春香「笑って」 (16)
アイマスssです
短いですがどうぞ
歌を歌えればそれでよかった
「天海春香です!よろしくね、如月さん!」
そんな理由でアイドルを始めた私と天海さんは絶対に相容れない存在だ
そう最初から決めつけていた
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私が適当に相槌を打つだけでも、それでも彼女は毎日毎日話しかけてきた
朝から近所の猫が可愛いとか、今月は一回も転んでないとか、ダンスのここが難しいとか、新しい味のクッキーを作ったとか
今まで誰もを遠ざけてきて、誰からも遠ざけられてきたのに、こんなのは初めてだった
何故だろうか、一人なのを哀れんでいるなら大きなお世話だ
偽善を押し付けてくるのはやめてほしい
事務所からの帰り道、そんなことを考えながら帰っていると後ろからポンと肩を叩かれた
「難しい顔して何考えてたの?」
振り返ると天海さんがいた
ふう、小さくため息を一つ入れて私は思い切って言った
「天海さん。あなたは何故そんなに私に構ってくるの?私は歌を歌えればそれでいいの。誰かとユニットを組むつもりもないし、仲良くしようなんて微塵も思ってないから」
我ながらひどい言い草だ
「うーん。それはね如月さんの笑顔がとっても素敵だからだよ!」
「・・・?」
固まってしまった。何を言っているんだろうかこの子は
「如月さんはね、自分では気付いていないかもしれないけどダンスのレッスンやレコーディングが上手くいくとね、ほんの一瞬だけどとっても可愛く笑うんだよ!
私は如月さんのあの笑顔がもっともっと見れたらいいなって思うから仲良くしたいって思うんだけど・・・」
屈託のない笑顔で彼女は答えた
彼女は・・・そう優れてはいなかったと思う
声域が広かったり声量が大きいわけではない、ダンスに切れがあるわけでもない、ヴィジュアルだって胸が大きかったりするわけではない
そんな彼女のファンが何故多いのか、何に魅了されているのか
私はわかってしまった
やはり正反対だ。こんな斜に構えた私なんかじゃ到底追いつけない「アイドル」がそこにいた
「あなたは・・・本当に一生懸命なのね。敵わないわ」
自然と言葉が出てしまった
「私なんかより千早ちゃんのほうが何倍も一生懸命だよ!
いつも楽譜とにらめっこして、歌を完全に覚えても最後まで絶対に練習を欠かさずに、飲み物にまで気を使って、レコーディングの時は必ず万全で臨んでる千早ちゃんの方が絶対すごい!
私じゃ到底追いつけないよ!」
物凄い剣幕で捲し立ててきた
「あ、ご、ごめんなさい!いきなり千早ちゃんなんて馴れ馴れしかったよね。前々から名前で呼びあえればなーって思ってたからつい出ちゃったというか・・・あれ?私何言ってるんだぁ!」
「・・・ぷっふふ」
笑いがこみ上げてきた。会話の中で笑顔になるなんていつ以来だろうか
「ねぇ天海さん」
だからそれ以来は
「ひゃい!」
春香に―と言われると
「私も春香って呼んでいいかしら?」
自然と笑顔になる
「もちろん!」
―
あれから事務所のみんなとの距離もあっという間に近くなった
歌は今でも大切だけど、それ以上にかけがえの無いものをたくさんもらった
「すう・・・すう・・・」
「おんやぁ~眠り姫が眠り姫しておりますな~」
「オヤビン!ここはこいつで一泡吹かせてやりましょうぜ!」
「こ、これは!ひびきんから授かりし猫じゃらし!」
「でわでわ・・・」
「「いざ!」」
こちょこちょ~
「・・・くちゅん!」
「ぶわはっは!大成功v」
「(ギロリ)」
「あ、いやこれはその・・・」
「怒らないでくだしい・・・」
「・・・いいわよ。私は許してあげる」
「「私は?」」
ゴゴゴゴゴゴゴ
「亜美、次のレッスンってもうすぐだったっけ?」
「もう過ぎてるっしょ→後ろから緑色の覇気を感じるし」
「「三十六計」」
「コラー!!逃げるなー!」「「うぎゃー」」
「まったくもう」
以前なら考えられなかったけれど、ああいうのも亜美真美なりの可愛いコミュニケーションなのだと思うようになった
と、
「千早ちゃーん!会いたかったー!」
仕事ですれ違い、なかなか会っていなかった春香と抱き合う
「ちょ、ちょっと春香!恥ずかしいわ」
「私は恥ずかしくないもんねー。あ、そうだ。クッキー焼いてきたから一緒に食べよ!」
「もうこの三日間千早ちゃんのことばっかり考えてたよ」
「私は初めて春香が話しかけてきた時からずっと春香のことを考えてたわ」
春香がクッキーを差し出して私が受け取ろうとするのだが、急に手を引っ込めてしまう
「その前に久々なので千早ちゃん」
「なにかしら?」
「笑って!」
以上です
10th終わった勢いで書いてみましたが10レスいかずに終わるとは・・・
もっと長く書けるように努力しなくては
申請行ってきます
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