着いてください」
かなめ「そこー、ケンカしないのー」
宗介(大佐殿がいないな。それにミーナ中佐と坂本少佐も……)
>>377
かなめ「子供じゃないの。役のはあたしとシャーリーさんでやるから」
↓
かなめ「子供じゃないの。焼くのはあたしとシャーリーさんでやるから」
執務室
テッサ「――坂本少佐が目にしたという事故。原因の究明はされていないのですか」
ミーナ「ええ。何故、ユニットの試作機が消失したのかはレポートされていない。それどころかその事故のことすら抹消された事実なの」
テッサ「そのような危険な乗り物でウィッチたちを飛ばしているなんて、驚きだわ」
ミーナ「否定はしないわ。でも、ネウロイと戦うためにはストライカーユニットは必要だったのよ」
テッサ(宮藤博士がウォーロックの開発に参加していたというのは、ユニットがこういった危険性をはらんでいたからなのかもしれない)
ミーナ「そんな事故が起こったなんて知られたら、きっと世論はユニットを使わせることに反対する」
テッサ「ただでさえ貴重なウィッチがいつ消えうせても不思議ではないもの。誰も賛同なんてしないでしょうね」
美緒「宮藤理論は完璧に近いものだった。だからこそ、世界中に広まり、今に至る」
テッサ「現に今までそうした事故の報告がないところを見るに、試作機の事故というのは何かの状況下でしか起こりえないということでしょうか」
美緒「それも分からん。あのときはユニットの魔導エンジンをフル稼働させただけだからな」
テッサ「では、ウィッチが魔導エンジンを限界まで稼働させたら、同じ事故が起こるのでは?」
ミーナ「それはあり得ないでしょう。宮藤博士はその事故以降、ユニットに安全装置をつけたみたいだから」
テッサ「安全装置……」
美緒「魔法力による負荷がユニットに一定以上かかると自動的に魔導エンジンが稼働しにくくなる。端的に言えば強大な魔法力を有する者では飛べなくなる仕様だ」
テッサ「ウィッチとしての能力が高すぎると飛べないなんて不思議ですね」
ミーナ「そうしたウィッチがユニットで飛ぶためには、より高性能な魔導エンジンが必要になってくるでしょう」
美緒「出力が上がりすぎれば、その反動で扱いにくくなるだろうがな」
テッサ「そもそも安全装置が働くほどのウィッチは生まれていないということですか」
美緒「うむ。並大抵のことではそんなことにはならんからな」
美緒(だが、宮藤が成長すればあるいは……)
テッサ「安全装置を外すことは可能ですか?」
ミーナ「試すつもりなの?」
美緒「カリーニン少佐にも伝えたが、それでお前たちが元の場所へ帰れることができるのかは未知数もいいところだ」
テッサ「部下の命を預かる身としてはそのような賭けだけはしません。しかし、扉を開く方法がそれしかないのもまた確かです」
ミーナ「より確実な方法がまだあるかもしれないわ」
テッサ「あるでしょうか。宮藤博士が存命なら、教えてくれたのかもしれませんけど」
美緒「そうだな……」
ミーナ「テスタロッサ大佐。もし覚悟を決めたのなら、私たちに教えて。いくらでも手を貸すわ」
テッサ「そうですね。でも、最後まで足掻いてみます。なにせ、人類に不可能はないんですから」
エーリカ「わーい、おにくだー」
バルクホルン「こらぁ!! 野菜もちゃんとくえー!!」
かなめ「ジャンジャンバリバリ、焼いていくから、好きなものを好きなだけもってってー」
サーニャ「ください」
かなめ「はい。サーニャちゃんには特別美味しそうに焼けたやつをあげる」
サーニャ「うれしい」
かなめ「ふふ、サーニャちゃんってホント、可愛いわよね」
エイラ「千鳥、こらぁ!! サーニャをそんな目でみんなー!!」
宗介「……」
芳佳「相良さん」
宗介「なんだ?」
芳佳「もっとかなめさんの近くにいかないんですか?」
宗介「必要ない。今の彼女は楽しんでいる。危険もない」
芳佳「なら、少しだけ、私と話をしませんか? 滑走路の端まで行きましょう」
宗介「別に構わんが、お前こそ他の者と一緒に食事をしたほうがいいのではないか?」
芳佳「ここ、風が気持ちいいんですよね」
宗介「風速は若干上がるな」
芳佳「……相良さん。私、相良さんのことが嫌いになっちゃいそうでした」
宗介「……」
芳佳「リーネちゃんが苦しんでいるのに、そんなことは気にするなって、弱い兵士は必要ないって……」
宗介「俺は事実を口にしただけだ。弱い兵士は戦場に不要だ。そいつが犬死するだけで戦況が一変してしまうかもしれん」
芳佳「それは……そうなんですけど……」
宗介「あの場に居なかったリーネが非難されるのは当然のことだ。己の責務を放棄したのだからな」
芳佳「……」
宗介「仲間を想うことは悪くない。しかし、現実に困るのは現場の人間だ。一人の甘えが全体の危険に繋がる」
芳佳「分かってます! でも、私はリーネちゃんのことをそんな風に言ってほしくなかったんです!!」
宗介「宮藤、お前は戦闘中にリーネが傷つき、戦えなくなったらどうする?」
芳佳「絶対に助けます」
宗介「見捨てなければ自身の命や隊自体が危うくなるとしてもか」
芳佳「はい」
宗介「そうか」
芳佳「今回のことではっきりわかったことがあります。私はリーネちゃんと一緒に守りたい。私だけがリーネちゃんを守るんじゃだめなんです」
芳佳「リーネちゃんが私を守ってくれる。だから、私もリーネちゃんを守ることができる。そして、この大空を守ることができるんです」
宗介「自惚れだな。お前はそこまで強くない」
芳佳「だから、リーネちゃんと一緒じゃなきゃダメなんです。みんなと一緒じゃなきゃできないんです」
宗介「故に一人として見捨てはしないということか」
芳佳「はい」
宗介「兵士としての才能がないようだな」
芳佳「な、なんでですか!?」
宗介「上官に命令されても、お前は仲間の命を優先するということだろう。命令に従えない兵士は隊にとっては害でしかないからな」
芳佳「で、でも……私はそうしたくて……」
宗介「俺も同じだ。兵士としての才能などない」
芳佳「え……」
宗介「守りたいものを守る。そんなことができるやつに兵士としての才能があるわけない。俺はそう考えている」
芳佳「相良さんも命令を無視してでも守りたいものがあるんですか」
宗介「ある。俺にとっては掛け替えのない存在だ」
芳佳「……そうですか」
宗介「話とはこれだけか」
芳佳「はい。相良さんのこと、やっぱり嫌いにはなれません」
宗介「君に嫌われる人物となると難しいと思うが」
芳佳「確かに、嫌いな人ってあんまりいないですけど。相良さんのことは特に嫌いになれません」
宗介「何故だ」
芳佳「心からリーネちゃんのことを心配してくれていたからです」
宗介「戦友のことを気にかけない者が戦場で良い働きなどできない」
芳佳「ふふっ。そうですね」
宗介「ああ、そうだ」
芳佳「でも、私は最初から相良さんのこといい人なんだって思っていました」
宗介「最初とはなんだ?」
芳佳「ぼんたくんです! あれを着こなせる人に悪い人がいるとは思えません!!」
宗介「いや、あれは戦闘服だ。あれを着こなせるのは軍人のみであり、軍人に正義も悪もない」
芳佳「そういうことじゃありませんよぉ」
宗介「よくわからん。訓練された人間ならば誰でも着こなせるものであることには変わりはない」
芳佳「えっと……。バルクホンルンさんとかなら着ることができるんですか?」
宗介「大尉なら余裕だろう。坂本少佐でも可能だ」
芳佳「だったら――」
ブゥゥゥン……
宗介「ユニットの駆動音だな」
芳佳「あ、こっちに誰かが来ます」
宗介「501のウィッチではないようだな」
芳佳「そうですね」
醇子「――やっと到着できたわね」
芳佳「貴方は?」
醇子「私は第504統合戦闘航空団の竹井醇子大尉よ」
芳佳「宮藤芳佳です」
醇子「貴女が……。噂は耳にしているわ。よろしくね。坂本少佐は今、どこかしら?」
>>385
芳佳「えっと……。バルクホンルンさんとかなら着ることができるんですか?」
↓
芳佳「えっと……。バルクホルンさんとかなら着ることができるんですか?」
坂本の部屋 前
リーネ「……」
リーネ(私、どうなるんだろう。やっぱり、営倉行きぐらいは覚悟しておかないと……)
美緒「待たせたか」
リーネ「いえ」
美緒「テスタロッサ大佐と少し話をしていてな。入ってくれ」
リーネ「はい。お邪魔します」
美緒「楽にしてくれ」
リーネ「あの……私は……」
美緒「ん? なんだ?」
リーネ「私は、その、どうなるんでしょうか」
美緒「どうなるとは?」
リーネ「罰とか……」
美緒「罰が欲しいのか?」
リーネ「い、いえ、そういうわけじゃないんですけど……でも……私は……それだけのことを……して……」
美緒「非常招集にも応じなかったからな。重い命令違反ではある」
リーネ「はい……」
美緒「それに全員に迷惑もかけたな」
リーネ「……」
美緒「はっはっはっは。表情を沈めるな。別に咎めようという気はない」
リーネ「え? でも……」
美緒「逃げ出してもおかしくない状況で、お前は空へ戻ってきた。それで十分だ」
リーネ「い、いいんですか?」
美緒「では、明日1日、任務につくことを禁ずる。今は体を休めておけ。宮藤にも同じ命令をするつもりだが」
リーネ(それって、単にお休みってことじゃあ……)
美緒「こうしてお前を呼んだのは、確認しておきたいことがあったからだ」
リーネ「確認、ですか?」
美緒「リネット・ビショップ軍曹。お前はこれからもウィッチとして、501の一員として、戦ってくれるか?」
リーネ「はい。勿論です。いえ、ここに居たいです。どうか、居させてください」
美緒「そうか。それが聞ければいい。これからも頼むぞ」
リーネ「はい!! よろしくお願いします!!」
美緒(抜け出せたようだな。これで私の心残りは、宮藤が一流になる前にここを去らねばいけないというぐらいか……)
ミーナ『坂本少佐、お客さんよ』
美緒「私にか? 入ってくれ」
醇子「――久しぶりね」
美緒「おぉ。どうした?」
ミーナ「この手紙を持ってきたのよ」
美緒「手紙?」
醇子「宮藤博士からの手紙よ」
美緒「なに……」
醇子「宛先はテレサ・テスタロッサ大佐となっているの」
リーネ(あの人にどうして宮藤博士から手紙が……)
美緒「何故、これを私に?」
醇子「今日の一件でまずは貴女かミーナ中佐に話を通したほうがいいと思って」
美緒「ふむ。あの艦は我々の管轄というわけではないのだが」
執務室
テッサ「私に宛てられた手紙ですか」
ミーナ「申し訳ないけれど、内容は確認させてもらったわ」
テッサ「竹井大尉は?」
美緒「既に504へ戻った。任務もあるようでな」
テッサ「そうですか。それで、手紙の内容は?」
ミーナ「相良軍曹も聞く?」
宗介「はっ。よろしければ傍聴させてください」
芳佳「私はお邪魔ですよね」
美緒「お前の父親が書いた手紙だ。聞けばいい」
芳佳「……はい」
ミーナ「手紙に書かれていたのは、貴方たちが元の世界へ戻るための方法だったわ」
宗介「どういうことですか」
美緒「そのままの意味だ。手紙に書かれていることを実行できれば、お前たちは帰ることができる。そういう内容だ」
芳佳「ど、どうしてお父さんがそんなことを……」
テッサ「……」ペラッ
前略、突然の手紙に驚かれていることでしょう。
この手紙はテスタロッサ大佐が読んでいるという前提で書かれています。
既に感づいているとことでしょうが、私はミスリルが追っていた16歳の少年です。
あのとき装置を停止させることができず、貴方たちを巻き込んでしまったことを謝罪したい。
テッサ「お父さんの字で間違いないですか?」
芳佳「はい……」
美緒「……」
宗介(あの時の男が……宮藤の父親だと……)
あの装置を開発したのはこの私なのです。ストライカーユニットをウィッチのいない世界で発見したことが全ての始まりでした。
発見したストライカーユニットは、坂本美緒がよく知っているはずです。
あの日から、私には様々な声が聞こえるようになりました。ストライカーユニットの設計図を完成させるのに時間はかかりませんでした。
テッサ「貴女がよく知っていて、宮藤博士が深く関わっているユニットとなると……」
美緒「消えてしまった試作機のことだろうな」
テッサ「試作機はこの世界で消え、そして私たちの世界へやってきた、と」
美緒「そういうことになるのだろう」
ミーナ「けれど、宮藤博士はそのユニットを見て設計図を書き上げたと言っているわ。順序が逆じゃないかしら」
美緒「ふむ……」
テッサ(ウィスパードとして得る知識は未来からやってきていると考えることもできる。その順序はあまり問題じゃないかもしれないわね)
若さもあってその設計図をネット上で公開しました。その数週間後、レナードと名乗る男に声をかけられ、ウィッチのいる世界へ行き来できる装置を作らないかと誘われました。
テッサ「……」
宗介「大佐殿、どうかされましたか」
テッサ「いえ。何もありません」
芳佳「ネット上ってなんですか?」
美緒「網の上ということだろう」
芳佳「なるほど!」
異次元への扉を開く装置を作っていたつもりでしたが、レナードによる改変もあって実際は大規模な時間災害を起こし、時空を歪めてしまうものになってしまいました。
その所為かどうかはまだはっきりしないが、ネウロイも時空の彼方よりこの世界に現れている。
あの生命体の目的はまだ分からないが、私の作った装置による次元変動が原因で現れていると考えることはできます。
ネウロイは私が引き連れてきてしまったと言える。だからこそ、私は罪滅ぼしのためにストライカーユニットの開発をこの世界で進めた。その力を、多くの人を守るために。
テッサ(宮藤博士の言っている『力』とはウィスパードのことね……)
そして、私の所為でこちらへとやってきてしまったテスタロッサ大佐のことも私は救わなければいけない。
しかし、そのときには私が直接助言できる状態でないことも既に知ってしまっている。だから、こうしてこの日に手紙が届くようにしておきました。
芳佳「お父さんって、本当に魔法が使えたんじゃ……」
美緒(宮藤に宛てたものは自分の娘がウィッチになることも見越しての手紙だったのか……?)
貴方たちが元の世界へ戻る方法は単純です。
ラムダ・ドライバによるエネルギーでストライカーユニットを刺激すれば、扉は開かれることになるでしょう。
ユニットにはもちろん、魔法力を込めた状態でなければなりません。
そして最大の問題点が一つあります。
元の世界へ戻るためには転移したポイントが合致しておかなくてはなりません。
宗介「我々がこちらの世界にきたときの場所が正確に分からなければいけないということですか」
ミーナ「そんなもの分かるの? 貴方たちは海の上に居たようだけれど」
美緒「測量を完璧にしても多少の誤差はでるだろうな」
芳佳「そんなぁ……」
テッサ「問題ありません。正確な位置は分かります。それも苦労なんて一つもしなくていいでしょうね」
芳佳「そうなんですか!?」
>>393
美緒「測量を完璧にしても多少の誤差はでるだろうな」
↓
美緒「測量をしても多少の誤差はでるだろうな」
転移ポイントの座標が少しでもずれてしまうとどの世界、どの時間軸に飛ばされるか私にも分かりません。
私が知ることのできたことは以上です。
これで罪滅ぼしができるとは思えませんが、貴方たちの助力となれば幸いです。
テスタロッサ大佐、そして相良軍曹にご武運を。
宗介(俺の名前まで知っているとは……)
テッサ「これで以上ですね。宮藤軍曹、ごめんなさい」
芳佳「なにがですか?」
テッサ「折角、お父様からの手紙だったのに、貴女の名前は出てこなかった」
芳佳「そんなこと気にしないでください。お父さんは私の大切な友達を助けてくれようとしているのは分かりますから。それで十分です」
テッサ「そう……」
美緒「やれるのか」
テッサ「できます。ただ、貴方たちの協力は必要になりますが」
ミーナ「遠慮はしないで。いくらでも協力すると言ったでしょう」
テッサ「頼りにさせていただきます」
ミーナ「任せて。大船に乗った気でいてくれて構わないわよ。うふふ」
美緒「では、そろそろ私たちも食事にするか。早く行かねば食材が無くなってしまうぞ」
滑走路
ルッキーニ「……」
シャーリー「ほら、新しいの持ってきたぞ」
ルッキーニ「ありがとっ、シャーリー」
シャーリー「隣、いいか?」
ルッキーニ「うんっ」
シャーリー「マロニーの言葉が気になってるのか?」
ルッキーニ「あたしね、ずっとみんなが嬉しがっているって思ってた」
シャーリー「……」
ルッキーニ「訓練とか嫌いだけど、ネウロイをやっつければみんなが笑うから、あたしはがんばってきたんだよ」
シャーリー「そうだな」
ルッキーニ「ねえ、シャーリー。あたしたちがネウロイをやっつけても、いいんだよね? あんなの気にしなくてもいいよね。少佐が言ってたことを信じればいいんだよね」
シャーリー「当り前さ。少数の声は気にするな。あたしらがネウロイを倒す。それでいい」
ルッキーニ「うん! だよね! やっぱりそうだよね! よかったー」
シャーリー(ルッキーニを迷わせやがって……。マロニー、いつか椅子から引きずり降ろしてやるからな)
かなめ「ルッキーニちゃんとシャーリーさんって、なんか親子みたいね」
クルツ「せめて姉妹っていってやらねえと、シャーリーが怒るんじゃねえか」
エイラ「千鳥の言ってることは間違ってないと思うけどな」
マオ「まぁ、胸が大きい女は母性に溢れてるからね」
エイラ「それは同感だな」
サーニャ「……ごめんね」
エイラ「サ、サーニャが謝ることないってー!!」
ペリーヌ(もしかしてルッキーニさんがリーネさんやシャーリーさんの胸に異様な執着を見せるのは母親が恋しいからなの……?)
美緒「ペリーヌ、自分の胸を見つめてどうした?」
ペリーヌ「へぇ!? い、いえ!! なんでもありませんわ!! おほほほ!!」
マオ「やーっときたか。遅いよ、少佐、中佐」
ミーナ「ごめんなさい。色々とあってね」
クルツ「さっきの竹井って美人が持ってきた手紙についてか?」
テッサ「ええ。そのことはまたダナンでお話しします。今は楽しみましょう」
リーネ「はいっ。了解っ」
テッサ「さがらさーん、はい、あーんっ」
宗介「た、たた、大佐殿……」
テッサ「あーんっ」
かなめ「なにやってんのよ!! 公衆の面前で恥ずかしくないわけ!?」
テッサ「恥ずかしいですけど!! なにか!?」
かなめ「なんであんたがキレてんのよ!! それに恥ずかしいならやめなさいよ!!」
テッサ「この程度のこともできないのでは隊長は務まりませんもの。ふっふっふっふ」
かなめ「意味がわからん!!」
芳佳「相良さんたちって仲良いよね」
リーネ「う、うん……そうだね……」モジモジ
美緒「普段から命を預けあう仲だ良好でなければおかしい」
ミーナ「あれはまた別だと思うのだけれど……」
バルクホルン「相手に食べ物を食わせるだけで何故、言い争いになるんだ」
エーリカ「お子様のトゥルーデにはわかんないよ」
バルクホルン「どういう意味だ!?」
テッサ「こっちのお肉を食べてください!!」
かなめ「あたしのを食べればいいじゃない!!」
宗介「うぅ……」
芳佳「相良さんっ」
宗介「宮藤! 支援か!?」
芳佳「これもどーぞ」
宗介(なるほど。宮藤のを受け取れば、この危機的状況からも抜け出せるはずだ)
宗介「助かる、宮藤」
芳佳「えへへ」
テッサ「ふーん……。相良さんのタイプって宮藤軍曹みたいな人なんですね……」
宗介「な、何がでありますか」
かなめ「へぇー。ソースケって芳佳ちゃんがいいんだぁ」
宗介「な、何を言っている。千鳥。俺はただ、両者から選んではいらぬ亀裂が生じてしまうと考えたからで……」
芳佳「あれ? どうしたんですか?」
リーネ「芳佳ちゃんっ!! ダメだよ!!」
テッサ「もしかして宮藤さんのような体型が好みだと!?」
宗介「何を言っているのですか!?」
かなめ「そういうこと。だから、あたしが水着になっても無反応だったのね!! よぉーくわかったわ!!」
テッサ「まさか、相良さんは幼児体型がよかったなんて……。あ、だったら、かなめさんより、私のほうが相良さん的には……」
かなめ「ぐっ……!!」
宗介「落ち着てくれ。二人が何の話をしているのかわからんぞ」
芳佳「なんだか、褒められてる気がしません……」
エイラ「褒められてないぞ」
サーニャ「私……はぁ……」
ペリーヌ「……」
美緒「ペリーヌ、サーニャ。元気がないな。肉を食え」
ミーナ「美緒。やめなさい」
テッサ「やはり胸なんて脂肪の塊にすぎないんだわ」
かなめ「なんですって!? ソースケもそんなおかしな趣味もってんじゃないわよ!!」
宗介(何故だ……!! 何故、俺は焦っている……!! ここは撤退するしかないかもしれん……!!)
ルッキーニ「にゃっはー、ソースケ、どしたのー?」
宗介「少尉!! 支援してくれるのか!?」
ルッキーニ「支援って?」
クルツ「やめとけ、ソースケ。そりゃ犯罪レベルだぜ」
マオ「ワォ。ここにもロリコンがいたか」
宗介「ウルズ2!! ウルズ6!! 戦友を混乱させて何が目的だ!!」
かなめ「ルッキーニちゃんには誰も勝てないんじゃ……」
テッサ「いえ。ルッキーニさんよりも危険人物がいます」
エーリカ「はぁーい、このナイスバデーのエーリカ・ハルトマンのことだろ?」
バルクホルン「自分で言っていて、むなしくならないのか」
シャーリー「胸の勝負なら、あたしの勝ちだな」
テッサ「いいえ。シャーリーさんは戦場にすら立てませんよ」
シャーリー「なんでだよ。ハルトマンは参加できてあたしはできないんだ」
クルツ「シャーリーは俺の用意したリングに上がってくれ。あとの参加者はバルクホルンとリーネちゃんかな」
リーネ「や、やめてください……」
デ・ダナン 格納庫
カリーニン「戻ったか」
宗介「……」
カリーニン「どうした?」
宗介「いえ。なんでもありません」
テッサ「ふんっ」
かなめ「いーっだ」
カリーニン「とてもそうには見えんがな」
宗介「気にしないでください」
カリーニン「大佐殿、何か掴めましたか」
テッサ「ええ。殆ど、答えともいえるものを掴みました」
カリーニン「それはよかったです」
宗介「大佐殿。質問したいことがあるのですが」
テッサ「きちんとお話しします。それではみなさんを集めてください」
宗介「はっ」
ブリーフィングルーム
テッサ「――以上がカリーニン少佐が集めてくれた情報と宮藤博士から送られてきた手紙の内容になります」
マオ「ストライカーユニットそのものが次元を越えるカギだったわけね」
テッサ「そういうことですね。魔法という科学があるからこそ可能になった理論といえます」
宗介「大佐殿。宮藤博士が我々の追っていた少年という件についてですが。あの少年は16歳だったはずです。そして宮藤芳佳軍曹は15歳です。年齢が合いません」
クルツ「一歳で芳佳ちゃんを生ませたってことだろ?」
宗介「バカな。生殖器が未発達ではそんなことは不可能のはず」
マデューカス「黙れ!! 馬鹿な発言は控えろ!!」
テッサ「それは宮藤博士からの手紙に書いてあったことで説明はつきます。転移ポイントが少しでもズレてしまうとどこの世界、どの時間軸に飛ばされるかわからないと」
カリーニン「あの衝撃が艦を襲ったとき、宮藤氏と我々は違う場所に居た。その分、違う場所に飛ばされてしまったということですか」
テッサ「ええ。宮藤博士だけがこの世界の過去へ行き、私たちは揃ってこの時間に来ることができた」
マオ「あのとき、テッサが戻って来いって言わなきゃ、あたしとソースケだけが迷子になってたわけだ。ぞっとしないね」
クルツ「俺なんて一人きりになってたところだぜ?」
宗介「お前ならば図太く生き抜けるだろう」
クルツ「まぁ、この世界の美少女とお近づきになれたなら、それもありだったかもしれねえけどよ」
かなめ(元の世界というけど、この世界は改変後であるだけ。そしてあのネウロイは……)
テッサ「これより私たちは元の世界へ戻るための準備に入ります。ただ、その前にみなさんに聞いておきたいことがあります」
テッサ「この世界に残りたいと思う人はいませんか?」
マオ「どういうこと?」
テッサ「そもそも元の世界に戻ることができるのかわかりません。失敗する可能性も十分にあるでしょう」
クルツ「生きたいと思うなら、艦から降りろってことっすか」
マデューカス「ここで降りたとして責めることはせん。お前たちの意思を尊重する」
かなめ「それと……」
宗介「千鳥?」
かなめ「私たちが今いる世界は変更された歴史、変わってしまった世界。あのネウロイは侵略者ではなく調律者」
クルツ「何を言い出すんだ?」
かなめ「聞いて。つまり、えーと、この世界は常識とか物理法則が変わってしまった世界なの。私たちは変わってしまった世界の過去にやってきただけ。一種のパラレルワールドね」
テッサ(だから私たちの知る戦艦や戦闘機がこの世界にもある、と)
かなめ「私たちのやろうとしていることは過去の改変、世界の書き換えなの。私たちが何もしなければ、この世界は未来へ続いていく」
かなめ「貧富の差はあれど、人類はネウロイの脅威と戦い続ける平和な世界。人間と人間が戦う必要はないの。そんな世界を捨てるかどうか、ちゃんと考えたほうがいいと思う」
カリーニン(平和な世界か。この世界が続くのなら、それも……)
宗介「千鳥。一つ質問したい」
かなめ「なに?」
宗介「俺たちが元の場所へ戻った場合、この世界はどうなる? 消えてしまうのか」
かなめ「ううん。それはない。パラレルワールドは隣り合わせだけど干渉することができないから。ここの時間を弄っても、向こうの時間は変わらないわ」
テッサ「つまり生まれてしまった世界を消すことはできないんですね」
かなめ「そういうことだと思う」
宗介「なるほど。それなら問題ない」
かなめ「え?」
宗介「俺は元の世界に戻ることを希望する。もしこの世界が消えてしまうというのなら思い留まったが、それがないならば躊躇う必要はない」
かなめ「いいの?」
宗介「戦争もテロもない世界。実に素晴らしい。しかし、俺はあの場所に戻りたい。あの学校がある世界にな」
かなめ「ソースケ……」
テッサ「私も相良さんと同じです。確かに争いのない世界は魅力的ではありますが、私はあの世界に未練がありますから」
かなめ「そうよね……。あたしだって、あの世界がいい。戻らなきゃいけない気がする」
かなめ(本当にいいの? 私は嫌よ)
かなめ「うるさい!!」
宗介「ど、どうした、千鳥?」
かなめ「な、なんでもない! うは、うはははは」
マオ「原因とかはよくわかんないけど、要するに世界を書き換えてもウィッチのいる世界は残るのね」
かなめ「新たに発生した世界線を消し去るだけのエネルギーはラムダ・ドライバとストライカーユニットだけじゃ賄えないもの」
マオ「ふぅーん。だったら、あたしも戻るよ。この世界、居心地はいいけどね。やっぱ、ビールが飲みたいわ」
テッサ「マデューカスさんは?」
マデューカス「艦長と同じ気持ちだと言っておきましょう」
テッサ「ありがとうございます」
クルツ「んじゃ、俺も戻るか。やっぱりパンツは覗くに限るぜ」
マオ「女の敵」
テッサ「カリーニンさんは?」
カリーニン「迷いますが、未練があるのも確かですな」
テッサ「他にここに残りたい人はいますか? 遠慮せずに言ってください。自分の一生を決めるときですから」
格納庫
クルツ「全会一致だったな。誰か一人ぐらいのこりてぇっていうかと思ったんだが」
マオ「ベンがいたら言ってたかもねぇ」
宗介「……」
マオ「どうしたの?」
宗介「いや、作戦開始はいつになるのだろうな」
クルツ「今すぐってわけじゃねえんだ。別れが惜しいなら今の内に言いたいことを言っておけ」
マオ「そうそう。テッサもそれを見越してしばらく自由にしていいって言ったんだしね」
宗介「そうだな。そうするか」
かなめ「ソースケ!」
宗介「なんだ?」
かなめ「今から、行くの?」
宗介「ああ。宮藤に言いたいこともあるからな」
かなめ「それじゃ、あたしも行く」
宗介「そうか。では、一緒に行こう」
岬
芳佳「お父さん。相良さんたちを助けてくれてありがとう。相良さんもかなめさんも、みんな私にとっては大切な友達だから、とっても嬉しいの」
芳佳「ありがとう……」
宗介「誰の墓だ?」
芳佳「わぁ!? 相良さん……。びっくりしたぁ」
かなめ「こんばんは。芳佳ちゃん。さっきは楽しかったね」
芳佳「はいっ」
宗介「そうか。ここに宮藤一郎が眠っているのか」
芳佳「いえ。ここにお父さんはいません」
かなめ「え?」
芳佳「坂本さんが言っていました。遺体は見つからなかったって」
かなめ「だったら、生きている可能性も……」
宗介「千鳥。ただの生死不明で、ここに墓を作ると思うのか?」
かなめ「そ、それは……」
芳佳「探しても見つからなかったんです。どこを探しても……。だから、お父さんはもう……」
宗介「戦地ではよくあることだ。身元不明の死体はその辺に転がっている。一つ一つを調べるには膨大な時間がかかってしまう」
宗介「故に戦地から帰ってこなかったものは皆、一纏めにされ『戦死』となる」
かなめ「でも、ほら、何十年も生きていた人だっていたじゃない。終戦したことを知らないとかで」
宗介「米軍に怯え身を隠し続けたのならわかるが、相手はネウロイだ。何故、行方を晦ます必要がある」
かなめ「そ、そっか……」
芳佳「いいんです。お父さんにはもう会えないけど、こうして私たちのことを守ってくれているんですから」
かなめ「芳佳ちゃん……」
宗介「宮藤。お前に言っておきたいことがある」
芳佳「なんですか?」
宗介「お前の父親は立派だった」
芳佳「え……? 相良さん、お父さんに会ったことがあるんですか?」
宗介「手紙に書いていただろう。俺たちは君の父親を追っていた。詳細は言えんが、俺たちは君の父親を保護しようとしていた」
芳佳「そ、それで!?」
宗介「彼はとある組織に身柄を拘束され、研究を続けていたらしい。それも世界を丸ごと飲み込んでしまうような壮大な研究だ」
芳佳「お父さんが……」
宗介「そんな研究の手助けをしていたことに気が付き、彼は傷だらけになりながらも研究を止めようとしていた」
芳佳「……」
宗介「たった一人で、あの暗い地下施設で、命を賭して世界を守ろうとしていたんだ。それだけのことができる人間はそういない」
芳佳「そう、だったんですか……」
宗介「そしてこの世界でも彼はネウロイから人類を守るために尽力していた。君の父親は研究者としても戦士としても一流だ」
芳佳「は、い……」
宗介「そんな父親を持つことに誇りを持て」
芳佳「はい!」
かなめ「ふふ……。ソースケ、本当に芳佳ちゃんのことを気に入ってるみたいね」
宗介「いや、助けてもらった恩があるだけだ」
かなめ「なんのことよ」
芳佳「相良さんは優しい人ですね」
かなめ「ま、不器用だけどね」
芳佳「そうだ! 相良さん、お願いがあるんですけど」
宗介「出来る範囲で手を貸そう」
滑走路
クルツ「ここ、気に入ったぜ。風が良い」
リーネ「あ、クルツさん……」
クルツ「おぉ。リーネちゃん。君も夜に火照った体を冷やしにきたのかい」
リーネ「ここは私の好きな場所なんです」
クルツ「気持ちいいもんな。俺と一緒に寝ればもっと気持ちいいことができるけどな」
リーネ「あの……」
クルツ「なんだい?」
リーネ「色々とありがとうございます。相良さんとクルツさんには、なんと言っていいか……」
クルツ「気にするなって。俺は何もしてねえ」
リーネ「私は素敵なお嫁さんになれたら、それでいいって思っていました」
クルツ「リーネちゃんならなれるだろ」
リーネ「でも、あの日から、芳佳ちゃんと一緒にネウロイを倒すことができた日から、夢が変わって……。私は芳佳ちゃんとロッテを組んで、空を飛びたいって思うようになって……」
クルツ「わかってるって」
リーネ「芳佳ちゃんとルッキーニちゃんに心配までかけて……。クルツさんや相良さんと出会えなかったら私は……あのまま……」
クルツ「それはねえんじゃねえか?」
リーネ「でも……」
クルツ「ソースケや俺が励まさなくても、リネットには宮藤やルッキーニがいる。他にも優秀な上官がここには何人もいる」
リーネ「……」
クルツ「君がどん底まで落ち込んだとしても、きっと無理矢理手を掴まれて、空まで引き上げられていたと思うぜ」
リーネ「そうかもしれないですね」
クルツ「余計なことをしちまったな」
リーネ「いえ、クルツさんの教えてもらったことも今後、役立てていきます」
クルツ「そりゃ、うれしいね。……だったらさ」
リーネ「はい?」
クルツ「これから俺の部屋で射撃講座を開いてもいいぜ」
リーネ「あ、えっと、それは……」
クルツ「まぁまぁ、これも何かの縁だ。この一夜を一生の思い出にしようじゃねえか」
リーネ「あの、それは困ります」
ルッキーニ「――ルッキーニ、キック!!!!」
執務室
「うぎゃぁぁぁぁああ」
美緒「ん? 何か聞こえたか?」
テッサ「いいえ」
美緒「空耳か。すまんな。続けてくれ」
テッサ「地図でいうとこの地点。ここでストライカーユニットとラムダ・ドライバによる時空転移作戦を実行しようと思います」
ミーナ「本当にいいのね。成功する保障はどこにもないわよ」
テッサ「ここに居ても私たちは世界を混乱させる要因になってしまいますから。余計なものは排除したほうがいいでしょう?」
美緒「ダナンとASが存在していては、人類同士の世界大戦に発展するかもしれんのは確かだが」
テッサ「マロニーのような人間がトップにいるのなら尚更です」
ミーナ「分かりました。では、貴方たちの旅立ちを支援しましょう」
テッサ「作戦実行において、ストライカーユニットを犠牲にしなければなりませんが」
美緒「その程度のことは気にするな。私がなんとかする」
ミーナ「美緒のユニットを使うつもり?」
美緒「誰のでも問題ないだろう」
ミーナ「……分かったわ。それで、作戦実行の日時は?」
テッサ「それはまだ決めていません。ただ絶好のタイミングを計ろうかと」
美緒「大佐にとっての好機とは?」
テッサ「あのマロニーがこのまま引き下がると思いますか? ネウロイを利用した兵器まで開発していたというのに」
ミーナ「なんですって?」
美緒「奴め、そのような研究までしていたのか」
テッサ「あの兵器、ウォーロックの完成には今しばらくの時間が必要になるでしょうけど、マロニーの性格を考えればもう一度何かを仕掛けてくるはずです」
ミーナ「ウォーロックね。覚えておくわ」
美緒「大佐の言う通りだな。あれだけのことをしたのだから、このまま静観するとも思えん」
ミーナ「そのときがチャンスだと?」
テッサ「はい。私たちにとっても貴方たちにとっても益のある事態になるでしょうね」
ミーナ(ということは……)
美緒(大佐は我々と同じことを考えているようだな)
テッサ「なにか?」
ミーナ「いえ。マロニーが何もしてこなければいいのだけどね」
501基地 格納庫
バルクホルン「なんだ、このコンテナは?」
ペリーヌ「さぁ、見覚えはありませんわね」
バルクホルン「ミスリルが運んできたものかもしれないな。あとで確認しておこう」
ペリーヌ「結局、こうなってしまいましたわね。大尉」
バルクホルン「仕方ない。501はそういう部隊だ」
ペリーヌ「他部隊や組織とこうして密な関係になれば、上層部に目を付けられる。そんなこと少し頭を使えばわかりそうなことなのに」
バルクホルン「だからこそ、お前は拒絶したのだろう。男とは話すことができないという口実を利用して」
ペリーヌ「大尉だって、そうしようとしていたはずです」
バルクホルン「ああ。しかし、宮藤を見ていると、どうでもよくなる。そのような壁など、不要なものだと気づかせてくれる」
ペリーヌ「あの人は軍人としての自覚がないのですわ」
バルクホルン「それがいいのだろう」
ペリーヌ「大尉らしからぬ発言ですわね」
バルクホルン「規律は守るべきだ。だが、しかし、必ずしも軍人然とすることもない」
ペリーヌ「共感はできませんわね」
「頭は固いままだと思っていたが、どうやら多少は改善されたみたいだな、バルクホルン」
ペリーヌ「誰?」
バルクホルン「お前は……」
ハンナ「やぁ。久しぶりだな」
バルクホルン「マルセイユ。何故、ここにいる。お前はアフリカにいるはずだろう」
ハンナ「504に本日付けで派遣された。応援としてね」
ペリーヌ「マルセイユ大尉と言えばアフリカの星と言われるウィッチのはず。それがどうして応援なんて……」
ハンナ「私が聞きたいぐらいだ。アフリカからも応援を要請するなど異常事態にもほどがある。それで確認のためにこうして寄ってみた。勿論、独断だ」
バルクホルン「何があった」
ハンナ「お前たちがネウロイ撃破のために使用した兵器の破壊を命じられた。バルクホルン、本当にあの潜水艦はネウロイを利用したものなのか」
バルクホルン「なんだと……」
ペリーヌ「それは何かの間違いですわ!!」
ハンナ「だが、各国のウィッチが続々と集結している。恐らく、数日中に大規模な作戦が開始することになる」
バルクホルン「そのような指示は受けていないぞ」
ハンナ「ならば上層部に確認をとれ。このままじゃ、私と501が戦うことになる。まぁ、私は501全員が相手でも負けないが」
滑走路
クルツ「おー、いてぇ。ルッキーニのやつ、本気で蹴りをいれてきやがった」
マオ「あんたがバカなことをするからでしょうが」
クルツ「でもよぉ、あれはいけてたぜぇ」
マオ「はいはい」
ハンナ「お前たちがネウロイと呼ばれる部隊の人間か」
クルツ「ひゅう。すげえ、美人がきた」
ハンナ「おっと。悪いけどサインはしない主義なんだ」
クルツ「俺が君にキスマークをつけるってのはどうだ?」
ハンナ「良い反撃だ。でも、そこまで尻は軽くない」
クルツ「もったいねえ話だ」
ハンナ「お前も黙っていればいい男なのに。勿体ない」
マオ「で、あたしたちがネウロイってどういうこと?」
ハンナ「今すぐミーナのところに行ったほうがいい。色々と複雑な事態になっているみたいだ」
マオ「そう。教えてくれてありがと。クルツ、あんたはソースケを探してきな」
執務室
バン!!!
バルクホルン「ミーナ!!!」
美緒「静かに入って来い」
バルクホルン「それどころではないぞ、少佐!!」
ペリーヌ「そ、そうですわ!! 今、マルセイユ大尉から聞いたのですが……!!」
ミーナ「私たちもたった今、竹井大尉から連絡をもらったところよ」
美緒(竹井の任務とはこのことだったのか)
バルクホルン「各国のウィッチが勢ぞろいしているらしいな」
ミーナ「ええ。標的は大型戦艦級ネウロイ、みたいね」
テッサ「大将の差し金でしょうか」
美緒「それ以外に何がある」
テッサ「予想通りですね」
ミーナ「とはいえ、私たちを攻撃するならこの方法しかないでしょうけど」
テッサ(私たちをテロリストにすることは無理でも、ネウロイを利用した兵器というすることにはできる。そしてそれを実験兵器として投入したのは501。そういうことね)
美緒「502や504はこの招集には非常に懐疑的になっている。他の航空隊並びに航空団も同じだろう」
テッサ「ネウロイは海水を嫌う性質があることは分かっているからですね」
美緒「そうだ。長い歴史からみても、戦艦を模したネウロイは発見されていない。また海はもちろん、河川や湖からネウロイが侵攻してきたという事実もない」
バルクホルン「ならば、マロニーの暴走で片がつくな」
ミーナ「とはいえ、一般市民はどう思うかしらね」
美緒「ウィッチの中にも上層部の発表を真に受ける者とているだろう」
ペリーヌ「では、どうすれば……」
テッサ「総攻撃が始まるのはいつごろでしょう?」
ミーナ「竹井大尉が言うには三日後になるとのことよ」
美緒「その間に身の振り方を決めろということだな」
テッサ「そしてダナンを接収すると」
バルクホルン「私は断固として戦うぞ。カールスラントに忠誠は誓っても、マロニーに魂を売った覚えはない」
ペリーヌ「わたくしもですわ。祖国ガリアのために空で戦ってきたというのに、何故、人間と、それもわたくしたちと共に戦った人たちに銃口を向けなければならないのですか」
テッサ「バルクホルンさん……ペリーヌさん……」
ミーナ「けれど、ここでミスリル側につけば501の解散どころでは済まないわね」
マオ「最悪、極刑もあるんじゃない?」
テッサ「メリッサ。相良さんは?」
マオ「今、クルツが呼びにいってる」
バルクホルン「死刑にするのならすればいい。だが、そう簡単にはいかないがな」ピコンッ
テッサ「まぁまぁ、大尉。その可愛い耳は仕舞ってください」
バルクホルン「しかし!!」
テッサ「私たちは異世界の人間です。ネウロイと言われてしまえばそれまででしょう」
美緒「どうする」
テッサ「でしたら、私たちのことはネウロイということにしちゃいましょう」
ペリーヌ「何を言っていますの」
バルクホルン「私たちと戦うつもりか」
テッサ「ダメですか?」
バルクホルン「大佐……」
テッサ「私たちが元の世界へ戻るタイミングとしては今が一番ではないでしょうか」
マオ「悪者として追いやられる。後腐れなくていいかもねぇ」
ブリーフィングルーム
エイラ「そんなことできない」
芳佳「私もです!!」
テッサ「これは決定です。下士官は従ったほうがいいと思いますけど」
エイラ「私はミスリルに属してないんだ。拒否権はいくらでもあるぞ」
芳佳「坂本さんもこんなことに賛成するんですか!?」
美緒「ああ」
芳佳「どうして!?」
美緒「では、聞こうか、宮藤。三日後までにテスタロッサ大佐たちをネウロイではないと証明する手段はあるか?」
芳佳「そんなのいくらでもありますよ。テスタロッサさんがみんなの前に出て話をすればいいじゃないですか」
テッサ「それではなんの意味もありません。私たちがネウロイというよりは、私たちはネウロイを軍事利用している危険な集団という位置づけですから」
シャーリー「あの潜水艦とASを見せられたら、そう思われても仕方ないかもな」
芳佳「そんな!! シャーリーさんまで!!」
宗介「落ち着け、宮藤」
芳佳「落ち着いてなんていられません!! だって、相良さんもかなめさんも大事な人たちなのに……!! なのに……!!」
宗介「お前の怒りは嬉しく思う。だが、所詮俺たちは部外者だ。この世界にいるべきではない」
芳佳「だからって、戦うことはできません」
宗介「考え方を変えろ。これは戦争ではない。奴に一泡吹かせるための計略だと」
芳佳「計略……」
テッサ「そうです。みなさん、少なからずマロニー大将には不満を持っているでしょう」
シャーリー「すくなからず? 多くもってるよ、あいつにだけは」
ルッキーニ「シャーリー……」
エーリカ「マロニーだけは許せないよね」
サーニャ「はい」
テッサ「今、直接的な事を起こせば貴方たちはテロリストになってしまいます。ですが、ここでもう一度、高脅威目標を殲滅できれば、世間の評価はさらに向上するでしょう」
エイラ「話はわかる。けど、いいのか」
テッサ「構いませんよ、エイラさん。みんなでマロニーを蹴落としてやりましょう」
美緒「シナリオはこうだ。極秘裏にネウロイを利用し軍事運用する組織である『ミスリル』は、実験的に兵器を投入。実験は成功する」
リーネ「この前の戦闘のことですね」
美緒「うむ。その後、ミスリルは501からの離反を決意。その理由は本日出された上層部の発表だ」
>>424
シャーリー「すくなからず? 多くもってるよ、あいつにだけは」
↓
シャーリー「ああ。多くもってるよ、あいつにだけは」
ミーナ「極秘裏の情報を公表したことに対して不信感を抱いたミスリルは、ブリタニア空軍本部に攻撃を仕掛ける」
テッサ「それをいち早く察知した501は私たちと交戦、撃退する。そういうシナリオです」
エーリカ「その作戦のときに元の世界に帰るつもり?」
テッサ「はい。ネウロイのように消えてみます」
エーリカ「私たちはテロリストを抱えていたってことになると思うけど」
美緒「しかし、マロニー大将も無傷ではすまん。疑念の種を植え付けることはできる」
クルツ「501がミスリルを抱えていたわけじゃなく、マロニーが抱えていたことにすり替えちまうわけだな」
美緒「マロニーがネウロイを使った軍事兵器を有しているのは本当だからな」
バルクホルン「なんだと!? 奴め、自分のことを棚上げしておいてよく言う……!!」
宗介「お前たちは何も知らなかったと言い続ければいい。ウィッチの言葉なら信じてもらえることも多いはずだ」
テッサ「大変なのは戦闘後でしょうね。マロニー大将が所有しているウォーロックを戦場に引き出させる必要があります」
ミーナ「それなら心配ないでしょう。マロニー大将が501の妨害をするのはウィッチに活躍させたいからだけじゃないもの」
テッサ「そういうことですか。執拗に501を阻害するのは……」
美緒「私たちもネウロイについては情報を集めているために、以前から脅迫文が送り付けられていた。奴が恐れているのはウォーロックとやらに我々がたどり着くことだったのだろう」
ミーナ「辿りついてしまった以上、今回の戦闘後にマロニー大将は行動に出るはずよ。そのときがあの男の最後となるでしょう」
マオ「強制的に解散に持ち込むかもしれないわね」
美緒「どういった口実でそうするかは分からんがな」
エーリカ「ウォーロックがあるからウィッチはいらない、はい、解散。みたいな?」
バルクホルン「誰かが命令違反を犯した瞬間ではないか?」
エーリカ「なんで、私を見るの?」
テッサ「もう一つ。私たちへの最後の攻撃は、ユニットをこちらに向けて飛ばしてください。プロペラを逆回転させればできるとのことですが」
美緒「任せろ」
リーネ「あ、あの」
ミーナ「なにかしら?」
リーネ「私のストライカーユニットを使うんじゃだめですか?」
テッサ「いいですよ」
美緒「リーネ、私のを使うぞ」
リーネ「いえ、私のを使って欲しいんです。かなめさんに直してもらったユニットで、ミスリルのみなさんを救えるなら、本望です」
ミーナ「いいでしょう。リーネさんのストライカーユニットを使用します」
美緒「では、各位の健闘を祈る。解散」
格納庫
芳佳「やっぱり、おかしいです。もっと違う方法があるんじゃないですか」
宗介「もう決まったことだ」
芳佳「それでも、私は嫌です。相良さんたちと戦うなんて」
かなめ「いいんじゃない。このままじゃ501が危ない連中だってことになっちゃうんだし」
宗介「こちらの政治はよくわからんが、世界の希望であるウィッチがテロリストになるのだけは避けたほうがいいだろう」
芳佳「だからって、相良さんたちがテロリストにならなくても」
宗介「俺たちができる最後の支援だ。甘んじて受けてほしい」
芳佳「……」
かなめ「その力を、多くの人を守るために」
芳佳「かなめさん……」
かなめ「貴方たちが守るのは世界の空なんだから」
宗介「とても難しいミッションだ。これはその任務を遂行するために不可欠なことだ」
かなめ「501だけじゃできなくても、みんなでやればきっとできる。そうでしょ?」
芳佳「……はい」
デ・ダナン 停泊地
マオ「さっさと乗りな。最終チェックだって残ってんだからね」
クルツ「わぁーってるって、姐さん。あんまり怒鳴ると肌に悪いぜー」
リーネ「もう行っちゃうんですか」
マオ「あまり馴れ馴れしくしてたら、戦闘が八百長ってことがバレれるからね」
シャーリー「本気でやってもいいんだよな」
マオ「もっちろん。出ないと、撃墜しちゃうかも」
シャーリー「そっか」
ルッキーニ「クルツー、バイバーイ。ありがとー」
クルツ「おう! ルッキーニの五年後が見れなくて残念だぜぇ」
バルクホルン「エーリカ、監視の目はやはりあるのか」
エーリカ「あるね。ここで隙を見せないほうがいいかも」
バルクホルン「そうだな。ルッキーニ、手を振るのはやめろ」
ルッキーニ「えー?」
サーニャ「千鳥さんがいる艦を狙うことになるんて……」
数時間後 デ・ダナン 発令所
マデューカス「そろそろ夜明けです」
テッサ「……」
マデューカス「艦長、よろしいのですか」
テッサ「何がでしょう」
マデューカス「もう、ウィッチたちと会話することはできません。無線では傍受される危険性があります」
テッサ「言葉は必要ありません。私たちはこれからテロリストとなります。そしてそれを駆逐するのが501のみなさんですから」
マデューカス「そうですか」
テッサ「機関、始動」
マデューカス「アイ、マム。機関、始動」
テッサ「このままダナンはブリタニア空軍基地まで向かいます。そこで待っているのはウィッチたちとの激しい戦闘です」
テッサ「敵意はないとは言え、本気で攻撃を仕掛けてきます。それは私たちのことを信じているからこそです」
テッサ「皆さんの信頼に応えるために、我々も死力を尽くします」
テッサ「前進、微速」
マデューカス「アイアイ、マム! 前進、微速!!」
滑走路
美緒「行ってしまったか」
ミーナ「先行部隊であるハルトマン中尉、バルクホルン大尉は4時間後にここを発ちます。あくまでも哨戒任務中に遭遇したというのを装って」
エーリカ「了解っ」
バルクホルン「そのあとは?」
美緒「無線で応援を要請しろ。私たちが飛んでいく」
エイラ「その間に504とか動かないか?」
美緒「根回しは終わっている。マロニーの真似するのは癪だがな」
バルクホルン「流石、少佐だ。一声で他部隊が動かなくなるか」
美緒「なに。私には知り合いが多いだけだ。お前たちより長く生きている分だけな」
ミーナ「準備を始めて」
シャーリー「最終調整しとくか。ルッキーニ、手伝ってくれ」
ルッキーニ「あい」
芳佳「シャーリーさん、私もお手伝いします!!」
リーネ「わ、私も!」
デ・ダナン 格納庫
宗介「調子はどうだ?」
アル『良好です』
宗介「そろそろ作戦が始まる」
アル『作戦概要は既に聞かされています。このように不確実な方法が採用されたことに驚きです』
宗介「まるでラムダ・ドライバのようだな」
アル『肯定。この作戦は推奨できません』
宗介「お前が言うな」
アル『軍曹殿。私には分かりかねます。元凶となるマロニー大将を殲滅できればいいだけではないでしょうか』
宗介「この世界に戦争を持ち込むなど、ありえん。敵はネウロイだけで十分だ」
アル『ネウロイとは便利な存在です。人々が手を取り合うためにだけに生まれた存在のような気がしてなりません』
宗介「同感だ。千鳥が言っていた。ネウロイは調律者だとな。まさにその通りだと俺も思う」
アル『素晴らしい表現です』
宗介「無駄口はここまでだ。時間だ、アル。ハッチ閉鎖」
アル『ラジャ』
501基地 格納庫
エイラ「このでかいコンテナ、なんだろな」
サーニャ「なんだろう」
シャーリー「おーい、ぼーっとしてないで暇ならお前たちも手伝ってくれー」
エイラ「わかったー」
リーネ「(芳佳ちゃん、もしかしてあの中に……)」
芳佳「(うん。あれが入ってるよ)」
リーネ「(もらっちゃったの!?)」
芳佳「(相良さんにくださいっていったら――)」
宗介『あれをか。いいだろう。しかし、あれは高価なものだ。それなりのものと交換でいいだろうか』
リーネ「(何と交換したの?)」
芳佳「(えっと、これなんだけど。前にリーネちゃんから二枚もらったし)」ペラッ
リーネ「(これであれをもらえたの!?)」
シャーリー「おーい、みやふじー、リーネ、なにしてんだー。時間ないぞー」
デ・ダナン 発令所
テッサ「――作戦開始。メインタンク、ブロー」
マデューカス「アイ、マム。メインタンク、ブロー!!」
テッサ(さて、すぐにでも反応があるでしょうけど)
『――何用かね』
テッサ(来た……)
テッサ「マロニー大将。各国のウィッチに招集をかけ、私たちへ総攻撃をかけるそうですね」
『当然だ。君たちの兵器は危険極まりない。ここで破壊しておかなくてはネウロイ以上の脅威になる』
テッサ「私たちが捕獲したネウロイを軍事利用していたことは軍内部でもトップシークレットだったはずです」
『な……』
テッサ「何故、急に公表に踏み切ったのか説明してください」
『何をたくらんでいる』
テッサ「事実を知りたいだけです、マロニー大将。何故、我々ミスリルを裏切り、軍事機密を公にしたのか。答えてください」
『悪事を詳らかにする。それは軍に属するものならば誰しもが必ずすることだ』
テッサ「そうですか。分かりました。では、こちらも断固とした対応をさせていただきます。1番、2番の発射管扉を開放。目標はもちろん、ブリタニア空軍基地です」
マデューカス「アイ、マム。発射管扉を開放!!」
『何をするつもりだ』
テッサ「決まっているでしょう。裏切り者にはそれなりの制裁を加える。それが我々、ミスリルのやり方です」
『501は世界と敵対することになるな』
テッサ「本当です。マロニー大将さえ、私たちを裏切らなければ、彼女たちは軍務に従事することができたのに。残念でなりません」
『貴様……!』
テッサ「私たちがこのような行動にはでないと踏んでいたのでしょう。正義の味方とて死にたくはありません。相手が一線を越えてくるのなら、こちらも容赦なく越えます」
『最も愚かな手段を選んだな。テスタロッサ大佐は無能な小娘だったか』
テッサ「そうですね。貴方の選択でブリタニア全土がミサイルの標的になってしまいました」
『本気か……!?』
テッサ「伊達や酔狂でテロリズムが行えるとでも?」
『やめろ!!』
テッサ「1番発射、2番発射!!」
マデューカス「アイアイ、マム!! トマホーク、発射!!!」
『――させるかぁぁぁ!!! シュトゥルム!!!』
テッサ「来ましたね。黒い悪魔が」
マデューカス「トマホークは空中で爆発。命中しませんでした」
テッサ「結構」
エーリカ『テッサ、本気なのか。501を離れたって行くとこないじゃん』
テッサ「私たちが傍にいては貴女たちの足を引っ張ることになる。そうなれば飛べなくなる。それぐらいわかるでしょう」
エーリカ『ダナンにネウロイが使われていたなんて驚きだけど、ちゃんと私たちと戦えた。問題ないって』
テッサ「ネウロイを使った兵器なんていつ暴走してもおかしくありません。貴方たちがよくても世論は同調しないでしょう」
エーリカ『確かにネウロイを使った兵器なんて運用できるわけないし、人間が上手く制御できるとも思わないけどさ。だからって、テッサたちは仲間だ。見捨てられない』
テッサ「優しいんですね、ハルトマン中尉。でも、これが現実です。もうブリタニアに狙いを定めてミサイルを放ちました。宣戦布告は完了しています」
エーリカ『どうしても、戦うっていうの?』
テッサ「貴方たちがマロニー大将を守るというのなら」
エーリカ『ネウロイを秘密裏に捕獲して、軍事運用しちゃってたとしても、マロニー大将は私たちの上官だ。だから、守らなきゃいけない。ごめん、テッサ』
マロニー『ハルトマン中尉!! なんだその発言は!!』
テッサ「本気で来てください」
エーリカ『いっくよ、テッサ』
上空
マデューカス『トマホーク、発射!!』
エーリカ「きた!!」
バルクホルン「当たらないぞ!!」
テッサ『流石に分が悪そうですね。では、相良さん。お願いします』
エーリカ「なんだ……。潜水艦が開く……」
バルクホルン「あれは……!」
アーバレスト『……』
エーリカ「ネウロイを一撃で倒したやつだな」
バルクホルン「それに乗っているのは、相良軍曹だな」
アーバレスト『肯定だ』
エーリカ「飛べないようだけど、それで――」
アーバレスト『空にいようが関係ない。その高度は十分、射程距離だ』ジャキン
バルクホルン「やる気か……!!」
アーバレスト内
宗介「アル、照準補正」
アル『軍曹殿。高脅威目標が迫ってきます』
宗介「見ればわかる!!」
エーリカ『くらえー!!!』ズガガガガ!!!
宗介「ラムダ・ドライバ、起動!!」
アル『ラムダ・ドライバは問題なく起動しています』
宗介「無駄だ!! ハルトマン中尉!! そのような火力ではこの障壁は潰せんぞ!!」
バルクホルン『これなら、どうだぁぁぁぁ!!!!』ガキィィィン!!!!
宗介「ぐぅぅ!! 流石だ、大尉!! イェーガー大尉がゴリラを称したことだけはある!!」
バルクホルン『ほう……?』
エーリカ『トゥルーデ、おさえてー』
宗介「次はこちらから行くぞ!!!」
アル『距離算出。補正開始』
宗介「くらえ!!!」
上空
バルクホルン「シャァァァァリィィィィ!!!!」バキィ!!!!
ドォォォン!!!
アーバレスト『銃弾を殴り落としただと!?』
バルクホルン「誰がゴリラだ!!!」
エーリカ「そういうとこだと思うけどなぁ」
マロニー『501はただちに戦闘を中止しろ』
バルクホルン「またそれか。今、ブリタニアを守っているのは誰か見てわからないか」
マロニー『504がすぐに駆けつける』
アーバレスト『甘いな。マロニー』
マロニー『なんだと……』
アーバレスト『俺たちが貴様たちの増援を許すとでも思っているのか』
ハンナ『こちら504だ。マロニー大将、聞こえるか』
マロニー『マルセイユ大尉か。早く応援に――』
ハンナ『そちらへは行けそうもない。予算を削減されたせいでユニットの調子が悪いんだ』
マロニー『何をバカなことを言っている。今は非常時だぞ』
ハンナ『いけないと言っている。聞こえないのか』
マロニー『ぐっ……』
ハンナ『心配することはないだろう。あのハルトマンとバルクホルンが戦っているんだ。勝ったも同然だ』
バルクホルン「マルセイユ……」
ハンナ『一緒に戦いたかったな。残念だ』
エーリカ「またその機会もあるよ」
ハンナ『そのときを楽しみにしている』
マロニー『ならば、502だ!! 502、応答せよ!!』
サーシャ『申し訳ありません。502もストライカーユニット、全損のため行動不能です。カタヤイネン曹長が雷を呼んでしまって……』
マロニー『貴様らぁ!! 下手な演技はやめろ!!』
マルチナ『うるさい!! いけないんだから文句言うな!!!』
ルチアナ『そ、その言い方は流石にだめな気も……』
フェル『あー、赤ズボン隊がいけば、戦艦型のネウロイなんてあっという間なのに、ざんねんね』
マロニー『こ、これだから……ウィッチどもは……!!』
アーバレスト『さぁ、どうする、マロニー大将。ここで501を帰投させてしまえば、ミスリルの牙は容赦なくブリタニアの大地に喰いつくだろう』
バルクホルン「攻撃してもいいのか!!」
エーリカ「選択の余地なんてないと思うけどなぁ。それとも506からの増援も待つ?」
バルクホルン「ハインリーケなら、協力してくれるかもしれないな」
テッサ『でも、到着を待つほど、私たちも優しくはありませんよ』
マデューカス『艦長、既に発射準備が整っております』
テッサ『さぁ、マロニー大将。どうするのですか』
マロニー『く……』
アーバレスト『的確な指示も出せないのか!!! 三流指揮官!!! それでは貴様の渇望する戦果など、手にすることはできんぞ!!!』
マロニー『501……攻撃を開始、せよ……」
エーリカ「りょーかい!!!」
バルクホルン「二人では無理だ!! 今、増援を呼ぶ!!」
アーバレスト『そんなことさせるものか!!!』
M9『よっと。俺も参加させてもらうぜぇ、ソースケ』
M9『こちらウルズ2。戦闘を開始する』
デ・ダナン 発令所
マオ『いくよ!! 野郎ども!!!』
クルツ『一流のスナイパーの腕、とくと見やがれ!!』
マデューカス「艦長、501の全機を確認しました」
テッサ「分かりました。501の戦力が整ってしまえばこちらに勝ち目はありません。ウルズ2、ウルズ6、ウルズ7、艦内へ。AS三機の収容完了後、メインタンク、注水開始」
マデューカス「アイ、マム!! ベント、開け!!」
美緒『逃げる気か!!』
ペリーヌ『そうはさせませんわ!!』
エイラ『私たちから逃げられると思うな!!』
テッサ「追ってこれるとお思いで? 第一戦速、面舵一杯、深度200』
マデューカス『アイアイ、マム!!』
リーネ『逃がさない!』
芳佳『待ってください!!!』
テッサ「ウィッチに追われることになるんてね」
マデューカス「生きていると何があるかわかりませんな。長生きはしてみるものです」
上空
美緒「海の中に潜られては手出しができんな」
ミーナ「このまま全機でネウロイを追跡します」
芳佳「了解!」
マロニー『坂本少佐、君がやったのかね』
美緒「なんのことだ」
マロニー『ただで済むと思うな』
美緒「お互い様だろうに」
マロニー『必ず……君たちを戦場が葬ってやる……』
美緒「やってみろ。たとえ、どのような壁があろうとも我々はウィッチだ。この空を駆け抜ける!!!」
シャーリー「いっくぞ!!!」
ルッキーニ「うじゃー!!!」
サーニャ「いきましょう、エイラ」
エイラ「ああ。ネウロイ、絶対に追いつめてやるからなぁ」
芳佳(相良さん……かなめさん……ごめんなさい……!!)
>>444
マロニー『必ず……君たちを戦場が葬ってやる……』
↓
マロニー『必ず……君たちを戦場から葬ってやる……』
デ・ダナン 発令所
テッサ「ダーナ、現在位置は?」
ダーナ『現在位置、起点ポイント。設定したグリニッジ子午線です』
テッサ「よろしい。メインタンク・ブロー」
マデューカス「アイ、マム。メインタンク・ブロー。……最後になります」
テッサ「ですね。相良さん、お願いします」
宗介『ウルズ7、了解』
テッサ「あとは成功することを祈りましょう」
マデューカス「はい」
テッサ「それと501のみなさんの無事も」
マデューカス「勿論です」
テッサ「楽しかったわ」
マデューカス「それはなによりです」
テッサ「ありがとう……」
マデューカス「頼むぞ、相良軍曹」
デ・ダナン 甲板
クルツ『ソースケ、失敗は許されねえぞ』
マオ『こことは違う世界ってのもまた見てみたいけどね』
アーバレスト『そういうわけにはいかん。千鳥を無傷で家に帰すまでが任務だ』
マオ『それもそうね』
芳佳「……」ブゥゥゥン
アーバレスト『宮藤軍曹、一人だけか』
芳佳「相良さん……あの……」
アーバレスト『お前と話すことはなにもない。説得など無意味だ。テロリストは要求を妥協しない』
芳佳「……」
アーバレスト『こい!! 宮藤!!』
芳佳「……っ」
アーバレスト『俺はお前の敵だぞ!! 下を向いていて、弾が当たるとでも思っているのかぁ!!!』
芳佳「でやぁぁぁ!!!」バァン!!!!
アーバレスト『その気迫だ!!! どんどん来い!!!』
アーバレスト内
シャーリー『お前は最低なやつだ!! ルッキーニにうまいお菓子を食わせてくれたのに!! こんなことをするなんて!!』
ルッキーニ『おかし、おいしかったー!!!』
宗介「……」
アル『どうやら感謝の弁を述べているようです』
宗介「黙っていろ」
エイラ『千鳥!! 出てこい!! お前にはまだサーニャに優しくしてくれたことへのお礼もしっかりできてないんだからなー!!』
サーニャ『楽しかったです。それがこんなことになるんて、悲しいです』
宗介「お前たちはテロリストを相手にしている自覚がないようだな!! そんな言葉で心が揺らぐとでも思っているのか!!」
エーリカ『ソースケたちのことは忘れないよ。だから、この手で全部壊してやる』
バルクホルン『今まで世話になったな!! だが、今は敵だ!! 容赦はしない!!』
ミーナ『牢屋の向こうに行っても、体には気を付けて』
宗介「貴様らに心配される謂れはない!!!」
アル『俺は大丈夫だ。心配などするな、ということですね。私には分かります、軍曹殿』
宗介「黙っていろと言っている!」
リーネ『クルツさん!! 本当に戻ってこないんですか!?』
クルツ『リーネちゃんがミスリルに入隊するっていうなら、話は別だぜ』
リーネ『できません!!! 私には夢がありますから!!!』
クルツ『それでいい。こっちにきたら、君の夢はかなわねえよ』
リーネ『……はい!』
美緒『相良、お前ほどの男がテロリストに堕ちるとはな。私は悲しいぞ』
宗介「戦友だったものが敵になる。戦場ではよくあることだ。この世界では、なさそうだがな」
美緒『世話になったな。さらばだ』
宗介「この世に別れを告げるのは、お前たちのほうだ!!!」
芳佳『私は貴方たちを許しません!!! だ、だ、だ、だだ、大嫌いです!!!』
アル『大好きです、と言っています』
宗介「……」
芳佳『かなめさんがサーニャちゃんと仲良くしてくれたことも!! クルツさんやテスタロッサさんがルッキーニちゃんによくしてくれたことも!! 今となっては嫌な思い出です!!!』
芳佳『相良さんがリーネちゃんのことなんて気にするって言ったことも、私は怒ってます!! そういったのは、私がリーネちゃんのことを気にしたまま戦えば危なかったから、なんて理由があっても!!』
芳佳『私は感謝なんてしません!!!』
宗介「当たり前だ!!! 二流ウィッチめ!!! 俺の言葉に感謝などしてみろ!! 今すぐ、射殺する!!!」
ペリーヌ『相良軍曹』
宗介「クロステルマン中尉……」
ペリーヌ『お元気で。貴方と戦えたこと、誇りに思いますわ。だから……』
宗介「アル、ラムダ・ドライバだ」
アル『ラジャ』
ペリーヌ『トネール!!!!』バチッ!!!!
宗介「ぐぅぅ……!!!」
ペリーヌ『いまですわ!!!』
リーネ『はい!!』
宗介「何をするつもりだ!!」
アル『名演技です、軍曹殿』
美緒『宮藤!! リーネを支えろ!!』
芳佳『了解!!』
宗介(感謝するのはこちらのほうだ……。楽しかったぞ)
上空
美緒「リーネ、ユニットを飛ばせ! 私と宮藤でお前を支える!!」
リーネ「はい!!」
芳佳「リーネちゃん!!」ギュッ
リーネ「……」
芳佳「やろう。言いたいことはもう言えたから」
リーネ「うんっ」
アーバレスト『ここからでも狙えるぞ!!! くらえ!!!』ドォン!!!!
シャーリー「通すかぁぁ!!!」ギィィンン!!!
バルクホルン「リーネの邪魔はさせない!!!」ギィィン!!!
リーネ「スピットファイア……ミスリルのみんなを導いて……!」ブゥゥゥン
アーバレスト『ユニットを飛ばしてくるとは笑えるな!! 神風特攻のつもりか!!』
芳佳「行ってください!!」
アーバレスト『言われずとも!』
アーバレスト『――開けぇぇぇ!!!!』ゴォッ!
ゴォォォォ!!!
リーネ「きゃぁぁぁ!?」
芳佳「ぐっ……!!」
美緒「なんて風だ……!! 態勢が……!!」
ミーナ「美緒!!」ギュッ
美緒「すまんな、ミーナ」
エーリカ「ダナンは!?」
エイラ「跡形もないぞ」
サーニャ「ダナンらしきものも感知できません」
シャーリー「成功なのか……?」
美緒「それはわからんな。成功したと信じることしかできん」
芳佳「きっと大丈夫ですよ」
リーネ「私もそう思います」
ペリーヌ「そうですわね。あの人たちなら平気でしょう」
ルッキーニ「あたしもそうおもうー」
バルクホルン「全て終わったな。さぁ、基地に戻るぞ。任務が残っているのだからな」
エーリカ「えー? 今日はもーいーじゃーん」
バルクホルン「もういいとはなんだ!!!」
美緒「これからだな」
ミーナ「ええ。501への風当たりは強くなるでしょうし」
美緒「他国には多少の不信感を抱かせてしまっていることだろう。誤解も解かねばな」
ミーナ「そうね……」
美緒「心配はいらん。ウィッチに不可能はないからな」
ミーナ「人類に、でしょ?」
美緒「はっはっはっは。そうだったな」
芳佳「あの、坂本さん」
美緒「ん? なんだ?」
芳佳「基地に戻ったら、どうしてもお願いしたいことがあるんですけど」
美緒「何故、そんなにも小声なんだ。言いにくいことなのか」
リーネ「はい……実は……」
アーバレスト内
宗介「う……ぅ……」
宗介「俺は……どう……なった……?」
アル『おはようございます』
宗介「ここはどこだ……」
アル『海上です』
宗介「海上だと……? 俺はまだAS内にいるはずだ」
アル『肯定です』
宗介「ふつう、沈むだろう」
アル『アーバレストは普通ではありません。特別な機体だと自負しております』
宗介「そういう意味ではない!!」
クルツ『よぉ、ソースケ。元気そうだな』
宗介「クルツか……。ここはどこなんだ?」
クルツ『孤島の真ん前さ。俺たちが任務で突入したな』
宗介「そうか……戻ってきたのか……。なるほど、俺は今、ダナンの上にいるのだな……』
>>454
アル『肯定です』
↓
アル『肯定』
デ・ダナン 発令所
テッサ「座標は?」
マデューカス「特定できました。ここは我々の世界です」
テッサ「はぁ……」
≪テッサ、成功したの?≫
テッサ「成功ですよ」
≪よかった≫
テッサ「本当に」
カリーニン「戻ってきてしまいましたな。戦火が広がる世界へ」
テッサ「カリーニンさん……」
カリーニン「歴史を変えることができれば、何かと都合がいいのでしょうが……」
テッサ「そんなことはできません。私たちは刻まれた歴史の上を進んでいくしかないのですから」
カリーニン「老兵の戯れ言です。忘れてください」
テッサ「はい。忘れました」
マオ『ソースケが目を覚ました。回収、おねがーい』
格納庫
宗介「流石に堪えたな……」
クルツ「しっかり歩けよ」
かなめ「ソースケ!!」
宗介「千鳥……。安心しろ。2時間も休めばなんとかなる」
かなめ「ホントに大丈夫?」
宗介「ああ……問題ない……」
クルツ「かなめ、わりぃけど、ソースケのこと頼むわ。俺はこれから報告書とか作らなきゃなんねーしよ」
かなめ「えぇ!? ちょっと!! クルツくん!!」
宗介「はぁ……はぁ……」
かなめ「もう、しょうがないなぁ」
宗介「くっ……」
かなめ「ほら、つかまって」グイッ
宗介「すまない、千鳥」
かなめ「いーの。イヤリングのお礼ってことにしとくわ」
宗介の部屋
宗介「少し楽になった」
かなめ「そう。よかった」
宗介「……すごい経験をしてしまったな」
かなめ「ホントね。夢でも見てたみたい。そう思わない?」
宗介「ネガティブだ。これがあるからな」ペラッ
かなめ「これって……」
宗介「宮藤から貰ったものだ」
かなめ「芳佳ちゃんとリーネちゃんのズボン丸出し写真……?」
宗介「ああ。できれば全員が集合している写真が欲しかったのだが、どうやらそれしかなかったらしい」
かなめ「……」
宗介「しかし、寝間着だというのにこの露出度だ。制服ならばユニットを装着するためあの布地面積なのは分かるのだが。あの世界の女子はやはり皆、痴女だ」
かなめ「こんなのもらって……どうするわけ……」
宗介「夢ではなかったという証拠を残しておきたかった。それだけだ」
かなめ(この世界だと、異様に卑猥なんだけどなぁ……この写真……。どうかソースケが児童なんとか法の対象になりませんよーに)
発令所
マデューカス「もう間もなく、日本に着きますな」
テッサ「一応、あの孤島も日本の一部だったんですけどね」
マデューカス「いえ、我々は欧州のほうにいましたから。こちらでは1時間も過ぎてはいないようですが」
テッサ「ほぼ同じ時間に戻ってきたのでしょう」
マデューカス「パラレルワールドにタイムスリップ。いやはや、なんとも大航海になりましたな」
テッサ「でも、私たちの航海はまだまだ続きますよ」
マデューカス「わかっております」
テッサ「それから、宮藤一郎さんのことですが」
マデューカス「ええ。調べておきましょう。こちらの世界に戻ってきている可能性もありますからな」
テッサ「もし見つかった場合は……」
マデューカス「保護いたします」
テッサ「結構。それでは、行きましょう。まずはかなめさんを送り届けなくてはいけませんから」
マデューカス「アイ、マム!」
テッサ(絶対に忘れません。501のみなさん……)
501基地 執務室
ミーナ「はい。ミーナです」
チャーチル『今回は大変だったようだな』
ミーナ「いえ、いつも通りです。首相」
チャーチル『結果を出せればそれでいいとは言ったが、あのような結果だとどうにもな』
ミーナ「信頼は私たちの戦果で取り戻します」
チャーチル『君たちのことは然程問題にはしていないよ。マロニー大将のほうだ』
ミーナ「と、いいますと」
チャーチル『彼の暴走は目に余る。こちらでも手は打っておくが、もしもの場合は、現場の判断に任せる』
ミーナ「つまり、何があっても責任はとってくれるということですか」
チャーチル『限度はあるがね』
ミーナ「ありがとうございます」
チャーチル『501の活躍を楽しみにしている』
ミーナ「はい。失礼いたします」
ミーナ(これでマロニーの逃げ場はなくなったわ。あとはウォーロックが姿を現すまでに情報を集めておかないと……)
エーリカ「話はおわりぃ?」
ミーナ「ええ。チャーチル首相も協力してくれるそうよ」
エーリカ「やったね。それじゃ、政治面でも無敵じゃん」
ミーナ「事実上、マロニーにはウォーロックしかなくなったということね」
エーリカ「それ、壊しにいかなくていいの?」
ミーナ「それで結果を出せるとは考えていないわ」
エーリカ「なんで?」
ミーナ「女の勘ってやつかしら」
エーリカ「それ、絶対に当たりそう」
ミーナ「うふふ」
バン!!!
バルクホルン「ミーナ!!!」
ミーナ「扉は静かに開けなさい」
エーリカ「あと、ノックね」
バルクホルン「それどころではないぞ!!! また出たんだ!!! あの怪生物が!!!! しかも今度は眼帯をしたタイプだ!!!」
格納庫
ボン太くん「ふっもっもっもっもっもっも」
ルッキーニ「うにゃぁ……」
ボン太くん「ふも……」
ルッキーニ「うにゃぁぁぁぁ!!! つかまえたー!!!」バッ
ボン太くん「ふもも」バッ
ルッキーニ「ふぎゅぅ!?」ビターン
サーニャ「ああ、ルッキーニちゃん」
ボン太くん「ふっもっもっもっもっも」
サーニャ「今度は、私が……」
ボン太くん「ふももー」
サーニャ「えーいっ」
ボン太くん「ふもっふ!!!」ババッ
サーニャ「きゃ!?」ビターン
ルッキーニ「サーニャー!!」
シャーリー「あれ、少佐が入ってるのか」
芳佳「あ、わかりますか?」
シャーリー「眼帯してるからな」
リーネ「あの眼帯、私と芳佳ちゃんで作ったんです」
シャーリー「誰が入ってるのかわかりやすくするためか?」
芳佳「いえ、坂本さんに頼んだときに――」
美緒『ふむ。これを着るのは構わんが、眼帯をつけてくれ』
芳佳「そう言われて」
シャーリー「トレードマークだもんな」
リーネ「はい」
ボン太くん「ふっもっもっもっもっも」
バルクホルン「怪生物め!! 貴様を捕えて以前、宮藤を傷つけたやつの居場所を吐かせてやる!!」
ボン太くん「ふっもっもっもっもっもっも」
バルクホルン「笑っていられるのも今の内だ!!」
エーリカ「いまだぁぁぁ!!!」
ボン太くん「ふもっふ」バッ
エーリカ「こいつ……左ひねり込みを……!!」
バルクホルン「少佐の技を使うとは小賢しい!!」
エイラ「おぉ。あいつの仲間がきてるっていうから、来てみたけど、ほんとにいるじゃないか」
サーニャ「エイラ、一緒に捕まえて」
エイラ「まかせとけ。今度こそ、逃がさないかんな」
ミーナ「あら、可愛い」
ペリーヌ「もう、なんですの。騒がしいですわねぇ。もう少し静かに――」
ボン太くん「ふもーふ」
ペリーヌ「な、なな……な……」キュンッ
ボン太くん「ふも?」
ペリーヌ「お、おいで、ほら、怖くないですから……ほら……」
ボン太くん「ふもっ」バシーン!!!!
ペリーヌ「きゃふ!?」
エーリカ「気を付けろ! こいつ、竹刀を使うみたいだ!!」
エイラ「こいつは銃じゃなくて竹刀なのか!」
芳佳「ペリーヌさん!! 大丈夫ですか!?」
ペリーヌ「あたまが……われるぅ……」
芳佳「頭は割れてません!! 大丈夫です!!」
ボン太くん「ふっもっもっもっもっもっも」
エーリカ「笑いやがって。ペリーヌを傷つけておいて、無傷で帰れると思うな」
バルクホルン「宮藤だけでなくペリーヌまで……!!」
エイラ「とにかく生け捕りだな」
ボン太くん「ふもっ」
バルクホルン「総員!! 突撃!!!」
エーリカ「わー」テテテッ
ルッキーニ「うーにゃー!!!」
ボン太くん「ふもっふ!!!」
リーネ(坂本少佐……もう少し手加減してください……)
陣代高校 生徒会室
かなめ「はぁ……ぁ……」
敦信「どうした、千鳥くん。いつもの覇気が感じられないが」
蓮「体調でも悪いのですか?」
かなめ「いえ、週末にちょっと、色々ありまして……」
敦信「なるほど。充実した週末だったようだな」
かなめ「それはもう……うははは……」
敦信「相良くんもこの週末は楽しめたようだね」
宗介「はっ。有意義な週末でした」
敦信「それは結構。これで陰鬱な月曜日も乗り切れるというものだ」
蓮「あら、相良さん、写真が落ちましたよ?」
敦信「その写真は?」
宗介「大切な友人の写真です」
敦信「見ても?」
宗介「どうぞ、会長閣下」
かなめ「ちょっと!! それは!!」
蓮「まぁ、可愛らしい子が写っていますね」
敦信「相良くん。この子たちは何故、下着姿なのかね」
宗介「この少女たちにズボンという概念がないからです」
敦信「ほう……」
かなめ「あー!! こら!! ソースケ!!」
宗介「更に言えば、下着に見えるものは、彼女たちにとってのズボンです」
敦信「なるほど」
かなめ「あのですね!! 林水先輩!! これは親戚の子で!! だから、無警戒にこんな姿でうつっちゃって!!」
敦信「パンツではないから恥ずかしくない。故にこうして笑顔で被写体になっていると」
宗介「そういうことになります」
敦信「ありがとう」
宗介「恐縮です」
かなめ「え……あの……それだけですか……?」
敦信「知的好奇心は満たされたからね。この子たちの素性には然程、興味はない」
かなめ「あー、よかったぁ」
宗介「何を焦っている?」
かなめ「あんたが恥ずかしい罪で捕まるかもしれないって思ったからよ!!」
宗介「どのような罪だ」
かなめ「いいから、この写真は持ち歩かないの!! というか、なんで持ち歩てるわけ!?」
宗介「ふむ。風間はよく写真を集めているようだからな。こういった写真にも興味があると思い、持参した」
かなめ「あ、あげるつもりなの……?」
宗介「いや、見せるだけだ。複写ぐらいなら構わんが」
かなめ「……」
宗介「部室の一件が不甲斐ない結果に終わってしまったからな。せめてもの謝礼にこの写真を見せようと考えた」
かなめ「こんなもん見せちゃだめ!!!」バシーン!!!
宗介「中々、痛いぞ」
かなめ「やかましい!!! これは誰にも見せちゃダメ!!!」
宗介「何故だ? それは戦友の写真であって、何もやましくはないぞ」
かなめ「あんたの心配をしていってんのよー!!!」
501基地 訓練所
リーネ「ふっ!」バァン
ルッキーニ「めいちゅー!」
リーネ「やった。少しだけど命中率が上がった」
ルッキーニ「やったね、リーネ」
リーネ「ありがとう、ルッキーニちゃん!」ギュッ
ルッキーニ「くすぐったいぃ」
リーネ「ずっと訓練に付き合ってくれて、本当にありがとう」
ルッキーニ「にひぃ。いいよ。リーネが上手になればあたしもうれしいし」
リーネ「ふふっ」
芳佳「リーネちゃーん、ルッキーニちゃーん、ごはんできたよー」
リーネ「はーいっ」
ルッキーニ「いまいくー」
芳佳「訓練、お疲れ様。ほら、これで汗をふいて」
リーネ「芳佳ちゃん、ありがとう。ずっと傍にいてくれて……本当に……」
芳佳「私は何もしてないよ。全部……相良さんやクルツさんが……」
リーネ「ううん。芳佳ちゃんがいてくれたから、またこうしてがんばれるの」
芳佳「リーネちゃん……」
リーネ「芳佳ちゃん……」
芳佳「おぉぉ……」
リーネ「芳佳ちゃん? どこみてるの?」
芳佳「え!? な、なんでもないよ!! さ、さー、ごはんにしよー!!」
リーネ「うんっ」
芳佳「……相良さんたち、元気にしてるよね」
リーネ「うん、してるよ。きっと」
芳佳(相良さん……。私、お父さんみたいな一流になります……絶対に……。この力で多くの人を守れるように……)
バルクホルン「まてぇぇぇぇ!!!」
ボン太くん「ふっもっもっもっもっもっも」
END
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